(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行可能距離算出部は、前記第1算出処理として、前記添加液の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す添加液消費率に前記添加液の残量を乗算することにより前記走行可能距離を算出する処理を実行する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載内燃機関の排気浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が坂路を走行している場合や加減速時などには、タンク内の添加液の液面が傾くため、レベルセンサによって検出される液面レベルが変化し、これにより液面レベルに基づいて算出される添加液残量も変化する。そして、添加液残量が変化すると、添加液残量を参照して算出される走行可能距離も変化し、これにより表示器に表示される走行可能距離も変化する。
【0006】
例えば、液面の傾きによって添加液残量が多くなる方向に変化すると、添加液残量の変化前と比較して、表示される走行可能距離は増加する。逆に、液面の傾きによって添加液残量が少なくなる方向に変化すると、この添加液残量の変化前と比較して、表示される走行可能距離は減少する。
【0007】
従って、通常、走行可能距離は車両の走行に伴って徐々に短くなっていくものであるが、液面が傾いた場合には、走行可能距離が増加したり、実際に車両が走行した距離に対して走行可能距離が急激に減少したりするおそれがあり、通常時の上記変化傾向とは異なる変化傾向を示すおそれがある。
【0008】
ここで、添加液残量が少ないときには、添加液残量が多いときと比較して、算出される走行可能距離は短くなる。また、液面の傾きに起因する走行可能距離の変化量がたとえ同じであったとしても、変化前の走行可能距離が短いときには、長いときと比較して、変化前の走行可能距離に対する走行可能距離の変化量の割合いが大きくなる。そのため、添加液残量が少なく、表示器に表示される走行可能距離が短いときには、長いときと比較して、車両運転者は走行可能距離が変化したときの変化度合が大きいと感じやすい。
【0009】
従って、添加液残量が少ないときには、上述したような通常の変化傾向とは異なる表示器での走行可能距離の変化傾向、つまり走行可能距離の増加や急激な減少といった走行可能距離の変化が車両運転者に対して違和感を与えるおそれがある。
【0010】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、添加液残量に応じた走行可能距離を表示する場合に、その表示された走行可能距離が車両運転者に違和感を与えることを抑制できる車載内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する車載内燃機関の排気浄化装置は、車載内燃機関の排気を浄化するために排気に添加液を添加する排気浄化装置であって、前記添加液を貯留するタンクに設けられて前記添加液の液面の高さを示す液面レベルを検出するレベルセンサと、前記レベルセンサによって検出された前記液面レベルに基づいて前記タンク内の前記添加液の残量を算出する残量算出部と、前記添加液を使った排気の浄化を行いながら車両が走行できる走行可能距離を算出する走行可能距離算出部と、前記走行可能距離算出部にて算出された前記走行可能距離を記憶する記憶部と、前記走行可能距離を算出してから次に前記走行可能距離を算出するまでの車両の走行距離である期間走行距離を算出する期間走行距離算出部と、車室内に設けられて前記走行可能距離算出部にて算出された前記走行可能距離を表示する表示器とを備えている。そして、前記走行可能距離算出部は、前記添加液の残量が所定量を超えているときには、前記添加液の残量を参照して前記走行可能距離を算出する第1算出処理を実行し、前記添加液の残量が前記所定量以下となった以降は、前記記憶部に記憶されている前回算出された前記走行可能距離から前記期間走行距離を減算することによって前記走行可能距離を算出する第2算出処理を実行する。
【0012】
同構成によれば、添加液の残量が所定量以下にまで少なくなると、添加液を使った排気の浄化を行いながら車両が走行できる走行可能距離を算出する処理は、添加液の残量を参照する第1算出処理から、上記期間走行距離を前回算出された走行可能距離から減算することによって走行可能距離を算出する第2算出処理に切り替えられる。
【0013】
