特許第6235324号(P6235324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235324チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235324
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/28 20060101AFI20171113BHJP
   C07C 323/12 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 323/22 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 307/64 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C07C319/28
   C07C323/12
   C07C323/22
   C07D307/64
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-250045(P2013-250045)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107920(P2015-107920A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 大介
(72)【発明者】
【氏名】矢口 善博
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−094846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C08F
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法であって、
混合物中の一般式(1)
RSH (1)
(式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10脂環式アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよい複素環基である。)
で表されるチオール化合物と、一般式(2)
【化1】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合された担体であり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持チオスルフェート化合物と処理し、
一般式(3)
【化2】
(式中、R,P,n及びAは、前記と同義である。)
で表される高分子担持ジスルフィド化合物とし、次いで、還元的処理をすることにより、一般式(1)
RSH (1)
(式中、Rは、前記と同義である)
で表されるチオール化合物を単離及び/又は回収する方法。
【請求項2】
一般式(1)のチオール化合物が、香料チオール化合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式(2)の高分子担持チオスルフェート化合物及び一般式(3)高分子担持ジスルフィド化合物において、nが1であり、環Aは、フッ素原子を置換基として有していてもよいものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法に関する。そして、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法に用いるための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
チオール化合物の閾値は、一般的に非常に小さいので、極微量でも感知され、濃度の高い状態では悪臭ないし不快臭として感じられる。これらの化合物は低濃度においてはじめて特徴ある香気を呈するものである。
チオール化合物は、飲食品や天然物から見出され、香気構成上重要な役割を果たしていることが分かってきている。新しく単離、同定されたこれら化合物は、食品香料や香粧品香料に用いられ、香気の改善に役立ってきている。
そして、飲食品や天然物等から、これらチオール化合物を単離・回収するのに効果的な手法を提供することが望まれてきていた。これまでに多数の方法が提案されてきたが、どれも十分に満足されるものではなかった。
例えば、富永らは、硫黄原子と水銀の親和性の高さを利用してチオール化合物を回収する方法(非特許文献1)として、チオール化合物をp-4-(Hydroxymercuri)benzoic acidに配位させ、配位しない化合物を除いた後、さらに水溶性の高いチオール化合物を過剰量加えることで目的とするチオール化合物を脱離させ回収する方法を提案している。しかしながら、有害な水銀を使用しなければならないことや、チオール化合物以外の水銀に配位する化合物も回収されるという問題があった。
また、フェレイラ(Ferreira)らは、チオール化合物をpentafluorobenzyl bromideで選択的に誘導体としてHS−SPME−GC/MSで分析する方法(非特許文献2)を提案している。誘導体は、イオン化により開裂がベンジル位で起きやすいので、チオール化合物の分子量を[M]とすると[M+180]、[181]、[M−1]のフラグメントイオンが特異的に存在することから、MSスペクトルでチオール化合物の判断が可能となる。しかしながら、目的とするチオール化合物の香気を確認することが不可能であり、化合物を同定するには標品が必要であること、更には、ファイバーとの相性、揮発性の影響で感度低下が起きるといった問題があった。
そして、チオール化合物を2-S-(2’-thiopyridyl)-6-hydroxynaphthyldisulphideで処理し、チオール化合物と6-hydroxynaphthylthiolとの混合ジスルフィドとなし、この混合ジスルフィドを精製した後、還元することで目的とするチオール化合物を回収する方法(特許文献1)が提案されている。しかしながら、2-S-(2’-thiopyridyl)-6-hydroxynaphthyldisulphideの原料である6-hydroxynaphthyldisulphideが高価であること、混合ジスルフィドの調製が煩雑であること、さらに混合ジスルフィドを精製するのにHPLCが必要なことなどという問題があった。
一方、チオール化合物を、ポリマー担持芳香族チオールと脱離基(−SZ)とのジスルフィドで処理し、ポリマー担持芳香族チオールとチオール化合物とのジスルフィドとなし、この形成されたポリマー担持芳香族ジスルフィドを精製した後、還元することで目的とするチオール化合物を回収する方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリマー担持芳香族チオールと脱離基(−SZ)とのジスルフィドの調製が煩雑であることなどという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許公開第2005/021493号
