(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である電動車両について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1は、電動車両に搭載される電池システムの構成を示す概略図である。また、
図2a、
図2bは、
図1に図示されたジャンクションボックス32,34の構成を示す図である。
図1において、実線で示す接続は、電気的な接続を表し、破線で示す接続は、機械的な接続を表す。
【0014】
本実施形態の電動車両は、モータ・ジェネレータ51およびエンジンを動力源とするハイブリッド車両である。電池システムは、並列に接続された高出力型組電池10および高容量型組電池20を有する。二種類の組電池10,20は、対応するジャンクションボックス32,34とともに、一つのケース35内に収容されて電池パック30を構成する。
【0015】
高出力型組電池10は、ジャンクションボックス32内に設けられたシステムメインリレーSMR−G1,SMR−B1,SMR−P1およびプリチャージ抵抗R1を介してパワーコントロールユニット(電力制御部、以下「PCU」という)40に接続されている。また、高容量型組電池20は、ジャンクションボックス34内に設けられたシステムメインリレーSMR−G2,SMR−B2,SMR−P2およびプリチャージ抵抗R2を介してPCU40に接続されている。さらに、高容量型組電池20は、ジャンクションボックス34内に設けられた充電リレーCR−G,CR−Bを介して充電器46にも接続されている。
【0016】
PCU40は、インバータ44およびDC/DCコンバータ42を備えている。DC/DCコンバータ42は、組電池10,20から供給された直流電力を昇圧、または、モータ・ジェネレータ51で発電されてインバータ44から出力される直流電力を降圧する。また、インバータ44は、組電池10,20から供給された直流電力を交流電力に変換する。インバータ44には、モータ・ジェネレータ51(交流モータ)が接続されており、モータ・ジェネレータ51は、インバータ44から供給された交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを発生する。モータ・ジェネレータ51は、車輪52と接続されている。また、車輪52には、エンジン54が接続されており、エンジン54で生成された運動エネルギが車輪52に伝達される。
【0017】
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ51は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ44は、モータ・ジェネレータ51が生成した交流電力を直流電力に変換して、組電池10,20に供給する。これにより、組電池10,20は、回生電力を蓄えることができる。なお、モータ・ジェネレータ51は、一つでなく、より多数設けられてもよい。
【0018】
充電器46は、外部のAC電源からの電力を高容量型組電池20に充電する充電電力(直流電力)に変換する。充電器46は、充電インレット48に接続されている。充電インレット48は、後に詳説するように、車両の側面のうち後方寄りの位置に設けられており、AC電源(例えば、商用電源)のコネクタ(いわゆる充電プラグ)が挿し込まれる。
【0019】
コントローラ50は、PCU40およびモータ・ジェネレータ51のそれぞれに制御信号を出力して、これらの駆動を制御する。また、コントローラ50は、システムメインリレーSMR−B1,B2,SMR−G1,G2,SMR−P1,P2および充電リレーCR−G,CR−Bに制御信号を出力することにより、オンおよびオフの間での切り替えを行う。
【0020】
システムメインリレーSMR−B1,SMR−G1,SMR−P1がオンであるとき、高出力型組電池10の充放電が許容され、システムメインリレーSMR−B1,SMR−G1,SMR−P1がオフであるとき、高出力型組電池10の充放電が禁止される。システムメインリレーSMR−B2,SMR−G2,SMR−P2がオンであるとき、高容量型組電池20の充放電が許容され、システムメインリレーSMR−B2,SMR−G2,SMR−P2がオフであるとき、高容量型組電池20の充放電が禁止される。また、充電リレーCR−G,CR−Bがオンであるとき、高容量型組電池20への外部充電が許容され、充電リレーCR−G,CR−Bがオフであるとき、高容量型組電池20への外部充電が禁止される。
