特許第6235510号(P6235510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235510
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20171113BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/06 301F
   H01L29/78 301B
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-55445(P2015-55445)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-178131(P2016-178131A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓雄
(72)【発明者】
【氏名】碇山 理究
(72)【発明者】
【氏名】新村 忠
(72)【発明者】
【氏名】松葉 博
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−048866(JP,A)
【文献】 特開2008−034438(JP,A)
【文献】 特開2007−150106(JP,A)
【文献】 特開昭55−086121(JP,A)
【文献】 特開2015−046468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体を含む半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、前記半導体層と電気的に接続されるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、絶縁材料を含み、電荷密度の極性が正である保護層と、
を備え、
前記保護層は、前記ゲート電極と比べて前記ドレイン電極の近くに位置する第1領域と、前記第1領域の電荷密度より低い電荷密度を有する第2領域と、を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1領域の電荷密度の値は、1.0×1016cm−3以上である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1領域は、前記半導体層から前記ゲート電極に向かう第1方向において前記ゲート電極と重畳しない請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層と前記ゲート電極との間に設けられた第1絶縁層と、
前記ゲート電極と前記保護層との間に設けられた第2絶縁層と、
前記保護層の上に設けられた第3絶縁層と、
をさらに備え、
前記保護層に含まれる材料のバンドギャップ値は、前記第2絶縁層に含まれる材料のバンドギャップ値、及び、前記第3絶縁層に含まれる材料のバンドギャップ値より小さい請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
窒化物半導体を含む半導体層と、
前記半導体層の上に設けられ、前記半導体層と電気的に接続されるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の上に設けられた絶縁層と、
前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記絶縁層の上に設けられ、絶縁材料を含み、電荷密度の極性が正であって前記電荷密度の値が1.0×1016cm−3以上である保護層と、
を備えた半導体装置。
【請求項6】
前記ソース電極は、前記半導体層から前記ゲート電極に向かう第1方向において前記ゲート電極と重畳する請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
窒化物半導体を含む半導体層と、前記半導体層の上に設けられ前記半導体層と電気的に接続されるソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、を有する積層体において、前記ゲート電極の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、絶縁材料を含む保護層を形成する工程と、
前記保護層に正電荷を供給し、前記ゲート電極と比べて前記ドレイン電極の近くに位置し、前記保護層内の他の領域より電荷密度が高い第1領域を形成する工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1領域を形成する工程において、コロナ放電処理によって前記保護層に正電荷を供給する請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
窒化物半導体を含む半導体層と、前記半導体層の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた絶縁層と、を有する積層体において、前記積層体の上に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜の一部を除去して前記半導体層と電気的に接続されるソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記絶縁層の上に、絶縁材料を含む保護層を形成する工程と、
