【文献】
”3.2 基本コマンド”,UNISYS 次世代統合CAD/CAMシステム CADCEUS解説書 基本編 初版,日本ユニシス株式会社,1992年 7月,第1版,p.3_11-3_15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
施工建物に係る図面でありかつ同一領域を含む図面として指定された複数の異なる指定図面について、前記同一領域どうしが重なるように前記指定図面の座標軸を位置調整する位置調整部と、
前記位置調整部での位置調整後の前記指定図面どうしを統合し、統合図面として記憶部に格納する統合部と、
前記統合図面を表示可能な図面表示処理部と、
前記施工建物に係る図面上の座標にプロパティ情報を対応付ける情報挿入部と、
前記施工建物に係る図面上の、同一種の複数の部位のうちの代表点の座標に対応付けられたプロパティ情報を、前記同一種の部位のうちの他の部位の座標に対する前記プロパティ情報として等しく対応付ける代表点共通処理部と、
を備え、
前記統合部は、前記プロパティ情報も統合し、
前記図面表示処理部は、前記統合図面を表示する際に、統合した前記プロパティ情報も表示可能になっていることを特徴とする施工情報管理システム。
前記記憶部に格納された統合図面に含まれる指定図面の中から、入力される検索条件に該当する指定図面を検索する検索部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の施工情報管理システム。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築現場において行なわれる施工管理は、現場での実測や目視確認に基づいて行なわれることが基本になっている。
施工管理担当者は、施工状況の検証と記録とを行なうため、設計図面、施工要領書、カメラ、黒板等を現場に持参している。現場では、図面との照合確認を行い、黒板に所定事項を記載し、検査目的に応じて写真撮影を行なっており、例えば寸法を明らかにすることが目的の場合は検査対象施工物にスケールをあてがって写真撮影を行なっている。また数量を明らかにすることが目的の場合は、検査対象施工物にカラーマーカーをあてがって写真撮影を行っている。そして、出来上がった写真を部位、工事種目、日付等によって整理し、関係者に提出あるいは配布、または提示等をしている。
【0003】
このような現場における作業は、膨大な撮影量になりまた撮影内容は似通った画像を複数箇所撮影することとなるため、その整理も含めた作業が発生し、施行管理担当者にとっては、相当量の負担となっている。
これを回避するために、例えば、表示部に表示された図面データ上に検査位置が入力された場合に撮像部を起動させ、撮像部によって撮像された撮像データを、検査位置の緯度経度座標および検査日時と対応付けて記憶させることにより、個々の撮像データがどの建物のどの箇所をいつ撮影したものであるかが一意に定まり、検査情報が膨大な数になる場合であっても、これらを正確に管理できるようにした方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、施工管理における施工記録のうち、工事記録写真は、国土交通大臣官房庁営繕部監修の工事写真の撮り方(建築編)によると、施工記録は主に以下の5つの目的が挙げられている。
(1)工事過程の記録
(2)使用材料の確認
(3)品質管理の確認
(4)維持保全の資料
(5)問題解決の資料
これらのうち、(1)の工事過程を記録する際には、記録された日時、時間など、記録の前後関係が重要となる。また、(2)では、施工にあたり、土中に埋設するなどのために完成以後の確認が困難な材料や、包装紙や素材自体に印字されたものを、写真などにより一元管理する必要がある。また、(3)では、(1)、(2)に関連して、出来上がりの施工精度など、設計とスケールなどの比較対象物と併せて記録することで、意味をなす必要がある。
【0005】
さらに(4)では、工事完成後、発注者に引き渡された後、施工時の状況確認、最適な補修方法の検討や計画などに用いる資料として必要となる。また、(5)では、敷地や近隣建物の状況等、着工前に記録を取っておくことで、関係者間の相互認識や問題発生の前後関係の解明等に役立てることができる。
つまり、施工管理記録における目的は、記録された日時等の時間軸での前後関係の明確化、隠蔽部や紙や素材自体に記録された各種記録の写真によるデータの集約化、一元化、さらに記録の精度に関連して、読取可能な画質、画角の記録、等、を満足している必要がある。
【0006】
これらを実現するために、例えば、工事記録を紙により管理する方法、あるいは建物情報モデルBIM(Building Information Modeling)を利用した管理方法等が提案されている。
工事記録を紙により管理する方法においては、施工状況の検証を行なう際に、検査単位で記録しこれをファイリングしている。
【0007】
ここで、デジタルカメラなどで撮影された場合、画像がもつExifファイルなどには、撮影日時、場合によってはGPS情報等の情報がプロパティ情報として格納されている。また、Word(登録商標)、Excel(登録商標)等の電子ファイルで報告書などを作成した場合、報告書の作成日時、保存日時などで、撮影写真や報告書の前後関係が情報として残されている。つまり、撮像データが記録された日時などの時間軸での前後関係は記録されている。
【0008】
しかしながら、工事記録を紙に印刷したものをファイリングにより管理する方法では、部位毎の閲覧や、ある位置での串刺しでの閲覧などは行なうことができない。また、印刷された画像では、対象画像を拡大して印刷しようとしても、紙への印刷であるため精度に限界がある。
以上のようなことから、工事記録の管理は、紙ではなく電子データでの保存、また、電子ファイリング化へ移行しつつある。また、紙資源の削減の観点から電子納品が盛んとなっている。
【0009】
しかしながら、電子納品の際のフォーマットや格納形式などは発注者や各自治体によって異なるため、現状では統一されておらず、適切な形式を試行錯誤している段階にある。その一環として、統一化の試みの一つとして、建物情報モデルBIMによる統一化の試みがなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明は、従来、紙ないし電子ファイルで図面毎、検査データ毎でファイリングしておき、これら図面毎、検査データ毎のファイルのうち所望の情報が含まれるファイルを閲覧していたのに対し、BIMなどの建物モデルによる固有のxyz座標軸をもつデータベース上に、各種検査記録がxyz軸上に紐付けられてプロットされたものを、時間軸、xyz軸、フリーワード検索など、ユーザの求める各種検索方法からデータを引き出すようにしたものである。
【0025】
図1は、本発明の施工情報管理システム100の一例を示す概略構成図である。
施工情報管理システム100は、共有図面データベース1と、スケジュールデータベース2と、入力ツール3と、統合処理装置4と、統合図面データベース5と、閲覧・検索ツール6とを備える。
