(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載されるような装置をレーザ装置に適用すれば、結露発生が予想される場合に、警告の発生等によってレーザ発振器の作動を制限することができるとも解される。しかし、レーザ装置では、レーザ発振器の周囲の温度・湿度を適切に調整するために、レーザ発振器の格納庫のための温湿度調整装置(エアコン等)を用いることがあるが、そのような調整装置を用いた場合は、レーザ発振器の周囲の温度・湿度は時間経過に連れて変化するので、該調整装置を作動させたまま待機していれば、結露発生の虞がなくなることがある。このような場合にまでレーザ発振器の作動を制限することは効率的でない。
【0007】
また、冷却水を用いた場合、冷却水の温度が何らかの理由で変化する場合がある。特許文献3に記載されるように、物体の表面温度を測定するだけでは、冷却水の温度低下によって温度測定時点より後に発生する結露を、温度測定時点で未然に予測することは困難である。
【0008】
そこで本発明は、結露の発生を予測するとともに、結露の発生を未然に防止する機能を備えたレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、レーザ光を発振するレーザ共振器と、前記レーザ共振器を冷却するための冷却水を、前記レーザ共振器に供給する冷却水供給装置と、前記レーザ共振器に供給される冷却水の温度を測定する水温計と、前記レーザ共振器が置かれた空間の、温度及び湿度の少なくとも一方を調整する温湿度調整装置と、前記温湿度調整装置によって調整された空気の温度を測定する温度計と、前記温湿度調整装置によって調整された空気の湿度を測定する湿度計と、前記温度計により測定された温度及び前記湿度計により測定された湿度に基づいて、前記冷却水供給装置による冷却水の可否を判定するための基準温度又は基準湿度を計算する制御部と、前記基準温度と冷却水温度とを比較するか、又は、前記基準湿度と前記湿度計により計測された湿度とを比較する比較部と、を備え、前記冷却水供給装置は、前記レーザ共振器を起動する指令が出力された後において、前記冷却水温度が前記基準温度よりも低いとき、又は前記湿度計により計測された湿度が前記基準湿度よりも高いときは、前記冷却水の供給を停止し、前記冷却水温度が前記基準温度以上のとき、又は前記湿度計により計測された湿度が前記基準湿度以下のときは、前記冷却水の供給を開始又は続行するように構成されている、レーザ装置を提供する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記基準温度は、前記レーザ共振器が置かれた空間内の露点又は該露点に予め定めた余裕分を足した値であり、前記基準湿度は、前記レーザ共振器が置かれた空間の結露発生湿度又は該結露発生湿度から予め定めた余裕分を差し引いた値である、レーザ装置を提供する。
【0011】
第3の発明は、レーザ光を発振するレーザ共振器と、前記レーザ共振器を冷却するための冷却水を、前記レーザ共振器に供給する冷却水供給装置と、前記レーザ共振器に供給される冷却水の温度を測定する水温計と、前記レーザ共振器が置かれた空間の、温度及び湿度の少なくとも一方を調整する温湿度調整装置と、前記温湿度調整装置によって調整された空気の温度を測定する温度計と、前記温湿度調整装置によって調整された空気の湿度を測定する湿度計と、前記レーザ共振器に供給される冷却水の制御目標温度を定めるとともに、前記温度計により測定された温度及び前記湿度計により測定された湿度に基づいて、前記冷却水供給装置による冷却水の可否を判定するための基準温度を計算する制御部と、前記レーザ共振器に供給される冷却水の水温を、前記制御目標温度に基づいて調整する水温調整装置と、前記基準温度と前記制御目標温度とを比較する比較部と、を備え、前記冷却水供給装置は、前記レーザ共振器を起動する指令が出力された後において、前記制御目標温度が前記基準温度よりも低いときは、前記冷却水の供給を停止し、前記制御目標温度が前記基準温度以上のときは、前記冷却水の供給を開始又は続行するように構成されている、レーザ装置を提供する。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記制御目標温度は、前記基準温度以上に保たれたまま、前記基準温度の低下に応じて徐々に低下するように計算され設定される、レーザ装置を提供する。
