特許第6235518号(P6235518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6235518高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法
<>
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000002
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000003
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000004
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000005
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000006
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000007
  • 6235518-高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235518
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】高圧燃料供給ポンプ及び高圧燃料供給ポンプの組立て方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20171113BHJP
   F02M 59/36 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 51/04 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 59/34 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F02M59/46 Y
   F02M59/36 F
   F02M59/44 N
   F02M51/04 C
   F02M59/34
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-72456(P2015-72456)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191367(P2016-191367A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】棟方 明広
(72)【発明者】
【氏名】菅波 正幸
(72)【発明者】
【氏名】臼井 悟史
(72)【発明者】
【氏名】橋田 稔
(72)【発明者】
【氏名】徳尾 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 淳治
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/055870(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/047888(WO,A1)
【文献】 特開2013−148025(JP,A)
【文献】 特開2014−134208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/46
F02M 59/34
F02M 59/36
F02M 59/44
F02M 51/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加圧室が形成されたシリンダを有するポンプハウジングと、前記シリンダにガイドされて往復運動するプランジャと、前記加圧室の入口に設けられ電磁力によって駆動される電磁吸入弁と、前記加圧室の出口に設けられた吐出弁とを備え、前記電磁吸入弁は、バルブと、前記バルブが離接することにより燃料通路が開閉されるバルブシートと、開弁時に前記バルブが当接するバルブストッパとを有し、前記ポンプハウジングに形成した電磁吸入弁挿入孔に前記電磁吸入弁を取り付け、前記電磁吸入弁を制御して前記吐出弁から吐出される燃料の量を制御する高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記バルブシートが形成され、前記バルブを内包するバルブハウジングを備え、
前記バルブストッパを、固定部材により、前記バルブハウジングに圧入固定し、
前記電磁吸入弁挿入孔に、前記バルブストッパに当接する底部と、前記底部を貫通し前記底部の両側を連通する燃料通路孔とを設けたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記バルブストッパは、前記バルブシート及び前記バルブに対して、前記加圧室側に配置されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記燃料通路孔は、前記電磁吸入弁の中心軸の延長線の周りに複数形成されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記燃料通路孔は、前記バルブと前記バルブシートとの間に形成される燃料通路に連通していることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記シリンダは、前記ポンプハウジングとは別部材で形成され、前記ポンプハウジングに形成されたシリンダ挿入孔に取り付けられており、
前記シリンダは、外周部に形成された環状溝と、前記環状溝と内周側に形成された前記加圧室とを連通する連通孔とを有することを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記固定部材は、プレス加工された板材で形成されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記固定部材は、内周側に前記バルブストッパに圧入固定された環状の固定部と、外周側に前記バルブハウジングに圧入固定された爪部とを有し、
