(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図8に示すように形成された上方の凹部103aは、隣り合う凸部105よりも鉛直方向で下方に位置するので、水が溜まってしまう場合があった。そして、寒冷地等の過酷な環境では溜まった水が凍ってしまい、当該負圧倍力装置の作動に支障をきたす場合があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、強度を確保したまま軽量化を達成すると共に、過酷な環境でも安定して作動することが可能な倍力装置及びこれを用いたブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本実施形態にかかる倍力装置は、
フロントシェルと、
前記フロントシェルに連結されるリヤシェルと、
入力が加えられる入力軸と、
前記入力を倍力した出力を出力する出力軸と、
前記リヤシェルに取り付けられ前記リヤシェルを車両側に取り付ける車両締結部材と、
を少なくとも備え、
前記リヤシェルは、
環状に形成した周壁部と、
前記周壁部の内周側に向けて円錐面状に形成される傾斜部と、
前記傾斜部の内周側に形成される平面部と、
前記平面部の内周側で前記フロントシェルの反対側に延出する筒部と、
を有し、
前記平面部は、
前記筒部の中心に対して対称な第1位置関係で前記車両締結部材を支持可能な第1支持部と、
前記筒部の中心に対して対称であって、前記第1位置関係とは異なる第2位置関係で前記車両締結部材を支持可能な第2支持部と、
を有し、
前記平面部と前記傾斜部の境界は、鉛直方向で最も高い位置から水平方向で左右それぞれに最も離れた位置まで、鉛直方向で常に下方へ向かう
ことを特徴とする。
【0008】
また、本実施形態にかかる倍力装置は、
フロントシェルと、
前記フロントシェルに連結されるリヤシェルと、
入力が加えられる入力軸と、
前記入力を倍力した出力を出力する出力軸と、
前記リヤシェルに取り付けられ前記リヤシェルを車両側に取り付ける車両締結部材と、
を少なくとも備え、
前記リヤシェルは、
環状に形成した周壁部と、
前記周壁部の内周側に向けて円錐面状に形成される傾斜部と、
前記傾斜部の内周側に形成される平面部と、
前記平面部の内周側で前記フロントシェルの反対側に延出する筒部と、
を有し、
前記平面部は、
前記筒部の中心に対して対称な第1位置関係で前記車両締結部材を支持可能な第1支持部と、
前記筒部の中心に対して対称であって、前記第1位置関係とは異なる第2位置関係で前記車両締結部材を支持可能な第2支持部と、
を有し、
前記平面部と前記傾斜部の境界は、鉛直方向で最も高い位置から水平方向で左右それぞれに最も離れた位置まで、
鉛直方向で常に下方へ向かう第1境界部と、
水平方向の同じ高さを保持する第2境界部と、
を有する
ことを特徴とする。
【0009】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
前記平面部には、
前記第1支持部を含み前記傾斜部側へ突出する第1支持領域と、
前記第2支持部を含み前記傾斜部側へ突出する第2支持領域と、
が形成され、
前記第1支持領域と前記第2支持領域は、前記筒部の中心と同心の円の周方向に交互に形成される
ことを特徴とする。
【0010】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
前記平面部と前記傾斜部の境界は、直線と曲線が交互に配置されて形成される
ことを特徴とする。
【0011】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
前記第1支持部は、長方形を形成し、
前記第2支持部は、正方形を形成する
ことを特徴とする。
【0012】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
前記傾斜部は、前記フロントシェル側に窪んだ凹部を有する
ことを特徴とする。
【0013】
さらに、本実施形態にかかるブレーキシステムは、
ブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルのペダル踏力を倍力して出力するブレーキ倍力装置と、
前記ブレーキ倍力装置の出力で作動して液圧を発生するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダで発生した液圧でブレーキ力を発生して車輪にブレーキをかけるブレーキシリンダと、
