(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。添付図面においては、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0017】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る交通システムの構成図である。本実施形態1に係る交通システムは、交通路において発生している渋滞の重要度を算出するシステムであり、交通渋滞分析装置100、プローブ200を備える。
【0018】
プローブ200は、各交通路における混雑度指標を算出するための基礎となるデータを測定する端末であり、例えばタクシーやバスに搭載されたGPS装置などを用いて構成されている。
【0019】
交通渋滞分析装置100は、プローブ200から収集した各道路の混雑度に基づいて、道路間の接続関係を考慮した上で各渋滞の重要度を算出する装置である。交通渋滞分析装置100が算出した渋滞重要度は、例えば交通計画を作成する際に渋滞対策の優先順序を決定するために利用することができる。
【0020】
交通渋滞分析装置100は、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103を備える。これらはバスによって互いに接続される。交通渋滞分析装置100は、例えば大型計算機を用いて構成することができるが、これに限らず例えば複数の計算機を並列動作させることによって構成してもよい。
【0021】
記憶装置103は、リンク混雑度データ120、交通ネットワークデータ130、渋滞リスト140を格納する。これらデータの具体例については後述する。
【0022】
プロセッサ101は、メモリ102が格納している各プログラムを実行する。メモリ102は、渋滞抽出部104、渋滞重要度算出部105、混雑度算出部106、データ収集部107を格納している。
【0023】
データ収集部107は、プローブ200が測定したデータを収集する。例えば通信ネットワークを介してプローブ200から各データを収集することもできるし、記憶媒体に格納された測定データなどを読み出して各データを取得することもできる。
【0024】
混雑度算出部106は、データ収集部107が収集した交通路の測定データに基づき、各交通路の混雑度指標を算出し、リンク混雑度データ120として記憶装置103に格納する。例えば、タクシーやバスに搭載されたGPSから収集したデータに基づき、各交通路上の交通機関の移動速度を算出し、これを混雑度指標として用いることができる。リンク混雑度データ120があらかじめ提供されている場合は、混雑度算出部106を省略することもできる。
【0025】
渋滞抽出部104は、リンク混雑度データ120と交通ネットワークデータ130を用いて、交通路において発生している渋滞を抽出し、その結果を渋滞リスト140内に格納する。渋滞抽出部104による処理の詳細については、後述の
図6を用いて改めて説明する。
【0026】
渋滞重要度算出部105は、渋滞リスト140に格納されている各渋滞の重要度を算出する。渋滞重要度算出部105による処理の詳細については、後述の
図5などを用いて改めて説明する。
【0027】
渋滞抽出部104、渋滞重要度算出部105、混雑度算出部106、データ収集部107は、これらの動作を記述したプログラムをプロセッサ101が実行することによって構成することもできるし、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成することもできる。以下では
図1に示すようにプログラムとして構成したことを前提として説明する。これらプログラムを実際に実行するのはプロセッサ101であるが、以下では記載の便宜上、各機能部を動作主体として説明する。
【0028】
図2Aは、リンク混雑度データ120の構成とデータ例を示す図である。リンク混雑度データ120は、データ収集部107がプローブ200から収集したデータに基づき混雑度算出部106が各交通路の旅行速度を算出した結果を格納するデータであり、時刻121、リンク122、旅行速度123を含む。
【0029】
時刻121は、当該レコードが対象としている時刻を記述する。リンク122は、交通路(例えば道路や交通区間)のIDを保持する。旅行速度123は、当該リンクにおいて交通手段が移動するときの平均走行速度を保持する。旅行速度123の値が小さい場合、そのリンクにおいては渋滞が発生していると想定されるので、旅行速度123は当該リンクの混雑度指標として用いることができる。渋滞度を示唆する指標であれば、旅行速度以外の指標を用いることもできる。
【0030】
図2Bは、交通ネットワークデータ130の構成とデータ例を示す図である。交通ネットワークデータ130は、交通路間の接続関係を記述するデータであり、リンク131、始点ノード132、終点ノード133、長さ134、ノード135、接続リンク136を含むテーブルも含む。ノード135と接続リンク136は、その他のフィールドとは別のテーブル内に格納されている。
【0031】
リンク131は交通路のIDであり、リンク122に対応する。始点ノード132と終点ノード133は、リンクの両端に存在する地点のIDを保持する。始点ノード132と終点ノード133を参照することにより、リンク131を通過する移動体の移動方向を特定することができる。長さ134は、当該リンク131の長さを保持する。接続リンク136は、ノード135に接続されているリンクのIDである。
【0032】
図3は、渋滞リスト140の構成とデータ例を示す図である。渋滞リスト140は、渋滞抽出部104が渋滞を構成する交通路を抽出した結果を格納するデータであり、時刻141、リンク列142、渋滞先頭ノード列143、渋滞長144を保持する。渋滞リスト140内の1レコードは、1つの渋滞に対応する。
【0033】
時刻141は、当該レコードが対象としている時刻を記述する。リンク列142は、当該渋滞が発生している交通路のIDを保持する。複数の交通路にまたがって渋滞が発生している場合は、それら交通路のIDをまとめて同一のリンク列142内に保持する。渋滞先頭ノード列143は、当該渋滞の先頭に位置するノード列のIDを保持する。渋滞長144は、当該渋滞のリンク列142の長さ134の合計値を保持する。
【0034】
図4は、渋滞抽出部104の動作を説明するフローチャートである。渋滞抽出部104は、例えば交通渋滞分析装置100のユーザによる指示にしたがって、あるいは所定の実行周期にしたがって、本フローチャートを開始する。以下、