前記爪部は前記固定部材の周方向に間隔をあけて複数設けられ、隣り合う爪部の間に燃料通路が形成されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項8】
内部に加圧室が形成されたシリンダを有するポンプハウジングと、前記シリンダにガイドされて往復運動するプランジャと、前記加圧室の入口に設けられ電磁力によって駆動される電磁吸入弁と、前記加圧室の出口に設けられた吐出弁とを備え、前記電磁吸入弁は、バルブと、前記バルブが離接することにより燃料通路が開閉されるバルブシートと、開弁時に前記バルブが当接するバルブストッパとを有し、前記ポンプハウジングに形成した電磁吸入弁挿入孔に前記電磁吸入弁を取り付け、前記電磁吸入弁を制御して前記吐出弁から吐出される燃料の量を制御する高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記バルブシートが形成され、前記バルブを内包するバルブハウジングを備え、
前記バルブストッパを、固定部材により、前記バルブハウジングに圧入固定し、
前記電磁吸入弁挿入孔に、前記バルブストッパと当接し、前記バルブストッパを前記加圧室側から支持する支持部を設けたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記バルブストッパは、前記バルブシート及び前記バルブに対して、前記加圧室側に配置されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項10】
請求項9に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記電磁吸入弁挿入孔と前記加圧室とを連通する燃料通路を有することを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項11】
内部に加圧室が形成されたシリンダを有するポンプハウジングと、前記シリンダにガイドされて往復運動するプランジャと、前記加圧室の入口に設けられ電磁力によって駆動される電磁吸入弁と、前記加圧室の出口に設けられた吐出弁とを備え、前記電磁吸入弁は、バルブと、前記バルブが離接することにより燃料通路が開閉されるバルブシートと、開弁時に前記バルブが当接するバルブストッパとを有し、前記ポンプハウジングに形成した電磁吸入弁挿入孔に前記電磁吸入弁を取り付け、前記電磁吸入弁を制御して前記吐出弁から吐出される燃料の量を制御する高圧燃料供給ポンプの組立方法において、
前記バルブを内包するバルブハウジングと前記バルブストッパとを、前記バルブストッパの端部が前記バルブハウジングの端部から突出するように固定した第1の組体を作り、
前記第1の組体を前記電磁吸入弁挿入孔に挿入して圧入固定する際に、前記電磁吸入弁挿入孔の底部に前記バルブストッパの前記端部を当接させ、前記端部が前記底部に当接した状態から更に前記第1の組体を前記電磁吸入弁挿入孔に押し込んで圧入固定することを特徴とする高圧燃料供給ポンプの組立て方法。
【請求項12】
請求項11に記載の高圧燃料供給ポンプの組立て方法において、
前記バルブストッパを、板材をプレス加工した固定部材を用いて前記バルブハウジングに圧入固定することを特徴とする高圧燃料供給ポンプの組立て方法。
【請求項13】
請求項12に記載の高圧燃料供給ポンプの組立て方法において、
前記固定部材は、内周側に前記バルブストッパに圧入固定された環状の固定部と、外周側に前記バルブハウジングに圧入固定された爪部とを有し、
前記爪部は前記固定部材の周方向に間隔をあけて複数設けられ、隣り合う爪部の間に燃料通路が形成されていることを特徴とする高圧燃料供給ポンプの組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射弁に燃料を圧送する高圧燃料供給ポンプに関し、特には、吐出する燃料の量を調節する電磁吸入弁を備えた高圧燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関のうち燃焼室内部へ直接的に燃料を噴射する直接噴射タイプにおいて、高圧燃料供給ポンプが広く用いられている。高圧燃料供給ポンプは、燃料を高圧化すると共に、所望の燃料量を吐出する。吐出する燃料量を調節するために、高圧燃料供給ポンプは電磁吸入弁を備える。
【0003】
特開2014−136966号公報(特許文献1)には、電磁吸入弁(電磁駆動型吸入弁機構)を備えた高圧燃料供給ポンプが記載されている。電磁吸入弁は、吸入弁部と電磁駆動機構部とを備える。ポンプハウジングには、その周壁から加圧室に向けて筒状の孔が形成されている。電磁吸入弁は、吸入弁部の全体と電磁駆動機構の一部とが、ポンプハウジングに形成された筒状の孔に挿入されて、ポンプハウジングに取り付けられている(段落0014)。
【0004】
吸入弁部は、バルブハウジングと、バルブと、バルブ付勢ばねと、バルブストッパとを備える。バルブハウジングには、開口部に環状段付き部が形成され、環状段付き部の奥側にバルブシートが形成されている。バルブストッパは、その圧入面部がバルブハウジングの環状段付き部に圧入嵌合される。バルブは、バルブシートとバルブストッパとの間で、径閉弁方向に変位可能に設けられている(段落0017)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−136966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の高圧燃料供給ポンプでは、バルブの開弁量を規制するバルブストッパは、バルブハウジングの加圧室側に設けられた開口部からバルブハウジングの内側に挿入され、バルブハウジングの環状段付き部に圧入固定されている。また、電磁吸入弁が挿入固定される筒状の孔は、加圧室に開口している。そして、バルブストッパは、加圧室側の端部がバルブハウジングに支持されることなく、加圧室に露出している。