【特許文献2】英国特許公開第2474057号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Agric. Food Chem., 2006, 54, 29-33
【非特許文献2】J. Chromat. A, 2006, 1121, 1-9
【非特許文献3】食品分析(試料分析講座) 日本分析化学会 (編集) 丸善出版 32〜45頁、2011年9月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲食品や天然物等のチオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離・回収するのに簡便で効果的な手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を高分子担持チオスルフェート化合物と処理し、高分子担持ジスルフィド化合物とし、次いで、還元的処理をすることにより、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法を見出して、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[5]に関するものである。
[1] チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法であって、
混合物中の一般式(1)
RSH (1)
(式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10脂環式アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよい複素環基である。)
で表されるチオール化合物と、一般式(2)
【0008】
【化1】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合された担体であり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持チオスルフェート化合物と処理し、
一般式(3)
【0009】
【化2】
(式中、R,P,n及びAは、前記と同義である。)
で表される高分子担持ジスルフィド化合物とし、次いで、還元的処理をすることにより、一般式(1)
RSH (1)
(式中、Rは、前記と同義である)
で表されるチオール化合物を単離及び/又は回収する方法。
【0010】
[2] 一般式(1)のチオール化合物が、香料チオール化合物であることを特徴とする第1項記載の方法。
【0011】
[3] 一般式(2)の高分子担持チオスルフェート化合物及び一般式(3)高分子担持ジスルフィド化合物において、nが1であり、環Aは、フッ素原子を置換基として有していてもよいものであることを特徴とする第1項又は第2項に記載の方法。
[4] 一般式(2)
【0012】
【化3】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合されたポリマーであり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持チオスルフェート化合物。
[5] 一般式(2)の高分子担持チオスルフェート化合物において、nが1であり、環Aは、フッ素原子を置換基として有していてもよいものであることを特徴とする第4項記載の高分子担持チオスルフェート化合物。
[6] 一般式(4)
【0013】
【化4】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合された担体であり、Xはハロゲン原子であり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持ハロゲン化合物を、チオ硫酸アルカリ金属塩で処理することを特徴とする一般式(2)
【0014】
【化5】
(式中、P、n及びAは、前記と同義である。)
で表される高分子担持チオスルフェート化合物の製造方法。
[7] 一般式(1)の高分子担持ハロゲン化合物及び一般式(2)の高分子担持チオスルフェート化合物及びnが1であり、環Aは、フッ素原子を置換基として有していてもよいものであることを特徴とする第6項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のチオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する方法
により、簡便で効果的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法が適用されるチオール化合物含有混合物としては、天然材料、飲食品、口腔用組成物、医薬品類及び賦香製品などを挙げることができる。
天然材料としては、例えば、天然香料(植物性香料、動物性香料)植物エキス、植物抽出物、精油などが挙げられる。
飲食品としては、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓;和・洋菓子類、ジャム類、キャンディー類、ゼリー類、ガム類、パン類、コーヒー類、ココア類、紅茶類、ウーロン茶類、緑茶類の如き嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類、風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類などが挙げられる。
口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類などが挙げられる。
医薬品類としては、例えば、ハップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤などが挙げられる。
賦香製品としては、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨などが挙げられる。
【0017】
本発明で規定するチオール化合物は、下記一般式(1):
RSH (1)
(式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10脂環式アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよい複素環基である。)
で表されるチオール化合物である。
【0018】
