(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リール本体の後部に回転可能に設けられるドラグ調整ノブを回動操作して押圧体を軸方向に移動させることにより制動板同士を圧接させて制動板と一体に回転するスプール軸および該スプール軸に取り付けられるスプールの回転に制動力を付与するリアドラグ機構を備える魚釣用リールであって、
前記ドラグ調整ノブは、前記リール本体に対して回転可能に且つ軸方向移動不能に取り付けられ、
前記押圧体は、前記ドラグ調整ノブの内側に螺合されるとともに、その軸方向に延びる突出部がリール本体と係合することによりリール本体に対して回り止めされることを特徴とする魚釣用リール。
前記突出部は、前記ドラグ調整ノブの一方の回転方向で前記リール本体の壁部に側方から当接する第1の突出部と、前記ドラグ調整ノブの他方の回転方向で前記リール本体の壁部に側方から当接する第2の突出部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
前記リール本体には、前記ドラグ調整ノブを前記側部開口を通じて受け入れるための側口を有する取り付け孔部が設けられ、この取り付け孔部は、前記ドラグ調整ノブの係合部と凹凸係合して前記リール本体に対して前記ドラグ調整ノブを抜け止めする抜け止め係合部を有することを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リール。
前記取り付け孔部に受けられる前記ドラグ調整ノブの外周面部位は、前記係合部に或いは前記係合部に隣接して、円弧状の周面部と、この周面部の一部を直線状に切り欠いて成る互いに平行な一対の平面部とを有し、
前記ドラグ調整ノブの前記外周面部位を受ける前記リール本体の前記取り付け孔部の部位は、前記ドラグ調整ノブの前記一対の平面部間の幅で開口する開口部位と、前記ドラグ調整ノブの前記円弧状の周面部と嵌合できる円弧状の内周面部位とを有する略C型の断面形状を成すことを特徴とする請求項5に記載の魚釣用リール。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールには、一般に、釣糸が巻回されるスプールの回転に制動力を付与するドラグ機構が設けられる。このようなドラグ機構を設けると、必要に応じてドラグ調整ノブを操作してスプールの回転力を調整することにより、魚の急激な引き込みに対応することができる。すなわち、ドラグを利かせて、釣糸にかかる力をスプールの回転によって逃がし、釣糸をスプールから滑り出させることにより、ハリス切れや身切れによる魚のバレを防止できる。
【0003】
特に、スピニングリールでは、ドラグ機構として、フロントドラグ方式のドラグ機構とリアドラグ方式のドラグ機構とが知られており、リアドラグ方式では、リール本体の後部に回転可能に設けられたドラグ調整ノブを回動操作して押圧体を圧縮バネなどの付勢力に抗して軸方向に移動させると、押圧体によって複数の摩擦板(制動板)同士が互いに圧接(摩擦結合)し、それにより、摩擦板と一体に回転するスプール軸の回転、したがって、スプール軸に取り付けられたスプールの回転に制動力が付与される。
【0004】
そのようなリアドラグ方式のドラグ機構(リアドラグ機構)では、ドラグ調整ノブの回動操作によって押圧体を軸方向に移動させるための構造が必要であるとともに、回動操作されるドラグ調整ノブがリール本体から抜け出さないようにドラグ調整ノブを抜け止めすることも必要である。
【0005】
これに関して、例えば特許文献1に開示されるリアドラグ機構では、リール本体に対して回転可能に取り付けられたドラグ調整ノブの内側に、リール本体に螺合される押圧体を軸方向に移動自在に回り止め嵌合させ、ドラグ調整ノブの回転操作によって押圧体を一体に回転させることにより、リール本体に対してこれに螺合する押圧体を螺子に沿って軸方向に移動させている。また、この特許文献1では、2つの分割部材から成る環状のねじ部材をリール本体に対して軸方向に移動不能に且つ回転可能に凹凸係合させるとともに、このねじ部材の外周の雄ねじに外側から軸方向でドラグ調整ノブを螺合させることにより、ドラグ調整ノブをねじ部材を介してリール本体に対して回転可能に抜け止めするようにしている。