【0007】
このため、バルブがバルブストッパに繰り返し衝突することにより、バルブストッパが圧入方向とは逆向きに変位する可能性がある。バルブストッパが変位するとバルブのストロークが変化し、燃料の流量制御ができなくなる可能性がある。バルブのストロークが変化を防ぐためには、バルブハウジングに対するバルブストッパの圧入保持力を高める必要がある。しかし、圧入保持力を高めると圧入不良などの組立て性の悪化が懸念される。また、バルブストッパが構成される吸入弁部が大型化する。
【0008】
本発明の目的は、高圧燃料供給ポンプにおいて、バルブストッパの組立て性の悪化を防ぎ、吸入弁部の大型化を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の高圧燃料供給ポンプは、電磁吸入弁をポンプハウジングに形成した電磁吸入弁挿入孔に挿入して取り付ける構成において、バルブシートが形成されバルブを内包するバルブハウジングを備え、バルブストッパを固定部材によりバルブハウジングに圧入固定し、電磁吸入弁挿入孔に、電磁吸入弁のバルブストッパと当接し、バルブストッパを加圧室側から支持する支持部を設ける。
【0010】
また、高圧燃料供給ポンプの組立方法において、前記バルブを内包するバルブハウジングとバルブストッパとを、バルブストッパの端部がバルブハウジングの端部から突出するように圧入固定した第1の組体を作り、第1の組体を電磁吸入弁挿入孔に圧入する際に、電磁吸入弁挿入孔の底部にバルブストッパの端部を当接させ、バルブストッパの端部が電磁吸入弁挿入孔の底部に当接した状態から更に第1の組体を電磁吸入弁挿入孔に押し込んで圧入固定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バルブストッパが支持部により加圧室側から支持されることにより、圧入保持力を高める必要が無い。従って、バルブストッパの組立て性の悪化を防ぎ、吸入弁部の大型化を防ぐことができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一実施例について、その概要を示すシステム図である。
図2】本発明の高圧燃料供給ポンプの一実施例に係る縦断面図である。
図3】本発明の高圧燃料供給ポンプの一実施例に係る別の縦断面図である。
図4】本発明の高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁の拡大縦断面図であり、電磁吸入弁が開弁状態にある状態を示す図である。
図5図4のV−V断面図である。
図6】電磁吸入弁の組立て状態とポンプ本体への組み付け状態を示す分解斜視図である。
図7】バルブストッパ固定部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る一実施例について説明する。
【0015】
図1を用いて、本発明に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムについて説明する。図1は、本発明に係る高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの一実施例について、その概要を示すシステム図である。
【0016】
破線で囲まれた部分100が高圧燃料供給ポンプ(以下、高圧ポンプと呼ぶ)を示す。この破線の中に示されている機構及び部品は、高圧ポンプ100に一体に組み込まれている。
【0017】
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下、ECUと呼ぶ)からの信号21DSに基づきフィードポンプ21によって汲み上げられる。フィードポンプ21によって汲み上げられた燃料は、適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧ポンプ100の低圧燃料吸入口10aに送られる。
【0018】
吸入ジョイント10aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構9及び吸入通路10dを通って、容量可変機構を構成する電磁吸入弁300の吸入ポート31bに至る。
【0019】
電磁吸入弁300に流入した燃料は、吸入バルブ(吸入弁)301cを通過し加圧室11に流入する。プランジャ2には、エンジンのカム機構93(図2参照)により、往復運動する動力が与えられている。プランジャ2の往復運動により、燃料はプランジャ2の下降行程で吸入バルブ301cから加圧室11に吸入される。プランジャ2の上昇行程では、燃料は加圧され、吐出弁8から吐出される。吐出された燃料は、コモンレール23へ圧送される。コモンレール23内の燃料は、ECU27からの信号24DSに基づいて駆動されるインジェクタ24によって、エンジンの燃焼室内へ噴射される。コモンレール23には圧力センサ26が装着されており、圧力センサ26によって検出されたコモンレール23内の燃料圧力は、検出信号26DSとしてECU27に送られる。ECU27は、コモンレール23内の燃料圧力に基づいて、高圧ポンプ100に設けられた電磁吸入弁300の駆動信号300DSを生成する。
【0020】
高圧ポンプ100は、ECU27からの駆動信号300DSにより電磁吸入弁300が制御され、吐出する燃料流量が調節される。
【0021】
図2及び図3を用いて、高圧ポンプ100の全体構成について説明する。
【0022】
図2は、本発明の高圧燃料供給ポンプの一実施例に係る縦断面図である。図3は、本発明の高圧燃料供給ポンプの一実施例に係る別の縦断面図である。
【0023】
高圧ポンプ100は、ポンプ本体(ポンプハウジング)1に設けられたフランジ1eを、内燃機関のシリンダヘッド90の平面に密着させて、複数のボルト91で固定される。取付けフランジ1eは溶接部1fにてポンプ本体1に全周を溶接結合されて環状固定部を形成している。本実施例では、取付けフランジ1eとポンプ本体1との溶接に、レーザー溶接を用いている。