を備え、
前記保護層の電荷密度の極性は正であり、
前記保護層の電荷密度の値が1.0×1016cm−3以上である半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物系化合物半導体は、広いバンドギャップと、高い絶縁破壊電界強度と、を有することから、高出力あるいは高電圧動作が要求されるパワーデバイスの材料として利用されている。例えば、窒化ガリウム層の上に窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層が積層された構造を有する高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)等の半導体装置においては、窒化ガリウム層と窒化アルミニウムガリウム層との界面に高濃度の二次元電子ガスが生じるためオン抵抗が小さく、低損失で高い出力を得ることができる。
【0003】
一方で、このような半導体装置において、高電圧を印加したときにオン抵抗が増大し、ドレイン電流が減少する電流コラプスという現象が発生する場合がある。電流コラプスは、半導体装置の特性に影響を及ぼすので、電流コラプスを抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、電流コラプスを抑制した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、半導体層と、ソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極と、保護層と、を備える半導体装置が提供される。前記半導体層は、窒化物半導体を含む。前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記半導体層の上に設けられ、前記半導体層と電気的に接続される。前記ゲート電極は、前記半導体層の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられる。前記保護層は、前記ゲート電極の上であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられる。前記保護層は、絶縁材料を含む。前記保護層の電荷密度の極性は正である。前記保護層は、第1領域と、第2領域と、を有する。前記第1領域は、前記ゲート電極と比べて前記ドレイン電極の近くに位置する。前記第2領域は、前記第1領域の電荷密度より低い電荷密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式図である。
図2図2(a)〜図2(c)は、第1実施形態に係る別の半導体装置の一部を示す模式図である。
図3】半導体装置の特性を示す参考図である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置に印加する電圧を示す図である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図9図9(a)〜図9(d)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図10】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式図である。
図11図11(a)〜図11(c)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
本願明細書において、「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0010】
本願明細書において、「上に設けられる」とは、直接接して設けられる場合の他に、間に他の層又は膜が挿入されて設けられる場合も含む。また、「対向して設けられる」とは、上または下に直接接して設けられる場合の他に、間に他の層又は膜が挿入されて設けられる場合も含む。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す模式図である。
図2(a)〜図2(c)は、第1実施形態に係る別の半導体装置の一部を示す模式図である。
図3は、半導体装置の特性を示す参考図である。
図4は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図1は、半導体装置100の断面図を示している。図2(a)〜図2(c)は、ゲート電極30の近傍の拡大断面図を示している。図3及び図4は、ドレイン電極50の近傍の拡大断面を示している。また、図3において、比較例の半導体装置の特性が示されている。
【0012】
図1に表すように、半導体装置100には、半導体層10と、第1絶縁層20と、ゲート電極30と、ソース電極40と、ドレイン電極50と、第2絶縁層60と、保護層70と、第3絶縁層80と、が設けられている。半導体装置100は、例えば、窒化ガリウム(GaN)層の上に窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層が積層された構造を有する高電子移動度トランジスタである。なお、半導体層10から第1絶縁層20に向かう方向が積層方向(第1方向)である。
【0013】
