(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記砂供給位置定義部(11)は、前記開口領域を、前記金枠(3)上の任意の点を基準にして規則的に配列されている前記複数の小領域に仮想的に分割しており、前記任意の点は、前記ノズル移動装置(5)の座標系に関連付けられている、請求項1に記載の砂鋳型製造システム。
前記高さ計測部(13)は、前記金枠(3)の上方に設置された三次元視覚センサ(7)を有し、該三次元視覚センサ(7)により、各々の前記砂供給位置における、前記金枠(3)の内部空間の高さを計測する、請求項1または2に記載の砂鋳型製造システム。
前記仮想的に分割された前記複数の小領域は、前記金枠(3)上の任意の点を基準にして規則的に配列されており、前記任意の点は、前記ノズル移動装置(5)の座標系に関連付けられている、請求項5に記載の砂鋳型製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に大型の製品を量産する鋳型を製造する場合、模型とともに、模型が配置される金枠も大型化する。大型化した金枠内に砂を供給すると、砂は横に広がったり、模型の形状に沿って模型の下側に潜りこんだりし易い。その結果、金枠に供給された砂の高さは一定に揃わなくなる。金枠内の砂の高さが揃っていない状態において、特許文献1に開示される鋳型製造装置のように砂を上から圧縮すると、製造された鋳型の砂の締まり具合が不均一になって、鋳物の寸法精度が低下する問題が発生する。
特許文献1に開示される鋳型製造装置は、比較的小さい製品を量産する鋳型を製造するものとなっており、したがって、上記の問題について特許文献1は何ら関知していない。
【0006】
上記の問題を回避する場合、従前においては、人が金枠内の砂の充填状態を目視で確認しながら、砂の高さが均一になるように人が砂供給装置のノズルを操作している。
【0007】
しかし、大型化した金枠においては、金枠の様々な場所に、どういう順序で、どれ位の量だけ砂を入れると砂の高さが一定に揃うかを判断するのは極めて困難である。砂が金枠内に供給される間、模型の形状や砂の状態に応じて砂の挙動が微妙に変わるからである。つまり、現状においては、人間の代わりにロボットが大型化した金枠内へ砂を供給するのは困難である。
【0008】
そこで本発明は、上述したような問題点に鑑みて、砂の高さが一定に揃うように砂を金枠内に供給できる鋳型製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様によれば、模型が配置された金枠内に砂を充填して砂鋳型を製造する砂鋳型製造システムであって、金枠内に砂を供給する砂供給ノズルと、砂供給ノズルを移動させるノズル移動装置と、ノズル移動装置を制御する制御装置とを備える、砂鋳型製造システムが提供される。さらに、この砂鋳型製造システムにおいて、金枠は、上面部が開口した中空体であってノズル移動装置の座標系上に位置決めされている。
【0010】
そして、上記第一態様の砂鋳型製造システムにおいて、
制御装置は、
金枠の上面部の開口領域を仮想的に複数の小領域に分割し、各々の小領域の座標をノズル移動装置の座標系上の砂供給位置として定義する砂供給位置定義部と、
各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを計測する高さ計測部と、
各々の砂供給位置における前記高さに基づき、各々の砂供給位置において供給すべき砂の量を決定する砂供給量決定部と、を備えている。
さらに、制御装置は、
砂供給ノズルを各々の砂供給位置に逐次配置するようにノズル移動装置を動作させ、砂供給位置ごとに、砂供給量決定部により決定された量の砂を砂供給ノズルから金枠内に供給するようになされている。
【0011】
本発明は、第一態様に限られず、以下の第二態様ないし第五態様のいずれかの砂鋳型製造システムや、第六態様ないし第十態様のいずれかの砂鋳型製造方法を提供することもできる。
【0012】
本発明の第二態様によれば、第一態様の砂鋳型製造システムであって、制御装置は、砂供給位置ごとに、砂供給ノズルから金枠内に前記決定された量の砂を供給した後、高さ計測部により、各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを再計測し、
再計測された高さが所定の閾値よりも大きい砂供給位置に対して、砂供給量決定部により、再計測された高さに基づいて供給すべき砂の量を決定し、
再計測された高さが前記所定の閾値よりも大きい砂供給位置に砂供給ノズルを逐次配置するようにノズル移動装置を動作させて、再計測された高さに基づいて決定された量の砂を砂供給ノズルから金枠内に供給するようにした、砂鋳型製造システムが提供される。
