特許第6235469号(P6235469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235469ヘテロ原子化合物のカチオン及びジアルキルスルフェートの硫酸塩の製造方法及びその使用
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  • 特許6235469-ヘテロ原子化合物のカチオン及びジアルキルスルフェートの硫酸塩の製造方法及びその使用 図000035
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235469
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ヘテロ原子化合物のカチオン及びジアルキルスルフェートの硫酸塩の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/08 20060101AFI20171113BHJP
   C07C 215/40 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 303/32 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 309/08 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 233/58 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 295/037 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C07C213/08
   C07C215/40
   C07C303/32
   C07C309/08
   C07D233/58
   C07D295/037
   C07D471/04 108A
【請求項の数】19
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-516076(P2014-516076)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公表番号】特表2014-523422(P2014-523422A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】US2012042955
(87)【国際公開番号】WO2012174531
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】61/498,308
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511261400
【氏名又は名称】フルイディック,インク.
【氏名又は名称原語表記】FLUIDIC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】フリーゼン,コディー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフェ,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ポール,ブライアン
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−509528(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0251759(US,A1)
【文献】 英国特許第1297955(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 213/00−215/90
C07C 303/00−303/46
C07C 309/00−309/89
C07D 233/00−233/96
C07D 295/00−295/32
C07D 471/00−471/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体を製造する方法であって、
(1) ヘテロ原子化合物を過剰のジアルキルスルフェートと反応させてヘテロ原子化合物のアルキルスルフェート塩を生成し、
(2) アルキルスルフェート塩を加水分解してヘテロ原子化合物のビスルフェート塩を生成し、
(3) ビスルフェート塩を中和してヘテロ原子化合物の硫酸塩を生成し、
(4) ヘテロ原子化合物の硫酸塩を所望のアニオンの塩と反応させてヘテロ原子化合物のカチオンと所望のアニオンとを含むイオン液体を生成し、
前記ヘテロ原子化合物はトリアルキルアミンではなく、炭素原子又は水素原子以外の原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族の化合物であり、前記ヘテロ原子化合物が三級ヘテロ原子を含む方法。
【請求項2】
前記ヘテロ原子化合物は、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、二環式アミン、アミジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、モノアルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、モノアルキルホスファイト、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト、リン含有モノアミン、リン含有ジアミン、リン含有トリアミン、メルカプタン、チオフェン、ジハイドロチオフェン、テトラハイドロチオフェン、チオエーテル、ジアルキルスルホキシド、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1の方法。
【請求項3】
前記ジアルキルスルフェートは、RnOSO2ORzの式で表されるものである請求項1の方法。(式中Rn及びRzはアルキル基を表し、RnとRzとは同じでものでもよく異なるものでもよい。)
【請求項4】
対称な前記ジアルキルスルフェートは、ジメチルスルフェート及びジエチルスルフェートからなる群より選択される請求項3の方法。
【請求項5】
前記加水分解は、アルキルスルフェート塩を水と反応させることを含む請求項1の方法。
【請求項6】
前記加水分解は、反応への加熱を含む請求項5の方法。
【請求項7】
前記加水分解は、アルコール副生成物の生成を含む請求項5の方法。
【請求項8】
前記加水分解は、蒸留によるアルコール副生成物の除去を含む請求項7の方法。
【請求項9】
前記中和は、塩基とビスルフェート塩との反応を含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記塩基は、炭酸水素ナトリウムである請求項1の方法。
【請求項11】
前記所望のアニオンの塩は、ナトリウム塩である請求項1の方法。
【請求項12】
前記ヘテロ原子化合物の硫酸塩と前記所望のアニオンの塩との反応は、有機溶媒と水との混合液中で行われる請求項1の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒は、水に少なくとも5重量%溶解する有機溶媒である請求項12の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒は、アルコール、試薬アルコール、ジエーテル、環状エーテル及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項12の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒及び水の混合液は、ほぼ有機溶媒2部に対して水1部の比である請求項12の方法。