半導体層10は、例えば、窒化物半導体層である。半導体層10は、電子走行層10aと、電子供給層10bと、を有する。半導体層10には、シリコン(Si)等の基板上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等のエピタキシャル成長法によって形成されたバッファ層が設けられても良い。バッファ層によって、基板と、半導体層10との間の格子不整合を緩和することができる。例えば、バッファ層は、窒化アルミニウムガリウムを含む多層構造で形成される。
【0014】
電子走行層10aは、チャネル層である。電子走行層10aは、例えば、窒化ガリウムを含む層である。電子走行層10aの膜厚は、例えば、0.1マイクロメートル以上10マイクロメートル以下である。
【0015】
電子供給層10bは、障壁層である。電子供給層10bは、電子走行層10aに設けられている。電子供給層10bは、例えば、窒化アルミニウムガリウムを含む層である。電子供給層10bは、例えば、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN(0<x<1))、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムアルミニウム(InAl1−yN(0<y<1))、窒化インジウムガリウム(InGa1−zN(0<z<1))等の少なくともいずれかを含む層でも良い。電子供給層10bの膜厚は、例えば、10ナノメートル以上50ナノメートル以下である。
【0016】
電子走行層10aは、電子供給層10bに含まれる化合物と異なる化合物によって形成される。電子走行層10aと、電子供給層10bと、の間にヘテロ接合が形成され、ヘテロ接合によってピエゾ分極、もしくは、ピエゾ分極及び自発分極が電子供給層10bに発生する。このような分極に基づく電界によって電子走行層10aのヘテロ接合の近傍に二次元電子ガス(2DEG)が発生する。例えば、半導体装置100において、電子走行層10aと電子供給層10bとの界面に発生する二次元電子ガスをゲートで制御することでスイッチング動作を行うことができる。また、半導体層10は、電子走行層10a及び電子供給層10bの2層構造に限らず、3層以上の層構造を有しても良い。
【0017】
第1絶縁層20は、半導体層10(電子供給層10b)とゲート電極30との間に設けられている。第1絶縁層20は、ゲート絶縁層である。第1絶縁層20は、例えば、窒化シリコン(SiN)等の窒化物を含む層である。また、第1絶縁層20は、例えば、酸化シリコン(SiO)や酸化アルミニウム(Al)等の酸化物を含む膜でも良い。
【0018】
第1絶縁層20は、例えば、第1層20aと、第1層20aに設けられた第2層20bと、を有する。第1絶縁層20は、単層構造や3層以上の層構造を有しても良い。第1絶縁層20が複数の層構造を有する場合、異なる化合物によって各層を形成することができる。
【0019】
ゲート電極30は、例えば、金属等を含む。例えば、ゲート電極30には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、Ta(タンタル)、又はAl(アルミニウム)を含む金属膜が用いられる。ゲート電極30として、窒化チタン(TiN)又は窒化タンタル(TaN)が用いられても良い。ゲート電極30には、アルミニウム合金を用いても良い。アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とし、ヒロック対策が施される。
【0020】
ゲート電極30は、例えば、第1絶縁層20の第1層20aに設けられた第1部分30aと、第1絶縁層20の第2層20bに設けられた第2部分30bと、を有する。第2部分30bは、ドレイン電極50側に向かって第1絶縁層20上にせり出すように設けられている。つまり、本実施形態のゲート電極30は、GFP(Gate Field Plate)構造を有している。
【0021】
また、ゲート電極30の側面は、積層方向に対して傾斜していても良い。つまり、ゲート電極30の側面は、テーパ状でも良い。ゲート電極30の側面をテーパ状にすることで、ゲート電極30の上に形成される第2絶縁層60による被覆性が高まる。被覆性が高まることで、リーク電流を抑制できる。
【0022】
ソース電極40及びドレイン電極50は、半導体層10の電子供給層10bの上に設けられている。ソース電極40及びドレイン電極50は、半導体層10と電気的に接続される。ソース電極40及びドレイン電極50に、モリブデン、チタン(Ti)、タンタル、タングステン、又はアルミニウムを含む金属膜が用いられる。ソース電極40及びドレイン電極50に、窒化モリブデン(MoN)、窒化チタン又は窒化タンタルが用いられても良い。ソース電極40及びドレイン電極50に、これら導電性材料の2つ以上の膜の積層膜を用いても良い。ソース電極40及びドレイン電極50にITO(Indium Tin Oxide)を含む膜を用いても良い。
【0023】
第2絶縁層60は、第1絶縁層20及びゲート電極30の上に設けられている。第2絶縁層60は、例えば、ゲート電極30を覆うように設けられている。第2絶縁層60は、ゲート電極30と、ソース電極40及びドレイン電極50と、を電気的に絶縁する層である。第2絶縁層60は、例えば、酸化シリコンや酸化アルミニウム等の酸化物を含む層である。また、第2絶縁層60は、窒化シリコン等の窒化物を含む膜でも良い。