このように車両の走行距離を減算することによって走行可能距離を算出する処理が実行されるため、表示器に表示される走行可能距離は実際の走行距離に応じて徐々に少なくなっていく。そのため、走行可能距離が増加したり、走行可能距離が急激に減少したりするといった不都合の発生が抑えられる。従って、表示器に表示された走行可能距離が車両運転者に違和感を与えることを抑えることができるようになる。
【0014】
車両の走行距離は、車両速度と時間とを乗算することにより求めることができる。そこで、上記排気浄化装置の一態様として、車両速度を取得する取得部を備えており、前記期間走行距離算出部は、前記走行可能距離を算出するときの前記車両速度と前記走行可能距離の算出周期時間とに基づいて前記期間走行距離を算出する構成を採用することにより、走行可能距離を算出してから次に走行可能距離を算出するまでの車両の走行距離である期間走行距離を算出することができる。
【0015】
また、上記排気浄化装置の一態様として、前記走行可能距離が所定値以下となった時点から前記走行可能距離を前記表示器に表示する表示判定部を備える構成を採用することができる。
【0016】
同構成によれば、走行可能距離が所定値以下となった時点から表示器に走行可能距離が表示されるようになるため、走行可能距離を常時表示する場合と比較して、添加液の補充を促す警告が行われていることを車両運転者に気付かせやすくなる。
【0017】
また、上記排気浄化装置の一態様として、前記所定量は、前記添加液の補給を促す警告が必要な前記添加液の残量であるという構成を採用することができる。
同構成によれば、添加液の補給を促す警告が必要になる量にまでタンク内の添加液残量が低下した以降、つまり添加液の残量が少なくなっており、走行可能距離の変化量の割合いが大きくなる状態のときには、上述の期間走行距離の減算を通じて走行可能距離の算出を行う上記第2算出処理を実行することができるようになる。
【0018】
また、上記排気浄化装置の一態様として、前記走行可能距離算出部は、前記第1算出処理として、前記添加液の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す添加液消費率に前記添加液の残量を乗算することにより前記走行可能距離を算出する処理を実行する構成を採用することができる。
【0019】
なお、上記添加液消費率とは、上述したように添加液の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す値であり、より具体的には車両走行距離(km)を「B」、車両が「B」の距離だけ走行した間に消費された添加液の量(L)を「A」とした場合に、「B/A」(km/L)で求められる値である。
【0020】
同構成によれば、添加液の残量が前記所定量を超えているときには、添加液の残量及び添加液の消費率に基づき、添加液の残量を参照した走行可能距離の算出が行われるようになるため、添加液の残量に応じた走行可能距離を適切に算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、車載内燃機関の排気浄化装置を具体化した一実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。なお、本実施形態における内燃機関は、ディーゼルエンジンであり、以下では単に「エンジン」という。
【0023】
図1に示すように、エンジン1には複数の気筒#1〜#4が設けられている。シリンダヘッド2には複数の燃料噴射弁4a〜4dが取り付けられている。これら燃料噴射弁4a〜4dは対応する気筒#1〜#4の燃焼室に燃料を噴射する。また、シリンダヘッド2には新気を気筒内に導入するための吸気ポートと、燃焼ガスを気筒外へ排出するための排気ポート6a〜6dとが各気筒#1〜#4に対応して設けられている。
【0024】
燃料噴射弁4a〜4dは、高圧燃料を蓄圧するコモンレール9に接続されている。コモンレール9はサプライポンプ10に接続されている。サプライポンプ10は燃料タンク内の燃料を吸入するとともにコモンレール9に高圧燃料を供給する。コモンレール9に供給された高圧燃料は、各燃料噴射弁4a〜4dの開弁時に同燃料噴射弁4a〜4dから気筒内に噴射される。
【0025】
吸気ポートにはインテークマニホールド7が接続されている。インテークマニホールド7は吸気通路3に接続されている。この吸気通路3内には吸入空気量を調整するための吸気絞り弁16が設けられている。
【0026】
排気ポート6a〜6dにはエキゾーストマニホールド8が接続されている。エキゾーストマニホールド8は排気通路26に接続されている。