上記一般式(1)中、Rが炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
【0019】
Rが炭素数2〜18の直鎖状又は分岐状のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基及びオクタデセニル基等が挙げられる。
【0020】
Rが置換基を有していてもよい炭素数5〜10脂環式アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基等が挙げられる。
【0021】
Rが置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、α−ナフチル基及びβ−ナフチル基等が挙げられる。
【0022】
Rが置換基を有していてもよい複素環基の具体例としては、フリル基、チエニル基、ピロニル基、ベンゾフリル基、イゾベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、カルバゾイル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基及びピラジル基等が挙げられる。
【0023】
ここで置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プルピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びペンチル基、又はヘキシル基などの炭素数1乃至6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などの炭素数5乃至12の環状アルキル基;トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基及びノナフロロブチル基などの炭素数1乃至4のパーフロロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシル基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基などの炭素数1乃至4のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子;ベンジル基、フェニルエチル基及びナフチルメチル基などの炭素数7乃至12のアラルキル基等が挙げられる。
【0024】
本発明の一般式(1)で表されるチオール化合物の具体例としては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−アミルメルカプタン、イソアミルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メチル−3−ブタンチオール、アリルメルカプタン、イソペンテニルマルカプタン、チオゲラニオール、リモネンチール、8−メルカプトメントン、p−メンテン−8−チオール、チオメントール、チオグリセリン、フェニルメルカプタン、o−チオクレゾール、2−エチルチオフェノール、2−ナフチルメルカプタン、フルフリルメルカプタン、メチルフルフリルメルカプタン、2−メチル−3−フランチオール、チエニルメルカプタン、チオフルフリルメルカプタン、2−メルカプトプロピオン酸、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール、4−エトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール、5−メトキシ−3−メチル−3−ペンタンチオール、3−メルカプト−2−ペンタノン、ギ酸3−メルカプト−3−メチルブチル、3−メルカプトヘキサノール、3−メルカプトヘキサナール、3−メルカプトヘキシルアセテート、3−メルカプトヘキシルブタノエート、3−メルカプトヘキシルペンタノエート、3−メルカプトヘキシルヘキサノエート、4−メルカプト−4−メチルペンタン−2−オン、4−メルカプト−4−メチルペンタン−2−オ−ル、3−メルカプト−3−メチルブタン−1−オール、3−メルカプト−3−メチルブチルアセテート、3−メルカプト−3−メチルブチルプロパノエート、1,1―エタンジチオール、1,2―エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1−メチルチオ−エタンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−メチルペンタノール、3−メルカプト−2−メチルペンタナール、3−メルカプト−2−メチルブタノール、3−メルカプト−2−メチルブタナール、3−メルカプト−3−メチルヘキサノール、1−メトキシ―3−ヘキサンチオール、1−エトキシ―3−ヘキサンチオール、メルカプトアセトアルデヒド、1−メルカプト−2−プロパノン、1−メルカプト−2−ブタノン、3−メルカプト−2−ブタノン、1−メルカプト−3−ペンタノン、2−メルカプト−3−ペンタノン、5−メチル−4−メルカプト−2−ヘキサノン、2−メルカプトエチルアセテート、エチル3−メルカプトプロパノエート、エチル2−メルカプトプロパノエート、エチル3−メルカプトブタノエート、エチル3−メルカプト−2−メチルプロパノエート、3−メルカプト−2−メチルペンタナール、エチル2−メルカプトプロピオネート、3−メルカプトプロピルアセテート、2,5−ジメチル−3−フランチオール、2−メチル−3−チオフェンチオール、2−(チオフェン−2)−エタンチオール、3,4−ジメチル−2,3−ジヒドロチオフェン−2−チオール、4−メルカプト−2,5−ジメチルチオフェン−3−オン、5−メチル−2−フルフリルチオール等が挙げられる。
なお、上記例示したチオール化合物は、揮発性を有する化合物は香気を有するものであり、本発明においては、これらを香料チオール化合物と総称する。
【0025】
本発明で規定する高分子担持チオスルフェート化合物は、下記一般式(2)
【0026】
【化6】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合された担体であり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持チオスルフェート化合物である。
好ましくは、nが1であり、環Aは、フッ素原子を置換基として有していてもよいものである。
【0027】
上記一般式(2)中、Pは、直接又は間接的に結合された担体は、通常知られている担体であって、それは有機物であっても無機物であってもよく、本発明の単離又は回収工程において、溶媒に不溶にするものであれば特に限定されない。
【0028】
無機物の担体としては、例えば、アルミナとシリカゲル等を挙げることができる。
