特許第6235347号(P6235347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000002
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000003
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000004
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000005
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000006
  • 特許6235347-予測精度評価装置および該方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235347
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】予測精度評価装置および該方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 5/04 20060101AFI20171113BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G06N5/04
   G06F17/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-3053(P2014-3053)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132914(P2015-132914A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】友近 信行
【審査官】 多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245141(JP,A)
【文献】 特開2012−226731(JP,A)
【文献】 特開2003−143757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 5/04
G06F 17/18
G06F 19/00
G06Q 10/04
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の実測値、および、所定の数値範囲内における複数の予測値と前記複数の予測値の出現度合いとの関係を表す、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキを取得するバラツキ取得部と、
前記バラツキ取得部で取得された各前記予測値のバラツキに基づいて、各前記予測値のバラツキの予測精度における良否の度合いを表す評価指標を求める評価指標演算部と、
前記評価指標演算部で求めた前記評価指標を出力する出力部とを備えること
を特徴とする予測精度評価装置。
【請求項2】
前記評価指標演算部は、前記複数の実測値それぞれに対し、前記所定の数値範囲における最小値から最大値まで前記出現度合いの累積値を全体累積値として求め、前記所定の数値範囲における前記最小値から当該実測値まで前記出現度合いの累積値を部分累積値として求め、前記求めた部分累積値を前記全体累積値で除算し、前記複数の実値に対応する各除算結果のヒストグラムを前記評価指標として求めること
を特徴とする請求項1に記載の予測精度評価装置。
【請求項3】
前記バラツキ取得部は、新たに予測したい予測対象データに対する第2の予測値のバラツキを新たに取得し、
前記評価指標演算部で求めた前記評価指標に基づいて前記バラツキ取得部で新たに取得した前記第2の予測値のバラツキを調整するバラツキ調整部をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の予測精度評価装置。
【請求項4】
前記予測値のバラツキを求めるために必要な所定の予測依拠情報を予め記憶するデータ記憶部をさらに備え、
前記バラツキ取得部は、前記データ記憶部に記憶されている前記所定の予測依拠情報に基づいて前記予測値のバラツキを演算することによって各前記予測値のバラツキを取得すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の予測精度評価装置。
【請求項5】
所定の情報を入力する入力部をさらに備え、
前記バラツキ取得部は、前記入力部から前記予測値のバラツキを取得すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の予測精度評価装置。
【請求項6】
複数の実測値、および、所定の数値範囲内における複数の予測値と前記複数の予測値それぞれに対する出現度合いとの関係を表す、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキを取得するバラツキ取得工程と、
前記バラツキ取得工程で取得された前記予測値のバラツキに基づいて、各前記予測値のバラツキの予測精度における良否の度合いを表す評価指標を求める評価指標演算工程と、
前記評価指標演算工程で求めた前記評価指標を出力部に出力する出力工程とを備えること
を特徴とする予測精度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所与のデータに基づいて予測した予測結果の精度を評価する予測精度評価装置および予測精度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野において、今後の行動を決定する際に、将来の予測がしばしば行われる。特に、例えば鉄鋼製品の製造や化学製品の製造のように、比較的大規模な製造プラントで様々な製造プロセスを経て製造される製品では、例えば投入量、操作入力量および時間経過等に応じて、各製造プロセスにおける出力値や製品に直結する最終プロセスの出力値が刻々と変化することが多い。このため、その出力値を制御するために、出力値の予測は、重要である。
【0003】
このような予測は、一般に、予測対象に関わる要因を分析し、要因の過去の実績データを例えば統計的に分析することによって行われる。
【0004】