共有図面データベース1は、例えばクラウド或いはサーバー上に設けられ、建物情報モデルBIM等により生成された設計図などの各種データ、各施工工程において生成される平面図、立面図、部分詳細図などといった各種図面の図面データなどが格納される。スケジュールデータベース2は、例えばクラウド或いはサーバー上に設けられ、検査対象の施工建物の施工スケジュールを表すスケジュールデータが格納される。
【0026】
入力ツール3は、共有図面データベース1に格納された図面データに対して、画像データの挿入等の処理を行なう。統合処理装置4は、入力ツール3での挿入操作後の図面データを用いて図面の統合処理を行なう。統合図面データベース5には、入力ツール3による挿入操作後の図面データおよび統合処理後の図面データが格納される。閲覧・検索ツール6は、統合処理後の統合図面の中から所望の図面を検索し表示して、図面の閲覧や施工建物完成後のメンテナンス処理等に、所望の図面を表示する。
【0027】
入力ツール3は、カメラやマイクなどの記録部、入力操作部、表示部、さらにこれらを制御する演算処理部などを備えた携帯端末などで構成され、さらに、例えば、Field Pad(大成建設株式会社の登録商標)等の、ファイルへピンを落してピンごとに「コメント・写真・音声・動画・タグ」といった情報を付加記録する機能を備える。
すなわち、入力ツール3は、
図2に示すように、記録部31と、スケジュールデータベース2に格納されているスケジュールデータをもとに、予測変換候補を提示する予測変換候補提示部32と、共有図面データベース1に格納されている共有図面データに対して例えば記録部31で撮影した撮影データ、またコメントなどといったプロパティ情報を挿入する情報挿入部33と、情報挿入部33で挿入された代表点のプロパティ情報を、代表点と同種の部位を表す他の部位のプロパティ情報として共通化する代表点共通処理部34と、を備える。
【0028】
情報挿入部33は、例えば
図3に示すように、共有図面データベース1から、所望の図面をローカル図面としてダウンロードし、このローカル図面から1ページを切り出し、記入可能なローカルノートとして所定の記憶領域に保存する。
そして、情報挿入部により撮影データの挿入指示が行なわれたときには、挿入指示が行なわれた位置にピンを設定し、記録部31で撮影された撮影データをピンの位置座標と対応付けて記録する。ローカルノートに設定されたピンには、
図3に示すように、例えば、「Note名、Note元ファイル名(ローカル図面名)、Pin(x,y)(ピンの位置座標)、Pin位置に対応付けられた撮影データの内容等」といった、撮影データの内容を表す情報をプロパティ情報として設定することができるようになっている。そして、加工後のローカルノートを含む共有図面データを統合図面データベース5に格納する。なお、ここでは、ローカルノートに撮影データを挿入する場合について説明しているが、これに限るものではなく、記録部31により撮影された画像或いは音声情報に基づき生成される、写真ファイル、動画ファイル、音声ファイルなどを、挿入することも可能である。
【0029】
また、予測変換候補提示部32は、起動時に、スケジュールデータベース2からスケジュールデータを読み込んで、所定の記憶領域に記憶しておく。なお、ここでいう、スケジュールデータとは、工程表等の時間軸にプロパティ情報を持ったものであって、このスケジュールデータがない場合には、後述の「工程時間軸検索」は行なわない。
そして、予測変換候補提示部32は、撮影データの挿入指示が行なわれたとき、現在の年月日を読み込み、スケジュールデータから現時点に近傍のスケジュールを特定し、プロパティ情報としてこのスケジュールに対応付けられている、「○○検査」、「□□工事」等の単語を、プロパティ情報を入力するための入力フォーマット画面に、予測変換候補として表示する。そして、表示された予測変換候補のうち、ユーザによって選択された候補を、この撮影した撮影データの内容を表すNote名として設定する。
【0030】
予測変換候補は、施工建物の施工時の各工程で記録すべき撮影データ、或いは記録する可能性があると予測される撮影データの内容を表すタイトル、また、不具合などといった各工程においてイベント的に生じる可能性があり、イベント的に生じた場合に記録しておくべきと予測される撮影データの内容を表すタイトルが、予めプロパティ情報として各工程と対応付けられてなる。
【0031】
このように、予測変換候補の中から該当するタイトルを選択する構成とすることによって、ユーザは、表示部に表示された予測変換候補、すなわちタイトル候補の中から記録部31で撮影した撮影データの内容に適したタイトルを選択するだけで、その内容を表すタイトルを設定することができ、すなわちユーザがタイトルをキーボードなどで入力する手間を省くことができる。また、タイトルの用語の統一化を図ることができるため、建物の各種検査の記録者が複数存在する場合であっても、ユーザは、各種記録のタイトルから各図面の内容を容易に認識することができ、各種記録の統合化を図りやすくすることができる。
【0032】
また、工事検査において例えば鉄筋の検査などある箇所に対する検査を行なう場合には、検査対象に対して全数検査を行なうのではなく代表点を検査対象として検査を行なうことがある。
これら検査を実施した代表点については、代表点の箇所に対応して撮影データなどの記録が残る。また、全数検査を行なった場合にはその検査箇所に対応して撮影データなどの記録が残る。つまり、検査箇所に対応する記録が一対一で残る。そして、この撮影データなどのプロパティ情報は、後日これら情報を活用する際には、検査を実施した箇所については、その検査記録データの表示を指示すれば対応する記録が表示される。
【0033】
これに対して代表点についてのみ検査を行なった場合には、代表点については検査記録データの表示を指示することによってその検査記録データが表示されるが、代表点を除く代表点と同一種からなる箇所については、検査が行なわれておらず検査記録データが対応付けられていないため、検査記録データは表示されない。
そのため、入力ツール3の代表点共通処理部34は、ローカルノートにおいて、代表点に対してプロパティ情報を設定するとともに、代表点を除く代表点と同一種からなる箇所についても代表点に対するプロパティ情報と同じプロパティ情報を割り付ける。
【0034】
このプロパティ情報の割り付けは、例えば、以下の手順で行なう。
すなわち、まず、入力ツール3において、建物情報モデル(BIM)をもとに検査点のリスト化を図る。例えば、柱の鉄筋検査の場合には、柱符号C11、C12、C13など、柱符号がC11であるもの、或いはC12、C13であるものについて、柱の位置座標をそれぞれピックアップしリスト化する。続いて、入力ツール3を操作し、ローカルノートにおいて代表点に対して撮影データなどのプロパティ情報の挿入を行なう。
【0035】
