特許第6235478号(P6235478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

特許6235478凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置
<>
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000005
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000006
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000007
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000008
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000009
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000010
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000011
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000012
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000013
  • 特許6235478-凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235478
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】凸版印刷の印刷表面の熱処理の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/38 20060101AFI20171113BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20171113BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20171113BHJP
   B41C 1/055 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03F7/38 511
   G03F7/26 521
   G03F7/00 502
   B41C1/055
【請求項の数】2
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-540160(P2014-540160)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公表番号】特表2015-501454(P2015-501454A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012063438
(87)【国際公開番号】WO2013067442
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】61/554,635
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カール バーナード アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ゲリー ダブリュー.フォッジン
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−179928(JP,A)
【文献】 特開2007−086781(JP,A)
【文献】 特開2009−265606(JP,A)
【文献】 特表2008−544326(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153017(WO,A1)
【文献】 米国特許第04197126(US,A)
【文献】 大浩研熱株式会社,ホットエアーノズルHAシリーズ,日本,2010年12月28日,URL,https://web.archive.org/web/20101228005440/http://www.daico-t.com/product/slittypeairnoxxle/ha.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製する方法であって、
(a)前記層の一部が液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで前記外部表面を加熱する工程と、および、
(b)前記感光性要素を現像媒体と接触させ、前記現像媒体によって前記液化材料を除去する工程と、
を含んでなり、
前記加熱工程が、10〜35メートル/秒の速度および110℃〜350℃の温度で、かつ15秒未満の滞留時間で14キロワット/m2(kW/m2)以上の熱流で前記外部表面と衝突する、ノズルアセンブリから放出する加熱された流体の噴射を使用することによって実行され
前記部分的に液化可能な光重合性組成物の層は、75℃および0.5Hzにおいて、15000000−45000000cPの範囲、そして100℃および0.5Hzにおいて5000000−15000000cPの範囲の動粘度を有する、
凸版印刷版を調製する方法。
【請求項2】
外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製するための装置であって、
前記層の一部を液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで前記外部表面を加熱するための手段と、および、
前記感光性要素を現像媒体と接触させ、前記現像媒体によって前記液化材料を除去するための手段と
を含んでなり、
前記加熱手段が、10〜35メートル/秒の速度および110℃〜350℃の温度で、ノズルアセンブリから放出する加熱された気体の噴射を有し、前記噴射が、15秒未満の滞留時間で14キロワット/m2より高い熱流で前記外部表面と衝突し、
前記部分的に液化可能な光重合性組成物の層は、75℃および0.5Hzにおいて、15000000−45000000cPの範囲、そして100℃および0.5Hzにおいて5000000−15000000cPの範囲の動粘度を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版として使用する感光性要素の熱処理のためのデバイスおよび方法であって、熱処理が気体流体処理を必要とするデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性要素から凸版印刷版を調製するプロセスにおいて、印刷版は回転式ドラムの円周周囲に据え付けられることが多く、そして印刷版のレリーフ表面を除去および形成するために、要素の未重合部分を軟化するように加熱される。熱プロセスの間はドラムを回転し、加熱された印刷版は、吸収性表面などの現像媒体と接触して配置されて、未重合部分は除去される。熱プロセスシステムに関して、要素およびその下の材料を過度に加熱することなく、要素の未重合の部分を軟化または液化するために十分な温度まで要素を加熱することが望ましい。
【0003】
また、印刷版の背面の加熱を防止または最小化するため、そして背面上の支持体をそのガラス転移温度またはその焼なまし温度未満に保持するため、特にドラム表面が冷たい場合、ドラム表面に対して印刷版を確実に保持することも望ましい。印刷版の支持体が熱プロセスの間にそのガラス転移温度以上まで加熱される場合、支持体は歪曲するおそれがあり、最終処理された凸版印刷版に変形を生じるおそれがある。
【0004】
要素に熱を供給するための1つの方法は、固体シリコーンエラストマーでカバーされた内部加熱された金属圧力ローラーからの伝導である。この方法は、シリコーンエラストマーの低い熱伝導率のため、圧力ローラー表面とシリコーンエラストマーとの界面での高温を伴う。界面の温度は、シリコーンエラストマーおよび/またはいずれかのその下にある接着剤のための操作限界であるか、またはそれを超えるものであり、圧力ローラーからのシリコーンエラストマーの層間剥離がもたらされる。生じる出費および低下した操作収量は、より低い界面温度を可能にする補足的な熱源を用いることによって対処された。
【0005】
ドラムおよび/または圧力ロールによって供給される熱を補足する赤外線(IR)ヒーターの使用は、良好な組み合わせであったが、操作費用および熱特性を改善することができた。有効であるけれども、IR加熱は、いずれかのベース層、例えば、ポリエステルベース支持体に加えて、フォトポリマー材料でIRエネルギーの吸収が生じるため、透明フォトポリマー材料には最適ではない。フォトポリマー材料の表面への熱の適用によって、圧力ローラーから供給される熱が低下するか、またはいくつかの場合には熱が供給されないという、いくつかのプロセス利点がもたらされる。
【0006】
フォトポリマー板の熱プロセスは、既存の材料が未重合の部分の有利な除去速度を達成するために、250°F付近であるべきである。フォトポリマー材料とポリエステルベース材料との界面の温度は、ポリエステルベース材料のガラス転移温度(T)未満、そして約150°Fの画像レジストレーションの低下の温度閾値より有意に低くなければならない。凸版印刷で必要とされる熱勾配の一例として、フォトポリマー層厚さは0.014インチであることができ、支持体のTに接近することを回避するため、フォトポリマー層の上面で230°F、そしてフォトポリマー層の底部で130°Fであり、7,000°F/インチ(1500℃/cm)の温度傾度がもたらされる。そのような勾配を達成するため、フォトポリマー層の表面の急速加熱を必要とする。容易に認識できるように、現像媒体の吸収性表面を断熱することによる圧力ロールからの伝導加熱のみの使用は、単に、そのような必要条件の境界の外側である。
【0007】
印刷版の一例は、凸版印刷版、特にフレキソ印刷版である。本明細書に開示される本発明は、他の印刷版と同様に、フレキソ印刷版で使用することができる。フレキソ印刷版は、包装材料、例えば、ボール紙、プラスチックフィルム、アルミホイルなどの軟質および比較的硬質の材料において印刷するために周知である。フレキソ印刷版は、米国特許第4,323,637号明細書および同第4,427,759号明細書に記載されるものなどの光重合性組成物を含有する感光性印刷版から調製することができる。DuPontは、商品名CYREL(登録商標)の下でフレキソ印刷版を販売し、そして商品名CYREL(登録商標)FASTの下でフレキソ印刷版を製造するための装置を販売している。
【0008】
例えば、フレキソ印刷版の熱現像のためのプロセッサーは回転式ドラムを有し、その周囲にフレキソ印刷版が固定されなければならない。そのようなプロセッサーは、米国特許第5,279,697号明細書に記載される。米国特許第5,279,697号明細書に開示されるように、印刷版から未照射組成物を除去するため、照射された印刷版の取り扱い、ならびに印刷版の加熱およびプレスのために自動化されたプロセスおよび装置を使用することができる。米国特許第5,279,697号明細書に開示されるように、印刷版は、ドラムの外部表面に横断して据え付けられたクランプフラッシュによって、予熱されたドラムに固定される。
【0009】