【0006】
また、特許文献2に開示されるドラグ機構では、リール本体に対して回転可能に且つ軸方向移動不能に取り付けられたドラグ調整ノブの内側に押圧体が螺合されるとともに、摩擦板を構成するドラグ座金の径方向に延びる第1の係止片がリール本体に係止され、また、前記ドラグ座金の軸方向に延びる第2の係止片が押圧体の係止スリットに係合される。そのため、ドラグ調整ノブを回転操作すると、ドラグ座金を介してリール本体に対して回り止めされた押圧体がドラグ調整ノブの内側で螺子に沿って軸方向に移動するようになっている。また、この特許文献2では、リール本体の後面に形成される装着孔に抜け止め部材を装着することにより、リール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めがなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるリアドラグ機構では、押圧体をリール本体に対して螺合させると同時にドラグ調整ノブに対して回り止め嵌合させる必要があるため、組み込みが煩雑であるとともに、螺子の加工に加えて回り止め嵌合部を加工して設ける必要もあり、加工も煩雑となって、結果として製造コストも増大する。また、特許文献1では、リール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めのために、2分割の環状のねじ部材を用いるため、部品点数が増大するとともに、そのようなねじ部材をリール本体の外周上に軸方向移動不能に且つ回転可能に凹凸係合させる必要があることから、組み込みも煩雑である。しかも、このねじ部材の外周の雄ねじに外側から軸方向でドラグ調整ノブを螺合させるようになっているため、リアドラグ機構の軸方向寸法および径方向寸法が大きくなってしまう。また、これに加えて、摩擦板の両側から径方向に突出して形成される突出部がリール本体の貫通長孔に係止されるようになっているため、このことも径方向寸法の増大および組み込み性の悪化に寄与することとなる。
【0009】
一方、特許文献2に開示されるリアドラグ機構では、押圧体をリール本体に対して回り止めするために、ドラグ座金を別個に必要とするため、部品点数が多くなる。また、この場合、ドラグ座金は、径方向に延びる第1の係止片と軸方向に延びる第2の係止片とを有するため、リアドラグ機構の径方向寸法および軸方向寸法を増大させる。更に、ドラグ座金の第1の係止片をリール本体に係止するとともに第2の係止片を押圧体の係止スリットに係合させる必要があるため、組み込みも煩雑となる。また、特許文献2では、リール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めのために別個の抜け止め部材が必要であるため、部品点数の増大および組み込み性の悪化につながるとともに、抜け止め部材を装着するための装着孔をリール本体に加工して設ける必要があるため、加工も煩雑となって、結果として製造コストも増大する。
【0010】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、押圧体の回り止め及び/又はリール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めを寸法増大を招くことなくコンパクトな構造で実現できる組み込み性が良好で部品点数が少ない低コストなリアドラグ機構を備える魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明は、リール本体の後部に回転可能に設けられるドラグ調整ノブを回動操作して押圧体を軸方向に移動させることにより制動板同士を圧接させて制動板と一体に回転するスプール軸および該スプール軸に取り付けられるスプールの回転に制動力を付与するリアドラグ機構を備える魚釣用リールであって、前記ドラグ調整ノブは、前記リール本体に対して回転可能に且つ軸方向移動不能に取り付けられ、前記押圧体は、前記ドラグ調整ノブの内側に螺合されるとともに、その軸方向に延びる突出部がリール本体と係合することによりリール本体に対して回り止めされることを特徴とする。
