(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
監視空間を飛行移動する飛行機能を備えた飛行ロボットと、当該飛行ロボットから放出されて追跡対象に付着する付着機能を備えた追跡用装置とで構成される飛行ロボット装置であって、
前記飛行ロボットは、
軟磁性材料で形成された芯部と当該芯部にコイル状に巻かれた導線とを備えた電磁石と、前記導線に通電して前記電磁石を磁化させて所定方向の磁力を外部に発生させる通電部と、を備え、
前記追跡用装置は、
前記通電部によって発生させられた前記磁力の影響を受ける位置であって前記芯部に吸着する位置に永久磁石を備え、
前記飛行ロボットは、前記永久磁石が前記芯部に前記所定方向の磁力と同極となる方向で吸着することで前記追跡用装置を保持し、前記通電部が通電して磁化した前記電磁石の磁力と前記永久磁石の磁力が反発することで前記追跡用装置を放出し、
前記追跡用装置の前記付着機能は、前記永久磁石の磁力により発揮されることを特徴とした飛行ロボット装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術である特許文献1は、飛行ロボット自身が、追跡対象を自律的に追跡する構成なので、追跡対象が目的地に移動するまで飛行ロボットによって追跡することや、追跡対象に対して飛行ロボットによる追跡以外の対応(例えば対応員による追跡対象の捕獲など)を行うことを考慮すると、飛行ロボットにはこれに応じた十分な飛行可能時間が必要となる。また、飛行ロボットがバッテリにより稼働する場合には、追跡対象の追跡途中でバッテリ切れが生じると、追跡対象の追跡が不可能となり、これに対応するためには大容量のバッテリを必要とする。このため、飛行ロボットが搭載するバッテリの重量も大きくなり、飛行ロボットのペイロード(有効搭載量)を大きくする必要が生じる。その結果として、飛行ロボットの大型化を招き、運用効率が悪くなってしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、飛行ロボットを用いて追跡対象を追跡する場合に、装置の大型化や運用効率の悪化を防止する飛行ロボット装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る飛行ロボット装置は、監視空間を飛行移動する飛行機能を備えた飛行ロボットと、当該飛行ロボットから放出されて追跡対象に付着する付着機能を備えた追跡用装置とで構成される飛行ロボット装置であって、
前記飛行ロボッ
トは、
軟磁性材料で形成された芯部と当該芯部にコイル状に巻かれた導線とを備えた電磁石と、前記導線に通電して前記電磁石を磁化させて所定方向の磁力を外部に発生させる通電部と、を備え
、
前記追跡用装
置は、
前記通電部によって発生させられた前記磁力の影響を受ける位置であって前記芯部に吸着する位置に永久磁石を備え、
前記飛行ロボットは、前記永久磁石が前記芯部に前記所定
方向の磁力と同極となる方向で吸着することで前記追跡用装置を保持し、前記通電部が通電して磁化した前記電磁石の磁力と前記永久磁石の磁力が反発することで前記追跡用装置を放出
し、
前記追跡用装置の前記付着機能は、前記永久磁石の磁力により発揮されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る飛行ロボット装置は、前記飛行ロボットが
、前記追跡用装置を前記保持することが可能となる位置を案内するガイド部を備えてもよい。
【0009】
さらに、本発明に係る飛行ロボット装置は、
前記飛行ロボットが、第1の給電用接点を介して前記追跡用装置に給電する給電部を備え、
前記追跡用装置が、第2の給電用接点を介して充電される充電式電池を備え、
前記第2の給電用接点は、前記通電部が通電して磁化した前記電磁石と同極となる永久磁石の磁極側に外部から視認可能に設けられてもよい。
【0010】
また、本発
明に係る飛行ロボット装置は、
監視空間を飛行移動する飛行機能を備えた飛行ロボットと、当該飛行ロボットから放出されて追跡対象に付着する付着機能を備えた追跡用装置とで構成される飛行ロボット装置であって、
前記飛行ロボット及び前記追跡用装置のうちの一方は、
軟磁性材料で形成された芯部と当該芯部にコイル状に巻かれた導線とを備えた電磁石と、前記導線に通電して前記電磁石を磁化させて所定方向の磁力を外部に発生させる通電部と、を備え、
前記飛行ロボット及び前記追跡用装置のうちの他方は、
前記通電部によって発生させられた前記磁力の影響を受ける位置であって前記芯部に吸着する位置に永久磁石を備え、
前記飛行ロボットは、第1の給電用接点を介して前記追跡用装置に給電する給電部を備え、
前記追跡用装置は、第2の給電用接点を介して充電される充電式電池を備え、