【0021】
本実施形態の車両では、車両を走行させるための動力源として、組電池10,20だけでなく、エンジン54も備えている。エンジン54としては、ガソリン、ディーゼル燃料又はバイオ燃料を用いるものがある。
【0022】
本実施例の車両では、高出力型組電池10や高容量型組電池20の出力だけを用いて、車両を走行させることができる。この走行モードを、EV(Electric Vehicle)走行モードという。例えば、充電状態(SOC:State of Charge)が100%付近から0%付近に到達するまで、高容量型組電池20を放電させて、車両を走行させることができる。高容量型組電池20のSOCが0%付近に到達した後は、外部電源、例えば、商用電源を用いて、高容量型組電池20を充電することができる。
【0023】
EV走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作して、車両の要求出力が上昇したときには、高容量型組電池20の出力だけでなく、高出力型組電池10の出力も用いて、車両を走行させることができる。高容量型組電池20および高出力型組電池10を併用することにより、アクセルペダルの操作に応じた電池出力を確保することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
【0024】
また、高容量型組電池20のSOCが0%付近に到達した後では、高出力型組電池10およびエンジン54を併用して、車両を走行させることができる。この走行モードを、HV(Hybrid Vehicle)走行モードという。HV走行モードでは、例えば、高出力型組電池10のSOCが、所定の基準SOCに沿って変化するように、高出力型組電池10の充放電を制御することができる。
【0025】
高出力型組電池10のSOCが基準SOCよりも高いときには、高出力型組電池10を放電して、高出力型組電池10のSOCを基準SOCに近づけることができる。また、高出力型組電池10のSOCが基準SOCよりも低いときには、高出力型組電池10を充電して、高出力型組電池10のSOCを基準SOCに近づけることができる。HV走行モードでは、高出力型組電池10だけではなく、高容量型組電池20も用いることができる。すなわち、高容量型組電池20の容量を残しておき、HV走行モードにおいて、高容量型組電池20を放電させることもできる。また、回生電力を高容量型組電池20に蓄えることもできる。
【0026】
上述したように、高容量型組電池20は、主にEV走行モードで用いることができ、高出力型組電池10は、主にHV走行モードで用いることができる。高容量型組電池20を主にEV走行モードで用いることとは、以下の2つの場合を意味する。第1として、EV走行モードにおいて、高容量型組電池20の使用頻度が、高出力型組電池10の使用頻度よりも高いことを意味する。第2として、EV走行モードにおいて、高容量型組電池20および高出力型組電池10を併用するときには、車両の走行に用いられた総電力のうち、高容量型組電池20の出力電力が占める割合が、高出力型組電池10の出力電力が占める割合よりも高いことを意味する。ここでの総電力とは、瞬間的な電力ではなく、所定の走行時間又は走行距離における電力である。
【0027】
高出力型組電池10は、
図1に示すように、直列に接続された複数の単電池11を有している。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。高出力型組電池10を構成する単電池11の数は、高出力型組電池10の要求出力などを考慮して適宜設定することができる。単電池11は、
図3に示すように、いわゆる角型の単電池である。角型の単電池とは、電池の外形が直方体に沿って形成された単電池である。
【0028】
図3において、単電池11は、直方体に沿って形成された電池ケース11aを有しており、電池ケース11aは、充放電を行う発電要素を収容している。発電要素は、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されるセパレータとを有する。セパレータには、電解液が含まれている。正極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有する。負極素子は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。
【0029】