【0024】
第3絶縁層80は、ソース電極40、ドレイン電極50及び保護層70の上に設けられている。例えば、第3絶縁層80は、酸化シリコン等の酸化物を含む層である。第3絶縁層80は、例えば、オーバーコート層である。第3絶縁層80は、第2絶縁層60と同じ材料を含む層が用いられても良い。
【0025】
保護層70は、第2絶縁層60の上に設けられる。例えば、保護層70は、窒化シリコンや窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物を含む層である。また、保護層70は、酸化シリコン、テオス(Tetra Ethyl Ortho Silicate:TEOS)又は酸化アルミニウムを含む層でも良い。また、保護層70は、高抵抗のポリシリコン等の多結晶シリコンを含む層でも良い。また、保護層70には、窒化シリコン、酸化シリコン、テオス、酸化アルミニウム及び多結晶シリコンの2つ以上の層を積層しても良い。
【0026】
保護層70が第2絶縁層60と第3絶縁層80との間に設けられている場合、保護層70は、第2絶縁層60の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成することができる。また、保護層70は、第3絶縁層80の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成することができる。
【0027】
第2絶縁層60及び第3絶縁層80が酸化シリコンを含む層である場合、保護層70は、窒化シリコンを含む層である。酸化シリコンのバンドギャップ値は、9.0eVであって、窒化シリコンのバンドギャップ値は、5.0eVである。
【0028】
第2絶縁層60及び第3絶縁層80が酸化シリコンを含む層である場合、保護層70は、窒化アルミニウムを含む層である。酸化シリコンのバンドギャップ値は、9.0eVであって、窒化アルミニウムのバンドギャップ値は、6.0eVである。
【0029】
第2絶縁層60及び第3絶縁層80が酸化アルミニウムを含む層である場合、保護層70は、窒化シリコンを含む層である。酸化アルミニウムのバンドギャップ値は、7.0eVであって、窒化シリコンのバンドギャップ値は、5.0eVである。
【0030】
第2絶縁層60及び第3絶縁層80が酸化シリコンを含む層である場合、保護層70は、高抵抗のポリシリコンを含む層である。酸化シリコンのバンドギャップ値は、9.0eVであって、高抵抗のポリシリコンのバンドギャップ値は、1.1eVである。
【0031】
第2絶縁層60及び第3絶縁層80が窒化シリコンを含む層である場合、保護層70は、高抵抗のポリシリコンを含む層である。窒化シリコンのバンドギャップ値は、5.0eVであって、高抵抗のポリシリコンのバンドギャップ値は、1.1eVである。
【0032】
保護層70が、第2絶縁層60及び第3絶縁層80の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成する場合、前述した例に限らず、種々の材料の組み合わせによって、保護層70と、第2絶縁層60及び第3絶縁層80と、を形成することができる。前述した例では、第2絶縁層60の材料と、第3絶縁層80の材料と、は同一であるが、異なっていても良い。
【0033】
前述したように、GFP構造を有する半導体装置100において、保護層70が第2絶縁層60と第3絶縁層80との間に設けられる場合、保護層70のバンドギャップ値と、第2絶縁層60及び第3絶縁層80のバンドギャップ値と間の大小関係が示されている。しかし、バンドギャップ値の大小関係は、このような半導体装置100の構造に限定されるものではない。
【0034】
図2(a)に表すように、ゲート電極30が第1絶縁層20と第2絶縁層60との間に設けられ、保護層70が第2絶縁層60と第3絶縁層80との間に設けられている場合、保護層70が、第2絶縁層60及び第3絶縁層80の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成されても良い。
【0035】
図2(b)に表すように、ゲート電極30が第1絶縁層20と保護層70との間に設けられ、保護層70が第1絶縁層20と第3絶縁層80との間に設けられる場合、保護層70が、第1絶縁層20及び第3絶縁層80の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成されても良い。
【0036】
例えば、図2(c)に表すように、ゲート電極30が第1絶縁層20と第2絶縁層60との間に設けられ、層間絶縁層65が第2絶縁層60と保護層70との間に設けられ、保護層70が層間絶縁層65と第3絶縁層80との間に設けられている。このような場合、保護層70が、層間絶縁層65及び第3絶縁層80の材料のバンドギャップ値より小さいバンドギャップ値を有する材料によって形成されても良い。
【0037】
また、保護層70は、第1領域70aと、第2領域70bと、を有する。例えば、第2領域70bは、第1領域70aの周囲に設けられた領域である。第1領域70aは、例えば、正電荷が蓄積した領域である。例えば、第1領域70aは、シリコン化合物等の正の固定電荷層を設けることで形成される。また、第1領域は、例えば、コロナ放電等のプラズマ処理によって正電荷が保護層70に供給されて形成される。
【0038】