【0024】
シリンダヘッド90とポンプ本体1との間のシールのためにOリング61がポンプ本体1の環状溝1gに嵌め込まれている。Oリング61によって構成されるシールは、エンジンオイルがシリンダヘッド90とポンプ本体1との間から外部に漏れるのを防止する。
【0025】
ポンプ本体1には、プランジャ2の軸方向に貫通する貫通孔1hが形成されている。貫通孔1hは、シリンダ6が挿入されて取り付けられる挿入孔を構成する。シリンダ6は、プランジャ2の往復運動をガイドし、かつ内部に加圧室11を形成する。シリンダ6は、加圧室11を形成するように、一端部が閉じられた有底筒形状に形成されている。
【0026】
さらにシリンダ6の外周面には、環状溝6aが設けられている。環状溝6aと加圧室11とは、複数個の連通孔6bによって、連通されている。加圧室11は、環状溝6aと連通孔6bとによって、電磁吸入弁300と吐出弁機構8とに連通している。
【0027】
シリンダ6はその外径において、ポンプ本体1のシリンダ挿入孔1hの内周面に圧入固定されている。シリンダ6の圧入部円筒面6eは、ポンプ本体1との隙間から加圧した燃料が低圧側に漏れないようにシールしている。また、シリンダ6は、加圧室11側の端部に、外径が小さくなる小径部6cを有し、段付き面6fが形成されている。ポンプ本体1のシリンダ挿入孔1hは、低圧燃料室10c側に連通する側の端部1iが小径に形成されて、段付き面1jが形成されている。加圧室11の燃料が加圧されることによりシリンダ6は低圧燃料室10c側に向けて力を受ける。この力を受けて、シリンダ6の段付き面6fがシリンダ挿入孔1hの段付き面1jに当接する。段付き面6fと段付き面1jとは、シリンダ6が低圧燃料室10c側に抜けることを防止している。
【0028】
また、ポンプ本体1とシリンダ6とは、段付き面6fと段付き面1jとを軸方向に平面接触させることで、燃料漏れを防止するシールを構成している。本実施例では、ポンプ本体1とシリンダ6との圧入部のシールに加え、段付き面6fと段付き面1jとによるシールが設けられており、シールが二重に構成されている。
【0029】
なお、本実施例では、ポンプ本体(ポンプボディ)1とシリンダ6とを別部材で構成しているが、シリンダ6をポンプ本体1を形成する部材で、ポンプ本体1と一体に形成しても良い。
【0030】
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム93の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
【0031】
また、シールホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。プランジャシール13は、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし、内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。同時に内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプ本体1の内部に流入するのを防止する。
【0032】
ポンプ本体1には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンク20からの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧ポンプ100の内部に供給される。吸入ジョイント51内の吸入フィルタ52は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物を燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ100内に吸収することを防ぐ役目がある。
【0033】
低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構9及び低圧燃料流路10dを通って電磁吸入弁300の吸入ポート31bに至る。
【0034】
加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8は吐出弁シート部材8a、吐出弁シート部材8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート部材8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c及び吐出弁8bと吐出弁シート8aとを収容する吐出弁ホルダ8dから構成されている。吐出弁シート8aと吐出弁ホルダ8dとは当接部8eで溶接により接合されて一体の吐出弁機構8を形成している。
【0035】
なお、吐出弁ホルダ8dの内部には、吐出弁8bのストロークを規制するスットパーを形成する段付き部8fが設けられている。
【0036】
加圧室11と燃料吐出口12に燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、燃料吐出口12の燃料圧力よりも大きくなった時に始めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁し、加圧室11内の燃料は燃料吐出口12を経てコモンレール23へと高圧吐出される。吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8fと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、燃料吐出口12へ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧ポンプの効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ホルダ8dの内周面にてガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。