例えば、特許文献1に開示の鋼材の材質推定装置は、過去に製造された製品ごとに、素材成分実績、操業実績および材質実績を蓄積する材質記憶手段と、多数の入力変数の中から製品の材質に与える影響の大きい入力変数を選択するためのルールが格納されている入力変数限定ルール格納手段と、入力される素材成分情報および操業情報を用いて、入力変数を前記ルールに従って限定する入力変数限定手段と、該限定した入力変数を用いて前記材質記憶手段内の各データと入力値との距離を計算するための、入力値が出力値に与える影響を重み係数とする距離関数を定義し、この距離関数を用いて計算した距離に基づいて入力値に近いデータを抽出し、該抽出したデータから材質の推定値を計算し、出力する材質推定計算手段とを備えている。このような構成の材質推定装置は、モデルの構造と対象の構造との乖離によって生じる推定誤差の発生を防止し、入力空間の全ての領域での推定精度を向上することが可能となる。
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示された技術では、予測値を1点のデータで予測している。このため、この予測値が的中している場合はよいが、この予測値が真値からずれていると、この予測値に基づいて行われる操作や判断等が誤ったものとなって、適切な出力値を得ることができない。
【0006】
このため、例えば特許文献2や特許文献3に開示された技術では、予測値をそのバラツキや確率密度分布で求めている。すなわち、特許文献2に開示された出力値予測装置は、所定の出力と前記出力に関わる数値化可能な要因とから成り過去に取得された複数の過去実績データを記憶する実測データ記憶部と、予測したい予測対象データと前記過去実績データとの類似度を、前記予測対象データの要因および前記過去実績データの要因に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出する類似度算出部と、前記所定の出力を出力変数とすると共に前記要因の一部または全部を入力変数とした際に、前記入力変数を用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第1モデルを生成した場合に、前記入力変数の入力値を前記第1モデルに与えることによって得られる値と前記入力変数の入力値に対応する前記出力変数の出力値との差に基づく誤差パラメータを、前記過去実績データの入力変数および出力変数に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出するパラメータ算出部と、前記入力変数および前記誤差パラメータを用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第2モデルを生成し、前記予測対象データの要因のうちの前記入力変数に対応する要因の値および前記誤差パラメータの値を前記第2モデルに与えることによって前記予測対象データの出力値を予測値として、前記パラメータ算出部によって算出された複数の誤差パラメータのそれぞれについて算出する予測値算出部と、前記類似度算出部によって算出された複数の類似度および前記予測値算出部によって算出された複数の予測値に基づいて、前記予測対象データの出力値のばらつきを算出するばらつき算出部とを備える。
【0007】
特許文献3に開示された出力値予測装置は、所定の出力と前記出力に関わる数値化可能な要因とから成り過去に取得された複数の過去実績データを記憶する実測データ記憶部と、予測したい予測対象データと前記過去実績データとの類似度を、前記予測対象データの要因および前記過去実績データの要因に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出する第1算出部と、前記第1算出部によって算出された複数の類似度および前記過去実績データに基づいて、前記予測対象データの出力値のばらつきを算出する第2算出部とを備え、前記第1算出部は、前記予測対象データと前記過去実績データとの所定の距離を、前記予測対象データの要因および前記過去実績データの要因に基づいて、前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出する距離算出部と、前記予測対象データと前記過去実績データとの前記類似度を、前記距離算出部で算出された距離に基づいて、前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出する類似度算出部とを備え、前記距離算出部は、前記要因が前記所定の出力におけるばらつきの大きさに寄与する程度を第A重みとして前記要因について算出する重み算出部を備え、前記重み算出部で算出された第A重みを用いて前記所定の距離を算出する。そして、前記第2算出部は、前記所定の出力を出力変数とすると共に前記要因の一部または全部を入力変数とした際に、前記入力変数を用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第2モデルを生成した場合に、前記入力変数の入力値を前記第2モデルに与えることによって得られる値と前記入力変数の入力値に対応する前記出力変数の出力値との差である誤差パラメータを、前記過去実績データの入力変数および出力変数に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出するパラメータ算出工程と、前記入力変数および前記誤差パラメータを用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第3モデルを生成し、前記予測対象データの要因のうちの前記入力変数に対応する要因の値および前記誤差パラメータの値を前記第3モデルに与えることによって前記予測対象データの出力値を予測値として、前記パラメータ算出工程によって算出された複数の誤差パラメータのそれぞれについて算出する予測値算出工程と、前記類似度算出工程によって算出された複数の類似度および前記予測値算出工程によって算出された複数の予測値に基づいて、前記予測対象データの出力値のばらつきを算出するばらつき算出工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3943841号公報
【特許文献2】特許5220458号公報