図4の各ステップについて説明する。
【0035】
(
図4:ステップS401〜S403)
渋滞抽出部104は、探索時刻tを更新間隔dt毎に設定する(S401)。渋滞抽出部104は、設定時刻tがあらかじめ定められた最終時刻T(渋滞を抽出する対象とする最終時刻)よりも小さいか否かを判定する(S402)。設定時刻tが最終時刻Tよりも小さければ、渋滞抽出部104はリンク番号iを1つインクリメントする(S403)。設定時刻tが最終時刻Tに達した時点で本フローチャートを終了する。
【0036】
(
図4:ステップS404)
渋滞抽出部104は、設定したリンク番号iが、交通ネットワークデータ130内に格納されているリンク数Nよりも小さいか否かを判定する。リンク番号iがN以上に達している場合は、リンク番号iを初期化した上でステップS401に戻る。リンク番号iがNよりも小さい場合はステップS405に進む。
【0037】
(
図4:ステップS405)
渋滞抽出部104は、リンク混雑度データ120から時刻t/リンク番号iのリンク122の旅行速度123を取得する。渋滞抽出部104は、取得した旅行速度123に基づき、当該リンク122において渋滞が発生しているか否かを判定する。渋滞が発生している場合はステップS406に進み、それ以外であればステップS403に戻る。渋滞が発生しているか否かは、あらかじめ定められた旅行速度を閾値として判定すればよい。例えば、法定速度が時速40kmのリンクであれば、旅行速度123が時速20km以下であれば当該リンクにおいて渋滞が発生していると判定することができる。リンク混雑度データ120に基づき渋滞発生の有無を判定できるのであれば、その他の判断基準を用いることもできる。
【0038】
(
図4:ステップS406)
渋滞抽出部104は、設定時刻t/リンク番号iのリンクが渋滞リスト140内に既に格納されているか否かを判定する。格納されていなければ、当該リンクを渋滞リスト140内に格納し、ステップS407に進む。格納されていれば、ステップS403に戻る。
【0039】
(
図4:ステップS407)
渋滞抽出部104は、設定時刻t/リンク番号iのリンクに接続され、かつ渋滞が発生している別のリンクを、渋滞リスト140から探索する。リンク間の接続関係は、交通ネットワークデータ130に基づき特定することができる。渋滞が発生しているか否かについてはステップS405と同様の手法によって判定することができる。渋滞抽出部104は、渋滞が発生しているリンクの連続性が途切れるまで、同様の処理を繰り返す。これにより、リンク間にまたがって発生している渋滞を抽出することができる。渋滞抽出部104は、抽出した連続する渋滞リンクをリンク列142として渋滞リスト140内に格納する。本ステップにより、リンク間にまたがる渋滞を1つのまとまった単位として抽出することができる。
【0040】
(
図4:ステップS408)
渋滞抽出部104は、ステップS407において抽出したリンク列の先頭に位置するノードを、渋滞先頭ノード列143として渋滞リスト140に格納する。また、交通ネットワークデータ130に基づき渋滞長144を計算して渋滞リスト140に格納する。
【0041】
(
図4:補足)
本フローチャートにおける更新間隔dtは、リンク混雑度データ120の更新間隔と同一としてもよいし、計算時間を短くするためリンク混雑度データ120の更新間隔よりも長い時間にしてもよいし、ユーザが適宜設定してもよい。本フローチャートは、プローブ200および混雑度算出部106がリンク混雑度データ120を更新する度に実行してもよい。
【0042】
図5は、本実施形態1に係る交通システムの動作を説明するフローチャートである。交通渋滞分析装置100は、ユーザの指示にしたがって、あるいは所定の実行周期にしたがって、本フローチャートを開始する。以下、
図5に示す各ステップについて説明する。
【0043】
(
図5:ステップS501)
渋滞抽出部104は、
図4において説明したフローチャートにしたがって、リンク混雑度データ120と交通ネットワークデータ130を参照して、同一の渋滞に属しているリンクを抽出し、渋滞リスト140に格納する。
【0044】
(
図5:ステップS502)
渋滞重要度算出部105は、渋滞リスト140に格納されている各渋滞(各レコード)の重要度を算出する。重要度の算出基準の例については、後述の
図6を用いて説明する。いずれの算出基準を用いるかについては、例えば交通渋滞分析装置100のユーザが都度設定してもよいし、規定値を用いてもよい。
【0045】
図6は、渋滞重要度算出部105が渋滞の重要度を算出する際に用いる算出基準を例示する図である。渋滞の重要度は、例えば各渋滞の最大渋滞長と渋滞継続時間を基準として算出することができる。最大渋滞長は、渋滞先頭ノード列143をキーにして渋滞リスト140内の各レコードをソートし、同じリンク列142についての渋滞長144を比較することによって特定することができる。渋滞継続時間は、同じリンク列142について時刻141が途切れずに連続している時間を算出することによって求めることができる。
【0046】
最大渋滞長を重要度として採用した場合、
図6Aに示す渋滞パターンが最も重要(対策を最も優先すべき渋滞)となる。渋滞リンクの時間連続性を考慮して、最大渋滞時間を重要度として採用することもできる。この場合は
図6Bに示す渋滞が最も重要となる。渋滞長のピーク値を記録する回数や頻度を重要度として採用することもできる。この場合は
図6Cが最も重要な渋滞となる。これらの算出基準を例えば重みづけによって組み合わせて使用することもできる。
【0047】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る交通渋滞分析装置100は、プローブ200から収集した各交通路の混雑度指標に基づいて、交通路間の接続関係を考慮して、リンク間にまたがる渋滞を1つのまとまった単位として抽出する。また、抽出した個々の渋滞について重要度を算出する。これにより、交通路間の接続関係を考慮して個々の渋滞を個別に特定し、その重要度を評価することができる。
【0048】
本実施形態1において生成した渋滞重要度は、例えば交通計画を作成する際に渋滞対策の優先順序として利用することができる。このとき、プローブ200から推定されるリンク混雑度データ120を、同じくプローブ200から収集される広域な測定データによって補間してもよい。これにより、多数の調査担当者や路側センサを準備しなくとも、対策すべき渋滞がどこで起こっているのかを個別に把握することができる。