例えば、正電荷が蓄積する第1領域70aは、ソース電極40とドレイン電極50との間に設けられている。電子トラップは、半導体層10と第1絶縁層20との界面や第1絶縁層20内に存在し、第1領域70aの正電荷によって発生する電界は、電子トラップが捕獲した電子(トラップ電荷)によって発生する電界を打ち消すことができる。これにより、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少が抑制される。
また、例えば、第1領域70aは、積層方向においてゲート電極30と重畳しない領域である。これにより、第1領域70aの正電荷によって発生する電界が、ゲート電極30の制御に影響を及ぼすことを抑制する。
【0039】
第1領域70aは、第1領域70aの電荷密度が第2領域70bの電荷密度より高くなるように設けられている。また、第1領域70aの電荷密度は、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量を補償するように設定することができる。例えば、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量をΔNs(cm−2)、第1領域70の厚みをW1(cm)とすると、第1領域70aの電荷密度Nfix(cm−3)は、以下の式(1)によって表される。
【0040】
fix=ΔNs/W1・・・(1)
【0041】
例えば、第1領域70aの電荷密度の値は、1.0×1016cm−3以上になるように設定することができる。
【0042】
ここで、窒化物半導体を用いた半導体装置においては、ソース電極とドレイン電極間に高電圧を印加する等のストレス印加時に、ドレイン電流が減少する電流コラプスという現象が生じることが知られている。半導体層10と第1絶縁層20との界面や第1絶縁層20内に高密度で存在する電子トラップによって、高電圧動作中の電子が捕獲され、捕獲された電子(トラップ電荷)によって発生する電界が電子走行層10aと電子供給層10bとの界面に発生する二次元電子ガスを減少させ空乏化させる。二次元電子ガスの空乏化は、オン抵抗を増加させる。これにより、ドレイン電流が減少する。
【0043】
図3に表すように、半導体装置において、第1領域70aが保護層70に設けられていない場合、半導体層10の電子供給層10bと第1絶縁層20の第1層20aとの界面b1に存在する電子トラップが捕獲した電子e1によって第1電界E1が発生する。第1電界E1は、電子走行層10aと電子供給層10bとの界面b2に発生する二次元電子ガスを減少させ空乏化させる。二次元電子ガスの空乏化は、オン抵抗を増加させ、ドレイン電流を減少させる。
【0044】
本実施形態の半導体装置100において、第2領域70bの電荷密度より高い電荷密度を有する第1領域70aが保護層70に設けられている。このような第1領域70aを設けると、第1領域70aの正電荷によって発生する電界が、電子トラップが捕獲した電子によって発生する電界を打ち消すことができる。これにより、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少が抑制される。
【0045】
例えば、図4に表すように、半導体装置100において、半導体層10の電子供給層10bと第1絶縁層20の第1層20aとの界面b1に存在する電子トラップが捕獲した電子e1によって第1電界E1が発生する。一方、第1領域70aの正電荷によって第2電界E2が発生する。第1電界E1は、第1電界E1と反対方向の第2電界E2によって打ち消されるので、第1電界E1が電子走行層10aと電子供給層10bとの界面b2に影響を及ぼすことを抑制する。これにより、界面b2に発生する二次元電子ガスの減少を抑制し、オン抵抗の増加によるドレイン電流の減少を抑制することができる。
【0046】
以下、上記のような効果を見出す基となった検討結果について説明する。
【0047】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図6は、第1実施形態に係る半導体装置に印加する電圧を示す図である。
図7は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
図8は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を示す図である。
【0048】
図5図7及び図8のいずれにおいても、半導体装置100の特性が示されている。半導体装置100において、保護層70は、酸化シリコン(SiO)層である。また、第1領域70aが保護層70に設けられ、第1領域70aの電荷密度は、2.0×1017cm−3である。図6は、半導体装置100に印加するストレスの波形を示している。図7及び図8のいずれにおいても、図6のようにストレスが印加された場合の半導体装置100の特性が示されている。このような特性がシミュレーションにより評価される。
【0049】
図5は、ドレイン電圧Vd及びドレイン電流Idの関係を示すグラフである。図5の縦軸は、ドレイン電流Id(A)を示している。図5の横軸は、ドレイン電圧Vd(V)を示している。曲線CL1は、半導体装置100に印加されるドレイン電圧Vdと、半導体装置100に流れるドレイン電流Idと、の関係を示す曲線である。曲線CL2は、参考例の曲線であって、保護層70に第1領域70aを設けていない半導体装置におけるドレイン電圧Vd及びドレイン電流Idの関係を示す曲線である。