同様に、商品名CYREL(登録商標)FAST 1000TDで販売される市販の熱プロセッサーにおいて、ドラムの外部表面は、50のショアA硬度を有するシリコーンゴム層およびゴム層の粘着付与層を含む。粘着付与層はDOW 236という溶媒中のシリコーン分散系であり、Dow Corningから入手可能であり、これによって印刷版がドラムに接着される。
【0010】
フレキソ印刷要素の熱現像のためのプロセッサーは既知である。米国特許第5,279,697号明細書および米国特許第6,797,454号明細書は、それぞれ、吸収性材料のウェブによって要素から未照射組成物を除去するため、照射された印刷要素の取り扱い、ならびに繰り返された加熱およびプレスの達成のために自動化されたプロセスおよび装置を記載する。両装置は、熱現像の間、要素を加熱し、そして吸収性材料で溶融ポリマーを除去するため、吸収性材料のウェブを担持するためのホットローラーを、感光性要素と接触して含む。米国特許第5,279,697号明細書において、照射および未照射領域を有する要素が、ドラムの主要壁の内部表面に据え付けられた電気加熱ブランケットで加熱される予熱されたドラムに据え付けられる。未照射領域の溶融点の付近の温度まで組成物層を予熱するために、熱は、ドラムのウォールを通して、そして可撓性基材を通して移動しなければならない。しかし、加熱されたドラムは、支持体が歪曲および/または縮小し得るような程度まで要素の支持体を加熱し得、それは印刷版の凸版領域の寸法安定性に影響を及ぼし得る。米国特許第6,797,454号明細書は、組成物層の加熱と同時に支持体を冷却することによって、支持体のそのような望ましくない歪曲および/または収縮を回避する。支持体の冷却は、吸収性材料とホットローラーとの接触の前に、赤外線の加熱デバイスによって組成物層の外部表面に追加の熱を提供しながら、ドラムの円周表面で空気を吹きつけることによって実行される。
【0011】
米国特許第4,197,126号明細書には、気体流れを使用するエアエッチングプロセスが教示されている。気体流れによって除去される材料は、室温〜200°F(93℃)で100〜10,000cpsの材料粘度を有する比較的薄い液体であり、好ましい材料粘度は200cpsである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
熱プロセスシステムに関して、要素を過度に加熱することなく、要素の未重合の部分を軟化または液化するために十分な温度まで光重合性要素を加熱することが望ましい。要素の背面の加熱を防止または最小化し、そして背面上の支持体をそのガラス転移温度またはその焼なまし温度未満に保持しながら、急速に加熱し、かつ光重合性材料の未硬化部分を層から除去する、光重合性要素の熱プロセス方法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製する方法である。この方法は、(a)層の一部が液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで外部表面を加熱する工程と、(b)感光性要素を現像媒体と接触させ、現像媒体によって液化材料を除去する工程とを含んでなる。加熱工程は、約10〜約35メートル/秒の速度および約110℃〜約350℃の温度で、ノズルアセンブリから放出する気体噴射を使用することによって実行される。この気体噴射は、15秒未満の滞留時間で10キロワット/mより高い熱流で外部表面と衝突する。
【0014】
一実施形態において、熱流は10〜70キロワット/mであり、そしてノズルアセンブリは、スロットまたは複数の開口部を形成するアパーチャを含有する。スロットまたは複数の開口部の寸法は限定されず、スロットまたは複数の開口部に渡って、必要とされる熱流および気体流の均一性を達成する能力のみに依存する。アパーチャがスロットの形態である場合、加熱された気体の噴射の熱流(キロワット/mで表される)は、以下の方程式EqnAによって表されてもよい。
【0015】
(EqnA)
熱流=−32.5(kW/m)+[0.687(kW−秒/m)×速度(m/秒)]+[0.203(kW/m℃)×温度(℃)]
式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。アパーチャが複数の開口部を有する形態である場合、加熱された気体の噴射の熱流(キロワット/mで表される)は、以下の方程式(EqnB)によって表されてもよい。
【0016】
(EqnB)
熱流=−33.3(kW/m)+[1.77(kW−秒/m)×速度(m/秒)]+[0.189(kW/m℃)×温度(℃)]
式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。
【0017】
また本発明は、外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製するための装置を含む。この装置は、層の一部を液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで外部表面を加熱するための手段を含んでなる。この装置は、感光性要素を現像媒体と接触させ、現像媒体によって液化材料を除去するための手段を含んでなる。加熱手段は、10〜35メートル/秒の速度および110℃〜350℃の温度で、ノズルアセンブリから放出する気体噴射によって実行され、この気体噴射は、15秒未満の滞留時間で10キロワット/mより高い熱流で外部表面と衝突する。
【0018】
もう1つの実施形態において、接触手段は、現像媒体を担持するためのローラーアセンブリを含んでなり、ローラーアセンブリは、150℃〜250℃の温度まで加熱されるローラーを含む。ノズルアセンブリからの加熱された気体の噴射によって要素が予熱され、ローラーアセンブリは、ノズルの出口から0.5インチ(1.27cm)〜3インチ(7.62cm)の距離でノズルアセンブリに隣接して位置する。
【0019】
本発明は、以下の通りに記載される添付の図面と関連して、それらの以下の詳細な記載から、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、凸版印刷版を形成するための熱現像装置およびプロセスの一実施形態の全体的な概略図である。
図2図2は、熱現像装置のためのノズルアセンブリの一実施形態の透視図である。
図3図3は、図2に示されるノズルアセンブリの上面図である。
図4図4は、図2に示されるノズルアセンブリの側面図である。
図5図5は、図2に示されるノズルアセンブリの出口部分の一実施形態の拡大断面図である。
図6図6は、図2に示されるノズルアセンブリの実施形態の出口部分のもう1つの実施形態の拡大断面図である。
図7図7は、一部が切断された、図6に示されるノズルアセンブリの内部端縁出口部分の透視図である。
図8図8は、一部が切断された、図7に示されるノズルアセンブリの内部端縁出口部分の拡大透視図である。
図9図9は、ノズルアセンブリ、ドラムおよび圧力ロールの配向を示す、印刷版を調製するための熱現像装置およびプロセスのための印刷版前駆体サブシステムの一実施形態の部分的な断面側面図である。
図10図10は、表面の衝突点における接線に対しての出口部分の配向の角度の範囲を示す、図2のノズルアセンブリの出口部分の一実施形態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な記載を通して、同様の参照符号は、全ての図面で同等の要素を指す。
【0022】
本発明は、感光性組成物の層の未露光の部分を軟化、溶融または液化するために十分前駆体を加熱するために、要素の外部表面で高温流体衝突を使用する、感光性要素または印刷版前駆体の熱処理または現像のための新規かつ改善されたシステムおよび方法に関する。流体の一例は空気である。印刷版前駆体上で制御された流れでノズルアセンブリを通して空気を促進するために送風装置を使用する。本発明は、一般に、感光性要素から印刷版を調製するために使用される熱現像プロセッサーで使用されることができる。感光性要素の表面と衝突する高温流体の適用によって、衝突する高温流体は、要素の支持体側面を加熱することなく、または最小限の加熱のみで、急速に表面を加熱するため、感光性層を横切って所望の勾配が達成される。圧力ロールの前に、高温流体衝突を送達することが可能であるノズルアセンブリなどのデバイスを設置することによって、圧力ロールによって担持される現像媒体による接触の直前に、光重合性層の急速加熱が提供される。衝突する高温流体による急速加熱によって、そのガラス転移温度およびその焼なまし温度以上での感光性要素の支持体の加熱が回避される。
【0023】
要素の熱現像または処理は、光重合性層の未硬化部分を液化、すなわち、軟化、溶融または流動させるために十分な温度まで少なくとも1つの光重合性層(および追加の層)を有する光重合性要素を加熱し、未硬化部分を除去することを含む。感光性組成物の層は、熱現像による加熱時に部分的に液化することが可能である。すなわち、熱現像の間、適切なプロセスまたは現像温度において、未硬化組成物は軟化、溶融または流動しなければならない。光重合性層の重合領域(硬化部分)は、未重合領域(未硬化部分)よりも高い溶融温度を有し、したがって、熱現像温度で、溶融、軟化または流動しない。未硬化部分は、現像媒体と接触させることによって、組成物層の硬化部分から除去することができる。
【0024】
「溶融」、「液化」および「流動」という用語は、軟化して、粘度が低下し、現像媒体による除去が可能である、高温にされた固体組成物層の未照射部分の挙動を記載するために使用される。特に熱現像の文脈中、「液化する」または「液化している」または「液化される」は、現像媒体との接触による除去のために十分加熱された光重合性層の未硬化部分を記載するために、しばしば使用されるが、加熱された未硬化部分が極めて粘性であり、従来の意味での液体でないことを理解すべきである。組成物層の溶融可能な部分(または液化部分または流動部分)の材料は、通常、固体および液体の間で急激な転移のない粘弾性材料であり、そのため、このプロセスは、現像媒体による除去のための閾値よりいくらか高いいずれかの温度で加熱された組成物層を除去または吸収するために機能する。本発明の目的のために、組成物層を液化、すなわち、「軟化」または「溶融」または「流動」するために、広範囲にわたる温度範囲が利用されてもよい。熱処理の間、未硬化組成物は、適切なプロセスまたは現像温度で、軟化、溶融または流動しなければならないが、通常の貯蔵の間、低温流れ、すなわち、寸法変化を受けない。しばしば、現像媒体による除去は、吸収性媒体への高度に粘性の未硬化材料の吸収による。吸収は、より低い温度でより遅く、そしてプロセスの良好な操作の間のより高い温度でより速くなり得る。
【0025】
図1は、外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製するための熱現像システム20の一実施形態を示す。ノズルアセンブリ80から出る気体噴射は、光重合性組成物を加熱し、液化された材料を形成し、これはその後、典型的に不織布である吸収性ウェブ32およびホイル54を含む現像媒体によって除去される。像様露光の後、印刷に適切なレリーフ表面を形成するために、印刷版の未硬化部分(すなわち未露光部分)は除去されなければならない。レリーフ表面は、凸状部分および凹状部分を含有する。熱プロセスは、印刷版を乾燥させるための溶媒および関連する時間の使用を回避する。したがって、図1で示す熱プロセスは好ましい方法である。
【0026】
