【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
1:正極の製造
正極活物質としてLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(日本化学工業社製)と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製)とを、90:6:4の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分40質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して正極とした。
【0054】
2:負極の製造
負極活物質としてグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製)及びグラファイト粉末(TIMCAL社製)と、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液を、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合し、分散溶媒として水を固形分45質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して負極とした。
【0055】
3:非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPF
6を12.1質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加、混合して非水電解液を調製した。
【0056】
4:試験用電池の作製
上述のようにして作製した正極と負極とを、ポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、アルミニウム箔(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正負極の端子を突設させながら挿入した後、上述のようにして調製した非水電解液を袋内に注入し、真空封止を行って、シート状リチウムイオン二次電池を作製した。
【0057】
5:試験用電池の評価
5−1:初充放電
得られたシート状電池を、25℃の環境下、0.05Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後(満充電時の正極電位=4.4V)、4.35Vの定電圧で2時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを3サイクル繰り返した。なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.05Cとはその1/20の電流値を表す。
【0058】
5−2:サイクル試験
初充放電後の電池を、50℃の環境下、1Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後、4.35Vの定電圧で1時間充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。上記一連の充放電を1サイクルとして、これを100サイクル実施し、100サイクル後容量維持率を測定した。その結果、100サイクル後容量維持率は90%と高かった。なお、100サイクル後容量維持率は、以下の式で求めた。
100サイクル後容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0059】
5−3:ガス発生試験
初充放電後の電池を、水浴中に浸して体積を測定した後、50℃の環境下、1Cの定電流で4.35Vの電圧に達するまで充電後、4.35Vの定電圧で一週間連続充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。
電池を室温まで冷却させた後、水浴中に浸して体積を測定し、連続充電前後の電池の体積変化から、連続充電後発生ガス量を求めた。その結果、連続充電後発生ガス量は0.17mLと少なかった。
【0060】
[実施例2]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレン(2−プロピニル)フォスフェートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は89%と高く、連続充電後発生ガス量は0.21mLと少なかった。
【0061】
[実施例3]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレン(3−ブテニル)フォスフェートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は90%と高く、連続充電後発生ガス量は0.17mLと少なかった。
【0062】
[実施例4]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレンヘキシルホスホネートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は88%と高く、連続充電後発生ガス量は0.27mLと少なかった。
【0063】
[実施例5]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレンオクチルフォスフェートを用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は89%と高く、連続充電後発生ガス量は0.23mLと少なかった。
【0064】
[実施例6]
実施例1の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiBF
4を0.5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は91%と高く、連続充電後発生ガス量は0.17mLと少なかった。
【0065】
[実施例7]
実施例1の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiPO
2F
2を0.5質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は92%と高く、連続充電後発生ガス量は0.15mLと少なかった。
【0066】
[実施例8]
実施例1の非水電解液の調製において、LiB(C
2O
4)
2の代わりに、LiPF
2(C
2O
4)
2を用いた以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は89%と高く、連続充電後発生ガス量は0.19mLと少なかった。
【0067】
[実施例9]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、1質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は88%と高く、連続充電後発生ガス量は0.15mLと少なかった。
【0068】
[実施例10]
実施例1の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、3質量%添加した以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は86%と高く、連続充電後発生ガス量は0.11mLと少なかった。
【0069】
[比較例1]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は76%と低く、連続充電後発生ガス量は0.54mLと多かった。
