特許第6235500号(P6235500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000002
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000003
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000004
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000005
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000006
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000007
  • 特許6235500-車両の運転支援装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235500
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20171113BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B60T7/12 F
   B60T17/18
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-10881(P2015-10881)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-135620(P2016-135620A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中川 友佑
(72)【発明者】
【氏名】石田 康人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽次
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−001567(JP,A)
【文献】 特表平10−507145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 − 8/96
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の起動スイッチがオンである状況下で開始条件が成立したときに、車両の車体速度が目標速度を超えないように同車両に付与する制動力を調整する運転支援制御を開始する制動制御部を備えた車両の運転支援装置において、
車両の動力源が駆動しているときでも同動力源から車輪に動力が伝達されない状態をニュートラル状態とした場合、
前記起動スイッチがオンである状況下で前記ニュートラル状態が検出されている場合、同ニュートラル状態の継続時間が判定時間以上になったときに警告する警告制御を実施する警告制御部を備えるものであり、
車両には、手動変速機と、前記動力源から前記手動変速機への動力伝達を遮断する際に操作されるクラッチペダルと、前記手動変速機の変速段を変更する際に操作されるシフトレバーとが設けられ、
前記手動変速機は、前記シフトレバーがニュートラル位置に位置しているときには、前記動力源から前記車輪への動力伝達を遮断するように構成されており、
前記ニュートラル状態とは、前記クラッチペダルが操作されていること、及び、前記シフトレバーが前記ニュートラル位置に位置することのうち少なくとも一方が成立している状態であり、
前記警告制御部は、
前記起動スイッチがオンである状況下で前記クラッチペダルが操作されていることが検出されている場合には、同クラッチペダルが操作されている状態の継続時間が第1の判定時間以上になったときに前記警告制御を実施し、
前記起動スイッチがオンである状況下で前記シフトレバーが前記ニュートラル位置に位置することが検出されている場合には、同シフトレバーが前記ニュートラル位置に位置する状態の継続時間が第2の判定時間以上になったときに前記警告制御を実施する
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記第1の判定時間は、前記第2の判定時間よりも長い
請求項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記警告制御部は、
前記起動スイッチがオンである状況下で、車両の車体速度が計測開始速度に達した以降における、前記クラッチペダルが操作されている状態の継続時間を計測し、同継続時間が前記第1の判定時間以上になったときに前記警告制御を実施する
請求項又は請求項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記警告制御部は、前記起動スイッチがオンで、前記運転支援制御の実施が開始された時点以降における、前記クラッチペダルが操作されている状態の継続時間を計測し、同継続時間が前記第1の判定時間以上になったときに前記警告制御を実施する
請求項又は請求項に記載の車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両に付与する制動力を調整する運転支援制御を実施する車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の制動装置を作動させることにより、車両の車体速度が目標速度を超えないように同車両に付与する制動力を調整する運転支援制御の一例である車両降坂制御を実施する運転支援装置が記載されている。この運転支援装置では、手動式の起動スイッチがオンである状況下で、車体速度が開始速度以上になるなどして開始条件が成立したときに、車両降坂制御が開始される。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の運転支援装置にあっては、車両に設けられている自動変速機の変速段が第1速用の変速段又は後退用の変速段であるときに限って車両降坂制御の実施が許可されている。その一方で、起動スイッチがオンである状況下で、自動変速機の変速段が第1速用の変速段及び後退用の変速段以外の変速段であるときには、当該変速段が非推奨の変速段である旨を運転者に警告する警告制御が実施されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−507145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、手動変速機を備える車両(以下、「MT車」ともいう。)用の運転支援装置の開発が進められている。MT車では、運転者がクラッチペダルを操作しているとき、及び、シフトレバーがニュートラル位置に位置しているとき、エンジンなどの動力源が駆動している最中であっても同動力源から車輪に動力が伝達されない。この場合、MT車にエンジンブレーキが作用しなかったり、運転者がアクセル操作を行っても車両を加速させることができなかったりする。そのため、MT車用の運転支援装置にあっては、上記起動スイッチがオンである状況下で、クラッチペダルが操作されていたり、シフトレバーがニュートラル位置に位置していたりする場合には、動力源から車輪に動力を伝達することができないニュートラル状態である旨を運転者に警告する警告制御を実施することが好ましい。
【0006】
しかしながら、MT車にあっては、手動変速機の変速段が変更される場合、運転者によってクラッチペダルが操作されたり、運転者によるシフトレバーの操作によって同シフトレバーがニュートラル位置を通過したりする。すなわち、変速段を変更するための運転者による正規の車両操作中でもニュートラル状態になることがあり、こうした場合でも警告制御が実施されることとなる。この場合、変速段を変更するための運転者による正規な車両操作に対して警告がなされることとなり、運転者に不快感を与えてしまう。
【0007】
なお、運転者が正規な車両操作を行っている最中に一時的に上記ニュートラル状態になりうる車両であれば、MT車以外の他の車両であっても同様な課題が生じうる。
本発明の目的は、正規な車両操作を運転者が行っているときでの警告制御の不要な実施を抑制することができる車両の運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両の運転支援装置は、手動式の起動スイッチがオンである状況下で開始条件が成立したときに、車両の車体速度が目標速度を超えないように同車両に付与する制動力を調整する運転支援制御を開始する制動制御部を備えた装置を前提としている。そして、車両の動力源が駆動しているときでも同動力源から車輪に動力が伝達されない状態をニュートラル状態とした場合、車両の運転支援装置は、起動スイッチがオンである状況下でニュートラル状態が検出されている場合、同ニュートラル状態の継続時間が判定時間以上になったときに警告する警告制御を実施する警告制御部を備える。
【0009】
正規の車両操作を運転手が行う場合、ニュートラル状態になったとしても、そのニュートラル状態の継続時間は短いと推測することができる。そこで、上記構成によれば、起動スイッチがオンである状況下で、ニュートラル状態の継続時間が判定時間以上になっても同ニュートラル状態が継続されているときには、ニュートラル状態の継続時間が長すぎると判断することができ、運転者に対して警告がなされる。その一方で、ニュートラル状態の継続時間が判定時間に達する前に同ニュートラル状態が解消されたときには、正規の車両操作を運転手が行っている可能性があると判断することができるため、運転者に対して警告がなされない。したがって、正規な車両操作を運転者が行っているときでの警告制御の不要な実施を抑制することができるようになる。