前記飛行ロボットは、前記永久磁石が前記芯部に前記所定方向の磁力と同極となる方向で吸着することで前記追跡用装置を保持し、前記通電部が通電して磁化した前記電磁石の磁力と前記永久磁石の磁力が反発することで前記追跡用装置を放出し、
前記第2の給電用接点は、前記通電部が通電して磁化した前記電磁石と同極となる永久磁石の磁極側に外部から視認可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る飛行ロボット装置は、前記飛行ロボットが、
前記追跡用装置に対して給電可能な状態か否かを検出する検出部と、
当該検出部にて給電可能でないことを検出すると外部に報知する報知部と、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飛行ロボット装置によれば、飛行ロボットによって保持された追跡用装置を放出し、追跡対象に付着させることにより、飛行ロボット自身が追跡しなくても追跡対象を追跡することができる。
また、飛行ロボットが追跡用装置を保持する場合、永久磁石の磁力を利用して保持するので、追跡用装置を保持するために必要な消費電力が不要となり、無駄な電力消費を削減することができる。
さらに、飛行ロボットが追跡用装置を放出する場合、電磁石の磁力と永久磁石の磁力の反発力を利用するので、追跡用装置に勢いをつけて追跡対象に放出することができる。
【0014】
また、追跡用装置は、追跡対象に付着させるために小型で低消費電力であることが望ましい。本発明の飛行ロボット装置によれば、電磁石や通電部の機能及び放出に必要な電力を飛行ロボット側に担当させることができるので、追跡用装置の小型化、低消費電力化を実現できる。
【0015】
さらに、本発明の飛行ロボット装置によれば、飛行ロボットへの追跡用装置の保持・放出に必要な機構の一部を追跡用装置の付着機能と兼用することができるので、構成を簡素化し、追跡用装置の小型化を実現できる。
【0016】
そして、本発明の飛行ロボット装置によれば、利用者が追跡用装置を飛行ロボットのガイド部に合わせるようにすることにより、追跡用装置を飛行ロボットに容易に吸着させ、飛行ロボットと追跡用装置とを保持状態にすることができる。
【0017】
利用者が飛行ロボットに追跡用装置を保持させる場合、磁化した電磁石と異極となる永久磁石の磁極側で追跡用装置を飛行ロボットに取り付けてしまうと、飛行ロボットから追跡用装置を放出するために電磁石を磁化すると、電磁石の磁力と永久磁石の磁力が引き合い、飛行ロボットから追跡用装置が放出しない恐れがある。
本発明の飛行ロボット装置によれば、追跡用装置の給電用接点を電磁石の磁力と反発する永久磁石の磁極の側に設けることにより、正しい取り付け側を示す目印としての役割を給電用接点に持たせることができ、飛行ロボットから追跡用装置を確実に放出させることができる。
【0018】
また、本発明の飛行ロボット装置によれば、給電可能な状態か否かを判断することで、追跡用装置が正しい取り付け側で保持されているかを判断でき、正しく保持されていない場合には外部に報知するので、利用者が誤って飛行ロボットに追跡用装置を保持させてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の
図1〜5を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(システム全体構成)
本発明に係る飛行ロボット装置1は、
図2に示すように、監視施設となる建物の敷地内の空間を監視空間Sとし、この監視空間S内を飛行移動することにより、監視空間S内における不審物体の監視を行うものである。
【0022】
尚、監視空間Sは、建物の敷地内の空間に限定されるものではなく、例えばもっと広域のイベント会場を監視施設とする敷地内の空間とすることもできる。
【0023】
飛行ロボット装置1は、
図2に示すように、監視システム2と無線により通信接続され、監視システム2に対して監視空間Sの監視情報を送信し、監視システム2から各種の制御信号を受信する。
【0024】
監視システム2は、監視センタに設置される例えば端末装置などのセンタ装置2aを含む。センタ装置2aは、飛行ロボット装置1からの監視情報を受信し、受信した監視情報を表示部に表示して監視員に知らせ、表示された監視情報に基づく監視員による指示を制御信号として飛行ロボット装置1に送信する。
【0025】
また、監視システム2は、ロボット用ポート2bを含む。ロボット用ポート2bは、飛行ロボット装置1が待機する際に着陸する場所であって、監視施設Sの敷地内に設置され、飛行ロボット装置1が着陸するとポート内に収容する機構を備えている。ロボット用ポート2bは、飛行ロボット装置1をポート内に収容すると、飛行ロボット装置1に対して非接触にて給電を行う機能を有している。
【0026】
飛行ロボット装置1は、