【請求項16】
N-エチル-N-メチルモルフォリニウムスルフェートの製造方法であって、
(1) N-メチルモルフォリンを過剰のジエチルスルフェートと反応させて以下の構造を有するエチルスルフェート塩を生成し、
【化1】

(2) エチルスルフェート塩を加水分解して、以下の構造を有するビスルフェート塩を生成し、
【化2】

(3) ビスルフェート塩を中和して、N-エチル-N-メチルモルフォリニウムスルフェートを生成する方法。
【請求項17】
1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムスルフェートの製造方法であって、
(1) 1,2ジメチルイミダゾイールを過剰のジエチルスルフェートと反応させて以下の構造を有するエチルスルフェート塩を生成し、
【化5】


(2) エチルスルフェート塩を加水分解して、以下の構造を有するビスルフェート塩を生成し、
【化6】


(3) ビスルフェート塩を中和して、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムスルフェートを生成する方法。
【請求項18】
1-プロパンアミニウム,2-(ヒドロキシメチル)-N,N,N,2-テトラメチル-スルフェートの製造方法であって、
(1) 3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノールを過剰のジメチルスルフェートと反応させて以下の構造を有するメチルスルフェート塩を生成し、
【化7】


(2) メチルスルフェート塩を加水分解して、以下の構造を有するビスルフェート塩を生成し、
【化8】

(3) ビスルフェート塩を中和して、以下の構造を有する1-プロパンアミニウム,2-(ヒドロキシメチル)-N,N,N,2-テトラメチル-スルフェートを生成する方法。
【化9】


【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2011年6月17日に出願された米国特許仮出願第61/498,308号に基づく優先権を主張する。
【政府の財源支援】
【0002】
本発明は、合衆国エネルギー省により授与された契約番号第DB−AR−00000038による政府の支持でなされた。合衆国政府は本発明において一定の権利を有することができる。合衆国政府は本発明において一定の権利を有することができる。
【技術分野】
【0003】
本実施形態は、一次反応物としてジアルキルスルフェートを使用するヘテロ原子化合物の硫酸塩を製造する方法に関する。本実施形態はまた、ヘテロ原子カチオンと所望のアニオンを含むイオン液体が生成されるようにヘテロ原子化合物の硫酸塩を所望のアニオンの塩と反応させることによりイオン液体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
イオン液体は、アルキル化及びアニオン交換の2段階の順番によりヘテロ原子化合物から一般的に製造される。アルキル化は、塩化アルキル、臭素化アルキル、またはヨード化アルキルによって一般的に行われる。このようにして生成したハロゲン化物塩(例えば塩化物塩、臭化物塩またはヨウ素化物塩)は、しばしばイオン液体そのものであり、いくつかの用途に適している。さらに、ハロゲン化合物以外のアニオンの塩が望ましいことがあり、アニオン交換を行うのに利用可能な多くの手順がある。しかしながら、イオン液体の製造の典型的な方法においては少なくとも2つの欠点がある。
【0005】
1つめは、典型的なイオン液体の製造においては、簡単な条件下で有益な範囲でアルキル化がおきるように、ヘテロ原子化合物は十分に求核性でなければならず、ハロゲン化アルキルは十分に求電子性でなければならない。
【0006】
2つめは、より重要であり、典型的な従来の方法で製造されたイオン液体は、ハロゲン化物アルキル化処理に固有である先行するハロゲン化物で若干の汚染されており、ハロゲン化物は多くの用途で有害である。例えば、イオン液体は、電気化学デバイスに使用することができるが、ハロゲン化物は、電気化学デバイスの構成に一般に使用される材料の腐食、ハロゲン化物の汚染物質の分解による電気化学デバイスの損傷、及びハロゲン化物の汚染物質との望ましくない副反応による電気化学デバイスのサイクル効率の低下を含め、電気化学デバイスにおいて有害作用を有することが知られている。
【0007】
ppm規模でのハロゲン化物の除去は、疎水性イオン液体の生成により達成することができるものの、ハロゲン化物の汚染物質は、親水性イオン液体の生成においては除去が特に難しい。例えば、ハロゲン化物塩から代表的な親水性イオン液体への典型的なアニオン交換後の残存ハロゲン化物の濃度は、27重量%(270,000ppm)が測定された。このように、イオン液体特には親水性イオン液体を製造する場合に、ハロゲン化物アルキル化を避けることが望まれている。本明細書に記載のように、求核性が抑制されていても求電子性が積極的で容易にアルキル化するジアルキルスルフェート(例えばモルホリンまたはチアゾール)は、従来のイオン液体製造方法では容易に製造できなかったヘテロ原子化合物をアルキル化したイオン液体を製造することができる。
【0008】
多くの電池のエネルギー密度の重大な損失は、電池のカソードにより引き起こされる。このことは、例えばリチウムまたはニッケルを使用する電池化学についてあてはまる。典型的には、酸化剤は、アノードよりも2倍乃至5倍少ないモル電荷容量でカソードに蓄積される。一方で、多くの電池は、酸化剤のソースとして空気からの酸素を使用する。連続的で実質的に制限のない酸素のソースの存在により、原理上、高エネルギー密度とすることができる。しかしながら、水素及び有機燃料の使用は、加湿及び膜の問題のような蒸気圧及びシステムバランスの複雑さの問題のために、高エネルギー効率を不可能にする。金属−空気電気化学セル(cell)は、近年のエネルギー需要に関連するエネルギー密度を実質的に達成するために、電池のアノードの超高容量(ultra-high anode capacity)を燃料セルの空気吸入式カソード(air-breathing cathode)と組み合わせることができる。
【0009】
金属−空気電池は一般的には、金属燃料が酸化される燃料電極、酸素が還元される空気電極及びイオン伝導性を提供する電解質溶液を有している。金属−空気電池の制限因子は、電解質溶液の蒸発、特には電解質水溶液中の水のような大量の溶媒の蒸発である。空気電極は、酸素を吸収するために空気透過性であることを要求されるが、このことは、水蒸気のような溶媒蒸気がセルから漏出することを許容する場合がある。時間の経過とともに、セルは、この問題のために効果的な動作ができなくなる。実際に、多くのセルの設計において、燃料が消費される前にこの蒸発の問題によりセルが動作不能になる。さらに、電解液が(外部ソースから補充しない限り)繰り返し再充電できないのに対し、燃料はセルの寿命にわたって繰り返し再充電することができるので、この問題は、二次(すなわち、再充電可能な)電池において悪化する。また再充電可能なセルでは、水溶媒は典型的には、再充電中に酸化されて酸素を放出し、溶液を枯渇させることがある。
【0010】
再充電及び自己放電中には、水の電解のような従来の水性電解液電池に関連する他の問題がある。再充電の間、電流は電池を通過して、燃料電極で酸化燃料を還元する。しかしながら一部の電流は、以下の式で表されるように、水を電解して、燃料電極において水素を発生(還元)するとともに酸素電極において酸素を発生(酸化)することとなる。