【0012】
上記した構成の魚釣用リールでは、押圧体からその軸方向に延びる突出部がリール本体と係合されることにより、押圧体がリール本体に対して回り止めされる。そのため、押圧体を回り止めする別個の部材を必要とせず、したがって、部品点数を増やさないで済み、また、加工も容易となって、製造コストを抑えることが可能になる。また、ドラグ調整ノブの内側に螺合して軸方向に移動される押圧体、したがって、ドラグ調整ノブの軸方向内側に位置される押圧体に、軸方向に延びる回り止め用の突出部を設けたため、径方向および軸方向で大きな寸法増大を招くことなく押圧体の回り止めをコンパクトな構造で実現でき、また、押圧体の組み付けは、押圧体をドラグ調整ノブの内側に螺合させて押圧体の突出部をリール本体に係合させるだけで済むため、組み込み性も良好である。
【0013】
なお、上記構成において、突出部は、ドラグ調整ノブの一方の回転方向でリール本体の壁部に側方から当接する第1の突出部と、ドラグ調整ノブの他方の回転方向でリール本体の壁部に側方から当接する第2の突出部とを含むことが好ましい。このようにすると、突出部をリール本体に対して当て付けるだけで、押圧体の回り止め(両方向の回転防止)を実現できるため、回り止め構造および押圧体の組み込みが更に簡単になる。
【0014】
また、上記構成では、全ての制動板が第1および第2の突出部の延在長さの範囲内にほぼ収まって押圧体の内側に収容されることが好ましい。このようにすると、リアドラグ機構を軸方向でコンパクトに構成できることは勿論のこと、制動板を収容保持する押圧体がドラグ調整ノブの内側に螺合されることにより、リール本体に対して単体として組み付けられる1つのユニット(制動板と押圧体とドラグ調整ノブとから成るユニット)が構成されるため、これらのドラグ構成部品の組み込み性が格段に向上される。この場合、リール本体が、スプール軸の軸方向に対して垂直な側方からのドラグ調整ノブの取り付けを許容する側部開口を有するとともに、ドラグ調整ノブを側部開口を通じて受け入れるための側口を伴う取り付け孔部を有していれば、組み込み性を飛躍的に向上できることは勿論のこと、前述した特許文献1のようにリール本体の外周に係合されるねじ部材の外周の雄ねじに外側から軸方向でドラグ調整ノブを螺合させる構造と比べて、径方向寸法および軸方向寸法をコンパクトに抑えることができる。また、このような側方からの組み付けは、前述したように一対の突出部を側方からリール本体に当接させて押圧体を回り止めする場合に特に有益である。
【0015】
更に、この場合、ドラグ調整ノブは、リール本体と側部開口を閉じるカバーとによってリール本体に対して軸方向移動不能に抜け止め支持されることが好ましい。このようにすると、ドラグ調整ノブのための専用の抜け止め部材を別個に必要としないため、部品点数を増大させずに済み、また、リール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めを寸法増大を招くことなくコンパクトな構造で実現でき、組み込み性も良好となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、押圧体の回り止め及び/又はリール本体に対するドラグ調整ノブの抜け止めを寸法増大を招くことなくコンパクトな構造で実現できる組み込み性が良好で部品点数が少ない低コストなリアドラグ機構を備える魚釣用リールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用リールの一実施形態について詳しく説明する。
図1には、魚釣用リールとしての本実施形態に係る魚釣用スピニングリールが示されている。図示のように魚釣用スピニングリールのリール本体1には、回転操作されるハンドル2と、ハンドル2の回転操作によって回転駆動されるロータ3と、ロータ3の回転駆動と同期して前後動されるスプール5が設けられている。
【0019】