排気通路26の途中には、排気圧を利用して気筒に導入される吸入空気を過給するターボチャージャ11が設けられている。同ターボチャージャ11の吸気側コンプレッサと吸気絞り弁16との間の吸気通路3にはインタークーラ18が設けられている。このインタークーラ18によって、ターボチャージャ11の過給により温度上昇した吸入空気の冷却が図られる。
【0027】
また、排気通路26の途中にあって、ターボチャージャ11の排気側タービンの下流には、排気を浄化する第1浄化部材30が設けられている。この第1浄化部材30の内部には、排気の流れ方向に対して直列に酸化触媒31及びDPF触媒32が配設されている。
【0028】
酸化触媒31には、排気中のHCを酸化処理する触媒が担持されている。また、DPF触媒32は、排気中のPM(粒子状物質)を捕集するフィルタであって多孔質のセラミックで構成されており、さらにはPMの酸化を促進させるための触媒が担持されている。排気中のPMは、DPF触媒32の多孔質の壁を通過する際に捕集される。
【0029】
また、エキゾーストマニホールド8の集合部近傍には、酸化触媒31やDPF触媒32に添加剤として燃料を供給するための燃料添加弁5が設けられている。この燃料添加弁5は、燃料供給管27を介して前記サプライポンプ10に接続されている。なお、燃料添加弁5の配設位置は、排気系にあって第1浄化部材30の上流側であれば適宜変更するも可能である。
【0030】
また、排気通路26の途中にあって、第1浄化部材30の下流には、排気を浄化する第2浄化部材40が設けられている。第2浄化部材40の内部には、添加液を利用して排気中のNOxを還元浄化する排気浄化触媒としての選択還元型NOx触媒(以下、SCR触媒という)41が配設されている。
【0031】
さらに、排気通路26の途中にあって、第2浄化部材40の下流には、排気を浄化する第3浄化部材50が設けられている。第3浄化部材50の内部には、排気中のアンモニアを浄化するアンモニア酸化触媒51が配設されている。
【0032】
エンジン1には、上記SCR触媒41に添加液としての尿素水を供給する尿素水供給機構200が設けられている。尿素水供給機構200は、尿素水を貯留するタンク210、排気通路26内に尿素水を噴射添加する尿素添加弁230、尿素添加弁230とタンク210とを接続する供給通路240、供給通路240の途中に設けられたポンプ220、タンク210内に貯留された尿素水の液面の高さを示す液面レベルを検出するレベルセンサ250等で構成されている。なお、レベルセンサ250のセンサ値を、以下ではレベルセンサ値Lといい、このレベルセンサ値Lに基づいてタンク210内の尿素水の残量が算出される。ちなみに、本実施形態のレベルセンサ250としては、液面レベルの変化を段階的に検出することのできるセンサが用いられているが、液面レベルの変化を連続的に検出することのできるセンサに変更してもよい。
【0033】
尿素添加弁230は、第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26に設けられており、その噴射孔はSCR触媒41に向かって開口されている。この尿素添加弁230が開弁されると、供給通路240を介して排気通路26内に尿素水が噴射供給される。
【0034】
ポンプ220は電動式のポンプであり、正回転時には、タンク210から尿素添加弁230に向けて尿素水を送液する。一方、逆回転時には、尿素添加弁230からタンク210に向けて尿素水を送液する。つまり、ポンプ220の逆回転時には、尿素添加弁230及び供給通路240から尿素水が回収されてタンク210に戻される。
【0035】
また、尿素添加弁230とSCR触媒41との間の排気通路26内には、尿素添加弁230から噴射された尿素水を分散させることにより同尿素水の霧化を促進する分散板60が設けられている。
【0036】
尿素添加弁230から噴射された尿素水は、排気熱を利用した加水分解によりアンモニアへと変化する。このアンモニアはSCR触媒41に吸着される。そしてSCR触媒41に吸着されたアンモニアによりNOxが還元浄化される。
【0037】
この他、エンジン1には排気再循環装置(以下、EGR装置という)が備えられている。このEGR装置は、排気の一部を吸入空気に導入することで気筒内の燃焼温度を低下させ、NOxの発生量を低減させる装置である。このEGR装置は、吸気通路3とエキゾーストマニホールド8とを連通するEGR通路13、同EGR通路13に設けられたEGR弁15、及びEGRクーラ14等により構成されている。EGR弁15の開度が調整されることにより排気通路26から吸気通路3に導入される排気還流量、いわゆる外部EGR量が調量される。また、EGRクーラ14によってEGR通路13内を流れる排気の温度が低下される。
