特許第6235540号(P6235540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235540
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電力変換回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   H02M3/28 V
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-169312(P2015-169312)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-46533(P2017-46533A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 健一
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆英
(72)【発明者】
【氏名】長下 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】新見 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】岡村 賢樹
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0195557(US,A1)
【文献】 特開2011−193713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を備える、U相スイッチング回路、V相スイッチング回路、およびα相スイッチング回路と、
前記U相スイッチング回路と前記V相スイッチング回路との間に1次巻線が接続され、2次巻線の両端が前記α相スイッチング回路に接続されるトランスと、を備え、
前記α相スイッチング回路は、
直流電圧が入出力される直流端子対と、
それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備えるハーフブリッジであって、前記直流端子対をなす2つの端子の間に設けられたハーフブリッジと、
前記直流端子対をなす2つの端子の間に設けられ、前記直流端子対に現れる電圧を分圧する分圧回路と、を備え、
前記ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点は、前記2次巻線の一端に接続され、
前記分圧回路の分圧出力点は、前記2次巻線の他端に接続されており
前記U相スイッチング回路は、
それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備え、各スイッチング素子の他の端子において直流電圧が入出力されるU相ハーフブリッジを備え、
前記V相スイッチング回路は、
それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備え、各スイッチング素子の他の端子において直流電圧が入出力されるV相ハーフブリッジを備え、
前記1次巻線は、前記U相ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点と、前記V相ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点との間に接続され、
前記U相スイッチング回路において入出力される直流電圧に応じた電圧が、前記U相スイッチング回路から前記1次巻線に与えられ、
前記V相スイッチング回路において入出力される直流電圧に応じた電圧が、前記V相スイッチング回路から前記1次巻線に与えられる、
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換回路において、
前記U相スイッチング回路、および、前記V相スイッチング回路は、前記1次巻線に時間的に交互に電圧を与え、
前記ハーフブリッジは、前記U相スイッチング回路、および、前記V相スイッチング回路のそれぞれが前記1次巻線に電圧を与えるタイミングに応じたタイミングでスイッチング動作し、
前記分圧回路は、前記U相スイッチング回路が前記1次巻線に与える電圧と、前記V相スイッチング回路が前記1次巻線に与える電圧との比に応じた分圧比で、前記直流端子対に現れる電圧を分圧する、
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換回路において、
前記分圧回路は、それぞれの一端が前記分圧出力点で共通に接続された第1分圧キャパシタおよび第2分圧キャパシタを備え、
前記第1分圧キャパシタの他端は、前記直流端子対をなす2つの端子の一方に接続され、
前記第2分圧キャパシタの他端は、前記直流端子対をなす2つの端子の他方に接続されている、
ことを特徴とする電力変換回路。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電力変換回路において、
前記1次巻線のタップから引き出された経路において直流電圧が入出力されることを特徴とする電力変換回路。
【請求項5】
請求項に記載の電力変換回路において、
前記U相スイッチング回路および前記V相スイッチング回路は、電位基準導体を備え、
前記U相スイッチング回路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第1端子を備え、
前記V相スイッチング回路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第2端子を備え、
記1次巻線のタップから引き出された経路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第3端子を備え、
前記第3端子と前記電位基準導体との間の電圧は、前記第1端子と前記電位基準導体との間の電圧、および、前記第端子と前記電位基準導体との間の電圧に応じて定められる、
ことを特徴とする電力変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路に関し、特に、複数の端子のそれぞれにおいて直流電力が入力または出力される回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電池から供給される電力を用いて走行する車両が広く用いられている。このような電動車両にはエンジンおよびモータジェネレータの各駆動力によって走行するハイブリッド自動車や、モータジェネレータの駆動力によって走行する電気自動車がある。
【0003】