続いて、建物情報モデル(BIM)リストアップした検査点について、代表点と同一の撮影データ等の検査記録データを対応付ける。これにより、柱符号C11の検査位置が(X1,Y1)の柱であって、柱符号C11の柱が(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)…と複数箇所存在する場合には、検査位置(X1,Y1)の柱のプロパティ情報が、柱(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)…のプロパティ情報として対応付けられる。
【0036】
その結果、検査位置(X1,Y1)において柱のプロパティ情報の表示を指示すると、検査位置について撮影した鉄筋の撮影データなどの検査記録データがプロパティ情報として表示される。また、座標(X2,Y2)において柱のプロパティ情報の表示を指示すると、この座標(X2,Y2)においては、柱の検査を行なっていないが、検査位置(X1,Y1)のプロパティ情報が座標(X2,Y2)の柱のプロパティ情報として表示され、同様に、各柱(X3,Y3)、(X4,Y4)…についてもプロパティ情報として、検査位置(X1,Y1)のプロパティ情報が表示される。
【0037】
ここで、柱の鉄筋検査などの場合には、施工会社が全数検査を行なっている。そのため、施工会社が全数検査を行なった後、その上位の管理会社が検査を行なう場合には、管理会社では、全数検査ではなく代表点の検査が行なわれることが多い。また、メンテナンスの際などに、鉄筋配筋後コンクリートが打設され隠蔽部となった柱に対し、どのような鉄筋が配置されているのかを確認することを目的として撮影データを参照することがある。したがって、このような場合には、一の箇所に対して行なった検査の結果を、隠蔽部の状況は同一と見なして他の箇所に対する検査結果として流用することができる。
【0038】
このような構成とすることによって、例えば、ある地点の鉄筋状況を参照することを目的として、撮影データを撮影した箇所とは異なる地点において鉄筋の撮影データの表示を指示した場合には、指示された場所の鉄筋の撮影データではないが、複数ある鉄筋のうちの代表点の撮影データが表示されることになる。つまり、実際に撮影を行なった鉄筋位置を指定しなくとも、撮影データが表示される。
【0039】
仮に、撮影を行なった位置にしか撮影データが表示されない場合には、撮影データを撮影した位置に該当する地点において撮影データの表示指示を行なう必要がある。つまり、撮影データを撮影した位置を記憶しておく必要があり、言い換えれば、撮影した位置を記憶していない場合には、撮影した位置を探す必要があるため、手間がかかる。
しかしながら、上述のように、代表点の撮影データを、他の地点の撮影データとして対応付けることによって、使い勝手を向上させることができる。
【0040】
次に、統合処理装置4について説明する。
統合処理装置4は、例えば、入力装置、表示部およびこれらを制御する演算処理部を備え、統合図面データベース5に格納されている加工後の共有図面データをもとに、指定されたベース図面に、指定された割り当て図面を割り付ける。すなわち、ベース図面の割り当て図面と対応する領域と割り当て図面とを対応させ、これら図面を異なるレイヤの図面として管理し、これら複数の図面を個別に表示したり、重畳表示したりするようになっている。
【0041】
統合処理装置4は、例えば、
図4に示すように、統合図面データベース5に格納されている共有図面データを統合するにあたり、ずれなどの調整を行なう統合図面調整部41と、必要に応じて統合図面調整部41で調整が行なわれた共有図面どうしを統合する統合処理部42と、を備える。
ここで、建物の図面とは、3次元的な建物形状を、平面図や立面図、部分の詳細図などの2次元形状に置き換え、それらの集合体により3次元的な建物を説明するものである。
【0042】
これら図面をベースに各検査記録はxyz軸上にピン単位で割り付けられる。ピンには、前述のように、記録日時、コメント、タグなどピンと対応した固有のプロパティ情報が設定されるようになっている。これらを活用し、各ピンの座標軸を統合した集合体から、ユーザが、任意の時間軸、任意のxy座標、などを指定することで検索できるようにする。そのために、統合処理装置4では、異なる縮尺の図面間でのピンの結合と、ラスタデータを扱う場合、スキャニング時に生じる図面のずれの補正などの処理とを行なう。
【0043】
まず、縮尺の異なる図面(つまり、ベース図面および割り当て図面)間をリンクし、図面間でピンのプロパティ情報をリンクさせるための手法を説明する。
図5は、ピンのプロパティ情報をリンクさせるための処理手順の一例を示すフローチャート、
図6は
図5の処理手順を説明するための説明図である。
図面の統合処理を行なう場合には、統合処理装置4は、まず、統合図面データベース5に格納された共有図面データや既に統合されている統合図面のタイトル一覧を表示すること等により、統合図面データベース5にどのような図面データが格納されているのかを表示装置に表示する。また、統合処理装置4は、タイトル一覧の該当する図面を選択すること等によって、統合図面データベース5に格納されている共有図面或いは統合図面の中から、ベース図面或いは割り当て図面となる共有図面を選択できるようになっている。
【0044】
例えば、平面図、平面詳細図といった共有図面どうしを統合する場合には、共有図面の中から対象の共有図面をベース図面、割り当て図面として選択すればよい。
また、統合図面に、新たに部分詳細図といった共有図面を統合する場合には、共有図面の中から対象の共有図面を割り当て図面として選択するとともに、統合図面の中から所望の統合図面を選択し、さらにこの選択された統合図面において、この統合図面に含まれる複数の共有図面のうちどの共有図面をベース図面とするかを選択すればよい。つまり、統合図面に含まれる共有図面をベース図面として選択することによって、統合図面に対して複数の共有図面を割り付けることができる。
【0045】
また、統合図面と統合図面とを統合する場合には、統合図面の中から所望の統合図面を選択し、さらにこの選択された統合図面に含まれる複数の共有図面のうちどの供給図面をベース図面とするかを選択し、同様に、所望の別の統合図面を選択し、この選択された統合図面に含まれる複数の共有図面のうちどの共有図面を割り当て図面とするかを選択すればよい。つまり、異なる統合図面に含まれる供給図面それぞれを、割り当て図面、ベース図面として選択すれば、異なる統合図面どうしを、一つの統合図面に統合することができる。
【0046】
統合処理装置4は、統合図面データベース5に格納された図面のうち、ユーザにより選択されたベース図面を読み出し、表示装置に表示する。また、ユーザにより入力されたベース図面の縮尺を読み込む(ステップS1)。例えば、
図6(a)に示すようにベース図面の縮尺が1/100である場合には、ユーザがこの縮尺1/100を入力することにより、これを読み込む。
【0047】
続いて、統合処理装置4では、ベース図面の図面データから縦横比を取得する(ステップS2)。例えば、ベース図面がA3用紙に記載された図面である場合には、A3=420mm×297mmとして取得する。