【特許文献3】特開2010−231447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように前記特許文献2および特許文献3に開示された出力値予測装置によって、予測値のバラツキが求められるので、オペレータ(ユーザ)は、その求められた予測値のバラツキを参照することで、予測値の収まる範囲を認識でき、今後の行動を決定する際に有益な情報を得ることができる。しかしながら、このように求められる予測値のバラツキは、予測に用いられる入力変数の数値が異なると、その分布の形状が異なる。例えば、鋼板を製造する場合において、例えば、成分や溶鋼量、通過行程、使用される取鍋の使用履歴や取鍋温度等の入力変数の数値がチャージごとに異なるため、出鋼温度のバラツキにおける分布の形状は、チャージごとに異なったものとなる。このため、実測値に対しこの求めた予測値のバラツキが良い予測であったか、悪い予測であったか分からないという不都合があった。例えば、実測値が予測値のバラツキの分布における中央付近に位置した場合、一見、前記予測値のバラツキの精度が良かったと考えられるが、前記予測値のバラツキの分布が広く求められていれば、実測値が前記予測値のバラツキの分布における中央付近に位置することになるので、前記予測値のバラツキの精度が良くなかったとも考えられる。すなわち、予測値のバラツキの予測精度における良否が分からないという不都合があった。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、予測値のバラツキの予測精度をオペレータ(ユーザ)に認識させ得る予測精度評価装置および予測精度評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる予測精度評価装置は、複数の実測値、および、所定の数値範囲内における複数の予測値と前記複数の予測値それぞれに対する出現度合いとの関係を表す、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキを取得するバラツキ取得部と、前記バラツキ取得部で取得された前記予測値のバラツキに基づいて、各前記予測値のバラツキの予測精度における良否の度合いを表す評価指標を求める評価指標演算部と、前記評価指標演算部で求めた前記評価指標を出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような予測精度評価装置では、複数の実測値、および、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキが取得され、これら取得された各予測値のバラツキに対する1つの評価指標が求められ、そして、この求められた評価指標が出力部に出力される。このため、このような予測精度評価装置では、出力部に出力された評価指標を参照することで、オペレータ(ユーザ)は、各予測値のバラツキにおける予測精度を認識できる。
【0013】
また、他の一態様では、上述の予測精度評価装置において、前記評価指標演算部は、前記複数の実測値それぞれに対し、前記所定の数値範囲における最小値から最大値まで前記出現度合いの累積値を全体累積値として求め、前記所定の数値範囲における前記最小値から当該実測値まで前記出現度合いの累積値を部分累積値として求め、前記求めた部分累積値を前記全体累積値で除算し、前記複数の実値に対応する各除算結果のヒストグラムを前記評価指標として求めることを特徴とする。
【0014】
このような予測精度評価装置は、各前記予測値のバラツキにおける分布の形状と複数の実測値とに基づいたヒストグラムを前記評価指標として求めるので、より適切な評価指標を生成できる。
【0015】
また、他の一態様では、これら上述の予測精度評価装置において、前記バラツキ取得部は、新たに予測したい予測対象データに対する第2の予測値のバラツキを新たに取得し、前記評価指標演算部で求めた前記評価指標に基づいて前記バラツキ取得部で取得した新たに前記第2の予測値のバラツキを調整するバラツキ調整部をさらに備えることを特徴とする。そして、好ましくは、上述の予測精度評価装置において、前記バラツキ調整部は、前記バラツキ取得部で新たに取得した前記第2の予測値のバラツキに前記評価指標演算部で求めた前記評価指標を乗算することによって、前記第2の予測値のバラツキを調整するものである。
【0016】
このような予測精度評価装置は、前記評価指標に基づいて前記第2の予測値のバラツキを調整するので、前記第2の予測値のバラツキをより適正化できる。したがって、より適切な前記第2の予測値のバラツキが得られる。
【0017】
また、他の一態様では、これら上述の予測精度評価装置において、前記予測値のバラツキを求めるために必要な所定の予測依拠情報を予め記憶するデータ記憶部をさらに備え、前記バラツキ取得部は、前記データ記憶部に記憶されている前記所定の予測依拠情報に基づいて前記予測値のバラツキを演算することによって各前記予測値のバラツキを取得することを特徴とする。
【0018】
このような予測精度評価装置は、前記所定の予測依拠情報に基づいて前記予測値のバラツキを演算するので、前記所定の予測依拠情報を予測精度評価装置に与えることで、予測値のバラツキを取得できる。
【0019】
また、他の一態様では、これら上述の予測精度評価装置において、所定の情報を入力する入力部をさらに備え、前記バラツキ取得部は、前記入力部から前記予測値のバラツキを取得することを特徴とする。そして、上述の予測精度評価装置において、前記入力部で受け付けた前記予測値のバラツキは、データ記憶部に記憶され、前記バラツキ取得部は、前記データ記憶部に記憶された前記予測値のバラツキを取得することによって、前記入力部から前記予測値のバラツキを取得してもよい。
【0020】
このような予測精度評価装置は、複数の予測値のバラツキを入力部から入力できるので、前記複数の予測値のバラツキを求める他の装置で求められた前記複数の予測値のバラツキに対しても評価でき、様々な組の予測値のバラツキを取り扱うことができる。
【0021】
そして、他の一態様にかかる予測精度評価方法は、複数の実測値、および、所定の数値範囲内における複数の予測値と前記複数の予測値それぞれに対する出現度合いとの関係を表す、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキを取得するバラツキ取得工程と、前記バラツキ取得工程で取得された前記予測値のバラツキに基づいて、各前記予測値のバラツキの予測精度における良否の度合いを表す評価指標を求める評価指標演算工程と、前記評価指標演算工程で求めた前記評価指標を出力部に出力する出力工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