(1) 還元: 2 H2O(l) + 2e- → H2(g) + 2 OH-(aq) 及び
(2) 酸化: 2 H2O(l) → O2(g) + 4 H+(aq) + 4e-
このようにして、さらに水性電解質が電池から失われる。さらに、水素の還元において消費される電子は、燃料酸化物の還元に利用することができない。そのため、水性電解質の寄生電気分解は、二次電池の往復効率を減少させる。
【0011】
自己放電は、電極の不純物または電解液との反応に起因する場合がある。一般的には、電極中の不純物による自己放電は、(1ヶ月当たり2−3%の損失と)小さい。水及び水に溶解したO2との活性金属の反応は、しかしながら、(1ヶ月当たり20〜30%の損失と)非常に高いことがある。
【0012】
これらの問題を補うために、水性電解質を有する金属−空気電池は、一般的に、比較的多い量の電解質溶液を含有するように設計されている。いくつかのセルの設計では、電解質レベルを維持するために、隣接するリザーバから電解質を補給するための手段を組み込んでいる。しかしながら、いずれかのアプローチにより、(水または他の溶媒が時間とともに蒸発することを補う量の電解質溶液が存在することを確実にすることを除いて)セルの性能が向上することなく、セルの全体の大きさと同様にセルの重量が増加する。具体的には、電池性能は、一般に、燃料特性、電極特性、電解質特性および反応を起こすのに利用可能な電極の表面積の量によって決定される。しかし、セル内の電解質溶液の量は、一般的に電池の性能について重大に有益な効果を有していないため、一般的に体積及び重量ベースの比(体積または重量に対する電力及び体積または重量に対するエネルギー)に関して唯一の点で電池性能を損なう。また、過剰な電解質の量により、電極間に大きな間隔が形成されて、オーム抵抗が大きくなるとともに、性能が損なわれることがある。
【0013】
電気化学セルに非水系システムを使用することが(例えば、米国特許第5827602号参照)に提案されている。非水性系システムにおいては、水性電解質は、イオン液体と置き換えられる。しかしながら、AlC13のような強ルイス酸を含有するイオン液体は、湿気にさらされたときに有害ガスを遊離することが知られている。
【0014】
金属−空気電気化学セルに、水性電解質ではなく低温または常温イオン液体(low or room temperature ionic liquid)を使用することは、2010年9月16日に出願された米国特許仮出願第61/383,510号、2010年6月15日に出願された米国特許仮出願第61/355,081号、2010年5月12日に出願された米国特許仮出願第61/334,047号、2010年4月29日に出願された米国特許仮出願第61/329,2787号、2009年5月11日に出願された米国特許仮出願第61/177,072号及び2009年12月7日に出願された米国特許仮出願第61/267,240号、並びに2011年5月11日に出願された米国特許出願第13/105,794号、2011年4月28日に出願された米国特許出願第13/096,851号、2011年4月13日に出願された米国特許出願第13/085714号、及び2011年5月10日に出願された米国特許出願第12/776,962号に記載されている。これらの各開示は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。セルにおける低温または常温イオン液体の使用は、電解質溶液からの溶媒の蒸発に関連する問題を本質的に取り除く。
【0015】
常温イオン液体は、極めて低い蒸気圧を有する(いくつかは標準的な条件下で本質的に計測不能な蒸気圧を有する)ので、ほとんど又は全く蒸発を経験しない。従って、イオン伝導性媒体として低温又は常温イオン液体を使用するセルは、経時的な蒸発を補うために、過剰な量の溶液を組み入れる必要はない。比較的少量のイオン液体で、セルの動作に必要な電気化学反応を十分に支持することにより、セルの重量および体積を低減し、電力の体積/重量比を増加させる。また、水溶液中の水素の発生のような溶媒に関連する他の問題を回避することができる。本発明の開発は従来技術であると認めておらず、本明細書に記載のさらなる開発の理解を単に容易にする目的で記載される。
【発明の開示】
【0016】
本開示は、ヘテロ原子化合物からのカチオン及びジアルキルスルフェートの硫酸塩の製造方法及びこれらの使用を説明する。一実施形態の特徴は、ヘテロ原子化合物を過剰のジアルキルスルフェートと反応させること、この反応の生成物を加水分解してビスルフェート塩を生成すること、及びビスルフェート塩を中和してヘテロ原子化合物のスルフェート塩を生成することを備えるヘテロ原子化合物の硫酸塩の製造方法を提供する。
【0017】
一実施形態の他の特徴は、ヘテロ原子化合物を過剰のジアルキルスルフェートと反応させること、この反応の生成物を加水分解してビスルフェート塩を生成すること、ビスルフェート塩を中和してヘテロ原子化合物の硫酸塩を生成すること、及びヘテロ原子化合物の硫酸塩を所望のアニオンの塩と反応させてヘテロ原子化合物のカチオンと所望のアニオンとを含むイオン液体を生成することを備えるイオン液体の製造方法を提供する。
【0018】
一実施形態の他の特徴は、ヘテロ原子化合物を過剰のジアルキルスルフェートと反応させること、及びこの反応の生成物を加水分解してビスルフェート塩を生成することを備えるイオン液体の製造方法を提供する。
【0019】
一実施形態の別の特徴は、金属燃料を酸化する燃料電極、気体酸素を吸収及び還元する空気電極、及び1atmで150℃以下の融点を有する低温イオン液体を有するイオン伝導性媒体を備える金属−空気電気化学セルを提供することである。このイオン液体は、上述の方法によって生成されたヘテロ原子化合物のカチオン及び所望のアニオンを有する。イオン液体は、燃料電極及び空気電極における電気化学反応を支持するイオンを伝導するために、燃料電極と空気電極との間に収容される。
【0020】
本出願においては、低温のイオン液体は、1atmで150℃以下の融点を有するイオン液体として定義される。これらの低温のイオン液体は、1atmで100℃以下の融点を有するイオン液体として定義される常温イオン液体として知られる種類を含んでいてもよい。
イオン液体とはまた、液体の塩を意味するものである。定義上、イオン液体は、主として塩のアニオン及びカチオンからなる。イオン液体自体は、イオン液体中に存在する添加剤またはセルの動作により生じる反応副生成物のような1以上の他の可溶性生成物についての溶剤であってもよい。一方、イオン液体は、イオン液体自体が自己溶解物である、即ち、自身の性質により電解質塩のアニオン及びカチオンの液体であるので、塩を溶解する溶媒を使用する必要がなく、塩を溶解する別の溶媒を使用する必要もない。
【0021】
しかしながら、低温または常温のイオン液体を1atmにおける融点でそれぞれ定義したとしても、いくつかの実施形態では、電池は異なる圧力の環境で動作してもよく、そのため融点は、動作圧力で変化することがある。よって1atmにおける融点とは、これらの液体を定義する温度を言及するものとして使用されるのであり、動作時における実際の使用状態を示すまたは制限するものではない。
【0022】
本発明の他の目的、特徴及び利点が、以下の詳細な説明、添付した図面及び添付した特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るセルの分解図
【詳細な説明】
【0024】
イオン液体とは、一般的にイオンを有する安定した液体の形態を成す塩について言及するものである。即ちイオン液体とは、完全に解離した負及び正のイオンから実質的になる。