【0050】
図5に表すように、曲線CL1及び曲線CL2を比較すると、第1領域70aが保護層70に設けられている場合、ドレイン電流Idが増加することが分かった。
【0051】
図6は、パルス時間を1s、ゲート電圧を−15V、ドレイン電圧を500Vとして半導体装置100にストレスを印加した場合、ゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdの波形を示している。図6の縦軸は、電圧V(V)をそれぞれ示している。図6の横軸は、時間t(s)をそれぞれ示している。
【0052】
図7は、ドレイン電圧Vd及びドレイン電流Idの関係を示すグラフである。図7の縦軸は、ドレイン電流Id(A)を示している。図7の横軸は、ドレイン電圧Vd(V)を示している。曲線CL3は、ストレス印加後、半導体装置100に印加されるドレイン電圧Vdと、半導体装置100に流れるドレイン電流Idと、の関係を示す曲線である。曲線CL4は、参考例の曲線であって、ストレス印加後、保護層70に第1領域70aを設けていない半導体装置におけるドレイン電圧Vd及びドレイン電流Idの関係を示す曲線である。なお、曲線CL1及び曲線CL2は、図5の曲線CL1及び曲線CL2であって、ストレス印加前のドレイン電圧Vd及びドレイン電流Idの関係を示す曲線である。
【0053】
図7に表すように、曲線CL1から曲線CL4を比較すると、第1領域70aが保護層70に設けられている場合、ドレイン電流Idの減少を抑制させることが分かった。電子トラップが捕獲した電子によって発生する電界が電子走行層10aと電子供給層10bとの界面に影響を及ぼして二次元電子ガスを減少させることを抑制できることが分かった。
【0054】
図8は、半導体層10の近傍における電子の状態変化を示している。図8の縦軸は、電子走行層10aと電子供給層10bとの界面、つまり、チャネルの断面による電荷密度D(cm−2)を示している。図8の横軸は、積層方向と垂直方向(X方向)を示している。つまり、図8は、半導体層10の近傍のX方向において、チャネルの断面の電荷密度の変化を示している。
【0055】
曲線CL5は、ストレス印加前のX方向の電荷密度を示している。曲線CL6は、ストレスを印加する直前のX方向の電荷密度を示している。曲線CL7は、ストレス印加後のX方向の電荷密度を示している。
【0056】
図8に表すように、曲線CL5〜曲線CL7を比較すると、ストレス印加前とストレス印加後では、曲線の波形に大きな違いがないことが分かった。これは、ストレス印加前から第1領域70aの正電荷による電界が半導体層10の近傍に影響していることを意味する。また、ストレス印加前及びストレス印加後のいずれにおいても、電荷密度が高くなる凸部Pが存在することが分かった。凸部Pによって、電子が注入され易くなる領域が存在することが分かった。
【0057】
図5から図8に表すように、第2領域70bの電荷密度より高い電荷密度を有する第1領域70aを保護層70に設けると、電子走行層10aと電子供給層10bとの界面に発生する二次元電子ガスの減少を抑制し、オン抵抗の増加によるドレイン電流の減少を抑制できることが分かった。
【0058】
本実施形態によれば、電流コラプスを抑制した半導体装置を提供する。
【0059】
図9(a)〜図9(d)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図9(a)に表すように、半導体層10と、第1絶縁層20と、ゲート電極30と、ソース電極40と、ドレイン電極50と、第2絶縁層60を有する積層体90を形成する。
【0060】
半導体層10は、電子走行層10aと、電子供給層10bと、を有する。例えば、シリコン等の基板上に電子走行層10a及び電子供給層10bを形成する。半導体層10は、例えば、MOCVD法等のエピタキシャル成長法を用いて形成される。その後、半導体層10に第1絶縁層20を形成する。第1絶縁層20は、窒化シリコン等を含む層であって、例えば、第1層20aと、第1層20aに形成された第2層20bと、を有する。
【0061】
ゲート電極30が第1絶縁層20の上に形成され、ソース電極40及びドレイン電極50が半導体層10の上に形成される。例えば、蒸着法やスパッタリング法によって金属膜を成膜した後、金属膜をエッチングして各電極を形成する。金属膜の成膜後にマスク蒸着法やリフトオフ法を用いて各電極を形成しても良い。ゲート電極30は、例えば、第1絶縁層20の第1層20aの上に形成された第1部分30aと、第1絶縁層20の第2層20bの上に形成された第2部分30bと、を有する。
【0062】
第2絶縁層60が、ゲート電極30を覆うように第1絶縁層20及びゲート電極30の上に形成される。第2絶縁層60は、酸化シリコン等を含む層である。第2絶縁層60は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成される。
【0063】
図9(b)に表すように、第2絶縁層60の上に保護層70を形成した後、レジストマスク91を保護層70の上に形成する。保護層70は、窒化シリコン等を含む層である。保護層70は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。
【0064】