リール本体1内には、ハンドル2が装着されたハンドル軸2aが軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸2aには、ハンドル2の回転操作を、ロータ3に伝達するとともに、スプール5に伝達する動力伝達機構6が係合されている。
【0020】
動力伝達機構6は、ハンドル軸2aに一体回転可能に装着される駆動歯車(ドライブギヤ)7と、ハンドル軸2aに対して直交する方向に延出する回転軸筒8とを備えている。そして、回転軸筒8の基端側には、駆動歯車7と噛合するピニオン8aが形成されており、先端部には、ロータナットを螺合することで、ロータ3が回転軸筒8に対して取り付けられている。
【0021】
また、回転軸筒8の内部には、釣糸が巻回されるスプール5を保持したスプール軸5aが挿通されている。このスプール軸5aには、公知のオシレーティング機構90が連結されており、ハンドル軸2aがハンドル2の回転操作によって回転されたとき、スプール軸5aは軸方向に沿って前後往復駆動される。
【0022】
上記構成により、ハンドル2を回転操作することで、ロータ3が駆動歯車7およびこれに噛合するピニオン8a(回転軸筒8)を介して回転駆動されるとともに、スプール5がオシレーティング機構90を介して前後に往復駆動される。この場合、ロータ3には、後述するように釣糸案内部が設けられており、また、スプール5の釣糸巻回胴部5bには、ロータ3に設けられた前記釣糸案内部を介して釣糸が均等に巻回される。
【0023】
ロータ3は、略円筒状に形成された本体部3aを備えており、その両側には、略180°間隔おいて一対のアーム部3b(
図1には一方のみが見える)が形成されている。各アーム部3bは、本体部3aの後部(リール本体側)から径方向外方に突き出した連結部とともに本体部3aに一体形成されており、軸方向に延出している。これにより、本体部3aと各アーム部3bとの間には隙間が形成され、この部分に、スプール5のスカート部5cが位置するようになっている。
【0024】
一対のアーム部3bの先端には、公知のように、支持部材3cが支軸3c´を中心として釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で反転可能に支持されており、一方の支持部材3c(
図1には見えない)の先端部には、釣糸案内部(図示せず)が設けられている。また、両支持部材3cの間には、ベール3eが設けられており、支持部材3cが釣糸放出位置から釣糸巻き取り位置へ反転した際、釣糸をピックアップして釣糸案内部へ案内する。
【0025】
また、一対のアーム部3bには補強部材10が設けられている。この補強部材10は、一対のアーム部3bの側部からロータ3の本体部3aの後部に向けて延出するとともに、本体部3aに接続されている。この場合、補強部材10は、一対のアーム部3bのそれぞれの両側部に設けておくことが好ましく、両側部に設けられた補強部材10は、好ましくは略同一の形状とされ、アーム部3bの側部の前部(支持部材3cが設けられる部分)から基部に向かって延出し、基部側に移行するに連れて、次第に離間する形状となっている。すなわち、両アーム部3bが対向する方向の側面視において、略ハの字型となる形状に形成されており、これによりアーム部3bの基部の両サイドでは、補強部材10との間で隙間Gが存在するようになっている。なお、隙間Gは、側面視において次第に拡がるようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、補強部材10は、一対のアーム部3b間で略U字状に湾曲されて橋設された構造となっており、その中間部10Aがロータ3の本体部3aの後部に一体形成で接続されている。このため、補強部材10は、一対のアーム部3b間において、切れることなく連続形成されており、リール本体1側に向けて凸状となっている。
【0027】
また、本実施形態の魚釣用スピニングリールは、釣糸が巻回されるスプール5の回転に制動力を付与するリアドラグ機構20をリール本体 1の後部に備えている。
図2および