【0038】
エンジン1には、機関運転状態を検出するための各種センサやスイッチが取り付けられている。例えば、エアフロメータ19は吸気通路3内の吸入空気量GAを検出する。絞り弁開度センサ20は吸気絞り弁16の開度を検出する。クランク角センサ21はクランクシャフトの回転速度、すなわち機関回転速度NEを検出する。アクセル操作量センサ22はアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル操作量ACCPを検出する。外気温度センサ23は、外気温度THoutを検出する。車速センサ24はエンジン1が搭載された車両の走行速度である車速SPDを検出する。
【0039】
また、酸化触媒31の上流に設けられた第1排気温度センサ100は、酸化触媒31に流入する前の排気温度である第1排気温度TH1を検出する。差圧センサ110は、DPF触媒32の上流及び下流の排気圧の圧力差ΔPを検出する。
【0040】
第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26にあって、尿素添加弁230の上流には、第2排気温度センサ120及び第1NOxセンサ130が設けられている。第2排気温度センサ120は、SCR触媒41に流入する前の排気温度である第2排気温度TH2を検出する。第1NOxセンサ130は、SCR触媒41に流入する前の排気中のNOx濃度である第1NOx濃度N1を検出する。
【0041】
第3浄化部材50よりも下流の排気通路26には、SCR触媒41を通過した排気中のNOx濃度である第2NOx濃度N2を検出する第2NOxセンサ140が設けられている。
【0042】
これら各種センサ等の出力は制御装置80に入力される。この制御装置80は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶した数値を電気的に書き換えることができる不揮発性メモリ80a(例えばEEPROMなど)、各種インターフェース等を備えている。
【0043】
そして、制御装置80により、例えば燃料噴射弁4a〜4dや燃料添加弁5の燃料噴射量制御・燃料噴射時期制御、サプライポンプ10の吐出圧力制御、吸気絞り弁16を開閉するアクチュエータ17の駆動量制御、EGR弁15の開度制御等、エンジン1の各種制御が行われる。
【0044】
制御装置80は、排気浄化制御の一つとして、上記尿素添加弁230による尿素水の添加制御を行う。この添加制御では、エンジン1から排出されるNOxを還元処理するために必要な尿素添加量の目標値である目標添加量QEが機関運転状態等に基づいて算出される。そして、目標添加量QEに相当する分の尿素水が尿素添加弁230から噴射されるように、尿素添加弁230の開弁状態が制御される。
【0045】
また、制御装置80は、尿素水を使った排気の浄化を行いながら車両が走行できる走行可能距離を、換言すれば現在の尿素水の残量で走行することのできる走行可能距離を尿素水の残量を参照するなどして算出する。そして、制御装置80は、算出した走行可能距離を車両運転者に知らせることにより尿素水の残量に関する報知、換言すれば尿素水の補充を促す報知を行う。
【0046】
この車両運転者に対する報知は、制御装置80に接続された表示器70を使って行われる。表示器70は、例えば車室内のメータパネル内に設けられており、制御装置80からの指令を受けて上記走行可能距離を表示する。なお、その表示方法としては、走行可能距離を数値で表示したり、バーグラフなどで表示したりすることができる。
【0047】
以下、上記走行可能距離の算出及び尿素水の残量に関する報知を行う処理について説明する。なお、この処理は制御装置80によって所定の実行周期EP毎に実行される。
図2に示すように、本処理が開始されると、まず、現在のレベルセンサ値Lが読み込まれる(S100)。
【0048】
次に、読み込んだレベルセンサ値Lに基づいてタンク210内の尿素水の残量である尿素水残量NRが算出される(S110)。この尿素水残量NRの算出処理は、適宜行うことができる。例えば、「レベルセンサ値Lに対応する尿素水残量」から「レベルセンサ値Lが変化してからの目標添加量QEの積算値(つまりレベルセンサ値Lが変化してからの尿素水消費量に相当する量)」を減算することにより、現状の尿素水残量NRが算出される。この他、レベルセンサ250が、液面レベルの変化を連続的に検出することのできるセンサである場合には、レベルセンサ値Lに所定の係数を乗じたり、あるいはレベルセンサ値Lを引数とするマップから尿素水残量NRを読み出すなどして尿素水残量NRを算出することも可能である。