図1に示すように、飛行ロボット11と追跡用装置12とから大略構成される。以下、飛行ロボット11と追跡用装置12の構成について詳述する。
【0027】
(飛行ロボット11の構成)
飛行ロボット11は、
図1に示すように、アンテナ21、ロータ22(22a,22b,22c,22d)、ロータ駆動部23、高度センサ24、測距センサ25、カメラ26、照明27、通電部28、電磁石29、給電用接点(第1の給電用接点)30、ロボ制御部31、充電式電池32、報知部33、ガイド部34を備えている。
【0028】
アンテナ21は、ロボット本体に設けられ、監視システム2のセンタ装置2aとの無線通信を行う。
【0029】
ロータ22(22a,22b,22c,22d)は、4つの回転体で構成され、飛行ロボット11の機体11aを上昇/下降/方向転換/前進などの飛行をするようにロータ駆動部23によって駆動される。
【0030】
ロータ駆動部23は、ロボ制御部31(後述する飛行制御手段31d)の制御により、4つのロータ22a,22b,22c,22dを駆動する。
【0031】
高度センサ24は、ロボ制御部31(後述するスキャン手段31c)の制御により、飛行ロボット11の機体11aから鉛直下方にレーザーを投受光し、このレーザーの投受光により飛行ロボット11の現在高度を計測する。
【0032】
測距センサ25は、ロボ制御部31(後述するスキャン手段31c)の制御により、飛行ロボット11の機体11aの水平方向かつ周囲にレーザーを投受光し、このレーザーの投受光により飛行ロボット11の周辺状況を計測する。
【0033】
カメラ26は、ロボ制御部31(後述するカメラ制御手段31b)の制御により、飛行ロボット11の周囲(例えば、前方や下方など)をカラー画像にて撮影する。
【0034】
照明27は、カメラ26による撮影を補助するLED照明などの照明器具で構成され、ロボ制御部31の制御により、周囲が暗くなって所定の照度以下となったときに点灯する。
【0035】
通電部28は、追跡用装置12を飛行ロボット11から放出する際に、ロボ制御部31(後述する放出制御手段31f)の制御により、電磁石29への通電が制御される。
【0036】
電磁石29は、飛行ロボット11への追跡用装置12の保持や飛行ロボット11からの追跡用装置12の放出を行うため、
図5(b)に示すように、軟磁性材料で形成された芯部29aと、芯部29aにコイル状に巻かれた導線29bとを備えて構成される。電磁石29は、導線29bに通電していない状態で磁力をほぼ0にし、後述する追跡用装置12の永久磁石41が芯部29aに吸着し、追跡用装置12を飛行ロボット11に保持する。また、電磁石29は、通電部28が導線29bに通電している状態で磁化し、所定方向の磁力を外部に発生させ、この磁力が後述する追跡用装置12の永久磁石41の磁力と反発し、追跡用装置12を飛行ロボット11から放出する。
【0037】
給電用接点30は、ロボ制御部31(後述する給電制御手段31e)の制御により、後述する追跡用装置12の充電式電池43dに対して給電を行う。
【0038】
ロボ制御部31は、飛行ロボット11の全体を統括制御するものであり、
図1に示すように、通信制御手段31a、カメラ制御手段31b、スキャン手段31c、飛行制御手段31d、給電制御手段31e、放出制御手段31fを備えている。
【0039】
通信制御手段31aは、アンテナ21を介してセンタ装置2aとの無線通信を制御する。
【0040】
カメラ制御手段31bは、カメラ26の撮影開始/終了やカメラ26が撮影した画像を取得して通信制御手段31aから監視システム2へ監視情報として送信するなどの処理を行う。
【0041】
スキャン手段31cは、高度センサ24および測距センサ25が測定した高度情報および周辺物体と自機(飛行ロボット11)との距離データをスキャンデータとして通信制御手段31aから監視システム2へ送信するための処理を行う。
【0042】
飛行制御手段31dは、監視システム2からの制御信号としての飛行制御信号に基づいてロータ駆動部23を制御し、飛行ロボット11を目標位置に飛行移動するように制御する。
【0043】
給電制御手段31eは、飛行ロボット11の給電用接点30及び後述する追跡用装置12の給電用接点42と電気的に接続され、追跡用装置12に対する給電が可能であるか否かを検出する検出部としての機能を有する。給電制御手段31eは、追跡用装置12への給電が可能であると判断すると、後述する追跡用装置12の充電式電池43dに対する給電を行う。これに対し、給電制御手段31eは、追跡用装置12への給電が可能でないと判断すると、追跡用装置12が飛行ロボット11に保持されていないか、追跡用装置12が正しい位置で飛行ロボット11に取り付けられていない異常な状態である可能性があるため、報知部33を介して利用者に異常を報知する。
【0044】
