(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両制御装置と携帯機を相互に無線通信可能として構成された車両制御システムであって、前記車両制御装置から無線送信された応答要求信号に基づいて前記携帯機が応答信号を無線送信し、前記車両制御装置に接続された車両受信機によって当該応答信号が無線受信されたことを条件の少なくとも一つとして当該車両制御装置が車両の所定機器を制御する車両制御システム、を介して前記所定機器を遠隔操作する車両遠隔操作システム、を構成するための車載中継機であって、
前記車両の内部に配置されると共に前記車両制御装置と通信可能に構成され、
当該車載中継機と共に前記車両遠隔操作システムを構成する携帯中継機であって、前記携帯機と通信可能な携帯中継機と通信可能に構成され、
前記車両制御装置から送信された前記応答要求信号を受信して前記携帯中継機に無線送信すると共に、前記携帯中継機から無線送信された前記応答信号を受信して前記車両制御装置に送信する送受信手段を備え、
前記送受信手段は、当該車載中継機以外の機器から送信されて前記車両受信機によって受信された電波に基づいて前記車両制御装置が前記応答信号を認識すること、を防止するためのマスク電波を、当該車両受信機に対して送信する、
車両遠隔操作システムの車載中継機。
前記送受信手段は、前記マスク電波を、少なくとも、前記車両制御装置から前記応答要求信号が送信される直前から、前記携帯中継機から無線送信された前記応答信号を前記車両制御装置に送信する直前まで、連続的に送信する。
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施の形態〕
以下に添付図面を参照して、この発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(概要)
最初に、本実施の形態に係る車両遠隔操作システムの概要について説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両遠隔操作システム1を車両制御システム100と共に示すブロック図である。
【0026】
「車両遠隔操作システム」1は、車両の所定機器を制御する車両制御システム100を介して、当該所定機器を遠隔操作するためのシステムである。ここで、「車両制御システム」100は、車両制御装置110と携帯機120とを相互に無線通信可能として構成されたシステムである。
【0027】
「車両制御装置」110は、車両の所定機器を制御するために車内に設置された装置であり、例えば、ECU(Engine Control Unit)に対してCAN(Controller Area Network)等を介して通信可能に有線接続された装置であり、あるいは、ECU自体である。この車両制御装置110には、「キーレス受信機」130が接続されている。このキーレス受信機130は、車両遠隔操作システム1が設置されていない状態において、携帯機120との相互間で無線通信を行う車両受信機であり、車両制御装置110に対して有線接続されている。
【0028】
「携帯機」120は、車両制御装置110を介して車両の所定機器を制御するために運転者が携帯することが可能なものであり、いわゆるリモコンキーである。ここで、「所定機器」の具体的な種類や、この所定機器に対する具体的な制御内容は、任意であり、例えば、エンジンの始動や停止、エアコンの始動や停止、ドアのロックやアンロック、セキュリテーシステムの起動や解除、車内の室温等の各種の車両情報の出力等が該当する。以下では、「エンジンの始動」を行う場合について例示する。
【0029】
このエンジンの始動を行うための公知の処理として、車両制御システム100は、以下の処理を行うものとする。すなわち、この処理では、車両制御装置110が車内における携帯機120の存在を確認するための「起動シーケンス」と、車両制御装置110が携帯機120を認証するための「認証シーケンス」が、順次実行される。
【0030】
「起動シーケンス」においては、運手者又は任意の事象に基づく所定の起動操作(以下では、運転者による車内のエンジン始動スイッチの操作)が行われると、この起動操作が行われた機器等から始動開始出力が行われ、この始動開始出力が車両制御装置110に有線にて入力される。このように始動開始出力が入力されたことを条件として、車両制御装置110は、起動応答要求信号を応答要求周波数でキーレス受信機130を介して無線送信する。ここで、「起動応答要求信号」は、車両制御装置110から携帯機120に対して応答を要求するための信号であり、そのフォーマットや情報内容は任意である。また、「応答要求周波数」は、例えば、送信範囲が車内のみとなるように調整可能な周波数であり、この場合には、運転者が保有する携帯機120が車両制御装置110に対する所定範囲内(代表的には、車内)に存在する場合にのみ、この起動応答要求信号が携帯機120にて受信される。
【0031】
この起動応答要求信号を受信した携帯機120は、起動応答信号を応答周波数で無線送信する。ここで、「起動応答信号」は、車両制御装置110から送信された起動応答要求信号を正当な携帯機120が受信したことを、携帯機120から車両制御装置110に報知するための信号であり、そのフォーマットや情報内容は任意であって、例えば、携帯機120に記憶された認証情報を起動応答信号に含めて送信することができる。この起動応答信号をキーレス受信機130を介して受信した車両制御装置110は、当該起動応答信号を解析し、所定の認証シーケンス開始条件が満たされているか否かを判定し、所定の認証シーケンス開始条件が満たされている場合にのみ、認証シーケンスに移行する。
【0032】
「認証シーケンス」は、起動シーケンスと同様の通信を行うものであり、特記しない点については、起動シーケンスの説明における「起動」を「認証」に読み替えたものとして説明することができる。すなわち、車両制御装置110は認証応答要求信号を応答要求周波数でキーレス受信機130を介して無線送信する。この認証応答要求信号を受信した携帯機120は、認証応答信号を応答周波数で無線送信する。認証応答信号をキーレス受信機130を介して受信した車両制御装置110は、当該認証応答信号を解析し、所定の制御条件が満たされているか否かを判定し、所定の制御条件が満たされている場合にのみ、エンジンを始動するための所定制御を行う。
【0033】
「制御条件」の具体的内容は任意であるが、以下では、1)車両のエンジン始動スイッチ(イグニッションスイッチ)の操作とブレーキの操作とが行われていること(以下、操作完了条件)、2)認証応答信号に含まれる認証情報が車両制御装置110に予め記憶された認証情報と一致していること(以下、認証情報一致条件)、かつ、3)起動応答要求信号を送信してから所定時間(例えば、300〜500μsecの間の所定時間。以下、「条件充足時間」と称する)以内に、上記1)と2)の条件の充足を確認できると共に認証応答信号を受信できたこと(以下、時間条件)、を制御条件として説明する。なお、上記2)の条件に関しては、実際には、公知のローリングコード及びチャレンジアンドレスポンス等の処理により認証情報が毎回変更される場合があり、本発明はこのような場合にも同様に適応可能なものであるが、以下では認証情報が固定されている場合について説明する。
【0034】
一方、
図1において、「車両遠隔操作システム」1は、上述したように、車両の所定機器を制御する車両制御システム100を介して当該所定機器を遠隔操作するためのシステムである。この車両遠隔操作システム1は、車載中継機10と携帯中継機20とを相互に無線通信可能として構成されたシステムである。これら各機の詳細については後述する。
【0035】
以下の説明において、複数の機器の相互間における信号や情報の通信、送信、又は受信に関して、無線にて行う場合には、「無線通信」、「無線送信」、又は「無線受信」と特記するが、この特記がない場合には、無線と有線のいずれで行うこともできるものとする。また、複数の機器の相互間における無線通信方式に関して、「単信方式」とは、一方の機器から他方の機器への一方向の通信のみを一つの周波数を使用して行う方式を意味し、「半復信方式」とは、一方の機器から他方の機器への方向の通信とその逆方向の通信を一つの周波数を使用して行う方式を意味し、「復信方式」とは、一方の機器から他方の機器への方向の通信とその逆方向の通信を2つの周波数を使用して行う方式を意味するものとする。なお、本実施の形態においては、車載中継機10と携帯中継機20との相互間の無線通信を半復信方式にて行う場合について説明する。また、「起動応答要求信号」と「認証応答要求信号」を相互に特に区別する必要がない場合には、これらを「応答要求信号」と総称する。同様に、「起動応答信号」と「認証応答信号」を相互に特に区別する必要がない場合には、これらを「応答信号」と総称する。
【0036】
(構成−車両制御システム−車両制御装置)
次に、車両制御システム100と車両遠隔操作システム1の構成について説明する。最初に、車両制御システム100の構成について説明する。車両制御システム100の車両制御装置110は、基本送受信回路111を備えて構成されている。この基本送受信回路111は、応答要求信号及び応答信号の送受信を行うための基本送受信手段であり(以下、後述する基本送受信回路13、23、121についても同じ)、応答要求信号を応答要求周波数で無線送信する応答要求信号送信回路112を備えている。また、図示は省略するが、車両制御装置110は、当該車両制御装置110の各部を制御するMPU(Micro Processing Unit)と、認証情報を不揮発的に記憶する記憶部と、無線通信を行うためのアンテナと、車両の各種の機器から有線出力を受け付ける接点端子を備える。この接点端子としては、車両のエンジン始動スイッチが操作された場合の出力(以下、エンジン始動操作出力)を受け付けるエンジン操作接点端子と、車両のブレーキが操作された場合の出力(以下、ブレーキ操作出力)を受け付けるブレーキ操作接点端子が設けられている。ただし、車両制御装置110は従来と同様に構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0037】
(構成−車両制御システム−携帯機)
車両制御システム100の携帯機(リモコンキー)120は、基本送受信回路121を備えて構成されている。この基本送受信回路121は、応答要求周波数で送信された応答要求信号を受信する応答要求信号受信回路122と、応答信号を応答周波数で無線送信する応答信号送信回路123を備えている。また、図示は省略するが、携帯機120は、IC(Integrated Circuit)、及び各種のフィルタと、認証情報を不揮発的に記憶する記憶部と、無線通信を行うためのアンテナと、電源となる電池を備える。ただし、携帯機120は従来と同様に構成することができるので、その詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態では、この携帯機120以外にも、当該携帯機120と同様に構成された他の携帯機120’(例えばスペアのリモコンキー。図示省略)が少なくとも1個存在しており、他の携帯機120’が車両内部や車両外部における車両近傍位置にある場合を想定する。このような場合としては、例えば、他の携帯機120’を車両内部に置き忘れた場合が考えられる。