【0049】
本実施形態1において生成した渋滞リスト140は、公共施設や商業施設の設置計画、不動産物件の価値算定などにおける基礎データとして活用することができる。交通渋滞分析装置100は、各用途に向けたデータ出力機能を備えることもできる。
【0050】
本実施形態1において、スマートフォンなどの個人が携行する携帯端末からGPSデータを収集してもよい。データ収集部107は、スマートフォンがGPS情報や加速度センサの測定データを収集するためのアプリケーションを配布する機能を備えてもよい。同アプリケーションは、各個人が同アプリケーションを利用することを促すため、交通量情報や各個人の行動履歴を表示する機能を提供するように構成してもよい。
【0051】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、実施形態1に係る交通渋滞分析装置100が、カレンダーデータ710を利用して、渋滞が発生している曜日や季節などを考慮して渋滞の重要度を算出する構成例について説明する。カレンダーデータ710を用いて渋滞重要度を算出する点を除き、本実施形態2に係る交通システムの構成は実施形態1と同様である。
【0052】
図7は、本実施形態2に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態2における交通渋滞分析装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて、カレンダーデータ710を備える。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0053】
図8は、カレンダーデータ710の構成とデータ例を示す図である。カレンダーデータ710は、休祝日の区別と季節を特定するための情報を格納するデータであり、日付711、曜日712、属性713、季節714を保持する。曜日712、属性713、季節714は、日付711の曜日、平日/休祝日の区別、季節を特定する値を保持する。その他の日付属性についての情報を格納してもよい。
【0054】
渋滞重要度算出部105は、実施形態1で説明した渋滞重要度を算出する際に、カレンダーデータ710を利用して、各日付に重みを付けた上で重要度の値を求める。例えば、通勤用途でよく用いられる交通路については、平日の渋滞は休日の渋滞よりも優先度が高いとみなして休日よりも高い重み値をつけて重要度を算出する。休日によく用いられる交通路については、この反対に休日の渋滞をより重くしてもよい。その他、季節に応じて重みをつけることも考えられる。これにより、平日/休日の違いや季節の違いによって異なる交通需要の違いを加味して、重要度を算出することができる。重みの具体的な値は、交通渋滞分析装置100のユーザが設定してもよいし、他の交通渋滞分析装置100と共有してもよい。
【0055】
図9は、渋滞の傾向が平日と休日で異なることを例示した図である。各グラフは、縦軸が渋滞長であり、横軸が時刻を表している。
図9Aにおいては土日の渋滞長の方が長く、
図9Bにおいては平日の渋滞長の方が長い傾向がある。
図9Aに示す交通路においては、土日の買い物客などの影響で渋滞が発生していると推定することができる。
図9Bに示す交通路においては、通勤による渋滞が発生していると推定することができる。カレンダーデータ710を用いることにより、
図9に例示するように日付の属性によって異なる交通需要の違いを考慮して、渋滞重要度を算出することができる。
【0056】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る交通渋滞分析装置100は、カレンダーデータ710を利用して、曜日や季節に応じて重み付けした渋滞重要度を算出することができる。これにより、曜日や季節に応じて異なる交通需要の性質の違いを考慮して、対策すべき渋滞を選定することができる。すなわち、渋滞の性質に即した渋滞対策を詳細な調査なしに策定することができる。
【0057】
<実施の形態3>
本発明の実施形態3では、渋滞発生が交通利用者に与える損失を費用に換算し、算出された費用に基づいて渋滞重要度を算出する構成例について説明する。交通渋滞分析装置100内に上記機能が追加されたことを除き、本実施形態3に係る交通システムの構成は実施形態1と同様である。
【0058】
図10は、本実施形態3に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態3において、渋滞重要度算出部105は、時間費用換算部1001と交通量推計部1002を備える。記憶装置103は、ODデータ1010と時間原単位データ1020を格納している。その他の構成は実施形態1と同様である。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0059】
交通量推計部1002は、ODデータ1010が格納している交通利用者の交通利用状況と、交通ネットワークデータ130とに基づき、各リンクの交通利用者数を推計する。ODデータ1010の具体例については後述する。
【0060】
時間費用換算部1001は、交通量推計部1002が推計した渋滞リンク上を通過する交通利用者数に基づき、交通利用者が渋滞によって損失した時間を算出する。さらに、時価原単位データ1020を用いて、その損失時間を費用に換算する。
【0061】
渋滞重要度算出部105は、時間費用換算部1001が算出した費用を利用して、各渋滞の重要度を算出し、渋滞リスト140に格納する。これにより交通渋滞分析装置100のユーザは、各渋滞が与える経済的損失を見積もることができる。また、経済的観点から対策すべき渋滞を選定することができる。
【0062】
図11Aは、ODデータ1010の構成とデータ例を示す図である。ODデータ1010は、個人が利用する交通手段の傾向を表したデータであり、都市1011、出発地(Origin)1012、到着地(Destination)1013、交通量1014、選択パターン1015を含む。
【0063】