放出制御手段31fは、飛行ロボット11からの追跡用装置12の放出を制御する。放出制御手段31fは、監視システム2から制御信号としての放出制御信号を受信すると、通電部28を通電させて電磁石29を磁化させる。
【0045】
尚、放出制御信号は、飛行ロボット11のカメラ26のカラー画像をセンタ装置2aの表示部に表示して監視員に知らせ、監視員がセンタ装置2aの操作部で放出指示の操作したときに送信してもよい。この場合、監視員に対して表示により知らせるカラー画像には、追跡用装置12の落下範囲となる枠形状を重畳表示し、監視員が放出指示を操作するタイミングを把握しやすくするとよい。落下範囲となる枠形状は、例えば、飛行ロボット11がホバリングしている状態において追跡用装置12を放出する実験を繰り返して得たカラー画像上の落下範囲となる円形状の枠とすることができる。
【0046】
また、監視システム2において所定の処理によって自動的に送信することもできる。この場合には、監視員がセンタ装置2aの操作部で追跡用装置12を放出する位置を指定すると、監視システム2において、飛行ロボット装置1に放出位置まで飛行するように飛行制御信号を飛行ロボット装置1に送信し、飛行ロボット装置1から受信するスキャンデータと、予め記憶した監視空間Sを3次元で表現した監視空間マップとに基づき、飛行ロボット装置1の現在位置を検出し、飛行ロボット装置1が放出位置まで移動したか否かを判断し、飛行ロボット装置1が放出位置まで移動したと判断したときに自動的に放出制御信号を送信すればよい。
【0047】
尚、本実施の形態では、スキャンデータを用いて飛行ロボット装置1の現在位置を検出しているが、スキャンデータに加えて又はスキャンデータに替えて、飛行ロボット11にGPS信号の受信機能を備えたGPS測位部を設け、GPS信号に基づく飛行ロボット装置1の位置情報を受信し、これと監視空間マップとから飛行ロボット装置1の現在位置を検出してもよい。
【0048】
充電式電池32は、飛行ロボット11の本体に交換可能に設けられ、例えばリチウムポリマー電池で構成され、飛行ロボット11の各部に必要な電力を供給する。
【0049】
報知部33は、利用者に対して異常を視覚的や聴覚的に報知するためのLEDやブザーなどで構成される。報知部33は、給電制御手段31eが追跡用装置11への給電が可能でないと判断したときに報知動作する。
【0050】
ガイド部34は、追跡用装置12を保持することが可能となる位置を案内するもので、
図5(a)に示すように、ロボット本体11の機体11aの底面に対して矩形枠状に突出形成される。ガイド部34の矩形枠状内は、追跡用装置12を保持して収容する収容部34aを形成している。収容部34aには、追跡用装置12の給電用接点42と電気的に接続される給電用接点30が表出している。
【0051】
(追跡用装置12の構成)
追跡用装置12は、
図1に示すように、永久磁石41、給電用接点(第2の給電用接点)42、追跡機能部43を備えている。また、追跡機能部43は、
図1に示すように、位置測位部43a、通信部43b、追跡制御部43c、充電式電池43dを備えている。そして、これら永久磁石41、給電用接点42、追跡機能部43は、
図3及び
図4(a)〜(c)に示す収容ケース44に収容される。以下、各構成について説明する。
【0052】
永久磁石41は、
図5(b)に示すように、追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させた状態で、飛行ロボット11の電磁石29と対応する位置に設けられる。永久磁石41は、磁力により追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させる機能と、飛行ロボット11から追跡用装置12が放出されたときに磁力により追跡対象に吸着する機能とを有する。
【0053】
給電用接点42は、
図1に示すように、充電式電池43dに接続される。給電用接点42は、
図5(b)に示すように、追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させた状態で、飛行ロボット11の給電用接点30と接続される位置に対応して設けられる。給電用接点42は、追跡用装置12を飛行ロボット11のガイド部34の収容部34aに収容した状態で飛行ロボット11の給電用接点30と電気的に接続され、飛行ロボット11の給電制御手段31eの制御により、飛行ロボット11から給電用接点30,42を介して充電式電池43dの充電が行われる。
【0054】
追跡機能部43は、追跡機能として位置情報を送信する機能を有し、位置測位部43a、通信部43b、追跡制御部43c、充電式電池43dを備えている。
【0055】
位置測位部43aは、人工衛星が発信する電波を利用して追跡用装置12が地球上のどこにいるかを正確に割り出すGPS機能を備える。
【0056】