電池ケース11aの上面には、正極端子11bおよび負極端子11cが配置されている。正極端子11bは、発電要素の正極素子と電気的に接続されており、負極端子11cは、発電要素の負極素子と電気的に接続されている。
【0030】
図4に示すように、高出力型組電池10では、複数の単電池11が一方向に並んで配置されている。隣り合って配置された2つの単電池11の間には、仕切り板12が配置されている。仕切り板12は、樹脂といった絶縁材料で形成することができ、2つの単電池11を絶縁状態とすることができる。
【0031】
仕切り板12を用いることにより、単電池11の外面にスペースを形成することができる。具体的には、仕切り板12に対して、単電池11に向かって突出する突起部を設けることができる。突起部の先端を単電池11に接触させることにより、仕切り板12および単電池11の間にスペースを形成することができる。このスペースにおいて、単電池11の温度調節に用いられる空気を移動させることができる。
【0032】
単電池11が、充放電などによって発熱しているときには、仕切り板12および単電池11の間に形成されたスペースに、冷却用の空気を導くことができる。冷却用の空気は、単電池11との間で熱交換を行うことにより、単電池11の温度上昇を抑制することができる。また、単電池11が過度に冷えているときには、仕切り板12および単電池11の間に形成されたスペースに、加温用の空気を導くことができる。加温用の空気は、単電池11との間で熱交換を行うことにより、単電池11の温度低下を抑制することができる。
【0033】
複数の単電池11は、2つのバスバーモジュール13によって電気的に直列に接続されている。バスバーモジュール13は、複数のバスバーと、複数のバスバーを保持するホルダとを有する。バスバーは、導電性材料で形成されており、隣り合って配置された2つの単電池11のうち、一方の単電池11の正極端子11bと、他方の単電池11の負極端子11cとに接続される。ホルダは、樹脂といった絶縁材料で形成されている。
【0034】
複数の単電池11の配列方向における高出力型組電池10の両端には、一対のエンドプレート14が配置されている。一対のエンドプレート14には、複数の単電池11の配列方向に延びる拘束バンド15が接続されている。これにより、複数の単電池11に対して拘束力を与えることができる。拘束力とは、複数の単電池11の配列方向において、各単電池11を挟む力である。単電池11に拘束力を与えることにより、単電池11の膨張などを抑制することができる。
【0035】
本実施例では、高出力型組電池10の上面に、2つの拘束バンド15が配置され、高出力型組電池10の下面に、2つの拘束バンド15が配置されている。なお、拘束バンド15の数は、適宜設定することができる。すなわち、拘束バンド15およびエンドプレート14を用いて、単電池11に拘束力を与えることができればよい。一方、単電池11に拘束力を与えなくてもよく、エンドプレート14や拘束バンド15を省略することもできる。
【0036】
本実施例では、複数の単電池11を一方向に並べているが、これに限るものではない。例えば、複数の単電池を用いて、1つの電池モジュールを構成しておき、複数の電池モジュールを一方向に並べることもできる。
【0037】
一方、高容量型組電池20は、
図1に示すように、直列に接続された複数の電池ブロック21を有している。各電池ブロック21は、並列に接続された複数の単電池22を有する。電池ブロック21の数や、各電池ブロック21に含まれる単電池22の数は、高容量型組電池20の要求出力や容量などを考慮して適宜設定することができる。本実施例の電池ブロック21では、複数の単電池22を並列に接続しているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池22を直列に接続した電池モジュールを複数用意しておき、複数の電池モジュールを並列に接続することによって、電池ブロック21を構成することもできる。
【0038】
単電池22としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。単電池22は、
図5に示すように、いわゆる円筒型の単電池である。円筒型の単電池とは、電池の外形が円柱に沿って形成された単電池である。
【0039】
円筒型の単電池22では、
図5に示すように、円筒形状の電池ケース22aを有する。電池ケース22aの内部には、発電要素が収容されている。単電池22における発電要素の構成部材は、単電池11における発電要素の構成部材と同様である。
【0040】