都市1011は、ODデータ1010が収集された都市のIDを保持する。出発地1012と到着地1013は、当該都市内の各地点(ゾーン)のIDを保持する。交通量1014は、出発地1012と到着地1013の間に発生する交通量を保持する。例えば出発地1012と到着地1013の間を通過する車両などの台数を交通量1014として用いることができるが、その他の交通量指標を用いてもよい。選択パターン1015は、当該地点間において各交通機関が選択される確率を保持する。その他、例えば時間優先や料金優先といった評価尺度を選択パターン1015として用いてもよい。これらのデータは、例えばICカードの利用履歴に基づき個人の移動経路を推定することによって取得してもよいし、個人のアンケート結果から当該個人の交通行動を推定することによって取得してもよい。
【0064】
図11Bは、時価原単位データ1020の構成とデータ例を示す図である。時価原単位データ1020は、バスや乗用車などの車種に応じた時間価値を表したデータであり、車種1021、時間価値原単位1022を含む。時間価値原単位1022は、車種1021が示す車種1台が1分間走行することに対応する金銭価値を示すものである。時間価値原単位1022の具体的な値は、政府などが公開するガイドラインに沿って設定してもよいし、交通渋滞分析装置100のユーザが設定してもよい。
【0065】
図12は、本実施形態3における渋滞重要度算出部105の動作を説明するフローチャートである。以下、
図12の各ステップについて説明する。
【0066】
(
図12:ステップS1201)
交通量推計部1002は、交通ネットワークデータ130とODデータ1010を用いて、当該都市内の各交通リンクに流入する交通量を算出する。各リンクの交通量は、それぞれの交通利用者の走行経路長が同じになるような均衡配分法などの一般的な交通量配分手法を用いて算出することができる。本ステップにおいては、歩行者を交通量配分の対象から除外してもよい。
【0067】
(
図12:ステップS1202)
時間費用換算部1001は、ステップS1201において算出された各リンクの交通量に基づき、渋滞リスト140に格納されている各渋滞によって生じる交通利用者の損失時間を算出する。損失時間は例えば、法定速度で走行した場合の総走行時間と、渋滞時の走行時間との間の差分を利用して計算する。時間費用換算部1001は、各車種の総損失時間を集計する。
【0068】
(
図12:ステップS1203)
時間費用換算部1001は、時価原単位データ1020を利用して、ステップ1202において算出した各車種の総損失時間を費用に換算する。渋滞重要度算出部105は、時間費用換算部1001が算出した費用を渋滞重要度として用いる。
【0069】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る交通渋滞分析装置100は、渋滞発生が交通利用者に与える損失を費用に換算し、その費用に基づいて渋滞重要度を算出する。これにより、各渋滞が与える経済的損失を見積もることができる。また、経済的観点から対策すべき渋滞を選定することができる。
【0070】
<実施の形態4>
渋滞解消策を講じる際には、渋滞発生の原因となっているボトルネック箇所とそのボトルネック箇所において交通需要が交通容量を超過する時刻を特定する必要がある。従来技術においては、交通路間の接続関係を考慮していないため、ボトルネック箇所とボトルネックが発生する時刻を特定することは困難である。そこで本発明の実施形態4では、渋滞リスト140を用いボトルネックを特定する構成例について説明する。
【0071】
図13は、本実施形態4に係る交通システムの構成図である。本実施形態4における交通渋滞分析装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて、ボトルネック検出部1301を備える。その他の構成は実施形態1と同様である。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0072】
ボトルネック検出部1301は、渋滞リスト140内に格納されている各渋滞について、渋滞先頭ノードから発生している渋滞長をリンク混雑度データ120と交通ネットワークデータ130に基づき算出し、各渋滞に対して最も影響を及ぼしている渋滞先頭ノードをボトルネックとして検出する。ボトルネック検出部1301による処理の詳細については後述する。
【0073】
図14は、ボトルネック検出部1301の動作を説明するフローチャートである。ボトルネック検出部1301は、例えば交通行動推定装置100のユーザが指示にしたがって、あるいは所定の実行周期にしたがって、本フローチャートを開始する。以下、
図14の各ステップについて説明する。
【0074】
(
図14:ステップS1401)
ボトルネック検出部1301は、渋滞リスト140に格納されている渋滞(渋滞リスト140内の1レコード)を選択し、当該渋滞の渋滞先頭ノード列143を抽出する。本ステップにおいて選択する渋滞は、例えば本フローチャートを開始する時点においてユーザが指定してもよいし、渋滞リスト140内の先頭レコードから順次選択してもよい。
【0075】
(
図14:ステップS1402)
ボトルネック検出部1301は、ステップS1401で抽出した各渋滞先頭ノードについて、リンク混雑度データ120と交通ネットワークデータ130に基づき、当該ノードに接続している渋滞リンクを探索する。ボトルネック検出部1301は、探索によって得られた渋滞リンクの各時刻における渋滞長(渋滞長の時系列変化)を算出する。
【0076】
(
図14:ステップS1403)
実際の渋滞は、交通ネットワークデータ130が記述しているリンクの粒度よりも短い範囲内で発生する場合がある。また、プローブ200と混雑度算出部106がリンク混雑度データ120を更新する時間間隔は必ずしも十分に短くない。そのため、ステップS1402において算出された渋滞長の時系列変化は、渋滞長軸/時間軸ともに離散的な形状になると考えられる。そこでボトルネック検出部1301は、ステップS1402において算出した渋滞長の時間変化を、渋滞長軸/時間軸に沿って平滑化する。
【0077】
(
図14:ステップS1404)
ボトルネック検出部1301は、ステップS1403において平滑化した渋滞長を時間方向に平均して時間平均渋滞長を算出する。ボトルネック検出部1301は、その時間平均渋滞長が最も長い渋滞先頭ノードをボトルネックノードとして検出する。さらにボトルネック検出部1301は、渋滞長の時系列変化から渋滞発生時刻を検出し、これを需要超過時刻(交通需要が交通容量を超過した時刻)とみなす。各検出結果は記憶装置103内の適当な領域に格納すればよい。本ステップの考え方については、後述の