通信部43bは、無線により監視システム2のセンタ装置2aと通信を行う。
【0057】
追跡制御部43cは、位置測位部43aより現在の位置情報を取得し、通信部43bを介して監視システム2のセンタ装置2aに位置情報を定期的に送信する。
【0058】
充電式電池43dは、追跡用装置12の収容ケース44の本体45に交換可能に設けられ、例えばリチウムポリマー電池で構成され、追跡用装置12の各部に必要な電力を供給する。充電式電池43dは、給電用接点42と接続されており、
図5(b)に示すように、追跡用装置12が飛行ロボット11に保持された状態で、給電用接点42が飛行ロボット11の給電用接点30と電気的に接続され、飛行ロボット11の給電制御手段31eの制御により、給電用接点30,42を介して充電が行われる。
【0059】
収容ケース44は、
図3に示すように、本体45に2つの付着部46がそれぞれ接続部47を介して接続されたものである。収容ケース44は、全体、又は少なくとも外部に接する面が例えばナイロン、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、メラニンなどの衝撃吸収性の部材で構成される。これにより、追跡用装置12を飛行ロボット11から放出させて追跡対象に付着した際の衝撃を吸収している。尚、収容ケース44の外面を衝撃吸収性の部材で構成し、永久磁石41や追跡機能部43を保護するように収容ケース44の内部に緩衝材を別途設けることもできる。
【0060】
本体45は、
図3及び
図4(a)〜(c)に示すように、偏平略矩形状に形成される。本体45の長手方向の一方の側面には、追跡機能部43を本体45に出し入れするための出入口45aが形成される。出入口45aは、本体45に収容された追跡機能部43が衝撃により外に飛び出さないように、追跡機能部43の長手方向の寸法よりも短く形成されたファスナーを備える。尚、出入り口45aは、ファスナーを備えた構成に限らず、例えば面ファスナーやボタンなどで開口を閉めて追跡機能部43が外に飛び出さないようにしてもよい。
【0061】
付着部46は、本体45の短手方向の両側面に対し、接続部47を介して本体45の長手方向に対向してそれぞれ折り曲げ可能に接続部47を介して接続される。2つの付着部46のそれぞれには、
図4(a)〜(c)や
図5(b)に示すように、永久磁石41が内装される。2つの付着部46は、追跡用装置12を飛行ロボット11に保持する際、接続部47の部分で本体45の一方の面側に折り畳まれる。付着部46が折り畳まれた状態では、
図4(b)や
図5(b)に示すように、一方の付着部46に給電用接点42が表出する。付着部46から表出する給電用接点42は、付着部46が折り畳まれた追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させたときに、
図5(b)に示すように、飛行ロボット11の給電用接点30と電気的に接続される位置に対向する。これにより、付着部46から表出する給電用接点42は、追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させるときに、付着部46を折り畳む際の目印として機能する。
【0062】
接続部47は、本体45に対して付着部46を接続するもので、自在に変形可能な軟性を有する軟性部材(例えば、ナイロン、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、プラスチックなど)で形成される。接続部47は、
図3に示すように、平面視したときに、本体45から付着部46に向かって幅狭にくびれた形状に形成される。また、接続部47は、
図4(c)に示すように、付着部46から本体45に向かって厚さが薄く形成される。これにより、追跡用装置12が放出されてから追跡対象に付着するまでの間、本体45に対して接続部47が自在に変形しやすくなり、この接続部47の変形に伴って付着部46も自由に移動できる。その結果、本体45に対する付着部46や接続部47の位置変化の自由度が向上し、より確実に追跡対象に追跡用装置12を付着させることができる。
【0063】
尚、追跡用装置12は、2つの付着部46を接続部47の部分で本体45の一方の面側に折り畳んで飛行ロボット11に保持する際や飛行ロボット11から放出した後に、永久磁石41同士が吸着せず、飛行ロボット11からの放出時に付着部46が本体45に対して外方に腕を広げて開くように、永久磁石41の磁力、接続部47の長さや弾力が実験などにより予め設定される。
【0064】
具体的には、接続部47において、本体45と付着部46とを接続する長さは、接続部47を自在に変形させて付着部46が移動したとしても、付着部46同士が接しない長さとされている。これにより、付着部46の折り畳み状態において、付着部46の永久磁石41同士を吸着させないようにすることができ、付着部46の移動の自由度を制限してしまうことを防止できる。