よって、イオン液体とは、本質的に電気を伝導する。さらにイオン液体は、無視できるほどの蒸気圧及び低い粘度を有し、(最大400℃まで)広く液体であり、高い熱安定性及び高い電気化学窓(>5V)を有する。これらの性質のために、イオン液体は典型的には、電気化学セルの充電/放電サイクルの間、蒸発せずに消費される。
【0025】
イオン液体は、一般的にプロトン性及び非プロトン性の2つの形態で存在する。プロトン性イオン液体は、利用可能なプロトンを有しており、この利用可能なプロトンは、酸化された若しくは還元されたものとすることができ、または還元された酸素のような陰イオンと調整することができる。プロトン性ILsのいくつかの例は、テトラクロロアルミネート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、メチルスルホネート、ニトレート、及びアセテートのアニオンと、トリエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウムトリフレート、エチルアンモニウム、α−ピコリウム、ピリジニウム、並びに1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン及びこれらの誘導体のカチオンとの組み合わせから合成することができる。しかしながら、プロトン性イオン液体は一般的に、プロトン活量を有していない。非プロトン性常温イオン液体のいくつかの例は、クロライド(Cl-)、ヘキサフルオロホスフェイト(PF6-)、ヨージド、テトラフルオロボレート、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(C2F6NO4S2-) (TFSI)、トリフルオロメタンスルホナート(CF3O3S-)から選択されるアニオンと、イミダゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウム、四級化アンモニウムまたはホスホニウム及びこれらの誘導体から選択されるカチオンとの組み合わせから合成される。プロトンの活量が失われているにもかかわらず、非プロトン性イオン液体は、プロトンを有している。たとえば、非プロトン性のイオン液体は、プロトンとの強い結合を少なくとも1つ有するカチオンを少なくとも1つ有することができる。イオン液体の多くの他の選択肢が存在し、実施例のこれらの記載はいかなる限定をも意図するものではない。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態には、ヘテロ原子化合物の硫酸塩の製造方法が含まれる。
「ヘテロ原子化合物」という語は、本技術分野で一般的に知られているものであり、本明細書においては、非炭素原子のようなヘテロ原子を含む化合物を含む従来の意味を意味するものとして使用する。一実施形態では、ヘテロ原子化合物は、酸素、窒素、リン、または硫黄のような非炭素原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族化合物である。本発明において実施されるヘテロ原子化合物の硫酸塩を生成する好ましい反応は、以下の一般式で表すことができる。
【化10】
式中、XR1…Ry は、直鎖であるか、ヘテロまたはヘテロ原子環を形成することができる脂肪族、非環式、または芳香族のヘテロ原子化合物である。XはCまたはH以外の原子であり、N、P、またはSであることが好ましい。R1…Ry は、無機若しくは有機の官能基または水素のいずれかとすることができる。Xの同一性は、ヘテロ原子化合物に関連する官能基R1…Ryの数を決定する。官能基R1…Ryは同一でなくてもよい。Rn及びRzはアルキルであり、置換のまたは非置換のC1-C20のアルキル、または置換のまたは非置換のアラルキル、より好ましくはメチルまたはメチル基を含むがこれらに限定されない。Rn及びRzは同じでもよく異なっていてもよいアルキル基を表す。
【0027】
特に好ましい実施形態では、ヘテロ原子化合物の硫酸塩を生成する反応経路には、ヘテロ原子化合物を過剰のジアルキルスルフェートと反応させてヘテロ原子化合物のアルキルスルフェート塩を生成し、アルキルスルフェート塩を加水分解してヘテロ原子化合物のビスルフェート塩を生成し、ビスルフェート塩を中和して、所望のアニオンの塩と反応させることによりイオン液体に生成に使用することができるヘテロ原子化合物の硫酸塩を生成することが含まれる。
【0028】
反応の全体を以下に示す。
【化11】
種々の置換基は、処理の各部分に関して以下により詳細に説明する。
【0029】
このプロセスの利点は、ハロゲン化物フリーであること、他では四級化することが難しいヘテロ原子化合物を四級化することができる強力なアルキル化剤であるジアルキルスルフェートを使用できること、及び得られるイオン液体を一貫して大量に生成できることである。本発明の他の利点、特徴及び目的は、反応段階の説明、実施例及び添付した特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0030】
好ましい実施形態では、ヘテロ原子化合物は、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、二環式アミン、アミジン、グアニジン、アルカノールアミン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、モノアルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、モノアルキルホスファイト、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト、リン含有モノアミン、リン含有ジアミン、リン含有トリアミン、メルカプタン、チオフェン、ジハイドロチオフェン、テトラハイドロチオフェン、チオエーテル、ジアルキルスルホキシド、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。他の好ましい実施形態では、RnOSO2Rzはジアルキルスルフェートである。及びRn及びRzは、同じでもよく異なっていてもよいアルキル基を表す。ジアルキルスルフェートは、ジメチルスルフェートまたはジエチルスルフェートであることが好ましい。
【0031】
初期反応には、ヘテロ原子化合物が過剰なジアルキルスルフェートと反応し、ヘテロ原子化合物のアルキルスルフェート塩を生成することが含まれることが好ましい。この反応は以下の式で表される。
【化12】
式中、XR1…Ry は、ヘテロ原子化合物である。置換基R1-Ryは、有機及び/または無機の官能基、水素の1以上を含み、同じであっても異なってもよく、Xがあることはヘテロ原子化合物であることを示す。Rz及びRnはアルキルであり、同じでもよく異なってもよく、置換のまたは非置換のC1-C20のアルキル、または置換のまたは非置換のアラルキル、より好ましくはメチル基またはメチル基を含むがこれらに限定されない。XはN、P、若しくはS、またはSOを含むものであるがこれに限定されない、CまたはH以外の原子、及び、脂肪族、脂環式、または芳香族とすることができる。[XR1…RyRz]+[RnOSO3]- は、得られたヘテロ原子カチオンのアルキルスルフェート塩である。[XR1…RyRz]+ の正電荷はXにある。
【0032】
二次反応は、以下の式に示すように、アルキルスルフェート塩を加水分解して、ヘテロ原子化合物の硫酸水素塩の生成を含みうる。
【化13】