このような予測精度評価方法では、複数の実測値、および、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキが取得され、これら取得された各予測値のバラツキに対する1つの評価指標が求められ、そして、この求められた評価指標が出力部に出力される。このため、このような予測精度評価方法では、出力部に出力された評価指標を参照することで、オペレータ(ユーザ)は、各予測値のバラツキにおける予測精度を認識できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる予測精度評価装置および予測精度評価方法は、予測値のバラツキの予測精度をオペレータ(ユーザ)に認識させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態における予測精度評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態における予測精度評価装置の動作を示すフローチャートである。
図3】実施形態の予測精度評価装置における予測値のバラツキの演算方法を説明するための図である。
図4】予測値の確率密度分布の一例を示す図である。
図5】予測値の確率密度分布に対する予測精度の評価指標の一例を示す図である。
図6】予測値の確率密度分布に対する予測精度の評価指標の一具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0026】
図1は、実施形態における予測精度評価装置の構成を示すブロック図である。実施形態における予測精度評価装置Sは、複数の予測値のバラツキに対する1つの評価指標を出力し、オペレータ(ユーザ)に前記評価指標を提示することで予測精度の評価をアシスト(助力)する装置であり、例えば、図1に示すように、演算制御部1と、入力部2と、出力部3と、記憶部4と、インターフェース部(以下、「IF部」と略記する。)5と、バス6とを備える。
【0027】
入力部2は、複数の予測値のバラツキに対する1つの評価指標の出力を指示するコマンド等の各種コマンド、および、所定の情報(データ)や前記評価指標を求める上で必要な情報(実測値およびその予測値のバラツキ、または、実測値およびその予測依拠情報、を含む)等の各種データを予測精度評価装置Sに入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。出力部3は、入力部2から入力されたコマンドやデータ、および、予測精度評価装置Sによって求められた前記評価指標等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCDおよび有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0028】
記憶部4は、予測精度評価装置Sに必要な各種データを記憶するものであり、機能的に、前記予測値のバラツキを求めるために必要な所定の情報である予測依拠情報(例えば過去実績データや予測すべき予測対象データ等)を予め記憶する予測依拠データ記憶部41と、複数の実測値と前記複数の実測値それぞれに対応する複数の予測値のばらつき(例えば予測値のヒストグラムや予測値の確率密度分布等)を記憶する予測データ記憶部42と、複数の前記予測値のバラツキにおける評価指標を記憶する評価指標記憶部43とを備え、予測依拠情報(予測依拠データ)から前記予測値のバラツキを予測する出力値予測プログラム、複数の前記予測値のバラツキに対する1つの評価指標を求める予測精度評価プログラム等の各種プログラム、および、各種プログラムの実行に必要なデータやその実行中に生じるデータ等の各種データを記憶する装置である。記憶部4は、例えば、演算制御部1の所謂ワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、ROM(Read Only Memory)や書換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子、および、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク装置等の大容量記憶装置等を備えて構成される。
【0029】
演算制御部1は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成され、機能的に、制御部11と、バラツキ取得部12と、評価指標演算部13と、ばらつき調整部14とを備える。
【0030】
制御部11は、制御プログラムに従い入力部2、出力部3、記憶部4およびIF部5を当該機能に応じてそれぞれ制御し、予測精度評価装置S全体の制御を司るものである。
【0031】
バラツキ取得部12は、複数の実測値、および、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキを取得するものである。予測値は、入力変数と出力値との関係を表す、予め与えられた所定のモデルに、予測したい予測対象データを前記入力変数として入力した場合に得られる出力値である。本実施形態では、前記所定のモデルに含まれる誤差等を考慮することによって、1個の予測対象データに対し、出力値は、その出現度合い(出現頻度、出現確率、発生頻度、発生確率)を伴う数値範囲で与えられる。すなわち、予測対象データの出力値は、その出現度合いを伴う数値範囲である予測値のバラツキで与えられる。したがって、予測値のバラツキは、所定の数値範囲内における複数の予測値(各数値、各予測値)と前記複数の予測値それぞれに対する出現度合いとの関係を表すものと、定義される。前記所定の数値範囲は、前記予測値の取り得る範囲であり、前記複数の予測値における最大値および最小値を含む範囲で、前記予測値を予測するために用いられる前記所定のモデルに応じて設定される。
【0032】