【0065】
また、接続部47は、本体45と付着部46とを接続する接続方向に垂直な平面で断面視(
図3及び
図4(c)のA−A断面)した場合に、扁平(例えば略楕円形や略長方形の形状など)に形成されている。このように、断面視の形状を縦横比が異なる形状となるように形成することで、断面視を略変形又は略正方形とした場合に比べて、その形状の長手方向の直線を折れ目とするように接続部47が自在に変形しやすくなる。この結果、追跡用装置12を折り畳んだ状態から放出すると、2つの付着部46が本体45に対して側方に腕を広げる方向に距離を離して開きやすくなり(
図3や
図4(a)の状態)、その離れた距離分だけ追跡対象に対して付着する可能性のある範囲を広げることができる。
【0066】
さらに、接続部47は、本体44を中心として対向する位置となることができるように2つの付着部46を接続する。これにより、追跡用装置12は、放出された状態において、付着部46が上述のように側方に広がった場合には、付着部46同士が最も距離が離れて位置することになるので、その離れた分だけ追跡対象に対して付着する可能性のある範囲を広げることができる。
【0067】
次に、上記のように構成された飛行ロボット装置1により追跡対象を追跡する際の飛行ロボット11への追跡用装置12の保持方法と、飛行ロボット11からの追跡用装置12の放出方法について説明する。ここでは、監視空間S内の不審車両を追跡対象としている。
【0068】
(飛行ロボット11への追跡用装置12の保持方法)
追跡用装置12は、
図4(a)の状態から
図4(b)に示すように、2つの付着部46を接続部47の部分で本体45の一方の面(図示の例では上面)側に折り畳み、一方の付着部46(図示の例では右側)から表出する給電用接点42が
図5(a)に示す飛行ロボット11の給電用接点30と一致するように追跡用装置12をガイド部34に沿って挿入し、ガイド部34の収容部34aに収容する。追跡用装置12は、ガイド部34の収容部34aに収容されると、2つの付着部46のそれぞれに内装された永久磁石41が飛行ロボット11の電磁石29の芯部29aに吸着する。これにより、追跡用装置12は、
図5(b)に示すように、飛行ロボット11から充電式電池43dへの給電が可能な状態で、飛行ロボット11のガイド部34の収容部34aに収容保持される。
【0069】
(飛行ロボット11からの追跡用装置12の放出方法)
図5(b)に示すように、追跡用装置12を収容保持した飛行ロボット11は、監視空間S内に追跡対象としての不審車両を発見したときに、監視システム2からの飛行制御信号に基づく飛行制御手段31dの制御により、不審車両まで飛行移動する。飛行ロボット11が不審車両の直上位置まで飛行移動すると、監視システム2からの放出制御信号に基づく放出制御手段31fの制御により、通電部28が電磁石29の導線29bに通電する。電磁石29は、通電部28が導線29bに通電すると、磁化して磁力を発生させ、この磁力が追跡用装置12の永久磁石41の磁力と反発し、飛行ロボット11から追跡用装置12を不審車両に向けて放出する。追跡用装置12は、不審車両に向けて放出されると、2つの付着部46が本体45に対して接続部47の部分で折り畳まれた状態(
図4(b)や
図5(b)の状態)から自律的に両腕を広げた状態(
図3や
図4(a),(c)の状態)に復元され、放出中に本体45を中心として接続部47が自在に変形し、この接続部47の変形に伴って先端の付着部46も自由に移動し、2つの付着部46のそれぞれに内装された永久磁石41の磁力によって追跡用装置12が不審車両の車体に吸着される。追跡用装置12が不審車両の車体に吸着されると、それ以降は追跡用装置12が不審車両と一緒に移動し、追跡用装置12から位置情報が監視システム2のセンタ装置2aに定期的に送信され、不審車両の追跡が行われる。
【0070】
以上説明したように、上述した実施の形態による飛行ロボット装置1によれば、以下に示す効果を奏する。
【0071】
(1)飛行ロボット11と追跡用装置12から飛行ロボット装置1が大略構成され、飛行ロボット11に電磁石29を設けるとともに、追跡用装置12に永久磁石41を設け、永久磁石41の磁力で電磁石29の鉄芯に吸着させることにより追跡用装置12を飛行ロボット11に保持する。そして、追跡対象の追跡を行う場合には、電磁石29を通電して磁力を発生させ、永久磁石41の磁力と反発させることにより追跡用装置12を飛行ロボット11から放出させて追跡対象に付着させる。かかる構成により、飛行ロボット11自身が追跡対象を追跡しなくても追跡対象に付着させた追跡用装置12によって追跡対象の追跡を行うことができる。しかも、飛行ロボット11に追跡用装置12を保持する場合には、永久磁石41の磁力を利用するので、追跡用装置12の保持のための消費電力を一切必要とせず、無駄な電力消費を削減することができる。さらに、飛行ロボット11から追跡用装置12を放出する場合には、電磁石29の磁力と永久磁石41の磁力の反発力を利用するので、磁力の反発力により勢いを付けて追跡用装置12を追跡対象に向けて放出でき、より確実に追跡用装置12を追跡対象に付着させることができる。