式中、[XR1…RyRz]+は、ヘテロ原子カチオンである。置換基R1-Ryは、有機及び/または無機の官能基、水素の1以上を含み、同じであっても異なってもよく、Xがあることはヘテロ原子化合物であることを示す。Rz及びRnはアルキルであり、同じでもよく異なってもよく、置換のまたは非置換のC1-C20のアルキル、または置換のまたは非置換のアラルキル、より好ましくはメチル基またはエチル基を含むがこれらに限定されない。XはN、P、若しくはS、またはSOを含むものであるがこれに限定されない、CまたはH以外の原子、及び、脂肪族、脂環式、または芳香族とすることができる。[XR1…RyRz]+[RnOSO3]- は、得られたヘテロ原子カチオンのアルキルスルフェート塩である。[XR1…RyRz]+ の正電荷はXにある。[XR1…RyRz]+ の正電荷はXにある。反応は水の存在下で進行し、水の沸点に近づくように加熱されることが好ましい。
【0033】
上記式3に示すように、ヘテロ原子化合物のビスルフェート塩を形成するようにアルキルスルフェート塩の加水分解が進行して完了し、予期しない結果となる。一般的に、アルキルスルフェートの加水分解は、非生産的な遅い反応である。例えば、メチルスルフェートの加水分解はpHが7で、k25°C = 2.2 x 10-11 M-1s-1である。(Wolfenden and Yuan, PNAS 2007 83-86参照)メチルスルフェートの加水分解は、酸性状態で1000倍以上早く、アルカリ性状態では酸性状態の4倍早く進行する(Wolfenden and Yuan参照)が、上記式3に示すアルキルスルフェート塩の加水分解は、酸において妥当な時間で完了するように進行することは予想されていなかった。いかなる作動原理によって縛られることを意図するものではないが、過剰なジアルキルスルフェートが水と反応すると、過剰なジアルキルスルフェートは、まずアルキル硫酸に変換され、次にアルキル硫酸と硫酸の混合物に変換され、最後に硫酸に変換されると考えられる。この説明は、反応混合物が約2下のpHまで酸性度を増大した結果により支持される。これらの酸は、アルキルスルフェート塩の加水分解を触媒すると考えられる。
いかなる作動原理によって縛られることを意図するものではないが、加水分解のアルコール副生成物の除去(上記式3のRnOH)が、さらに加水分解を完了まで進行させたと考えられる。
【0034】
三次反応は、以下の式に示すように、二次反応で生成したビスルフェート塩を中和して、ヘテロ原子化合物の硫酸塩の生成を含みうる。
【化14】
式中、[XR1…RyRz]+ は、ヘテロ原子カチオンである。置換基R1-Ryは、有機及び/または無機の官能基、水素の1以上を含み、同じであっても異なってもよく、Xがあることはヘテロ原子化合物であることを示す。Rz及びRnはアルキルであり、同じでもよく異なってもよく、置換のまたは非置換のC1-C20のアルキル、または置換のまたは非置換のアラルキル、より好ましくはメチル基またはエチル基を含むがこれらに限定されない。XはN、P、若しくはS、またはSOを含むものであるがこれに限定されない、CまたはH以外の原子、及び、脂肪族、脂環式、または芳香族とすることができる。[XR1…RyRz]+ の正電荷はXにある。塩基はビカーボネートナトリウムであることが好ましい。
【0035】
上記式4に記載の反応の副生成物は、逆溶剤を追加すると、溶液から沈殿する硫酸塩(好ましくは硫酸ナトリウム)である。ヘテロ原子化合物の硫酸塩は、ろ過及び結晶化を含むがこれらに限定されない標準的な研究技術によって分離及び精製することができる。ヘテロ原子化合物の硫酸塩は、分離すると、実質的に純粋であることが好ましい。
【0036】
本発明の他の好ましい実施形態においては、ヘテロ原子化合物の硫酸塩を所望のアニオンと反応させて、ヘテロ原子化合物のカチオン及び所望のアニオンを有するイオン液体を生成することができる。この実施は以下の式で表される。
【化15】
式中、[XR1…RyRz]+ は、ヘテロ原子カチオンである。置換基R1-Ryは、有機及び/または無機の官能基、水素の1以上を含み、同じであっても異なってもよく、Xがあることはヘテロ原子化合物であることを示す。Rz及びRnはアルキルであり、同じでもよく異なってもよく、置換のまたは非置換のC1-C20のアルキル、または置換のまたは非置換のアラルキル、より好ましくはメチル基またはエチル基を含むがこれらに限定されない。XはN、P、若しくはS、またはSOを含むものであるがこれに限定されない、CまたはH以外の原子、及び、脂肪族、脂環式、または芳香族とすることができる。MAは所望のアニオンであり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム(NH4+)であり、最も好ましくはナトリウムである。Aはアニオンである。Aは、フォスフェート、ハロフォスフェート特にはヘキサフルオロフォスフェート、アルキルフォスフェート、アリールフォスフェート、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、アルキルスルフェート、アリールスルフェート、ペルフルオリネートアルキルまたはアリールスルフェート、スルホネート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ペルフルオリネートアルキルまたはアリールスルホネート特にはトリフルオロメチルスルホネート、トシレート、ペルクロレート、テトラクロロアルミネート、ヘプタクロロジアルミネート、テトラフルオロボレート、アルキルボレート、アリールボレート、アミド特にはペルフロオリネートアミド、ジシアンアミド、サッカリネート、チオシアネート、カルボキシレート、アセテート好ましくはトリフルオロアセテート、及びビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオンからなる群より選択されるアニオンである。例示的なアニオンには、クロライド(Cl-)、ハイドロオキサイド(OH-)、ヘキサフルオロホスフェイト(PF6-)、ヨージド、他のハライド、テトラフルオロボラート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(C2F6NO4S2-)、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3-; TfO-)、ジシアナアミド(N(CN)2-; dca)、ベンゾエート、アセルファム、サッカリネート及びメタンスルホネートが含まれるがこれらに限定されない。[XR1…RyRz]+ の正電荷はXにある。他のアニオンとしては、例えば、同時継続中の米国特許出願第13/448,923号に記載のものを含む。2012年4月17日に出願された案件番号085378.0405781「スルホン酸イオンを含むイオン液体(“Ionic Liquids Containing Sulfonate Ions,”)」の開示内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。これらのアニオンには、例えば、イセチオネート([ise])、タウリネート([tau])、3-モルホリノプロパンスルホネート(MOPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホネート(HEPPS, EPPS)、1,4ピペラジンジエタンスルホネート(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホネート(ACES)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホネート(CAPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホネート(HEPES)、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホネート(TES)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホネート(TAPS)、3-(N-トリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホネート(TAPSO)及びこれらの混合物が含まれる。