より具体的には、バラツキ取得部12は、前記予測値のバラツキの入力を入力部2で受け付けることによって、入力部2から前記複数の予測値のバラツキを取得するものである。この構成によれば、複数の予測値のバラツキを入力部2から入力できるので、前記複数の予測値のバラツキを求める他の装置で求められた前記複数の予測値のバラツキに対しても本予測精度評価装置Sで評価でき、様々な組の予測値のバラツキを取り扱うことができる。なお、このような場合に、入力部2で受け付けた前記予測値のバラツキは、記憶部4における予測データ記憶部42に記憶され、バラツキ取得部12は、この予測データ記憶部42に記憶された前記予測値のバラツキを取得することによって、入力部2から前記予測値のバラツキを取得してもよい。この構成によれば、複数の予測値のバラツキの入力とその評価指標の出力とを個別に実施することが可能となり、これら前記入力と前記出力との間に時間差(タイムラグ)を設けることが可能となり、そして、過去に入力した前記複数の予測値のバラツキにおける評価指標の再出力も可能となる。
【0033】
そして、本実施形態では、バラツキ取得部12は、記憶部4における予測依拠データ記憶部41に記憶されている前記所定の予測依拠情報に基づいて前記予測値のバラツキを演算するバラツキ演算部121を各前記予測値のバラツキを取得するために備えている。この構成によれば、前記所定の情報として前記予測依拠情報に基づいて前記予測値のバラツキを演算するので、前記予測依拠情報を予測精度評価装置Sに与えることで、前記予測値のバラツキが取得される。
【0034】
評価指標演算部13は、バラツキ取得部12で取得された各前記予測値のバラツキに基づいて、各前記予測値のバラツキに対する1つの評価指標を求めるものである。前記評価指標は、前記予測値のバラツキの予測精度における良否の度合いを表す指標である。より具体的には、例えば、評価指標演算部13は、予め与えられた前記複数の実測値それぞれに対し、前記予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲の最小値から最大値まで前記出現度合いの累積値を全体累積値として求め、前記所定の数値範囲における前記最小値から当該実測値まで前記出現度合いの累積値を部分累積値として求め、前記求めた部分累積値を前記全体累積値で除算し、前記複数の実値に対応する各除算結果のヒストグラムを前記評価指標として求める。予め与えられた前記複数の実測値は、例えば過去に実測されることで過去に取得された過去実績データ等である。
【0035】
IF部5は、予測精度評価装置Sと外部の他の装置との間で互いにデータを交換するための通信インターフェースであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格に対応した装置やRS232C規格に対応した装置である。
【0036】
これら演算制御部1、入力部2、出力部3、記憶部4およびIF部5は、信号を相互に交換することができるようにバス6でそれぞれ接続される。
【0037】
このような演算制御部1、入力部2、出力部3、記憶部4、IF部5およびバス6は、例えば、コンピュータ、より具体的にはノート型やディスクトップ型等のパーソナルコンピュータ等によって構成可能である。
【0038】
なお、必要に応じて予測精度評価装置Sは、外部記憶部をさらに備えてもよい。外部記憶部は、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)およびブルーレイディスク(Blu−ray(登録商標) Disc)等の記録媒体との間でデータを読み込みおよび/または書き込みを行う装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、CD−Rドライブ、DVD−Rドライブおよびブルーレイディスクドライブ等である。
【0039】
ここで、出力値予測プログラム、予測精度評価プログラムおよび調整プログラム等が格納されていない場合には、これら出力値予測プログラム、予測精度評価プログラムおよび調整プログラム等を記録した記録媒体から前記外部記憶部を介してこれら出力値予測プログラム、予測精度評価プログラムおよび調整プログラム等が記憶部4にインストールされるように、予測精度評価装置Sが構成されてもよい。あるいは、過去実績データや出力値を予測するためのデータや評価指標等のデータが外部記憶部を介して記録媒体に記録されるように、予測精度評価装置Sが構成されてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の動作について説明する。図2は、実施形態における予測精度評価装置の動作を示すフローチャートである。図3は、実施形態の予測精度評価装置における予測値のバラツキの演算方法を説明するための図である。図3(A)は、類似度wと出力の予測値yとの関係を示し、その横軸は、類似度wであり、その縦軸は、予測値yである。図3(B)は、前記予測値のバラツキとして予測値yのヒストグラムを示し、その横軸は、重み付き度数Fwであり、その縦軸は、予測値yである。図3(C)は、前記予測値のバラツキとして予測値yの確率密度分布を示し、その横軸は、確率密度P(y)であり、その縦軸は、予測値yである。図4は、予測値の確率密度分布の一例を示す図である。図5は、予測値の確率密度分布に対する予測精度の評価指標の一例を示す図である。図5(A)は、確率密度分布の精度が良い場合の評価指標を示し、図5(B)は、確率密度分布が広くその精度が劣化している場合(悪い場合)の評価指標を示し、図5(C)は、確率密度分布が狭くその精度が劣化している場合(悪い場合)の評価指標を示し、そして、図5(D)は、確率密度分布の精度がより劣化している場合(より悪い場合)の評価指標を示す。図6は、予測値の確率密度分布に対する予測精度の評価指標の一具体例を示す図である。図6(A)は、溶鋼処理前温度の評価指標の一具体例を示し、図6(B)は、タンディッシュ測温1回目の評価指標の一具体例を示す。
【0041】
予測精度評価装置Sは、例えば、ユーザの操作によって入力部2から起動コマンドを受け付けると、予測精度評価プログラムを実行する。この予測精度評価プログラムの実行によって、演算制御部1にバラツキ取得部12(バラツキ演算部121を含む)、評価指標演算部13およびバラツキ調整部14が機能的に構成される。そして、予測精度評価装置Sは、以下の動作によって、複数の実測値、および、前記複数の実値それぞれに対応する複数の予測値のバラツキを取得し、これら取得した各予測値のバラツキに対する1つの評価指標を求め、そして、この求めた評価指標を出力部3から出力する。
【0042】