を少なくとも備えるブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキ倍力装置は、前記倍力装置である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前述の課題を解決するために、本実施形態にかかる倍力装置では、
平面部は、
筒部の中心に対して対称な第1位置関係で車両締結部材を支持可能な第1支持部と、
筒部の中心に対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係で車両締結部材を支持可能な第2支持部と、
を有し、
前記平面部と前記傾斜部の境界は、鉛直方向で最も高い位置から水平方向で左右それぞれに最も離れた位置まで、鉛直方向で常に下方へ向かうので、
強度を確保したまま軽量化を達成すると共に、過酷な環境でも安定して作動させることが可能となる。また、1つのリヤシェルに対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェルを規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。また、平面部と傾斜部の境界は、鉛直方向で最も高い位置から水平方向で左右それぞれに最も離れた位置まで、鉛直方向で常に下方へ向かうので、水分が平面部と傾斜部の境界に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界に水分が溜まることがなくなり、リヤシェルの錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0015】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
平面部は、
筒部の中心に対して対称な第1位置関係で車両締結部材を支持可能な第1支持部と、
筒部の中心に対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係で車両締結部材を支持可能な第2支持部と、
を有し、
平面部と傾斜部の境界は、鉛直方向で最も高い位置から水平方向で左右それぞれに最も離れた位置まで、
鉛直方向で常に下方へ向かう第1境界部と、
水平方向の同じ高さを保持する第2境界部と、
を有するので、
強度を確保したまま軽量化を達成すると共に、過酷な環境でも安定して作動させることが可能となる。また、1つのリヤシェルに対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェルを規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。また、第1境界部と第2境界部を形成することで、水分が平面部と傾斜部の境界に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界に水分が溜まることがなくなり、リヤシェルの錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0016】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
平面部には、
第1支持部を含み傾斜部側へ突出する第1支持領域と、
第2支持部を含み傾斜部側へ突出する第2支持領域と、
が形成され、
第1支持領域と第2支持領域は、筒部の中心と同心の円の周方向に交互に形成されるので、
リヤシェル3の耐久性が向上すると共に、リヤシェル3を軽量化することが可能となる。
【0017】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
平面部と傾斜部の境界は、直線と曲線が交互に配置されて形成されるので、
設計の自由度が高くなり、より耐久性の向上と軽量化を実現させることが可能となる。
【0018】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
第1支持部は、長方形を形成し、
第2支持部は、正方形を形成するので、
位置関係を異なる形状で形成することができるので、設計の自由度が高くなる。
【0019】
また、本実施形態にかかる倍力装置では、
傾斜部は、フロントシェル側に窪んだ凹部を有するので、
リヤシェル3の強度をより高めることが可能となる。
【0020】
さらに、本実施形態にかかるブレーキシステムは、ブレーキペダルと、ブレーキペダルのペダル踏力を倍力して出力するブレーキ倍力装置と、ブレーキ倍力装置の出力で作動して液圧を発生するマスタシリンダと、マスタシリンダで発生した液圧でブレーキ力を発生して車輪にブレーキをかけるブレーキシリンダと、を少なくとも備えるブレーキシステムにおいて、ブレーキ倍力装置は倍力装置なので、