【0072】
(2)飛行ロボット11に通電部28及び電磁石29を備え、追跡用装置12に永久磁石41を備えた構成とし、永久磁石41の磁力によって追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させ、通電部28の通電により磁化した電磁石29の磁力と永久磁石41の磁力の反発によって追跡用装置12を飛行ロボット11から放出させている。かかる構成により、通電部28や電磁石29の機能及び放出に必要な電力を飛行ロボット11側に担当させることができ、追跡用装置12を小型化できるとともに低消費電力化を図ることができる。
【0073】
(3)追跡用装置12の付着機能を永久磁石41の磁力により発揮させている。かかる構成により、追跡用装置12の付着機能を、追跡用装置12の保持・放出に必要な構成の一部と兼用することができ、追跡用装置12の付着機能を実現するための構成部品を削減し、さらに追跡用装置12の小型化を図ることができる。
【0074】
(4)飛行ロボット11の機体11aの底面に追跡用装置12を収容案内する矩形枠状のガイド部34を備えている。かかる構成により、利用者が追跡用装置12をガイド部34に合わせて収容部34aに収容案内するで、飛行ロボット11と追跡用装置12とを容易に位置合わせした状態で追跡用装置12を飛行ロボット11に吸着保持することができる。
【0075】
(5)飛行ロボット11が給電用接点30を介して追跡用装置12に給電する給電部を備え、追跡用装置12が給電用接点42を介して充電される充電式電池43dを備えており、追跡用装置12の給電用接点42が、通電部28が通電して磁化した電磁石29と同極となる永久磁石41の磁極側に外部から視認可能に設けられる。かかる構成により、追跡用装置12の給電用接点42を電磁石29の磁力と反発する永久磁石41の磁極の側に設けることで、追跡用装置12の正しい取り付け側を示す目印としての役割を給電用接点42に持たせ、利用者が誤った向きで追跡用装置12を飛行ロボット11に保持するのを防止でき、飛行ロボット11から追跡用装置12を確実に放出させることができる。
【0076】
(6)追跡用装置12に対して給電可能な状態か否かを検出する検出部としての給電制御手段31eと、この給電制御手段31eが給電可能でないことを検出したときに、その旨を外部に報知する報知部33とを飛行ロボット11に備えている。かかる構成により、追跡用装置12に対して給電可能か否かを判断することにより、追跡用装置12が正しい取り付け側で飛行ロボット11に保持されているかを利用者が判断することができる。そして、追跡用装置12が正しい取り付け側で飛行ロボット11に保持されていない場合には、その旨を報知部33によって外部に報知するので、利用者が誤った向きで飛行ロボット11に追跡用装置12を保持させてしまうのを防止することができる。
【0077】
また、飛行ロボット11とともに飛行ロボット装置1を構成する追跡用装置12によれば、以下に示す効果を奏する。
【0078】
(1)追跡対象を追跡機能を備えた本体45と、追跡対象に付着する付着部46と、付着部46を本体45に接続する接続部47とを一体に備えて追跡用装置12を構成し、接続部47が軟性を有する軟性部材で形成している。かかる構成により、飛行ロボット11から追跡対象に対して放出してから付着するまでの間、本体45に対して接続部47が自在に変形し、この接続部47の変形に伴って付着部46も自由に移動できるので、追跡用装置12が追跡対象に付着しやすくなる。しかも、接続部47の部分で付着部46の折り曲げが可能なので、付着部46をコンパクトに折り畳んだ状態で追跡用装置12を飛行ロボット11に保持することができる。
【0079】
(2)追跡用装置12の接続部47が本体45から付着部46に向かって幅狭にくびれた形状に形成されるとともに、付着部46から本体45に向かって厚さが薄く形成されている。かかる構成により、付着部46の位置変化の自由度を向上させることができ、より確実に追跡用装置12を追跡対象に付着させることができる。
【0080】
(3)追跡用装置12の外部に接する収容ケース44が衝撃吸収性の部材で形成されている。かかる構成により、追跡用装置12を追跡対象に付着させた際の傷つけを防止することができる。しかも、追跡用装置12が追跡対象に付着したとき発生する音を軽減でき、その音を人に気づかれるのを防止することができる。
【0081】