【0010】
なお、車両としては、手動変速機と、動力源から手動変速機への動力伝達を遮断する際に操作されるクラッチペダルとが設けられている車両が知られている。こうした車両にあっては、クラッチペダルが操作されると、動力源が駆動している場合であっても同動力源から手動変速機に動力が伝達されなくなる。そこで、上記車両の運転支援装置において、上記ニュートラル状態は、クラッチペダルが操作されていることを含むことが好ましい。この構成によれば、起動スイッチがオンである状況下で、クラッチペダルが操作されている状態の継続時間が判定時間に達する前に、クラッチペダルが操作されなくなったときには、手動変速機の変速段を変更するために運転者がクラッチペダルを操作していた可能性があると判断することができるため、運転者に対して警告がなされない。したがって、手動変速機の変速段を変更するための運転者によるクラッチペダルの正規な操作に対して警告がなされる事象の発生を抑制することができるようになる。
【0011】
また、車両には、変速機の変速段を変更する際に操作されるシフトレバーが設けられている。そして、変速機は、シフトレバーがニュートラル位置に位置しているときには、動力源から車輪への動力伝達を遮断するように構成されている。こうした車両では、運転者がシフトレバーを操作しているときに、動力源から車輪への動力伝達が変速機によって遮断される状態に陥ることがありうる。そこで、上記車両の運転支援装置において、上記ニュートラル状態は、動力源から車輪への動力伝達を変速機が遮断している状態を含むことが好ましい。この構成によれば、起動スイッチがオンである状況下で、動力源から車輪への動力伝達を変速機が遮断している状態の継続時間が判定時間に達する前に、動力源から車輪への動力伝達が変速機によって許可されたときには、変速機の変速段を変更するための正規の車両操作を運転手が行っている可能性があると判断することができるため、運転者に対して警告がなされない。したがって、変速機の変速段を変更するためのシフトレバーの操作に対して警告がなされる事象の発生を抑制することができるようになる。
【0012】
また、手動変速機を備える車両における上記ニュートラル状態とは、クラッチペダルが操作されていること、及び、シフトレバーがニュートラル位置に位置することのうち少なくとも一方が成立している状態であってもよい。この場合、上記車両の運転支援装置において、警告制御部は、起動スイッチがオンである状況下でクラッチペダルが操作されていることが検出されている場合には、同クラッチペダルが操作されている状態の継続時間が第1の判定時間以上になったときに警告制御を実施することが好ましい。また、警告制御部は、起動スイッチがオンである状況下でシフトレバーがニュートラル位置に位置することが検出されている場合には、同シフトレバーがニュートラル位置に位置する状態の継続時間が第2の判定時間以上になったときに警告制御を実施することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、クラッチペダルが操作されている状態の継続時間が第1の判定時間以上になること、及び、シフトレバーがニュートラル位置に位置する状態の継続時間が第2の判定時間以上になることのうち少なくとも一方が成立したことを契機に、警告制御が開始される。すなわち、第1の判定時間及び第2の判定時間をそれぞれ適切な値に設定することにより、クラッチペダルが操作されている状態の継続時間が長いと判断できる場合、又は、シフトレバーがニュートラル位置に位置する状態の継続時間が長いと判断できる場合には、警告制御を適切に実施させることができるようになる。
【0014】
ここで、一般的に、手動変速機の変速段を変更する場合、最初にクラッチペダルが操作され、車両の動力源から手動変速機への動力伝達が遮断されている状態で、シフトレバーが操作される。これにより、手動変速機で選択される変速段の変更が完了される。そして、シフトレバーの操作が終了されてからクラッチペダルの操作が解消され、動力源から手動変速機に動力が伝達されるようになる。そのため、変速段を変更する際には、クラッチペダルの操作によって動力源から手動変速機への動力伝達が遮断されている期間のほうが、シフトレバーがニュートラル位置に位置する期間よりも長くなる。
【0015】
そこで、上記車両の運転支援装置において、第1の判定時間は、第2の判定時間よりも長いほうが好ましい。このように第1の判定時間を第2の判定時間よりも長くすることにより、変速段を変更するためにクラッチペダルを運転者が操作している最中に、警告制御が不要に開始される事象を生じにくくさせることができる。
【0016】
また、手動変速機を備える車両を発進させる場合、車両の停止中からクラッチペダルの操作が開始されることがある。そのため、車両の発進時にあっては、運転者によるクラッチペダルの操作が継続されていることがある。特に降坂路で車両を発進させる場合、動力源からの動力を車輪に伝達させなくても、車両に作用する重力によって車両を走行させることができるため、車両発進後であってもクラッチペダルの操作が継続されやすい。そのため、このように車両の発進時でのクラッチペダルの操作に対して警告がなされると、運転者が不快に感じるおそれがある。
【0017】
ただし、車両の発進後でクラッチペダルの操作が継続されている場合であっても、車両の車体速度がある程度大きくなった以降では、動力源から車輪に動力が伝達されない状態が継続されることは望ましくない。そこで、上記車両の運転支援装置において、警告制御部は、起動スイッチがオンである状況下で、車両の車体速度が計測開始速度に達した以降における、クラッチペダルが操作されている状態の継続時間を計測し、同継続時間が第1の判定時間以上になったときに警告制御を実施することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、起動スイッチがオンである状況下で、車両の停止中からクラッチペダルが操作されており、車体速度が計測開始速度未満である車両の発進直後も同クラッチペダルの操作が継続されているときには、こうしたクラッチペダルの操作に対して警告がなされる事象が生じにくくなる。すなわち、警告制御の不要な実施を抑制することができる。しかし、こうした場合であっても、車体速度が比較的大きくなってもクラッチペダルの操作が継続されているときには、運転手に対して警告することができるようになる。
【0019】
また、警告制御部は、起動スイッチがオンである状況下で、運転支援制御の実施が開始された時点以降における、クラッチペダルが操作されている状態の継続時間を計測し、同継続時間が第1の判定時間以上になったときに警告制御を実施するようにしてもよい。この構成であっても、起動スイッチがオンである状況下で、車両の停止中からクラッチペダルが操作されており、運転支援制御の実施が開始される前の車両の発進直後も同クラッチペダルの操作が継続されているときには、こうしたクラッチペダルの操作に対して警告がなされる事象が生じにくくなる。すなわち、警告制御の不要な実施を抑制することができる。しかし、こうした場合であっても、車体速度が大きくなって運転支援制御が実施されるようになってもクラッチペダルの操作が継続されているときには、運転手に対して警告することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両の運転支援装置の第1の実施形態である制御装置を備える車両を示す概略構成図。
図2】(a)は同車両に設けられているシフト装置の概略構成を示す模式図、(b)は同シフト装置においてシフトレバーが操作されている様子の一例を示す作用図。
図3】同制御装置が実行する処理ルーチンであって、予め設定された制御サイクル毎に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図4】同制御装置が実行する処理ルーチンであって、車両降坂制御を実施するために実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図5】同制御装置が実行する処理ルーチンであって、警告制御の実施タイミングを計るために実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。
図6】同制御装置を備える車両が発進した際のタイミングチャートであって、(a)はブレーキスイッチの推移を示し、(b)はクラッチペダルの操作態様の推移を示し、(c)はシフトレバーの操作態様の推移を示し、(d)は警告制御の実施の有無の推移を示し、(e)は車両降坂制御の実施の有無の推移を示し、(f)はクラッチカウントの推移を示し、(g)はレバーカウントの推移を示し、(h)は車両の車体速度の推移を示す。
図7】車両の運転支援装置の第2の実施形態である制御装置が実行する処理ルーチンであって、警告制御の実施タイミングを計るために実行される処理ルーチンの一部を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、車両の運転支援装置を具体化した第1の実施形態を図1図6に従って説明する。
【0022】