【0038】
(構成−車両制御システム−キーレス受信機)
車両制御システム100のキーレス受信機130は、基本送受信回路131を備えて構成されている。この基本送受信回路131は、応答要求信号及び応答信号の送受信を行うための基本送受信手段であり、応答周波数で送信された応答信号を受信する応答信号受信回路132を備えている。このキーレス受信機130は、上述したように、車両制御装置110に対して有線接続されており、応答信号受信回路132にて受信した応答信号を車両制御装置110に対して出力する。また、図示は省略するが、キーレス受信機130は、当該キーレス受信機130の各部を制御するMPUと、無線通信を行うためのアンテナとを備える。ただし、キーレス受信機130は従来と同様に構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
(構成−車両遠隔操作システム−車載中継機)
次に、車両遠隔操作システム1の構成について説明する。最初に、車載中継機10について説明する。この車載中継機10は、車両制御装置110及び携帯中継機20と通信するための送受信回路11と、出力部12を備えて構成されている。
【0040】
送受信回路11は、具体的には、基本送受信回路13と、中継送受信回路14を備える。基本送受信回路13は、車両制御装置110との間で無線通信を行う基本送受信手段であって、車両制御装置110から応答要求周波数で無線送信された応答要求信号を受信する応答要求信号受信回路15と、携帯中継機20から送信された応答信号を応答周波数で車両制御装置110(又はキーレス受信機130)に無線送信する応答信号送信回路16を備える。中継送受信回路14は、携帯中継機20との間で無線通信を行う中継送受信手段であって、携帯中継機20から所定の第1中継周波数で無線送信された操作信号及び応答信号を受信する第1中継受信回路17と、応答要求信号受信回路15にて受信された応答要求信号を第1中継周波数で携帯中継機20に無線送信する第1中継送信回路18を備える。
【0041】
出力部12は、車両の所定機器に対する制御条件を構成する条件出力を車両制御装置110に行う出力手段であり、本実施の形態では、エンジン始動操作出力とブレーキ操作出力を出力する。より具体的には、図示は省略するが、車載中継機10には、エンジン始動操作出力を行うためのエンジン操作接点端子と、ブレーキ操作出力を行うためのブレーキ操作接点端子が設けられており、このエンジン操作接点端子は車両制御装置110のエンジン操作接点端子に有線接続されると共に、ブレーキ操作接点端子は車両制御装置110のブレーキ操作接点端子に有線接続されている。そして、出力部12は、エンジン操作接点端子を介してエンジン始動操作出力を出力し、ブレーキ操作接点端子を介してブレーキ始動操作出力を出力する。なお、このような出力部12と車両制御装置110との具体的な通信方式は任意であるが、例えば、UART通信を行う。また、図示は省略するが、車載中継機10は、実際には、CPU、IC、及び各種のフィルタと、認証情報を不揮発的に記憶する記憶部と、無線通信を行うためのアンテナを備える。なお、車載中継機10に対する電源は、車両から公知の方法で取得される。
【0042】
(構成−車両遠隔操作システム−携帯中継機)
車両遠隔操作システム1の携帯中継機20は、操作スイッチ21と、携帯機120及び車載中継機10と通信するための送受信回路22を備えて構成されている。
【0043】
操作スイッチ21は、車両の所定機器に対する操作指示を受け付けるための操作手段であり、本実施の形態においては、車両のエンジンを始動の操作指示を受け付けるためのエンジン始動スイッチであって、例えば、公知の押しボタンスイッチとして構成されている。
【0044】
送受信回路22は、具体的には、基本送受信回路23と、中継送受信回路24を備える。基本送受信回路23は、携帯機120との間で無線通信を行う基本送受信手段であって、車載中継機10から送信された応答要求信号を携帯機120に応答要求周波数で無線送信する応答要求信号送信回路25と、携帯機120から応答要求信号に基づいて応答周波数で無線送信された応答信号を受信する応答信号送信回路26を備える。中継送受信回路24は、車載中継機10との間で無線通信を行う中継送受信手段であって、操作信号及び応答信号を車載中継機10の第1中継受信回路17に第1中継周波数で無線送信する第1中継送信回路27と、車載中継機10の第1中継送信回路18から第1中継周波数で無線送信された応答要求信号を受信する第1中継受信回路28を備える。また、図示は省略するが、携帯中継機20は、実際には、CPU、IC、及び各種のフィルタと、無線通信を行うためのアンテナと、電源となる電池を備える。このように構成された携帯中継機20は、携帯機120と応答要求周波数での無線通信が可能となるように、携帯機120に近い位置で保持される。例えば、このような保持を行うための工夫として、携帯中継機20の筐体には、キーホルダリングを挿通させるための孔が形成されており、携帯機120と携帯中継機20を共通のキーホルダリングで保持することで、携帯中継機20を携帯機120に対して近い位置に容易に保持することが可能となる。
【0045】
(周波数)
次に、無線通信に使用する周波数について説明する。車両制御装置110と車載中継機10との相互間や携帯機120と携帯中継機20との相互間における無線通信で使用する応答要求周波数と応答周波数は、それぞれ、車両制御装置110と携帯機120の相互間の無線通信で使用する応答要求周波数と応答周波数と同一の周波数に設定されている。ここで、これら応答要求周波数や応答周波数が、車両のメーカーや車種によって異なる場合には、これらの各周波数を各車両について試験により予め特定しておき、車両遠隔操作システム1を設置する車両のメーカーや車種に応じた周波数を、車載中継機10や携帯中継機20に設定する。以下では、応答要求周波数がLF(具体的には125kHz)であり、応答周波数がUHF(より一般的にはRF(Radio Frequency)であり、具体的には315MHz)であるものとして説明する。
【0046】
また、第1中継周波数としては、携帯中継機20が車外にある場合であっても車内の車載中継機10と通信を行うことが可能となる周波数である限り、任意の周波数を設定することができる。ただし、応答要求周波数であるLFで中継を行う場合に比べて、応答要求信号等を遠い場所まで送信するためには、第1中継周波数としてLFよりも高い周波数を使用することが好ましく、本実施の形態においては、第1中継周波数がUHF(より一般的にはRFであり、具体的には920MHz)であるものとして説明する。
【0047】
(キャリアセンス)
次に、キャリアセンスについて説明する。無線設備の標準規格(例えば、920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用、及びデータ伝送用無線設備の標準規格であるARIB STD−T108、1.0版、第2編 特定小電力無線、一般社団法人電波産業会)により、920MHzで電波送信を行う際には、キャリアセンスを行うことが義務付けられている。具体的には、キャリアセンスを行うための送信時間制限装置を設けることが義務付けられており、この送信時間制限装置の動作は、以下のように定められている。すなわち、「キャリアセンス時間5ms以上の場合であって、中心周波数が920.6MHz以上〜922.2MHz以下の場合、電波を発射してから送信時間4秒以内にその電波の発射を停止し、送信休止時間50msを経過した後でなければその後の送信を行わないものであること。ただし、最初に電波を発射してから連続する4秒以内に限り、その発射を停止した後50msの送信休止時間を設けずに再送信することができるものとする。その場合の再送信は、128μs以上のキャリアセンスを行なってから送信するものとし、最初に電波を発射してから連続する4秒以内に完了することとする。」(上記STD−T108の項目3.4.1)と定められている。
【0048】
本実施の形態においては、車載中継機10の送受信回路11における中継送受信回路14と、携帯中継機20の送受信回路22における中継送受信回路24が、それぞれ送信時間制限装置として機能する。以下では、最初に電波を発射する際に、キャリアセンス時間=5msでキャリアセンスを行う動作を「ロングキャリアセンス」と称し、最初に電波を発射してから連続する4秒以内に電波を再送信する際に、キャリアセンス時間=128μsでキャリアセンスを行う動作を「ショートキャリアセンス」と称する。本願発明者は、キャリアセンスとして、ロングキャリアセンスではなくショートキャリアセンスを極力行うことにより通信時間を短縮できる可能性があることを見出し、後述する車両遠隔操作処理では、これらロングキャリアセンスとショートキャリアセンスを適宜使い分けることで、時間条件を満足している。この点の詳細については後述する。
【0049】
なお、応答時に関しては、「他の無線設備からの要求(送信しようとする無線チャネルについてキャリアセンスを行なったものに限る)に応答する場合であって、以下の条件を満たす送信についてはキャリアセンスを要さず、1時間当りの送信時間の総和には含まないこととする。1)同時使用チャネル数が1の場合、要求の受信を完了した後2ms以内に開始する送信であって、50ms以内に完了する送信、2)同時使用チャネル数が2、3、4、5の場合、要求の受信を完了した後2ms以内に開始する送信であって、5ms以内に完了する送信」と定められている(上記STD−T108の項目3.4.3)。
【0050】
(動作モード)
次に、動作モードについて説明する。車載中継機10の送受信回路11を構成するICや、携帯中継機20の送受信回路22を構成するIC(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)は、その動作モードとして、1)連続モード(ワイヤーモード)、2)バッファモード、3)パケットハンドリングモードの3つの動作モードを取ることができ、当該ICに対する動作パラメータの設定を行うことにより、これら3つの動作モードを任意に切り替えることが可能となっている。
【0051】
ここで、連続モード(ワイヤーモード)とは、送受信されるデータが、FIFO(First In First Out)を介することなく、データ入力とデータ出力ピンとの間で直接的に受け渡される動作モードである。バッファモードとは、送受信されるデータがFIFOを介して書込み又は読み出される動作モードである。パケットハンドリングモードとは、バッファモードと同様にデータがFIFOを介して書込み又は読み出されることに加えて、送信モードでは完全なパケットを構築し、受信モードではパケットから有効データを取出すモードである。このパケットには、プリアンブル、スタートパターン(同期パターン)、オプションでアドレスバイトとバイト長、及びデータを含めることができ、追加オプションで、CRCエラー検出、マンチェスタエンコーディング、データスクランブル等を行うことが可能である。本願発明者は、動作モードとして、バッファモードやパケットハンドリングモードではなく連続モードを極力行うことにより通信時間を短縮できる可能性があることを見出し、後述する車両遠隔操作処理では、これら各モードを適宜使い分けることで、時間条件を満足している。この点の詳細については後述する。