図15Aを用いて改めて説明する。
【0078】
図15Aは、ボトルネック箇所を例示した図である。
図15A中の矢印は渋滞が発生しているリンクである。
図15Aに示す渋滞例においては、1つの渋滞に対して複数の渋滞先頭ノードa、bが存在する。ノードaから延伸する渋滞長よりもノードbから延伸する渋滞長の方が長いため、
図15Aに示す渋滞はノードbから発生しており、したがってボトルネックとなっているのはノードbであると推定することができる。すなわち、
図14のステップS1404で説明したように、時間平均渋滞長が最も長い渋滞先頭ノードがボトルネックノードであると推定することができる。
【0079】
図15Bは、ボトルネック検出部1301が算出する各渋滞先頭からの渋滞長の平均値を例示したものである。
図15Bの横軸は1つの渋滞(渋滞リスト140内の1レコード)内に含まれる渋滞先頭ノードを示す。ここでは1つの渋滞内に多数の渋滞先頭ノードが含まれる例を示した。
図15Bの縦軸は各渋滞先頭ノードについての時間平均渋滞長を示す。
図15Bに示すように、同一の渋滞に属する渋滞先頭ノードであっても、渋滞長の平均値が異なる場合がある。したがって
図15Aに示すように、渋滞先頭ノード毎に時間平均渋滞長を比較することにより、ボトルネックを効果的に検出することができることが分かる。
【0080】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る交通渋滞分析装置100は、交通ネットワークデータ130に基づき交通路間の接続関係を考慮しつつ、渋滞リスト140を利用して各渋滞のボトルネック箇所を検出することができる。検出された渋滞ボトルネック箇所は、例えば交通計画を作成する際に渋滞対策を実施すべき場所を判定するために利用することができる。本実施形態4は、実施形態1〜3と併用することもできる。
【0081】
本実施形態4において検出したボトルネック箇所は、公共施設や商業施設の設置計画、不動産物件の価値算定などにおける基礎データとして活用することができる。交通渋滞分析装置100は、各用途に向けたデータ出力機能を備えることもできる。
【0082】
<実施の形態5>
本発明の実施形態5では、実施形態4に係る交通渋滞分析装置100によって検出されたボトルネック箇所から発生している交通渋滞の種別(定常的に発生する渋滞、一時的なピークによる渋滞、などの種別)を判別する構成例について説明する。
【0083】
図16は、本実施形態5に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態5における交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて、渋滞種別判別部1601を備える。その他の構成は実施形態4と同様である。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0084】
渋滞種別判別部1601は、ボトルネック検出部1301が検出したボトルネック箇所の渋滞長の時系列変化に基づき、交通渋滞の種別を判別する。交通渋滞の種別とは、当該渋滞が交通容量の低さによって生じたのか、それとも交通需要が集中したことによって生じたのかの違いを示すものである。渋滞種別判別部1601による処理の詳細については後述する。
【0085】
図17は、本実施形態5に係る交通システムの動作を説明するフローチャートである。交通システムは、例えば交通行動推定装置100のユーザからの指示にしたがって、あるいは所定の実行周期にしたがって、本フローチャートを開始する。以下、
図17の各ステップについて説明する。
【0086】
(
図17:ステップS1701)
渋滞抽出部104は、実施形態1で説明した手順にしたがって、リンク混雑度データ120と交通ネットワークデータ130から渋滞リスト140を生成する。
【0087】
(
図17:ステップS1702)
ボトルネック検出部1301は、実施形態4で説明した手順にしたがって、ボトルネック箇所を検出する。
【0088】
(
図17:ステップS1703)
渋滞種別判別部1601は、ボトルネック箇所から発生する渋滞の渋滞長の時系列変化を用いて渋滞発生頻度と渋滞時間を算出する。渋滞種別判別部1601は、渋滞時間が長く発生頻度が定期的である場合には、交通容量の低さによってその渋滞が生じたと判別する。渋滞時間が短く、発生頻度が例えば平日と休祝日で異なる場合には、交通需要の集中によってその渋滞が生じたと判別する。渋滞種別を区別するための渋滞時間と発生頻度それぞれの閾値(渋滞種別閾値)は、あらかじめ定めておいてもよいし、ユーザが指定してもよい。渋滞種別を判別する条件は、渋滞長の時系列変化から渋滞種別を推定することができるのであれば、上記以外の他の条件でもよい。
【0089】
<実施の形態5:まとめ>
以上のように、本実施形態5に係る交通渋滞分析装置100は、ボトルネック箇所から発生する交通渋滞の種別を判別することができる。これにより交通計画者は、交通渋滞の解消策として、交通容量を増大すべきか、あるいは交通需要の分散を促すべきか、事前に判断することができる。本実施形態5は、実施形態1〜3と併用することもできる。
【0090】
<実施の形態6>
本発明の実施形態6では、実施形態4に係る交通渋滞分析装置100によって検出されたボトルネック箇所から発生している交通渋滞情報を利用して交通需要を推定する構成例について説明する。
【0091】
図18は、本実施形態6に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態6に係る交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて、交通需要推定部1801を備える。交通ネットワークデータ130は、後述の
図19で説明する構成を備える。その他の構成は実施形態4と同様である。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0092】
交通需要推定部1801は、交通ネットワークデータ130と、ボトルネック検出部1301が検出したボトルネック箇所から生じる渋滞長の時系列変化とに基づき、交通需要を推定する。交通需要推定部1801による動作の詳細は後述する。
【0093】