図1に示されるノズルアセンブリ80は、感光性または印刷形前駆体22に熱を供給する。ノズルアセンブリ80は、表面28の未現像部分を軟化または液化するため、印刷版前駆体22の表面28を加熱するために、加熱された気体を使用する。一実施形態において空気である非反応性の気体を、制御された速度、温度および流れ条件でノズルアセンブリ80の出口(下記)に強制的に通過させ、印刷版前駆体22の表面28への急速かつ効率的な熱伝達がもたらされる。表面28のこのような選択的加熱によって、前駆体22の必要とされる温度を達成するために、ドラム56および/または圧力ローラー52の加熱に依存する従来技術プロセスよりも良好なプロセス制御およびエネルギー効率がもたらされる。
【0027】
一実施形態において、加熱された気体は空気であり、そして加熱された空気の噴射は10キロワット/m(kW/m)以上の熱流を有し、これは、滞留時間とも呼ばれる15秒未満の時間で加熱された空気の噴射の影響を受ける時に表面28に付与される。滞留時間は、圧力ローラー52によって印刷版前駆体22を現像媒体と接触させる前に、表面28が加熱された気体の噴射によって影響される時間として定義される。いくつかの実施形態において、熱流は、前駆体22の表面28が経験するピーク熱流または最大熱流である。ほとんどの実施形態において、ピークの熱流は、加熱された気体の噴射が表面28と衝突する衝突点で前駆体22が経験する熱流である。いくつかの実施形態において、滞留時間は、表面28が、ピーク熱流で衝突する加熱された気体の噴射を経験する期間である。いくつかの他の実施形態において、滞留時間は、表面28が、(衝突点で)衝突する加熱された気体の噴射、および(衝突後)加熱された気体流れの噴射の向け直された部分を経験する期間である。気体を加熱するための手段は限定されず、そして一実施形態において、電気抵抗ヒーターであり、そしてもう1つの実施形態において、燃焼熱交換器が使用される。
【0028】
熱流は、感光性印刷版前駆体の外部表面の単位表面積を通して、ノズルから出る気体(噴射)の衝突による熱エネルギー伝達率である。熱流は、表面上へ据え付けることが可能な自己発生熱電対列変換器として機能する薄膜熱流センサーによって測定することができる。一実施形態において、加熱された空気の噴射の熱流を決定するために、1つまたはそれ以上の熱流センサーがドラムの外部表面上へ直接据え付けられる。ノズルアセンブリから出て、ドラム表面に衝突する加熱された空気の噴射の熱流均一性を測定するために、2つ以上の熱流センサーを、ドラムの軸の長さに沿う配列で、場合によっては一定の間隔で、整列させることができる。もう1つの実施形態において、加熱された空気の噴射の熱流を決定するために、センサーが、ドラムの外部表面と同一平面に配置されるように、1つまたはそれ以上の熱流センサーを、ドラム上でスロットまたは凹状領域に56に適合する断熱材料の一片上へ据え付ける。ドラム上に前駆体をカップリングするか、または据え付けるためのアセンブリは、熱流センサーをスロット上に据え付けることができるように、または熱流センサーのためのスロットをドラム上に形成することができるように、ドラム上のスロットまたは凹状領域から除去することができる。熱流センサーを断熱材料上に配置することによって、2つ以上の熱流センサーの容易な除去および据え付けが可能となり、そしてセンサーをドラム温度の影響から切り離し、センサーの下の基材がいくらか測定に影響するため、改善された再現性がもたらされる。ほとんどの実施形態において、熱流センサーは、必要な熱流を提供するノズルアセンブリのための適切なデザインおよび操作条件を確立するために、熱現像システムのデザイン、試験および一定比率増加相に使用され、そして熱現像システムプロセス印刷版前駆体の通常の作業に含まれない。ほとんどの実施形態において、外部表面を加熱するため、そして光重合性層の一部分を少なくとも軟化するために十分加熱された気体の噴射の熱流は、特定の滞留時間(または前駆体の表面速度)およびノズルの気体出口と前駆体の外部表面との間の間隙におけるピーク熱流である。
【0029】
ノズルアセンブリによって生じる加熱された空気の噴射の熱流を決定するために適切である熱流センサーは、Omega Engineering(Stamford,CT,USA)からのタイプK TC(熱電対)を備えた6.5μV/BTU/FtHrセンサーであるモデルHFS−4である。この熱流センサーで使用するために適切である断熱体は、Cotronics Corporation(Brooklyn,NY,USA)からの厚さ6.35mmであり、かつ約0.40W/mKの熱伝導率を有する、機械加工可能なガラスセラミック複合材、タイプ914である。
【0030】
少なくとも10kW/mの加熱された気体の噴射の熱流は、印刷版前駆体の外部表面に、光重合性層の一部分を少なくとも溶融するために十分な熱を提供し、なお、そのガラス転移温度または焼なまし温度より高い温度までの前駆体の支持体の加熱を回避する。もう1つの実施形態において、加熱された気体の噴射の熱流は、約10kW/m〜約70kW/mの範囲である。もう1つの実施形態において、熱流は、約20kW/m〜約65kW/mの範囲にある。高速気体は表面28に当たり、境界層(図示せず)を除去し、表面28に衝突する。このプロセスは、気体流れの一部分を停滞点の片側または両側に向け直す停滞点(図示せず)で高速気体が表面28と衝突するため、気体噴射衝突と呼ばれる。ノズルアセンブリ80の出口の気体噴射の速度は、10メートル/秒(m/秒)〜35m/秒、もう1つの実施形態において、15m/秒〜30m/秒、そしてもう1つの実施形態において、17m/秒〜27m/秒で変動可能である。ノズルアセンブリ80の出口の気体噴射の温度は、110℃〜350℃、もう1つの実施形態において、120℃〜330℃、そしてさらにもう1つの実施形態において、170℃〜320℃で変動可能である。滞留時間は、いくつかの実施形態において、0.25秒〜15秒であり、いくつかの他の実施形態において、0.5秒〜12秒であり、なお他の実施形態において、0.5秒〜10秒であり、他の実施形態において、2秒〜15秒である。熱流および滞留時間の間には逆相関がある。滞留時間は2秒〜14秒の範囲であってもよく、熱流および滞留時間の間に逆相関があって、例えば、高い熱流は、より低い滞留時間で使用可能である。加えて、ノズルアセンブリ80の出口と表面28との間の距離の最小化によって、熱伝達の効率が改善され、一実施形態において、ノズルアセンブリ80の出口と表面28との間の間隙は1ミリメートル(mm)〜15mmであり、もう1つの実施形態において、間隙は2mm〜9mmである。ノズルアセンブリ80から出る気体噴射は、表面28の衝突点の接線に対して45〜135度の角度で表面28と衝突する。もう1つの実施形態において、表面に衝突する噴射の角度は、表面28の衝突点の接線に対して80〜100度である。
【0031】
ノズルアセンブリ
図2は、インレット120へと気体を吸引し、次いで、気体を気体出口140へと円滑に分配するプレナム130に供給するために気体を促進する、低圧力を生じさせる送風装置160を回転させるための少なくとも1つのモーター110を有するノズルアセンブリ80の一実施形態を例示する。リサイクル150は、表面28上で衝突後の加熱された気体の一部を捕獲する(図示されない)。気体出口140は、前駆体がノズルアセンブリ80によって移動する時に、前駆体22の横断方向の寸法の一部上で加熱された気体による衝突を提供する長さを有する。気体出口140の長さは、ドラム56の軸の長さと同一であるか、または実質的に同一であり、そしてドラム56の縦方向に対して横断方向(すなわち、移動方向)の前駆体の寸法と同一、実質的に同一、またはそれ以上であってもよい。
【0032】
図3は、リサイクル150気体流れが気体入口120になり、気体出口140への気体の分配のため、気体流れは送風装置160によってプレナム130に促進され、前駆体22の外部表面28を加熱する、ノズルアセンブリ80を例示する。
【0033】
図4は、図2に示されるノズルアセンブリ80を示し、リサイクル150によって気体が送風装置筐体170に入り、チップ180が気体を気体出口140へ導く。シール190は、表面28(図示されない)に衝突した気体をリサイクル150に向け直すために役立つ。シール190は表面28(図示されない)と接触していてもよく、表面28と近接して位置していてもよい。
【0034】
図5は、図2に示されるノズルアセンブリ80の気体出口140の拡大側面図であり、気体流が矢印を有する太い点線で示されている。加熱手段200は、チップ180に入り、スロット210から出る気体を加熱する。上記の通り、加熱手段200は、多くの方法によって提供することができる。この実施形態において、アパーチャまたはスロット210は、その長さより実質的に小さい(ドラム56の軸の長さと実質的に同じ)幅を有するスリットの形態である。支持体220はチップ180内に位置し、気体流へのいずれかの妨害を最小化することに加えて、スロット210における構造安定性を提供する。この実施形態において、シール190は、気体流れをリサイクル150に向けて、プロセス温度まですでに加熱された気体を捕捉することによってエネルギーコストを低下させるために役立つ。リブ230は、スロット210が気体出口140で開いている実施形態において、スロット210に剛性を提供する。スロット210は、その長さに沿って、複数の1つまたはそれ以上の支持体220、あるいは1つまたはそれ以上のリブ230を含んでもよい。スロット210の気体出口140の領域はアパーチャとも呼ばれる。一実施形態において、気体出口140がスロット210の開いた形態である場合、加熱された気体の噴射の熱流(キロワット/m2で表される)は、以下の方程式(EqnA)によって表されてもよい。
【0035】
(EqnA)
熱流=−32.5(kW/m)+[0.687(kW−秒/m)×速度(m/秒)]+[0.203(kW/m℃)×温度(℃)]
式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。開いたスリットのスロットを有するノズルアセンブリに関する加熱された気体の噴射の熱流(kW/mで表される)を決定するために、この同じ方程式を、
熱流=−32.5+[0.687×速度(m/秒)]+[0.203×温度(℃)]
として(単位の除去によって)より簡単に表すことができる。式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。他の実施形態において、スロットまたは開いたスリットの形態のアパーチャの寸法の1つまたはそれ以上が変化すると、熱流を決定するための方程式は変化してもよい。
【0036】
図6は、図2に示されるノズルアセンブリ80の気体出口140のもう1つの実施形態を示し、複数の開口部がノズルアセンブリ80のスロット210の実施形態を形成している。気体出口140が、表面28の横断方向の部分上で気体を衝突するための長さを有するので、複数の開口部のスロット210は、複数の開口部の線形配列と考えてもよい。この実施形態は、図5のスロット210の開いた実施形態より構造完全性を有し得、支持体220の排除を可能にする。加えて、リブ232は、図5のリブ230と同様であるが、スロット210の複数の開口部実施形態がより構造剛性を提供するため、リブ232は気体出口140まで延在しない。一実施形態において、気体出口140が、スロット210の複数の開口部形態を有する場合、加熱された気体の噴射の熱流(キロワット/mで表される)は、以下の方程式(EqnB)によって表されてもよい。
【0037】
(EqnB)
熱流=−33.3(kW/m)+[1.77(kW−秒/m)×速度(m/秒)]+[0.189(kW/m℃)×温度(℃)]