【0070】
[比較例2]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は88%と低く、連続充電後発生ガス量は0.34mLと多かった。
【0071】
[比較例3]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPF
6を12.1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は82%と低く、連続充電後発生ガス量は0.28mLと多かった。
【0072】
[比較例4]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%と、LiBF
4を0.5質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は84%と低く、連続充電後発生ガス量は0.32mLと多かった。
【0073】
[比較例5]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%と、LiPO
2F
2を0.5質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は88%と低く、連続充電後発生ガス量は0.28mLと多かった。
【0074】
[比較例6]
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)と2,2,2−トリフルオロエチルエチレンフォスフェートを体積比42.5:42.5:15で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は79%と低く、連続充電後発生ガス量は0.31mLと多かった。
【0075】
[比較例7]
2−メトキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン−2−オキサイドとジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例1の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例1と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は58%と非常に低く、連続充電後発生ガス量は0.21mLと少なかった。
【0076】
以上の実施例1〜10、及び比較例1〜7で得られた結果を、表1に示す。表1から、実施例1〜10のリチウムイオン二次電池はいずれも、環状リン酸エステル(A)を含まない非水電解液を用いた比較例2、4、及び5、シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例3と比して、サイクル特性が向上し、ガス発生量が低減していることが明らかとなった。以上より、本実施形態の非水電解液の上記効果は、非水電解液中に環状リン酸エステル(A)とシュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を共存させた場合に、特有の効果であることが示された。
【0077】
また、実施例1〜10のリチウムイオン二次電池はいずれも、特許文献3に記載されている2,2,2−トリフルオロエチルエチレンフォスフェートを非水溶媒に対して15体積%含有させた比較例6、特許文献4に記載されている2−メトキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン−2−オキサイドを非水溶媒に対して50体積%含有させた比較例7と比して、サイクル特性が大幅に向上し、ガス発生量が低減していることが明確となった。
【0078】
【表1】
【0079】
[実施例11]
1:正極活物質の製造
遷移金属元素のモル比として1:3の割合の硫酸ニッケルと硫酸マンガンとを、水に溶解し、金属イオン濃度の総和が2mol/Lになるようにニッケル−マンガン混合水溶液を調製した。次いで、このニッケル−マンガン混合水溶液を、70℃に加温した濃度2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液1650mL中に、12.5mL/minの添加速度で120分間滴下した。なお、滴下時には、撹拌の下、200mL/minの流量の空気を水溶液中にバブリングしながら吹き込んだ。これにより析出物質が発生し、得られた析出物質を蒸留水で十分洗浄し、乾燥して、ニッケルマンガン化合物を得た。得られたニッケルマンガン化合物と粒径2μmの炭酸リチウムとを、リチウム:ニッケル:マンガンのモル比が1:0.5:1.5になるように秤量し、1時間乾式混合した後、得られた混合物を酸素雰囲気下において1000℃で5時間焼成し、LiNi
0.5Mn
1.5O
4で表される正極活物質を得た。
【0080】
2:正極の製造
上述のようにして得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製)とを、88:6:6の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを固形分40質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して正極とした。
【0081】
3:負極の製造
負極活物質としてのグラファイト粉末(大阪ガスケミカル社製)及びグラファイト粉末(TIMCAL社製)と、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、90:10:1.5:1.8の固形分質量比で混合し、分散溶媒として水を固形分45質量%となるように添加してさらに混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して負極とした。
【0082】
4:非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPF
6を12.1質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。
【0083】
5:試験用電池の作製
上述のようにして作製した正極と負極とを、ポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせた積層体を、アルミニウム箔(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正負極の端子を突設させながら挿入した後、上述のようにして調製した非水電解液を袋内に注入し、真空封止を行って、シート状リチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
6:試験用電池の評価
6−1:初充放電
得られたシート状電池を、25℃の環境下、0.05Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後(満充電時の正極電位=4.85V)、4.8Vの定電圧で2時間充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを3サイクル繰り返した。なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.05Cとはその1/20の電流値を表す。
【0085】
6−2:サイクル試験
初充放電後の電池を、50℃の環境下、1Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後、4.8Vの定電圧で1時間充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。上記一連の充放電を1サイクルとして、これを100サイクル実施し、100サイクル後容量維持率を測定した。その結果、100サイクル後容量維持率は74%と高かった。なお、100サイクル後容量維持率は、以下の式で求めた。