有機物の担体としては、例えば、ポリアミド類、ポリスチレン類、ポリエーテル類、ポリエチレン類などが好ましく、メリフィールド(Merrifield)樹脂と呼ばれるポリスチレン樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、ポリアミド、アミノメチル化ポリスチレン樹脂、ウォング樹脂、テンタゲル樹脂、アミノメチル化テンダゲル樹脂などが特に好ましい。
本発明においては、こられ担体は、A環に直接又は間接的に結合された担体、好ましくは、A環に直接的に結合された担体であることが、本発明において高選択的に且つ高収率で目的物を単離または回収できる点で好ましい。
【0029】
環Aの置換基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プルピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びペンチル基、又はヘキシル基などの炭素数1乃至6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などの炭素数5乃至12の環状アルキル基;トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基及びノナフロロブチル基などの炭素数1乃至4のパーフロロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシル基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基などの炭素数1乃至4のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子;ベンジル基、フェニルエチル基及びナフチルメチル基などの炭素数7乃至12のアラルキル基等が挙げられる。
【0030】
ここで、一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物のnは、0〜5の整数である。一般式(2)におけるこのnは、主として、高分子担持チオスルフェート化合物(2)の原料化合物である一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物のnの値によって定められる。
【0031】
本発明の一般式(2)の化合物は、例えば、スキーム1によって示される方法により合成される。
(スキーム1)
【0032】
【化7】
(式中、P、n、A及びXは、前記と同義である。)
【0033】
すなわち、高分子担持ハロゲン化合物(4)を、アミン類の存在下、チオ硫酸アルカリ金属塩で処理することにより、高分子担持チオスルフェート化合物(2)へと誘導することができる。
【0034】
本発明の出発原料である高分子担持ハロゲン化合物は、下記一般式(4)
【0035】
【化8】
(式中、Pは、直接又は間接的に結合された担体であり、Xはハロゲン原子であり、nは、0〜5の整数であり、環Aは、置換基を有していてもよい。)
で表される高分子担持ハロゲン化合物である。
【0036】
ここで、直接又は間接的に結合された担体とは、一般式(2)で例示したものを挙げることができる。また、環Aの置換基としては、一般式(2)で例示したものを挙げることができる。
【0037】
ここで、一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物のnは、0〜5の整数である。一般式(4)におけるこのnは、主として、チオ硫酸アルカリ金属塩との反応性によって定められる。好ましいnの値は1である。
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0038】
一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物の具体的としては、例えば、クロロメチルポリスチレン樹脂、クロロメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロメチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロメチルポリアミド、クロロメチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロメチルウォング樹脂、クロロメチルテンタゲル樹脂、クロロメチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
ブロモメチルポリスチレン樹脂、ブロモメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ブロモメチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、ブロモメチルポリアミド、ブロモメチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、ブロモメチルウォング樹脂、ブロモメチルテンタゲル樹脂、ブロモメチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
ヨードメチルポリスチレン樹脂、ヨードメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ヨードメチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、ヨードメチルポリアミド、ヨードメチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、ヨードメチルウォング樹脂、ヨードメチルテンタゲル樹脂、ヨードメチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
クロロエチルポリスチレン樹脂、クロロエチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロエチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロエチルポリアミド、クロロエチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロエチルウォング樹脂、クロロエチルテンタゲル樹脂、クロロエチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
クロロプロピルポリスチレン樹脂、クロロプロピルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロプロピルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロプロピルポリアミド、クロロプロピルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロプロピルウォング樹脂、クロロプロピルテンタゲル樹脂、クロロプロピルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