【0052】
(処理)
次に、上記のように構成された車両遠隔操作システム1を用いて行われる車両遠隔操作処理について説明する。
図2及び
図3は、本実施の形態に係る車両遠隔操作処理のフローチャートである。以下の処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、車両制御装置110の基本送受信回路111、携帯機120の基本送受信回路121、車載中継機10の送受信回路11若しくは出力部12、又は携帯中継機20の送受信回路22にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、各機の記憶部に予め格納されており、あるいは、各機に設けた図示しない操作手段を介して運転者等が入力されるものとする。また、ステップを「S」と略記する。
【0053】
(処理−起動シーケンス)
図2において、携帯機120及び携帯中継機20を保有する運手者は、車外において携帯中継機20の操作スイッチ21を押圧することによりエンジンの始動を指示する。携帯中継機20は、操作スイッチ21に対する運転者の操作の有無を監視しており、操作スイッチ21に対する操作を受け付けた場合(SA1)、起動シーケンス(図示は省略)を実行する。具体的には、最初に、携帯中継機20の第1中継送信回路27は、キャリアセンスを行った上で、始動開始要求信号を第1中継周波数(例:UHF=920MHz)にて送信する(SA2)。「始動開始要求信号」とは、車載中継機10を介して車両制御装置110を始動させることにより、起動シーケンスを開始させるための信号である。
【0054】
一方、車載中継機10の第1中継受信回路17は、始動開始要求信号を受信する(SA3)。この始動開始要求信号が車載中継機10の第1中継受信回路17によって受信されると、車載中継機10の第1中継送信回路18は、キャリアセンスを行った上で、始動開始応答信号を第1中継周波数(例:UHF=920MHz)にて送信する(SA4)。「始動開始応答信号」とは、始動開始要求信号を受信したことにより車両制御装置110を始動させることを示す信号である。この始動開始応答信号は、携帯中継機20の第1中継受信回路28によって受信される(SA5)。
【0055】
また、車載中継機10の応答信号送信回路16は、当該車載中継機10以外の機器から送信されてキーレス受信機130によって受信された電波に基づいて車両制御装置110が応答信号を認識すること、を防止するためのマスク電波を、当該キーレス受信機130に対して送信する(SA6)。このようにマスク電波を無線送信する目的は、例えば、携帯中継機により中継対象となっている携帯機120以外に、他の携帯機120’が存在する場合において、当該他の携帯機120’が車両の内部に置き忘れられている場合や車両の近傍にある場合に、当該他の携帯機120’から無線送信された信号がキーレス受信機130によって受信され、キーレス受信機130から受信出力が車両制御装置110に行われた場合であっても、当該信号が車両遠隔操作システム1を用いた遠隔操作の障害になることを回避するためである。
【0056】
ここで、「車載中継機10以外の機器」としては、他の携帯機120’以外にも、電波を送信し得る任意の機器が該当するが、以下では、他の携帯機120’である場合について説明する。
また、「車載中継機10以外の機器から送信されてキーレス受信機130によって受信された電波に基づいて車両制御装置110が応答信号を認識すること、を防止する」とは、「車載中継機10以外の機器から送信されてキーレス受信機130によって受信された電波に基づいて車両制御装置110が何らかの処理を行うことにより、車両遠隔操作システム1を用いた遠隔操作に対する障害が発生すること、を防止する」ことを意味する。このための具体的な防止方法は任意であるが、例えば、他の携帯機120’から送信された電波よりも車載中継機10から送信された電波が優先してキーレス受信機130によって受信されるようにした上で(以下、この状態とするための条件を「優先受信条件」と称する)、当該車載中継機10から送信された電波に基づいて車両制御装置110が応答信号を認識することを防止する(以下、この状態とするための条件を「認識防止条件」と称する)、方法が該当する。
【0057】
優先受信条件を満たすためには、キャプチャー効果を利用することができる。キャプチャー効果とは、複数の同一周波数の電波が競合した場合には、弱い電波が抑圧され、強い電波が選択的に受信される効果である。より具体的には、強い電波のレベルと弱い電波のレベルとの比(キャプチャーレシオ)が所定値以上である場合には、キャプチャー効果を得ることができる。このため、優先受信条件を満たすためには、車載中継機10から送信されてキーレス受信機130によって受信されたマスク電波のレベルと、他の携帯機120’から送信されてキーレス受信機130によって受信された電波のレベルとの比が、所定値以上となるように、車載中継機10からマスク電波を送信すればよい。このような具体的なマスク電波のレベルは、実験等により定めることができるが、特に、車両制御装置110は車両内に配置されていることから、他の携帯機120’が車両外部に配置されている場合には、車載中継機10から送信されてキーレス受信機130によって受信されるマスク電波のレベルが比較的高くなるため、優先受信条件を満たすことが容易である。
【0058】
また、認識防止条件を満たすための方法は任意であるが、例えば、車載中継機10から送信されたマスク電波を車両制御装置110にノイズ電波等と認識させることで無視させる方法が該当する。このための具体的な方法としては、例えば、1)マスク電波として、無変調搬送波を送信する方法(以下、第1認識防止方法)、2)マスク電波として、応答信号として認識しない内容の変調信号を送信する方法(以下、第2認識防止方法)、及び3)マスク電波として、車両制御装置110が応答信号として認識しない内容の変調信号又は車両制御装置110が応答信号として認識する内容の変調信号を、車両制御装置110が応答信号として認識する送信速度を超えた送信速度で送信する方法(以下、第3認識防止方法)、を挙げることができる。このため、これら3つの方法のうち、いずれか一つの方法により(あるいは複数の方法を組み合わせて)マスク電波を送信することで、認識防止条件を満たすことができる。以下、これら3つの方法の詳細について順次説明する。
【0059】
まず、第1認識防止方法について説明する。この方法では、搬送波を変調することなく送信する。すなわち、FM変調された電波をキーレス受信機130で受信して車両制御装置110で復調して信号の生成を行う場合において、キーレス受信機130が無変調搬送波を受信した場合には、当該無変調搬送波を車両制御装置110で復調しても、一定の周波数(搬送波周波数)レベルの信号のみが生成されることになる。ここで、車両制御装置110が当該信号を応答信号として認識して所定処理を開始するためには、当該信号に含まれるプリアンブル及びコマンドが、応答信号の所定のプリアンブル及びコマンドに合致することが条件になる。従って、一定の周波数レベルの信号のみが生成された場合、このような所定のプリアンブル及びコマンドに合致することがないため、車両制御装置110は当該信号を応答信号として認識せず、ノイズ又は応答信号以外の不要な信号等であるとして無視し、何ら特段の処理を行わない。なお、無変調搬送波の周波数レベルは、ベースレベル(信号出力電圧v=0)としてもよいが、この場合には、電源電圧変動等に伴って当該ベースレベルが変動した場合に、ハイ又はローのレベルを含む応答信号であると車両制御装置110によって誤認識されてしまう可能性があり好ましくない。また、このように無変調搬送波の周波数レベルをベースレベルとした場合には、その後に車載中継機10から送信された電波をキーレス受信機130で受信して車両制御装置110で復調して応答信号の生成を行った場合において、当該ベースレベルを、当該応答信号のハイ又はローのレベルに切り替えるために時間を要し、時間条件を充足させる可能性を低減させることになり好ましくない。そこで、本実施の形態では、これらの問題を改善すべく、車載中継機10は、無変調搬送波の周波数レベルをハイ又はローのうち所定の一方のレベルとして送信する。
【0060】
次に、第2認識防止方法について説明する。この方法では、搬送波を変調して信号を送信するが、この信号の内容は、車両制御装置110が応答信号として認識しない内容とする。すなわち、上述のように、FM変調された電波をキーレス受信機130で受信して車両制御装置110で復調して信号の生成を行う場合において、車両制御装置110が当該信号を応答信号として認識するためには、当該信号に含まれるプリアンブル及びコマンドが、応答信号の所定のプリアンブル及びコマンドに合致することが条件になる。従って、搬送波を変調して信号を送信する場合であっても、この信号として、何らプリアンブル及びコマンドを含まない信号や、プリアンブル及びコマンドを含む場合であっても応答信号の所定のプリアンブル及びコマンドに合致しないプリアンブル及びコマンドを含む信号を送信した場合には、車両制御装置110は当該信号を応答信号として認識せず、ノイズ又は応答信号以外の不要な信号等であるとして無視し、何ら特段の処理を行わない。なお、応答信号の所定のプリアンブル及びコマンドに合致しないプリアンブル及びコマンドを含む信号を送信する場合において、当該合致しないプリアンブル及びコマンドの具体的な内容は任意であるが、実験等により定めることができる。
【0061】
次に、第3認識防止方法について説明する。この方法では、搬送波を変調することなく送信し、あるいは、搬送波を変調して信号を送信するが、この信号の送信速度を、車両制御装置110が応答信号として認識する送信速度を超えた送信速度とする。すなわち、応答周波数UHF(具体的には315MHz)による応答信号の送信速度は、一般的には1Kbps程度であり、この送信速度を大幅に超えた送信速度(例えば100Kbps程度)で信号が送信された場合、車両制御装置110は、当該信号の内容に関わらず当該信号を応答信号として認識せず、ノイズ又は応答信号以外の不要な信号等であるとして無視し、何ら特段の処理を行わない。なお、送信速度を大幅に超えた送信速度の具体的な数値は任意であるが、実験等により定めることができる。
【0062】
車載中継機10の応答信号送信回路16は、SA6において上記のような方法によりマスク電波の無線送信を開始した後、後述するSA25においてマスク電波の無線送信を終了する迄、当該マスク電波を連続的に送信する。
【0063】
次いで、SA3において始動開始要求信号が車載中継機10の第1中継受信回路17によって受信されると、車載中継機10の出力部12は、始動開始条件出力を車両制御装置110に有線通信にて出力する(SA7)。この始動開始条件出力が車両制御装置110によって受け付けられると(SA8)、車両制御装置110は、この始動開始出力が、運転者が車内において所定の起動操作を行った際に行われる始動開始出力と内容や通信方式に関して同一の出力であることから、当該所定の起動操作が行った際の始動開始出力を受け付けた場合と同様の処理を行う。すなわち、車両制御装置110の応答要求信号送信回路112は、所定の起動応答要求信号を応答要求周波数(例:LF=125kHz)で携帯機120に送信する(SA9)。この携帯機120に対する起動応答要求信号は、電波到達距離が比較的短い応答要求周波数で行われることから、車外にある携帯機120には到達せず、車内にある車載中継機10の応答要求信号受信回路15により受信される(SA11)。