作動応答性を向上させると共に、軽量化を達成し、コストを低く抑えるブレーキシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の明細書の記載において、前後方向の関係は、倍力装置の作動時に入力軸が移動する方向を「前」、作動解除時に入力軸が戻る方向を「後」とする。また、以下の説明において、「前」および「後」はそれぞれ各図において「左」および「右」を示す。
【0023】
図1は、本実施形態の倍力装置の一例としての負圧倍力装置1を示す。
【0024】
図1において、1は負圧倍力装置、2はフロントシェル、3はリヤシェル、4はバルブボディ、5はバルブボディ4に取り付けられたパワーピストン部材6とバルブボディ4および両シェル2,3間に設けられ弾性変形の富む部材で形成されたダイヤフラム7とからなるパワーピストン、8は両シェル2,3内の空間をパワーピストン5で気密に区画された2つの室の一方で、通常時負圧が導入される定圧室、9は前述の2つの室の他方で、負圧倍力装置1の作動時大気圧が導入される変圧室、10は弁プランジャ、11は図示しない作動部材であるブレーキペダルに連結され、かつ弁プランジャ10を作動制御する入力軸、12はバルブボディ4に設けられた弁体、13はバルブボディ4と弁体12とで構成される負圧弁、14は弁プランジャ10と弁体12とで構成される大気弁、15はバルブボディ4内に形成された大気流入通路、16は定圧室8と変圧室9とを連通する負圧導入通路、17はバルブボディ4に対する弁プランジャ10の相対移動を、バルブボディ4に形成されたキー孔の軸方向幅により規定される所定量に規制し、かつバルブボディ4および弁プランジャ10の各後退限を規定するキー部材、18は反力手段の一部を構成する間隔部材、19は反力手段の他部を構成するリアクションディスク、20は出力軸、21はパワーピストン5およびバルブボディ4を非作動位置に戻すリターンスプリング、22はフロントシェル2とリヤシェル3とを連結して補強する車両締結部材の一例としてのタイロッド、23は負圧導入口である。
【0025】
本実施形態の負圧倍力装置1は、フロントシェル2と、フロントシェル2に連結されるリヤシェル3と、入力が加えられる入力軸11と、リヤシェル3に対して進退自在に配設されたバルブボディ4と、バルブボディ4に設けられて、フロントシェル2とリヤシェル3との空間を負圧が導入される定圧室8と作動時に大気が導入される変圧室9とに区画するパワーピストン5と、バルブボディ4に連結されて、パワーピストン5により発生されて入力を倍力した出力を出力する出力軸20と、入力軸11に連結されかつバルブボディ4内に摺動自在に配設された弁プランジャ10と、弁プランジャ10の作動により定圧室8と変圧室9との間の連通または遮断を制御する負圧弁13と、変圧室8と少なくとも大気との間を遮断または連通を制御する大気弁14と、パワーピストン5を貫通してフロントシェル2とリヤシェル3とを連結するタイロッド22と、を備える。
【0026】
図2は、第1実施形態のリヤシェル3の正面図を示す。
図3は、第1実施形態のリヤシェル3の側面図を示す。
図4は、
図2のA−A断面図を示す。
【0027】
第1実施形態のリヤシェル3は、帯状の部材を内周側と外周側を有する環状に形成した周壁部31と、周壁部31の内周側に向けて周壁部31から離間する方向に斜めに立ち上がり円錐面状に形成される傾斜部32と、傾斜部32の内周側に形成される平面部33と、平面部33の内周側でフロントシェルの反対側に延出する筒部34と、を有する。これらの、周壁部31、傾斜部32、平面部33、及び筒部34は、一体に形成される。
【0028】
周壁部31には、フロントシェル2と連結される折り返し部31aが形成される。折り返し部31aは、
図4に示すように、周壁部31の端部を反対方向に折り返し、傾斜部32とは反対側に直角に折り曲げた後、再び周壁部31の端部方向に折り曲げられる。
【0029】
傾斜部32には、
図4に示すように、フロントシェル側に略半球状に窪んだ凹部32aが形成される。凹部32aは、平面部33の外側に隣接して複数箇所に形成される。凹部32aを形成することで、リヤシェル3の強度を高めることが可能となる。
【0030】
平面部33には、第1支持部33aとしての孔が形成される。第1支持部33aには、タイロッド22が挿通される。リヤシェル3は、第1支持部33aから後方に突出するタイロッド22のボルト部分によって、図示しない車体に固着される。
【0031】
筒部34には、
図1に示すように、バルブボディ4が挿通される。
【0032】
次に、第1実施形態のリヤシェル3の平面部33について説明する。
【0033】
図5は、第1実施形態のリヤシェル3の平面部33の概略図を示す。