図1には、本実施形態の車両の運転支援装置である制御装置50を備える車両が図示されている。図1に示すように、車両は、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRが駆動輪として機能する四輪駆動車である。
【0023】
こうした車両は、運転者によるアクセルペダル11の操作量に応じた駆動力を出力する動力源の一例であるエンジン12を備えている。エンジン12から出力された駆動力は、トランスミッション13を通じてトランスファ14に伝達される。そして、トランスファ14によって前輪側に分配された駆動力が、前輪用デファレンシャル15を通じて前輪FL,FRに伝達され、トランスファ14よって後輪側に分配された駆動力が、後輪用デファレンシャル16を通じて後輪RL,RRに伝達される。なお、本明細書では、運転者がアクセルペダル11を操作することを、「アクセル操作」ということもある。
【0024】
上記のトランスミッション13は、手動変速機である。このトランスミッション13には、クラッチ17を通じてエンジン12からの駆動力が伝達される。こうしたトランスミッション13では、運転者によるシフトレバー18の操作に応じて変速段が選択される。なお、クラッチ17は、クラッチペダル19の操作に応じて作動する。すなわち、クラッチペダル19の操作量が多くなるほどクラッチ17による動力伝達効率が低下され、エンジン12からの駆動力がトランスミッション13に伝達されにくくなる。
【0025】
車両の制動装置20は、運転者によるブレーキペダル21の操作力に応じた液圧を発生する液圧発生装置22と、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を個別に調整することのできるブレーキアクチュエータ23とを有している。なお、本明細書では、運転者がブレーキペダル21を操作することを、「ブレーキ操作」ということもある。
【0026】
また、車両には、各車輪FL,FR,RL,RRに個別対応するブレーキ機構25a,25b,25c,25dが設けられている。ブレーキ機構25a〜25dは、そのシリンダ内で発生している液圧に応じた制動力を車輪FL,FR,RL,RRに付与する。すなわち、運転者がブレーキ操作を行っている場合、液圧発生装置22で発生している液圧に応じた量のブレーキ液がブレーキ機構25a〜25dのシリンダ内に供給されることにより、シリンダ内の液圧が増大される。また、ブレーキアクチュエータ23が作動している場合、同ブレーキアクチュエータ23によってブレーキ機構25a〜25dのシリンダ内の液圧が調整される。
【0027】
また、車両には、手動操作部30が設けられている。この手動操作部30は、後述する車両降坂制御の実施を運転者が要求する際に操作される手動式の起動スイッチの一例であるスイッチ(以下、「DACスイッチ」ともいう。)32を有している。このDACスイッチ32は、運転者による操作によってオン・オフに切り替えられるスイッチである。そして、DACスイッチ32がオンである状況下では、車両降坂制御の開始条件が成立すると、車両降坂制御が実施される。
【0028】
また、車両には、車両の状態を運転者に報知するための報知装置35が設けられている。例えば、報知装置35は、車両降坂制御が実施されている場合、同制御が実施中である旨を運転者に報知する。なお、報知装置35としては、点灯ランプ、スピーカやナビゲーション装置の表示画面などを挙げることができる。
【0029】
こうした車両には、ブレーキスイッチSW1、アクセル開度センサSE1、シフトポジションセンサSE2、クラッチセンサSE3、車輪速度センサSE4,SE5,SE6,SE7、及び前後方向加速度センサSE8が設けられている。ブレーキスイッチSW1は、ブレーキペダル21が操作されているか否かを検出する。アクセル開度センサSE1は、アクセルペダル11の操作量であるアクセル操作量に相当するアクセル開度ACを検出する。シフトポジションセンサSE2は、シフトレバー18のシフト位置に応じた信号であるシフト信号SNを出力する。
【0030】
クラッチセンサSE3は、クラッチペダル19の操作によって作動されるクラッチ17の状態に応じた信号であるクラッチ信号CLを出力する。例えば、クラッチ17が半係合状態になる時点のクラッチペダル19の操作量を判定操作量とした場合、クラッチセンサSE3は、運転者によるクラッチペダル19の操作量が判定操作量以上であるときにはクラッチ17による動力伝達が不能である旨のクラッチ信号CLを出力する。一方、クラッチセンサSE3は、クラッチペダル19の操作量が判定操作量未満であるときにはクラッチ17による動力伝達が可能である旨のクラッチ信号CLを出力する。
【0031】
車輪速度センサSE4〜SE7は、車輪FL,FR,RL,RR毎に設けられており、対応する車輪の車輪速度VWを検出する。前後方向加速度センサSE8は、車両の前後方向の加速度である前後加速度Gxを検出する。そして、これらの検出系によって検出された情報は、制御装置50に入力される。
【0032】
制御装置50は、エンジン12を制御するエンジンECU51、トランスミッション13を制御する変速機ECU52、及びブレーキアクチュエータ23を制御するブレーキECU53を備えている。これら各ECU51〜53は、各種の情報や指令を相互に送受信可能となっている。
【0033】
車両の運転支援装置の一例である制御装置50を構成するブレーキECU53は、DACスイッチ32がオンである状況下で開始条件が成立したときに、降坂路での車両の走行を支援する制御として、DACなどの車両降坂制御を実施するようになっている。DACは「Downhill Assist Control」の略記である。この点で、本実施形態では、車両降坂制御が「運転支援制御」の一例であり、ブレーキECU53により、「制動制御部」の一例が構成されている。
【0034】
車両降坂制御の開始条件は、車両の車体速度VSが開始速度VSTh以上であることを含んでいる。
車両降坂制御は、ブレーキアクチュエータ23を作動させることにより、極低速(例えば、5km/h)に設定された目標速度VS_Tを車両の車体速度VSが超えないように車両に付与する制動力を調整する制御である。すなわち、車両降坂制御の開始条件が成立すると、目標制動力BP_Tが、その時点の車体速度VS及び目標速度VS_Tに基づいて決定され、車両に付与する制動力が目標制動力BP_Tに近づくように、ブレーキアクチュエータ23が制御される。そして、こうした車両降坂制御が実施されることにより、車両の車体速度VSが大きくなりすぎることが抑制されるため、運転者はステアリングホイールの操作に集中することが可能となる。
【0035】
なお、上記の車両降坂制御は、降坂路の走行時に限らず、実施することができる。例えば、凍結している路面などのように摩擦係数の低い路面を車両が走行する際でも車両降坂制御を実施することにより、運転者による車両操作を適切に支援することができる。
【0036】
次に、図2を参照し、運転者によって操作されるシフトレバー18を有するシフト装置について説明する。なお、本明細書で説明するトランスミッション13は、例えば、前進5速、後退1速用の手動変速機である。
【0037】
図2(a)に示すように、シフト装置40には、各変速段用のシフト位置P1,P2,P3,P4,P5,PRが設けられている。また、こうしたシフト装置40には、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達を遮断するためのシフト位置として、ニュートラル位置PNが設けられている。そして、例えば、シフトレバー18が第2速用のシフト位置P2に位置する場合、トランスミッション13では第2速用の変速段が選択され、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達が許可される。また、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する場合、トランスミッション13では、何れの変速段も選択されず、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RL側への動力伝達が遮断されるようになっている。
【0038】
図2(b)には、変速段を第2速用の変速段から第3速用の変速段に変更する際におけるシフトレバー18の動きが図示されている。図2(b)に示すように、このようにトランスミッション13で選択する変速段を変更させる場合、シフトレバー18は、ニュートラル位置PNを必ず通過するようになっている。すなわち、変速段を変更する場合、トランスミッション13は、一時的に、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達を遮断する状態になる。
【0039】
なお、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達が遮断される場合としては、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する場合だけではなく、運転者によるクラッチペダル19の操作によってクラッチ17が非係合状態になっている場合も挙げることができる。そこで、本明細書では、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置すること、及び、クラッチペダル19の操作によってクラッチ17が非係合状態になっていることのうち少なくとも一方が成立している状態を、エンジン12が運転されているときでも同エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLに動力が伝達されない「ニュートラル状態」ということとする。