クロロブチルポリスチレン樹脂、クロロブチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロブチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロブチルポリアミド、クロロブチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロブチルウォング樹脂、クロロブチルテンタゲル樹脂、クロロブチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
クロロペンチルポリスチレン樹脂、クロロペンチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロペンチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロペンチルポリアミド、クロロペンチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロペンチルウォング樹脂、クロロペンチルテンタゲル樹脂、クロロペンチルアミノメチル化テンダゲル樹脂;
等を挙げることができる。
好ましくは、クロロメチルポリスチレン樹脂、クロロメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、クロロメチルポリスチレン−ポリエチレングリコール樹脂、クロロメチルポリアミド、クロロメチルアミノメチル化ポリスチレン樹脂、クロロメチルウォング樹脂、クロロメチルテンタゲル樹脂、クロロメチルアミノメチル化テンダゲル樹脂であり、更に好ましくは、クロロメチルポリスチレン樹脂、クロロメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0039】
本発明の方法は、一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物を、アミンの存在下、チオ硫酸アルカリ金属塩で処理することにより、高分子担持チオスルフェート化合物(2)を製造する。
本発明に使用される高分子担持ハロゲン化合物とチオ硫酸アルカリ金属塩との反応に用いられるチオ硫酸アルカリ金属塩としては、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどを挙げられる。そのうちでも、チオ硫酸ナトリウムなどが反応の選択性及び収率が高く、また汎用性は高いことから好ましい。
チオ硫酸アルカリ金属塩の使用割合は、高分子担持ハロゲン化合物のXで表されるハロゲン原子に対して、チオ硫酸アルカリ金属塩が1.5〜8倍モルであるのが好ましく、2〜3倍モルであるのがより好ましい。
【0040】
本反応に使用されるアミン類としては、下記一般式(6)
【0041】
【化9】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、分岐してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよい3〜8員環のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R、R及びRのいずれか2つが結合して環を形成していてもよく、R、R、R及び窒素原子が一緒になって芳香族環を形成していてもよい。)
で表されるアミン類が挙げられる。
【0042】
一般式(6)のR〜Rで表される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n − プロピル基、イソプロピル基、n − ブチル基、イソブチル基、s e c − ブチル基、t e r t − ブチル基、n − ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を例示することができる。
一般式(6)のR〜Rで表される3〜8員環の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を例示することができる。
一般式(6)のR〜Rで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等を例示することができる。
【0043】
一般式(6)のR、R及びRのいずれか2つが結合して環を形成する場合は、例えば、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、インドリン、イソインドリン等のごとき環状アミンを例示することができる。
【0044】
一般式(6)のR、R、R及び窒素原子が一緒になって芳香族環を形成する場合は、ビリジン類、ピラジン類等のごとき芳香族複素環化合物を例示することができる。
【0045】
具体的な一般式(6)で表されるアミン類としては、例えば、第3級アミン類またはピリジン類などを挙げることができる。
アミン類が、第3級アミン類の場合、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル1,3−プロパンジアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどを挙げることができる。
アミン類が、ピリジン類の場合、具体的には、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリンなどを挙げることができる。
【0046】
好ましいアミン類としては、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N−ジメチルアミノピリジンなどが、汎用性があり、反応の選択性及び収率が高いことからより好ましい。
これらは単独で用いても、また二種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いられるアミン類は市販品をそのまま用いることもできるし、精製して用いることもできる。
アミン類の使用割合は、高分子担持ハロゲン化合物のXで表されるハロゲン原子に対して、アミン類が1〜8倍モルであるのが好ましく、1〜2倍モルであるのがより好ましい。
本発明の製造方法では、上記アミン類を溶媒として使用することもできる。
【0047】
本発明の製造方法は、上記アミン類以外に、溶媒を使用することができる。用いられる溶媒としては、水性溶媒が好ましい。