【0034】
平面部33は、筒部34の中心Oに対して対称な第1位置関係で4本のタイロッド22を支持可能な第1支持部33aと、筒部34の中心Oに対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係で4本のタイロッド22を支持可能な第2支持部33bと、を有する。第1支持部33aと第2支持部33bは、設置される車両に応じてどちらか一方に孔が形成されて、タイロッド22が挿通される。
【0035】
第1位置関係と第2位置関係は、車両毎の規格寸法にあわせて決定される。第1実施形態では、第1位置関係は、長方形であり、第2位置関係は、正方形であるが、他の実施形態として、どちらも正方形又は長方形としてもよい。また、タイロッド22は、4本に限らず、何本でもよく、この場合の位置関係も本数に応じて変更してもよい。
【0036】
このように、タイロッド22を挿通可能な箇所を複数の位置に備えることにより、1つのリヤシェル3に対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェル3を規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。
【0037】
第1実施形態の平面部33には、第1支持部33aを含み傾斜部32側へ突出する第1支持領域331と、第2支持部33bを含み傾斜部32側へ突出する第2支持領域332と、が形成される。第1支持領域33aと第2支持領域33bは、筒部34の中心と同心の円の周方向に交互に形成される。
【0038】
このように、第1支持領域33aと第2支持領域33bを形成することで、リヤシェル3の耐久性が向上すると共に、リヤシェル3を軽量化することが可能となる。
【0039】
平面部33と傾斜部32の境界36は、鉛直方向で最も高い位置36aから水平方向で左右それぞれに最も離れた位置36b
1,36b
2まで、鉛直方向で常に下方へ向かう第1境界部361と、水平方向の同じ高さを保持する第2境界部362と、を有する。また、第1実施形態の平面部33と傾斜部32の境界36は、直線と曲線が交互に配置されて形成される。
【0040】
このように、第1境界部361と第2境界部362を形成することで、水分が平面部33と傾斜部32の境界36に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界36に水分が溜まることがなくなり、リヤシェル3の錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0041】
また、第1実施形態では、直線と曲線が交互に配置することで平面部33と傾斜部32の境界36を形成するので、設計の自由度が高くなり、より耐久性の向上と軽量化を実現させることが可能となる。
【0042】
次に、第2実施形態のリヤシェル3の平面部33について説明する。
【0043】
図6は、第2実施形態のリヤシェル3の平面部33の概略図を示す。
【0044】
筒部34の中心Oに対して対称な第1位置関係で4本のタイロッド22を支持可能な第1支持部33aと、筒部34の中心Oに対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係で4本のタイロッド22を支持可能な第2支持部33bと、を有する。第1支持部33aと第2支持部33bは、設置される車両に応じてどちらか一方に孔が形成されて、タイロッド22が挿通される。
【0045】
第1位置関係と第2位置関係は、車両毎の規格寸法にあわせて決定される。第2実施形態では、第1位置関係は、長方形であり、第2位置関係は、正方形であるが、他の実施形態として、どちらも正方形又は長方形としてもよい。また、タイロッド22は、4本に限らず、何本でもよく、この場合の位置関係も本数に応じて変更してもよい。
【0046】
このように、タイロッド22を挿通可能な箇所を複数の位置に備えることにより、1つのリヤシェル3に対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェル3を規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。また、位置関係を異なる形状で形成することができるので、設計の自由度が高くなる。
【0047】
第2実施形態の平面部33には、複数の段部333が形成される。段部333は、平面部33に対して凹平面又は凸平面を形成することが好ましい。それぞれの段部333は、第1支持部33aと第2支持部33bの間に形成される。
【0048】
このように、段部333を形成することで、リヤシェル3の耐久性が向上すると共に、リヤシェル3を軽量化することが可能となる。