図3に明確に示されるように、このリアドラグ機構20は、リール本体1の後部に回転可能に設けられたドラグ調整ノブ22を回動操作して押圧体24を板バネ30A,30B,30Cの付勢力に抗して軸方向に移動させることにより、押圧体24によって複数の制動板32A,32B,32C,32D,32E同士を互いに圧接(摩擦結合)させ、それにより、一部の制動板32C,32Eと一体に回転するスプール軸5aの回転、したがって、スプール軸5aに取り付けられたスプール5の回転に制動力を付与するようになっている。
【0028】
具体的には、リアドラグ機構20は、リール本体1の後部に回転可能に且つ軸方向移動不能に取り付けられる有底円筒状のドラグ調整ノブ22を備え、このドラグ調整ノブ22は、リール本体1の後端に設けられる取り付け孔部27に回転可能に受けられて軸方向の移動が阻止されるようになっている。
【0029】
ここで、リール本体1は、特に
図6に明確に示されるように、スプール軸5aの軸方向に対して垂直な側方からのドラグ調整ノブ22の取り付けを許容する側部開口1aを有しており、この側部開口1aは、リール本体1とは別体のカバー60によって閉じられるようになっている。この場合、リール本体1の側部開口1aは、リール本体1内への各種構成要素の組み込みを可能にするべくリール本体1のほぼ全体を側方に開口することが好ましい。また、リール本体1の取り付け孔部27は、ドラグ調整ノブ22を側部開口1aを通じて受け入れるための側口27aを有する。
【0030】
リール本体1の取り付け孔部27に対するドラグ調整ノブ22の回転可能且つ軸方向移動不能な取り付けは、取り付け孔部27に受けられるドラグ調整ノブ22の外周面部位に形成された係合部としての凹状の環状溝22aと、リール本体1の取り付け孔部27の内周面から径方向に突出する抜け止め係合部としての凸状の環状突起27bとの凹凸係合によってなされる。そして、この凹凸係合状態で、カバー60をリール本体1に取り付けて側部開口1aを閉じることにより、ドラグ調整ノブ22は、リール本体1とカバー60とによって挟持されて、リール本体1に対して軸方向および径方向に移動不能に抜け止め支持されるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態においては、前記凹凸係合の係合形態を逆にしても構わない。すなわち、ドラグ調整ノブ22に凸状の環状突起を設けるとともに、取り付け孔部27の内周面に凹状の環状溝を設けて、これらの凹凸係合により、取り付け孔部27に対するドラグ調整ノブ22の回転可能且つ軸方向移動不能な取り付けがなされてもよい。
【0032】
また、ドラグ調整ノブ22の前部に形成された円筒状の孔22b内には、有底円筒状の押圧体24が螺合して収容されるようになっている。具体的には、ドラグ調整ノブ22の孔22bの内周面に雌ネジ29が形成されるとともに、押圧体24の外周面に雄ネジ31が形成されており、雌ネジ29と雄ネジ31との螺合によって押圧体24がドラグ調整ノブ22の孔22b内に軸方向に移動可能に螺合される。
【0033】
軸方向移動不能なドラグ調整ノブ22の回動操作によって押圧体24を孔22b内で軸方向に移動させるために、押圧体24は、リール本体1に対して回り止めされるようになっている。そのような回り止めは、押圧体24からその軸方向に延びる突出部をリール本体1と係合させることによってなされる。本実施形態において、突出部は、押圧体24と一体に形成されており、ドラグ調整ノブ22の一方の回転方向でリール本体1の壁部に側方から当接する第1の突出部24aと、ドラグ調整ノブ22の他方の回転方向でリール本体1の壁部に側方から当接する第2の突出部24bとから成る。
【0034】
ここで、第1および第2の突出部24a,24bは、押圧体24の周方向に180°の角度間隔を隔てて互いに対向して平行に軸方向に沿って延びており、スプール軸5aの軸方向に対して垂直に延びる(押圧体24の軸方向の移動経路を横切る)リール本体1の支柱壁部1Aに当接されるようになっている。特に、本実施形態では、支柱壁部1Aの中央に設けられる環状支持部1Bの上下両側に形成される壁部1D,1Eの側端面に対して第1および第2の突出部24a,24bが側部開口1a側から当接されるようになっている。