図9(c)に表すように、レジストマスク91上からコロナ放電処理を行って正電荷を保護層70に供給し、保護層70に第1領域70aを形成する。例えば、高周波電源を用いた電極間の放電によって正コロナ照射を行い、正電荷を保護層70に供給する。これにより、第2領域70bの電荷密度より高い電荷密度を有する第1領域70aが保護層70に形成される。正コロナ照射後、レジストマスク91を剥離する。なお、シリコン化合物等の正の固定電荷層によって保護層70に第1領域70aを形成しても良い。
【0065】
例えば、第1領域70aは、ソース電極40とドレイン電極50との間であって、積層方向においてゲート電極30と重畳しないように形成される。また、第1領域70aの電荷密度は、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量を補償するように設定することができる。例えば、第1領域70aの電荷密度は、1.0×1016cm−3以上になるように設定することができる。
【0066】
図9(d)に表すように、ソース電極40、ドレイン電極50及び保護層70の上に第3絶縁層80を形成する。第3絶縁層80は、酸化シリコン等を含む層である。第3絶縁層80は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。
【0067】
本実施形態によれば、電流コラプスを抑制した半導体装置の製造方法を提供する。
【0068】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る半導体装置を示す模式図である。
図10は、半導体装置110の断面図を示している。
【0069】
図10に表すように、半導体装置110には、半導体層10と、第1絶縁層20と、ゲート電極30と、ソース電極40と、ドレイン電極50と、第2絶縁層60と、保護層71と、が設けられている。なお、半導体層10から第1絶縁層20に向かう方向が積層方向である。
【0070】
第1絶縁層20は、半導体層10(電子供給層10b)とゲート電極30との間に設けられている。第1絶縁層20は、ゲート絶縁層である。
【0071】
ゲート電極30は、例えば、第1絶縁層20の第1層20aの上に設けられた第1部分30aと、第1絶縁層20の第2層20bの上に設けられた第2部分30bと、を有する。
【0072】
ソース電極40及びドレイン電極50は、半導体層10の電子供給層10bの上に設けられている。ソース電極40及びドレイン電極50は、半導体層10と電気的に接続される。また、ソース電極40は、第2絶縁層60の一部を覆うように設けられている。これにより、ソース電極40は、積層方向においてゲート電極30と重畳する。
【0073】
第2絶縁層60は、第1絶縁層20及びゲート電極30の上に設けられている。第2絶縁層60は、例えば、ゲート電極30を覆うように設けられている。
【0074】
保護層71は、ソース電極40、ドレイン電極50及び第2絶縁層60の上に設けられる。保護層71は、ソース電極40、ドレイン電極50及び第2絶縁層60を覆うように設けられている。保護層71を覆うように、酸化シリコン等の酸化物を含む第3絶縁層80を設けても良い。
【0075】
保護層71は、積層方向において第2絶縁層60と重畳する第1領域71aと、積層方向においてソース電極40と重畳する第2領域71bと、積層方向においてドレイン電極50と重畳する第3領域71cと、を有する。第1領域71aは、積層方向と垂直方向において、第2領域71bと第3領域71cとの間に設けられている。
【0076】
例えば、保護層71は、窒化シリコンや窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物を含む層である。また、保護層71は、酸化シリコン、テオス(Tetra Ethyl Ortho Silicate:TEOS)又は酸化アルミニウムを含む層でも良い。また、保護層71は、高抵抗のポリシリコン等の多結晶シリコンを含む層でも良い。また、保護層71には、窒化シリコン、酸化シリコン、テオス、酸化アルミニウム及び多結晶シリコンの2つ以上の層を積層しても良い。
【0077】
また、保護層71(第1領域71aから第3領域71c)内の電荷密度は、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量を補償するように設定することができる。電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量をΔNs(cm−2)、保護層71の厚みをW2(cm)とすると、保護層71内の電荷密度Nfix(cm−3)は、以下の式(2)によって表される。
【0078】
fix=ΔNs/W2・・・(2)
【0079】
例えば、保護層71内の電荷密度の値は、1.0×1016cm−3以上になるように設定することができる。つまり、保護層71は、正電荷が蓄積した層に相当する。
【0080】
例えば、保護層71の第1領域71aは、ソース電極40とドレイン電極50との間に設けられている。電子トラップは、半導体層10と第1絶縁層20との界面や第1絶縁層20内に存在し、第1領域71aの正電荷によって発生する電界は、電子トラップが捕獲した電子(トラップ電荷)によって発生する電界を打ち消すことができる。これにより、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少が抑制される。