【0049】
次に、算出された尿素水残量NRが予め定められた閾値A以下であるか否かが判定される(S300)。この閾値Aには、タンク210への尿素水の補給を促す警告が必要になる程度の尿素水の残量が設定されている。
【0050】
そして、尿素水残量NRが閾値Aを超えているときには(S300:NO)、第1算出処理を実行して走行可能距離DAが算出される(S400)。この第1算出処理では、尿素水残量NRを参照して走行可能距離DAが算出される。
【0051】
図3に示すように、この第1算出処理が実行されると、まず、車速SPDが読み込まれる(S410)。
次に、走行可能距離DAを算出してから次に走行可能距離DAを算出するまでの間、つまり走行可能距離DAの算出周期時間の間に車両が走行した距離である期間走行距離DPが算出される(S420)。なお、この算出周期時間は、
図2に示した一連の処理の実行周期EPの時間に一致する時間である。
【0052】
このステップS420では、今回の実行周期にて走行可能距離DAを算出するときの車速SPD、つまりステップS410で読み込んだ車速SPDに実行周期EPを乗算することにより期間走行距離DPが算出される。
【0053】
次に、積算走行距離DSが算出される(S430)。この積算走行距離DSは、期間走行距離DPを積算した値であり、積算走行距離DSの前回値(つまり前回の算出周期で算出された積算走行距離DS)に対してステップS420で算出された期間走行距離DPを加算することによって今回の算出周期における積算走行距離DSが算出される。なお、この積算走行距離DSは、タンク210への尿素水補給が行われると「0」にリセットされる。
【0054】
次に、積算尿素水消費量NSが算出される(S440)。この積算尿素水消費量NSは、積算走行距離DSの算出が開始されてから現在までに消費された尿素水の総量である。そして、尿素水残量NRの初期値、つまり積算走行距離DSの算出が開始されたときの尿素水残量NRから尿素水残量NRの現在値(=ステップS200で算出された尿素水残量NR)を減算することによって今回の算出周期における積算尿素水消費量NSが算出される。ちなみに、上述した尿素水残量NRの初期値は、通常、タンク210に尿素水が補給された直後の尿素水残量NRと同じである。
【0055】
次に、平均尿素水消費率NAVが算出される(S450)。この平均尿素水消費率NAVは、尿素水の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す尿素水消費率であり、積算走行距離DS(単位:Km)を積算尿素水消費量NS(単位:L)で除算することによって算出される(NAV=DS/NS)。つまりこの平均尿素水消費率NAVは、尿素水1Lで走行することのできる走行可能距離を表す値である。
【0056】
次に、尿素水残量NRの現在値に平均尿素水消費率NAVを乗算することにより、現在の尿素水の残量で走行することのできる走行可能距離DAが算出される(S460)。
次に、算出された走行可能距離DAが、記憶部を構成する不揮発性メモリ80aに記憶される(S470)。なお、このステップS470において走行可能距離DAの記憶が行われると、不揮発性メモリ80aに記憶されていた走行可能距離DAの前回値は消去されて、今回算出された最新の走行可能距離DAのみが保持される。そして、この第1算出処理は終了されて、先の
図2に示したステップS600以降の処理が引き続き実行される。
【0057】
一方、先の
図2に示した上記ステップS300にて、尿素水残量NRが閾値A以下であると判定されるときには(
図2のS300:YES)、第2算出処理を実行して走行可能距離DAが算出される(S500)。この第2算出処理では、尿素水残量NRを参照した走行可能距離DAの算出に代えて、前回算出された走行可能距離DAから期間走行距離DPを減算することによって今回の走行可能距離DAが算出される。
【0058】
図4に示すように、この第2算出処理が実行されると、まず、車速SPDが読み込まれる(S510)。
次に、上述した期間走行距離DP、つまり走行可能距離DAを算出してから次に走行可能距離DAを算出するまでの間に、換言すれば走行可能距離DAの算出周期時間の間に車両が走行した距離である上記期間走行距離DPが算出される(S520)。なお、この場合の算出周期時間も、
図2に示した一連の処理の実行周期EPの時間に一致する。