【0037】
式5に示す反応は、好ましくはエタノール、またはほぼエタノールが90%、イソプロパノールが5%、メタノールが5%であり、フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific)により販売される「試薬アルコール(reagent alcohol)」を含むアルコールのような溶媒中で起こすことが好ましい。他の使用可能な溶媒には、メタノール及びテトラヒドロフランが含まれる。
【0038】
他の実施形態によれば、低温イオン液体の金属−空気セルが提供される。低温イオン液体の金属−空気セルの構成及び工程についてのさらなる詳細については、米国特許出願第61/267,240号及び第12/776,962号が参照される。これらの出願の内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0039】
金属−空気電池では、金属は燃料である。即ち放電の間、金属はアノードで酸化され、電気的な仕事に使用することができる電子を供給する。酸化反応は、以下の式で表すことができる。
Metal → Metaln+ + (n)e-
金属燃料は、任意の種類とすることができ、電着、吸収、物理的沈殿、若しくは他の方法で提供されて、燃料電極を構成する。燃料は、例えば合金または合金の水素化物を含む任意の金属とすることができる。例えば、燃料は、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び他の卑金属を有することができる。遷移金属には、亜鉛、鉄、マグネシウム、及びバナジウムが含まれるが、これらに限定されない。最も一般的なアルカリ金属は、リチウムであるが、他のアルカリ金属を使用することができる。他の金属には、マグネシウム、アルミニウム及びガリウムが含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用する金属燃料という語は、元素金属、酸化物、金属合金、金属水素化物等を含む分子または錯体内に結合された金属を含む任意の燃料について広く言及するものである。
【0040】
燃料電極は、任意の構造または構成とすることができる。例えば燃料電極は、孔の三次元網目構造を有する多孔質構造体、メッシュスクリーン、互いに分離された複数のメッシュスクリーン、または任意の他の適宜の電極とすることができる。燃料電極は、個別の要素としてもよい集電体を有していてもよく、燃料を収容する本体は、導電性とすることができ、したがって集電体とすることができる。一実施形態では、燃料電極は、燃料電極の外面を構成する基材に積層され、結合され、または取り付けられる。基材は、イオン液体が燃料電極の外面を通って燃料電極の外部に透過しないように、液体不透過であるか、イオン液体を実質的に不透過とすることができる。基材は、放電の間に電極で起こる燃料電極の存在下における酸化剤の還元のような望ましくない任意の寄生反応を防止するために、空気特には酸素または他の酸化体を不透過であることがより好ましい。
【0041】
金属燃料及び燃料電極についてのさらなる詳細は、米国特許出願第12/385,217号、第12/385,489号、第12/885,268号、第12/901,410号、第12/631,484号、第12/549,617号、第13/019,923号、第13/028,496号、第61/193,540号、第61/301,377号、第61/323,384号、第61/329,278号、第61/365,645号、第61/394, 954号、第61/358,339号、第61/383,510号、及び第61/243,970号に見ることができる。これらの各開示の内容は、全体としてが本明細書に参考として組み込まれる。
【0042】
放電の間、空気電極で酸素は還元されて電子を消費する。酸素の還元についていくつかの可能な機構がある。酸素の還元反応は、例えば以下に記載する3つの機構のうちの1つで起こすことができる。しかしながら他の機構は、化学的システム(イオン液体、電極材料)の選択により起こすことができる。
【0043】
ここで用いることができる第1の機構の非限定的な例は、生成物が完全に還元された酸素ジアニオンになる4電子酸素還元反応(ORR)である。4電子酸素還元反応は、以下の式で表すことができる。
O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-
特定の化学システムに応じて、この反応は、可溶性生成物を生成し、または局所的に不溶性の金属−酸化物を構成する。
【0044】
この反応において遊離したアニオンは、連続するアノード反応を媒介するように機能させることができる。他の酸素還元反応に比べて、4電子酸素還元反応は、エネルギー密度及び酸素分子あたりの最大電子抽出数が増加する利点がある。
【0045】
限定されない第2の可能な機構は、2電子過酸化物ルートである。この機構の例は、以下の式で表すことができる。
Zn2+ +O2 +2e- → ZnO2
この機構は、過酸化物反応の過電圧が比較的低い利点がある。また、第1の機構に比べて高い再充電性を有する傾向がある。しかしながら、2電子過酸化物機構は、4電子プロセスに比べて酸素電極におけるエネルギー密度が低くなってしまう。
【0046】
限定されない第3の可能な機構は、特定のアリオバレント(aliovalent)カチオンの還元力を利用する2電子/4電子ORRの混合である。この機構の例は、以下の式で表すことができる。
Mn2+ +O2 +2e- → MnO2
この機構のニュアンスは、生成物がアリオバレント金属の還元力により生じた完全に還元されたO2-の種を含んでいることである。この例において、Mn2+は、右側でMn4+の状態となっている。この機構は、アリオバレントカチオンの還元力のために、過電圧が低い利点がある。さらに、アリオバレント金属は、より高効率のセルを製造するのに使用することができる。しかしながら、2電子/4電子の混合機構は、4電子プロセスに比べて電池のエネルギー密度が低くなってしまう。
【0047】
空気電極は、典型的にはテフロン(登録商標)のようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる多孔質構造である。好ましくは、空気電極材料は、電解質についての高い疎溶性を有している。空気電極における疎溶性は、「防水(wet-proofing)」(即ち液体電解質がセルからなくなることを妨げる)及び多孔質構造における酸素還元反応の触媒への空気中の酸素の接近を容易にする2つの役割として機能する。触媒への接近は、空気−触媒−電解質のトリプル−ジャンクションの線の長さが大きくなるので、疎溶性によって高められる。トリプル−ジャンクションの線の長さが大きくなることにより、輸送限界が減少する。強い疎溶性の性質は、利点があるものの、電極中に疎溶性成分が含まれていると、トリプル−ジャンクションのねじれを改善して、表面的な反応部位密度を向上させる。
【0048】