【0013】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記基準温度は、前記レーザ共振器が置かれた空間内の露点又は該露点に予め定めた余裕分を足した値である、レーザ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザ発振器における結露を予測し、結露発生が予想される場合は、冷却水の供給を停止して結露の発生を未然に防止し、レーザ発振を安定的に行える状態になったら冷却水の供給及びレーザ発振を行う、という処理を自動で行うことができる。
【0015】
基準温度の比較対象を、冷却水の制御目標温度にすることにより、冷却水温度の低下に起因する将来の結露も予測し、該結露を防止することができる。また制御目標温度を基準温度に応じて徐々に下げることにより、より早い段階から冷却水の供給を開始でき、故にレーザ発振も早期に開始できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置10の構成を模式的に示す図である。レーザ装置10は、レーザ光を発振するレーザ共振器12と、レーザ共振器12に冷却水を供給する冷却水供給装置14と、レーザ共振器12に供給される冷却水の温度を測定する水温計16と、レーザ共振器12が置かれた空間(図示例では格納庫18の内部空間)の温度及び湿度の少なくとも一方を調整する温湿度調整装置20と、レーザ共振器12が置かれた空間(格納庫18)内の空気の温度を測定する温度計22と、レーザ共振器12が置かれた空間(格納庫18)内の空気の湿度を測定する湿度計24とを有する。
【0018】
図示例では、レーザ共振器12と、レーザ共振器12に電源供給するレーザ電源26とを含むレーザ発振器28が格納庫18内に配置されており、また水温計16は、レーザ共振器12と冷却水供給装置14とを流体的に接続する冷却水路30内を流れる冷却水の水温を測定するように構成されている。また温湿度調整装置20としては例えば、格納庫18内の空気の温度及び湿度を調整する空調装置(エアコン)や、格納庫18内に乾燥空気を供給するドライエア供給装置等が使用可能である。
【0019】
レーザ装置10は、レーザ発振器28及び冷却水供給装置14の動作制御を行う制御装置32を有し、制御装置32は、温度計22により測定された温度及び湿度計24により測定された湿度に基づいて、冷却水供給装置14による冷却水の可否を判定するための基準温度(後述)を計算する制御部34と、基準温度と冷却水温度とを比較する比較部36とを備え、冷却水供給装置14は、制御装置32からレーザ発振器28を起動する指令が出力された後に、冷却水温度が基準温度よりも低いときは冷却水の供給を停止し、冷却水温度が基準温度以上のときは冷却水の供給を行う(開始又は続行する)ように構成されている。
【0020】
制御部34は、冷却水供給装置14を操作し、レーザ電源26及びレーザ共振器12の少なくとも一方に冷却水を供給するか否かを指令することができる。例えば、冷却水供給装置14が冷却水路30に設けた電磁弁を有する場合、制御部34からの指令を該電磁弁に送って該電磁弁の開閉動作を行うことにより、レーザ発振器28への冷却水の供給又は停止を行うことができる。あるいは、冷却水供給装置14がポンプを備えたチラーを有する場合、制御部34からの指令を該チラーに送って該ポンプを起動又は停止することによって、レーザ発振器28への冷却水の供給又は停止を行うことができる。なお、冷却水供給装置14がチラーを有する場合は、冷却水は循環して使用されることができる。
【0021】
図2は、
図1のレーザ装置10における、発振器起動処理の一例を示すフローチャートであり、
図3は、当該処理が実行されたときの冷却水温度の時間変化(実線40)の一例を表すグラフである。先ず、レーザ発振器28(レーザ共振器12)を起動する指令(起動指令等)が出力されたら、温湿度調整装置20を起動する(ステップS101)。次にステップS102において、比較部36が、水温計16により測定された冷却水の温度と、冷却水供給装置14による冷却水供給の可否を判定するための基準温度とを比較する。
【0022】
基準温度は例えば、冷却水の温度測定時の格納庫(レーザ共振器12が置かれた空間)内の露点に基づいて計算することができ、
図2及び
図3の例では、測定系の誤差等を考慮して予め定めた余裕分(定数)を露点に足した値である。或いは、格納庫内の露点そのものを基準温度としてもよい。またこの余裕分は、測定系の仕様等に基づいて経験的に定めることができ、例えば0.5〜2℃の範囲内の一定値(図示例では1℃)とすることができる。
【0023】