続いて、統合図面データベース5に格納された図面の中からユーザにより選択された割り当て図面を読み出し、ユーザにより入力されるベース図面の縮尺を読み込む(ステップS3)。
【0048】
次いで、ベース図面の縮尺および縦横比、割り当て図面の縮尺をもとに、例えば
図6(b)に示すように、ベース図面とは異なるレイヤに、割り当て図面として選択された図面を、ベース図面の縮尺や縦横比に合わせてその大きさを調整して表示する(ステップS4)。
図6(b)は、縮尺1/100で記載されたベース図面に、縮尺1/50で記載された割り当て図面を表示した場合を示す。なお、6(b)では、割り当て図面の輪郭のみを表示している。
【0049】
続いて、ユーザが割り付け範囲の位置の調整を行い、ベース図面において割り当て図面を割り付ける(重畳させる)位置を特定すると、統合処理装置4では、例えば、
図6(d)に示すような通り芯設定範囲のパターン、すなわちテンプレートを表示する(ステップS5)。
この通り芯設定範囲のパターンには、
図6(d)に示すように、図面の四隅をそれぞれ含む略アルファベットL字型となるように設定された4通りのパターンがある。
【0050】
そして、ベース図面とは異なるレイヤに表示された割り付け図面において、
図6(c)に示すように、
図6(d)に示す4つの通り芯設定範囲のパターンのうちのいずれか1つのパターンを、図面の角に沿うように表示し、統合処理装置4では、割り付け図面の、通り芯設定範囲のパターン内の領域を、通り芯の検索範囲と判断する。そして、統合処理装置4では、割り当て図面の、通り芯設定範囲のパターン内の領域についてパターン認識を行い、通り芯符号の特徴量を有するパターンを検索する(ステップS6)。
【0051】
なお、通り芯符号の特徴量を有するパターンが存在しないときには、通り芯設定範囲のパターンを別のパターンに切り替え、同様にして通り芯符号の特徴量を有するパターンを検索し、このようなパターンが検出されないときには、通り芯設定範囲のパターンを切り替えて、通り芯符号の特徴量を有するパターンを検索する。なお、この通り芯設定範囲のパターンは、ユーザが手動で設定するようにしてもよく、また、自動的に通り芯の検索範囲として設定された通り芯設定範囲のパターンを、必要に応じてユーザが手動で移動するようにしてもよい。また、この通り芯設定範囲のパターンは、対象となる割り付け画面やベース図面の縮尺などに応じて大きさを調整するようになっている。
【0052】
通り芯符号の特徴量を有するパターンの検索は、例えば以下の手順で行なう。
すなわち、まず、通り芯符号を表す「丸」(円)の輪郭線を、動的輪郭線処理により抽出する。つまり、一般に通り芯符号は、
図6(c)に示すように、「丸」(円)の中に符号が記載されている。したがって、この「丸」を通り芯符号の候補として抽出する。
なお、通り芯符号が「丸」(円)ではなく、例えば、四角で統一されている場合には、「四角」を通り芯符号の候補として抽出すればよい。例えば、一の建物の施工に関する図面については、通り芯符号を例えば「丸」で記載する等、予め統一しておいてもよく、或いは、「丸」、「四角」など、通り芯符号として用いられる可能性のある形状について、形状を切り替えて順次輪郭線の抽出を行うことで、各図面において通り信号符号が「丸」或いは「四角」など、どの形状で記載されているかに関係なく、「丸」或いは「四角」で記載された通り芯符号を抽出するようにしてもよい。
【0053】
そして、「丸」の輪郭線を抽出したならば、「丸」が記載されているだけでは、図面内に記載された他の柱や什器などである可能性があるため、「丸」内の領域を2値化処理する。そして、2値化処理後の領域に対してn×nのメッシュ領域を割り当て、n×nのメッシュ領域に対し、通り芯を表す符号「X1」、「Y1」、…などについて、通り芯の特徴量である2値標本化を行なう。
【0054】
そして、このようにして得た通り芯設定範囲のパターン内の通り芯符号である可能性の高いパターンの2値標本化結果と、通り芯符号を予め2値標本化して得た参照テーブルの2値標本とを比較することにより、通り芯符号であるか否かを判定する。
そして、このようにして得た、通り芯設定範囲のパターン内の通り芯符号について、通り芯符号から延びる直線、すなわち通り芯を、Hough変換などによりパターン認識することにより抽出する(ステップS7)。
【0055】
これにより、割り当て図面について、通り芯の抽出が行なわれたことになる。
同様にして、ベース図面についても通り芯の抽出を行なう(ステップS8)。つまり、ベース図面の、割り当て図面と重なる領域内に含まれる通り芯符号を含むように設定された通り芯設定範囲のパターン内の領域についてパターン認識を行い、ベース図面の、割り当て図面と重なる領域内に含まれる通り芯符号を抽出する。
【0056】
そして、ベース図面の通り芯と割り当て図面の通り芯とが重なるように、例えば、割り当て図面の位置調整を行い、ベース図面と割り当て図面とを重畳表示したときに通り芯どうしが一致するように、例えば割り当て図面の座標軸の位置調整を行なう(ステップS9)。例えば、ベース図面の通り芯と、この通り芯に対応する割り当て図面の通り芯とのずれを画像処理などによって検出し、この差分だけ割り当て図面の座標軸をずらし、ベース図面および割り当て図面の通り芯どうしを一致させる。
【0057】
そして、このようにしてベース図面と座標軸を一致させた割り当て図面に設定されたピンのxy座標と、割り当て図面およびベース図面の縮尺とに基づき、ベース図面の、割り当て図面と重なる領域に対して、割り当て図面に設定されたピンを割り付ける。
以上によって、縮尺の異なるベース図面および割り当て図面間で、ピンのプロパティ情報がリンクされたことになる。そして、このように、通り芯が一致するように位置調整されたベース図面および割り当て図面を統合図面として、統合図面データベース5に格納する。
【0058】
なお、ここでは、割り当て図面に設定されたピンを、ベース図面に割り付けるようにしているがこれに限るものではなく、ベース図面に割り付けた図面を割り当て図面に割り付けるようにしてもよい。
次に、ラスタデータをスキャニングした際の図面のずれの補正の処理手順について説明する。
【0059】
ラスタデータからなるラスタ図面の傾きは、図面内の座標軸を数点指定することにより一致させるか、またはパターン認識の手法によって座標軸変換することにより補正する。このラスタ図面の傾きの補正は、図面間でピンのプロパティ情報をリンクさせる前に実行する。
まず、図面内の座標軸を数点指定することにより一致させる方法を説明する。
【0060】
図7のフローチャートに示すように、統合処理装置4は、まず、ベース図面として選択された図面を、表示装置に表示する(ステップS11)。
この表示されたベース図面において、ユーザは、仮想点として2点を指定する。この仮想点は、ベース図面において、例えば、原点0と、この原点0を基準とした点(0,1)とを表す点として指定する。
【0061】