【0037】
以上説明したように、加圧室11は、ポンプハウジング1と、電磁吸入弁300と、プランジャ2と、シリンダ6と、吐出弁機構8とで構成される。
【0038】
次に、図4及び図5を用いて、電磁吸入弁300について、詳細に説明する。図4は、本発明の高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁の拡大縦断面図であり、電磁吸入弁が開弁状態にある状態を示す図である。図5は、図4のV−V断面図である。
【0039】
電磁吸入弁300は、電磁駆動型吸入弁機構によって構成され、電磁駆動機構部300Aと吸入弁部300Bとを備える。ポンプハウジング1には、その周壁から加圧室11に向けて筒状の孔1kが形成されている。電磁吸入弁300は、吸入弁部300Bの全体と電磁駆動機構300Aの一部とが、筒状の電磁吸入弁挿入孔1kに挿入されて、ポンプハウジング1に取り付けられている。
【0040】
電磁駆動機構部300Aは電磁的に駆動される可動子301を備える。可動子301はプランジャロッド301aとアンカー301bとで構成される。プランジャロッド301aの先端にはバルブ301cが設けられ、電磁吸入弁300の端部に設けられたバルブハウジング302に形成されたバルブシート302aと対面している。プランジャロッド301aとバルブ301cとは別体に構成されており、プランジャロッド301aの先端面301aaとバルブ301cの端面301caとは接離可能に構成されている。プランジャロッド301aとバルブ301cとは別体に構成されているが、バルブ301cを可動子301の一部と見なしても良い。
【0041】
電磁駆動機構部300Aは環状に形成されたコイル304の内周側に、電磁駆動機構部300Aのボディを兼ねた段付きの筒状部材で構成されたヨーク305を備える。ヨーク305の内周部には、固定コア306とアンカー301bとが設けられている。固定コア306とプランジャロッド301aとの間には、プランジャロッド付勢ばね(可動子付勢ばね)307が設けられている。固定コア306はヨーク305の小径部305a側に溶接によって固定されている。プランジャロッド付勢ばね(可動子付勢ばね)307は可動子301を開弁方向に付勢するばねである。
【0042】
固定コア306には、端面306aから反対側の端面306bに向かって未貫通の孔306cが形成されている。孔306cの底部306caはプランジャロッド付勢ばね307の着座部(ばね座)を構成する。端面306aはアンカー301bの端面301baと対向している。端面306aと端面301baとは、相互の間に磁気吸引力が作用する磁気吸引面Sを構成する。図4のようにバルブ301cが開弁した状態にあるときは、端面306aと端面301baとは、相互の間に磁気空隙GP1を介して対面している。
【0043】
アンカー301bには、その中心部をプランジャロッド301aの軸方向に貫通する貫通孔301bbが形成されており、プランジャロッド301aが貫通孔301bbに挿通されて、アンカー301bに組み付けられている。プランジャロッド301aの固定コア306側の端部には拡径部301abが形成され、拡径部301abの固定コア306側の端面は、プランジャロッド付勢ばね307が当接するばね座を構成している。これにより、プランジャロッド301aはプランジャロッド付勢ばね307によりバルブ301c側に向けて付勢されている。
【0044】
ヨーク305の大径部305b側の端部には、ガイド部材311が圧入嵌合され、ヨーク305とガイド部材311とが固定されている。ガイド部材311は、プランジャロッド301aの往復動作をガイドするガイド部311bが設けられている。ガイド部311bはプランジャロッド301aが挿通されるプランジャロッド挿通孔によって構成される。また、ガイド部材311には、フランジ部311aが設けられている。フランジ部311aには、アンカー301bが収容された室内に燃料が出入りするための貫通孔311bが形成されている。また、フランジ部311aはアンカー付勢ばね312のばね座を構成している。
【0045】
アンカー301bはアンカー付勢ばね312によりバルブ301cが開弁する方向に付勢されている。アンカー付勢ばね312による付勢力はプランジャロッド付勢ばね307による付勢力よりも弱く、アンカー301bはプランジャロッド301aの拡径部301abと係合する位置で停止している。アンカー301bが閉弁方向に吸引されて固定コア306と接触する際、及びアンカー301bに対する磁気吸引力が解除されてバルブ301cがバルブストッパ313と接触する際には、プランジャロッド301aとアンカー301bとは相対変位可能に構成されている。プランジャロッド301aの拡径部301abはアンカー301bの閉弁方向への可動範囲を規制する規制部として機能している。
【0046】
コイル304はボビン318に巻回され固定コア306及びアンカー301bの外周側に組み付けられている。コイル304は加圧室11側の端部及び側面部をサイドヨーク308で覆われ、加圧室11側とは反対側の端部をバックヨーク309で覆われている。サイドヨーク308はヨーク305の小径部305aと大径部305bとの中間部の外周側に圧入嵌合され、サイドヨーク308とヨーク305とが固定されている。バックヨーク309はサイドヨーク308の内周側に圧入嵌合され、バックヨーク309とサイドヨーク308とが固定されている。ヨーク305とサイドヨーク308とバックヨーク309と固定コア306とアンカー301bとにより、コイル304の周囲に、磁気空隙GP1を含む閉磁路310が形成されている。
【0047】
コイル304はコネクタ319の端子(コネクタピン)320に接続されている。端子320は2つ設けられており、コイル304の両端部に接続されている。コネクタ319は例えばECU27などの外部機器と電気的に接続するための接続部である。
【0048】