【0064】
一方、携帯機120の応答要求信号送信回路25は、SA7における始動開始条件出力が行われた後、SA13における起動応答要求信号の送信に備えるため、キャリアセンスを開始する(SA10)。そして、SA11において起動応答要求信号が応答要求信号受信回路15により受信されると、第1中継送信回路18は、この起動応答要求信号のエンベロープを検出し(SA12)、当該検出したエンベロープのみをFSK変調して第1中継周波数(例:UHF=920MHz)で携帯中継機20に無線送信する(SA13)。一方、携帯中継機20の第1中継受信回路28は、エンベロープを受信すると(SA14)、当該エンベロープに基づいて起動応答要求信号を再現する(SA15)。なお、このエンベロープに関する処理の詳細については後述する。そして、応答要求信号送信回路25は、再現した起動応答要求信号を応答要求周波数(例:LF=125kHz)で携帯機120に無線送信する(SA16)。
【0065】
この起動応答要求信号が携帯機120の応答要求信号受信回路122によって受信されると(SA17)、携帯機120は、このように携帯中継機20から無線送信された起動応答要求信号がSA9において車両制御装置110から無線送信された起動応答要求信号と内容や通信方式(周波数を含む。以下同じ)に関して同一の信号であることから、車両制御装置110から送信された起動応答要求信号を直接受信した場合と同様の処理を行う。すなわち、携帯機120は、所定の起動応答信号を生成し、応答信号送信回路123がこの起動応答信号を応答周波数(例:UHF=315MHz)で車両制御装置110に無線送信する(SA18)。
【0066】
この起動応答信号が携帯中継機20の応答信号受信回路26によって受信されると(SA20)、第1中継送信回路27は起動応答信号をFSK変調し(SA21)、起動応答信号を第1中継周波数(例:UHF=920MHz)で車載中継機10に無線送信する(SA22)。この起動応答信号が車載中継機10の第1中継受信回路17によって受信されると(SA23)、第1中継受信回路17は起動応答信号を応答周波数(例:UHF=315MHz)に復調して応答信号送信回路16に送る(SA24)。応答信号送信回路16は、SA6で開始したマスク電波の送信を終了した後(SA25)、起動応答信号を応答周波数(例:UHF=315MHz)で車両制御装置110に無線送信する(SA26)。
【0067】
この起動応答信号がキーレス受信機130の応答信号受信回路132で受信され車両制御装置110の基本送受信回路に出力されると(SA27)、車両制御装置110は、このように車載中継機10から無線送信された起動応答信号がSA18において携帯機120から無線送信された起動応答信号と内容や通信方式に関して同一の信号であることから、携帯機120から送信された起動応答信号を直接受信した場合と同様の処理を行う。すなわち、車両制御装置110は、起動応答信号に基づいて、所定の認証シーケンス開始条件が充足したか否かを判定し(図示省略)、認証シーケンス開始条件が一部でも充足していないと判定した場合には、認証シーケンスを実行することなく、車両遠隔操作処理を終了する。一方、所定の認証シーケンス開始条件が充足したと判定した場合には、
図3に示す認証シーケンスを実行する。
【0068】
(処理−認証シーケンス)
図3に示す認証シーケンスにおいて、車両制御装置110の応答要求信号送信回路112は、所定の認証応答要求信号を応答要求周波数(例:LF=125kHz)で携帯機120に送信する(SA28)。この携帯機120に対する認証応答要求信号は、電波到達距離が比較的短い応答要求周波数で行われることから、車外にある携帯機120には到達せず、車内にある車載中継機10の応答要求信号受信回路15により受信される(SA31)。
【0069】
一方、車載中継機10の応答信号送信回路16は、SA26における起動応答信号の送信が行われた後、当該車載中継機10以外の機器から送信されてキーレス受信機130によって受信された電波に基づいて車両制御装置110が応答信号を認識すること、を防止するためのマスク電波を、当該キーレス受信機130に対して送信する(SA29)。このマスク電波の送信は、SA6と同様に行うことができ、SA29においてマスク電波の無線送信を開始した後、後述するSA45においてマスク電波の無線送信を終了する迄、当該マスク電波を連続的に送信する。
【0070】
また、車載中継機10の第1中継送信回路18は、SA26における起動応答信号の送信が行われた後、SA33における認証応答要求信号の送信に備えるため、キャリアセンスを開始する(SA30)。そして、SA31において認証応答要求信号が応答要求信号受信回路15により受信されると、第1中継送信回路18は、この認証応答要求信号のエンベロープを検出し(SA32)、当該検出したエンベロープのみをFSK変調して第1中継周波数(例:UHF=920MHz)で携帯中継機20に無線送信する(SA33)。一方、携帯中継機20の第1中継受信回路28は、エンベロープを受信すると(SA34)、当該エンベロープに基づいて認証応答要求信号を再現する(SA35)。なお、このエンベロープに関する処理の詳細については後述する。そして、応答要求信号送信回路25は、再現された認証応答要求信号を応答要求周波数(例:LF=125kHz)で携帯機120に無線送信する(SA36)。
【0071】
この認証応答要求信号が携帯機120の応答要求信号受信回路122によって受信されると(SA37)、携帯機120は、このように携帯中継機20から無線送信された認証応答要求信号がSA28において車両制御装置110から無線送信された認証応答要求信号と内容や通信方式に関して同一の信号であることから、車両制御装置110から送信された認証応答要求信号を直接受信した場合と同様の処理を行う。すなわち、携帯機120は、所定の認証応答信号を生成し、応答信号送信回路123がこの認証応答信号を応答周波数(例:UHF=315MHz)で車両制御装置110に無線送信する(SA38)。
【0072】
この認証応答信号が携帯中継機20の応答信号受信回路26によって受信されると(SA40)、第1中継送信回路27は認証応答信号をFSK変調し(SA41)、この認証応答信号を第1中継周波数(例:UHF=920MHz)で車載中継機10に無線送信する(SA42)。この認証応答信号が車載中継機10の第1中継受信回路17によって受信されると(SA43)、第1中継受信回路17は認証応答信号を応答周波数(例:315MHz)に復調して応答信号送信回路16に送る(SA44)。応答信号送信回路16は、SA29で開始したマスク電波の送信を終了した後(SA45)、起動応答信号を応答周波数(例:UHF=315MHz)で車両制御装置110に無線送信する(SA46)。
【0073】
この認証応答信号がキーレス受信機130の応答信号受信回路132で受信され車両制御装置110の基本送受信回路に出力されると(SA47)、車両制御装置110は、このように車載中継機10から無線送信された認証応答信号がSA38において携帯機120から無線送信された認証応答信号と内容や通信方式に関して同一の信号であることから、携帯機120から送信された認証応答信号を直接受信した場合と同様の処理を行う。すなわち、車両制御装置110は、認証応答信号に基づいて、所定の制御条件が充足したか否かを判定する(SA48)。具体的には、車両制御装置110は、車両のエンジン始動スイッチの操作とブレーキの操作とが行われているか否かを判定するが、SA8において始動開始条件出力を既に受信しているため、これらの操作が行われているものと判定する。また、例えば、車両制御装置110は、認証応答信号に含まれる認証情報が自己の記憶部に予め記憶された認証情報と一致するか否かを判定する。さらに、車両制御装置110は、SA9で起動応答要求信号を送信してからその時点までの経過時間が条件充足時間以内であるか否かを判定する。そして、車両制御装置110は、これらの制御条件が全て充足していると判定した場合には、エンジンを始動するための所定の制御を行う(SA49)。例えば、車両制御装置110は、エンジンを始動するための制御条件が充足したことを示す信号をECUに暗号化送信し、この信号を受信して復号化したECUがエンジンのスタータモータを起動することにより、エンジンを始動する。これにて車両遠隔操作処理が終了する。なお、車両制御装置110は、制御条件が一部でも充足していないと判定した場合には、何ら制御を行うことなく、車両遠隔操作処理を終了する。
【0074】
(処理−キャリアセンスの詳細)
次に、上記説明した処理をさらに詳細について説明する。最初に、キャリアセンスの詳細について説明する。
図2のSA2におけるキャリアセンスは、公知の方法で行うことができ、例えば、携帯中継機20の第1中継送信回路27は、第1中継周波数で送信されている他の電波がないことを確認した上で(キャリアセンスを行った上で)、始動開始要求信号を送信する。このSA2におけるキャリアセンスは、携帯中継機20が最初に電波を発射する際のキャリアセンスであることから、ロングキャリアセンス(キャリアセンス時間=5ms)で行う。また同様に、SA4におけるキャリアセンスも、車載中継機10が最初に電波を発射する際のキャリアセンスであることから、ロングキャリアセンス(キャリアセンス時間=5ms)で行う。
【0075】
一方、携帯中継機20における
図2のSA22及び
図3のSA42でのキャリアセンスは、
図2のSA2でロングキャリアセンスを行ってから、連続する4秒以内に行うことが可能であるため、50msの送信休止時間を設けることなく、ショートキャリアセンス(キャリアセンス時間=18μs)を経て行うことが好ましい。また同様に、車載中継機10における
図2のSA10及び
図3のSA30でのキャリアセンスも、
図2のSA4でロングキャリアセンスを行ってから、連続する4秒以内に行うことが可能であるため、50msの送信休止時間を設けることなく、ショートキャリアセンス(キャリアセンス時間=128μs)を経て行うことが好ましい。このように、SA22及びSA42や、SA10及びSA30において、ショートキャリアセンスを行うことから、ロングキャリアセンスを経て行う場合に比べて、起動応答要求信号を迅速に送信することが可能になり、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0076】
さらに、
図2のSA13において起動応答要求信号を送信するためのショートキャリアセンスは、SA11における起動応答要求信号の受信後に行うことも可能であるが、本実施の形態においては、SA11における起動応答要求信号の受信を待つことなく、SA7の始動開始条件出力後に開始する(SA10)。このような処理を行うことで、起動応答要求信号の受信を待ってからショートキャリアセンスを開始する場合に比べて、ショートキャリアセンスに要する時間を短縮し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。ただし、このようにショートキャリアセンスを早期に開始した場合には、起動応答要求信号の受信が行われる前に信号送信を介してしまう可能性が生じ、ノイズを発生させてしまう可能性があるため、さらにノイズ低減のための処理を行っている。この処理の詳細については後述する。