【0040】
ところで、ニュートラル状態では、エンジン12と車輪FR,FL,RR,RLとが機械的に連結されていない状態であり、車両にエンジンブレーキが付与されない。また、ニュートラル状態では、運転者がアクセル操作を行っても車両が加速されにくい。そのため、DACスイッチ32がオンであって且つ車両降坂制御の開始条件が未だ成立していない待機中、及び車両降坂制御が実施されている最中に、車両の動力伝達系がニュートラル状態になることは望ましくない。そこで、DACスイッチ32がオンである状況下でニュートラル状態になったことが検出されたときには、ニュートラル状態である旨を報知装置35に警告させるようにすることが考えられる。
【0041】
しかし、トランスミッション13は手動変速機であるため、その変速段を変更するために運転者がクラッチペダル19及びシフトレバー18を操作することがある。その際に、車両の動力伝達系が一時的にニュートラル状態になる。そして、こうした変速段を変更するための正規の車両操作を行う運転者に対して警告がなされると、運転者は不快に感じるおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、DACスイッチ32がオンである状況下でニュートラル状態が検出されているときには、そのニュートラル状態の継続時間を計測し、継続時間が判定時間以上になったときに報知装置35に警告させる警告制御を実施するようになっている。具体的には、DACスイッチ32がオンである状況下でクラッチセンサSE3からブレーキECU53に入力されるクラッチ信号CLに基づき、クラッチペダル19が操作されていることをブレーキECU53が検出している場合には、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間が計測される。そして、この継続時間が第1の判定時間以上になったときに警告制御が実施される。
【0043】
また、DACスイッチ32がオンである状況下でシフトポジションセンサSE2から入力されるシフト信号SNに基づき、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することをブレーキECU53が検出している場合には、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間が計測される。そして、この継続時間が第2の判定時間以上になったときに警告制御が実施される。
【0044】
ただし、トランスミッション13が手動変速機である場合、車両停止中にあっては、クラッチペダル19の操作が継続されることがある。こうした場合に警告制御が実施されると、運転者が不快に感じるおそれがある。そのため、車両停止中では、クラッチペダル19が操作されている場合、警告制御が実施されないようになっている。
【0045】
次に、図3のフローチャートを参照し、ブレーキECU53が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンは、予め設定された制御サイクル毎に実行されるルーチンである。
【0046】
図3に示すように、本処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、DACスイッチ32がオンであるか否かを判定する(ステップS11)。DACスイッチ32がオフである場合(ステップS11:NO)、ブレーキECU53は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、DACスイッチ32がオンである場合(ステップS11:YES)、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS12に移行する。
【0047】
ステップS12において、ブレーキECU53は、ニュートラル状態である旨を警告する必要があると判断したときには警告制御を実施させる警告処理を実行する。この警告処理については、図5を用いて後述する。続いて、ブレーキECU53は、車両降坂制御の開始条件が成立しているときには車両降坂制御を実施させる制動処理を実行する(ステップS13)。この制動処理については、図4を用いて後述する。そして、ブレーキECU53は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0048】
なお、警告制御や車両降坂制御が実施されている最中に運転者がDACスイッチ32をオフにすることがある。この場合、ブレーキECU53は、DACスイッチ32がオンからオフに移行されたことを契機に、実施していた警告制御や車両降坂制御の実施を終了するようにしてもよい。また、ブレーキECU53は、DACスイッチ32がオンからオフに移行されても、実施中の制御の終了条件が成立するまでは同制御を継続させるようにしてもよい。
【0049】
次に、図4のフローチャートを参照し、上記の制動処理ルーチン(ステップS13)について説明する。
図4に示すように、制動処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、車両降坂制御を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS21)。車両降坂制御を実施していない場合(ステップS21:NO)、ブレーキECU53は、車両降坂制御の開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップS22)。開始条件が成立していない場合(ステップS22:NO)、ブレーキECU53は、制動処理ルーチンを終了する。一方、開始条件が成立している場合(ステップS22:YES)、ブレーキECU53は、その処理を後述するステップS23に移行して車両降坂制御を継続する。
【0050】
ステップS21において、車両降坂制御が実施されている最中である場合(YES)、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS23に移行して車両降坂制御の実施を継続する。
【0051】
ステップS23において、ブレーキECU53は、目標制動力BP_Tを、現時点の車体速度VS及び目標速度VS_Tに基づいて決定する。なお、車体速度VSは、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWのうち少なくとも1つの車輪速度(例えば、最も大きい車輪速度)に基づいて算出される。続いて、ブレーキECU53は、決定した目標制動力BP_Tが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS24)。目標制動力BP_Tが「0(零)」ではない場合(ステップS24:NO)、ブレーキECU53は、車両に付与する制動力が目標制動力BP_Tに近づくように、ブレーキアクチュエータ23の作動を制御する(ステップS25)。その後、ブレーキECU53は、制動処理ルーチンを終了する。
【0052】
一方、ステップS24において、目標制動力BP_Tが「0(零)」である場合(YES)、ブレーキECU53は、車両降坂制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップS26)。なお、終了条件は、目標制動力BP_Tが「0(零)」である状態の継続時間が所定の終了判定時間以上であることを含んでいる。
【0053】
そして、終了条件が未だ成立していない場合(ステップS26:NO)、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS25に移行する。一方、終了条件が既に成立している場合(ステップS26:YES)、ブレーキECU53は、ブレーキアクチュエータ23の作動を終了させ、車両降坂制御の実施を終了する(ステップS27)。その後、ブレーキECU53は、制動処理ルーチンを終了する。
【0054】
次に、図5のフローチャートを参照し、上記の警告処理ルーチン(ステップS12)について説明する。
図5に示すように、警告処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、車両が停止しているか否かを判定する(ステップS31)。例えば、ブレーキECU53は、車両の車体速度VSが、停車しているか否かを判断するための停止判断速度未満であるときに、車両が停止していると判断することができる。そして、車両が停止している場合(ステップS31:YES)、ブレーキECU53は、その処理を後述するステップS41に移行する。
【0055】
その一方で、車両が停止していない場合(ステップS31:NO)、ブレーキECU53は、現時点の車両の車体速度VSが計測開始速度VSK以上であるか否かを判定する(ステップS36)。この計測開始速度VSKは、上記の停止判断速度以上であって且つ開始速度VSTh以下の任意の値に設定されている。すなわち、計測開始速度VSKは、停止判断速度と等しい値であってもよいし、開始速度VSThと等しい値であってもよい。しかし、ここでは、計測開始速度VSKは、停止判断速度よりも大きく、且つ開始速度VSThよりも小さい値に設定されているものとして説明する。