【0013】
本発明の第三態様によれば、第一態様または第二態様の砂鋳型製造システムであって、砂供給位置定義部は、開口領域を、金枠上の任意の点を基準にして規則的に配列されている複数の小領域に仮想的に分割しており、任意の点は、ノズル移動装置の座標系に関連付けられている、砂鋳型製造システムが提供される。
【0014】
本発明の第四態様によれば、第一態様から第三態様のいずれかの砂鋳型製造システムであって、高さ計測部は、金枠の上方に設置された三次元視覚センサを有し、該三次元視覚センサにより、各々の前記砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを計測する、砂鋳型製造システムが提供される。
【0015】
本発明の第五態様によれば、第一態様から第四態様のいずれかの砂鋳型製造システムであって、ノズル移動装置はロボットである、砂鋳型製造システムが提供される。
【0016】
本発明の第六態様によれば、模型が配置された金枠内に砂を充填して砂鋳型を製造する砂鋳型製造方法が提供される。そして、第六態様の砂鋳型製造方法は、
砂供給ノズルを移動させるノズル移動装置を設け、
金枠を上面部が開口した中空体として作製して、ノズル移動装置の座標系上に位置決めし、
金枠の上面部の開口領域を仮想的に複数の小領域に分割し、各々の小領域の座標をノズル移動装置の座標系上の砂供給位置として定義し、
各々の砂供給位置における、金枠内の空間部の高さを計測し、
各々の砂供給位置における前記高さに基づいて、各々の砂供給位置において供給すべき砂の量を決定し、
砂供給ノズルを各々の砂供給位置に逐次配置するようにノズル移動装置を動作させ、砂供給位置ごとに、決定された量の砂を砂供給ノズルから金枠内に供給することを含む。
【0017】
本発明の第七態様によれば、第六態様の砂鋳型製造方法であって、
砂供給位置ごとに、砂供給ノズルから金枠内に前記決定された量の砂を供給した後、各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを再計測し、
再計測された高さが所定の閾値よりも大きい砂供給位置に対して、再計測された高さに基づいて供給すべき砂の量を決定し、
再計測された高さが前記所定の閾値よりも大きい砂供給位置に砂供給ノズルを逐次配置するようにノズル移動装置を動作させて、再計測された高さに基づいて決定された量の砂を砂供給ノズルから金枠内に供給する、砂鋳型製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第八態様によれば、第六態様または第七態様の砂鋳型製造方法であって、仮想的に分割された複数の小領域は、金枠上の任意の点を基準にして規則的に配列されており、任意の点は、ノズル移動装置の座標系に関連付けられている、砂鋳型製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第九態様によれば、第六態様から第八態様のいずれかの砂鋳型製造方法であって、各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを計測するとき、金枠の上方に配置された三次元視覚センサを用いる、砂鋳型製造方法が提供される。
【0020】
本発明の第十態様によれば、第六態様から第九態様のいずれかの砂鋳型製造方法であって、ノズル移動装置はロボットである、砂鋳型製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第一態様および第六態様によれば、鋳型を製造する際、金枠は、砂供給ノズルを移動させるノズル移動装置の座標系上に位置決めされる。そして、金枠の上面部の開口領域は仮想的に複数の小領域に分割され、各々の小領域の座標はノズル移動装置の座標系上の砂供給位置として定義される。それにより、ノズル移動装置は、砂供給ノズルを各々の砂供給位置に逐次移動させられるようになる。また、各々の砂供給位置において計測された、金枠の内部空間の高さに基づき、各々の砂供給位置において供給すべき砂の量が決定される。それにより、砂供給位置ごとに、決定された量の砂を砂供給ノズルから金枠内に供給することができる。つまり、第一態様および第六態様によれば、従前において金枠内の砂の高さが揃うように人が砂供給ノズルを操作していた作業を自動化することができる。
【0022】