【0077】
また同様に、
図3のSA33において認証応答要求信号を送信するためのショートキャリアセンスは、SA31における起動応答要求信号の受信後に行うことも可能であるが、本実施の形態においては、SA31における起動応答要求信号の受信を待つことなく、SA26の起動応答信号の送信後に開始する(SA30)。このような処理を行うことで、認証応答要求信号の受信を待ってからショートキャリアセンスを開始する場合に比べて、ショートキャリアセンスに要する時間を短縮し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。ただし、このようにショートキャリアセンスを早期に開始した場合には、認証応答要求信号の受信が行われる前に信号送信を介してしまう可能性が生じ、ノイズを発生させてしまう可能性があるため、さらにノイズ低減のための処理を行っている。この処理の詳細については後述する。
【0078】
さらに、
図2のSA22におけるショートキャリアセンスは、SA20における起動応答信号の受信が完全に終了することを待つことなく開始することが好ましい。具体的には、SA16において起動応答要求信号を送信した後、携帯中継機20の応答信号受信回路26は、携帯機120から送信される起動応答信号(例:UHF=315MHz)のRSSI(受信強度:Received Signal Strength Indicator)の監視を開始する(SA19)。すなわち、応答信号受信回路26は、携帯機120からの応答信号の送信状態を監視する送信状態監視手段を構成する。そして、このRSSIが所定強度以上になった場合には、応答信号送信回路123から応答信号受信回路26への起動応答要求信号の送信が開始されたものと判定し、当該開始されたものと判定した場合には、起動応答要求信号を全て受信し終えることを待つことなく、ショートキャリアセンス(キャリアセンス時間=128μs)を開始する。このような処理を行うことで、起動応答要求信号を全て受信し終えてからショートキャリアセンスを開始する場合に比べて、ショートキャリアセンスに要する時間を短縮し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0079】
また同様に、
図3のSA42におけるショートキャリアセンスについても、SA40における認証応答信号の受信が完全に終了することを待つことなく開始する。具体的には、SA36において認証応答要求信号を送信した後、携帯中継機20の応答信号受信回路26は、携帯機120から送信される認証応答信号(例:UHF=315MHz)のRSSIの監視を開始する(SA39)。そして、このRSSIが所定強度以上になった場合には、応答信号送信回路123から応答信号受信回路26への認証応答要求信号の送信が開始されたものと判定し、当該開始されたものと判定した場合には、認証応答要求信号を全て受信し終えることを待つことなく、ショートキャリアセンス(キャリアセンス時間=128μs)を開始する。このような処理を行うことで、認証応答信号を全て受信し終えてからショートキャリアセンスを開始する場合に比べて、ショートキャリアセンスに要する時間を短縮し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0080】
(処理−モードの詳細)
次に、モードの詳細について説明する。
図2のSA2〜SA5における各種の信号の送受信に要する時間は、条件充足時間に含まれないことから、送受信の迅速性よりも通信の信頼性を優先することが好ましい。従って、これらSA2〜SA5における送受信は、エラー訂正機能付きのパケットモードにて行う。具体的には、SA2において、第1中継送信回路27は、始動開始要求信号をエラー訂正機能付きのパケットモードにて送信する。一方、SA3において、第1中継受信回路17は、始動開始要求信号をエラー訂正機能付きのパケットモードにて受信し、始動開始要求信号にエラーがあった場合には、公知の方法で第1中継送信回路27に始動開始要求信号の再送を求めたり、エラー訂正を行ったりすることにより、通信の信頼性を確保する。
【0081】
これに対して、
図2のSA11〜
図3のSA46の間における各種の信号の送受信に要する時間は、条件充足時間に含まれることから、送受信の信頼性よりも迅速性を優先するため、連続モードにて行うことが好ましい。具体的には、SA13において、第1中継送信回路18は、エンベロープを連続モードにて送信する。一方、SA14において、第1中継受信回路28は、エンベロープを連続モードにて受信する。以降同様に、SA22における起動応答信号の送信、SA23における起動応答信号の受信、SA33における認証応答要求信号の送信、SA34における認証応答要求信号の受信、SA42における認証応答信号の送信、及びSA43における認証応答信号の受信は、いずれも連続モードにて行う。このため、データをFIFOにバッファ等する時間を省略でき、パケットモードで送受信を行う場合に比べて、信号を迅速に送受信することが可能になり、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0082】
(処理−エンベロープに関する処理の詳細)
次に、エンベロープに関する処理の詳細について説明する。
図2のSA13、SA14における起動応答要求信号の送受信を迅速に行うためには、第1中継送信回路18において起動応答要求信号全体を変調して送信し、その後に、携帯中継機20の第1中継受信回路28において起動応答要求信号全体を受信して復調してもよい。しかしながら、起動応答要求信号は、比較的低い周波数である応答要求周波数(例:LF=125kHz)で送受信されるものである。従って、このような低い周波数を対象として、ベースバンドを含む周波数帯域全体(例:200kHz以上)が受信可能になるように第1中継受信回路28を設計すると、この第1中継受信回路28の受信感度を向上させることが困難になると共に通信距離を長くすることが困難になるために、通信の品質を向上させることが困難になる。そこで、本実施の形態においては、エンベロープ(信号の振幅及び周期を特定する波形情報)を用いた信号の送受信を行うこととしている。
【0083】
図4は、エンベロープを用いた信号の送受信を説明するための概念図である。この
図4の左側に示すように、
図2のSA12において、車載中継機10の第1中継送信回路18は、車両制御装置10から受信した起動応答要求信号(元のLF信号)のエンベロープを検出する。このエンベロープの検出は公知の方法で行うことができ、例えば、リトリカブル型(入力のパルスの間隔が所定時間以内に連続すると、出力が常にアクティブな状態を保持するタイプ)の単安定マルチバイブレーターを用いる。具体的には、この単安定マルチバイブレーターに対して起動応答要求信号を入力し、この起動応答要求信号がONになった時点で単安定マルチバイブレーターの出力をHighレベルに切り換え、この起動応答要求信号がOFFになるまでこの単安定マルチバイブレーターの出力をHighレベルに保持させ、起動応答要求信号がOFFになった時点で単安定マルチバイブレーターの出力をLowレベルに切り替える。以降同様に、起動応答要求信号のONとOFFに応じて、単安定マルチバイブレーターの出力をHighレベルとLowレベルとに切り換えることで、起動応答要求信号のエンベロープを検出する。そして、SA13において、第1中継送信回路18は、当該検出したエンベロープのみをFSK変調して第1中継周波数(例:920MHz)で携帯中継機20に無線送信する。一方、携帯中継機20の第1中継受信回路28は、SA14において、エンベロープを受信すると、SA15において、
図4の右側に示すように、受信したエンベロープを復調した後、当該復調したエンベロープとLFキャリア信号とのORを取ることにより、起動応答要求信号を再現する。この際、LFキャリア信号としては、予め特定した応答要求周波数(例:LF=125kHz)の信号を用いることができる。
【0084】
また同様に、
図3のSA33、SA34における認証応答要求信号の送受信についても、エンベロープを用いて行う。すなわち、第1中継送信回路18は、SA32において、認証応答要求信号のエンベロープを検出し、SA33において、当該検出したエンベロープのみをFSK変調して第1中継周波数(例:920MHz)で携帯中継機20に無線送信する。一方、携帯中継機20の第1中継受信回路28は、SA34において、エンベロープを受信すると、SA35において、受信したエンベロープを復調した後、当該復調したエンベロープとLFキャリア信号とのORを取ることにより、認証応答要求信号を再現する。
【0085】
このようなエンベロープを用いた送受信を行う場合には、エンベロープのみを変調及び復調すればよいために、起動応答要求信号をそのまま変調及び復調して送受信する場合に比べて、第1中継受信回路28の周波数帯域を狭くすることができ、第1中継受信回路28の受信感度を向上させることが容易になると共に通信距離を長くすることが容易になり、通信の品質を向上させることが容易になる。
【0086】
(処理−ノイズ低減のための処理の詳細)
次に、ノイズ低減のための処理の詳細について説明する。上述したように、
図2のSA22、SA23における起動応答信号の送受信を連続モードにて行った場合には、新たな問題が生じる可能性がある。すなわち、
図2のSA13において起動応答要求信号を送信するためのショートキャリアセンスを、SA11における起動応答要求信号の受信の開始や終了を待つことなく、SA10において開始しているため、起動応答要求信号の受信が行われる前にノイズ信号を送信してしまう可能性が生じる。このようにノイズ信号が送信された場合、連続モードを採用しているため、このノイズ信号がそのまま携帯中継機20によって受信されてしまう可能性があり好ましくない。そこで、本実施の形態において、車載中継機10の第1中継送信回路18は、ショートキャリアセンスを終了した後、直ちに信号を送信するのではなく、車両制御装置110から起動応答要求信号が送信されると想定される一定時間(以下、マスク時間)だけ、送信信号をマスクすることで、ノイズ信号を送信してしまうことを防止する。例えば、SA7において始動開始条件出力を行ってから、SA11において起動応答要求信号を受信すると想定される時間を、マスク時間として設定しておく。そして、第1中継送信回路18は、SA7において始動開始条件出力を行ってから、当該マスク時間が経過する迄、送信信号をマスクする。
【0087】
また同様に、