また、例えば、ソース電極40は、積層方向においてゲート電極30と保護層71との間に設けられている。これにより、保護層71の第2領域71bの正電荷によって発生する電界は、ソース電極40によって遮蔽されるので、ゲート電極30の制御に影響を及ぼすことを抑制する。
【0081】
本実施形態の半導体装置110には、正電荷が蓄積した保護層71が設けられている。このような保護層71を設けると、保護層71の第1領域71aの正電荷によって発生する電界が、電子トラップが捕獲した電子によって発生する電界を打ち消すことができる。これにより、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少が抑制される。
【0082】
本実施形態によれば、電流コラプスを抑制した半導体装置を提供する。
【0083】
図11(a)〜図11(c)は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図11(a)に表すように、半導体層10と、第1絶縁層20と、ゲート電極30と、第2絶縁層60と、を有する積層体92を形成した後、積層体92に導電膜93を形成する。
【0084】
積層体92は、以下のように形成される。
半導体層10は、電子走行層10aと、電子供給層10bと、を有する。例えば、シリコン等の基板上に電子走行層10a及び電子供給層10bを形成する。半導体層10は、例えば、MOCVD法等のエピタキシャル成長法を用いて形成される。その後、第1絶縁層20は、半導体層10に形成される。第1絶縁層20は、窒化シリコン等を含む層であって、例えば、第1層20aと、第1層20aに形成された第2層20bと、を有する。
【0085】
ゲート電極30が第1絶縁層20の上に形成される。ゲート電極30は、例えば、蒸着法やスパッタリング法によって金属膜を成膜した後、金属膜をエッチングして形成する。金属膜の成膜後にマスク蒸着法やリフトオフ法を用いてゲート電極30を形成しても良い。ゲート電極30は、例えば、第1絶縁層20の第1層20aに形成された第1部分30aと、第1絶縁層20の第2層20bに形成された第2部分30bと、を有する。
【0086】
第2絶縁層60が、ゲート電極30を覆うように第1絶縁層20及びゲート電極30の上に形成される。第2絶縁層60は、酸化シリコン等を含む層である。第2絶縁層60は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成される。
【0087】
積層体92の形成後、積層体92の上に導電膜93を形成する。導電膜93は、半導体層10(電子供給層10b)に電気的に接続して第1絶縁層20及び第2絶縁層60を覆うように形成される。導電膜93は、例えば、金属膜であって、蒸着法やスパッタリング法によって形成される。
【0088】
図11(b)に表すように、導電膜93の一部をエッチングしてソース電極40及びドレイン電極50を形成する。導電膜93が金属膜である場合、金属膜の成膜後にマスク蒸着法やリフトオフ法を用いてソース電極40及びドレイン電極50を形成しても良い。
【0089】
図11(c)に表すように、ソース電極40、ドレイン電極50及び第2絶縁層60の上に保護層71を形成する。保護層71は、ソース電極40、ドレイン電極50及び第2絶縁層60を覆うように形成される。保護層71は、窒化シリコン等を含む層である。保護層71は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。
【0090】
プラズマCVD法を用いて窒化シリコン等の保護層71を形成する場合、成膜温度を400℃、原料ガスをSi−NHの混合ガスとして保護層71を形成することができる。保護層71内の電荷密度は、NHの流量や成膜装置の出力によって制御される。これにより、保護層71内の電荷密度は、電流コラプスによる二次元電子ガスの濃度の減少量を補償するように設定される。例えば、保護層71内の電荷密度は、1.0×1016cm−3以上になるように設定することができる。
【0091】
保護層71を形成した後、保護層71を覆うように、酸化シリコン等の酸化物を含む第3絶縁層80を形成しても良い。第3絶縁層80は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。
【0092】
本実施形態によれば、電流コラプスを抑制した半導体装置の製造方法を提供する。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10…半導体層、 10a…電子走行層、 10b…電子供給層、 20…第1絶縁層、 20a…第1層、 20b…第2層、 30…ゲート電極、 30a…第1部分、 30b…第2部分、 40…ソース電極、 50…ドレイン電極、 60…第2絶縁層、 65…層間絶縁層、 70、71…保護層、 70a、71a…第1領域、 70b、71b…第2領域、 71c…第3領域、 80…第3絶縁層、 90、92…積層体、 91…レジストマスク、 93…導電膜、 100、110…半導体装置、 b1、b2…界面、 CL1〜CL7…曲線、 e1…電子、 E1…第1電界、 E2…第2電界、 P…凸部、 Vd…ドレイン電圧、 Vg…ゲート電圧、 W1、W2…厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11