ヨーク305の磁気空隙GP1の周囲に対面する部分には、肉厚を薄くする、或いは非磁性化されるなどして形成された磁気絞り(図示せず)が設けられる。磁気絞りはヨーク305を通って漏洩する磁束を少なくする。
【0049】
電磁吸入弁300の加圧室11側の端部には、吸入弁部300Bが設けられている。吸入弁部300Bは、バルブハウジング302と、バルブ301cと、バルブストッパ313と、バルブストッパ固定部材314と、バルブ付勢ばね315とを備えている。
【0050】
バルブハウジング302はポンプハウジング1の電磁吸入弁挿入孔1kに圧入嵌合され、固定されている。プランジャロッド301aの軸方向におけるバルブハウジング302の中間部には、バルブシート302aが加圧室11側に向けて形成されている。バルブシート302aはバルブハウジング302の内周側に円環状に形成されている。バルブシート302aの内周側にはプランジャロッド301aが挿通される貫通孔302bが形成されている。
【0051】
バルブハウジング302の加圧室11側の端部には、バルブストッパ固定部材314により、バルブストッパ313が固定されている。バルブストッパ313は一端部が底部313aで塞がれ、他端部にバルブ301cとの当接部313bが設けられている。バルブストッパ313の中心部には凹部313cが形成されており、凹部313cはバルブ付勢ばね315の収容部を構成している。
【0052】
バルブ付勢ばね315は、一端部がバルブストッパ313の底部313aに当接し、他端部がバルブ301cのバルブシート302aとの対向面301caとは反対側の面301cbに当接している。バルブ付勢ばね315は、バルブ301cとバルブストッパ313との間に配置され、バルブ301cを閉弁方向に付勢している。なお、アンカー付勢ばね312の付勢力とバルブ付勢ばね315の付勢力との合力は、プランジャロッド付勢ばね307の付勢力よりも小さい。このため、アンカー付勢ばね312、バルブ付勢ばね315及びプランジャロッド付勢ばね307による付勢力のみがバルブ301cに作用している状態では、バルブ301cは開弁状態を維持する。
【0053】
バルブ301cは、端面301caがバルブシート302aと当接することにより閉弁し、開弁時には端面301cbがバルブストッパ313に形成された当接部313bと当接する。すなわち、バルブシート302aとバルブストッパ313の当接部313bとの間の距離(ギャップ)GP2が、開閉弁時にバルブ301cが移動するストロークになる。
【0054】
バルブ301cは、端面301cb側に突状部301ccが形成されており、突状部301ccはバルブ付勢ばね315の中心部に嵌められている。これにより、バルブ301cとバルブ付勢ばね315との径方向における相対位置が決められている。また、開弁状態或いは閉弁状態でバルブ301cが静止した状態では、プランジャロッド301aの先端部301aaとバルブ301cの端面301caとは当接した状態にある。
【0055】
バルブ301c及びバルブストッパ313の外周とバルブハウジング302の内周面との間には隙間が設けてあり、この隙間により燃料通路316が形成されている。バルブストッパ固定部材314には周方向に切欠き314aが設けてあり、この切欠き314aにより燃料通路317が形成されている。
【0056】
電磁吸入弁挿入孔1kは加圧室11及びシリンダ6側に向けてバルブハウジング1を貫通しておらず、底部1kaが設けられている。底部1kaには、電磁吸入弁挿入孔1kとシリンダ6の外周に形成された環状溝6aとを連通する連通孔1aが形成されている。
【0057】
バルブ301cは、その底部313aに構成された端面313aaが電磁吸入弁挿入孔1kの底部(底面)1kaに当接している。
【0058】
燃料通路316、燃料通路317及び連通孔1aにより、バルブシート302aからシリンダ6の外周面に形成された環状溝6aに連通する燃料通路が構成されている。
【0059】
次に、高圧ポンプ100の動作について説明する。なお、上下方向を指定して説明する場合があるが、上下方向は図2及び図3に基づいて定義される。この上下方向は、高圧ポンプ100が実装される際の上下方向とは関係が無い。
【0060】
カム93の回転により、プランジャ2がカム93方向に移動して吸入行程状態にある場合は、加圧室11の容積は増加し、加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10dの圧力よりも低くなると、バルブ(吸入弁)301cは開弁状態にあるので、バルブ301cとバルブシート302aとの隙間GP2を通り、ポンプ本体1に設けられた連通孔(燃料通路)1a、シリンダ外周通路(環状溝)6a及びシリンダ6に設けられた連通孔(燃料通路)6bを通過し、加圧室11に流入する。連通孔1aは、電磁吸入弁300の中心軸の延長線の周りに複数形成されている。
【0061】
プランジャ2が吸入行程を終了した後、プランジャ2が下死点から上昇運動に転じ圧縮行程に移る。ここでは電磁コイル304は無通電状態を維持したままであり、プランジャロッド301aに磁気付勢力は作用しない。プランジャロッド付勢ばね307は、無通電状態においてバルブ301cを開弁維持するのに必要十分な付勢力を有するよう設定されている。加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度加圧室11に吸入された燃料が、開弁状態のバルブ301cとバルブシート302aとの隙間GP2を通して吸入通路10dへと戻される。このため、この状態では、加圧室の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
【0062】