単電池22の長手方向における両端には、正極端子22bおよび負極端子22cがそれぞれ設けられている。正極端子22bおよび負極端子22cは、電池ケース22aを構成する。正極端子22bは、発電要素の正極素子と電気的に接続されており、負極端子22cは、発電要素の負極素子と電気的に接続されている。本実施例の単電池22は、直径が18[mm]であり、長さが65.0[mm]であり、いわゆる18650型と呼ばれる電池である。なお、18650型の単電池22とは異なるサイズの単電池22を用いることもできる。
【0041】
電池ブロック21は、
図6に示すように、複数の単電池22と、複数の単電池22を保持するホルダ23とを有する。複数の電池ブロック21を並べることによって、高容量型組電池20が構成される。ここで、複数の電池ブロック21は、電気ケーブルなどを介して直列に接続されている。高容量型組電池20は、EV走行モードでの走行距離を確保するために用いられており、多くの単電池22が用いられている。このため、高容量型組電池20のサイズは、高出力型組電池10のサイズよりも大きくなりやすい。
【0042】
ホルダ23は、各単電池22が挿入される貫通孔23aを有する。貫通孔23aは、単電池22の数だけ設けられている。複数の単電池22は、正極端子22b(又は負極端子22c)がホルダ23に対して同一の側に位置するように配置されている。複数の正極端子22bは、1つのバスバーと接続され、複数の負極端子22cは、1つのバスバーと接続される。これにより、複数の単電池22は、電気的に並列に接続される。
【0043】
本実施例の電池ブロック21では、1つのホルダ23を用いているが、複数のホルダ23を用いることもできる。例えば、一方のホルダ23を用いて、単電池22の正極端子22bの側を保持し、他方のホルダ23を用いて、単電池22の負極端子22cの側を保持することができる。
【0044】
次に、高出力型組電池10で用いられる単電池11の特性と、高容量型組電池20で用いられる単電池22の特性について説明する。表1は、単電池11,22の特性を比較したものである。表1に示す「高」および「低」は、2つの単電池11,22を比較したときの関係を示している。すなわち、「高」は、比較対象の単電池と比べて高いことを意味しており、「低」は、比較対象の単電池と比べて低いことを意味している。
【表1】
【0045】
単電池11の出力密度は、単電池22の出力密度よりも高い。単電池11,22の出力密度は、例えば、単電池の単位質量当たりの電力(単位[W/kg])や、単電池の単位体積当たりの電力(単位[W/L])として表すことができる。単電池11,22の質量又は体積を等しくしたとき、単電池11の出力[W]は、単電池22の出力[W]よりも高くなる。
【0046】
また、単電池11,22の電極素子(正極素子又は負極素子)における出力密度は、例えば、電極素子の単位面積当たりの電流値(単位[mA/cm
2])として表すことができる。電極素子の出力密度に関して、単電池11は、単電池22よりも高い。ここで、電極素子の面積が等しいとき、単電池11の電極素子に流すことが可能な電流値は、単電池22の電極素子に流すことが可能な電流値よりも大きくなる。
【0047】
一方、単電池22の電力容量密度は、単電池11の電力容量密度よりも高い。単電池11,22の電力容量密度は、例えば、単電池の単位質量当たりの容量(単位[Wh/kg])や、単電池の単位体積当たりの容量(単位[Wh/L])として表すことができる。単電池11,22の質量又は体積を等しくしたとき、単電池22の電力容量[Wh]は、単電池11の電力容量[Wh]よりも大きくなる。
【0048】
また、単電池11,22の電極素子における容量密度は、例えば、電極素子の単位質量当たりの容量(単位[mAh/g])や、電極素子の単位体積当たりの容量(単位[mAh/cc])として表すことができる。電極素子の容量密度に関して、単電池22は、単電池11よりも高い。ここで、電極素子の質量又は体積が等しいとき、単電池22の電極素子の容量は、単電池11の電極素子の容量よりも大きくなる。
【0049】
図7は、単電池11における発電要素の構成を示す概略図であり、
図8は、単電池22における発電要素の構成を示す概略図である。
【0050】
図7において、単電池11の発電要素を構成する正極素子は、集電板111と、集電板111の両面に形成された活物質層112とを有する。単電池11がリチウムイオン二次電池であるとき、集電板111の材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。活物質層112は、正極活物質、導電材およびバインダーなどを含んでいる。