図3のSA33において認証応答要求信号を送信するためのショートキャリアセンスを、SA31における起動応答要求信号の受信の開始や終了を待つことなく、SA30において開始しているため、ノイズ信号を送信してしまう可能性が生じる。そこで、本実施の形態において、車載中継機10の第1中継送信回路18は、ショートキャリアセンスを終了した後、直ちに信号を送信するのではなく、車両制御装置110から認証応答要求信号が送信されると想定されるマスク時間だけ、送信信号をマスクすることで、ノイズ信号を送信してしまうことを防止する。例えば、SA26において起動応答信号の送信を行ってから、SA31において認証応答要求信号を受信すると想定される時間を、マスク時間として設定しておく。そして、第1中継送信回路18は、SA26において起動応答信号の送信を行ってから、当該マスク時間が経過する迄、送信信号をマスクする。
【0088】
さらに、連続モードに伴って、他の問題も生じ得る。すなわち、SA18における応答信号送信回路123による起動応答信号の送信が終了すると、これに伴ってSA20における応答信号受信回路26による起動応答信号の受信が終了し、SA22における第1中継送信回路27による起動応答信号の送信が終了する。しかし、実際には、ノイズ等の影響により、SA20における応答信号受信回路26による起動応答信号の受信レベルは完全にはゼロにならないことがあるため、SA22における第1中継送信回路27による起動応答信号の送信を不用意に継続してノイズ信号を送信してしまう可能性がある。そして、このようなノイズ信号が車載中継機10を介して車両制御装置110に出力された場合には、車両制御装置110がエラー発生と判断して、起動制御を中止等してしまう可能性がある。
【0089】
そこで、本実施の形態においては、このような問題を防止するため、SA18における応答信号送信回路123による起動応答信号の送信が終了したことを、携帯中継機20において検知し、当該検知した時点で携帯中継機20から車載中継機10への信号送信を遮断することで、ノイズ信号が送信されることを防止している。具体的には、応答信号受信回路26は、SA19において携帯機120から送信される起動応答信号のRSSIの監視を開始し、SA20において起動応答信号の受信を開始した以降も、このRSSIの監視を継続し、RSSIが所定強度未満になった場合には、携帯機120からの起動応答信号の送信が終了したものと判定する。このように起動応答信号の送信が終了したものと判定した場合、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、送信状態から受信状態に切り替える。例えば、中継送受信回路24に対して応答要求信号送信回路25と応答信号送信回路26とが共通の切り替えスイッチを介して接続されている場合において、携帯中継機20から車載中継機10への各種信号の送信を行うためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答信号受信回路26を接続することで携帯中継機20を送信状態に切り替え、車載中継機10からの各種の信号を携帯中継機20において受信するためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答要求信号送信回路25を接続することで携帯中継機20を受信状態に切り替える場合を想定する。この場合、SA22において中継送受信回路24の第1中継送信回路27が起動応答信号を無線送信する場合には、中継送受信回路24に対して応答信号受信回路26を接続することで携帯中継機20が送信状態になっているため、起動応答信号のRSSIが所定強度未満になった場合には、このスイッチを駆動することにより、中継送受信回路24に対して応答要求信号送信回路25を接続することで、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、送信状態から受信状態に切り替える。このような切り替えを行うことにより、携帯中継機20から車載中継機10への信号送信が遮断できるので、ノイズ信号が送信されることを防止することが可能になる。
【0090】
また同様に、
図3のSA36において認証応答要求信号を送信した後、携帯中継機20の応答信号受信回路26は、SA39において携帯機120から送信される認証応答信号のRSSIの監視を開始し、SA40において認証応答信号の受信を開始した以降も、このRSSIの監視を継続する。そして、応答信号受信回路26は、RSSIが所定強度未満になった場合には、携帯機120からの認証応答信号の送信が終了したものと判定し、上記と同様に、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、送信状態から受信状態に切り替えることで、携帯中継機20から車載中継機10への信号送信を遮断し、ノイズ信号が送信されることを防止する。
【0091】
ただし、このようなノイズ信号の送信防止は、携帯中継機20を送信状態から受信状態に切り替える方法以外の方法で行うことも可能であり、例えば、キャリア・スケルチを用いた方法を採用してもよい。すなわち、SA22において、RSSIが所定強度未満になったことにより、携帯機120からの起動応答信号の送信が終了したものと判定した場合、応答信号受信回路26は、自己が備えるキャリア・スケルチ(図示省略)をONにして、起動応答信号の受信レベルをゼロ又はその近傍値にすることで、SA22においてノイズ信号が送信されることを防止してもよい。この場合において、キャリア・スケルチは、送信状態監視手段である応答信号受信回路26にて監視された応答信号の送信状態に基づいて、車載中継機10に対する前記応答信号の無線送信が終了した場合には、当該終了した以降の携帯機120からのデータ受信を遮断する受信データ遮断手段を構成する。このようなキャリア・スケルチの具体的な駆動方法は任意であるが、例えば、応答信号受信回路26は、RSSI出力(直流電圧出力)と所定の閾値電圧(例えば、2.5V)とを、自己が備えるコンパレータ(図示省略)に入力し、RSSI出力が閾値電圧以上である場合には、このコンパレータからの出力によりキャリア・スケルチをOFFとし、RSSI出力が閾値電圧未満になった場合には、このコンパレータからの出力によりキャリア・スケルチをONにすることで、キャリア・スケルチを自動的に切り替える。
【0092】
また同様に、SA42において、RSSIが所定強度未満になったことにより、携帯機120からの認証応答信号の送信が終了したものと判定した場合、応答信号受信回路26は、自己が備えるキャリア・スケルチ(図示省略)をONにして、認証応答信号の受信レベルをゼロ又はその近傍値にすることで、SA42においてノイズ信号が送信されることを防止する。
【0093】
さらに、このようなノイズ信号の送信防止は、上述した送信信号のマスクを行うようにしてもよい。例えば、SA16において起動応答要求信号を送信してから、SA20において起動応答信号を受信すると想定される時間を、マスク時間として設定しておく。そして、第1中継送信回路27は、SA16において起動応答要求信号の送信を行ってから、当該マスク時間が経過する迄、送信信号をマスクする。あるいは同様に、SA36において認証応答要求信号を送信してから、SA40において認証応答信号を受信すると想定される時間を、マスク時間として設定しておく。そして、第1中継送信回路27は、SA36において認証応答要求信号の送信を行ってから、当該マスク時間が経過する迄、送信信号をマスクする。この場合には、第1中継送信回路27は、マスク時間が、携帯機120に応答要求信号を送信してから実際に経過したか否かを監視するマスク時間監視手段を構成すると共に、マスク時間が経過したと判定されるまで、車載中継機10への信号送信をマスクする送信遮断手段(送信マスク手段)を構成する。
【0094】
(処理−車載中継機10の回路切り替えに関する処理の詳細)
次に、車載中継機10の回路切り替えに関する処理の詳細について説明する。時間条件を充足する可能性を向上させるためには、車載中継機10における携帯中継機20への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態の切り替えに伴う時間ロスを極力低減することが好ましい。例えば、中継送受信回路14に対して応答要求信号送信回路15と応答信号送信回路16とが共通の切り替えスイッチを介して接続されている場合において、SA13において車載中継機10から携帯中継機20へ起動応答要求信号の送信を行うためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路14に対して応答要求信号送信回路15を接続することで車載中継機10を送信状態に切り替え、SA23において携帯中継機20からの起動応答信号を車載中継機10において受信するためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答信号送信回路16を接続することで車載中継機10を受信状態に切り替える場合を想定する。この切り替えは、SA11において起動応答要求信号を全て受信し終えたことを、例えば起動応答要求信号を解析してその最終ビットを検知することで行ってもよいが、この解析には時間を要する場合があり好ましくない。
【0095】
そこで、SA11において起動応答要求信号を全て受信し終えたことを、起動応答要求信号の送信時間に基づいて判定することが好ましい。例えば、車両制御装置110の応答要求信号送信回路112から送信される起動応答要求信号(LF信号)が、2つの異なる振幅を交互に繰り返して構成される信号であって、一方の振幅の送信時間(以下、マーク時間)と他方の振幅の送信時間(以下、スペース時間)のうち、少なくともスペース時間が一定であることが予め判っているような方式で符号化された信号(以下、符号化信号)である場合を想定する。この場合、車載中継機10は、SA11において、当該他方の振幅を受信する毎に、当該他方の振幅が継続する時間を公知のタイマ(図示省略)で計測する。そして、当該時間がスペース時間を超えた場合には、起動応答要求信号の送信が終了したものと判定できるため(送信が終了していない場合には、当該他方の振幅が継続する時間がスペース時間になった時点で、一方の振幅を受信するはずであるため)、起動応答要求信号を全て受信し終えた(応答要求信号送信回路112からの起動応答要求信号の送信が完了した)ものと判定する。そして、このように判定した場合には、起動応答要求信号の解析等を行うことなく、車載中継機10における携帯中継機20への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、送信状態から受信状態に切り替えることにより、SA23における起動応答信号の受信が可能な状態にする。このような処理を行うことで、起動応答要求信号の解析等を行ってから送受信状態の切り替えを開始する場合に比べて、送受信状態の切り替えに伴う時間ロスが生じることを回避し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。あるいは、スペース時間ではなくマーク時間が一定であることが予め判っている場合には、当該マーク時間に基づいて、起動応答要求信号を全て受信し終えたか否かを判定してもよい。若しくは、起動応答要求信号(LF信号)全体の送信時間が一定であることが予め判っている場合には、当該送信時間に基づいて、起動応答要求信号を全て受信し終えたか否かを判定してもよい。すなわち、起動応答要求信号(LF信号)の送信時間、マーク時間、あるいはスペース時間に基づいて、起動応答要求信号を全て受信し終えたか否かを判定することができる。