【0049】
第1実施形態の平面部33と傾斜部32の境界36は、鉛直方向で最も高い位置36aから水平方向で左右それぞれに最も離れた位置36b
1,36b
2まで、鉛直方向で常に下方へ向かう第1境界部361と、水平方向の同じ高さを保持する第2境界部362と、を有する。また、第2実施形態の平面部33と傾斜部32の境界36は、円形に形成される。なお、円形に限らず、楕円形等でもよい。
【0050】
このように、第1境界部361と第2境界部362を形成することで、水分が平面部33と傾斜部32の境界36に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界36に水分が溜まることがなくなり、リヤシェル3の錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0051】
また、境界を円形又は楕円形等で平面部33と傾斜部32の境界36を形成するので、容易に加工することが可能となる。
【0052】
次に、この例の負圧倍力装置をブレーキシステムのブレーキ倍力装置として用いた場合の作動について説明する。
【0053】
図7は、本実施形態の負圧倍力装置1が用いられる一例としてのブレーキシステムを模式的に示す。
【0054】
ブレーキ非作動時には、負圧倍力装置1は、入力軸11が後退位置となっている。また、通常時定圧室18には負圧導入口23を通して所定の負圧が導入されている。そして、負圧倍力装置1の非作動状態では、負圧弁13が開いているとともに大気弁14が閉じている。したがって、定圧室8と変圧室9とが負圧導入通路16を介して連通しているとともに、変圧室9は大気と遮断されている。これにより、変圧室9にも負圧が導入されている。
【0055】
ブレーキペダル25が踏み込まれると、入力軸11が前進するとともに弁プランジャ10が前進する。すると、負圧弁13が閉じるとともに大気弁14が開く。これにより、定圧室8と変圧室9とが遮断されるとともに、変圧室9は大気導入通路15を介して連通する。したがって、大気(空気)が変圧室9に導入され、変圧室9と定圧室8とに圧力差が生じる。この圧力差により、パワーピストン5がリターンスプリング21の付勢力に抗して前進し、バルブボディ4、リアクションディスク19、およびプッシュロッド20が前進し、負圧倍力装置1が作動する。プッシュロッド20の前進により、マスタシリンダ26の図示しないピストンが作動して液圧を発生し、この液圧によりブレーキシリンダ27がブレーキ力を発生して、各車輪28にブレーキがかけられる。
【0056】
ブレーキペダル25の踏み込みを解除すると、入力軸11が後退して、負圧弁13が開くとともに大気弁14が閉じた状態となる。すると、変圧室9に導入された空気が負圧弁13および負圧導入通路16を介して定圧室8に流動し、更に定圧室8に流動した空気は負圧導入口22を通して定圧室8から流出する。これにより、変圧室9の圧力が低下し、パワーピストン5、プッシュロッド20、バルブボディ4、リアクションディスク19、間隔部材18、および弁プランジャ10がリターンスプリング21の付勢力で後退する。すると、マスタシリンダ26のピストンも後退し、マスタシリンダ26の液圧が次第に低下して消滅する。そして、キー部材17により、バルブボディ4および弁プランジャ10がそれ後退限位置に規制され、負圧倍力装置1は非作動状態となり、各車輪28のブレーキが解除する。
【0057】
なお、本発明にかかる倍力装置は、ブレーキ装置に限定されることはなく、クラッチ装置にも適用することができる。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、リヤシェル3は、環状に形成した周壁部31と、周壁部31の内周側に向けて円錐面状に形成される傾斜部32と、傾斜部32の内周側に形成される平面部33と、平面部33の内周側でフロントシェル2の反対側に延出する筒部34と、を有し、平面部33は、筒部34の中心Oに対して対称な第1位置関係でタイロッド22を支持可能な第1支持部33aと、筒部34の中心Oに対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係でタイロッド22を支持可能な第2支持部33bと、を有し、平面部33と傾斜部32の境界36は、鉛直方向で最も高い位置36aから水平方向で左右それぞれに最も離れた位置36b,36cまで、鉛直方向で常に下方へ向かう。
【0059】