ユーザが仮想点を指定すると(ステップS12)、統合処理装置4では、原点0と点(0,1)を表す2つの仮想点を通る直線をY軸とし、このY軸に直交し原点0を通る直線をX軸として仮想的にXY座標を設定する(ステップS13)。以後、この仮想的に設定したXY座標を仮想XY座標という。
そして、
図8(a)に示すように、ベース図面に設定されている座標上の点として設定されている各ピンの位置座標(x,y)を、仮想XY座標上の位置座標に変換する(ステップS14)。
【0062】
次に、ユーザは、ラスタデータをスキャニングした図面などであってずれが生じている、変更対象である変更図面(割り当て図面)において、ステップS13の処理で、仮想点として設定した原点0および点(0,1)を表すベース図面上の点と同一の点を表す点と、仮想XY座標のX軸上の任意の点と同一の点を表す点とを設定する。なお、ここでは、ベース図面の縮尺と変更図面の縮尺とは同一であるものとする。
【0063】
ユーザが変更図面において、ベース図面の仮想点およびX軸上の点に対応する点を指定すると(ステップS15)、統合処理装置4では、
図8(b)に示すように、原点0および点(0,1)に対応する点を通る直線をy軸とし、ベース図面のX軸上の点に対応する点と原点0とを通る直線をx軸とし、y軸とx軸とが直交するとき(ステップS16)、ベース図面に対して、変更図面は原点0を中心として回転移動していると判断し、原点0を中心に、変更図面の座標軸を角度変換する(ステップS17)。
【0064】
つまり、ベース図面の仮想XY座標と変更図面のxy座標とが一致するように角度変換を行なう。例えば、画像処理などによって、ベース図面の仮想XY座標と変更図面のxy座標とが一致するように、変更図面の座標軸を角度変換する。
これによって、変更図面の角度のずれが補正される。
そして、このように補正された割り当て図面を、前述の
図5のフローチャートにしたがって、ベース図面に割り付ける。
【0065】
すなわち、補正後の割り当て図面とベース図面とについて通り芯を抽出し、これらが一致するように座標軸の位置調整を行なった後、角度のずれを補正するための角度変換および通り芯のずれを補正するための座標の位置調整が行なわれた後の変更図面に設定されているピンの位置座標をベース図面に割り付ける。
これによって、ベース図面および変更図面を、縮尺を一致させて重ねて表示したときには、変更図面のxy座標と、ベース図面の仮想XY座標とが一致することになる。
【0066】
以上により、ラスタ図面の傾きの補正が終了する。
次に、パターン認識の手法によって座標軸変換を行なう場合について説明する。
ユーザは、まず、
図9に示すように、ラスタ図面からなるずれが生じている変更図面において、通り芯選択範囲を設定する。例えば、ユーザによる座標軸変換指示が行なわれたときに、統合処理装置4が
図6(d)に示す通り芯設定範囲のパターンを表示し、このうちのいずれかのパターンをユーザが選択し、変更図面において通り芯を含むようにパターンの位置を設定することにより、通り芯選択範囲の設定を行なう。なお、自動的にいずれかの通り芯設定範囲のパターンを設定するようにしてもよい。
【0067】
統合処理装置4は、
図10のフローチャートに示すように、通り芯選択範囲が設定されると(ステップS21)、
図5のステップS6およびステップS7の処理と同様の手順で、変更図面において、通り芯符号を抽出し通り芯を抽出する(ステップS22)。
続いて、変更図面から抽出した通り芯について、予め設定した通り芯の基準軸との傾きを計測し、傾き相当だけ、変更図面のX−Y座標軸を、原点を基準として角度変換する(ステップS23)。通り芯の基準軸は、例えば変更図面に角度のずれが生じていないときの通り芯と平行に設定される。
【0068】
これによって、変更図面の角度のずれが補正される。
そして、このように角度のずれが補正された変更図面(割り当て図面)を、
図5のフローチャートにしたがって、ベース図面に割り付ける。
すなわち、角度のずれを補正した後の割り当て図面とベース図面とについて通り芯を抽出し、これらが一致するように座標軸の位置調整を行なった後、割り当て図面上のピンの位置座標をベース図面に割り付ける。
【0069】
以上により、パターン認識の手法を用いた、ラスタ図面の傾きの補正が終了する。
このように、ラスタ図面の傾きを補正することにより、スキャンによる曲がり、すなわち角度のずれなどが生じている場合であっても的確に同一のX−Y座標上のデータとしてピンを割り付けることができる。
なお、ここでは、二次元座標の図面であるベース図面と割り付け図面とを異なるレイヤに割り付けることによって、これら図面を重畳表示する場合について説明したが、これに限るものではない。二次元座標は、z軸をもたないため、例えば、1階平面図と2階平面図との間など、図面間において、z座標(例えば階高4200mm)を指定することにより、二次元の図面がxyz軸上で積み上がることになる。したがって、割り付け図面をベース図面に割り付ける際に、z座標(例えば階高)を設定してもよい。このz座標は、例えば、各階の平面図を積み上げる。そして、図面の上下関係を整理することが目的であれば、1階平面図=1F、2階平面図=2F,…として簡易に積み上げるだけでもよい。もしくはZ軸に数値を与えて管理する場合、1階平面図=GL+600mm=Z1、2階平面図=Z1+4200mm=Z2、…として、Z軸に数値を与えて積み上げる等の手順で設定すればよい。なお、GLは、グランドレベル(地盤面)を意味する。前者の場合は、Z軸=「Z1」、「Z2」、…の範囲で検索可能となり、後者の場合はZ軸=「Z1」の検索や、Z軸=「Z1+600mm」、…というように、数値を組み合わせた検索も可能となる。また、平面図のみならず、立面図や断面図上にZ軸を設定し、Z1やZ2を設定することでxyz軸からの各種検査記録などの検索が可能となる。
【0070】
次に、閲覧・検索ツール6について説明する。
閲覧・検索ツール6は、例えば入力装置、表示部およびこれらを制御する演算処理部を備えた携帯端末などで構成される。すなわち、
図11に示すように、指定された図面を表示する図面表示処理部61と、指定された図面を検索する検索処理部62と、を備える。
図面表示処理部61では、統合図面データベース5に格納されている統合図面から、ユーザによる入力装置の操作に応じて指定された図面を検索し、これを表示するなどの処理を行なう。その際、ピンのプロパティ情報がリンクされた統合図面を表示する場合には、ベース図面および割り付け図面を重畳させて表示する。このとき、ベース図面のみ、また割り付け図面のみを表示するようにしてもよい。そして、統合図面を表示する際には、ベース図面に対して設定されているピンとともにベース図面にリンクされている割り付け図面のピンも表示する。なお、ベース図面のみ、或いは割り付け図面のみを統合図面として表示する場合であっても、ベース図面および割り付け図面のそれぞれに対して設定されているピンを表示するようにしてもよく、ベース図面のみ或いは割り付け図面のみを表示する場合にピンを表示してもよい。
【0071】