また、本発明の第二態様および第七態様によれば、砂供給位置ごとに、決定された量の砂を金枠内に供給した後、各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを計測して、当該高さに基づいた砂供給量を決定するといった操作が複数回行われる。この操作において、計測された高さが所定の閾値よりも大きい砂供給位置のみに対して、当該計測された高さに基づいた量の砂を供給している。このため、金枠内に供給された砂の状態が微妙に変化しても、砂の高さが一定に揃うように適量の砂を金枠内に充填することができる。その結果、製造された鋳型の砂の締まり具合が均一になり、寸法精度の良好な鋳型を製造することができる。特に、模型の底部が窄まっている場合や、金枠が大型のものである場合に、本実施形態の砂鋳型製造システムによって、砂の高さが一定に揃うように砂を金枠内に供給することができる。さらに、砂を補充すべき場所に必要最小限の量の砂を正確に供給することができる。また、砂の供給操作中に枠内から砂を溢れさせることもない。
【0023】
本発明の第三態様および第八態様によれば、仮想的に分割された複数の小領域は、金枠上の任意の点を基準にして規則的に配列されている複数の小領域である。このように複数の小領域が基準点に対して一定の規則に基づいて配置されていれば、その規則性に沿った数式から、基準点に対する各小領域の座標を容易に算出して定義することができる。
【0024】
本発明の第四態様および第九態様によれば、金枠の上方に配置された三次元視覚センサにより、各々の砂供給位置における、金枠の内部空間の高さを容易に計測することができる。また、三次元視覚センサは金枠の上方に配置されているため、砂供給ノズルの移動は三次元視覚センサにより妨げられない。
【0025】
本発明の第五態様および第十態様によれば、ノズル移動装置としてロボットを用いることにより、砂供給ノズルを容易にかつ正確に移動させることができる。
【0026】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図示した砂鋳型製造システムの形態は本発明の一例であり、本発明の砂鋳型製造システムは図示の形態に限られない。
【0029】
図1は本発明の一実施形態の砂鋳型製造システムの構成を示すブロック図である。
図1に示される形態の砂鋳型製造システム1は、模型2が内部に配置された金枠3と、砂を金枠3内に供給する砂供給装置4と、を備える。
【0030】
砂供給装置4には砂供給ノズル4aが設けられている。模型2は製造製品と同じ形状を有する。金枠3は、上面部が開口した中空体から作製されていて、所定の位置に位置決めされている。なお、図示された金枠3は、上面部が開口した中空直方体として形成されているが、本発明は図示された金枠形状に限定しないものとする。
【0031】
さらに、砂鋳型鋳造システム1は、
図1に示されるように、ロボット5と、砂供給装置4およびロボット5を制御する制御装置6と、金枠3の高さや金枠3内に在る模型2または砂の高さを測定する高さ測定センサ7と、を備える。
【0032】
ロボット5は垂直型多関節マニュピレータである。金枠3の固定位置はロボット5の座標系と関連付けられている。ロボット5のアーム先端部には、
図1に示されるように、砂供給ノズル4aを把持自在なハンド部5aが設けられている。砂供給ノズル4aは伸縮自在なチューブ4bを介して砂供給装置4に接続されている。それにより、砂供給ノズル4aの部分だけがロボット5により移動可能である。本実施形態においては、ハンド部5aによって砂供給ノズル4aをロボット5のアーム先端部に把持する構成を採用している。しかし本発明はこの構成に限られず、砂供給ノズル4aはロボット5のアーム先端部に直接的に取付けられていてもよい。
【0033】
高さ測定センサ7は、
図1に示されるように金枠3の開口部3aの上方に設置されている。そして、高さ測定センサ7は、当該センサの位置から、金枠3内の模型2もしくは砂までの鉛直方向距離、すなわち高さを測定する。金枠3内の、模型2や砂が無い部分においては、高さ測定センサ7は、当該センサの位置から金枠3の底面までの高さを測定する。そのような高さを測定する高さ測定センサ7として、三次元視覚センサが使用されている。
【0034】
三次元視覚センサには、光切断法と二眼ステレオ方式を併用したものを適用することが好ましい。具体的には、プロジェクタおよびビデオカメラを測定対象の上方に設置し、ビデオカメラの撮像面と、プロジェクタの光投射部との位置関係を予め決定しておく。スリット状の光をプロジェクタから測定対象に投射すると、測定対象の表面には周辺よりも高輝度の光帯が形成され、この光帯はビデオカメラの撮像面上に投影される。そして、ビデオカメラの撮像面、例えばCCD上に投影された光帯の位置情報から、三角測量の原理を利用してセンサと測定対象との間の距離を計測する(光切断法)。さらに、このような光切断法において、複数本の光帯を測定対象の全域に所定のピッチで投射することにより、測定対象全体の三次元計測を行う。また、測定精度を確保するため、二台のビデオカメラをプロジェクタの左右に設置し、測定対象を異なる方向から二台のビデオカメラにより撮影して測定対象の三次元計測を行う方法(二眼ステレオ方式)を光切断法と併用することが好ましい。