図19は、本実施形態6における交通ネットワークデータ130の構成とデータ例を示す図である。交通ネットワークデータ130は、実施形態1で説明した構成に加え、各リンクの車線数を示す車線数137を含む。その他、各リンクの道路幅や道路の平坦性などについての情報を含んでもよい。
【0094】
図20は、交通需要推定部1801の動作を説明するフローチャートである。交通需要推定部1801は、例えば交通行動推定装置100のユーザからの指示にしたがって、あるいは所定の実行周期にしたがって、本フローチャートを開始する。以下、
図20の各ステップについて説明する。
【0095】
(
図20:ステップS2001)
交通需要推定部1801は、交通ネットワークデータ130と、ボトルネック箇所から発生する渋滞長とを用いて、渋滞時間中の交通量を算出する。渋滞時においては、道路に車両が整列しているとみなせるため、道路の車線数と道路長から渋滞長を交通量に変換することができる。車両はあらかじめ定められた体積を持つと仮定し、全ての車両が同一サイズであると近似して交通量を計算してもよいし、複数の車種が混在していることを前提として交通量を推計してもよい。各車種のサイズについてはあらかじめ与えておいてもよいし、ユーザが指定してもよい。
【0096】
(
図20:ステップS2002)
交通需要推定部1801は、渋滞長の成長速度に基づき、交通需要の流入速度を算出する。これにより、時系列を遡って、渋滞が発生する前から渋滞発生後に至る交通量の経時変化を再現することができる。すなわち、ボトルネックから生じる渋滞についての情報を利用して、時系列に沿った交通需要を推定することができる。
【0097】
<実施の形態6:まとめ>
以上のように、本実施形態6に係る交通渋滞分析装置100は、ボトルネック検出部1301が検出したボトルネック箇所から発生する交通渋滞情報を利用して、交通需要を推定することができる。これにより交通計画者は、交通需要が集中する過程を時系列で把握することができる。したがって、交通需要の集中の原因分析や、交通需要の分散を促す方法を検討することができる。本実施形態5は、実施形態1〜3と併用することもできる。
【0098】
<実施の形態7>
本発明の実施形態7では、実施形態1で説明した手法によって得られる渋滞重要度と、実施形態4で説明した手法により得られるボトルネック箇所とを利用して、交通渋滞の発生原因を分析する構成例について説明する。
【0099】
図21は、本実施形態7に係る交通システムの構成図である。本実施形態7における交通システムは、交通渋滞分析装置100とサーバ2100を有する。交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて、記憶装置103内にボトルネックリスト2140と地図データ2150を格納している。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0100】
ボトルネックリスト2140は、ボトルネック検出部1301によって検出されたボトルネックノードの一覧を保持する。地図データ2150は、サーバ2100が画面表示する交通路の地図情報を保持する。
【0101】
サーバ2100は、交通行動推定装置100が提供する機能を利用して交通渋滞を分析するための端末であり、プロセッサ2101、メモリ2110、記憶装置2120、表示部2130を備える。これらはバスによって互いに接続される。
【0102】
プロセッサ2101は、メモリ2110が格納している各プログラムを実行する。以下では記載の便宜上、各プログラムを動作主体として説明する。メモリ2110は、GUIプログラム2111とデータ通信プログラム2112を格納している。
【0103】
データ通信プログラム2112は、交通渋滞分析装置100が保持している地図データ2150を取得して地図データ2122として記憶装置2120に格納する。GUIプログラム2111は、リンク混雑度データ120、交通ネットワークデータ130、渋滞リスト140、およびボトルネックリスト2140を交通渋滞分析装置100から取得して表示部2130上に表示し、画面上で交通状況を閲覧する機能を提供する。
【0104】
記憶装置2122は、交通渋滞分析装置100から取得した地図データ2122を格納する。表示部2130は、モニターやディスプレイなどによってデータを視覚的に表示する。
【0105】
図22は、ボトルネックリスト2140の構成とデータ例を示す図である。ボトルネックリスト2140は、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果を保持するデータであり、時刻2141、ノード2142、渋滞長2143、ボトルネックノード2144、ノード2145、最大渋滞長2146、平均渋滞長2147、最大渋滞時間2148、平均渋滞時間2149を含む。時刻2141〜渋滞長2143とボトルネックノード2144〜平均渋滞時間2149は、それぞれ異なるテーブル内に格納されている。ここでは渋滞の状態を示す指標として、渋滞長と渋滞時間を例示したが、例えば渋滞発生頻度などのように渋滞の状態を示す指標であれば、その他の指標を利用することもできる。
【0106】
図23は、ユーザがGUIプログラム2111を利用して交通渋滞の発生原因を分析定する際の画面イメージを示す図である。GUIプログラム2111は、リンク混雑度データ120、交通ネットワークデータ130、地図データ2150、および渋滞リスト140を渋滞重要度順に整列した渋滞リストを画面上に表示する。地図画面上では、渋滞重要度に応じてボトルネック箇所が強調されている。ユーザがノードを選択すると、当該ノードから発生する渋滞の渋滞長の時系列変化が画面左下に表示され、渋滞の発生時刻を閲覧することができる。ボトルネックリスト2140が保持している、渋滞時間などのその他の渋滞指標は、画面右上に表示されている。画面左下グラフの上部には、タイムスライダーが設けられており、ユーザは閲覧したい時刻の渋滞状況を渋滞長の時系列変化から選択することができる。これら情報により、ユーザは多角的に渋滞現象を把握することができる。
【0107】
<実施の形態7:まとめ>
以上のように、ユーザは本実施形態7に係る交通システムを利用して、交通渋滞分析装置100によって得られた渋滞重要度とボトルネック箇所に基づき、交通渋滞の発生原因を分析することができる。これにより、動的に変化する渋滞発生過程を時間的/空間的に把握することができる。したがって、詳細な交通調査を実施しなくても、渋滞解消策を検討することができる。
【0108】
<実施の形態8>