【0051】
単電池11の発電要素を構成する負極素子は、集電板113と、集電板113の両面に形成された活物質層114とを有する。単電池11がリチウムイオン二次電池であるとき、集電板113の材料としては、例えば、銅を用いることができる。活物質層114は、負極活物質、導電材およびバインダーなどを含んでいる。
【0052】
正極素子および負極素子の間には、セパレータ115が配置されており、セパレータ115は、正極素子の活物質層112と、負極素子の活物質層114とに接触している。正極素子、セパレータ115および負極素子を、この順に積層して積層体を構成し、積層体を巻くことによって、発電要素を構成することができる。
【0053】
本実施例では、集電板111の両面に活物質層112を形成したり、集電板113の両面に活物質層114を形成したりしているが、これに限るものではない。具体的には、いわゆるバイポーラ電極を用いることができる。バイポーラ電極では、集電板の一方の面に正極活物質層112が形成され、集電板の他方の面に負極活物質層114が形成されている。複数のバイポーラ電極を、セパレータを介して積層することにより、発電要素を構成することができる。
【0054】
図8において、単電池22の発電要素を構成する正極素子は、集電板221と、集電板221の両面に形成された活物質層222とを有する。単電池22がリチウムイオン二次電池であるとき、集電板221の材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。活物質層222は、正極活物質、導電材およびバインダーなどを含んでいる。
【0055】
単電池22の発電要素を構成する負極素子は、集電板223と、集電板223の両面に形成された活物質層224とを有する。単電池22がリチウムイオン二次電池であるとき、集電板223の材料としては、例えば、銅を用いることができる。活物質層224は、負極活物質、導電材およびバインダーなどを含んでいる。正極素子および負極素子の間には、セパレータ225が配置されており、セパレータ225は、正極素子の活物質層222と、負極素子の活物質層224とに接触している。
【0056】
図7および
図8に示すように、単電池11および単電池22における正極素子を比較したとき、活物質層112の厚さD11は、活物質層222の厚さD21よりも薄い。また、単電池11および単電池22における負極素子を比較したとき、活物質層114の厚さD12は、活物質層224の厚さD22よりも薄い。活物質層112,114の厚さD11,D12が活物質層222,224の厚さD21,D22よりも薄いことにより、単電池11では、正極素子および負極素子の間で電流が流れやすくなる。したがって、単電池11の出力密度は、単電池22の出力密度よりも高くなる。
【0057】
次に、高出力型組電池10および高容量型組電池20を車両に搭載するときの配置および配線について、
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、車両の概略側面図であり、
図10は、電池パック30内での高出力型組電池10および高容量型組電池20の配置を示す図である。
【0058】
既述した通り、本実施形態の車両は、二種類の組電池、すなわち、高出力型組電池10および高容量型組電池20を有している。本実施形態では、この高出力型組電池10および高容量型組電池20を一つのケース35に収容し、一つの電池パック30として構成している。この電池パック30のケース35は、樹脂やアルミ等の材料からなり、その形状は、周辺部材との関係や、二種類の組電池10,20のサイズ等に応じて自由に変更できる。
図10に示すように、このケース35の一端には、PCU40と電気的に接続されるPCU側接続端子36が設けられている。また、ケース35の他端には、充電器46と電気的に接続される充電側接続端子38が設けられている。この端子36,38に高圧ワイヤハーネスを接続することで、各組電池10,20が、PCU40や充電器46と電気的に接続される。
【0059】
ケース35の内部には、高出力型組電池10と、高容量型組電池20と、高出力側ジャンクションボックス32と、高容量側ジャンクションボックス34と、が設けられている。本実施形態では、高出力型組電池10の側方に高出力側ジャンクションボックス32を設置し、高容量型組電池20の上に高容量側ジャンクションボックス34を載置している。
【0060】