ここで、水性溶媒とは、水もしくは、水と水溶性有機溶媒からなる両者の実質的に均一に混和された混合溶媒をいう。そのような水性溶媒としては、高分子担持ハロゲン化合物とチオ硫酸アルカリ金属塩との反応によって、一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物を生成させるのに適したものを、任意に選択することができる。具体的には、水もしくは、水と水溶性有機溶媒、好ましくは、低級アルコールやアセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等とからなる混合溶媒を挙げることができる。水溶性有機溶媒は2種以上用いることができる。水と水溶性有機媒体との量比は、水:水溶性有機溶媒=20〜100:80〜0(質量比)、特に35〜75:65〜25(質量比)、が好ましい。本発明において特に好ましい水性溶媒は、水とメタノールとの混合液であって、水:水溶性有機溶媒が50〜75:50〜25(重量比)のものである。
これらの溶媒の使用量は、特に限定はないが、高分子担持ハロゲン化合物(4)に対して、約0.1〜100倍容量、好ましくは約0.5〜10倍容量の範囲である。
【0048】
一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物とチオ硫酸アルカリ金属塩とを反応させる際に、水性溶媒中に適当な界面活性剤が存在している場合、この反応が速やかに進行することがある。よって、本発明では、必要に応じて、そのような界面活性剤を用いることができる。
【0049】
本発明において、一般式(4)で表される高分子担持ハロゲン化合物、一般式(5)で表されるアミン類及びチオ硫酸アルカリ金属塩とから一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物を生成させる際の反応温度は、50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。また、前記の温度を保ちながら約1〜50時間、好ましくは1〜10時間で反応させることによって、反応を円滑に行うことができる。
【0050】
上記反応によって得られた反応液から、反応終了後、反応した樹脂を水及び有機溶媒で洗浄後、乾燥することにより、本発明の目的物である高分子担持チオスルフェート化合物を製造することができる。
【0051】
前記して得られた一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物を材料として用いて、本発明においては、チオール化合物含有混合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する。
【0052】
本発明において、一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物は、スルフェート酸(−S−SOH)又はスルフェートのアルカリ金属塩(−S−SOM:Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムである。)のいずれかの状態で存在するものである。
【0053】
本発明では、第一段階として、スキーム2によって示される方法により、一般式(2)で表される高分子担持チオスルフェート化合物を一般式(3)で表される高分子担持ジスルフィド化合物へと導かれる。
(スキーム2)
【0054】
【化10】
(式中、R、P、n及びAは、前記と同義である。)
すなわち、チオール化合物含有混合物を前記高分子担持チオスルフェート化合物(2)と接触処理させることにより高分子担持ジスルフィド化合物(3)へと誘導することができる。
【0055】
本発明においては、チオール化合物含有混合物は、そのまま用いてよいし、事前に前処理して用いてもよい。
【0056】
香気成分の分離濃縮方法としては、溶媒抽出法、固相抽出法、減圧蒸留抽出法、ヘッドスペースガス分析法(スタティック法またはダイナミック法)および固相マイクロ抽出法が挙げられる(例えば、非特許文献3を参照)。
溶媒抽出法としては、水溶性液体試料に有機溶剤(ペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、フルオレンなどから一つまたは二種類以上の混合液)を加え撹拌し、香気を有機相に抽出する。水溶性液体試料に食塩を加え塩析する場合もある。得られた有機相を水相と分離し、硫酸マグネシウムなどを加え脱水し、香気成分濃縮物が得られる。必要な場合、同濃縮物の有機溶媒を除去することで高濃縮物を調製する場合もある。
【0057】
このようにして前処理して得られたチオール化合物含有混合物(以下、「前処理済チオール化合物含有混合物」と記載する場合もある)から、チオール化合物を単離及び/又は回収してもよい。
【0058】
本発明では、チオール化合物含有混合物または前処理済チオール化合物含有混合物(以下、「チオール化合物含有検体」と記載する場合もある)を、前記高分子担持チオスルフェート化合物(2)と接触処理することが重要であり、チオール化合物含有検体をそのまま用いてもよいし、チオール化合物含有検体を水または緩衝液、で希釈した後、さらに、必要に応じ、抽出時の操作を簡便にする目的でメタノールやエタノール等のアルコール類を必要量を追加した後、高分子担持チオスルフェート化合物(2)と接触処理してもよい。本発明においては、チオール化合物含有検体を緩衝液で希釈した後、高分子担持チオスルフェート化合物(2)と接触処理することが有利である。
【0059】
本発明で用いられる緩衝液としては、例えば、塩化カリウム−塩酸緩衝液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム緩衝液、グリシン+塩化ナトリウム−塩酸緩衝液、グリシン+塩化ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液、塩化アンモニウム−アンモニア水緩衝液、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液などを挙げることができる。
好ましくは、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸二水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液であり、特にリン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液などが好ましく用いられる。
これらの緩衝液の使用量は、特に限定はないが、チオール化合物含有検体に対して、約0.1〜100倍容量、好ましくは約0.5〜10倍容量の範囲である。
【0060】
接触処理方法としては、容器に前記高分子担持チオスルフェート化合物(2)を入れた後、前記チオール化合物含有検体を当該容器に注ぎ込み吸着処理する方法が用いられる。