したがって、リヤシェル3の強度を確保したまま軽量化を達成すると共に、負圧倍力装置1を過酷な環境でも安定して作動させることが可能となる。また、1つのリヤシェル3に対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェル3を規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。また、平面部33と傾斜部32の境界36は、鉛直方向で最も高い位置36aから水平方向で左右それぞれに最も離れた位置36b,36cまで、鉛直方向で常に下方へ向かうので、水分が平面部33と傾斜部32の境界36に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界36に水分が溜まることがなくなり、リヤシェル3の錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、リヤシェル3は、環状に形成した周壁部31と、周壁部31の内周側に向けて円錐面状に形成される傾斜部32と、傾斜部32の内周側に形成される平面部33と、平面部33の内周側でフロントシェル2の反対側に延出する筒部34と、を有し、平面部33は、筒部34の中心Oに対して対称な第1位置関係でタイロッド22を支持可能な第1支持部33aと、筒部34の中心Oに対して対称であって、第1位置関係とは異なる第2位置関係でタイロッド22を支持可能な第2支持部33bと、を有し、平面部33と傾斜部32の境界36は、鉛直方向で最も高い位置36aから水平方向で左右それぞれに最も離れた位置36b,36cまで、鉛直方向で常に下方へ向かう第1境界部361と、水平方向の同じ高さを保持する第2境界部362と、を有する。
【0061】
したがって、リヤシェル3の強度を確保したまま軽量化を達成すると共に、負圧倍力装置1を過酷な環境でも安定して作動させることが可能となる。また、1つのリヤシェル3に対して車両毎の規格寸法にあわせてどちらか一方の位置関係で孔を形成するので、1つのリヤシェル3を規格の異なる複数の車両に使用することができ、部品管理点数を削減することが可能となる。また、第1境界部361と第2境界部362を形成することで、水分が平面部33と傾斜部32の境界36に沿って、下方へ流れ落ちることとなり、境界36に水分が溜まることがなくなり、リヤシェル3の錆び又は破損を抑制することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、平面部33には、第1支持部33aを含み傾斜部32側へ突出する第1支持領域331と、第2支持部33bを含み傾斜部32側へ突出する第2支持領域332と、が形成され、第1支持領域331と第2支持領域332は、筒部34の中心Oと同心の円の周方向に交互に形成されるので、リヤシェル3の耐久性が向上すると共に、リヤシェル3を軽量化することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、平面部33と傾斜部32の境界36は、直線と曲線が交互に配置されて形成されるので、設計の自由度が高くなり、より耐久性の向上と軽量化を実現させることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、第1支持部33aは、長方形を形成し、第2支持部33bは、正方形を形成するので、位置関係を異なる形状で形成することができるので、設計の自由度が高くなる。
【0065】
また、本実施形態によれば、負圧倍力装置1では、傾斜部32は、フロントシェル2側に窪んだ凹部32aを有するので、リヤシェル3の強度をより高めることが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態にかかるブレーキシステムは、ブレーキペダル25と、ブレーキペダル25のペダル踏力を倍力して出力するブレーキ倍力装置1と、ブレーキ倍力装置1の出力で作動して液圧を発生するマスタシリンダ26と、マスタシリンダ26で発生した液圧でブレーキ力を発生して車輪28にブレーキをかけるブレーキシリンダ27と、を少なくとも備えるブレーキシステムにおいて、ブレーキ倍力装置1は本実施形態の負圧倍力装置1なので、作動応答性を向上させると共に、軽量化を達成し、コストを低く抑えることができるブレーキシステムを提供することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、発明の範囲を超えない限り、それぞれの実施形態の構成を適宜変更した構成及びそれぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせた構成の実施形態も本発明の範疇となるものである。
【0068】
例えば、本実施形態では、倍力装置の一例として負圧倍力装置について説明したが、正圧倍力装置に適用してもよい。