このように二種類の組電池10,20を、一つのケース35に収容し、パック化することで、組電池の設置やメンテナンスの手間を大幅に低減できる。すなわち、従来、二種類の組電池10,20を搭載する場合、高出力型組電池10および高容量型組電池20は、互いに独立した別個の電池パックとして構成されることが多かった。そして、二種類の電池パックは、互いに別の場所に設置されていた。例えば、高出力型組電池10を有する電池パックは、ラゲッジスペースに、高容量型組電池20を有する電池パックは、シート70の下部に設置されていた。しかし、こうした構成の場合、高出力型組電池10および高容量型組電池20を車両に組み付ける際に、別々の組み付け作業が必要であり、また、電池系統のメンテナンスをする際にも、互いに異なる二カ所にアクセスする必要があり、手間であった。一方、本実施形態のように、二種類の組電池10,20を、一つの電池パック30にまとめた場合、組み付けの手間や、メンテナンスの手間を大幅に低減できる。
【0061】
ただし、二種類の組電池10,20を一つの電池パック30にまとめた場合、二種類の組電池10,20を別個に設置する場合に比べて、まとまった広さの設置スペースが必要となる。ラゲッジスペースや、シート下では、こうしたまとまった広さの設置スペースを確保することが難しい。そこで、本実施形態では、
図9に示すように、フロアパネル72の下部で、車両の前後方向中央位置に電池パック30を設置している。フロアパネル72は、車室の床面を構成するパネルである。電池パック30は、このフロアパネル72の外側底面に固着される。このようにフロアパネル72の下部、すなわち、車室の底面外側であれば、ラゲッジスペースやシート下に比べて、まとまった広さのスペースが確保しやすい。そのため、比較的、大きいサイズの電池パック30でも設置することが可能となる。特に、近年は、航続距離の更なる向上が求められており、この要望に応えるために、電池容量の更なる増加、ひいては、電池パック30の更なる大型化が求められている。車室の底面外側に設置するのであれば、こうした電池パック30の大型化の要望にも十分に応えられる。また、重量物である電池パック30を、フロアパネル72の底面外側、すなわち、車両の下部に設置することで、車両全体の重心が下がる。その結果、走行時における車両の安定性をより高めることができる。
【0062】
ここで、各組電池10,20は、高圧ワイヤハーネス(電気配線)を介してPCU40や充電インレット48と電気的に接続される。以下では、高出力型組電池10とPCU40とを接続する電気配線を「第一配線60」、高容量型組電池20とPCU40とを接続する電気配線を「第二配線62」、高容量型組電池20と充電インレットとを接続する電気配線を「充電配線64」と呼ぶ。本実施形態では、高容量型組電池20とPCU40とを接続する第二配線62を、高出力型組電池10とPCU40とを接続する第一配線60より短くしている。
【0063】
具体的に説明すると、第一配線60は、高出力型組電池10の入出力端子(図示せず)とPCU側接続端子36とを接続する第一内部配線60iと、PCU側接続端子36とPCU40とを接続する第一外部配線60oと、から構成される。同様に、第二配線62は、高容量型組電池20の入出力端子(図示せず)とPCU側接続端子36とを接続する第二内部配線62iと、PCU側接続端子36とPCU40とを接続する第二外部配線62oと、から構成される。ここで、第一内部配線60iおよび第二内部配線62iは、いずれも、対応する組電池10,20の入出力端子から引きだされ、対応するジャンクションボックス32,34を経由して、PCU側接続端子36まで延びる配線である。
【0064】
原則として、電池パック30の外側に延びる第一外部配線60oおよび第二外部配線62oの長さは、ほぼ同じとなる。一方、電池パック30の内部に設けられた第一内部配線60iおよび第二内部配線62iの長さは、二種類の組電池10,20の配置に応じて異なってくる。本実施形態では、
図10に示すように、高容量型組電池20を、高出力型組電池10に比べて、PCU側接続端子36に近い位置に設置し、第二内部配線62iを第一内部配線60iより短くしている。そして、これにより、第二配線62が第一配線60より短くなる。
【0065】