チオール化合物含有検体を高分子担持チオスルフェート化合物と接触処理する条件は、用いるチオール化合物含有検体の種類・性状などにより変動するので、それらの要因により最適な処理条件とすればよいのであって、一概に規定することができないが、例えば、次のような接触処理条件から選ぶことができる。
【0061】
高分子担持チオスルフェート化合物の量は、チオール化合物含有検体における固形分相当の0.1倍(質量)以上であることが好ましく、2〜10倍(質量)であることが好ましい。
本発明において、高分子担持チオスルフェート化合物(2)、チオール化合物含有検体との接触処理のより高分子担持ジスルフィド化合物(3)を生成させる際の反応温度は、5〜70℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。また、前期の温度を保ちながら約1〜50時間、好ましくは1〜10時間で処理することにより、反応が円滑に進行させることができる。
【0062】
上記反応によって得られた反応液から、反応終了後、反応した樹脂を水及び有機溶媒で洗浄後、乾燥することにより、本発明の目的物である高分子担持ジスルフィド化合物を調製することができる。
【0063】
前記して得られた一般式(3)で表される高分子担持ジスルフィド化合物から、チオール化合物を単離及び/又は回収する。
【0064】
本発明では、第二段階として、スキーム3によって示される方法により、一般式(1)で表されるチオール化合物を導くことにより単離及び/又は回収する。
(スキーム3)
【0065】
【化11】
(式中、R、P、n及びAは、前記と同義である。)
すなわち、高分子担持ジスルフィド化合物(3)を還元剤で処理させることにより高分子担持チオール化合物(5)及びチオール化合物(1)となし、反応処理物を有機溶媒にて抽出することによりチオール化合物(1)を単離及び/又は回収することができる。
【0066】
本発明に使用される還元剤としては、ジスルフィド結合を還元的にチオールへと還元できる還元剤であれば特に限定されてないが、例えば、2−メルカプトエタノール(2ME)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオブチルアミン(DTBA)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、水素化ホウ素ナトリウム、亜鉛酢酸などを挙げられる。
好ましくは、2−メルカプトエタノール(2ME)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオブチルアミン(DTBA)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などであり、そのうちでも、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオブチルアミン(DTBA)、などは、反応の選択性及び収率が高く、さらに水溶性であることから、次工程のチオール化合物(1)を単離及び/又は回収において容易に分離できることから好ましい。
還元剤の使用割合は、高分子担持ジスルフィド化合物(3)に対して、還元剤が、1.5〜8倍モルであることが好ましく、2〜3倍モルであるのはより好ましい。
【0067】
本発明においては、還元剤で処理する際には、溶媒を使用する。用いられる溶媒としては、水または緩衝液と、有機溶媒との混合溶液で行うことが、次工程のチオール化合物(1)を単離及び/又は回収において容易に操作できることから好ましい。
【0068】
本発明で用いられる緩衝液としては、例えば、塩化カリウム−塩酸緩衝液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム緩衝液、グリシン+塩化ナトリウム−塩酸緩衝液、グリシン+塩化ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液、塩化アンモニウム−アンモニア水緩衝液、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液などを挙げることができる。
好ましくは、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸二水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液であり、特にリン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液などが好ましく用いられる。
これらの緩衝液の使用量は、特に限定はないが、チオール化合物含有検体に対して、約0.1〜100倍容量、好ましくは約0.5〜10倍容量の範囲である。
【0069】
本発明で用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を用いることができる。好ましくはエーテル系溶媒が用いられる。溶媒の量は、特に限定はないが、チオール化合物含有検体に対して、約0.1〜100倍容量、好ましくは約0.5〜10倍容量の範囲である。
なお、水または緩衝液と、有機溶媒との混合割合は、適宜調整することができるが、好ましくは、1:10〜10:1(容量比)である。
【0070】
本発明において、高分子担持ジスルフィド化合物(3)と還元剤との処理のよりチオール化合物(1)を生成させる際の反応温度は、5〜70℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。また、前記の温度を保ちながら約0.1〜50時間、好ましくは約0.5〜10時間で処理することにより、反応が円滑に行うことができる。
【0071】
上記反応によって得られた反応液から、反応終了後、樹脂(高分子担持チオール化合物(5))を濾過し、得られた濾液を有機溶媒(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系有機溶媒など)にて抽出した後、飽和食塩水等にて洗浄後、濃縮することにより回収物を得ることができる。
このようにして得られた回収物には、目的とするチオール化合物(1)が含まれている。
【0072】
なお、本発明では、高分子担持チオスルフェート化合物(2)から高分子担持ジスルフィド化合物(3)への変換(スキーム2)、高分子担持ジスルフィド化合物(3)から、高分子担持チオール化合物(5)及びチオール化合物(1)への変換に次ぐ、チオール化合物(1)の単離及び/又は回収(スキーム3)の工程において、樹脂である高分子担持チオスルフェート化合物(2)をカラムにつめ、上記操作をカラム中にて処理するカラム法にて行うこともできる。
【0073】
上記手法にて得られたチオール化合物(1)は、様々な用途に展開することができる。