図1には、本発明の実施形態による低温イオン液体(IL)の電気化学セル(「電気化学セル」)の全体が10で示されている。以下に図示及び説明するように、電気化学セル10は、第1の電極12及び第2の電極14を有する複数の電極を備えている。他の実施形態では、電気化学セル10の第1の電極または第2の電極は、単一の電極とは異なる構成により提供することができる。図1に示す限定しない実施形態では、第1の電極12はカソード、より具体的には、空気カソードであり、本明細書においては空気電極12として言及する。
第2の電極14はアノードであり、本明細書においては金属電極14として言及する。
一実施形態では、以下に説明するように、電気化学セル10は、空気電極12での酸化剤20の半反応と並行する、即ち実質的に同時に、金属電極14で燃料の酸化半反応の効力により電気を発生することができる。図示の実施形態は、いかなる限定をも意味するものではない。
【0049】
空気電極12及び金属電極14は、間隔を空けて配置されて、間にギャップ16を形成することが好ましい。全体が符号18で示される常温イオン液体(RTIL)は、RTILが空気電極12及び金属電極14の両方に同時に接触できるように、ギャップ16に沿って流れうる。一実施形態では、電気化学セル10は、どのような方向に向けられていてもよく、RTILは、図示以外の方向に流れてもよいことが理解される。よって、いかなる方向についての参照も、図1に示す方向に関して行うことができ、いかなる特定の方向の実際の実施形態に限定することを意図するものではない。他の実施形態においては、RTIL18は、全く流れずに静止していてもよい。RTIL18は、空気電極/RTIL接触面24で空気電極12と接触してもよい。RTIL18は、金属電極/RTIL接触面26で金属電極14と接触してもよい。代わりの実施形態では、RTILは、流れない。即ち、セルには流れを起こす機構が含まれない。
【0050】
上述のように、還元半反応は、空気電極12で起こりうる。一実施形態において、酸化剤20は、空気電極12における還元半反応を介して還元されてもよい。限定しない説明を目的として、金属電極14からの電子は、外部回路22(すなわち負荷)に流れ、空気電極12に戻って酸化剤20の還元を促進しうる。酸化剤20は、空気電極12の酸化剤還元反応サイト21で還元される。一実施形態において、酸化剤還元反応サイト21における酸化剤還元半反応を促進するために触媒が使用される。空気電極12は、以下に説明する酸化剤の還元を触媒する高い酸素還元活性を有する酸化マンガン、ニッケル、熱分解コバルト、活性炭、銀、プラチナ若しくはその他の触媒のような触媒材料、またはこれらの材料の混合物を含んでいてもよい。一実施形態では、空気電極12は多孔性とすることができ、高い表面積を有する多孔体は、触媒材料を有することができる。
【0051】
一実施形態では、空気電極12は、例えば窓部または開口部を介するように、酸化剤のソース(一般的には周囲空気中の酸素)に消極的に露出して、電気化学セル10の反応において消費する酸化剤20を吸収する不活性または「通気性(breathing)」の空気電極12とすることができる。即ち、酸化剤20は、酸化剤のソースから空気電極12内に透過する。従って、酸化剤20は、注入口を経るように、積極的にポンプまたは他での方法で空気電極12に向ける必要はない。酸化剤20が吸収されるまたは透過する、即ち空気電極12と接触する全ての部分は、一般的に「インプット(input)」として言及される。インプットという語は、空気電極12の酸化剤還元反応サイト21における酸化還元半反応のために空気電極12に酸化剤を供給する全ての方法を広く含むものである。
【0052】
一例として、空気電極12は、酸化剤20が空気電極12を透過する酸素を有するように、外気に曝される表面を有するガス透過性電極とすることができる。同様に、空気電極12は、空気電極12の外面を介した酸化剤20の透過を許容し、RTIL18が空気電極12の外面を通って流れることを妨げるように、ガスを透過し、かつ、液体を透過しない空気電極12の外面に隔膜を有していてもよい。一実施形態においては、空気電極12は、低温IL18が多孔質体と接触できるように、RTIL18が通過する液体透過性層により内側が覆われた多孔質体としてもよい。
【0053】
RTIL18と空気電極12との間の関係は、電気化学セル10の全体のエネルギー密度に影響しうる。そのため、空気電極12を考慮したRTIL18の蒸気圧及び表面張力特性は、慎重に選択されるべきである。例えば、一実施形態においては、空気電極12は、RTIL18がウィッキング(wicking)しないように、即ち空気電極12を通って毛細管状に流れないように、RTILを通さなくてもよい。他の実施形態においては、空気電極12は、空気電極12における所望の電気化学反応を可能にする目的のためにRTILがより空気電極12の表面領域に曝されるように、RTILを吸収するために多孔性に設計される。空気電極12は、酸化剤還元反応サイト21における触媒の修飾を支持して、反応の効率を向上させうる。一実施形態において、触媒は、空気電極12の酸化剤還元反応サイト21における酸化剤還元反応を触媒する触媒の活量を向上させる金属イオンで修飾されうる。空気電極12は、反応物質を生成し、空気電極12から酸化還元反応の生成物を除去する高いイオン伝導性を有しうる。一実施形態では、空気電極12は、外部負荷22から酸化剤還元反応サイト21に電子を移動する高い電気導電性を有しうる。空気電極12及びRTIL18の特性についてさらに定義する。
【0054】
一実施形態では、金属酸化物の副生成物28は、金属電極14で形成されてもよい。水性電解質中の還元された酸化剤のイオンが機能する、即ち、電子を水分子に提供して水、過酸化物、及び/または水酸化物を形成することにより蒸気圧及び腐食の問題が大きくなるのに対して、この限定しない実施形態では、RTIL18は、空気電極12における酸化剤還元反応及び金属電極14への還元された酸化剤のイオンの伝導の両方を促進することができる。この結果の裏づけとして、RTIL18は一般的にプロトン性であるので、RTIL18は、還元された酸化剤のイオンと相互に作用する可溶な種類を含みうる。RTIL18は、還元された酸化剤のイオンが金属電極14に移動するので、還元された酸化剤のイオンを支持することができる。限定しない説明として、還元された酸化剤のイオンの移動とは、対流輸送(convection transport)、伝導輸送(conduction transport)または拡散輸送(diffusion transport)によって還元された酸化剤のイオンを輸送することを意味しうる。RTIL18はまた、金属電極14に残留する酸化された金属−燃料イオンを支持する。このため、RTIL18は、還元された酸化剤のイオンと酸化された金属−燃料イオンとの間の反応を促進して、金属−酸化物の副生成物28を生成する。一実施形態においては、金属−酸化物の副生成物28は、金属電極14に蓄積されうる。一実施形態においては、金属−酸化物の副生成物28が金属電極14に蓄積されると、酸素は金属電極14に蓄積されるとももに、還元された酸素の種の酸化する酸素発生電極を局所的に利用できないので、この実施形態は、一次電池(即ち非充電電池)としての使用に最も適している。
【0055】
空気電極における局所的な金属酸化物の蓄積は、空気電極12本体内に酸化物を含有するのに十分なイオン液体と接触する領域に少なくとも細孔を有する空気電極12により促進される。即ち、細孔の大きさは、酸化剤の大きさに依存する。このような細孔のネットワークは、空気電極12の蓄積能力を大きくすることができる。
【0056】