冷却水温度が基準温度よりも低いときは、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行わず、所定時間待機する(ステップS103)。つまり冷却水温度が基準温度よりも低い間は、レーザ共振器12等において結露が発生している可能性があるので、レーザ発振は開始されない。なおここでの所定時間は、例えば、30秒〜5分の範囲内の一定値とすることができるが、冷却水温と基準温度との差が小さくなってきたら当該所定時間を短くし(つまりステップS102の処理をより短周期で行い)、より迅速にレーザを発振できるようにしてもよい。
【0024】
一方、冷却水温度が基準温度以上であるとき(
図3の時刻Aに相当)は、レーザ発振器28において結露は発生していないと考えられるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行い(開始し)(ステップS104)、レーザ発振器28によるレーザ発振を開始する(ステップS105)。
【0025】
ステップS101以降、温湿度調整装置20は連続的に動作しているので、
図3に示すように、格納庫18内の湿度は徐々に低下し、これに伴い露点(一点鎖線42)も徐々に低下する。また、露点に余裕分(
図3の例では1℃)を足した基準温度(点線44)も徐々に低下する。なお、冷却水供給装置14がチラーを有する場合は、該チラーの制御目標温度(
図3の例では25℃)に向かって、冷却水温度が低下することになる。
【0026】
次に、ステップS106では、ステップS102と同様、水温計16により測定された冷却水の温度と、測定時の基準温度とを比較する。ここでの基準温度も、ステップS102と同様に、冷却水の温度測定時の格納庫内の露点に基づいて定めることができる。冷却水温度が基準温度を下回る(
図3の時刻B)と、レーザ共振器12等において結露が発生する可能性があるので、レーザ発振を停止し(ステップS107)、冷却水供給装置14による冷却水の供給を停止し(ステップS108)、所定時間待機する(ステップS109)。ステップS107及びS108の順序は逆でもよいし、同時に行ってもよい。なおここでの所定時間も、例えば、30秒〜5分の範囲内の一定値とすることができるが、冷却水温と基準温度との差が小さくなってきたら当該所定時間を短くし、より迅速にレーザを発振できるようにしてもよい。
【0027】
所定時間待機の後、時刻Bよりも格納庫内の露点が低下(故に基準温度も低下)し、冷却水温度が基準温度以上であるとき(
図3の時刻C)は、レーザ発振器28において結露が発生していない又は結露が消滅したと考えられるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行い(開始又は続行し)(ステップS110)、レーザ発振器28によるレーザ発振を開始又は続行する(ステップS111)。
【0028】
ステップS106以降の処理は、レーザ発振器の運転中に間欠的に実行される。これにより、時刻AからCまでと概ね同様の処理が、時刻CからEにおいて繰り返される。なお時刻E以降は、冷却水の温度は制御目標温度(25℃)になるように制御される(
図3の時刻F)。
【0029】
図3において、時刻Aから時刻Bまで、時刻Cから時刻Dまで、及び時刻E以降は、冷却水供給装置14はレーザ発振器28に冷却水を供給する。一方、時刻Bから時刻Cまで、及び時刻Dから時刻Eまでは、冷却水供給装置14はレーザ発振器28への冷却水の供給を停止する。
【0030】
なお
図2に示すように、ステップS102及びステップS106の一方又は双方において、冷却水温を基準温度と比較する代わりに、湿度計24で計測された格納庫18内の湿度と、冷却水供給装置14による冷却水供給の可否を判定するための基準湿度とを比較するようにしてもよい。基準湿度は例えば、格納庫18内(レーザ共振器12が置かれた空間)の湿度測定時における結露発生湿度に基づいて計算することができ、例えば、測定系の誤差等を考慮して予め定めた余裕分(定数)を結露発生湿度から差し引いた値である。或いは、格納庫内の結露発生湿度(これを超えると結露が発生するという湿度)そのものを基準湿度としてもよい。またこの余裕分は、測定系の仕様等に基づいて経験的に定めることができ、例えば1〜10%(相対湿度)の範囲内の一定値とすることができる。
【0031】