【0059】
このステップS520でも、上記ステップS420と同様に、今回の実行周期にて走行可能距離DAを算出するときの車速SPD、つまりステップS510で読み込んだ車速SPDに実行周期EPを乗算することにより期間走行距離DPが算出される。
【0060】
次に、走行可能距離DAが算出される(S530)。このステップS530では、走行可能距離DAの前回値(つまり前回の算出周期で算出された走行可能距離であって不揮発性メモリ80aに記憶されている走行可能距離DA)からステップS520で算出された期間走行距離DPを減算することによって、今回の算出周期における走行可能距離DAが算出される。なお、このステップS530が最初に実行されるときの走行可能距離DAの前回値とは、尿素水残量NRが閾値A以下になる直前において上記第1算出処理により算出された走行可能距離DA、つまり上記第1算出処理によって算出された最後の走行可能距離DAである。従って、第2算出処理が繰り返されることにより、同第2算出処理にて算出される走行可能距離DAは、第1算出処理によって算出された最後の走行可能距離DAから期間走行距離DPずつ短くなっていく。
【0061】
次に、算出された走行可能距離DAが、記憶部を構成する不揮発性メモリ80aに記憶される(S540)。なお、このステップS540においても、走行可能距離DAの記憶が行われると、不揮発性メモリ80aに記憶されていた走行可能距離DAの前回値は消去されて、今回算出された最新の走行可能距離DAのみが保持される。そして、この第2算出処理は終了されて、先の
図2に示したステップS600以降の処理が引き続き実行される。
【0062】
ステップS400またはステップS500にて走行可能距離DAが算出されると、その算出された走行可能距離DAが警告距離W以下であるか否かが判定される(S600)。この警告距離Wとしては、走行可能距離DAが警告距離W以下であることに基づいて、車両運転者に対して尿素水の残量に関する報知を行わなければならない程度に走行可能距離DAが短くなっていることを判定することのできる値が予め設定されている。
【0063】
そして、走行可能距離DAが警告距離Wよりも長い距離である場合には(S600:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、走行可能距離DAが警告距離W以下である場合には(S600:YES)、車両運転者等に対する報知処理が実行される(S700)。この報知処理が実行されると、表示器70には現在の走行可能距離DAが表示される。より具体的には、今まで表示されていなかった走行可能距離DAが報知処理の実行によって表示されるようになる。こうした表示器70への走行可能距離DAの表示によって、尿素水の補充を促す警告が行われる。
【0064】
そして、本処理は一旦終了される。
上述した一連の処理を実行する制御装置80は、尿素水の残量を算出する残量算出部、尿素水を使った排気の浄化を行いながら車両が走行できる走行可能距離を算出する走行可能距離算出部、及び走行可能距離を算出してから次に走行可能距離を算出するまでの車両の走行距離である期間走行距離を算出する期間走行距離算出部として機能する。また、上述した一連の処理を実行する制御装置80は、車両速度を取得する取得部、及び走行可能距離が所定値以下となった時点から走行可能距離を表示器に表示する表示判定部としても機能する。
【0065】
次に、上記一連の処理による作用を説明する。
図5に示すように、尿素水添加によってタンク210内の尿素水が減少していくと、液面レベルが低下していき、これによりレベルセンサ値Lは段階的に変化していく。また、レベルセンサ値Lに基づいて算出される尿素水残量NRは徐々に少なくなっていく。
【0066】
尿素水残量NRが上記閾値Aを超えている間は、上述した第1算出処理によって走行可能距離DAが算出される。この第1算出処理では、上記ステップS460等に示したように、尿素水残量NRを参照して走行可能距離DAが算出されるため、尿素水残量NRの減少に伴って走行可能距離DAも短くなっていく。
【0067】
ところで、尿素水残量NRが上記閾値Aよりも少ないときに(
図5に示す時刻t1以降)、上記第1算出処理による走行可能距離DAの算出を行うと、次のような不都合の発生が懸念される。
【0068】
すなわち、車両が坂路を走行したり加減速を行ったりすると、タンク210内の尿素水の液面が傾くため、レベルセンサ250によって検出される液面レベルが変化し、これによりレベルセンサ値Lが変化する(