式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。スロットを形成する複数の開口部を有するノズルアセンブリに関する加熱された気体の噴射の熱流(kW/m)を決定するために、この同じ方程式を、
熱流=−33.3+[1.77×速度(m/秒)]+[0.189×温度(℃)]
として(単位の除去によって)より簡単に表すことができる。式中、加熱された気体の噴射の速度は15〜30メートル/秒であり、かつ温度は120℃〜330℃である。他の実施形態において、複数の開口部の形態のアパーチャの寸法の1つまたはそれ以上が変化すると、熱流を決定するための方程式は変化してもよい。
【0038】
この実施形態において、加熱された気体の噴射の熱流を決定するための上記の方程式は、それぞれ、上記ノズルアセンブリ80の気体出口140のための各スロット210デザイン(すなわち、開放スリットおよび複数の孔)に関して様々な操作ノズル条件で熱流が測定された、一定期間にわたって実行された試験から集められるデータに基づいた。この試験は、本熱現像システムの予想される操作使用を表す滞留時間および間隙(気体出口140と外部表面28との間)で実行された。集められたデータから、線形回帰分析を行い、ノズルから出る加熱された気体の噴射の速度および温度に対してデータに方程式を適合し、そして速度および温度のための適用可能な操作範囲を決定した。方程式が、スロット開口部寸法、数および間隔、気体出口と外部表面との間の間隙、ならびに滞留時間などの全ての可能なノズルパラメーターを含むというわけではないため、各方程式はノズルの特定のデザインに適用する。前駆体の外部表面上に衝突する加熱された気体の噴射の熱流を予測または決定するための異なる線形回帰式は、ノズルパラメーター、間隙および滞留時間への1つまたはそれ以上の変化に基づき、試験データから作成することができるであろう。別の実施形態において、広範囲にわたる条件で空気ノズルアセンブリを含む熱現像システムの操作パラメーターを変化させる設計された実験に基づく方程式から、加熱された気体の噴射の熱流を決定することができることが考えられる。
【0039】
図7は、図2に示されるノズルアセンブリ80のチップ180の上部内部端縁出口部分を示し、複数の孔の線形配列を形成するスロット210の実施形態を示す。
【0040】
図8は、リブ232によって気体流れがリサイクル150を通る、チップ180の底部内部端縁部分を示す。スロット210のための複数の孔の実施形態は、リブ232の実施形態と比較して、非常に小さい開口部を有することができる。
【0041】
図9は、ノズルアセンブリ80、ドラム56および圧力ロール52の配向の一実施形態を示す。衝突点240は気体流れの停滞点を示す。間隙250は、気体出口140と表面28との間の距離を示す。気体出口140(図示されず)と圧力ロール52との間の距離は、衝突点240とニップ86との間の距離によって表すことができる。ドラム56(または他の前駆体支持体部材)の表面輸送速度と関連したこの距離は、滞留時間を決定する。示される実施形態において、発熱体が加熱手段200を形成し、そして1つまたはそれ以上の配流板260が気体流れに影響する。
【0042】
図10は、ノズルアセンブリ80のチップ180の角度変化を示し、気体流れの方向は、表面28の衝突点240における接線に対して約45〜約135度で変化してよい。ノズルアセンブリは、チップ180から出る気体流れの方向が、衝突点240における接線に対して約45〜約135度の角度で表面28と衝突することができるように、装置20の範囲内に配置することができるか、または配向することができる。いくつかの実施形態において、チップ180から出る気体流れの方向は、衝突点240における接線に対して約75〜約110度で前駆体に衝突することができる。示される実施形態において、気体出口140は、45°および135°で配向される場合、前駆体の外部表面28の一または実質的に同一の衝突点240に気体を向け続ける。いくつかの実施形態において、ノズルアセンブリ80は、前駆体のための熱現像の全サイクルを通して、気体出口140が、加熱された気体の噴射を、衝突点240における接線に対して同一または実質的に同一の角度で向けるように配向される。いくつかの他の実施形態において、ノズルアセンブリは、前駆体のための熱現像の全サイクルを通して、気体出口140が、加熱された気体の噴射を、衝突点における接線に対して2つ以上の角度で向けることができるように配向される。なお他の実施形態において、ノズルアセンブリは、前駆体のための熱現像の全サイクルを通して、気体出口140が、加熱された気体の噴射を、衝突点における接線に対して1つまたはそれ以上の角度で向けることができ、そして/または異なる衝突点へ移動されるように配向される。
【0043】
熱現像へのノズルアセンブリ80の集積化の一実施形態を図1に示し、熱現像プロセスの説明を以下に提供する。
【0044】
図1に示される実施形態において、熱現像システム20は、好ましくは、ウェブサブシステム34、ホイルサブシステム36、廃物サブシステム38および印刷版サブシステム40を含む。それぞれサブシステムは、以下にさらに詳細に記載される。本方法装置に従う熱現像システム20は、印刷版前駆体サブシステム40、特に、現像媒体による接触のために表面28を加熱するために使用されるノズルアセンブリ80において新規の特徴を組み込む。
【0045】
ウェブサブシステム34は、熱現像システム20を通して、連続的に現像媒体のウェブ32、好ましくは吸収性ウェブを供給する。ウェブ32は、印刷版の未露光部分を印刷版前駆体22から移動させることが可能な不織物または織物であるいずれかの材料の含んでなっていてもよいことは認識されるであろう。このウェブの目的は、熱プロセスの間、前駆体22と接触して、印刷版の溶融した未露光部分を除去することである。ウェブサブシステム36は、好ましくは、供給ロール42、ならびにローラー42、44、46、48および50を含む。吸収性ウェブ32は供給ロール42からほどかれて、そして曲がった経路でロール44、46、48および50の間を通過する。以下にさらに記載される通り、次いで、ウェブ32は圧力ローラー52上に導かれ、そこで、ホイルサブシステム36から供給されるホイル54と組み合わせられ、そして印刷版前駆体22の外部表面28と接触する。前駆体22は、印刷版サブシステム40のドラム56に据え付けられる。
【0046】
ホイルサブシステム36は、吸収性ウェブ32と組み合わせ、そして印刷版前駆体22と接触させるための現像媒体を形成するために、好ましくは、ポリマーフィルムまたはホイルを供給する。ホイル54の目的は、印刷版前駆体22の溶融した未重合部分および現像プロセスの間に放出する他の揮発性物質から熱現像システム20の一部分を保護することである。ウェブ32は印刷版前駆体22の溶融部分の多くを吸収するが、ホイル54が存在しなくても、溶融材料がウェブ32に浸透し、圧力ローラー52および廃物サブシステム38内の他のロール上に堆積物を生じさせることが可能である。ホイル54は、これらの堆積物の生成を防ぎ、そしてさらに熱現像システム20の部品上での揮発性物質の濃縮を防ぐ。ホイル54はいずれかの適切な材料であることができるが、ホイルは、最も好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)ホイルである。示される実施形態において、ホイルサブシステム36は、供給ロール58、ならびにローラー60、62および64を含む。ホイル54は供給ロール58からほどかれて、そして曲がった経路でロール60、62および64の間を通過する。次いで、ホイル54は圧力ローラー52上に導かれ、そこで、ホイル54がウェブ32に対してプレスされるように、吸収性ウェブ32と組み合わせられ、そしてそれは印刷版前駆体22に対してプレスされる。
【0047】
廃物サブシステム38は、使用されたウェブ32およびホイル54を回収するためである。廃物サブシステム38は、好ましくは、ローラー66、68、70、72、74および76を含む。ローラー66、68、70、72、74および76は巻取りローラーであり、それらが印刷版サブシステムにおいて互いに対してプレスされた後、ウェブおよびホイルに曲がった経路を提供する。ローラー76は、ウェブ32およびホイル54が回収される廃物巻取りローラーである。
【0048】
ロール44、46、48、50、66、68、70、72、74、ならびに巻取りロール76の1つまたはそれ以上がウェブ32を動かしてもよい。ロール60、62、64、66、68、70、72、74、ならびに巻取りロール76の1つまたはそれ以上がホイル54を動かしてもよい。ロール44、46、48、50、60、62、64、66、68、70、72、74、またはさらに供給ロール42および58の1つまたはそれ以上が、その輸送経路でウェブ32およびホイル54の張力を維持するためのブレーキメカニズムを含んでもよい。ブレーキは、当該技術で既知の種類の電子制御ブレーキであってもよい。さらに、ウェブおよびホイルのローラーおよび経路の数は例証として示され、そしてローラーおよび経路のいずれの数も使用することができる。
【0049】
印刷版サブシステム40は、好ましくは、ドラム56、冷却システム78、ノズルアセンブリ80、圧力ローラー52、ラジエントヒーター82、アーム84およびニップ86を含む。ドラム56は、熱現像プロセス間の印刷版前駆体22の接着点である。ドラム56は、未露光の溶融ポリマーが除去され得るように、現像媒体のウェブ32に対して印刷版前駆体22を回転させるために使用される。ドラム56は一般に円筒形状を有し、表面88を含んでなる。ドラム56は、固定支持体フレーム(図示せず)上で、回転のために据え付けられる。本実施形態において、矢印56aによって示されるように、ドラム56は逆時計回り方向に回転する。ドラム56が時計回りの方向で回転するように熱現像システム20を構成することができることは、当業者にとって明らかであろう。ドラム56が熱現像プロセスの間に有意に形状を変化させないように、ドラム56は非可撓性または実質的に非可撓性である。
【0050】
一実施形態において、ドラム56は冷却システム78をさらに含む。冷却システム78は好ましくは水冷システムであって、ドラム56に接触しながら、印刷版前駆体22の背面または支持体の温度を維持するために、冷水がドラム内で循環している。一実施形態において、印刷版前駆体の支持体は、印刷版の支持体のガラス転移温度未満の温度、すなわち、130°F未満に維持される。これは、支持体が歪曲せず、そして印刷版22がその形状を保持することを確実にさせる。米国特許第6,797,454B1号明細書に開示されるように、感光性印刷版前駆体22およびドラム56の表面に空気の流れを向ける送風装置(図示せず)などの別の冷却装置でドラムを冷却することも可能でもある。
【0051】
印刷版サブシステム40は、印刷版22を加熱するためのもう1つの手段として、ノズルアセンブリ80と組み合わせて、圧力ローラー52を含んでもよい。圧力ローラー52は、印刷版前駆体22の外部表面28の温度を維持するか、またはさらに高め、それによって、印刷版の未現像の部分が、ウェブ32と接触する時に液体状態にあることを確実にさせる。圧力ローラー52は、赤外線ヒーターなどのラジエントヒーター82で加熱することができる。圧力ローラー52は、カートリッジヒーターなどの他の加熱手段で加熱することができる。圧力ローラー52は、印刷版22を運搬するドラム56に隣接して配置される。圧力ローラー52は、ノズルアセンブリ80にも隣接する。
【0052】