基準温度の代わりに基準湿度を使用する場合は、湿度計24で計測された格納庫18内の湿度が基準湿度より高いとき(測定湿度>基準湿度)は、結露が発生している可能性があるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行わず、所定時間待機する(ステップS103又はS107)。一方、測定湿度が基準湿度以下であるときは、レーザ発振器28において結露は発生していないと考えられるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を開始又は続行し(ステップS105又はS110)、レーザ発振器28によるレーザ発振を行う。
【0032】
このように、第1の実施形態では、
図2に示したような一連の処理を自動で行うことができるので、結露の発生が予測される場合は、温湿度調整装置20を作動させたまま、冷却水の供給のみを停止させて、結露が発生しない条件となるまで待機する(或いは結露が発生した場合は結露がなくなるまで待機する)、という処理を自動で行うことができる。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置10′の構成を模式的に示す図である。レーザ装置10′は、冷却水供給装置14からレーザ発振器28に供給される冷却水の温度を調整する水温調整装置38を有する点で第1の実施形態と相違する。水温調整装置38は、冷却水温が、予め定めた制御目標温度(後述)に基づいて(該制御目標温度に等しく又は近づくように)冷却水温を調整するように構成されている。
図4の例では、水温調整装置38は、冷却水路30に設けられ、冷却水路30内を流れる冷却水と、格納庫18の外部の空気との熱交換を行う熱交換器を有する。また制御部34は、基準温度に加え、前記制御目標温度を定め又は計算するように構成されている。或いは、制御目標温度を求める機能を水温調整装置38が具備してもよい。レーザ装置10′の他の構成要素については、第1の実施形態に係るレーザ装置10と同様でよいので、同等の機能を有する構成要素については同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0034】
図5は、
図4のレーザ装置10における、発振器起動処理の一例を示すフローチャートであり、
図6は、当該処理が実行されたときの冷却水温度の時間変化(実線50)の一例を表すグラフである。先ず、レーザ発振器28(レーザ共振器12)を起動する指令(起動指令等)が出力されたら、温湿度調整装置20を起動する(ステップS201)。次にステップS202において、比較部36が、水温調整装置38による冷却水温の制御目標温度(
図6の破線52)と、冷却水供給装置14による冷却水供給の可否を判定するための基準温度(
図6の点線54)とを比較する。ここで制御目標温度は、例えば、レーザ共振器12がレーザ発振等の動作を好適に行えるようにレーザ共振器12を冷却するための冷却水温度として予め経験的に定めておくことができ、
図6の例では一定値(25℃)に設定されている。
【0035】
基準温度は、第1の実施形態と同様に、例えば、冷却水の温度測定時の格納庫内の露点に基づいて計算することができ、
図5及び
図6の例では、測定系の誤差等を考慮して予め定めた余裕分(定数)を露点に足した値である。或いは、格納庫内の露点そのものを基準温度としてもよい。またこの余裕分は、測定系の仕様等に基づいて経験的に定めることができ、例えば0.5〜2℃の範囲内の一定値(図示例では1℃)とすることができる。
【0036】
制御目標温度が基準温度よりも低いとき(
図6の時刻G〜Hに相当)は、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行わず、所定時間待機する(ステップS203)。つまり制御目標温度が基準温度よりも低いということは、冷却水温が実際に制御目標温度まで低下すると、レーザ共振器12等において結露が発生する蓋然性が高いことを意味するので、レーザ発振は開始されない。なおここでの所定時間は、例えば、30秒〜5分の範囲内の一定値とすることができるが、冷却水温と基準温度との差が小さくなってきたら当該所定時間を短くし(つまりステップS202の処理をより短周期で行い)、より迅速にレーザを発振できるようにしてもよい。
【0037】
ステップS201以降、温湿度調整装置20は連続的に動作しているので、
図6に示すように、格納庫18内の湿度は徐々に低下し、これに伴い露点も徐々に低下する。また、露点に余裕分を足した基準温度(点線
54)も徐々に低下する。
【0038】
所定時間待機後、制御目標温度が基準温度以上となったとき(
図6の時刻H以降)は、冷却水温度が制御目標温度に達してもレーザ発振器28において結露は発生しないと考えられるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行い(開始し)(ステップS204)、レーザ発振器28によるレーザ発振を開始する(ステップS205)。