【0035】
なお、押圧体24から軸方向に延びる突出部の数は、2つに限定されず、任意に設定できる。例えば、突出部の数を1つとして、この突出部をリール本体1の軸孔内に挿通することによっても、押圧体24をリール本体1に対して回り止めできる。また、突出部が押圧体24と別体であっても構わない。
【0036】
また、押圧体24は、複数の板バネ30A,30B,30Cおよび複数の制動板32A,32B,32C,32D,32Eを保持する保持筒35が回転可能に挿通される円形の貫通孔24cをその底面(後端)に有する。保持筒35は、非円形の断面形状を有する内周面および外周面を有しており、その貫通して形成される非円形の内孔35aにはスプール軸5aが回り止め嵌合状態で挿通される。すなわち、保持筒35は、スプール軸5aと一体に回転できる。
【0037】
また、保持筒35の外周には前述した複数の板バネ30A,30B,30Cと複数の制動板32A,32B,32C,32D,32E(
図3には板バネ32D,32Eが図示されていない)とが保持される。この場合、互いに隣接する板バネ30A,30B,30Cは、互い違いに逆方向で「く」の字状に軸方向に屈曲されて弾発力を生起できるようになっており、その非円形の開口30aに非円形断面の保持筒35が回り止め嵌合状態で挿通されることにより保持筒35に保持される。
【0038】
一方、これらの板バネ30A,30B,30Cの軸方向後側には隣接して、円形の開口32aを有する第1および第2の制動板32A,32Bと、非円形の開口32bを有して第1および第2の制動板32A,32B間に位置される第3の制動板32Cとが位置されており、第1および第2の制動板32A,32Bは、その円形の開口32aに保持筒35が挿通されることにより保持筒35に対して回転可能に保持され、一方、第3の制動板32Cは、その非円形の開口32bに非円形断面の保持筒35が回り止め嵌合状態で挿通されることにより保持筒35に保持されて保持筒35と一体に回転できる。
【0039】
また、板バネ30A,30B,30Cの軸方向前側にも隣接して、第4および第5の制動板32D,32E(
図2参照)が保持筒35に保持された状態で位置されている。そして、板バネ30A,30B,30Cを間に挟み込むこのような制動板32A,32B,32C,32D,32Eの列は、
図2に示される組み付け状態で、リール本体1の支柱壁部1Aの中央に設けられる環状支持部1Bの後端面に当接するようになっている。また、この組み付け状態で、保持筒35は、環状支持部1Bの円形開口39に挿通されて回転可能に保持される。
【0040】
なお、保持筒35は、第4および第5の制動板32D,32Eよりも前方側の先端部に、環状溝35bを有しており、この環状溝35bにはリテーナ40が嵌め付けられている。また、リテーナ40の後方には、クリックギア43が回り止め保持されている。このクリックギア43には、リアドラグ機構20の作動時(スプール軸5aが回転するとき)に発音する図示しないバネの先端が接触している。具体的には、例えば、クリックギア43には、リール本体1の上部またはカバー60の内側に取着された図示しない弾性片の先端が係合する。
【0041】
また、本実施形態では、
図2に示される組み付け状態で、全ての制動板32A,32B,32C,32D,32Eおよび全ての板バネ30A,30B,30Cが第1および第2の突出部24a,24bの延在長さの範囲内にほぼ収まって押圧体24の内側(したがって、ドラグ力が作用しない状態(押圧体24が軸方向前方へ移動しない状態)ではドラグ調整ノブ22のほぼ内側)に収容されるように関連する各構成要素22,24等の寸法設定がなされている。
【0042】
また、本実施形態のスピニングリールには、リール本体1の側部開口1aを通じて(側口27aから)取り付け孔部27に取り付けられるドラグ調整ノブ22をカバー60の装着を伴わずに径方向で抜け止めできる構造が設けられる。そのような構造が
図4〜
図8に記載される。
【0043】