また、回収物中のチオール化合物の構造は、例えば、GC/MSで分析し、マススペクトル/構造解析ライブラリー検索にて、化合物の構造を特定することができる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えてもよい。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、“%”は“質量%”を意味し、組成比は質量比を表すものとする。
【0075】
[参考例]ジスルフィドモノマーの合成
参考例として、モノマーに相当するビニルベンジルクロライドを原料として、ジスルフィド化合物を合成した。
[参考例1]ビニルベンジルチオスルフェートの合成
【0076】
【化12】
ビニルベンジルクロライド1.0g(6.55mmol)にトリノルマルブチルアミン5mL,チオ硫酸ナトリウム5水和物2.38g(9.59mmol)を加えて、100℃で2時間加熱還流した。冷却後、水30mLおよびジエチルエーテル30mLで希釈した。水層を分離し、0.1M塩酸水を加えpH2.0とした。その後、ジエチルエーテル30mLにて2回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、標題化合物を得た。
なお、得られた化合物の物性値は、下記の通りであった。
【0077】
[LC−IT−TOF/MS条件] イオン化法: ESI(Negative mode)
精密質量は、229.0009(組成式:[C)であった。
[参考例2]ビニルベンジル(2−ペンタノン−3−イル)ジスルファンの合成
【0078】
【化13】
【0079】
参考例1で得たビニルベンジルチオスルフェート0.1g(0.44mmol)に10%3−メルカプト−2−ペンタノンのエタノール溶液0.01mL、pH7.2のリン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液3mLを加えて、室温で3時間攪拌した。反応終了後、ジエチルエーテル30mLにて2回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去することにより、標題化合物を得た。
なお、得られた化合物の物性値は、下記の通りであった。
【0080】
[GC−TOF/MS条件]
Instrument: JMS-T100GCV(JEOL)、Ionization: FI、
Column: Rxi-5ms 30mX0.25mm i.d., 0.25micro-m
Instrument:GC:Agilent7890,
精密質量は、266.0798(組成式:[C1418OS)であった。
【0081】
参考例1及び参考例2より、モノマーのビニルベンジルクロライドモノマーから、チオスルフェート体及びジスルフィド体へと進行することが確認できた。
【0082】
[実施例1]高分子担持チオスルフェートの合成
参考例の方法に準じて操作を行い、高分子担持体の誘導体の合成を行った。
【0083】
【化14】
【0084】
反応容器に、高分子担持ベンジルクロライド(100〜200メッシュ、2.9mmol/g、クロロメチルポリスチレン樹脂 1%DVB架橋、東京化成工業株式会社、製番コード C1750)4.72g、チオ硫酸ナトリウム5水和物12.5g(4.0eq)、トリノルマルブチルアミン25mLを加えて、100℃で3時間攪拌した。冷却後、樹脂を水、アセトン、ジエチルエーテルの順番で洗浄し、その後、乾燥することにより、標題化合物5.55g(2.3mmol/g)を収率79%で得た。
【0085】
[実施例2]チオール類の回収
(1)チオール類の固定化
モデル香料組成物として、2−メチル−3−フランチオール(a)、3−メルカプト−2−ペンタノン(b)、ギ酸3−メルカプト−3−メチルブチル(c)、3−ヘルカプトヘキサノール(d)の4化合物がそれぞれ1mg/Lとなるチオール類のエタノール溶液(モデル香料組成物(1))を調整した。
【0086】
【化15】
【0087】
反応容器に、上記調整したモデル香料組成物(1)1g(1.4mL)と実施例1で得た高分子担持チオスルフェート100mg、リン酸緩衝液(2.0M、pH7.2)1.4mLを加え、室温で5時間攪拌した。その後、樹脂を水50mL、メタノール100mL、アセトン100mL、酢酸エチル100mL、ジエチルエーテル100mLの順番で洗浄し、その後、乾燥した。
【0088】
(2)チオール類の回収
反応容器に、実施例2(1)で得られた樹脂、水2mL、ジチオブチルアミン(DTBA)10mgを加え、室温で1時間攪拌した。ジエチルエーテル0.7mLを加えて、有機層を分離することにより、チオール回収組成物(1)を得た。
モデル香料組成物(1)及びチオール回収組成物(1)をGC/MS測定を行った。モデル香料組成物(1)でのGC/MS測定での面積値を標準とし、回収率を算出した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
[実施例3]チオール類の回収
(1)チオール類の固定化
モデル香料組成物として、ミートフレーバー組成物1gに2−メチル−3−フランチオール(a)、3−メルカプト−2−ペンタノン(b)、ギ酸3−メルカプト−3−メチルブチル(c)、3−ヘルカプトヘキサノール(d)の4化合物がそれぞれ1μgを加えモデル香料組成物(2)を調整した。
【0091】
反応容器に、上記調整したモデル香料組成物(2)1g(1.4mL)と実施例1で得た高分子担持チオスルフェート100mg、リン酸緩衝液(2.0M、pH7.2)1.4mLを加え、室温で5時間攪拌した。その後、樹脂を水50mL、メタノール100mL、アセトン100mL、酢酸エチル100mL、ジエチルエーテル100mLの順番で洗浄し、その後、乾燥した。
【0092】
(2)チオール類の回収
反応容器に、実施例3(1)で得られた樹脂、水2mL、ジチオブチルアミン(DTBA)10mgを加え、室温で1時間攪拌した。ジエチルエーテル0.7mLを加えて、有機層を分離することにより、チオール回収組成物(2)を得た。
モデル香料組成物(2)及びチオール回収組成物(2)をGC/MS測定を行った。結果を図1図2及び図3に示す。
【0093】
図1図2及び図3から、多数の混合成分であるモデル香料組成物(2)からチオール化合物が選択的に回収されていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1図1は、モデル香料組成物(2)のガスクロマトグラフィーのよる測定結果である。
図2図2は、モデル香料組成物(2)の回収処理後のガスクロマトグラフィーのよる測定結果である。
図3図3は、モデル香料組成物(2)の回収処理後のガスクロマトグラフィーのよる測定結果の100倍拡大図である。
図1
図2
図3