【0056】
車体速度VSが計測開始速度VSK未満である場合(ステップS36:NO)、ブレーキECU53は、その処理を後述するステップS371に移行する。一方、車体速度VSが計測開始速度VSK以上である場合(ステップS36:YES)、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS37に移行する。
【0057】
ステップS37において、ブレーキECU53は、クラッチセンサSE3からのクラッチ信号CLに基づき、クラッチペダル19が操作されていることを検出しているか否かを判定する。クラッチペダル19が操作されていることを検出していない場合(ステップS37:NO)、ブレーキECU53は、その処理を次のステップS371に移行する。
【0058】
ステップS371において、ブレーキECU53は、クラッチカウントCNT1を「0(零)」にリセットする。その後、ブレーキECU53は、その処理を後述するステップS41に移行する。
【0059】
一方、ステップS37において、クラッチペダル19が操作されていることを検出している場合(YES)、ブレーキECU53は、クラッチカウントCNT1を「1」だけインクリメントする(ステップS38)。そして、ブレーキECU53は、更新したクラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるか否かを判定する(ステップS39)。すなわち、車体速度VSが計測開始速度VSK以上である状況下では、クラッチペダル19の操作が継続されているときに、クラッチカウントCNT1の更新が継続される。したがって、このクラッチカウントCNT1が、「クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間」に相当する。また、第1の判定カウント値CNT1Thが、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間が長いか否かを判断するための判断基準である「第1の判定時間」に相当する。つまり、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上である場合、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間が長すぎると判断することができる。
【0060】
そして、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上である場合(ステップS39:YES)、ブレーキECU53は、ニュートラル状態が長いことに対して運転者に警告する警告制御を実施する(ステップS40)。この点で、本実施形態では、ブレーキECU53により、DACスイッチ32がオンである状況下でニュートラル状態が検出されている場合には、同ニュートラル状態の継続時間が判定時間以上になったときに警告する警告制御を実施する「警告制御部」の一例が構成される。その後、ブレーキECU53は、警告処理ルーチンを終了する。
【0061】
一方、ステップS39において、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th未満である場合(NO)、ブレーキECU53は、その処理を後述するステップS41に移行する。
【0062】
ステップS41において、ブレーキECU53は、シフトポジションセンサSE2からのシフト信号SNに基づき、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することを検出しているか否かを判定する。シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することを検出していない場合(ステップS41:NO)、ブレーキECU53は、レバーカウントCNT2を「0(零)」にリセットする(ステップS42)。その後、ブレーキECU53は、警告処理ルーチンを終了する。
【0063】
一方、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することを検出している場合(ステップS41:YES)、ブレーキECU53は、レバーカウントCNT2を「1」だけインクリメントする(ステップS43)。続いて、ブレーキECU53は、更新したレバーカウントCNT2が、第1の判定カウント値CNT1Thよりも小さい第2の判定カウント値CNT2Th以上であるか否かを判定する(ステップS44)。すなわち、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続されているときに、レバーカウントCNT2の更新が継続される。したがって、このレバーカウントCNT2が、「シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間」に相当する。また、第2の判定カウント値CNT2Thが、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間が長いか否かを判断するための判断基準である「第2の判定時間」に相当する。つまり、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Th以上である場合、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間が長すぎると判断することができる。
【0064】
そして、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Th以上である場合(ステップS44:YES)、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS40に移行する。一方、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Th未満である場合(ステップS44:NO)、ブレーキECU53は、警告制御を実施することなく、警告処理ルーチンを終了する。
【0065】
次に、図6のタイミングチャートを参照し、停止中の車両が発進した際の作用について説明する。なお、前提として、DACスイッチ32はオンであり、運転者がブレーキ操作を行うことにより、車両が降坂路で停止しているものとする。
【0066】
図6(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g),(h)に示すように、車両の停止中にあっては、シフトレバー18はニュートラル位置PNに位置しており、トランスミッション13は、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達を遮断している。この場合、車両は停止しているものの(ステップS31:YES)、DACスイッチ32はオンであるため、レバーカウントCNT2が更新される(ステップS43)。すなわち、車両停止中では、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置するニュートラル状態が継続されると、警告制御が実施されることがある。
【0067】
そして、車両停止中の第1のタイミングt1で、クラッチペダル19の操作が開始されると、クラッチ17が係合状態から非係合状態に移行し、エンジン12からトランスミッション13への動力伝達が遮断される。このようにクラッチペダル19が操作されるようになっても、車両は停止しているため(ステップS31:YES)、クラッチカウントCNT1は更新されない。すなわち、車両停止中では、クラッチペダル19が操作されているニュートラル状態が継続されても警告制御が実施されない。
【0068】
そして、クラッチペダル19の操作が継続されている第2のタイミングt2で、運転者によってシフトレバー18が操作され、シフトレバー18がニュートラル位置PNから例えば第1速用のシフト位置P1に移動されると(ステップS41:NO)、トランスミッション13では第1速用の変速段が選択される。これにより、トランスミッション13は、エンジン12から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達を許可することとなる。その結果、レバーカウントCNT2が「0(零)」にリセットされる(ステップS42)。
【0069】
その後の第3のタイミングt3で、運転者によるブレーキ操作が解消されると、車両に制動力が付与されない状態になる。すると、車両に作用する重力によって、車両が降坂路を坂下側に移動するようになる、すなわち車両が発進する(ステップS31:NO)。このように車両が発進した直後にあっては、車体速度VSは未だ計測開始速度VSK未満である(ステップS36:NO)。そのため、DACスイッチ32がオンである状況下で、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されている場合、車両の発進直後ではクラッチペダル19の操作が継続されていても警告制御が実施されない。もちろん、車両の発進後にクラッチペダル19が操作されるようになったとしても、車体速度VSが計測開始速度VSK未満であるときには(ステップS36:NO)、警告制御が実施されない。
【0070】