本発明の実施形態8では、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所に着目し、交通ネットワークを編集することにより交通流がどの程度改善されるかを評価する構成例について説明する。
【0109】
図24は、本実施形態8に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態8に係る交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて、交通ネットワーク編集部2401、交通流計算部2402を備える。記憶装置103は、ボトルネック交通量データ2410を備える。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0110】
交通渋滞分析装置100のユーザは、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果に基づき、対策すべき渋滞とボトルネック箇所を特定し、当該ボトルネック箇所に関して交通量調査を実施し、その結果をボトルネック交通量データ2410内にあらかじめ格納しておく。
【0111】
交通ネットワーク編集部2401は、交通ネットワークデータ130が記述している交通ネットワークに対して、新規リンク/ノードを追加し、既存リンク/ノードを削除し、または既存リンクの接続関係を仮想的に変更する。このとき、リンク長を設定できるようにしてもよいし、リンク/ノード間の整合性を自動的に保つようにしてもよい。ユーザはボトルネック交通量データ2410を参照して、交通量が大きい交通路に対して交通ネットワーク編集部2401の機能を用いて交通ネットワークを仮想的に変更する。
【0112】
交通流計算部2402は、交通ネットワーク編集部2401が新たに設定した交通ネットワークに基づき、交通量を計算する。交通量は、一般的に用いられる待ち行列モデルなどのシミュレーションを利用して計算すればよい。ユーザは交通流計算部2402による計算結果に基づき、交通ネットワークを変更することによる効果を検証する。
【0113】
<実施の形態8:まとめ>
以上のように、本実施形態8に係る交通渋滞分析装置100は、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、交通ネットワークを仮想的に編集し、その結果得られる交通流を計算する。これにより、交通ネットワークを変更した結果として交通流がどの程度改善されるかを事前に評価することができる。すなわち、広範囲な調査を実施することなく、都市内の交通渋滞を解消することができる。
【0114】
<実施の形態9>
本発明の実施形態9では、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、交通路の信号機を制御することにより交通流がどの程度改善されるかを評価する構成例について説明する。
【0115】
図25は、本実施形態9に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態9における交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて信号制御部2501を備える。記憶装置103は、信号データ2520を格納している。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0116】
信号制御部2501は、信号データ2520が記述している信号機のサイクル長、青点灯時間、などの信号パラメータを仮想的に設定する。サイクル長とは、ある方向に提示される信号が青になった時刻から次に青になるまでの時間間隔である。青点灯時間とは、青信号が点灯する時間長である。
【0117】
交通流計算部2402は、信号制御部2501が設定した信号パラメータに基づき、交通量を計算する。交通量は、一般的に用いられる待ち行列モデルなどのシミュレーションを利用して計算すればよい。計算結果は記憶装置103上の適当な領域に格納する。
【0118】
実施形態8と同様に、交通渋滞分析装置100のユーザは、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果に基づき、対策すべき渋滞とボトルネック箇所を特定し、当該ボトルネック箇所に関して交通量調査を実施し、ボトルネック交通量データ2410をあらかじめ生成しておく。また、当該ボトルネック箇所の現状の信号パラメータを信号データ2520として格納しておく。
【0119】
<実施の形態9:まとめ>
以上のように、本実施形態9に係る交通渋滞分析装置100は、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、信号制御を仮想的に実施し、その結果として交通流がどの程度改善するかを評価することができる。これにより、広範囲な調査を実施することなく、都市内の交通渋滞を解消することができる。
【0120】
<実施の形態10>
本発明の実施形態10では、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、交通路の交差点を拡張することにより交通流がどの程度改善されるかを評価する構成例について説明する。
【0121】
図26は、本実施形態10に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態10における交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて交差点拡張部2601を備える。記憶装置103は、交差点構造データ2610を格納している。
【0122】
交差点拡張部2601は、交通ネットワークデータ130が記述している交通路の交差点における交通容量を拡張するように、交通ネットワークを仮想的に変更する。例えば、交差点の車線数を拡張する、右左折専用レーンを設置する、などの変更が考えられる。
【0123】
交差点構造データ2610は、交差点の車線数、右左折専用レーンの位置、などのような交差点の交通容量を規定する構造に関する現在のパラメータを保持する。
【0124】
実施形態8と同様に、交通渋滞分析装置100のユーザは、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果に基づき、対策すべき渋滞とボトルネック箇所を特定し、当該ボトルネック箇所に関して交通量調査を実施し、ボトルネック交通量データ2410をあらかじめ生成しておく。また、当該ボトルネック箇所の現状の交差点パラメータを交差点構造データ2610として格納しておく。交通流計算部2402は、設定された交通量と交差点パラメータに基づき、交通量を計算する。