より具体的には、図2において、まず、演算制御部1のバラツキ取得部12は、前記複数の実測値、および、前記複数の予測値のバラツキを取得する(S11)。上述したように、バラツキ取得部12は、前記複数の予測値のバラツキの入力を入力部2で受け付けることによって、入力部2から前記複数の予測値のバラツキを取得する。あるいは、バラツキ取得部12のバラツキ演算部121が記憶部4の予測依拠データ記憶部41に記憶されている前記所定の予測依拠情報に基づいて前記複数の予測値のバラツキをそれぞれ演算することによって、バラツキ取得部12は、前記複数の予測値のバラツキを取得する。
【0043】
この前記予測値のバラツキの演算手法には、任意な、公知の常套手段が用いられてよい。前記予測値のバラツキの演算手法として、例えば、特許5220458号公報、特開2010−231447号公報および特開2011−39762号公報等に開示された方法が挙げられる。
【0044】
より具体的な一例では、バラツキ演算部121によって前記予測値のバラツキが次のように演算される。まず、予測したい予測対象データと、所定の出力と前記出力に関わる数値化可能な要因とから成り過去に取得された複数の過去実績データとの類似度が、前記予測対象データの要因および前記過去実績データの要因に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出される。次に、前記所定の出力を出力変数とすると共に前記要因の一部または全部を入力変数とした際に、前記入力変数を用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第1モデルを生成した場合に、前記入力変数の入力値を前記第1モデルに与えることによって得られる値と前記入力変数の入力値に対応する前記出力変数の出力値との差に基づく誤差パラメータが、前記過去実績データの入力変数および出力変数に基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出される。次に、前記入力変数および前記誤差パラメータを用いて前記出力変数と前記入力変数との関係を表す第2モデルが生成され、前記予測対象データの要因のうちの前記入力変数に対応する要因の値および前記誤差パラメータの値を前記第2モデルに与えることによって、前記予測対象データの出力値が、予測値として、前記算出された複数の誤差パラメータのそれぞれについて算出される。そして、図3に示すように、前記算出された複数の類似度および前記算出された複数の予測値に基づいて、前記予測対象データの出力値のばらつきが前記予測値のバラツキとして算出される。
【0045】
すなわち、図3(A)に示すように、縦軸に予測値yをとると共に横軸に類似度wをとることによって、バラツキ演算部121は、まず、M個の各過去実績データ(X、y)からそれぞれ算出されたM個の各誤差パラメータα(j=1〜M)にそれぞれ対応するM個の各予測値y0jに対し、その類似度wを対応させる。次に、バラツキ演算部121は、図3(A)の縦軸yの少なくとも各予測値を含む範囲y0jを有限個の複数の区間(クラス、等級)に分割し、各区間に含まれる予測値y0jの類似度wを全て足し合わせることによって重み付き度数Fwを生成し、図3(B)に示すように、予測値yのバラツキを表す予測値yのヒストグラムを生成する。このように予測値yのバラツキがヒストグラムによって示され、予測値yの出現度合いを容易に知ることが可能となる。
【0046】
図3(B)に示すヒストグラムが予測値yのばらつきとされてもよいが、本実施形態では、さらに、バラツキ演算部121は、図3(B)に示すヒストグラムの面積が1となるように正規化する。この正規化されたヒストグラムが予測対象データXにおける予測値yの確率密度分布とされ、予測値yのばらつきとされる。さらに、バラツキ演算部121は、面積を1に維持したまま図3(B)に示すヒストグラムを、公知の常套手段によって、図3(C)に示すように曲線で表してもよい。この曲線が予測対象データXにおける予測値yの確率密度分布とされ、予測値yのバラツキとされる。
【0047】
このように前記予測値yのバラツキが求められる場合、記憶部4の予測依拠データ記憶部41には、予測依拠データとして、所定の出力とこの出力に関わる数値化可能な要因とから成り過去に取得された複数の過去実績データおよび出力値を予測したい予測対象データが予め記憶される。
【0048】
想定される要因であって前記所定の出力に関わる数値化可能な要因の一部または全部によって前記所定の出力を予測したとしても、例えばゆらぎや外乱や現時点では解明できていない要因等の想定外の不確定な要素あるいはモデル化誤差等の不確定な要素によって、予測値と真値との間には、誤差αが存在してしまう。すなわち、想定される要因Xであって前記所定の出力yに関わる数値化可能な要因Xの一部Zまたは全部Zによって前記所定の出力yを、第1モデル;y=f(Z、Θ)でモデル化したとしても、ZおよびΘだけで出力yを表現しきれない不確定な要素によって、予測値と真値との間には、誤差αが存在してしまう。ここで、Θは、Zの係数であり、Z0の項(定数項)を含む。
【0049】
この不確定な要素は、ばらつきの要因であり、上述の予測方法では、この不確定な要素に関連する誤差αが誤差パラメータαとされ、この誤差パラメータαが前記過去実績データに基づいて前記複数の過去実績データのそれぞれについて算出され、誤差パラメータαを加味した第2モデルが作成され、この第2モデルによって予測対象データの出力値が予測値として複数の誤差パラメータのそれぞれについて算出される。そして、複数の類似度および複数の予測値に基づいて予測対象データの出力値のばらつきが算出される。
【0050】
したがって、上述の予測方法では、予測値yのバラツキがより高精度に算出され、ひいては予測値yに基づいて操作や判断等を行う場合に予測値yのばらつきも考慮することが可能となる。
【0051】
ここで、前記数値化可能な要因には、測定器によって測定可能な物理量だけでなく、例えばプロセスを実行する操業班の各個体やプロセスの実行に使用される設備の各個体等も含まれる。このような各個体の数値化は、例えば、プロセスに関与する場合に1とされると共にプロセスに関与しない場合に0とされることによって実行される。例えば、A、B、C、Dの4班があって、A班が関与している場合には、A班のデータが1となって他のBないしD班の各データが0となる。
【0052】