【0035】
勿論、上述した光切断法および二眼ステレオ法を利用した三次元視覚センサに限らず、その他の三次元計測法を利用したものであってもよい。例えば、発光部から測定対象全体に光を照射してから、測定対象により反射された反射光がビデオカメラの撮像面に達するまでに要した時間を計測し、その計測時間と光速との関係から、センサと測定対象との間の距離を算出する方法、いわゆるTOF(Time Of Flight)方式を利用してもよい。
【0036】
さらに、制御装置6について詳述する。
図1に示されるように、制御装置6は、砂供給装置4およびロボット5に接続されている。制御装置6はデジタルコンピュータである。さらに、制御装置6は、砂供給位置定義部11と、ロボット制御部12と、高さ計測部13と、砂供給量決定部14と、を備える。以下、制御装置6の各構成要素について順に説明する。
【0037】
砂供給位置定義部11は、金枠3の開口部3aの領域を仮想的に複数の小領域に分割するとともに、各々の小領域を砂供給位置として定義し、各々の砂供給位置をロボット制御部12に出力する。砂供給位置の定義の仕方については後述する。
【0038】
ロボット制御部12は、ハンド部5aにより砂供給ノズル4aを把持させるようにロボット5を動作させる。さらに、ロボット制御部12は、砂供給位置定義部11により定義された各砂供給位置に砂供給ノズル4aを配置するようにロボット5を動作させる。
【0039】
高さ計測部13は、各々の砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さを計測する。言い換えれば、高さ計測部13は、高さ測定センサ7によって、
図1に示されるような金枠3の上端部の位置から、金枠3内に在る模型2もしくは砂までの高さを計測する。金枠3内の、模型2や砂が無い部分においては、高さ計測部13は、金枠3の上端部の位置から金枠3の底面までの高さを計測する。
具体的には、上述したような三次元視覚センサを高さ測定センサ7として使用することにより、三次元視覚センサの位置から、金枠3の上端部までの高さを取得する。さらに、三次元視覚センサの位置から、金枠3内の各砂供給位置における模型2または砂までの高さも取得する。このような二つの高さの差により、金枠3の上端部の位置から、金枠3内の各砂供給位置における模型2または砂までの高さ、すなわち金枠3の内部空間の高さが得られる。こうして計測された高さの情報は、砂供給量決定部14に出力される。
【0040】
なお、高さ測定センサ7として、上述した光切断法を利用した三次元視覚センサを使用する場合には、当該三次元視覚センサから複数本のスリット光を金枠3全体に所定のピッチで投射して金枠3およびその内部の三次元形状を得る。この場合、三次元視覚センサは、金枠3内の各々の砂供給位置に数本以上のスリット光が横切るように設定される。
【0041】
砂供給量決定部14は、各々の砂供給位置において計測された、金枠3の内部空間の高さに基づき、砂の供給量を決定する。金枠3内の砂供給位置に砂供給ノズル4aが配置されると、砂供給装置4は、決定された砂の供給量に従って砂を金枠3内に供給する。なお、砂の供給量の決定の仕方については後述する。
【0042】
また、上述したような構成要素を含む制御装置6には、入力部15が接続されている。入力部15は、金枠3の形状および寸法に関するデータを砂供給位置定義部14に入力する入力デバイスを有する。この入力デバイスは、押しボタン、タッチパネル、キーボードなどである。
【0043】
ここで、上述した砂供給位置の定義の仕方について例示する。
図2は、金枠3を上方から見たときの開口部3aの領域を仮想的に分割した複数の小領域を破線で示した図である。
図2に示されるように、砂供給位置定義部11は、金枠3の開口部3aの領域を仮想的に複数の小領域に分割する。そして、砂供給位置定義部11は、以下のように算出される各々の小領域の座標を砂供給位置として定義する。
すなわち、本実施形態においては、金枠3は上面部が開口した中空直方体であるため、金枠3を上から見たときの開口部3aの開口領域は長方形の領域である。この長方形の領域は、
図2に示されるようにm行×n列(図においては9行×12列)のマトリックス状に配置された複数の同一面積の小領域に仮想的に分割されている。
【0044】