そして、統合図面において、例えば、割り付け図面に設定されているピンに対応するピンが選択されたときには、このピンとリンクされている割り付け図面のピンに設定されているプロパティ情報を表示する。これによって、ベース図面において設定されたピンのプロパティ情報だけでなく、ベース図面とリンクされている割り付け図面において設定されたピンのプロパティ情報も、参照することができる。
【0072】
このとき、統合図面において、割り付け図面とベース図面とが重畳表示されている状態、または、ベース図面のみが表示されている状態で、割り付け図面に設定されているピンに対応するピンが選択されたときには、このピンに対応するプロパティ情報を表示するとともに、このプロパティ情報が割り付けられている割り付け図面のみを表示するようにしてもよい。
【0073】
また、地図の場合、縮小し閲覧する場合は、路線図や幹線道路といった線による地図の骨格と、ランドマークとなる公的施設や大規模な施設(交番、郵便局、公園、広場、商業施設等)とを、地図記号や領域で表示させることにより全体を俯瞰し、目的地へのアクセス方法や全体像を把握するのに用いられる。また拡大し閲覧する場合は、細かな路地や建物形状およびビル名称を表示させることにより目的値の特定などに用いられる。
【0074】
このことから、地図の拡大時には主要な情報を表示し、縮小時にはより詳細な情報を表示させる切り替え表示を行なうため、地図の拡大縮小に合わせてタイル画像を生成し表示する技術として、前述の非特許文献2に記載の技術などが知られている。
一方、図面の場合は、拡大縮小をする場合、次の2つのケースが考えられる。第一に、細かな寸法の確認など、図面中の詳細情報を拡大して確認を行なう場合、第二に、同一箇所に関して、(a)配置図、(b)平面図、(c)平面詳細図、(d)部分詳細図、と異なる図面間の確認を行なう場合、がある。
【0075】
図面中の詳細情報を拡大する場合などには、同一データを拡大縮小すればよいので、地図を拡大縮小する場合のように、表示する情報内容を切り替える必要はない。一方、異なる図面間の確認を行なう場合には、各図面で記載されている情報が異なるため、情報内容を切り替える必要がある。
つまり、図面中の詳細情報を拡大縮小する場合と異なる図面間の確認を行なう場合とは、広い意味では両方とも図面の拡大縮小を行なうものであるものの、情報内容を切り替える場合と切り替えない場合とが発生するため、それらを区別しなければならない。
【0076】
本実施形態では、この切り替えを、
図12のフローチャートに示す手順で行なう。
まず、図面の閲覧の初期状態では、画面サイズに合わせて全体を表示する。例えば、初期図面として、プラットフォームとなる図面、例えば平面図全体を表示する(ステップS41)。例えば、プラットフォームとなる図面を表す共有図面単体、或いは、統合図面に含まれるプラットフォームとなる図面を表示する。
【0077】
また、このプラットフォームとなる図面と同一領域を表す他の図面がある場合、つまり、プラットフォームとなる図面が統合図面に含まれる図面である場合、また、プラットフォームとなる図面と紐付けられた図面がある場合には、タブとして、「配置図」、「平面図」、「平面詳細図」、「部分詳細図」などのベース図面を選択可能に表示する。また、同一ベース図面上に記録された各種検査記録がある場合には、レイヤとして、「自主検査」「完成検査」などを選択可能に表示する。
【0078】
そして、タブにおいて、タブの「配置図」、「平面図」、「平面詳細図」、「部分詳細図」などのいずれかがベース図面として選択されたときには(ステップS32)、対応する図面を表示する(ステップS34)。このとき、対応する図面が複数ある場合には候補一覧として表示する。例えば、タイトル一覧を表示する、或いは、対応する領域に縮小した図面を重畳表示する。
【0079】
例えば、プラットフォームとなる図面としての「平面図」のとある領域(X1,Y1〜X2,Y2)を拡大表示していた場合、「平面詳細図」のタブを選択すると、当該領域(X1,Y1〜X2,Y2)に対応する「平面詳細図」が表示される。そして、領域(X1,Y1〜X2,Y2)に対応する「平面詳細図」が複数存在する場合には、縮小した「平面詳細図」を、領域(X1,Y1〜X2,Y2)内のこの平面詳細図に対応する位置に重畳表示する。
【0080】
これによって、例えば、縮小表示された平面詳細図のうち、参照したい平面詳細図を選択することによって、平面詳細図を、画面サイズに合わせて表示する。そして、ユーザの表示指示に応じて拡大縮小表示を行なう。
また閲覧・検索ツール6は、検索指示が行なわれたときには、指示にしたがって対応する図面を検索する。
【0081】
例えば、ユーザにより、フリーワード検索が指示されたときには、閲覧・検索ツール6は、
図13(a)に示すように検索ワードの入力画面を表示し、入力されたフリーワードに該当する図面を、統合図面データベース5から検索し、これを表示する。このとき該当する図面が複数ある場合には、例えば該当する図面のタイトル一覧を表示するなど、候補を表示する。フリーワードとしては、「○○検査」、「○○平面詳細図」などを入力することができる。
【0082】
また、ユーザにより、座標軸検索が指示されたときには、閲覧・検索ツール6は、
図13(b)に示すように、指定された範囲内に含まれる図面の、例えばタイトル一覧などを表示する。例えば、プラットフォーム図面が平面図などX−Y図面であるときには、X−Y図面において指定された領域内に含まれる図面を表示する。このとき、該当する図面が複数ある場合には、例えばタイトル一覧などを表示する。また、プラットフォーム図面が3次元に積み上げられているXYZ図面である場合には、X−Y図面内の指定された領域に含まれる図面とZ軸方向に積み上げられた各X−Y図面において、指定された検索領域内に含まれる図面とを表示する。このとき、該当する図面が複数ある場合には、例えばタイトル一覧などを表示する。
【0083】
また、ユーザにより、時間軸検索が指示されたときには、閲覧・検索ツール6は、例えば
図13(c)に示すように、当該施工対象の建物の施工に伴う作業が開始された時点など、当該建物に関する図面が作成された年月から、例えば最新の図面が作成された年月までの時間軸のスライドバーを表示する。そして、時間軸のスライドバーの停止位置に応じた年月付近に作成された図面、また該当する図面が複数ある場合にはタイトル一覧などを表示する。そして、表示されたタイトル一覧の中から選択された図面を表示する。
【0084】
また、例えば、工程時間軸検索が指示されたときには、当該施工対象の建物の施工に伴う作業が開始された時点など、当該建物に関する図面が作成された年月から、例えば最新の図面が作成された年月までの時間軸の工程を表すバーチャートを表示する。そして、バーチャートにおいて、スライドバーの停止位置に応じた年月付近或いは停止位置に応じた工事に関する図面、または該当する図面が複数ある場合にはタイトル一覧などを表示する。そして、表示されたタイトル一覧の中から選択された図面を表示する。