このように前記複数の予測値のバラツキが取得されると、次に、演算制御部1の評価指標演算部13は、バラツキ取得部12で取得された前記複数の予測値のバラツキに基づいて、前記複数の予測値のバラツキに対する1つの評価指標を求め、この求めた評価指標を評価指標記憶部43に記憶する(S12)。
【0053】
より具体的には、例えば、本実施形態では、評価指標演算部13は、予め与えられた複数の実測値それぞれに対し、全体累積値を求め、部分累積値を求め、そして、この求めた部分累積値を前記全体累積値で除算する。前記全体累積値は、前記予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲における最小値から最大値まで前記出現度合いを累積することで評価指標演算部13によって求められる。部分累積値は、前記所定の数値範囲における前記最小値から当該実測値まで前記出現度合いを累積することで評価指標演算部13によって求められる。そして、評価指標演算部13は、このように求めた複数の実値に対応する各除算結果のヒストグラムを前記評価指標として求める。
【0054】
一例を挙げて、より具体的に説明すると、例えば、図4に示すように、前記予測値のバラツキが折れ線で示す確率密度分布で示される場合、まず、評価指標演算部13は、前記予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲における最小値yminから最大値ymaxまで前記出現度合いの累積値を全体累積値Shとして求める。すなわち、評価指標演算部13は、前記最小値yminから最大値ymaxまでの縦軸と確率密度分布の折れ線とによって囲まれた面積を全体累積値Shとして求める。ここでは、前記予測値のバラツキは、確率密度分布によって表されているので、全体累積値Shは、1となる。次に、評価指標演算部13は、実測値yの場合では、前記所定の数値範囲における前記最小値yminから当該実測値yまで前記出現度合いの累積値を部分累積値Spとして求める。すなわち、評価指標演算部13は、前記最小値yminから当該実測値yまでの縦軸と当該実測値yを通る横軸に平行な直線と確率密度分布の折れ線とによって囲まれた面積(図4でハッチングした部分の面積)を部分累積値Spとして求める。評価指標演算部13は、これら求めた部分累積値Spを全体累積値Shで除算する。上述のようにSh=1である場合では、前記除算の結果(除算結果)Dは、D=Sp/Sh=Sp/1=Spであり、部分累積値Spで表される。評価指標演算部13は、このような演算を、予め与えられた複数N個の実測値y(mは1からNまでの整数)それぞれに対し、実行し、これによって複数の実値yにそれぞれ対応する複数の除算結果Dを求める。ここでは、前記予測値のバラツキは、確率密度分布によって表されているので、除算結果Dは、0以上1以下の範囲におけるいずれかの値となる(0≦D≦1)。実測値yが最小値より下側に外れた場合には、便宜上Dに0より小さな値が割り当てられ(例えばD=−0.05とする)、実測値yが最大値より上側に外れた場合には、便宜上Dに1より大きな値が割り当てられる(例えばD=1.05とする)。そして、評価指標演算部13は、このように求めた複数の実値に対応する各除算結果Dのヒストグラムを前記評価指標として求める。すなわち、評価指標演算部13は、前記複数の除算結果Dを少なくとも含む範囲を有限個の複数の区間(クラス、等級)に分割し、各区間に含まれる除算結果Dの個数を計数し、除算結果Dのヒストグラムを生成する。例えば、評価指標演算部13は、0以上1以下の範囲を0.1ずつの10個の区間に分割し、各区間に含まれる除算結果Dの個数を計数し、除算結果Dのヒストグラムを生成する。このように生成された除算結果Dのヒストグラムの一例が図5および図6にそれぞれ示されている。このように除算結果Dのヒストグラムを生成するので、前記予め与えられる複数の実測値yは、この除算結果Dのヒストグラムが統計的に有意となる個数である。
【0055】
次に、演算制御部1は、このように求められた評価指標を出力部3から出力し(S13)、処理を終了する。
【0056】
オペレータ(ユーザ)は、このように出力部3から出力された前記評価指標を参照することによって、前記予測値のバラツキにおける予測精度を判断する。例えば、図5(A)に示すように、評価指標が0以上1以下の全区間に亘って略均一な度数を持つヒストグラムである場合は、予測精度が良好であると、オペレータは、判断する。また例えば、図5(B)に示すように、評価指標が各区間で略均一な度数を持つが0以上1以下より狭い区間で度数を持つヒストグラムである場合は、予測精度が図5(A)に示す場合よりも悪く、前記予測値のバラツキにおける分布の範囲が広すぎたと、オペレータは、判断する。また例えば、図5(C)に示すように、評価指標が各区間で略均一な度数を持つが0以上1以下より広い区間で度数を持つヒストグラムである場合は、予測精度が図5(A)に示す場合よりも悪く、前記予測値のバラツキにおける分布の範囲が狭すぎたと、オペレータは、判断する。なお、図5(C)に示すヒストグラムは、前記予測値のバラツキにおける分布の範囲外の値で実測値が存在する場合に、生成される。例えば、前記ヒストグラムを生成する場合に、前記予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲における最小値yminよりも小さい値の実測値が1つに纏められ、その頻度が0より小さい区間に割り当てられ、前記所定の数値範囲における最大値ymaxよりも大きい値の実測値が1つに纏められ、その頻度が1より大きい区間に割り当てられる。これによって図5(C)に示すヒストグラムが生成される。また例えば、図5(D)に示すように、評価指標が互いに隣接する区間で異なる度数を持ち0以上1以下の全区間に亘って不均一な度数を持つヒストグラムである場合は、予測精度が図5(B)や図5(C)に示す場合よりも悪く(図5(A)に示す場合よりもさらにより悪く)、前記予測値のバラツキが不適切であったと、オペレータは、判断する。
【0057】
ここで、評価指標の一具体例を図6に示す。この図6に示す評価指標は、過去実績データに基づいて上述した前記予測値のバラツキの演算手法によって求めた予測値の確率密度分布に対する予測精度の評価指標である。図6(A)は、溶鋼処理前温度に対する評価指標を示し、図6(B)は、タンディッシュ測温1回目に対する評価指標を示す。図6(A)および図6(B)それぞれに示すように、これら評価指標は、略0以上1以下の範囲で度数を持ち前記範囲の全区間に亘って比較的均一な度数を持つヒストグラムであり、予測精度は、比較的良好であった。