図5に示す時刻t2〜時刻t3)。レベルセンサ値Lが変化すると、レベルセンサ値Lに基づいて算出される尿素水残量NRも変化する。このようにして尿素水残量NRが変化すると、第1算出処理では尿素水残量NRを参照して走行可能距離DAを算出するため、二点鎖線L1にて示すように、算出される走行可能距離DAも変化し、これにより表示器70に表示される走行可能距離DAも変化する。
【0069】
例えば、液面の傾きによって尿素水残量NRが多くなる方向に変化すると、尿素水残量NRの変化前と比較して、表示される走行可能距離DAは増加する。逆に、液面の傾きによって尿素水残量NRが少なくなる方向に変化すると、尿素水残量NRの変化前と比較して、表示される走行可能距離DAは減少する。
【0070】
従って、通常、走行可能距離DAは車両の走行に伴って徐々に短くなっていくものであるが、液面が傾いた場合には、走行可能距離DAが増加したり、実際に車両が走行した距離に対して走行可能距離DAが急激に減少したりするおそれがあり、通常時の上記変化傾向とは異なる変化傾向を示すおそれがある。
【0071】
ここで、尿素水残量NRが少ないときには、尿素水残量NRが多いときと比較して、算出される走行可能距離DAは短くなる。また、液面の傾きに起因する走行可能距離DAの変化量がたとえ同じであったとしても、変化前の走行可能距離DAが短いときには、長いときと比較して、変化前の走行可能距離DAに対する走行可能距離DAの変化量の割合いが大きくなる。例えば、液面の傾きに起因する走行可能距離DAの変化量が「1」であって、変化前の走行可能距離DAが「100」である場合には、変化前の走行可能距離DAに対する走行可能距離DAの変化量の割合いは、「1/100×100=1%」になる。一方、変化前の走行可能距離DAが「10」である場合には、変化前の走行可能距離DAに対する走行可能距離DAの変化量の割合いは、「1/10×100=10%」になる。なお、上記「1」、「10」、及び「100」といった各数値は、便宜上、数値の大きさの違いを説明するために用いた相対的な値であり、実際の距離を直接示す値とは異なっている。
【0072】
このように尿素水の残量が少なく、表示器70に表示される走行可能距離DAが短いときには、長いときと比較して、変化前の走行可能距離DAに対する走行可能距離DAの変化量の割合いが大きくなるため、車両運転者は走行可能距離DAが変化したときの変化度合が大きいと感じやすい。
【0073】
従って、尿素水の残量が少ないときには、上述したような通常の変化傾向とは異なる表示器70での走行可能距離DAの変化傾向、つまり走行可能距離DAの増加や急激な減少といった走行可能距離DAの変化が車両運転者に対して違和感を与えるおそれがある。
【0074】
この点、本実施形態では、尿素水残量NRが上記閾値A以下になると(時刻t1)、走行可能距離DAを算出する処理が、上記第1算出処理から上記第2算出処理に切り替えられる。これにより尿素水残量NRが上記閾値A以下になった以降は、前回算出された走行可能距離DAから上述した期間走行距離DPを減算することによって走行可能距離DAが算出される。
【0075】
従って、尿素水残量NRが上記閾値A以下になった以降での走行可能距離DAの算出に際して尿素水残量NRは参照されず、実際に車両が走行した距離の分だけ徐々に走行可能距離DAは短くなっていく。そのため、表示器70に表示される走行可能距離DAは、
図5に実線にて示すように、実際の走行距離に応じて徐々に短くなっていく。
【0076】
こうした第2算出処理の実行によって、走行可能距離DAが増加したり、走行可能距離DAが急激に減少したりするといった不都合の発生が抑えられるようになるため、表示器70に表示された走行可能距離DAが車両運転者に違和感を与えることを抑えることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)尿素水残量NRが閾値Aを超えているときには、尿素水残量NRを参照して走行可能距離DAを算出する第1算出処理を実行するようにしている。そして、尿素水残量NRが閾値A以下となった以降は、前回算出された走行可能距離DAから期間走行距離DPを減算することによって走行可能距離DAを算出する第2算出処理を実行するようにしている。従って、表示器70に表示された走行可能距離DAが車両運転者に違和感を与えることを抑えることができるようになる。
【0078】
(2)車両の走行距離は、車両速度と時間とを乗算することにより求めることができる。そこで、走行可能距離DAを算出するときの車速SPDと走行可能距離DAの算出周期時間(実行周期EP)とに基づいて上記期間走行距離DPを算出するようにしている。従って、走行可能距離DAを算出してから次に走行可能距離DAを算出するまでの車両の走行距離である上記期間走行距離DPを実際に算出することができる。