金枠3の開口部3aの領域をm行×n列(以下、m、nはともに自然数)の複数の小領域に等分割する場合、開口部3aの横寸法(
図2においてはx方向寸法)をnの値で除算し、開口部3aの縦寸法(
図2においてはy方向寸法)をmの値で除算すると、各小領域の横寸法および縦寸法が得られる。言い換えれば、横方向および縦方向それぞれの小領域間のピッチが得られる。なお、金枠3は模型2に応じて事前に設計されるため、開口部3aの横寸法および縦寸法を知ることは容易である。
【0045】
さらに、金枠3を設置した設置面を二次元座標によって定義するとき、金枠3の開口部3aの横方向を二次元座標上の一方の座標軸(X軸)とし、金枠3の開口部3aの縦方向を当該二次元座標上の他方の座標軸(Y軸)とする。そして、金枠3の開口部3aにおける一つの角部3bを基準点とすると、この基準点からm行目でn列目に在る小領域の座標(小領域の中心位置)を算出することができる。つまり、開口部3aの角部3bを基準点とした場合、小領域の中心のX座標値は、小領域の横方向ピッチをn倍した値から一つの横方向ピッチの半分を減算した値である。小領域の中心のY座標値は、小領域の縦方向ピッチをm倍した値から一つの縦方向ピッチの半分を減算した値である。さらに、開口部3aの角部3bの位置と、ロボット5の動作の原点との位置関係をあらかじめ校正しておくことにより、ロボット5の動作の原点に対する各小領域の座標を計算により取得することができる。
【0046】
以上の考えに基づいて、金枠3がロボット5の座標系上に位置決めされるとともに、各小領域の座標をロボット5の座標系上の砂供給位置として定義するプログラムがあらかじめ作成される。当該プログラムは砂供給位置定義部11に格納されている。
つまり、入力部15によって、開口部3aの横寸法および縦寸法、ならびに分割の列数mおよび行数nを入力すると、砂供給位置定義部11において、ロボット5の動作の原点に対する各小領域の座標が算出される。当該各小領域の座標は、砂供給ノズル4aから砂を供給する砂供給位置として定義され、各砂供給位置はロボット制御部12に出力される。
【0047】
また、ロボット制御部12は、砂供給位置定義部11から出力された各砂供給位置に基づき、ロボット5のハンド部5aによって砂供給ノズル4aを各砂供給位置に順次移動させることができる。
【0048】
砂供給ノズル4aの移動順序については、
図2に示される開口部3aの角部3bに位置する小領域を出発点とする。そして、砂供給ノズル4aを行方向の一端の小領域から他端の小領域に移動させたら、となりの行に移って、前段の行とは反対の方向に移動することを繰返す。このような順序により砂供給ノズル4aを移動させるとノズルの移動ピッチが一定になるので、ロボット4に複雑な動作をさせないで済む。勿論、制御装置6はその他の移動順序によって砂供給ノズル4aを移動させても構わない。制御装置6は砂供給位置定義部11により各小領域の座標を取得しているので、砂供給ノズル4aを各小領域に対して移動させる順序は様々な移動順序に変えられる。
【0049】
なお、本願において、砂供給位置定義部11は、金枠3の上面部の開口領域を、金枠3上の任意の点を基準にして規則的に配列された複数の小領域に仮想的に分割するものであればよい。複数の小領域が基準点に対して一定の規則に基づいて配置されていれば、その規則性に沿った数式から、基準点に対する各小領域の座標を容易に算出できるからである。そのため、本願において、金枠3の形状は、
図1および
図2に示されるような上面部が開口した中空直方体に限定されない。模型2の形状に応じて様々な形状の金枠3が使用されてもよい。砂供給位置定義部11が仮想する複数の小領域もまた、金枠3上の任意の点を基準にして規則的に配列されていればよく、したがって各小領域の形状は
図2に示されるような矩形に限られない。
【0050】
(鋳型の製造方法)
次に、上述した砂鋳型製造システム1を使用した鋳型製造方法について説明する。ここでは、
図1および
図2に示されるような形状の金枠3を使用して砂鋳型を製造する方法を示すこととする。
図3は
図1に示される砂鋳型製造システム1の動作を示すフローチャートであり、
図4A〜
図4Cは、砂鋳型製造システム1によって砂鋳型を製造する方法における各工程の態様を示す断面模式図である。
【0051】
図3に示されるように砂鋳型製造システム1が起動されると、制御装置6の砂供給位置定義部11は、金枠3の開口部3aの領域を仮想的に複数の小領域に分割する。この分割の態様例は、
図2に示したとおりである。さらに、制御装置6は、上述したような各砂供給位置の定義方法に基づき、ロボット5の動作の原点に対する各小領域の座標を各砂供給位置として定義する(
図3のステップS1)。