圧力ローラー52は、ウェブ32およびホイル54を印刷版前駆体22の外部表面28と接触させる手段としても機能する。ウェブ32およびホイル54が、それぞれ、ウェブサブシステム34およびホイルサブシステム36を通過した後、ウェブ32およびホイル54は、曲がった経路に沿って圧力ローラー52の周囲を通過することによって接合する。ウェブ32およびホイル54が圧力ローラー52を通過すると、ウェブ32は印刷版前駆体22の外部表面28に対してプレスされ、それによって、前駆体22の溶融した未露光部分を吸収する。
【0053】
あるいは、ノズルアセンブリ80からの気体噴射加熱とともに、ドラム56はドラムヒーター(図示せず)を備えていてもよい。ドラムヒーター(図示せず)は、印刷版の未現像の部分が溶融状態で残存し、ウェブ32によって吸収することができるように、熱現像の間に感光性印刷版22を、周囲環境から独立して、安定した開始温度に保持するために使用されてもよい。ドラムヒーター(図示せず)は、巻線ブランケットなどの電気的加熱ブランケットであってもよい。しかしながら、ヒーターの電力容量が、ドラム56の外部表面88において選択された表面温度を一定に維持するために十分である限り、ドラム56を加熱するいずれの手段も容認できる。ドラムを加熱するために、水などの加熱流体をドラム56の表面下で循環させてもよいことも考えられる。
【0054】
示される好ましい実施形態で、ドラムの外部表面88の温度は、約50°F〜150°F(10℃〜65.6℃)、好ましくは、75°F〜95°F(23.9℃〜35℃)である。これらのパラメーターは例であり、そして特定の適用に適合させるために、パラメーターを調節することができる。通常の操作環境が一定温度であるように慎重に制御される場合、ヒーターを止めることができるか、またはドラム56から省略することができる。
【0055】
印刷版サブシステム40は、ドラム56と圧力ローラー52との間での相対的な運動のための手段を提供するアーム84をさらに含む。アーム84は、感光性印刷版前駆体22および現像媒体のウェブ32を互いに接触させることができるように機能する。相対的な運動を提供するための手段は、例えば、圧力ローラー52(および/またはドラム56)を、圧力ローラー52を移動する2位置空気ロール装填シリンダー83に取り付けられたアーム84上に据え付けることによって達成することができる。別の実施形態において、圧力ローラー52の相対的な運動は、ステッピングモーターまたはサーボモーターで作動させてもよい。ノズルアセンブリ80、圧力ローラー52および任意選択的にドラム56による入熱を制御する目的で、温度を監視するために、熱現像システム20の中に温度センサーが据え付けられてもよい。
【0056】
ニップ86、または圧力ローラー52とドラム56との間の距離は、圧力ローラー52が本実施形態に関して係合位置にある場合、好ましくは、0センチメートルである。プロセスの間、実質的に均一な圧力が前駆体22の外部表面28のニップ86に適用されるように、距離を設定することが望ましい。圧力は、吸収性ウェブを強制的に感光性印刷版前駆体22と密接に接触させるために適用される。ニップ86を、いずれかの特定の適用に適切であるように様々なパラメーターに調節することができることは明らかであろう。
【0057】
独立して、または圧力ローラー52と組み合わせて機能するノズルアセンブリ80は、感光性印刷版前駆体22の外部表面28を、組成物層の一部分、すなわち、未露光部分を液化、軟化、流動または溶融させるために十分な温度まで加熱することが可能である。一実施形態において、前駆体の外部表面を、層の一部分を液化、軟化、流動または溶融させるために十分な温度まで加熱するために、加熱された気体の噴射が使用される。もう1つの実施形態において、ノズルアセンブリ80は、加熱された気体の噴射を第1の加熱手段として機能するために生じ、そして第2の加熱手段として機能するために加熱される圧力ローラー52は、感光性印刷版前駆体22の外部表面28を、組成物層の一部分、すなわち、未露光部分を液化、軟化または溶融させるために十分な温度まで加熱するために使用される。印刷版前駆体22を加熱する追加的な別の方法も可能であり、そして本システムおよび方法に含まれるものは、当業者の範囲内である。熱プロセスの間に印刷版がその形状を保持することを確実にするため、印刷版22の背面表面、例えば、支持体を冷却するために冷却システム78が使用されてもよい。
【0058】
方法
本発明の方法は、10〜35メートル/秒の速度および110℃〜350℃の温度でノズルアセンブリから放出し、かつ15秒未満の滞留時間で10キロワット/mより高い熱流で外部表面と衝突する加熱された気体の噴射を使用することによって、層の一部が液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで、前駆体の外部表面を加熱する工程と、感光性要素を現像媒体と接触させ、現像媒体によって液化材料を除去する工程とを含む。前駆体の光重合性層から未硬化材料を徹底的に除去するために、加熱された気体の噴射による未硬化部分の加熱、および加熱された未硬化部分と現像媒体との接触の両方が必要である。加熱された気体の噴射単独による加熱では、比較的厚い、すなわち、厚さ約0.35mmおよび約7.6mmの光重合性層の硬化部分から、熱現像のための高温でさえ極めて粘性であり、例えば、100,000cPを超える未硬化部分の分離を徹底するには不十分である。
【0059】
感光性印刷版前駆体22を熱現像するプロセスのための装置の操作は、図1に示される熱現像装置20の実施形態に関連して記載される。熱現像システム20はホームポジションにあり、ドラム56は固定されて、供給トレイ96に隣接している。支持体部材98は、ドラム56上にあらかじめ据え付けられた。あるいは、ドラム56は、ドラム56に必要不可欠である支持体部材98で構成される。支持体部材98は、外部表面88を含む。操作者は、感光性印刷版前駆体22を供給トレイ96に配置する。次いで、操作者は、ドラム56の表面88に前駆体のリード部分24を、そして回転アーム104上の係合部材にトレイル部分26をそれぞれ取り付けることによって、印刷版前駆体22をドラム56に係合する。ノズルアセンブリ80を単独で、または任意選択のドラムヒーター(図示せず)と組み合わせて、ドラム56を予熱するために使用してもよい。ドラム56を冷却するために、冷却システム78も使用されてもよい。圧力ローラー52は、1つまたはそれ以上のラジエントヒーター82で加熱される。ドラム56は回転を開始し、感光性印刷版前駆体22が支持体部材98に隣接するように、印刷版前駆体22を運搬する。印刷版前駆体22がノズルアセンブリ80に達する前に、ノズルアセンブリ80は予熱されてもよく、次いで、印刷版前駆体22の組成物層を溶融、軟化、流動または液化するための所望の温度を達成するための操作設定に切り替えられる。印刷版22のリード部分24が、圧力ローラー52がドラム56と接触する位置を通過した後、空気ロール装填シリンダー83は、圧力ローラー52に取り付けられたアーム84を移動し、それによって、印刷版前駆体22に対して吸収性ウェブ32およびホイル54が運搬される。ノズルアセンブリ80からの加熱された空気の噴射は、単独で、または加熱された圧力ローラー52と組み合わせて、前駆体22の表面28を加熱し、光重合性組成物の層の一部分を軟化、溶融、流動または液化させる。光重合性組成物の層は、包括的に40℃〜230℃(104°Fおよび392°F)の温度まで加熱され、層の未硬化部分を軟化または溶融する(これらのパラメーターは例である)。現像媒体の吸収性ウェブ32は、印刷版前駆体22の外部表面28と接触し、そして未硬化ポリマー材料の液化された部分を吸収するか、吸い取るか、またはウィックすることによって組成物層の未露光の部分から除去し、凸状部分および凹状部分を有するレリーフ表面が形成される。このレリーフ表面は、凸版印刷版、特にフレキソ印刷版として使用するために適切である。現像媒体の吸収性ウェブ32と、未硬化領域で溶融状態である印刷版前駆体22との多少密接な接触を維持することによって、印刷版前駆体22から現像ウェブ32への未硬化感光材料の移動が生じる。まだ加熱条件でありながら、現像ウェブ32は、硬化された印刷版22から分離され、凸状部分および凹状部分を有するレリーフ構造が現れる。
【0060】
印刷版前駆体22のトレイル部分が圧力ローラー/ドラム接触点、すなわち、ニップ86を通過すると、ノズルアセンブリ80は冷却されるか、または停止されてもよく、空気ロール装填シリンダー83は圧力ローラー52を格納し、そしてウェブ32およびホイル54の移動を停止することができる。加熱および接触させるもう1つのサイクルを開始するために、ドラム56は印刷版前駆体22のリード部分24をホームポジションに戻してもよい。外部表面28を軟化、溶融または液化するために印刷版前駆体22を加熱する工程と、溶融部分を現像媒体と接触させる工程のサイクルを、必未硬化材料を十分に除去して、十分なレリーフ深さを生じさせるために必要なだけ何回も繰り返することができる。しかしながら、適切なシステム効率のためにサイクルの数を最小化することが望ましく、そして典型的に光重合性印刷版は、5〜15回のサイクルで熱処理される。(未硬化部分が溶融または液化している間の)組成物層への現像材料の密接な接触は、層および現像媒体を一緒にプレスすることによって維持されてもよい。
【0061】
熱現像プロセッサーの操作のほとんどの実施形態において、加熱された空気の衝突する噴射の熱流は測定されない。ドラム上の前駆体の表面に対して、特定のノズルアセンブリおよび構成が与えられて、適切な熱現像のための加熱された気体の噴射の熱流は、約10〜70kW/mで操作することが確立される。ドラム上の前駆体の表面に対して、特定のノズルアセンブリおよび構成が与えられて、ほとんどの実施形態において、加熱された気体の噴射の熱流は、限定されないが、加熱された空気の噴射の温度、送風装置で生じる空気の速度、ノズル出口と前駆体表面との間隙、前駆体を運搬するドラムまたは支持体の移動速度、現像媒体のウェブの張力、圧力ロールの負荷などを含む、システムの1つまたはそれ以上の操作条件の容易な調整によって、様々な光重合性印刷版前駆体(種類、光重合性層厚さ、径などによる多様性)を熱現像するために適切である特定の熱流で、または熱流の好ましい範囲内で操作することが確立される。ドラムの表面速度は、発生する加熱された空気の噴射の熱流(すなわち、前駆体への空気の供給の速度)に影響を及ぼさないが、ドラム表面速度の変更は、前駆体に送達さえる全体の熱量を変化させる。そのように、ドラムの表面速度は、特定の前駆体の熱現像の必要性に適合するように変更されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、前駆体22の外部表面28は、ノズルアセンブリ80からの加熱された空気の噴射によって、前駆体22の1回またはそれ以上の最終パスによって研磨される。現像サイクルが完了して、未硬化材料が除去され、そして得られた印刷版に適切なレリーフ深さが提供された後、圧力ローラー52は格納されて、現像媒体が研磨サイクルで前駆体22と接触しないように、圧力ローラー52とドラム56との間のニップ86に間隙が生じる。圧力ローラー52の回転、ならびにウェブ32およびホイル54の移動も停止させることができる。研磨サイクルを開始するために、ドラム56は印刷版22のリード部分24をホームポジションに戻す。ノズルアセンブリ80は、得られた印刷版の表面28を平滑化するか、または研磨するために、ドラム56上で移動する印刷版前駆体22の表面28上に、加熱された空気の噴射を衝突し続ける。いくつかの実施形態において、加熱空気の噴射の衝突の研磨サイクルによって、凹状部分および凸状部分を含むレリーフ表面上の1つまたはそれ以上のマークが排除、最小化または低減される。いくつかの他の実施形態において、加熱空気の噴射の衝突の研磨サイクルによって、表面28の凸状部分の最上表面のマークが排除、最小化または低減される。現像媒体とその後の接触がない前駆体の表面上への加熱された空気の噴射の衝突は、研磨サイクル(または平滑化サイクル)である。研磨サイクルは、所望のレリーフ表面外観および特徴を達成するために必要なだけ、1回またはそれ以上繰り返すことができる。