【0058】
このように本実施形態における予測精度評価装置Sおよびこれに実装された予測精度評価方法では、出力部3に出力された前記評価指標を参照することで、オペレータ(ユーザ)は、予測値のバラツキにおける予測精度を認識できる。
【0059】
すなわち、所定の演算手法によって求められる予測値のバラツキは、予測に用いられる入力変数の数値が異なると、その分布の形状が異なる。例えば、鋼板を製造する場合において、例えば、成分や溶鋼量、通過行程、使用される取鍋の使用履歴や取鍋温度等の入力変数の数値がチャージごとに異なるため、出鋼温度のバラツキにおける分布の形状は、チャージごとに異なったものとなる。このため、実測値yに対しこの求めた予測値のバラツキが良い予測であったか、悪い予測であったか分からない。例えば、実測値yが予測値のバラツキの分布における中央付近に位置した場合、一見、前記予測値のバラツキの精度が良かったと考えられるが、前記予測値のバラツキの分布が広く求められていれば、実測値yが前記予測値のバラツキの分布における中央付近に位置することになるので、前記予測値のバラツキの精度が良くなかったとも考えられる。
【0060】
そこで、本実施形態における予測精度評価装置Sおよびこれに実装された予測精度評価方法では、複数の実測値、および、前記複数の実測値それぞれに対応する予測値のバラツキが取得され、これら取得された各予測値のバラツキに対する前記評価指標が前記予測値のバラツキにおける分布の形状と複数の実測値とに基づいて求められ、そして、この求められた評価指標が出力部3に出力される。このため、本実施形態における予測精度評価装置Sおよびこれに実装された予測精度評価方法は、より適切な評価指標を生成でき、出力部3に出力された前記評価指標を参照することで、オペレータ(ユーザ)は、予測値のバラツキにおける予測精度を認識できる。例えば、オペレータ(ユーザ)は、図5(A)に示すように、出力部3に出力された前記評価指標がより一様であれば、予測値のバラツキにおける予測精度がより良かったと、認識できる。
【0061】
なお、上述の実施形態において、予測精度評価装置Sは、新たに予測したい予測対象データに対する第2の予測値のバラツキ(今回、予測した予測値のバラツキ)を評価指標で調整(補正)するように構成されても良い。この場合において、記憶部4には、複数の予測値のバラツキに対する評価指標に基づいて新たな前記第2の予測値のバラツキを調整する調整プログラムが前記各種プログラムの1つとしてさらに記憶される。バラツキ取得部12は、さらに、前記第2の予測値のバラツキを取得する。そして、演算制御部1は、図1に破線で示すように、ばらつき調整部14を機能的にさらに備える。このバラツキ調整部14は、評価指標演算部13で求めた評価指標に基づいてバラツキ取得部12で新たに取得した前記第2の予測値のバラツキを調整(補正)するものである。より具体的には、例えば、バラツキ調整部14は、バラツキ取得部12で新たに取得した前記第2の予測値のバラツキに評価指標演算部13で求めた前記評価指標を乗算することによって、前記第2の予測値のバラツキを調整する。
【0062】
このような構成の予測精度評価装置Sでは、前記第2の予測値のバラツキが新たに取得されている場合には、演算制御部1のバラツキ調整部14は、評価指標演算部13で求めた評価指標に基づいてバラツキ取得部12で取得した新たな前記第2の予測値のバラツキを調整(補正)し、この調整した前記第2の予測値のバラツキを予測データ記憶部42に記憶する。より具体的には、バラツキ調整部14は、例えば、バラツキ取得部12で取得した前記第2の予測値のバラツキに、評価指標演算部13で求めた前記評価指標を乗算することによって、前記予測値のバラツキを調整する。例えば、バラツキ調整部14は、前記第2の予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲(またはその最小値yminから最大値ymaxまでの範囲)を、除算結果Dのヒストグラムにおける区間数と同数の区間に分割し、小さい方から順に(または大きい方から順に)、互いに対応する区間同士で、バラツキ取得部12で取得した前記第2の予測値のバラツキに、評価指標演算部13で求めた前記評価指標を乗算することによって、前記第2の予測値のバラツキを調整する。上述の例では、バラツキ調整部14は、前記第2の予測値のバラツキにおける前記所定の数値範囲を10個に分割し、第1番目の区間における前記第2の予測値のバラツキに0〜0.1の前記評価指標を乗算することによって、前記第1番目の区間における前記第2の予測値のバラツキを調整し、第2番目の区間における前記第2の予測値のバラツキに0.1〜0.2の前記評価指標を乗算することによって、前記第2番目の区間における前記第2の予測値のバラツキを調整する。以下同様に、第3ないし第10番目の各区間における前記第2の予測値のバラツキに対し、その調整が行われる。そして、0〜0.1、0.1〜0.2、・・・、0.9〜1.0の各区分における各値の合計が1となるように、乗算後の予測値のバラツキが正規化される。また例えば、バラツキ調整部14は、予測値を求めるために用いたモデル(上述の例では、第1モデルおよび第2モデルのうちの少なくとも1つのモデル)におけるパラメータの値を、評価指標演算部13で求めた前記評価指標に基づいて増減させることによって、前記第2の予測値のバラツキを調整する。そして、演算制御部1は、このように調整された前記予測値のバラツキを出力部3から出力し、この調整処理を終了する。
【0063】
このような構成の予測精度評価装置Sおよびこれに実装された予測精度評価方法は、前記評価指標に基づいて前記予測値のバラツキを調整(補正)するので、予測値のバラツキをより適正化できる。したがって、より適切な予測値のバラツキが得られる。
【0064】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0065】
S 予測精度評価装置
1 演算制御部
3 出力部
4 記憶部
12 バラツキ取得部
13 評価指標演算部
14 バラツキ調整部
41 予測依拠データ記憶部
42 予測データ記憶部
43 評価指標記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6