具体的に、そのような構造として、取り付け孔部27に受けられるドラグ調整ノブ22の外周面部位は、環状溝22aに或いは環状溝22aに隣接して(本実施形態では、環状溝22aの後側の外周面部位に)、円弧状の周面部51と、この周面部の一部を直線状に切り欠いて成る互いに平行な一対の平面部52,53とを有する。また、これに対応して、ドラグ調整ノブ22の前記外周面部位(51,52,53)を受けるリール本体1の取り付け孔部27の部位は、ドラグ調整ノブ22の一対の平面部52,53間の幅で開口する開口部位27a’(側口27aの一部)と、ドラグ調整ノブ22の円弧状の周面部51と嵌合できる円弧状の内周面部位27cとを有する略C型の断面形状を成す。
【0044】
したがって、このような構造では、まず、
図6に示されるように、ドラグ調整ノブ22の平面部52,53をリール本体1の取り付け孔部27の側口27aの開口部位27a’に位置決め対向させ、その対向状態で、
図7に示されるようにドラグ調整ノブ22を取り付け孔部27に嵌め込む(開口部位27a’は平面部52,53間の幅で開口するため、平面部52,53を開口部位27a’に位置決め対向させなければ、ドラグ調整ノブ22を取り付け孔部27に嵌め込むことができない)。なお、
図7の状態でリール本体1にカバー60を装着した状態が
図4にも示される。
【0045】
続いて、
図7の嵌め込み状態からドラグ調整ノブ22を時計回りに90°回転させて
図8の状態にすると、ドラグ調整ノブ22の円弧状の周面部51が取り付け孔部27の内周面部位27cに嵌め合うとともに、平面部52,53が開口部位27a’から90°ずれて、開口部位27a’の開口幅よりも大きい周面部51が開口部位27a’に位置するため、リール本体1に対してカバー60が装着されなくても、取り付け孔部27からのドラグ調整ノブ22の側方(径方向)への抜けが規制される。なお、
図8の状態でリール本体1にカバー60を装着した状態が
図5にも示される。
【0046】
以上のように構成されるリアドラグ機構20をリール本体1に対して組み付ける際には、まず最初に、制動板32A,32B,32C,32D,32Eおよび板バネ30A,30B,30Cを押圧体24内(一対の突出部24a,24bの内側)に組み込む。次に、そのようにして組み込んだアセンブリをドラグ調整ノブ22の孔22b内に組み付け(押圧体24をドラグ調整ノブ22の孔22b内に螺合させ)、その組み付けられたユニットをリール本体1の側部開口1aから取り付け孔部27に嵌め付ける(前述したようにドラグ調整ノブ22を取り付け孔部27に取り付ける)。そして、最後に、前方側から保持筒35を押圧体24に対して軸方向から組み付ける。すなわち、リテーナ40やクリックギア43等が保持された保持筒35を、リール本体1の環状支持部1Bの円形開口39に挿通させるとともに、押圧体24の貫通孔24cに挿通させる。そして、最後に、カバー60をリール本体1に取り付けることにより、ドラグ調整ノブ22をリール本体1とカバー60とによって挟持して抜け止め支持する。なお、組み込み順は、ドラグ調整ノブ22に押圧体24を螺合してユニット化した後、これをリール本体1の取り付け孔部27に嵌め付け、その後に制動板32A〜32Eおよび板バネ30A〜30Cを押圧体24内に組み込んだ後、保持筒35を組み付けてもよい。
【0047】
このようにして組み付けられたリアドラグ機構20は以下のように作用する。すなわち、ドラグ調整ノブ22を回動操作すると、ドラグ調整ノブ22の孔22内に螺合されて突出部24a,24bによってリール本体1に回り止めされた押圧体24が、保持筒35に保持される板バネ30A,30B,30Cの付勢力に抗して、ドラグ調整ノブ22の孔22内で軸方向に移動する。押圧体24のこの軸方向移動は、保持筒35に保持される制動板32A,32B,32C,32D,32Eの列をリール本体1の支柱壁部1Aの中央に設けられる環状支持部1Bの後端面に圧接させると同時に、制動板32A,32B,32C,32D,32E同士も互いに圧接(摩擦結合)させる。