【0063】
感光性要素
一実施形態において、感光性要素は、可撓性基材と、基材上に据え付けられた組成物層とを含む。組成物層は、部分的に液化可能な基材上の少なくとも1つの層である。一実施形態において、感光性要素は、フレキソ印刷版としての使用に適切なエラストマー印刷要素である。もう1つの実施形態において、感光性要素は、活版印刷に適切な凸版印刷版である。もう1つの実施形態において、感光性要素は、グラビア様印刷に適切な凸版印刷版である。基材上の少なくとも1つの層は、好ましくは感光性層、そして最も好ましくは、エラストマー組成物の光重合性層であり、感光性層は化学線によって選択的に硬化することができる。本明細書に使用される場合、「光重合性」という用語は、光重合性、光架橋性または両方である系を包含する。組成物層が可撓性基材上に2つ以上の感光性層を含んでなる場合、各感光性層の組成物は、他の感光性層と同一であるか、または異なることができる。
【0064】
ほとんどの実施形態において、光重合性組成物は、印刷に適切なレリーフを形成するために、像様露光が可能であり、そして熱処理が可能である固体層を形成する。本明細書に使用される場合、「固体」という用語は、一定の体積および形状を有し、その体積または形状を変更する傾向のある力に抵抗する層の物理的状態を指す。光重合性組成物の層は、約5℃〜約30℃の温度である室温で固体である。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)していても、未重合であっても、または両方であってもよい。
【0065】
特記されない限り、「光重合性要素」、「印刷版前駆体」および「印刷版」という用語は、印刷に適切ないずれかの形状の要素または構造を包含し、限定されないが、フラットシート、板、シームレス連続形、円筒形、プレーツ−オン−スリーブス(plates−on−sleeves)およびプレーツ−オン−キャリアズ(plates−on−carriers)が含まれる。光重合性要素から得られる印刷版は、フレキソ印刷および活版印刷などの凸版印刷のための最終印刷用途を有することが考えられる。光重合性要素は、本明細書中、感光性要素として記載されてもよく、そして凸版印刷版の前駆体と考えられることができる。
【0066】
感光性組成物の固体層は、熱処理時に部分的に液化することが可能である。すなわち、熱処理の間、組成物の未照射部分、すなわち、未硬化部分は、適切なプロセスまたは現像温度で軟化、溶融または流動しなければならないが、通常の貯蔵の間、低温流れ、すなわち、寸法変化を受けない。組成物層の外部表面の少なくとも一部分は、層の一部分が、液化、軟化、または溶融もしくは流動するために十分な温度まで加熱される。光重合性要素が光重合性層上に1つまたはそれ以上の追加の層を含む場合、光重合性層のための容認できる現像温度範囲で、1つまたはそれ以上の追加の層の除去も可能であることが好ましい。
【0067】
感光性層は、少なくとも1種のモノマーおよび光重合開始剤、ならびに任意選択的に結合剤を含む。少なくとも1種のモノマーは、少なくとも1個の末端エチレン基を有する、付加重合性エチレン系不飽和化合物である。感光性層で使用可能なモノマーは当該技術において周知であり、そして単官能基アクリレートおよびメタクリレート、多官能基アクリレートおよびメタクリレート、ならびにポリアクリロイルオリゴマーが含まれる。モノマーのさらなる例は、米国特許第4,323,636号明細書、同第4,753,865号明細書および同第4,726,877号明細書に見ることができる。モノマーの混合物が使用されてもよい。
【0068】
光重合開始剤は、化学線への露光時にフリーラジカルを発生する化合物である。既知の種類のいずれの光重合開始剤、特にフリーラジカル光重合開始剤が使用されてもよい。あるいは、光重合開始剤は、その1種が、放射線によって活性化された感光剤によって生じるフリーラジカルを提供する化合物の混合物でもよい。
【0069】
任意選択の結合剤は、予め形成されたポリマーであり、露光前のモノマーおよび光重合開始剤のためのマトリックスとして役に立ち、そして露光前および露光後のフォトポリマーの物理的特性の要因である。一実施形態において、任意選択の結合剤はエラストマーである。エラストマー結合剤の非限定的な例は、Aが非エラストマーブロック、好ましくはビニルポリマー、最も好ましくはポリスチレンを表し、そしてBがエラストマーブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表す、A−B−A型ブロックコポリマーである。使用されてもよい他の適切な感光性エラストマーとしては、米国特許第5,015,556号明細書および同第5,175,072号明細書に記載されるものなどのポリウレタンエラストマーが含まれる。モノマーまたはモノマーの混合物は、透明で曇りのない感光性層が生じる程度に結合剤と親和性がなければならない。
【0070】
感光性層への追加の添加剤は、着色剤、加工助剤、酸化防止剤および抗オゾン化剤が含まれる。
【0071】
感光性要素は、基材の反対側の感光性層側に1つまたはそれ以上の追加の層を含んでもよい。追加の層の例には、限定されないが、剥離層、キャッピング層、エラストマー層、レーザー放射感応性層、化学線不透明層、バリア層およびそれらの組み合わせが含まれる。1つまたはそれ以上の追加の層は、好ましくは、使用される感光性要素のための容認できる現像温度の範囲で、現像媒体との接触によって、全体または一部分で除去可能である。1つまたはそれ以上の追加の他の層は、感光性組成物層をカバーすることができるか、または部分的にのみカバーすることができる。感光性組成物層を部分的にのみカバーする追加の層の例は、像様適用、例えば、化学線ブロック材料またはインクのインクジェット適用によって形成されるマスキング層である。
【0072】
本発明の感光性要素は、感光性要素の最上層上に一時的カバーシートをさらに含んでもよい。カバーシートの1つの目的は、貯蔵および取り扱いの間に感光性要素の最上層を保護することである。最終用途次第で、カバーシートは画像形成の前に除去されても、または除去されなくてもよいが、現像の前に除去される。カバーシートのための適切な材料は、当該技術において周知である。
【0073】
基材は耐引裂き性であるように選択され、そして、例えば、基材上で形成される組成物層の液化温度より高い、非常に高い融点を有さなければならない。基材のための材料は限定されないが、そして、ポリマーフィルム、フォーム、布、ならびにアルミニウムおよび鋼などの金属から選択することができる。基材は、非反応性であり、プロセス条件を通して安定したままであるフィルムを形成する、ほとんどいずれのポリマー材料であることが可能である。適切なフィルム支持体の例には、セルロースフィルム、ならびにポリオレフィン、ポリカーボネートおよびポリエステルなどの熱可塑性材料が含まれる。支持体の形状は限定されない。支持体は、シートの形態、またはスリーブなどの円筒状の形態でもよい。スリーブは、単層または複数の層の可撓性材料から形成されてもよい。ポリマーフィルム製の可撓性スリーブは、紫外線放射に典型的に透明であり、それによって、円筒状印刷要素の床を構築するためのバックフラッシュ露光に適合するため、好ましい。複数層状スリーブも容認でき、そして可撓性材料の層の間に接着剤層またはテープを含んでもよい。スリーブは、ニッケルまたはガラスエポキシなどの非透明の化学線ブロック材料から製造されてもよい。スリーブは、典型的に、10〜80ミル(0.025〜0.203cm)以上の壁厚を有する。円筒の形態のための好ましい壁厚は、10〜40ミル(0.025〜0.10cm)である。感光性要素の基材は、約0.01mm〜約0.38mmの厚さを有する。放射線硬化性組成物層の厚さは約0.35mm〜約7.6mmであり、好ましい厚さは約0.5mm〜3.9mm(20〜155ミル)である。
【0074】
感光性要素は、要素を化学線に像様露光することによって、熱現像のために調製される。像様露光の後、感光性要素は、放射線硬化性組成物層の露光された領域で硬化部分を含有し、そして放射線硬化性組成物層の未露光の領域の未硬化部分を含有する。像様露光は、画像保持マスクを通して感光性要素を露光することによって実行される。画像保持マスクは、印刷される対象を含有する白黒の透明ポジまたはネガであってよいか、または組成物層上でレーザー放射感応性層によって形成されるその場マスク、または当該技術で既知の他の手段であってよい。像様露光は、真空フレームで実行することができるか、または大気酸素の存在下で実行されてもよく、または不活性気体および大気酸素未満の酸素の濃度を有する制御された環境で実行されてもよい。露光時に、マスクの透明領域は付加重合または架橋を生じさせ、化学線不透明領域は非架橋のままにする。露光は、支持体または背面露光層(床)まで露光された領域を架橋するために十分な期間である。像様露光時間はバックフラッシュ時間より非常に長く、そして数分から何十分の範囲に及ぶ。米国特許第5,262,275号明細書、米国特許第5,719,009号明細書、米国特許第5,607,814号明細書、米国特許第5,506,086号明細書、米国特許第5,766,819号明細書、米国特許第5,840,463号明細書および欧州特許出願公開第0741330A1号明細書に開示されるようなダイレクト−トウ−プレート(direct−to−plate)画像形成に関して、画像保持マスクは、赤外線レーザー露光エンジンを使用するレーザー放射感応性層によってその場で形成される。
【0075】
化学線源は、紫外線、可視および赤外線波長領域を包含する。特定の化学線源の適合性は、感光性要素からフレキソ印刷版を調製する際に使用される開始剤および少なくとも1種のモノマーの感光性によって決定される。ほとんどの共通のフレキソ印刷版の好ましい感光性は、それらがより良好な室内灯安定性を与えるため、UVおよび深可視領域のスペクトルにある。放射線に露光した組成物層の部分は、化学的に架橋および硬化する。未照射(未露光)の組成物層の部分は硬化せず、硬化された照射部分よりも低い溶融または液化温度を有する。次いで、像様露光された感光性要素は、吸収性材料によって容易に熱現像されて、レリーフパターンを形成する。
【0076】
全背面露光、いわゆるバックフラッシュ露光は、支持体に隣接するフォトポリマー層の予め定められた厚さを重合させるために、像様露光の前または後に実行されてもよい。フォトポリマー層のこの重合部分は、床と示される。床厚さは、露光時間、露光源などで変化する。この露光は、拡散して行われるか、または直接的であってもよい。像様露光のために適切な全ての放射線源が使用されてもよい。露光は、一般に、10秒〜30分である。
【0077】
マスクを通してのUV放射線への全露光の後に、感光性印刷要素は上記の通り、熱現像され、光重合性層の未重合領域を除去し、それによって、レリーフ像が形成される。熱現像工程は、光重合性層の化学線に露光されなかった領域、すなわち、未露光領域または未硬化領域において少なくとも光重合性層を除去する。エラストマーキャッピング層を除いて、典型的に、光重合性層上で存在してもよい追加の層は、光重合性層の重合された領域から除去されるか、または実質的に除去される。熱現像の後、光重合を完了し、そしてフレキソ印刷版の表面に粘着防止化するためのいずれかの順序で、フレキソ印刷版は、後露光および/または化学的もしくは物理的に後処理されてもよい。