この状態で、エンジンコントロールユニット27からの制御信号が電磁吸入弁300に印加されると、電磁コイル43には端子320を介して電流が流れ、固定コア306とアンカー301bとの間に磁気吸引力が作用する。この磁気吸引力が付勢力(磁気付勢力)としてプランジャロッド301aに作用する。この磁気付勢力がプランジャロッド付勢ばね307の付勢力に打ち勝つと、プランジャロッド301aがバルブ301cから離れる方向(開弁方向)に移動する。そして、バルブ付勢ばね315による付勢力と燃料が吸入通路10dに流れ込むことによる流体力とによりバルブ301cが閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇する。燃料圧力が燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して燃料の高圧吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称する。
【0063】
すなわち、プランジャ2の圧縮行程(下死点から上死点までの間の上昇行程)は、戻し行程と吐出行程からなる。そして、電磁吸入弁300のコイル304への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイル304へ通電するタイミングを早くすれば、圧縮行程中の、戻し行程の割合が小さく、吐出行程の割合が大きくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が少なくなり、高圧吐出される燃料が多くなる。一方、通電するタイミングを遅くすれば圧縮行程中の、戻し行程の割合が大きくなり、吐出行程の割合が小さくなる。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が多くなり、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル304への通電タイミングは、ECU27からの指令によって制御される。
【0064】
以上のように構成することで、電磁コイル304への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
【0065】
バルブ301cのストロークGP2は、プランジャ2の吸入工程で加圧室11に燃料が流入するのに抵抗とならない通路面積を確保でき、更に電磁コイル304の通電時にアンカー301bを吸引できる長さになるようにバルブストッパ313で規制されている。また、吸引力への影響が大きい固定コア306とアンカー301bとの距離GP1も、開弁状態においてはアンカー301bとバルブ301cとがプランジャロッド301aを介し繋がっているので、バルブストッパ313で規制される。
【0066】
もし、バルブストッパ313が作動中にバルブ301cの開弁方向に動いてしまった場合、固定コア306とアンカー301bとの距離GP1が大きくなり、電磁コイル304に通電してもアンカー301bが吸引できなくなる。すなわち、バルブ301cが常に開弁状態となるため燃料の吐出が出来なくなる。仮に、アンカー301bを吸引できたとしても、距離GP1が大きくなることにより、磁気力が低下し、バルブ301cの移動距離が増大するため、バルブ301cが閉弁状態となるまでの時間が長くなる。これは、高圧ポンプ100から吐出される燃料量を高精度に制御することが困難になることを意味する。
【0067】
本実施例では、バルブ301cの作動中にバルブストッパ313が動かないように、バルブ301cの底部313aに構成された端面313aaが電磁吸入弁挿入孔1kの底部(底面)1kaに当接している。電磁吸入弁挿入孔1kを未貫通状態にして底部(底面)1kaを残すために、底部1kaを貫通し、電磁吸入弁挿入孔1kと環状溝6aとを連通する連通孔1aを設けている。連通孔1aは、バルブ301cの軸中心に対しシリンダ6の径方向に2つに分けて設けられている。連通孔1aを設けることにより、バルブ301cの中心部が加圧室11側に貫通しないように、底部1kaを残すことができる。
【0068】
これにより、電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaにバルブストッパ313を当接させることが出来、バルブストッパ313の抜け及び変位が防止できる。このためバルブ301cのストロークは変わることなく一定に維持され、バルブ301cの制御性が変化することがない。
【0069】
燃料はバルブ301cの外周を流れるので、電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaの中心部が加圧室11に連通していなくても抵抗になることはない。本実施例では、連通孔1aの電磁吸入弁挿入孔1k側の開口面を、電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaの中心部を避けて、内周壁面寄りに配置している。このため、連通孔1aの開口面がバルブストッパ313で塞がれることはなく、流路抵抗を小さくすることができる。
【0070】
次に、図6及び図7を用いて、電磁吸入弁300の組み付けについて、説明する。図6は、電磁吸入弁の組立て状態とポンプ本体への組み付け状態を示す分解斜視図である。図7は、バルブストッパ固定部材を示す平面図である。
【0071】
電磁吸入弁300は、ヨーク305に固定コア306、プランジャロッド付勢ばね307、可動子301、アンカー付勢ばね312及びガイド部材311を組み付けた組体300IIに、プランジャロッド301aの軸方向の一端側からコイル304、サイドヨーク308、バックヨーク309及びコネクタ端子320が組み付けられた組体300IIIを組み付け、プランジャロッド301aの軸方向の他端側から吸入弁部300Bの組体300Iを組み付けて、組み立てられる。
【0072】
吸入弁部300Bの組体300Iは、バルブストッパ固定部材314とバルブストッパ313とを圧入嵌合して固定する。次にバルブストッパ固定部材314とバルブストッパ313との組体をバルブハウジング302に圧入嵌合して固定する。この圧入嵌合の工程の際に、バルブ301cとバルブ付勢ばね315とがバルブハウジング302に組み付けられる。そして、各部品の組付けが完了した組体300Iは、組体300IIに組み付けられる。
【0073】