100サイクル後容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0086】
6−3:ガス発生試験
初充放電後の電池を、水浴中に浸して体積を測定した後、50℃の環境下、1Cの定電流で4.8Vの電圧に達するまで充電後、4.8Vの定電圧で一週間連続充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。
電池を室温まで冷却させた後、水浴中に浸して体積を測定し、連続充電前後の電池の体積変化から、連続充電後発生ガス量を求めた。その結果、連続充電後発生ガス量は1.16mLと少なかった。
【0087】
[実施例12]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレン(2−プロピニル)フォスフェートを用いた以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は70%と高く、連続充電後発生ガス量は1.23mLと少なかった。
【0088】
[実施例13]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレン(3−ブテニル)フォスフェートを用いた以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は76%と高く、連続充電後発生ガス量は1.14mLと少なかった。
【0089】
[実施例14]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレンヘキシルホスホネートを用いた以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は69%と高く、連続充電後発生ガス量は1.31mLと少なかった。
【0090】
[実施例15]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートの代わりに、エチレンオクチルフォスフェートを用いた以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は71%と高く、連続充電後発生ガス量は1.27mLと少なかった。
【0091】
[実施例16]
実施例11の非水電解液の調製において、混合溶媒に、さらにLiBF
4を0.5質量%添加した以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は75%と高く、連続充電後発生ガス量は1.15mLと少なかった。
【0092】
[実施例17]
実施例11の非水電解液の調製において、LiB(C
2O
4)
2の代わりに、LiPF
2(C
2O
4)
2を用いた以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は72%と高く、連続充電後発生ガス量は1.18mLと少なかった。
【0093】
[実施例18]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、1質量%添加した以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は73%と高く、連続充電後発生ガス量は1.09mLと少なかった。
【0094】
[実施例19]
実施例11の非水電解液の調製において、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%添加する代わりに、3質量%添加した以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は68%と高く、連続充電後発生ガス量は1.01mLと少なかった。
【0095】
[比較例8]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は32%と低く、連続充電後発生ガス量は4.32mLと多かった。
【0096】
[比較例9]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は64%と低く、連続充電後発生ガス量は2.62mLと多かった。
【0097】
[比較例10]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、エチレン(3−ブチニル)フォスフェートを0.3質量%と、LiPF
6を12.1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は52%と低く、連続充電後発生ガス量は1.38mLと多かった。
【0098】
[比較例11]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%と、LiBF
4を0.5質量%と、LiB(C
2O
4)
2を1質量%と、を添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は65%と低く、連続充電後発生ガス量は2.61mLと多かった。
【0099】
[比較例12]
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)と2,2,2−トリフルオロエチルエチレンフォスフェートを体積比42.5:42.5:15で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は50%と低く、連続充電後発生ガス量は1.32mLと多かった。
【0100】
[比較例13]
2−メトキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン−2−オキサイドとジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1で混合した混合溶媒に、LiPF
6を12.1質量%添加して非水電解液とした。実施例11の試験用電池の作製において、上記非水電解液を用いたこと以外、実施例11と同様にしてシート状電池を作製し、上記サイクル試験及びガス発生試験を行った。その結果、100サイクル後容量維持率は4%と非常に低く、連続充電後発生ガス量は2.21mLと多かった。
【0101】
以上の実施例11〜19、及び比較例8〜13で得られた結果を、表2に示す。表2から、実施例11〜19のリチウムイオン二次電池はいずれも、環状リン酸エステル(A)を含まない非水電解液を用いた比較例9及び11、シュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を含まない非水電解液を用いた比較例10と比して、サイクル特性が向上し、ガス発生量が大幅に低減していることが明らかとなった。以上より、本実施形態の効果は、非水電解液中に環状リン酸エステル(A)とシュウ酸構造を有するリチウム塩化合物(C)を共存させた場合に、特有の効果であることが示された。
【0102】
また、実施例11〜19のリチウムイオン二次電池はいずれも、特許文献3に記載されている2,2,2−トリフルオロエチルエチレンフォスフェートを非水溶媒に対して15体積%含有させた比較例12、特許文献4に記載されている2−メトキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォラン−2−オキサイドを非水溶媒に対して50体積%含有させた比較例13と比して、サイクル特性が大幅に向上し、ガス発生量が低減していることが明確となった。
【0103】
【表2】