【0079】
(3)走行可能距離DAが警告距離W以下となった時点から走行可能距離DAを表示器70に表示させるようにしているため、走行可能距離DAを表示器70に常時表示する場合と比較して、尿素水の補充を促す警告が行われていることを車両運転者に気付かせやすくなる。
【0080】
(4)上記閾値Aとして、尿素水の補給を促す警告が必要な尿素水の残量を設定するようにしている。従って、尿素水の補給を促す警告が必要な量にまでタンク210内の尿素水の残量が低下した以降、つまり尿素水の残量が少なくなっており、走行可能距離DAの変化量の割合いが大きくなる状態のときには、期間走行距離DPの減算を通じて走行可能距離DAの算出を行う上記第2算出処理を実行することができる。
【0081】
(5)上記第1算出処理として、尿素水の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す平均尿素水消費率NAVに尿素水残量NRを乗算することにより走行可能距離DAを算出する処理を実行するようにしている。従って、尿素水残量NRが閾値Aを超えているときには、尿素水残量NR及び平均尿素水消費率NAVに基づき、尿素水残量NRを参照した走行可能距離DAの算出が行われるようになるため、尿素水残量NRに応じた走行可能距離DAを適切に算出することができる。
【0082】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第1算出処理では、尿素水1Lで走行することのできる走行可能距離を表す値、つまり尿素水の消費量に対する車両走行距離の割合いを示す尿素水消費率として、積算走行距離DS及び積算尿素水消費量NSから算出される平均尿素水消費率NAVを用いるようにしたが、そうした尿素水消費率として他の値を用いてもよい。
【0083】
例えば、予め定められた尿素添加量の上限値NMAX(単位:L/h)を、車両走行中における尿素水の最大消費量に相当する値とみなす。そして、車速SPDの平均値である平均車速SPDAV(単位:km/h)を算出するとともに、その平均車速SPDAVを上限値NMAXで除算することにより上記尿素水消費率を算出する(尿素水消費率=SPDAV/NMAX)。そして、この算出された尿素水消費率に尿素水残量NRの現在値を乗算することにより、現在の尿素水の残量で走行することのできる走行可能距離DAを算出してもよい。
【0084】
また、車両の各種走行パターンにおける尿素水の消費量などから代表的な尿素水消費率を予め求めておき、その代表的な尿素水消費率に尿素水残量NRの現在値を乗算することにより、現在の尿素水の残量で走行することのできる走行可能距離DAを算出してもよい。
【0085】
・上記閾値Aとして、尿素水の補給を促す警告が必要な尿素水の残量を設定するようにしたが、他の値を設定してもよい。つまり、閾値Aとしては、尿素水の残量が少なくなっており、これにより走行可能距離DAの変化量の割合いが車両運転者に対して違和感を与えてしまう程度に大きくなる状態であることを判別することが可能な値を設定することが望ましい。
【0086】
・走行可能距離DAを算出するときの車速SPDと走行可能距離DAの算出周期時間(実行周期EP)とに基づいて上記期間走行距離DPを算出したが、この他の態様にて、走行可能距離DAを算出してから次に走行可能距離DAを算出するまでの車両の走行距離である上記期間走行距離DPを算出してもよい。例えば、走行可能距離DAを算出してから次に走行可能距離DAを算出するまでの間における車輪の回転回数に基づいて期間走行距離DPを算出することもできる。
【0087】
・走行可能距離DAが警告距離W以下となった時点から、表示器70に走行可能距離DAを表示するようにした。この他、走行可能距離DAの大小にかかわらず、走行可能距離DAを表示器70に常時表示するようにしてもよい。この変形例の場合には、走行可能距離DAが警告距離W以下となったときに実行される上記報知処理として、例えば次のような報知を行うことができる。すなわち、車両運転者などに対して音を発したり、光を点灯または点滅させたり、あるいは表示器70に表示されている走行可能距離DAを点滅させたり、走行可能距離DAの表示色を変えたりすることによって報知を実行することができる。
【0088】
・タンク210に貯留された尿素水の残量を検出するようにしたが、この他の添加液の残量を検出するようにしてもよい。