車体速度VSが徐々に大きくなり、第4のタイミングt4で車体速度VSが計測開始速度VSKに達する(ステップS36:YES)。そして、このように車体速度VSが大きくなっても、クラッチペダル19の操作が未だ継続されている場合には(ステップS37:YES)、クラッチカウントCNT1が更新されるようになる(ステップS38)。すなわち、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間の計測が、車体速度VSが計測開始速度VSKに達した時点から開始される。
【0071】
その後の第5のタイミングt5で、車体速度VSが開始速度VSThに達し、車両降坂制御の開始条件が成立すると(ステップS22:YES)、車両降坂制御が開始される(ステップS23,S24,S25)。なお、このように車両降坂制御が開始されても、クラッチペダル19が操作されている状態が継続されている場合(ステップS37:YES)、クラッチカウントCNT1の更新も継続される(ステップS38)。
【0072】
そして、車両降坂制御が実施されている最中の第6のタイミングt6で、クラッチペダル19の操作が解消されると(ステップS37:NO)、クラッチカウントCNT1が「0(零)」にリセットされる(ステップS371)。なお、第6のタイミングt6の直前では、クラッチカウントCNT1は第1の判定カウント値CNT1Th未満である(ステップS39:NO)。すなわち、車体速度VSが計測開始速度VSKに達し、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間の計測が開始されても、同継続時間が第1の判定時間に達する前に、クラッチペダル19の操作が解消される。そのため、第4のタイミングt4から第6のタイミングt6までの期間では、警告制御が実施されない。
【0073】
その後、車両走行中の第7のタイミングt7で、クラッチペダル19が操作されていることが検知されると(ステップS37:YES)、車体速度VSが計測開始速度VSK以上であるため(ステップS36:YES)、クラッチカウントCNT1の更新が開始される(ステップS38)。すなわち、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間の計測が開始される。そして、クラッチペダル19が操作されている第8のタイミングt8で、シフトレバー18の操作が開始される。すると、シフトレバー18は、第1速用のシフト位置P1からニュートラル位置PNを通過して例えば第2速用のシフト位置P2に移動する。この際、第8のタイミングt8から、シフトレバー18が第2速用のシフト位置P2に達する第9のタイミングt9までの期間では、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することが検知されているため(ステップS41:YES)、レバーカウントCNT2が更新される(ステップS43)。しかし、第8のタイミングt8から第9のタイミングt9までの期間では、レバーカウントCNT2は第2の判定カウント値CNT2Thに達しないため(ステップS44:NO)、警告制御が実施されない。
【0074】
なお、第9のタイミングt9を経過すると、シフトレバー18がニュートラル位置PNとは異なる位置に位置するようになるため(ステップS41:NO)、レバーカウントCNT2は「0(零)」にリセットされる(ステップS42)。
【0075】
ところで、第7のタイミングt7から開始されたクラッチペダル19の操作は、第9のタイミングt9以降でも継続されており、その後の第10のタイミングt10で解消される(ステップS37:NO)。すなわち、第7のタイミングt7から第10のタイミングt10までの期間内では、クラッチカウントCNT1が更新されるものの(ステップS38)、クラッチカウントCNT1は第1の判定カウント値CNT1Thに達しない(ステップS39:NO)。したがって、第7のタイミングt7から第10のタイミングt10までの期間内では、警告制御が実施されない。
【0076】
その後の第11のタイミングt11で、クラッチペダル19が操作されていないにも拘わらず、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置するようになることがある(ステップS41:YES)。こうした場合としては、例えば、運転者が意図することなくシフトレバー18に触れてしまい、シフトレバー18がニュートラル位置PNに移動された場合を挙げることができる。そして、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置するようになると、レバーカウントCNT2が更新される(ステップS43)。
【0077】
シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続されると、第12のタイミングt12でレバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Thに達する(ステップS44:YES)。すると、警告制御が開始され、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することに対して警告がなされる(ステップS40)。なお、その後の第13のタイミングt13になると、シフトレバー18は、ニュートラル位置PNとは異なるシフト位置に移動され(ステップS41:NO)、レバーカウントCNT2が「0(零)」にリセットされる(ステップS42)。そのため、第12のタイミングt12から開始された警告制御は、第13のタイミングt13で終了される。
【0078】
また、その後の第14のタイミングt14で、クラッチペダル19が操作されている状態が検出されると(ステップS37:YES)、クラッチカウントCNT1が更新されるようになる(ステップS38)。そして、クラッチペダル19が操作されている最中の第15のタイミングt15と第16のタイミングt16との間で、シフトレバー18が操作される。すなわち、シフトレバー18は、例えば、第2速用のシフト位置P2からニュートラル位置PNを通過して第3速用のシフト位置P3に移動される。したがって、第15のタイミングt15から第16のタイミングt16までの期間では、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することが検出されるため(ステップS41:YES)、レバーカウントCNT2が更新される(ステップS43)。しかし、この第15のタイミングt15から第16のタイミングt16までの期間では、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Thに達しないため(ステップS44:NO)、警告制御が実施されない。
【0079】
このようにシフトレバー18の操作が終了されても、第14のタイミングt14から開始されたクラッチペダル19の操作が継続されると(ステップS37:YES)、クラッチカウントCNT1の更新も継続される(ステップS38)。そして、クラッチペダル19の操作が継続されている第17のタイミングt17で、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Thに達すると(ステップS39:YES)、警告制御が開始される(ステップS40)。すなわち、クラッチペダル19を運転者が操作し続けていることに対して警告がなされる。
【0080】
なお、クラッチペダル19の操作は、その後の第18のタイミングt18まで継続される。そのため、第17のタイミングt17で開始された警告制御は、第18のタイミングt18まで実施される。すなわち、第18のタイミングt18でクラッチペダル19の操作が解消されると(ステップS37:NO)、クラッチカウントCNT1が「0(零)」にリセットされ(ステップS371)、警告制御が終了される。
【0081】
以上、上記構成及び作用によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)手動式のトランスミッション13の変速段を変更するための正規の車両操作を運転手が行う場合、ニュートラル状態になったとしても、そのニュートラル状態の継続時間は短い。そこで、本実施形態では、DACスイッチ32がオンである状況下で、ニュートラル状態の継続時間が判定時間以上になってもニュートラル状態が継続されているときには、ニュートラル状態の継続時間が長すぎると判断することができ、運転者に対して警告がなされる。その一方で、ニュートラル状態の継続時間が判定時間に達する前にニュートラル状態が解消されたときには、トランスミッション13の変速段を変更するための正規の車両操作を運転手が行っている可能性があると判断することができるため、運転者に対して警告がなされない。したがって、トランスミッション13の変速段を変更するための正規な車両操作を運転者が行っているときでの警告制御の不要な実施を抑制することができる。
【0082】
(2)具体的には、DACスイッチ32がオンである状況下で、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間が第1の判定時間に達する前に、すなわちクラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Thに達する前に、クラッチペダル19が操作されなくなったときには、トランスミッション13の変速段を変更するために運転者がクラッチペダル19を操作していた可能性があると判断することができる。そのため、こうした場合には、運転者に対して警告がなされない。したがって、トランスミッション13の変速段を変更するためのクラッチペダル19の操作に対して警告がなされる事象の発生を抑制することができる。