それにより、制動板32C,32Eと一体に回転するスプール軸5aの回転、したがって、スプール軸5aに取り付けられたスプール5の回転に対して、ドラグ調整ノブ22の回動操作量(押圧体24の軸方向移動量)に応じた制動力が付与される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用スピニングリールでは、押圧体24からその軸方向に延びる突出部24a,24bがリール本体1と係合されることにより、押圧体24がリール本体1に対して回り止めされる。そのため、押圧体24を回り止めする別個の部材を必要とせず、したがって、部品点数を増やさないで済み、また、加工も容易となって、製造コストを抑えることが可能になる。また、ドラグ調整ノブ22の内側に螺合して軸方向に移動される押圧体24、したがって、ドラグ調整ノブ22の軸方向内側に位置される押圧体24に、軸方向に延びる回り止め用の突出部24a,24bを設けたため、径方向および軸方向で大きな寸法増大を招くことなく押圧体の回り止めをコンパクトな構造で実現でき、また、押圧体24の組み付けは、押圧体24をドラグ調整ノブ22の内側に螺合させて押圧体24の突出部24a,24bをリール本体1に係合させるだけで済むため、組み込み性も良好である。
【0049】
特に、本実施形態において、押圧体24の突出部は、ドラグ調整ノブ22の一方の回転方向でリール本体1の壁部1Dに側方から当接する第1の突出部24aと、ドラグ調整ノブ22の他方の回転方向でリール本体1の壁部1Eに側方から当接する第2の突出部24bとから成り、突出部24a,24bをリール本体1に対して当て付けるだけで、押圧体24の回り止め(両方向の回転防止)を実現できるため、回り止め構造および押圧体24の組み込みが更に簡単になる。
【0050】
また、本実施形態では、全ての制動板32A,32B,32C,32D,32Eおよび全ての板バネ30A,30B,30Cが第1および第2の突出部24a,24bの延在長さの範囲内にほぼ収まって押圧体24の内側に収容されるため、リアドラグ機構20を軸方向でコンパクトに構成できることは勿論のこと、制動板および板バネを収容保持する押圧体24がドラグ調整ノブ22の内側に螺合されることにより、リール本体1に対して単体として組み付けられる1つのユニット(制動板、板バネ、押圧体24、および、ドラグ調整ノブ22から成るユニット)を構成できる。そのため、これらのドラグ構成部品の組み込み性が格段に向上される。
【0051】
また、これに関連して、本実施形態では、リール本体1が、スプール軸5aの軸方向に対して垂直な側方からのドラグ調整ノブ22の取り付けを許容する側部開口1aを有するとともに、ドラグ調整ノブ22を側部開口1aを通じて受け入れるための側口27aを伴う取り付け孔部27を有するため、組み込み性を飛躍的に向上できることは勿論のこと、前述した特許文献1のようにリール本体の外周に係合されるねじ部材の外周の雄ねじに外側から軸方向でドラグ調整ノブを螺合させる構造と比べて、径方向寸法および軸方向寸法をコンパクトに抑えることができる。また、このような側方からの組み付けは、一対の突出部24a,24bを側方からリール本体1に当接させて押圧体24を回り止めする本実施形態では特に有益である。
【0052】
更に、本実施形態において、ドラグ調整ノブ22は、リール本体1と側部開口1aを閉じるカバー60とによってリール本体1に対して軸方向移動不能に抜け止め支持されるため、ドラグ調整ノブ22のための専用の抜け止め部材を別個に必要としない。そのため、部品点数を増大させずに済み、また、リール本体1に対するドラグ調整ノブ22の抜け止めを寸法増大を招くことなくコンパクトな構造で実現でき、組み込み性も良好となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。例えば、前述した実施形態では、保持体24が2つの突出部を有しているが、突出部の数は任意である。また、突出部とリール本体との回り止め係合形態も任意である。要は、突出部が押圧体から軸方向に延びて、突出部により押圧体がリール本体に対して回り止めされさえすればよい。また、本発明は、公知のドラグON/OFF切り換え機構を有するドラグ機構のサブドラグとして実施してもよく、その場合には、スプール軸とスプールとの間に公知のメインドラグ機構が装備される。