【0085】
このように、フリーワード検索、或いは座標軸検索、時間軸検索など、複数の検索方法によって検索可能とすることによって、ユーザが所望とする図面を容易に検索することができる。
次に、統合図面の一例を、
図14〜
図23を伴って説明する。なお、
図14〜
図23は、各種図面を簡略化して記載している。
【0086】
図14及び
図15は、統合図面の一例を示したものである。
図14は、1階平面詳細図をベース図面とし、1階平面詳細図に対して記録がなされた図面を割り当て図面として統合したものであって、
図16〜
図19を割り当て図面として統合したものである。
図16は、「1階平面詳細図」に対して、異なるレイヤに、仕上げ検査(自主検査)の結果をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
図17は、「1階平面詳細図」に対して、異なるレイヤに、仕上げ検査(自主検査)の結果を受けて修正した内容をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
図18は、「1階平面詳細図」に対して、異なるレイヤに、完成検査(設計指摘事項)の結果をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
図19は、「1階平面詳細図」に対して、異なるレイヤに、完成検査(設計指摘事項)の結果を受けて修正した内容をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
【0087】
図14の統合図面の場合には、タブとして「1階平面詳細図」が設定され、統合図面を選択する画面においては、例えば、タブ「1階平面詳細図」に紐付けられて、「1階平面詳細図」により紐付けられている
図16から
図19を特定する情報が、選択可能に表示される。例えば、
図16は「仕上げ検査(自主検査)」、
図17は「是正後記録(仕上げ検査の修正事項の報告)」、
図18は「完成検査(設計指摘事項)」、
図19は「是正後記録(完成検査の修正)」等と表示される。
【0088】
また、
図15は、1階平面詳細図をベース図面とし、1階平面詳細図に対して記録がなされた図面およびそれ以外の図面も統合したものであって、1階平面詳細図に対して記録がなされた
図16から
図19および、
図20から
図23を割り当て図面として統合したものである。
図20は、「1階床伏図」に対して、異なるレイヤに、柱検査の結果をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
図21は、「1階床伏図」に対して、異なるレイヤに、床検査の結果をプロパティ情報として記録した縮尺:1/50の図面である。
図22は、「1階配線図」に対して、配線状況をプロパティ情報として記録した縮尺:1/100の図面である。
図23は、「衛生設備1階平面図」に対して、配管設置状況をプロパティ情報として記録した縮尺:1/100の図面である。
【0089】
図15の統合図面の場合には、タブとして「1階平面詳細図」が設定され、統合図面を選択する図面においては、例えば、タブ「1階平面詳細図」に紐付けられて、「1階平面詳細図」により紐付けられている
図16から
図19を特定する情報が表示されるとともに、「1階平面詳細図」をベース図面とする図面として紐付けられている「1階床伏図」、「衛生設備1階平面図」、「1階配線図」が選択可能に表示される。さらに、「1階床伏図」には「柱検査」(
図20)、「床検査」(
図21)が紐付けられて表示され、「衛生設備1階平面図」には「配管設置状況」(
図22)が紐付けられ、「1階配線図」には「配線状況報告」(
図23)が紐付けられて選択可能に表示される。
【0090】
したがって、ユーザは、これら表示情報をもとに所望の図面に対応する名称を選択することで、容易に所望の図面を得ることができる。
以上のように、本実施形態では、関連する図面(割り当て図面)をベース図面の対応する領域と重なるように割り付け、同一領域を表す複数の図面を関連付けることによって、複数の図面を集約することができる。
【0091】
ここで、従来、各種図面は、各工程における施工業者がそれぞれ独自のデータフォーマットで生成し、印刷物或いは、データとして納品している。そのため、ユーザは所望の図面をその格納場所から抽出する必要がある。つまり、格納場所を認識していれば、所望の図面を容易に参照することができるが、格納場所がわからなければ格納場所を探す必要があり、大規模な建物になるほど図面や資料等も膨大な数となるため、所望の図面や資料の参照が困難である。
【0092】
しかしながら、本実施形態では、上述のように、複数の図面を関連付けて集約しているため、例えば、あるプラットフォームとしての図面において、所望の部位を指示することによって、その部位に関連する図面の一覧を表示させることができ、その中から所望の図面を選択することによって、所望の図面を容易に表示させることができる。
そして、複数の図面を集約するために、図面の割り付けを行なう際には、統合処理装置4では、ベース図面の通り芯と割り当て図面の通り芯とが一致するように、割り当て図面の座標の位置調整を自動的に行なうとともに、ラスタ図面の場合にはスキャンに伴う図面の角度のずれを自動的に補正した上で位置調整を行なっている。
【0093】
したがって、ユーザは、割り付け図面とベース図面とを選択し、ベース図面において割り当て図面の割り付け位置を設定するだけでよく、このとき、割り当て図面とベース図面との位置調整は、統合処理装置4側で通り芯が一致するように自動的に行なっているため、ユーザによる割り当て図面の割り付け位置の位置決め精度はそれほど高くなくともよい。したがって、ユーザはある程度の精度で割り付け位置の位置決めを行なえばよいため、比較的容易に図面の統合を行なうことができる。
【0094】
また、このように、複数の図面を集約することができるため、例えば、ある柱の鉄筋の施工状況を参照したい場合には、例えば、検索機能を用いて検索すれば、該当する図面を容易に表示させることができる。
また、このように、同一領域を表す複数の図面を関連付けることによって、例えば、建物完成後、メンテナンスのため、ある部位を工事する場合には、その工事対象部位の目視できない部分は、どのような構造になっているのか、どのように配線が施されているか、どのように施工されているのか、などその工事対象部位に関する情報を認識する必要がある。その場合には、例えば、複数図面が集約された統合図面に含まれる平面図全体を表示し、この平面図において工事対象部位を含む領域を範囲指定して検索をかければ、その工事対象部位に関する情報を含む図面一覧が表示される。つまり、工事対象部位の目視できない部分の構造を表す図面や、配線状況を表す図面や、施工状況を表す図面などが一覧として表示される。したがって、ユーザは、この表示された図面一覧の中から所望の図面を選択すれば、工事対象部位に関する全ての図面から、工事対象部位に関する情報を、容易に取得することができる。このように、工事対象部位に関する全ての図面から、工事対象部位に関する情報を取得することができる。