【0083】
(3)また、DACスイッチ32がオンである状況下で、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間が第2の判定時間に達する前に、すなわちレバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Thに達する前に、シフトレバー18がニュートラル位置PNではない他のシフト位置に移動されたときには、トランスミッション13の変速段を変更するための正規の車両操作を運転手が行っている可能性があると判断することができる。そのため、こうした場合には、運転者に対して警告がなされない。したがって、トランスミッション13の変速段を変更するためのシフトレバー18の操作に対して警告がなされる事象の発生を抑制することができる。
【0084】
(4)すなわち、本実施形態では、第1の判定カウント値CNT1Thを適切な値に設定することにより、クラッチペダル19が操作されている状態の継続時間が長いと判断できる場合には、警告制御を適切に実施させることができる。同様に、第2の判定カウント値CNT2Thを適切な値に設定することにより、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態の継続時間が長いと判断できる場合には、警告制御を適切に実施させることができる。
【0085】
(5)一般的に、トランスミッション13の変速段を変更する際には、クラッチペダル19の操作によってエンジン12からトランスミッション13への動力伝達が遮断されている期間のほうが、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する期間よりも長くなる。そのため、本実施形態では、第1の判定カウント値CNT1Thが、第2の判定カウント値CNT2Thよりも大きい値に決定されている。これにより、変速段を変更するためにクラッチペダル19を運転者が操作している最中に、警告制御が不要に開始される事象を生じにくくさせることができる。
【0086】
(6)ここで、第2の判定カウント値CNT2Thを、第1の判定カウント値CNT1Thと等しい値に決定したとする。この場合、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が長期に渡って継続される場合、第2の判定カウント値CNT2Thが大きい分、警告制御の開始が遅れることとなる。この点、本実施形態では、第2の判定カウント値CNT2Thが第1の判定カウント値CNT1Thよりも小さい値に決定されている。そのため、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続される場合には、警告制御を早期に開始させることができる。
【0087】
(7)また、手動式のトランスミッション13を備える車両では、停止中からクラッチペダル19を操作し、この状態を維持したまま発進されることがある。そこで、本実施形態では、車体速度VSが計測開始速度VSK未満であるときには、クラッチペダル19が操作されていても、クラッチカウントCNT1が更新されない。そのため、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されている場合、車両の発進直後ではクラッチペダル19の操作が継続されても警告制御が実施されないようになっている。これにより、車両発進直後における警告制御の不要な実施を抑制することができる。
【0088】
(8)ただし、車両が発進し、車体速度VSがある程度大きくなってもクラッチペダル19の操作が継続されていることは望ましくない。そこで、車体速度VSが計測開始速度VSKになってもクラッチペダル19の操作が未だ継続されているときには、車体速度VSが計測開始速度VSKになった時点からクラッチカウントCNT1の更新を開始し、このクラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに警告制御が実施される。したがって、車両の発進前からクラッチペダル19が操作されている場合、車両の発進後で車体速度VSが比較的大きくなってもクラッチペダル19の操作が継続されているときには、運転手に対して警告することができる。
【0089】
(9)また、手動式のトランスミッション13を備える車両の停止中には、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続されることがある。そして、この状態で運転者によるブレーキ操作が解消され、車両が発進した場合、同車両にはエンジンブレーキが作用しないこととなる。そこで、本実施形態では、車両の停止中であってもシフトレバーがニュートラル位置PNに位置する場合、この状態の継続時間が第2の判定時間以上になったときには、警告制御が実施されるようになっている。これにより、エンジンブレーキが作用しない状態で車両が走行することに対し、運転者に注意喚起をすることができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、車両の運転支援装置を具体化した第2の実施形態を図7に従って説明する。なお、第2の実施形態では、クラッチカウントCNT1の更新の開始タイミングが第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0091】
図7のフローチャートを参照し、警告処理ルーチンについて説明する。なお、図7には、警告処理ルーチンの一部が図示されている。
図7に示すように、警告処理ルーチンにおいて、ブレーキECU53は、車両が停止している場合(ステップS31:YES)、その処理を前述したステップS41に移行する。
【0092】
また、ブレーキECU53は、車両が停止中ではない場合(ステップS31:NO)、車両降坂制御を実施している最中であるか否かを判定する(ステップS361)。車両降坂制御を実施していない場合(ステップS361:NO)、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS371に移行し、クラッチカウントCNT1を「0(零)」にリセットする。例えば、車両停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合、車両降坂制御が未だ開始されていないときには、クラッチペダル19の操作が継続されている状態の継続時間が計測されず、警告制御が実施されない。もちろん、車両の発進後にクラッチペダル19の操作が開始された場合であっても、車両降坂制御が未だ開始されていないときには、クラッチペダル19の操作が継続されている状態の継続時間が計測されず、警告制御が実施されない。
【0093】
一方、ステップS361において、車両降坂制御を実施している最中である場合(YES)、ブレーキECU53は、その処理を前述したステップS37に移行し、クラッチペダル19が操作されていることを検出しているか否かを判定する。例えば、車両停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合、クラッチペダル19の操作が継続されている状態の継続時間の計測が、車両降坂制御の開始時点から開始される。もちろん、車両の発進後にクラッチペダル19の操作が開始され、車両降坂制御の実施が開始されてもクラッチペダル19の操作が継続されている場合、クラッチペダル19の操作が継続されている状態の継続時間の計測が、車両降坂制御の開始時点から開始される。そして、この継続時間に相当するクラッチカウントCNT1が、第1の判定時間に相当する第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに、警告制御が実施される。
【0094】
なお、車両降坂制御が開始されてからクラッチペダル19の操作が開始されることもある。このように車両降坂制御の実施中にあっては、クラッチペダル19の操作が開始された時点からクラッチカウントCNT1の更新が開始される。そして、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに、警告制御が実施される。
【0095】
以上、上記構成及び作用によれば、上記第1の実施形態における効果(1)〜(7)及び(9)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(10)車両が発進し、車体速度VSがある程度大きくなってもクラッチペダル19の操作が継続されていることは望ましくない。そこで、車体速度VSが開始速度VSTh以上になり、車両降坂制御が開始されてもクラッチペダル19の操作が未だ継続されているときには、クラッチカウントCNT1の更新が車両降坂制御の開始時点から開始される。そして、このクラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに警告制御が実施される。したがって、車両の発進前からクラッチペダル19が操作されている場合、車両の発進後で車体速度VSが比較的大きくなってもクラッチペダル19の操作が継続されているときには、運転手に対して警告することができる。