【0096】
また同様に、SA33において車載中継機10から携帯中継機20へ認証応答要求信号の送信を行うためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路14に対して応答要求信号送信回路15を接続することで車載中継機10を送信状態に切り替え、SA43において携帯中継機20からの認証応答信号を車載中継機10において受信するためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答信号送信回路16を接続することで車載中継機10を受信状態に切り替える場合を想定する。この切り替えは、SA31において認証応答要求信号を全て受信し終えたことを、例えば認証応答要求信号を解析してその最終ビットを検知することで行ってもよいが、この解析には時間を要する場合があり好ましくない。
【0097】
そこで、本実施の形態においては、SA31において認証応答要求信号を全て受信し終えたことを、認証応答要求信号の送信時間に基づいて判定する。例えば、車両制御装置110の応答要求信号送信回路112から送信される認証応答要求信号が、符号化信号である場合を想定する。この場合、車載中継機10は、SA31において、認証応答要求信号(LF信号)の送信時間、マーク時間、あるいはスペース時間のいずれかが一定時間を超えた場合には、認証応答要求信号の送信が終了したものと判定できるため、認証応答要求信号を全て受信し終えた(応答要求信号送信回路112からの認証応答要求信号の送信が完了した)ものと判定する。そして、このように判定した場合には、認証応答要求信号の解析等を行うことなく、車載中継機10における携帯中継機20への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、送信状態から受信状態に切り替えることにより、SA43における認証応答信号の受信が可能な状態にする。このような処理を行うことで、認証応答要求信号の解析等を行ってから送受信状態の切り替えを開始する場合に比べて、送受信状態の切り替えに伴う時間ロスが生じることを回避し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0098】
(処理−携帯中継機20の回路切り替えに関する処理の詳細)
次に、携帯中継機20の回路切り替えに関する処理の詳細について説明する。車載中継機10の場合と同様に、時間条件を充足する可能性を向上させるためには、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態の切り替えに伴う時間ロスを極力低減することが好ましい。例えば、中継送受信回路24に対して応答要求信号送信回路25と応答信号送信回路26とが共通の切り替えスイッチを介して接続されている場合において、SA14において車載中継機10からの起動応答要求信号を携帯中継機20において受信するためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答要求信号送信回路25を接続することで携帯中継機20を受信状態に切り替え、SA22において携帯中継機20から車載中継機10に起動応答信号を送信するためには、このスイッチを駆動することにより中継送受信回路24に対して応答信号受信回路26を接続することで携帯中継機20を送信状態に切り替える場合を想定する。この切り替えは、SA20において起動応答信号を全て受信し終えたことを、例えば起動応答信号を解析してその最終ビットを検知することで行ってもよいが、この解析には時間を要する場合があり好ましくない。
【0099】
そこで、本実施の形態においては、SA19における起動応答信号のRSSIの監視結果に基づいて、この切り替えを行うようにしている。具体的には、携帯中継機20において、この起動応答信号のRSSIが所定強度以上になった場合には、応答信号送信回路123から応答信号受信回路26への起動応答信号の送信が開始されたものと判定し、当該開始されたものと判定した場合には、起動応答信号が全て受信し終えることを待つことなく、中継送受信回路24に対して接続する回路を、応答要求信号送信回路25から応答信号受信回路26に切り替えることで、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、受信状態から送信状態に切り替えて、SA22における起動応答信号の送信が可能な状態にする。そして、SA20にて受信した起動応答信号を、SA22において連続モードにて順次送信する。このような処理を行うことで、起動応答信号を全て受信し終えてから回路の切り替えを開始する場合に比べて、起動応答信号の受信時間分だけ時間ロスが生じることを回避し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0100】
また同様に、
図3のSA34〜SA42にかけても、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、受信状態から送信状態に切り替える必要が生じるが、本実施の形態においては、
図3のSA39における起動応答信号のRSSIの監視結果に基づいて、この切り替えを行うようにしている。具体的には、携帯中継機20において、この起動応答信号のRSSIが所定強度以上になった場合には、応答信号送信回路123から応答信号受信回路26への認証応答信号の送信が開始されたものと判定し、当該開始されたものと判定した場合には、認証応答信号を全て受信し終えることを待つことなく、中継送受信回路24に対して接続する回路を、応答要求信号送信回路25から応答信号受信回路26に切り替えることで、携帯中継機20における車載中継機10への第1中継周波数(例:920MHz)での信号の送受信状態を、受信状態から送信状態に切り替えて、SA42における認証応答信号の送信が可能な状態にする。そして、SA40にて受信した認証応答信号を、SA42において連続モードにて順次送信する。このような処理を行うことで、認証応答信号が全て受信し終えてから回路の切り替えを開始する場合に比べて、認証応答信号の受信時間分だけ時間ロスが生じることを回避し、時間条件を充足する可能性を向上させることができる。
【0101】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0102】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明に係る車両遠隔操作システムによる車両制御の信頼性が、従来の車両遠隔操作システムと同程度となる場合であっても、従来とは異なる車両遠隔操作システムにより、従来と同程度の車両制御の信頼性を得ることが可能になる場合には、本発明の課題が解決されている。
【0103】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散したり統合したりして構成できる。例えば、車載中継機10における基本送受信回路13と中継送受信回路14とを物理的には1つの回路により構成したり、携帯中継機20における基本送受信回路23と中継送受信回路24とを物理的には1つの回路により構成したりしてもよい。あるいは、逆に、車載中継機10における基本送受信回路13や中継送受信回路14をそれぞれ物理的には複数の回路により構成したり、携帯中継機20における基本送受信回路23や中継送受信回路24を物理的には複数の回路により構成したりしてもよい。あるいは、車両制御装置110から送信された応答要求信号が車載中継機10の応答要求信号受信回路15により受信された場合、第1中継送信回路18が応答要求信号のエンベロープを検出してFSK変調するものとして説明したが、応答要求信号受信回路15がこのエンベロープの検出やFSK変調を行うようにしてもよく、あるいは別途設けた変調用の回路により変調を行うようにしてもよい。このような変調のみならず、各種の検出、各種の復調、あるいは各種の判定については、他の回路により行うようにしてもよい。あるいは、車両制御装置110とキーレス受信機130を統合してもよく、若しくは、車両制御装置110の機能の一部をキーレス受信機130に持たせたり、キーレス受信機130の機能の一部を車両制御装置110に持たせたりしてもよい。
【0104】
(車両について)
車両の種類や構成は任意であり、四輪自動車の他、クレーン車や二輪自動車を含む。また、制御対象とする機器が原動機以外である場合には、原動機のない車両を対象としてもよく、例えば、二輪自転車を対象としてもよい。
【0105】
(車両制御システムの構成について)
車両制御システム100の構成は任意である。例えば、上記実施の形態では、車両制御装置110がECUに有線接続されるものとして説明したが、車両制御装置110自体がECUであってもよい。また、車両制御装置110が行うものとして説明した機能をECUに持たせてもよく、あるいはECUが行うものとして説明した機能を車両制御装置110に持たせてもよい。例えば、制御条件の充足判定の一部については、車両制御装置110ではなく、車両制御装置110に接続されたECUで行うようにしてもよい。また、車両制御装置110には、上記説明した機能以外にも公知の機能を持たせることができ、例えば、応答要求信号を送信してから所定時間以内に応答信号を受信できない場合には、応答要求信号を再送信するリトライ機能を持たせてもよい。このようにリトライを行う場合においても、上記のように接続確立を行った後、この接続を車両遠隔操作処理が終了するまで維持することで、リトライのための応答要求信号の再送信等に起因する遅延を最小化することができる。さらに、「起動シーケンス」と「認証シーケンス」のいずれか一方のみを行う場合や、さらに他のシーケンスを行う場合においても、本発明は同様に適応可能であり、この場合には、車両遠隔操作システムにおいても「起動シーケンス」と「認証シーケンス」のいずれか一方のみを行ったり、さらに他のシーケンスを行うための通信の中継を行うことができる。
【0106】
(車両遠隔操作システムの構成について)
上記実施の形態では、車両遠隔操作システム1が車載中継機10と携帯中継機20により構成される例について説明したが、その他の機器を含めて車両遠隔操作システム1を構成してもよく、例えば、車両から極めて遠い場所から遠隔操作を行うような場合に、車載中継機10と携帯中継機20との無線通信を中継する中継機をさらに設置してもよい。また、1台の車載中継機10に対して複数台の携帯中継機20を通信可能としてもよい。また、必要に応じて、車載中継機10を車両制御装置110以外の機器に無線又は有線で接続するようにしてもよい。なお、車両遠隔操作システム1の配置に関して、実施の形態では、携帯中継機20を携帯機10と共に車外に配置した状態で操作するものとして説明したが、携帯中継機20を携帯機10と共に車内に配置してもよい。
【0107】
(接続形態について)