【0095】
ここで、従来のように、ユーザが、所望の図面を、印刷物や、データファイルから取り出してくる方法にあっては、ユーザがその図面を探すことができないなどにより、図面を参照しなければ、ユーザは、この図面に記載された工事対象部位に関する情報を認識することができない。つまり、メンテナンス工事を行なうにあたり、工事対象部位に関して注意を払わなければならない情報を、ユーザが取得できない可能性がある。
【0096】
しかしながら、上述のように、複数の図面を集約することによって、工事対象部位に関する図面は全て提示されるため、ユーザは提示された図面を参照することによって、工事対象部位に関する情報を漏れなく認識することができる。
また、検査部位などの撮像データは、図面上の検査部位に対応する位置にピンを設定し、このピン座標と対応付けて記録しており、その際、撮影データの内容を表すタイトル名の候補として、スケジュールデータから特定される、現時点のスケジュール上の工程に関連する検査或いは工事として対応付けられた候補を表示している。そのため、検査名や工事名の付け間違いや、撮影日時の入力ミス、或いは、これらタイトルなど設定すべき項目の入力漏れが生じることを抑制することができ、撮影データを容易に管理することができる。
【0097】
また、このように入力ツール3の記録機能を用いて撮影データ等各種検査データを記録することで、例えば、各種検査データを工事の工程表等と紐付けることができる。
また、ラスタ図面はスキャナで読み込み、この読み込んだラスタ図面や、電子データからなる図面は、それぞれ関連する他の図面に割り付けて集約するようにしており、電子データからなる図面には通常作成した年月日などの情報が含まれるため、各種図面データについても、工事の工程表等と紐付けることができる。
【0098】
そのため、このように、工事の工程表等と紐付けた各種検査データや各種図面データを、工事の工程表や検査、また工事に関する各種イベントを軸に、時間軸を指定することで閲覧することができる。つまり、これら各種検査データや各種図面データを閲覧する際には、例えば、閲覧対象の図面や検査データが生成される工程を指定することによって、この工程に関連する図面や検査データの一覧が提示される。したがって、この一覧から所望の図面や検査データを選択することにより、検査データや図面データを、時間軸を指定することで閲覧することができる。
【0099】
また、このように、各種検査データや図面データを、オブジェクトベースで記録することができるため、各種検査データや図面データが散在せず、建物のライフサイクル(計画→施工→改修→解体)の一連の流れにおいてデータを継承し、記録・構築・閲覧を可能とすることができる。
また、工事の検査記録を行なうユーザが複数存在する場合であっても、入力ツール3の記録機能を用いて検査データの記録などを行なうことによって、データのファイリング等を意識せずとも、入力ツール3において提示されるフォーマットにしたがって入力することによって、検査データなどのファイリングを行なうことができる。
【0100】
また、各種図面や各種検査データを閲覧するときには、前述のように時間軸を指定することで所望の図面や検査データ等を閲覧することができ、さらに、同一部位を表す図面どうしを割り付け、これらを関連付けて集約しているため、所望の部位を指定することで、その部位を表す各種図面を閲覧することができる。このように、時間や工程といった時間軸を指定すること、或いは所望の部位を指定することによって、指定された時間軸に関連する図面等や、指定された部位に関連する図面などを閲覧することができるため、ユーザはわざわざ所望の図面等が格納された領域から所望の図面を選択する必要はなく、所望の図面を閲覧するまでに要する所要時間を短縮することができ、使い勝手を向上させ、閲覧性を向上させることができる。
【0101】
また、同一領域を含む図面どうしを関連付けて集約しているため、地図情報の様に、同一のXYZ座標軸上に各種データが統合されることになる。そして、閲覧・検索ツール6では、各種図面データを表示する際には、ユーザの拡大および縮小操作に応じて、単なる拡大および縮小表示を行なうだけでなく、その図面に、例えば詳細図面等が割り付けられている場合は、拡大操作が行なわれたときには単なる拡大操作を行なうのではなく、詳細図面を表示するようにしているため、ユーザの拡大縮小操作の意図に則した図面表示を行なうことができる。
【0102】
さらに、代表点についてのみ検査を行なった場合には、検査を行なっていない他の箇所の検査データとして、代表点の検査データを割り付けているため、検査を行なっていない箇所についてその検査データの表示を指示した場合でも、検査データを表示することができる。代表点の検査データは検査を行なっていない箇所の検査データと同等とみなすことができ、わざわざ代表点においてその検査データの表示を指示する必要はなく、使い勝手を向上させることができる。
【0103】
特に、大規模な建物になるほど、建物のライフサイクル(計画→施工→改修→解体)の一連の流れにおいて、生成すべき図面や、検査データなどが増加し、さらに電子データではなく紙に印刷した形で提出される種類なども多い。しかしながら、上述のように、各種の書類を関連する図面ごとに対応付けて集約することによって、フリーワード検索、座標軸検索或いは時間軸検索により所望の書類を検索することができる。したがって、各種書類を容易かつ確実に管理することができるとともに、これら書類を効率よく活用することができ、効果的である。
【0104】
なお、撮影データなどの検査データが存在することを表すピンのプロパティ情報は、ベース図面に設定するため、例えば建物全体の平面図などの図面に、ピンが設定されている複数の図面が関連づけられた場合には、このように複数の図面が集約された統合図面に、各関連付けられた図面に設定されているピンを表示すると、ピンの数によっては、図面自体がみにくくなる可能性がある。そのため、ピンは、指定されたときに表示するようにしてもよく、或いは、全体平面図などの比較的縮尺が小さい図面の場合には図面上にピンは表示せず、ある程度の縮尺の図面にのみ、図面上にピンを自動的に表示するように構成し、かつ指定されたときにもピンを表示するように構成してもよい。
【0105】
また、上記実施形態において、集約する図面は、建物の竣工までの図面に限るものではなく、竣工後の、メンテナンスに用いた図面なども集約することが可能であり、このように、竣工後の図面などについても集約することによって、ある建物に関する施工に関する図面だけでなく竣工後の改修などに伴う図面なども集約することによって、竣工前および竣工後に関係なく、ある建物に関する図面を集約して管理することができる。したがって、この集約された図面を参照することによって、この建物に関する情報や施工履歴などを容易に取得することができる。
【0106】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。