【0096】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・車両停止中にあっては、第2の判定カウント値CNT2Thを、車両走行中であるときよりも大きい値にしてもよい。
【0097】
・車両停止中では、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する場合、車両を発進させる意図が運転者にはないと判断することができるときなどには、警告制御を実施しないようにしてもよい。車両を発進させる意図が運転者にはないと判定する方法としては、例えば、車両のドアが開いていることの検知を挙げることができる。このようにドアが開いている場合には、車両を発進させる意図が運転者にはないと判断することが可能である。
【0098】
・車両の発進前からシフトレバー18がニュートラル位置PNに位置しており、車両発進後もシフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続されているときには、車両発進を検出したタイミングで警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0099】
・車両の発進前からシフトレバー18がニュートラル位置PNに位置しており、車両発進後もシフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続されているときには、レバーカウントCNT2が、第2の判定カウント値CNT2Thよりも小さい判定カウント値に達したタイミングで警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0100】
・手動式のトランスミッション13の変速段を変更する際、クラッチペダル19が操作されている状態でシフトレバー18が操作される。言い換えると、クラッチペダル19が操作されていない状態でシフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することが検出された場合、こうした車両操作は正規なものではないと判断することができる。そのため、DACスイッチ32がオンである状況下で、車両が走行しており、クラッチペダル19が操作されていることが検出されていない場合、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することが検出されたときには、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Thに達していなくても警告制御を実施するようにしてもよい。
【0101】
・第2の実施形態において、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車両降坂制御が開始されるタイミングで警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0102】
・第2の実施形態において、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車両降坂制御の開始タイミングからクラッチカウントCNT1の更新を開始させる。そして、このクラッチカウントCNT1が、第1の判定カウント値CNT1Thよりも小さい判定カウント値に達したタイミングで、警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0103】
・第1の実施形態において、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車体速度VSが計測開始速度VSKに達したタイミングで警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0104】
・第1の実施形態において、車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車体速度VSが計測開始速度VSKに達したタイミングからクラッチカウントCNT1の更新を開始させる。そして、このクラッチカウントCNT1が、第1の判定カウント値CNT1Thよりも小さい判定カウント値に達したタイミングで、警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0105】
・車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車両の発進を検出したタイミングからクラッチカウントCNT1の更新を開始させるようにしてもよい。そして、このクラッチカウントCNT1が、第1の判定カウント値CNT1Th又は同第1の判定カウント値CNT1Thよりも小さい判定カウント値に達したタイミングで、警告制御を開始させるようにしてもよい。
【0106】
・車両の停止中からクラッチペダル19が操作されており、車両の発進後もクラッチペダル19の操作が継続されている場合には、車両の発進直後において警告制御を実施しないようにしてもよい。ただし、車両の発進後にクラッチペダル19が一旦解消され、その後にクラッチペダル19が再び操作されたときには、クラッチカウントCNT1を更新し、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに警告制御を実施することが好ましい。
【0107】
・第2の判定カウント値CNT2Thを、第1の判定カウント値CNT1Thと等しい値としてもよい。
・クラッチペダル19が操作されていることを検出し、クラッチカウントCNT1が第1の判定カウント値CNT1Th以上であるときに警告制御を実施するのであれば、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する状態が継続される場合には警告制御を実施しないようにしてもよい。このような制御構成は、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することを検出するためのセンサを有しない車両に適用される運転支援装置で具体化することが好ましい。
【0108】
・シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置することを検出し、レバーカウントCNT2が第2の判定カウント値CNT2Th以上であるときに警告制御を実施するのであれば、クラッチペダル19が操作されている状態が継続される場合には警告制御を実施しないようにしてもよい。このような制御構成は、クラッチペダル19が操作されていることを検出するためのセンサを有しない車両に適用される運転支援装置で具体化することが好ましい。
【0109】
・クラッチペダル19が操作されている際における報知装置35による警告態様と、シフトレバー18がニュートラル位置PNに位置する際における報知装置35による警告態様とを同じにしてもよいし、互いに異ならせるようにしてもよい。
【0110】
・警告制御は、車両に設けられている報知装置35を用いて運転者に対して警告を行うのではなく、例えば運転者が所有しているモバイル端末を用いて運転者に対して警告を行うようにしてもよい。この場合、車両には、モバイル端末と通信するための構成が設けられている必要がある。
【0111】
・車両の制動制御装置が搭載される車両は、運転者が正規な車両操作を行っている最中に一時的にニュートラル状態になる可能性のある車両であれば、手動式のトランスミッション13以外の他の変速機を備えた車両であってもよい。この場合、制動制御装置は、エンジンなどの動力源から車輪FR,FL,RR,RLへの動力伝達を変速機が遮断している状態を検出したときにニュートラル状態であると判断し、同ニュートラル状態の継続時間が判定時間に達したときに警告制御を開始するようにしてもよい。
【0112】
・車両の動力源は、エンジン12以外の他の動力源(例えば、モータ)であってもよい。また、車両は、エンジン及びモータを動力源として有するハイブリッド車両であってもよい。
【0113】
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記警告制御部は、前記起動スイッチがオンである状況下で、車両の停止中から前記クラッチペダルが操作されており、車両の発進後も前記クラッチペダルの操作が継続されている場合、車両の発進時から前記警告制御を実施することが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
12…動力源の一例であるエンジン、13…手動変速機としてのトランスミッション(変速機)、18…シフトレバー、19…クラッチペダル、32…起動スイッチとしてのDACスイッチ、50…車両の運転支援装置としての制御装置、53…制動制御部の一例であるブレーキECU、FL,FR,RL,RR…車輪、CNT1…継続時間に相当するクラッチカウント、CNT1Th…判定時間及び第1の判定時間に相当する第1の判定カウント値、CNT2…継続時間に相当するレバーカウント、CNT2Th…判定時間及び第2の判定時間に相当する第2の判定カウント値、PN…ニュートラル位置、VS…車体速度、VS_T…目標速度、VSK…計測開始速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7