組体300I、組体300II及び組体300IIIの組み付けが完了した電磁吸入弁300は、ポンプハウジング1の電磁吸入弁挿入孔1kに圧入されて固定される。この工程では、バルブストッパ313の端面313aaを電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaに当接させる必要がある。同時にバルブシート302aとバルブ301cの端面301caとの間隔GP2が所定の寸法になるように、バルブハウジング302及びバルブストッパ313を位置決めする必要がある。
【0074】
本実施例では、バルブストッパ固定部材314とバルブストッパ313との組体をバルブハウジング302に圧入嵌合する際に、バルブハウジング302に対するバルブストッパ固定部材314及びバルブストッパ313の組体の挿入量を少なくしておく。すなわち、バルブストッパ313の端面313aaを、バルブハウジング302の端部から最終的な突出寸法よりも大きな寸法で突出させておく。そして、電磁吸入弁300を電磁吸入弁挿入孔1kに圧入する際に、バルブストッパ313の端面313aaを電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaに当接させ、そこからさらに電磁吸入弁300を電磁吸入弁挿入孔1k内に押し込む。
【0075】
この組立方法によれば、バルブストッパ313の端面313aaを電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaに確実に当接させることができる。また、バルブシート302aとバルブ301cの端面301caとの間隔GP2は、組体300Iの部品精度により管理することができる。
【0076】
上述した組立て方法のほかに、予め吸入弁部300Bの組体300Iをポンプハウジング1に組み付け、その後から組体300II及び組体300IIIを組体300I及びポンプハウジング1に組み付けてもよい。バルブストッパ313の端面313aaをバルブハウジング302の端部から大きく突出させておき、上述したように組体300Iをポンプハウジング1に組み付けることにより、バルブストッパ313の端面313aaを電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaに確実に当接させることができる。
【0077】
上述した組立て方法においては、電磁吸入弁300或いは吸入弁部300Bの組体300Iを電磁吸入弁挿入孔1kに圧入する際に、バルブストッパ固定部材314とバルブストッパ313との組体がバルブハウジング302に対して変位(位置ずれ)できるようにする必要がある。このために、バルブストッパ固定部材314とバルブストッパ313との組体とバルブハウジング302との圧入による固定力は小さくしておく必要がある。本実施例では、バルブストッパ313の端面313aaが電磁吸入弁挿入孔1kの底面1kaに当接しているため、バルブ301cの衝突力を受けるバルブストッパ313の固定力は大きくする必要はない。従って、上述した組立て方法が可能になる。
【0078】
バルブストッパ固定部材314は、図7に示すように、プレス加工品で形成することがきる。バルブストッパ固定部材314は、外周部にバルブハウジング302に圧入される爪部314aが周方向に間隔をあけて複数設けられている。また、バルブストッパ固定部材314の内周側には、環状の筒状固定部314bを有する。筒状部314bは爪部314aと同じ方向に折り曲げられている。筒状固定部314bはバルブストッパ313の外周部に圧入固定されている。
【0079】
本実施例では、爪部314aは3つで構成しているが、3つに限定される訳ではない。隣り合う爪部314aの間に形成される切欠き部314cを大きくし、切欠き部314cによって形成される燃料通路の断面積を大きくすることが好ましい。また、上述したように、バルブストッパ固定部材314によるバルブストッパ313の固定力は大きくする必要はなく、上述の組立方法を実施するためには、固定力を適度に小さくすることが好ましい。そのため、爪部314aは3〜4個程度が好ましい。また、バルブストッパ固定部材314は、固定力を大きくする必要が無いことから、簡素な構造にすることができ、薄い板材を用いて、プレス加工で製作することができる。
【0080】
本実施例では、バルブストッパ固定部材314の小型化が可能になり、吸入弁部300Bの組体300I及び電磁吸入弁300の小型化、さらには高圧ポンプ100の小型化を実現できる。
【0081】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 ポンプ本体(ポンプハウジング)、1k…電磁吸入弁挿入孔、1ka…電磁吸入弁挿入孔1kの底部、2…プランジャ、6…シリンダ、6a…シリンダ6の環状溝、6b…連通孔、7…シールホルダ、8…吐出弁機構、10a…低圧燃料吸入口、10d…吸入通路、11…加圧室、11a…連通孔、12…燃料吐出口、13…プランジャシール、27…エンジンコントロールユニット(ECU)、93…カム、100…高圧燃料供給ポンプ(高圧ポンプ)、300…電磁吸入弁、300A…電磁駆動機構部、300B…吸入弁部、301…可動子、301a…プランジャロッド、301b…アンカー、301c…バルブ(吸入弁)、302…バルブハウジング、302a…バルブシート、304…電磁コイル、305…ヨーク、306…固定コア、307…プランジャロッド付勢ばね(可動子付勢ばね)、308…サイドヨーク、309…バックヨーク、310…閉磁路、311…ガイド部材、311b…ガイド部、312…アンカー付勢ばね、313…バルブストッパ、313a…バルブストッパ313の底部、314…バルブストッパ固定部材、314a…バルブストッパ固定部材314の切欠き、315…バルブ付勢ばね、318…ボビン、319…コネクタ、320…端子(コネクタピン)、300I,組体300II,300III…組体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7