一実施形態においては、酸化剤のソースは環境空気であり、酸化剤20は酸素である。一実施形態においては、酸化剤20としての酸素は空気電極12で還元されて、還元酸素イオンを生成する。一実施形態では、酸素は、再生電気化学セルで使用される発生酸素回収システムから供給されてもよい。本発明の有用な実施形態とすることができる電気化学セルの他の例は、例えば2009年8月28日に出願された米国特許出願第12/549,617号に示されている。この出願の記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
本発明の電解質は、他のセル構成に使用することができる。例えば代わりのセル構成は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる米国特許出願第61/267,240号及び第12/776,962号に記載の小型の捲回セルを有する。
【0058】
蒸発のために、再充電及び自己放電中の水の電解、水性電解質が金属−空気電池について問題となることがある。これらの問題は、電解質の損失が発生するだけでなく、充電式電池の往復効率の低下をもたらす。イオン液体電解質の使用により、これらの問題のいくつかを低減または排除することができる。しかしながら、イオン液体電解質であっても、水の存在により有毒ガスの放出及び/または自己放電が生じることがある。一方、本発明の実施形態に係るイオン液体電解質は、少量の水を含むことができる。例えば、10-100ppmの水の含有は、許容できない自己放電または有毒ガスの放出をすることなく、非プロトンシステムの酸素還元を改善することが見出されている。
【0059】
上述した様々な実施形態は、専ら本発明の例示のために与えられたものであって、限定的なものとして意図されたものではない。むしろ,本発明は,以下の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての変更,代替物,及び修正を含むことを意図している。
【実施例】
【0060】
以下に説明する本発明の実施は、本発明の反応の原理を単に説明するものであり、限定としてみなされるべきではない。むしろ,本発明は、添付特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての修正、変更、代替物及び均等物を含むことを意図している。
【0061】
実施例1:1-プロパンアミニウム,2-(ヒドロキシメチル)-N,N,Nテトラメチルスルフェート
1-プロパンアミニウム,2-(ヒドロキシメチル)-N,N,Nテトラメチルの硫酸塩は以下の反応式に示すように合成することができる。オレゴン州ポートランドのTCI Americaが販売するアミノアルコール約22.595g(25ml)を、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrichが販売するジメチルスルフェート約33mlでアルカリ化してメチルスルフェート塩を生成した。
【0062】
アルカリ化
【化16】
【0063】
加水分解:上記アルキル化反応で得られたメチルスルフェートは、加水分解されて以下の式に従ってビスルフェート塩を生成した。
【化17】
【0064】
中和及び精製:加水分解反応で得られたビスルフェート塩を、9重量%カーボネートナトリウム(43.0304g)で中和し、得られた硫酸ナトリウムにエタノールを追加して精製した。
【化18】
【0065】
上述の反応は、約33.030gの1-プロパンアミニウム,2-(ヒドロキシメチル)-N,N,Nテトラメチルスルフェート塩を生成した。この塩は、上記生成した硫酸塩を所望のイオンの塩と反応させることによりイオン液体に変換して、ヘテロ原子化合物のカチオン及び所望のアニオンを備えるイオン液体を生成することができる。
【0066】
実施例2:N-エチル-N-メチルモルフォリニウムスルフェート
N-エチル-N-メチルモルフォリニウムの硫酸塩は以下のように合成される。
【化19】
【化20】
【化21】
【0067】
実施例3:1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムスルフェート
1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムの硫酸塩は以下のように合成することができる。
【化22】
【化23】
【化24】
【0068】
実施例4−35
種々のヘテロ原子硫酸塩を以下の式に従って製造することができる。
【化25】
置換基及び化合物のそれぞれを、以下の表に示す。

【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0069】
上記表からわかるように、種々の硫酸塩を本明細書に記載の方法によって製造することができる。これらの硫酸塩は、硫酸塩を所望のアニオンと反応させて順番にイオン液体化して、ヘテロ原子化合物のカチオン及び所望のアニオンを有するイオン液体を生成することができる。
【0070】
実施例36
[C1impd][ise]は、カチオンとして1-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジニウム(C1impd) を、アニオンとしてイセチオネート(ise) を含むイオン液体である。イオン液体のカチオンは、実施例34に従ってカチオンを生成することにより生成される。具体的には、[C1impd]2[SO4] (3.166 g, 8.74 mmol)は、実施例34に従って上記表のイミダゾ[1,2-a]ピリジン及びジメチルスルフェートから、以下に示すように製造される。
【化26】
式中、XR1. . . Ryは、イミダゾ[1,2-a]ピリジン(impd)であり、RnOSO2ORzは、ジメチルスルフェートである。
反応生成物IIIは以下のとおりである。
【化27】
反応生成物IVは以下のとおりである。
【化28】
反応生成物Vは以下のとおりである。
【化29】
【0071】
反応生成物V、[C1impd]2[SO4] (3.166 g, 8.74 mmol) を2:1のアルコール−水(30ml)に溶解させ、2:1のアルコール−水(18ml)中に調整したイセチオネートナトリウム(2.592 g, 17.50 mmol)溶液を攪拌しながら加えた。得られたスラリーを2時間攪拌し、吸引ろ過して、ろ液を回転蒸発により可能な限り濃縮した。残留物は、メタノール(25mL)に取り込んだ。メタノールに充填する前に230-400メッシュシリカゲルの約12-gカラムに取り込んだ。
【0072】
未処理の[C1impd][ise]のメタノール溶液を気圧でシリカゲル層の上部位置まで押し下げ、カラムの流出物を250mL丸底フラスコに集めた。未処理生成物を含むフラスコをメタノール(25mL)ですすぎ、すすいだメタノールを同様に取り込んで押し下げて、カラムの流出物を最初の留分に収集した。すすぎ処理は、シリカゲルカラムが新鮮なメタノール(125mL)で洗い流されるまで繰り返し、蓄積したメタノール溶液の上部にカラムの流出物を集めた。メタノール留分は、回転蒸発により濃縮されて、イオン液体として純粋な[C1impd][ise] (4.122 g, 15.96 mmol, 91%)が製造された。実施例11のイオン液体は、大気条件でゆっくりと凝固した。特に、80℃の水浴内に浸されたフラスコに含まれた場合に自由に液体であり、水浴から取り除いた後も数時間液体が残存した。その後、液体のいくつかの領域が互いに独立してゆっくりと凝固し、約1日後、ILは、大気条件下で完全に固体になった。
【0073】
実施形態及び実施例は、専ら本発明の例示的な実施形態を説明するために与えられたものであって、限定的なものとして意図されたものではない。むしろ,本発明の実施は、本明細書の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての変更、代替物、及び修正を含むものである。
図1