なお、
図2に示されるような各小領域を想定する際に必要な行数mおよび列数nや、開口部3aの横寸法および縦寸法は、制御装置6に予め入力されている。
【0052】
続いて、制御装置6の高さ計測部13は、高さ測定センサ7を用い、定義された各砂供給位置に対応する金枠3の内部空間の高さを計測する(
図3のステップS2)。
図4Aは
図3のステップS2の態様の模式的断面図である。高さ測定センサ7として、上述したような三次元視覚センサが使用されている。三次元視覚センサは、
図4Aに破線の矢印で示されるように、金枠3の上端部の位置Pから、各砂供給位置における金枠3の底までの高さ(図中のz方向の距離)を計測する。さらに、三次元視覚センサは、
図4Aに破線の矢印で示されるように、金枠3の上端部の位置Pから、各砂供給位置における模型2の表面までの高さ(図中のz方向の距離)を計測する。
【0053】
次いで、制御装置6の砂供給量決定部14は、各砂供給位置に対して計測された金枠3の内部空間の高さに基づき、各砂供給位置において供給すべき砂の量を決定する(
図3のステップS3)。
【0054】
次いで、制御装置6は、砂供給ノズル4aをロボット5のハンド部5aにより把持し、定義された各砂供給位置に逐次配置するように、ロボット5を動作させる。このとき、各砂供給位置の高さ座標は一定とする。そして、制御装置6は、砂供給位置ごとに、ステップS3で決定された量の砂を砂供給ノズル4aから金枠3内に供給するように砂供給装置4を制御する(
図3のステップS4)。
【0055】
図4Bは
図3のステップS3からステップS4の態様の模式的断面図である。
図4Bにおいては、各砂供給位置に対して決定された、砂の供給量が矩形の模式的断面により示されている。
図4Bに示されるように、制御装置6は、定義された各砂供給位置に砂供給ノズル4aを逐次配置する。そして、砂供給ノズル4aが各砂供給位置に配置される度に、決定された量の砂が砂供給ノズル4aから金枠3内に供給される。
【0056】
砂供給ノズル4aから金枠3内へ砂を供給するとき、単位時間あたり一定の量の砂を砂供給ノズル4aから吐出するように砂供給装置4を構成し、砂供給ノズル4aから砂を吐出する時間を調整している。
【0057】
なお、ステップS3において決定される砂の供給量は次のような方法により算出される。上述したように、金枠3の開口部3aの縦横の寸法と、各小領域を想定するための行数mおよび列数nとが既知の値である。そのため、各小領域の縦横の寸法を算出でき、それにより、各小領域の面積も算出できる。そして、算出された各小領域の面積と、各砂供給位置に対して計測された金枠3の内部空間の高さとの積により、当該空間部の容積を算出することができる。そして、砂の供給量は、算出された容積と同じではなく、当該容積に所定の割合を掛けた量とする。その理由は、砂は供給された場所に留まらずにその場所の周囲に流れる可能性があるので、砂の供給量を上記のように算出された容積と同じにすると、金枠3から砂が溢れるおそれがあるからである。
【0058】
次いで、上記のように、定義された全ての砂供給位置に対して一回の砂供給操作が終了したら、制御装置6は、砂供給ノズル4aを高さ測定センサ7の測定エリア外に待機させる。そして、制御装置6は再び、高さ測定センサ7を用い、各砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さを計測する(
図3のステップS5)。
【0059】
図4Cは
図3のステップS5の態様の模式的断面図である。
図4Cにおいては、定義された全ての砂供給位置に対して、決定された量の砂が実際に金枠3内に供給されたときの態様が示されている。ステップS4に従って砂が供給されても、砂は横に広がったり、模型2の形状に沿って模型2の内側に潜りこんだりする場合がある。その場合、
図4Cに示されるように、金枠3内に供給された砂16の上面に凹部が発生する。そのため、再度、高さ測定センサ7により、各砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さが計測される。
【0060】
続いて、制御装置6は、ステップS5において計測された、各々の砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さを所定の閾値と比較する(
図3のステップS6)。この結果、すべての砂供給位置での計測高さが所定の閾値より小さい場合には、制御装置6は、すべての砂供給位置において
図4Cに示されるような凹部は発生していないと判断し、砂供給操作を終了する。
【0061】
一方、上記ステップS6において、いずれかの砂供給位置での計測高さが所定の閾値と同じか、それより大きい場合には、