【0125】
<実施の形態10:まとめ>
以上のように、本実施形態10に係る交通渋滞分析装置100は、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、交差点を仮想的に拡張し、その結果として交通流がどの程度改善するかを評価することができる。これにより、広範囲な調査を実施することなく、都市内の交通渋滞を解消することができる。
【0126】
<実施の形態11>
本発明の実施形態11では、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所の近傍について、交通需要を時間的に分散することにより交通流がどの程度改善されるかを評価する構成例について説明する。
【0127】
図27は、本実施形態11に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態11における交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて交通需要分散部2701を備える。記憶装置103は、ODデータ1010(実施形態3で説明したものと同様のデータ)、目的別交通量データ2710を格納している。記載の便宜上、一部の構成については省略した。
【0128】
交通需要分散部2701は、ODデータ1010と目的別交通量2710を用いて、各交通路における交通量のピーク時刻を仮想的に設定する。これは例えば、オフピーク通勤を実施することによって、通勤交通量のピーク時刻をシフトさせるような状況を想定したものである。
【0129】
目的別交通量データ2710は、都市もしくはゾーン毎の交通量と、目的別の交通量の割合とを保持する。目的別交通量データ2710の詳細については後述する。
【0130】
図28は、目的別交通量データ2710の構成とデータ例を表す図である。目的別交通量データ2710は、ゾーン2711、時間帯2712、交通量2713、目的別割合2714を含む。ゾーン2711は、ノードを包含するより広範囲の地域(ゾーンと呼ぶ)のIDを保持する。これらのデータは、例えば交通利用者に対するアンケート調査によって取得することができる。
【0131】
実施形態8と同様に、交通渋滞分析装置100のユーザは、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果に基づき、対策すべき渋滞とボトルネック箇所を特定し、当該ボトルネック箇所に関して交通量調査を実施し、ボトルネック交通量データ2410をあらかじめ生成しておく。交通需要分散部2701は、当該ボトルネック箇所周辺の交通需要のピーク時刻を仮想的に分散させる。交通流計算部2402は、ピーク時刻を分散させた交通需要に基づき、交通量を計算する。
【0132】
<実施の形態11:まとめ>
以上のように、本実施形態11に係る交通渋滞分析装置100は、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、交通需要のピークを仮想的に分散させ、その結果として交通流がどの程度するかを評価することができる。これにより、広範囲な調査を実施することなく、都市内の交通渋滞を解消することができる。例えば法令などによって交通量のピーク時刻を分散させることができる場合には、本実施形態11に係る構成を効果的に用いることができる。
【0133】
<実施の形態12>
本発明の実施形態12では、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所の近傍において、道路以外の交通ネットワークを変更することにより交通流がどの程度改善されるかを評価する構成例について説明する。
【0134】
図29は、本実施形態12に係る交通渋滞分析装置100の構成図である。本実施形態12に係る交通渋滞分析装置100は、実施形態4で説明した構成に加えて、交通ネットワーク編集部2401(実施形態8で説明したものと同様の機能部)、多種交通流計算部2902を備える。記憶装置103は、ODデータ1010(実施形態3で説明したものと同様のデータ)、交通機関分担率データ2910を格納している。
【0135】
多種交通流計算部2902は、交通ネットワーク編集部2401が新たに設定した交通ネットワークに基づき、ODデータ1010と交通機関分担率2910を用いて各交通手段に対する需要量を推計する。さらに、各交通手段について交通流計算部2402と同様の手法により交通量を計算する。
【0136】
交通機関分担率データ2910は、都市もしくはゾーン毎に、交通利用者が利用している各交通機関の割合を保持する。交通機関分担率データ2910の詳細は後述する。
【0137】
図30は、交通機関分担率データ2910の構成とデータ例を表す図である。交通機関分担率データ2910は、ゾーン2911と交通機関分担率2912を含む。これらのデータは、例えば交通利用者に対するアンケート調査によって取得してもよいし、その他の手段で取得してもよい。
【0138】
実施形態8と同様に、交通渋滞分析装置100のユーザは、渋滞重要度算出部105とボトルネック検出部1301の処理結果に基づき、対策すべき渋滞とボトルネック箇所を特定し、当該ボトルネック箇所に関して交通量調査を実施し、ボトルネック交通量データ2410をあらかじめ生成しておく。交通ネットワーク編集部2401は、交通ネットワークを仮想的に変更する。多種交通流計算部2902は、変更された交通ネットワークと交通機関分担率データ2901とODデータ1010に基づき、交通量を計算する。
【0139】
<実施の形態12:まとめ>
以上のように、本実施形態12に係る交通渋滞分析装置100は、重要度の高い渋滞のボトルネック箇所について、複数の交通手段が利用されることを前提として、交通流の改善状況を評価することができる。これにより、広範囲な調査を実施することなく、都市内の交通渋滞を解消することができる。
【0140】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【0141】
上記各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。