【0039】
次に、ステップS206では、ステップS202と同様、水温調整装置38による冷却水温の制御目標温度と、冷却水供給装置14による冷却水供給の可否を判定するための基準温度とを比較する。ここでの制御目標温度も、例えば、レーザ共振器12がレーザ発振等の動作を好適に行えるようにレーザ共振器12を冷却するための冷却水温度として予め経験的に定めておくことができ、
図6の例では一定値(25℃)に設定されている。
【0040】
また基準温度も、ステップS202と同様に、冷却水の温度測定時の格納庫内の露点に基づいて定めることができる。何らかの原因によって基準温度が制御目標温度を上回ったときは、レーザ共振器12等において結露が発生すると見込まれるので、レーザ発振を停止し(ステップS207)、冷却水供給装置14による冷却水の供給を停止し(ステップS208)、所定時間待機する(ステップS209)。ステップS207及びS208の順序は逆でもよいし、同時に行ってもよい。なおここでの所定時間も、例えば、30秒〜5分の範囲内の一定値とすることができるが、冷却水温と基準温度との差が小さくなってきたら当該所定時間を短くし、より迅速にレーザを発振できるようにしてもよい。
【0041】
一方、基準温度が制御目標温度以上であるとき(
図6の時刻H以降)は、レーザ共振器12等において結露は発生しないと見込まれるので、冷却水供給装置14による冷却水の供給を行い(開始又は続行し)(ステップS210)、レーザ発振器28によるレーザ発振を開始又は続行する(ステップS211)。ステップS206以降の処理は、レーザ発振器の運転中に間欠的に実行される。なお時刻I以降は、冷却水の温度は制御目標温度(25℃)になるように制御される。
【0042】
図6の例では、時刻Gから時刻Hまでは、冷却水供給装置14はレーザ発振器28への冷却水の供給を停止し、時刻H以降は、冷却水供給装置14はレーザ発振器28に冷却水を供給することになる。このように、基準温度との比較対象を冷却水の制御目標温度にすることにより、冷却水温度の低下に起因する将来の結露も予測し、結露をより確実に防止することができる。
【0043】
図7は、本発明の第2の実施形態において、制御目標温度の設定方法が
図6の場合と異なる場合の、冷却水温度の時間変化(実線60)の一例を表すグラフである。
図6の例では、制御目標温度は一定値であったが、
図7の例では、制御部34が制御目標温度を逐次計算し、計算された制御目標温度に基づいて水温調整装置38を制御する。なお
図7の場合も、レーザ装置の起動処理に関するフローチャートは、
図5のものと同様でよい。
【0044】
図7に示すように、制御目標温度(破線62)は、基準温度(点線64)以上に保たれたまま、基準温度64の低下に応じて徐々に低下するように計算され設定される。例えば制御目標温度62は、基準温度64以上でかつ基準温度に所定の余裕分を加算した値以下となるように設定され、図示例では、制御目標温度62は、基準温度64よりも一定値(例えば0.5〜2℃、図示例では1℃)高い温度に設定されている。但し、制御目標温度は、適切なレーザ発振等のために予め定めた下限値(ここでは25℃)を下回らないように設定することが好ましく、故に
図7の例では、「基準温度+1℃」が25℃を下回っても(時刻L以降)、制御目標温度は25℃となっている。
【0045】
ここで、制御目標温度は、基準温度と等しくなるように計算・設定されてもよいが、基準温度よりも一定値(例えば0.5〜2℃)だけ大きくなるように設定されることが好ましい。その理由は、冷却水温度は制御目標温度に近づくように制御されるが、制御の誤差により、例えば数10秒程度の短期的な期間だけ、制御目標温度よりも低くなってしまうことがあるからである。このように、冷却水温度が制御目標温度よりも低くなっても結露が発生しないように、1℃等の一定の余裕分を設けることが好ましい。
【0046】
図7のように、制御目標温度を、基準温度より一定値大きい値に設定することにより、
図6の例に比べ、レーザ発振(冷却水の供給)が可能な時間帯を広くすることができる。
図7の例では、冷却水温度60が初期の35℃のとき(時刻J)から、冷却水温度60が制御目標温度62に概ね等しいとき(時刻K)、さらに冷却水温度60が安定的なレーザ発振に適した25℃に至るとき(時刻L)以降の全体に亘って、結露の発生が防止できるので、より長時間に亘って冷却水の供給(レーザ発振)を行うことが可能となる。