図4Cに示されるような凹部が発生している。このため、制御装置6は、上記ステップS6において所定の閾値以上の高さが有ると判断された各砂供給位置に対し、再度、供給すべき砂の量を決定する(
図3のステップS7)。
【0062】
上記ステップS7における砂供給量は、ステップS3において砂供給量を決定した方法と同じ方法により決定される。つまり、金枠3の開口部3a内の各小領域の面積と、ステップS5において各砂供給位置に対して計測された金枠3の内部空間の高さとの積により、当該空間部の容積を算出する。そして、当該容積に所定の割合を掛けた量を砂供給量とする。
【0063】
さらに、制御装置6は、上記のように所定の閾値以上の高さが有ると判断された各砂供給位置に砂供給ノズル4aを逐次配置するように、ロボット5を動作させる。砂供給位置での砂供給ノズル4aの高さ方向位置は一定とする。また、所定の閾値以上の高さが有ると判断された砂供給位置に砂供給ノズル4aが配置される度に、制御装置6は、ステップS7で決定された量の砂を金枠3内に供給するように砂供給装置4を制御する(
図3のステップS8)。
【0064】
上述したようなステップS5〜ステップS8の工程は、ステップS4の後に少なくとも一回行われる。特に本実施形態においては、ステップS5〜ステップS8の工程はすべての砂供給位置での計測高さが所定の閾値より小さくなるまで繰返される。それにより、
図4Cに示されるような砂16の凹部が無くなって、金枠3内の砂の高さが一定に揃うようになる。
【0065】
以上に説明した本実施形態の砂鋳型製造システム1によれば、金枠3の開口部3aの領域が仮想的に複数の小領域に分割され、各々の小領域の座標はロボット5の座標系上の砂供給位置として定義されている。それにより、ロボット5は、ハンド部5aにより砂供給ノズル4aを把持して各々の砂供給位置に逐次移動させられるようになる。また、各々の砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さが計測されて、その計測された高さに基づき、各々の砂供給位置において供給すべき砂の量が決定される。それにより、砂供給位置ごとに、決定された量の砂を砂供給ノズル4aから金枠3内に供給することができる。つまり、従前において金枠内の砂の高さが揃うように人が砂供給ノズルを操作していた作業を自動化することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、砂供給位置ごとに、決定された量の砂を金枠3内に供給した後、各々の砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さを計測して、当該高さに基づいた砂供給量を決定するといった操作が繰返し行われる。この操作において、計測された高さが所定の閾値よりも大きい砂供給位置のみに対し、当該計測された高さに基づいた量の砂を供給している。このため、金枠内に供給された砂の状態が微妙に変化しても、砂の高さが一定に揃うように適量の砂を金枠内に充填することができる。その結果、製造された鋳型の砂の締まり具合が均一になり、寸法精度の良好な鋳型を製造することができる。特に、
図1に示されるように模型2の底部が窄まっている場合や、金枠3が大型のものである場合に、本実施形態の砂鋳型製造システム1によって、砂の高さが一定に揃うように砂を金枠3内に供給することができる。さらに、砂を補充すべき場所に必要最小限の量の砂を正確に供給することできる。また、砂の供給操作中に枠内から砂を溢れさせることもない。
【0067】
また、本実施形態によれば、高さ測定センサ7を金枠3の上方に配置したため、砂供給ノズル4aの移動は高さ測定センサ7により妨げられない。高さ測定センサ7として三次元視覚センサを使用することにより、各々の砂供給位置における、金枠3の内部空間の高さを容易に計測することができる。
【0068】
なお、本願において、「金枠」とは、製造される鋳型が鋳枠付きの場合には鋳枠であり、また、鋳枠無しの場合には型枠を意味する。また、製造される鋳型は、鋳枠付きの場合と、砂が型枠内で圧縮成形された後に型枠から取出された鋳枠無しの場合とを含むものとする。
【0069】
以上、砂供給ノズル4aを移動させるノズル移動装置としてロボット5を例にして本発明を説明したが、本発明のノズル移動装置はロボットに限られない。またロボットについても垂直多関節マニュピレータに限られない。
また、以上では典型的な実施形態を示したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で上述の実施形態を様々な形、構造や材料などに変更可能である。