【0078】
本発明は、上記の通り、光重合性組成物の固体層を有する感光性要素に特に適用可能である。本明細書に開示される凸版印刷版を形成するために適切な光重合性組成物の固体層を有する感光性要素。
【0079】
本明細書に使用される場合、「固体」という用語は、一定の体積および形状を有し、その体積または形状を変更する傾向のある力に抵抗する層の物理的状態を指す。感光性要素の光重合性層は、一般に室温で固体であると考えられる。室温より高い温度で、本明細書に開示される(未硬化の)光重合性層を有する感光性要素は、典型的に、75℃および0.5Hzにおいて約15,000,000〜約45,000,000cPの範囲、そして100℃および0.5Hzにおいて約5,000,000〜約15,000,000cPの範囲の未硬化光重合性層の動粘度を示す。5,000,000〜10,000,000cPの範囲の粘度は、コーキングコンパウンドと同等の粘稠性を有する。いくつかの場合、いくつかの光重合性材料は、150℃で約856,000cPの粘度を示す。1センチポアズ(cP)が0.001パスカル秒(Pa−秒)であることに注意すべきである。センチポアズはcPとして適切に省略されるが、cps、cpおよびcPsの別の略語も一般に見られる。本明細書に記載されるように、固体光重合性層の外部表面の加熱によって、固体層の未硬化部分の軟化、溶融、流動または液化が生じ、それによって上記された範囲の動粘度を示す。本方法および装置は、米国特許第4,197,126号明細書に開示されるように、気体流れによって除去される、室温〜93℃で100〜10000cpsの粘度を有する液体感光材料を使用することを包含しない。100〜10000cpsの範囲の粘度は、自動車油および糖蜜と同等である粘稠性を有する。本発明に従って軟化、溶融または液化し、かつ75℃および0.5Hzにおいて約15,000,000〜約45,000,000cPの範囲、そして100℃および0.5Hzにおいて約5,000,000〜約15,000,000cPの範囲の未硬化光重合性層の動粘度を有する固体光重合性層の未硬化部分を除去する力は、室温〜93℃で100〜10000cpsの粘度を有する未硬化液体部分の除去と実質的に異なる。ピーナッツバターまたはラードと同等の粘稠性を有する、150℃で856,000cP程度の粘度を有する光重合性材料の未硬化部分の除去の場合さえ、力は、室温〜93℃の温度で10000cpsまでの粘度を有する未硬化液体部分の除去と有意に異なる。
【0080】
本発明の目的のために、現像媒体による除去を可能にするために高温(例えば、約40℃〜約230℃)を受けた時に少なくとも軟化し、その粘度が減少する前駆体の固体光重合性組成物層の未照射部分(すなわち未硬化部分)に関する「溶融」、「液化」、「軟化」、「流動」という用語は、実質的に等しいと考えられ、そして100,000cPより高い、ほとんどの実施形態において500,000cPより高い、いくつかの実施形態において800,000cPより高い、いくつかの他の実施形態において1,000,000cPより高い、そしてなお他の実施形態において5,000,000cPより高い粘度を有する加熱された未照射(すなわち、未硬化)部分を表すと考えられる。
【実施例】
【0081】
実施例1
以下の実施例は、感光性要素の外部表面のノズルアセンブリ加熱、および要素を現像媒体と接触させることによって、未硬化光重合性材料が感光性要素から除去されることを実証する。
【0082】
使用された感光性要素は、CYREL(登録商標)フレキソ印刷要素、タイプ67DFM(67ミル)、45DFH(45ミル)および45DFQ(45ミル)であった。(各タイプの後のカッコに示される厚さは、光重合性層およびベース支持体の全体の厚さを表す)。その場マスク像は、CYREL(登録商標)Digital Imagerによる赤外の感応性、化学線放射線層の選択的除去によって各要素上で形成された。マスク像は全ての要素に関して同一であって、ラインワークおよびスクリーン領域を含んだ。要素は、表1で示される時間で、支持体を通しての全露光のため、および空気中でその場マスクを通しての像様露光のためにCYREL(登録商標)露光ユニット、2000ECLF上で365nmの紫外線放射に露光された。
【0083】
感光性要素は、熱現像の間に要素を担持するための支持体ドラム、要素の外部表面と接触させて多層ウェブを担持することが可能なホットローラー、およびその空気出口が90度で配向されたノズル送風装置アセンブリを有する実質的に図1に示す熱現像試験ベッド装置で処理された。多層ウェブは、吸収性材料としてポリエステル不織布、および支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルム(0.5ミル)から構成され、それらはホットローラーに個々に供給された。それぞれ2つの材料のウェブは、支持体が吸収性材料に隣接し、そして感光性要素の外部表面の反対側になり、かつ不織布は感光性要素の外部表面と接触するようにホットローラーで接触し、ニップで現像媒体を提供した。その後、多層ウェブ(または現像媒体)は1つのウェブとして巻取りまたは廃物ロールまで移動した。
【0084】
それぞれ要素は、要素の外部表面(すなわち、ベース支持体の反対側表面)が空気ノズルアセンブリ、および現像媒体を運搬するホットローラーに面するように支持体ドラムに配置され、固定された。全ての要素は、以下に記載される全てのパスで同一プロセス条件で熱処理された。要素を運搬するドラムは30インチ/分で回転した。空気ノズルアセンブリは、10標準立方フィート/分(SCFM)の送風装置体積および600°Fのノズル出口の温度で空気を発生させた。空気ノズルアセンブリの出口はスロット(0.1インチの開口部)であり、要素の外部表面から3mmで配置された。パスの数は10であった。出口の空気の速度は20メートル/秒であった。空気ノズルアセンブリの熱流は47キロワット/mであった。ホットローラーは、赤外線の加熱バルブによって200℃の温度まで外部加熱された。実施例1A、1B、1Cのプレートに関して、熱プロセッサーの印刷要素のパスは、要素の外部表面を加熱すること、要素を現像媒体のウェブと接触させ、未重合の部分を除去すること、および要素から現像媒体を分離することから構成された。実施例1A、1Bおよび1Cのプレート要素は、全て、ノズルアセンブリの出口から放出する空気によって予熱され、ホットローラーに担持された現像媒体と接触し、そして溶融した光重合性材料の部分(すなわち、光重合性層の未露光の部分)を運搬する現像媒体から分離された。比較1A、1B、1Cのプレートに関して、熱プロセッサーの印刷要素のパスは、空気ノズルアセンブリで要素の外部表面を加熱することから構成された。比較1A、1Bおよび1Cのプレート要素は、全て、ノズルアセンブリの出口から放出する空気によって加熱されたが、現像媒体とは接触しなかった。
【0085】
示された数のパスの後、プレート上でいくつかの位置でレリーフ深さを測定し、平均し、そして各プレートの平均レリーフ深さを表1に記録された。
【0086】
【表1】
【0087】
一般には、未重合のポリマーは、凸版印刷に効果的に機能する得られた印刷版においてレリーフ構造を生じさせるために、光重合性層の厚さの半分の深さまで前駆体の光重合性層から除去されなければならない。この結果は、感光性要素の外部表面に衝突する本明細書に記載のノズルアセンブリからの空気は、単独では、レリーフ表面を生じさせるために感光性要素から溶融光重合性材料を排除するか、除去するために不十分であることを明確に示す。
【0088】
実施例2
以下の実施例は、加熱された空気の噴射を発生させるノズルアセンブリによって、感光性要素からの未硬化光重合性材料を加熱すること、および加熱されたロールによって担持された現像媒体と接触させることによって、加熱された未硬化材料を除去することを実証する。加熱された空気の噴射は、除去のために光重合性材料を十分に軟化、溶融または液化するため、少なくとも約10キロワット/mでなければならない熱流を有する。
【0089】
使用された感光性要素は、CYREL(登録商標)フレキソ印刷要素、タイプ67DFM(67ミル)であった。(後のカッコに示される厚さは、光重合性層およびベース支持体の全体の厚さを表す)。感光性要素は80インチ×50インチのサイズを有した。要素は、熱現像前の背面露光のため、14.3ミリワット/cmのエネルギー密度で24秒間床を形成するために、CYREL(登録商標)露光ユニット、3000ETL上で、支持体を通して空気中、365nmで紫外線放射に露光された。像様露光は与えられなかった。
【0090】
感光性要素は、熱現像の間に要素を担持するための支持体ドラム、要素の外部表面と接触させて多層ウェブを担持することが可能なホットローラー、および要素の外部表面に衝突するためにその空気出口が90度で配向されたノズル送風装置アセンブリを有する実質的に図1に示す熱現像フルスケール装置で処理された。候補の装置は、フルサイズの感光性要素を凸版印刷版へと熱現像することが可能だった。多層ウェブは、吸収性材料としてポリエステル不織布、および支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルム(0.5ミル)から構成され、それらはホットローラーに個々に供給された。それぞれ2つの材料のウェブは、支持体が吸収性材料に隣接し、そして感光性要素の外部表面の反対側になり、かつ不織布は感光性要素の外部表面と接触するようにホットローラーで接触し、ニップで現像媒体を提供した。その後、多層ウェブ(または現像媒体)は1つのウェブとして巻取りまたは廃物ロールまで移動した。現像媒体ウェブは、前駆体の熱現像プロセスのために通常使用されるレベルで、(ニップ86から負荷ロール66まで)張力下にあった。
【0091】
それぞれ要素は、要素の外部表面(すなわち、ベース支持体の反対側表面)が空気ノズルアセンブリに面し、そしてホットローラーが現像媒体を運搬するように支持体ドラムに配置され、固定された。下記の表3Aに示す条件のノズルアセンブリを用いて、各試験に関して以下のプロセス条件で要素を熱処理した。空気ノズルアセンブリの出口は、要素の外部表面から約3mmで全ての試験に関して同一距離で配置された複数の開口部の線形配列を有するスロットであった。空気ノズルアセンブリは、示されるような送風装置体積およびノズルの出口での温度で空気を発生させた。ノズル圧力は、ノズルアセンブリのプレナムの中間に配置されたマグニヘリック(magnihellic)ゲージから決定された。空気の速度は、スロットの複数の開口部の全面積に基づき、出口の空気の温度、体積、圧力から算出された。要素を運搬する回転ドラムの表面速度は90インチ/分であった。ドラムの表面の温度は70°F(21.1℃)に維持された。ホットローラーは、赤外線を使用する加熱パネルによって、390°F(198.9℃)の温度まで外部加熱された。特記されない限り、要素上でのホットロールの負荷は、85ポンド/線形インチであった。
【0092】
この実施例に関して、熱プロセッサーの印刷要素のパスは、ノズルアセンブリから放出する加熱された空気の噴射によって要素の外部表面を加熱すること、加熱されたニップロールによって担持された現像媒体のウェブと要素を接触させ、未重合の部分を除去すること、および要素から現像媒体を分離し、溶融した光重合性材料の部分(すなわち、光重合性層の未硬化または未露光の部分)を除去することから構成された。