かかる構成とするのは、次の理由による。本実施形態では、既述した通り、高出力型組電池10は、HV走行時、および、高容量型組電池20のSOCが過度に低下した場合にのみ用いており、それ以外の場面では、高容量型組電池20を用いている。したがって、PCU40に授受される電力のうち、PCU40と高出力型組電池10との間で授受される電力の割合よりも、PCU40と高容量型組電池20との間で授受される電力の割合のほうが、大きい。かかる車両において、車両全体で生じる送電損失を低減するためには、PCU40と高出力型組電池10を結ぶ第一配線60の送電抵抗を低減するよりも、PCU40と高容量型組電池20を結ぶ第二配線62の送電抵抗を低減するほうが効果的となる。送電抵抗を減らすためには、配線の断面積を増加、あるいは、配線の距離を短くすることが有効となる。ただし、断面積の増加は、コストアップや配線の取り回し性の悪化を招くため、容易に採用できない。そこで、本実施形態では、コストアップすることなく、第二配線62の送電抵抗を減らすために、第二配線62を第一配線60より短くして、送電抵抗を低減している。これにより、コストをかけることなく、送電損失を低減できる。
【0066】
なお、本実施形態のように、車両の前方にPCU40、後方に充電インレット48を設け、さらに、高容量型組電池20を高出力型組電池10に比して車両前方に設置した場合、高容量型組電池20とPCU40との間の送電抵抗は低減できるが、高容量型組電池20と充電インレット48(ひいては外部電源)との間の送電抵抗は、低減できない。しかし、一般に、高容量型組電池20とPCU40との間で授受される電力は、高容量型組電池20と充電インレット48との間で授受される電力よりも大きい。そのため、高容量型組電池20と充電インレット48との間の送電抵抗が多少増加しても(すなわち充電配線64が多少長くなっても)、高容量型組電池20とPCU40との間の送電抵抗を低減(すなわち第二配線62を短く)したほうが、車両全体の送電損失は、低減できる。
【0067】
なお、高容量型組電池20とPCU40との間の送電損失だけでなく、高容量型組電池20と充電インレット48との間の送電損失も低減するために、
図11に示すように、充電インレット48を、PCU40と同じ側、すなわち、車両前方に設置し、さらに、充電側接続端子38を
図12に示すように、電池パック30の前端に設置するようにしてもよい。かかる構成とすることで、第二配線62だけでなく、充電配線64も短くすることができ、車両全体としての送電損失をより低減できる。
【0068】
以上、説明した通り、第二配線62を第一配線60より短くすることで、車両全体での送電に伴う損失を低減できる。なお、これまで説明した構成は一例であり、第二配線62を第一配線60より短くできるのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。
【0069】
例えば、本実施形態では、高出力型組電池10と高容量型組電池20を、一つにパック化しているが、二種類の組電池10,20は、パック化されていなくてもよい。例えば、二種類の組電池10,20を、それぞれ、別個の電池パックとして構成してもよい。この場合、高容量型組電池20とPCU40とを結ぶ第二配線62が、高出力型組電池10とPCU40とを結ぶ第一配線60より短くなるように、高容量型組電池20を有する電池パックは、高出力型組電池10を有する電池パックより、PCU40に近い位置に設置される。
【0070】
また、本実施形態では、PCU40を、車両の前方にあるエンジンルームに設置しているが、PCU40は、他の場所、例えば、車両の後方等に設置されてもよい。この場合、高容量型組電池20とPCU40とを結ぶ第二配線62が、高出力型組電池10とPCU40とを結ぶ第一配線60より短くなるように、高容量型組電池20は、高出力型組電池10よりも車両後方側に設置される。
【0071】
また、二種類の組電池10,20は、前後に並べるのではなく、上下や左右に並べてもよい。すなわち、PCU40が電池パック30より上方に位置しているなら、高容量型組電池20とPCU40とを結ぶ第二配線62が、高出力型組電池10とPCU40とを結ぶ第一配線60より短くなるように、高容量型組電池20を高出力型組電池10より上側に設置してもよい。また、PCU40が電池パック30より右側(または左側)に位置しているなら、第二配線62が第一配線60より短くなるように、高容量型組電池20を高出力型組電池10より右側(または左側)に設置する構成としてもよい。
【0072】
また、本実施形態は、エンジンを搭載し、かつ、外部充電が可能なプラグインハイブリッド車両を例に挙げて説明したが、本実施形態の技術は、二種類の組電池10,20を搭載する電動車両であれば、他の車両、例えば、エンジンを搭載しない電気自動車等に適用されてもよい。