上記実施の形態では、車両制御装置110と車載中継機10との相互間の通信(出力部12からの出力を除く通信)や、携帯機120と携帯中継機20との相互間の通信を、無線通信で行うものとして説明したが、全部又は任意の一部の通信を有線により行うこととしてもよい。例えば、車両制御装置110と車載中継機10との相互間の通信は、無線通信に代えて、UART等による有線通信によって行うようにしてもよい。あるいは、車載中継機10には、車両制御装置110と無線通信を行うための基本送受信回路13と、車両制御装置110と有線通信を行うための接点等との両方を設けておき、車載中継機10が設置される車両の条件やユーザのユーズ等に応じて、これらいずれか一方のみを選択して使用できるようにしてもよい。
【0108】
(周波数について)
上記の説明において数値にて示した周波数はあくまで例示であり、他の周波数を採用してもよい。また、起動シーケンスに使用する中継周波数と認証シーケンスに使用する中継周波数を相互に異なる周波数としてもよい。
【0109】
(処理について)
上記説明した処理の順序やタイミングは、適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、携帯中継機20からの操作信号をトリガとして、車両制御装置110が起動応答要求信号を送信する場合について説明したが、操作信号の有無に関わらず、車両制御装置110が所定間隔で起動応答要求信号を送信するように構成されている場合には、操作信号の送信に関する処理に先立って、起動応答要求信号の中継に関する処理を行うようにしてもよい。
【0110】
(キャリアセンスについて)
キャリアセンスの要否や時間等については、標準規格が改訂等された場合には、当該改訂後の内容に準じて、変更することができる。また、時間条件の充足性に問題が生じない場合には、上述したショートキャリアセンスの全部又は一部に代えてロングキャリアセンスを行うようにしてもよく、あるいは、ロングキャリアセンスやショートキャリアセンスの開始タイミングや開始基準を任意に変更してもよい。
【0111】
(モードについて)
時間条件の充足性に問題が生じない場合には、上述した連続モードの全部又は一部に代えてパケットモードを行うようにしてもよい。
【0112】
(エンベロープについて)
回路設計技術の進展等によって、ベースバンドを含む周波数帯域全体が受信可能になるように第1中継受信回路28を設計した場合における、この第1中継受信回路28の受信感度を向上させることや通信距離を長くすることの困難性が低下した場合には、上述したエンベロープを用いた検出や信号再現の処理に代えて、一般的な変調処理と復調処理を適用してもよく、この場合には、時間条件の充足性を一層向上させることが可能になる。
【0113】
(ノイズ低減のための処理について)
ノイズの影響を無視できる場合や、連続モードに代えてパケットモードを行う場合には、ノイズ低減のための処理を省略してもよい。また、ノイズ低減のための処理を行う場合であっても、キャリア・スケルチを用いた処理に代えて、例えば、車載中継機10や携帯中継機20の内部に設けた増幅器(図示省略)の電源を遮断すること等によりノイズの発生を防止してもよい。また、キャリア・スケルチを用いた処理を行う場合であっても、応答信号受信回路26ではなく第1中継送信回路27にキャリア・スケルチを設けたり、あるいは車載中継機10にキャリア・スケルチを設けてもよい。また、車載中継機10に対する応答信号の無線送信を完全に遮断する以外にも、ノイズが許容される所定レベルまで応答信号のレベルを低減させてもよい。
【0114】
(送受信状態の切り替えに関する処理について)
時間条件の充足性に問題が生じない場合には、上述した送受信状態の切り替えに関する処理を省略してもよい。
【0115】
(マスク電波の送信タイミングについて)
上記実施の形態では、起動シーケンスにおいては、
図2のSA6からSA25までマスク電波を連続送信し、認証シーケンスにおいては、
図3のSA29からSA45までマスク電波を連続送信するものとして説明した。しかしながら、マスク電波の送信開始タイミングや送信終了タイミングは、このようなタイミングに限定されない。送信開始タイミングについては、他の携帯機120から電波が送信されキーレス受信機130によって受信されることが予想される期間の開始前であればよく、例えば、車両制御装置110から応答要求信号が送信される直前(起動シーケンスにおいては、
図2のSA11の直前、認証シーケンスにおいては、
図3のSA31の直前)とすることができる。また、送信終了タイミングについては、他の携帯機120から電波が送信されキーレス受信機130によって受信されることが予想される期間の終了後であればよく、例えば、携帯中継機20から無線送信された応答信号を車両制御装置110に送信する直前(実施の形態と同様に、起動シーケンスにおいては、
図2のSA25の直前、認証シーケンスにおいては、
図3のSA45の直前)とすることができる。
【0116】
あるいは、携帯中継機20から無線送信された応答信号を車両制御装置110に送信するタイミングを除き、常にマスク電波を送信するようにしてもよい。例えば、
図3のSA46で認証応答信号を出力した後、再びマスク電波の送信を開始し、以降、エンジンが始動したことが車両イグニッションからの有線出力等で確認できるまで、マスク電波の送信を継続するようにしてもよい。
【0117】
なお、「連続的に送信する」とは、必ずしも厳密にマスク電波の送信を送信開始タイミングから送信終了タイミングまで継続する場合のみならず、マスク電波の送信を一時的に停止する場合であっても、当該停止により優先受信条件及び認識防止条件の充足が実際に阻害されない場合を含む。
【0118】
(付記)
上述した課題を解決し、目的を達成するために、付記1に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機は、車両制御装置と携帯機を相互に無線通信可能として構成された車両制御システムであって、前記車両制御装置から無線送信された応答要求信号に基づいて前記携帯機が応答信号を無線送信し、前記車両制御装置に接続された車両受信機によって当該応答信号が無線受信されたことを条件の少なくとも一つとして当該車両制御装置が車両の所定機器を制御する車両制御システム、を介して前記所定機器を遠隔操作する車両遠隔操作システム、を構成するための車載中継機であって、前記車両の内部に配置されると共に前記車両制御装置と通信可能に構成され、当該車載中継機と共に前記車両遠隔操作システムを構成する携帯中継機であって、前記携帯機と通信可能な携帯中継機と通信可能に構成され、前記車両制御装置から送信された前記応答要求信号を受信して前記携帯中継機に無線送信すると共に、前記携帯中継機から無線送信された前記応答信号を受信して前記車両制御装置に送信する送受信手段を備え、前記送受信手段は、当該車載中継機以外の機器から送信されて前記車両受信機によって受信された電波に基づいて前記車両制御装置が前記応答信号を認識すること、を防止するためのマスク電波を、当該車両受信機に対して送信する。
【0119】
また、付記2に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機は、付記1に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機において、前記送受信手段は、前記マスク電波として、無変調搬送波を送信する。
【0120】
また、付記3に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機は、付記1に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機において、前記送受信手段は、前記マスク電波として、前記車両制御装置が前記応答信号として認識しない内容の変調信号を送信する。
【0121】
また、付記4に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機は、付記1に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機において、前記送受信手段は、前記マスク電波を、前記車両制御装置が前記応答信号として認識する送信速度を超えた送信速度で送信する。
【0122】
また、付記5に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機は、付記1から4のいずれか一項に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機において、前記送受信手段は、前記マスク電波を、少なくとも、前記車両制御装置から前記応答要求信号が送信される直前から、前記携帯中継機から無線送信された前記応答信号を前記車両制御装置に送信する直前まで、連続的に送信する。
【0123】
(付記の効果)
付記1に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機によれば、車載中継機の送受信手段から送信されたマスク電波により、車載中継機以外の機器から送信されて車両受信機によって受信された電波に基づいて車両制御装置が応答信号を認識することが防止されるので、例えば、他の携帯機が車両の内部に置き忘れられている場合や車両の近傍にある場合において、当該他の携帯機から送信された信号が車両制御装置に送信された場合においても、当該他の携帯機から送信された信号と車載中継機から送信された信号とが混信等して車両の遠隔制御に対する障害が発生する可能性を低減することができ、車両遠隔操作の信頼性を向上させることが可能になる。
【0124】
また、付記2に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機によれば、マスク電波として無変調搬送波が送信されるので、車両制御装置において一定の周波数レベルの信号のみが生成され、車両制御装置が当該信号を応答信号として認識することを防止することが可能になる。
【0125】
また、付記3に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機によれば、マスク電波として車両制御装置が応答信号として認識しない内容の変調信号が送信されるので、例えば、車両制御装置において、何らプリアンブル及びコマンドを含まない信号や、プリアンブル及びコマンドを含む場合であっても応答信号の所定のプリアンブル及びコマンドに合致しないプリアンブル及びコマンドを含む信号のみが生成され、車両制御装置が当該信号を応答信号として認識することを防止することが可能になる。
【0126】
また、付記4に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機によれば、マスク電波を車両制御装置が応答信号として認識する送信速度を超えた送信速度で送信するので、信号の内容に関わらず、車両制御装置が当該信号を応答信号として認識することを防止することが可能になる。
【0127】
また、付記5に記載の車両遠隔操作システムの車載中継機によれば、マスク電波を、少なくとも、車両制御装置から応答要求信号が送信される直前から、携帯中継機から無線送信された応答信号を前記車両制御装置に送信する直前まで、連続的に送信するので、車両制御装置から送信された応答要求信号に基づいて他の携帯機から信号が送信された場合であっても、この信号と車載中継機から送信された信号とが混信等して車両の遠隔制御に対する障害が発生する可能性を低減することができ、車両遠隔操作の信頼性を向上させることが可能になる。