(4)追跡用装置12は、2つの付着部46が接続部47を介して本体45の両側面に対向して接続されている。かかる構成により、飛行ロボット11から追跡用装置12を放出した際、付着部46が本体45に対して側方に広がった場合には、付着部46同士が最も距離が離れて位置し、その離れた分だけ追跡対象に対して付着する可能性のある範囲を広げることができ、放出方向を安定させて追跡用装置12を追跡対象に付着させることができる。
【0082】
(5)追跡用装置12は、接続部47を、本体45と付着部46とを接続する接続方向に垂直な平面での断面視において縦横比の異なる扁平に形成して複数設けている。かかる構成により、接続部47の断面視の形状が縦横比の異なる形状となるに形成され、断面視を略円形や略正方形とした場合に比べて、接続部の形状の長手方向の直線を折れ目とするように接続部47が自在に変形しやすくなる。この結果、追跡用装置12を折り畳んだ状態から放出すると、複数の付着部46が本体45に対して側方の方向に距離を離して開きやすくなり、その離れた距離分だけ追跡対象に対して付着する可能性のある範囲を広げることができる。
【0083】
(6)追跡用装置12は、2つの付着部46に永久磁石41を内装し、接続部47を自由に変形させても付着部46同士が接しないように本体45と付着部46とが接続部47を介して接続されている。かかる構成により、付着部46を永久磁石41で構成した場合、折り畳みの状態において付着部46同士が永久磁石41の異極同士で吸着してしまい、追跡装置12を放出した際に付着部46の移動を制限してしまうのを防止することができる。
【0084】
ところで、上述した実施の形態では、追跡用装置12の小型化及び低消費電力化を図るため、飛行ロボット11に通電部28及び電磁石29を備え、追跡用装置12に永久磁石41を備えた構成としているが、逆転した構成とすることもできる。すなわち、飛行ロボット11に永久磁石41を備え、追跡用装置12に通電部28及び電磁石29を備えた構成とし、永久磁石41の磁力によって追跡用装置12を飛行ロボット11に保持させ、通電部28の通電により磁化した電磁石29の磁力と永久磁石41の磁力の反発によって追跡用装置12を飛行ロボット11から放出させてもよい。
【0085】
また、上述した実施の形態において、報知部33による異常の報知は、飛行ロボット11から監視システム2のセンタ装置2aへ異常信号を送信し、センタ装置2aに異常の旨を表示部に表示して監視員に知らせることにより、センタ装置2aを報知部33として機能させることもできる。
【0086】
さらに、上述した実施の形態では、電磁石29と永久磁石41の組を2組で構成した場合を例にとって図示して説明したが、その組数が限定されるものではなく、電磁石29と永久磁石41の組は1組でも3組以上であってもよい。
【0087】
また、上述した実施の形態における放出制御手段31fは、監視システム2のセンタ装置2aから放出制御信号を受信したときに通電部28を通電させるようにしているが、スキャン手段31cからのスキャンデータ(高度情報や周辺物体と飛行ロボット11との距離データ)に基づいて追跡対象まで自律的に飛行移動させ、放出制御手段31fがカメラ制御手段31bからのカラー画像に基づいて通電部28を通電させるか否かを判断するようにしてもよい。
【0088】
さらに、上述した実施の形態における付着部46の付着機能としては、永久磁石41に限定されるものではなく、両面テープ、粘着剤、複数の吸盤などで構成することもできる。また、2つの付着部46が接続部47を介して本体45の側面に対向して接続される構成について図示して説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば1つの付着部46が接続部47を介して本体45に接続される構成、3つ以上の付着部46が接続部47を介して本体45に接続される構成、本体45の側面全周に接続部47を介して付着部46が接続される構成であってもよい。また、付着部46の付着機能を本体45に持たせることもできる。
【0089】
また、本体45に対して付着部46を接続する接続部47は、全体として軟性を有するものであればよい。例えば鎖形状のように、接続部47を構成する各部材が個々に剛性を有していても全体として軟性を有していればよい。
【0090】
尚、本発明における追跡機能は、追跡対象を追跡することの助けになるものであれば何でもよい。例えば、周囲から容易に認識可能な光や音を発するものでもよい。また、追跡用装置12の本体45にRFタグを備え、追跡対象を見失って後から追跡対象を発見したとしても、タグのIDを識別することにより見失う前の追跡対象と同一の追跡対象であることを確認できるようにしたものでもよい。
【0091】
以上、本発明に係る飛行ロボット装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。