【0093】
【表2】
【0094】
各試験の結果は下記の表3Bに報告する。各試験に関して、加熱された空気の噴射を放出するノズルアセンブリの条件は確立され、そして感光性要素を担持したドラムは、加熱された空気の噴射、および担持された現像媒体を要素の外部表面と接触させる加熱されたロールによるニップを通過して回転した。各試験の不合格または合格は、それぞれ、感光性要素に固着するか、または固着しない現像媒体のウェブの発生に基づいた。いくつかの場合、2つ以上の感光性要素が、特定の試験条件の設定で熱処理された。未硬化光重合性材料が、13(またはそれ未満)のパスにおいて、ウェブが固着せずに、空気ノズルによる加熱、および現像媒体との接触によって、要素の床まで除去された場合、試験のための熱現像の条件は、少なくとも容認できた。典型的に、床に達するために、未硬化光重合性材料の約25ミルが最後のパスの終了時までに要素から除去された。未硬化光重合性材料が空気ノズルによる加熱および現像媒体との接触によって除去された時に、ウェブが感光性要素に固着した場合、試験のための熱現像の条件は容認できなかった。現像ウェブが感光性要素に固着して終わった試験は、典型的に、最後、または13回目のパスの近くで生じた。未硬化光重合性材料は、未硬化および硬化フォトポリマー材料間の界面で、床の上部表面(支持体の反対側)またはその付近で、除去するのが困難となる可能性がある。界面において、フォトポリマー材料は部分的に硬化し、したがって、界面の材料を軟化、溶融、流動または液化させるために十分に表面が加熱されない場合、現像媒体は特に固着する傾向を有する可能性がある。熱現像の他の全ての条件は一定に保持され、そして加熱された空気の噴射に影響を及ぼす条件のみが変更されたため、感光性要素に固着するウェブは、加熱された空気の噴射によって、感光性要素の表面に伝達された熱エネルギーの速度である熱流が不十分だったことを示す指標として使用された。
【0095】
表3Bに報告される測定された熱流は、ドラムの外部表面に固定された一片の断熱材料上へ据え付けられた熱流センサーを配置することによって、フルスケールユニットに関してと同一または実質的に同一条件で操作された試験ベッドユニット(幅6インチ)上で測定された熱流であった。熱流センサーは、Omega Engineering(Stamford,CT,USA)からのタイプK TC(熱電対)を備えた6.5μV/BTU/FtHrセンサーであるモデルHFS−4であった。この熱流センサーで使用するために適切である断熱体は、Cotronics Corporation(Brooklyn,NY,USA)からの厚さ6.35mmであり、かつ約0.40W/mKの熱伝導率を有する、機械加工可能なガラスセラミック複合材、タイプ914である。
【0096】
表3Bに報告される算出された熱流は、スロットから放出する空気の噴射の速度および加熱された空気の噴射の温度に基づく、複数の孔または開口部から形成されたスロットを有する空気ノズルアセンブリのための方程式EqnBから算出された熱流であった。
【0097】
測定された熱流は、感光性要素の外部表面を通って、加熱された空気の噴射によって伝達される実際の熱流である。いくつかの場合(試験2)、測定された熱流と算出された熱流との間に比較的大きな差異があった。これは、算出された熱流の方程式が作成された、記載された範囲外である温度および速度に関する値における試験の操作条件によるものと考えられる。
【0098】
【表3】
【0099】
試験2は、10kW/m未満の熱流を有する加熱された空気の噴射によって前駆体を加熱することは、現像媒体による除去のために未硬化材料を加熱するためには不十分であり、そして熱流は、特に、前駆体の床(すなわち硬化層)の付近の未硬化材料の除去のために不十分であったことを示した。加熱された空気の温度およびノズルアセンブリのスロットを出る空気の速度は両方とも、算出された熱流に基づく所望の範囲外であり、そして測定された熱流によって、ノズルアセンブリの条件の組み合わせによって10kW/m未満の熱流による加熱された空気の噴射が生じたことが確認された。
【0100】
試験3Aおよび3Bは、10kW/m未満の熱流を有する加熱された空気の噴射によって前駆体を加熱することは、現像媒体による除去のために未硬化材料を加熱するためには不十分であり、そして熱流は、特に、前駆体の床(すなわち硬化層)の付近の未硬化材料の除去のために不十分であったことを示した。加熱された空気の温度のみが算出された熱流に基づく所望の範囲外であった。それがおそらく測定された熱流から熱流において差し引くものの理由である。現像媒体を担持するニップロールの負荷が増加した場合でさえ、加熱された空気の噴射の衝突によって送達される熱流は、前駆体上で未硬化材料を(予)加熱するためになお不十分であった。
【0101】
試験1Aおよび1Bは、現像媒体が試験1Aでは固着し、試験1Bでは固着しなかったことから、14kW/mの熱流を有する加熱された空気の噴射で前駆体を加熱することは、現像媒体による除去のために未硬化材料を加熱するために十分なボーダーラインであったことを示した。測定された熱流によって、算出された熱流を確認した。試験1Aおよび1Bに関して、出口における加熱された空気の噴射の温度は、出る空気の速度が容認できたとしても非常に低く、そしてその組み合わせが前駆体に衝突する容認できる熱流を提供した。14kW/mの加熱された空気の噴射を生じさせるが、末端の空気温度が低いこれらの条件または実質的に同一条件のノズルアセンブリの操作は、他の種類の光重合性印刷版前駆体の熱現像に関しては、いくつかの場合で繰り返し不合格となる可能性があり、そして他の場合で繰り返し合格する可能性がある。
【0102】
試験4および5は、10kW/m2より高い、すなわち、少なくとも約17kW/m2の熱流を有する加熱された空気の噴射によって前駆体を加熱することは、現像媒体による除去のために未硬化材料を加熱するために十分であり、そして熱流は、特に、前駆体の床(すなわち硬化層)の付近の未硬化材料の除去およびウェブの固着を回避するために十分であったことを示した。空気温度および空気速度の組み合わせは、未硬化材料を軟化、溶融、流動または液化するため、そして現像媒体による有効な除去を可能にするために適切な加熱された空気の噴射の熱流を前駆体に提供するために有用な境界内であった。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1.外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製する方法であって、(a)前記層の一部が液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで前記外部表面を加熱する工程と、および、(b)前記感光性要素を現像媒体と接触させ、前記現像媒体によって前記液化材料を除去する工程と、を含んでなり、前記加熱工程が、約10〜約35メートル/秒の速度および約110℃〜約350℃の温度で、かつ15秒未満の滞留時間で10キロワット/m2(kW/m2)以上の熱流で前記外部表面と衝突する、ノズルアセンブリから放出する加熱された流体の噴射を使用することによって実行される、凸版印刷版を調製する方法。
2.前記流体が気体である、1に記載の方法。
3.前記熱流が10kW/m2から70kW/m2以内である、1に記載の方法。
4.前記ノズルアセンブリが、以下の関係
熱流=−32.5(kW/m2)+[0.687(kW−秒/m3)×速度(m/秒)]+[0.203(kW/m2℃)×温度(℃)]
(式中、前記速度は15〜30メートル/秒であり、かつ前記温度は120℃〜330℃である)から決定される熱流を有する前記加熱された気体の噴射を放出するために適応するスロットを形成するアパーチャを含んでなる、1に記載の方法。
5.前記ノズルアセンブリが、以下の関係
熱流=−33.3(kW/m2)+[1.77(kW−秒/m3)×速度(m/秒)]+[0.189(kW/m2℃)×温度(℃)]
(式中、前記速度は15〜30メートル/秒であり、かつ前記温度は120℃〜330℃である)から決定される熱流を有する前記加熱された気体の噴射を放出するために適応する複数の開口部を形成するアパーチャを含んでなる、1に記載の方法。
6.前記加熱された気体の噴射が15〜30メートル/秒の速度で放出する、1に記載の方法。
7.前記加熱された気体の噴射が17〜27メートル/秒の速度で放出する、1に記載の方法。
8.前記加熱された気体の噴射が120℃〜330℃の温度で放出する、1に記載の方法。
9.前記気体噴射が170℃〜320℃の温度で放出する、1に記載の方法。
10.前記熱流が20〜65kW/m2である、1に記載の方法。
11.前記滞留時間が2〜14秒である、1に記載の方法。
12.前記外部表面に衝突した後に前記気体の一部を回収すること、および前記回収された気体を前記ノズルアセンブリに返すことをさらに含んでなる、1に記載の方法。
13.前記ノズルアセンブリの出口から前記要素の前記外部表面への間隙が1〜15ミリメートルである、1に記載の方法。
14.前記間隙が2〜9mmである、13に記載の方法。
15.前記気体が空気である、2に記載の方法。
16.前記衝突工程が、前記外部表面の接線に対して45〜135度の角度で前記気体噴射を配向することをさらに含む、1に記載の方法。
17.前記衝突工程が、前記外部表面の接線に対して80〜100度の角度で前記気体噴射を配向することをさらに含む、1に記載の方法。
18.(c)前記表面と接触して前記現像媒体を担持するローラーによって、前記外部表面を150℃〜250℃の温度まで加熱する工程をさらに含んでなる、1に記載の方法。
19.前記光重合性層のレリーフ表面を形成するために十分に液化材料を除去するために、順番に工程(a)、(c)および(b)を2回以上繰り返す工程をさらに含んでなる、18に記載の方法。
20.工程(a)および(c)を2回以上繰り返し、前記光重合性層のレリーフ表面を形成するために十分に液化材料を除去する工程をさらに含んでなる、1に記載の方法。
21.外部表面を有し、かつ部分的に液化可能な光重合性組成物の層を含んでなる感光性要素から、凸版印刷版を調製するための装置であって、前記層の一部を液化し、液化材料を形成するために十分な温度まで前記外部表面を加熱するための手段と、および、前記感光性要素を現像媒体と接触させ、前記現像媒体によって前記液化材料を除去するための手段とを含んでなり、前記加熱手段が、約10〜約35メートル/秒の速度および約110℃〜約350℃の温度で、ノズルアセンブリから放出する加熱された気体の噴射を有し、前記噴射が、15秒未満の滞留時間で10キロワット/m2より高い熱流で前記外部表面と衝突する装置。
22.前記接触手段が、前記現像媒体を担持するためのローラーアセンブリを含んでなる、21に記載の装置。
23.前記ローラーアセンブリが、150℃〜250℃の温度まで加熱されるローラーを含む、22に記載の装置。
24.前記ノズルアセンブリが前記要素を予熱し、前記ローラーアセンブリが、前記ノズルの前記出口から1.27cm〜7.62cmの距離で前記ノズルアセンブリに隣接して位置する、22に記載の装置。
25.前記ノズルアセンブリが、スロットを形成するアパーチャを有するチャンバーを含んでなる、21に記載の装置。
26.前記ノズルアセンブリが、孔の配列を形成するアパーチャを有するチャンバーを含んでなる、21に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10