電動車両には、照明装置、空調装置、オーディオ装置等、複数のアクセサリ装置が搭載される。電動車両を駆動するための電池は、アクセサリ装置にも電力を供給する。そのため、電動車両には電池の出力電圧を降圧し、降圧後の電圧に基づく電力を各アクセサリ装置に供給する電力変換回路が搭載される。
【0004】
一般に、アクセサリ装置の電源電圧は、アクセサリ装置の機能や目的等に応じて異なる。電源電圧が異なる複数のアクセサリ装置のそれぞれに電力を供給するため、降圧比が異なる複数の電力変換回路を電動車両に搭載することも考えられる。しかし、複数の電力変換回路が必要となるため、電動車両に搭載される回路が大規模となってしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、以下の特許文献1に示されているように、複数の直流ポート間での電力変換を可能とした電力変換回路が考え出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−193713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動車両に搭載される電力変換回路では、電池とアクセサリ装置との間を電気的に絶縁するため、トランスが用いられる。この場合、トランスの1次巻線に接続される回路の動作と、トランスの2次巻線に接続される回路の動作によっては、電力伝送に寄与しない電流がトランスに流れ、電力損失が大きくなることがある。
【0008】
本発明は、電力変換回路における電力損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スイッチング素子を備える、U相スイッチング回路、V相スイッチング回路、およびα相スイッチング回路と、前記U相スイッチング回路と前記V相スイッチング回路との間に1次巻線が接続され、2次巻線の両端が前記α相スイッチング回路に接続されるトランスと、を備え、前記α相スイッチング回路は、直流電圧が入出力される直流端子対と、それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備えるハーフブリッジであって、前記直流端子対をなす2つの端子の間に設けられたハーフブリッジと、前記直流端子対をなす2つの端子の間に設けられ、前記直流端子対に現れる電圧を分圧する分圧回路と、を備え、前記ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点は、前記2次巻線の一端に接続され、前記分圧回路の分圧出力点は、前記2次巻線の他端に接続されており、前記U相スイッチング回路は、それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備え、各スイッチング素子の他の端子において直流電圧が入出力されるU相ハーフブリッジを備え、前記V相スイッチング回路は、それぞれの1つの端子が共通に接続された2つのスイッチング素子を備え、各スイッチング素子の他の端子において直流電圧が入出力されるV相ハーフブリッジを備え、前記1次巻線は、前記U相ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点と、前記V相ハーフブリッジにおける2つのスイッチング素子の共通接続点との間に接続され、前記U相スイッチング回路において入出力される直流電圧に応じた電圧が、前記U相スイッチング回路から前記1次巻線に与えられ、前記V相スイッチング回路において入出力される直流電圧に応じた電圧が、前記V相スイッチング回路から前記1次巻線に与えられる、ことを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記U相スイッチング回路、および、前記V相スイッチング回路は、前記1次巻線に時間的に交互に電圧を与え、前記ハーフブリッジは、前記U相スイッチング回路、および、前記V相スイッチング回路のそれぞれが前記1次巻線に電圧を与えるタイミングに応じたタイミングでスイッチング動作し、前記分圧回路は、前記U相スイッチング回路が前記1次巻線に与える電圧と、前記V相スイッチング回路が前記1次巻線に与える電圧との比に応じた分圧比で、前記直流端子対に現れる電圧を分圧する。
【0011】
望ましくは、前記分圧回路は、それぞれの一端が前記分圧出力点で共通に接続された第1分圧キャパシタおよび第2分圧キャパシタを備え、前記第1分圧キャパシタの他端は、前記直流端子対をなす2つの端子の一方に接続され、前記第2分圧キャパシタの他端は、前記直流端子対をなす2つの端子の他方に接続されている。
【0013】
望ましくは、前記1次巻線のタップから引き出された経路において直流電圧が入出力される。
【0014】
望ましくは、前記U相スイッチング回路および前記V相スイッチング回路は、電位基準導体を備え、前記U相スイッチング回路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第1端子を備え、前記V相スイッチング回路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第2端子を備え、前記1次巻線のタップから引き出された経路は、前記電位基準導体との間に直流電圧が入出力される第3端子を備え、前記第3端子と前記電位基準導体との間の電圧は、前記第1端子と前記電位基準導体との間の電圧、および、前記第端子と前記電位基準導体との間の電圧に応じて定められる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力変換回路における電力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電力変換回路を示す図である。
図2】電力変換回路を示す図である。
図3】各制御信号、1次電圧、2次電圧および1次巻線電流を示す図である。
図4】制御部の機能ブロックを示す図である。
図5】制御部の機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)電力変換回路の構成
図1に本発明の実施形態に係る電力変換回路が示されている。電力変換回路は電動車両に搭載され、複数の電気機器に電力を供給し、または複数の電気機器から電力の供給を受ける。電力変換回路は、電動車両の他、産業用または家庭用の電気機器に用いられてもよい。
【0018】
電力変換回路は、U相スイッチング回路10、V相スイッチング回路12、追加ポート回路42、トランス14、およびα相スイッチング回路16を備える。U相スイッチング回路10、V相スイッチング回路12および追加ポート回路42は、それぞれ、第1端子18、第2端子30および第3端子44を備える。各端子は電位基準端子20を電位の基準とする。電位基準端子20は、例えば、電動車両のボデーに接続される。各端子には、電源電圧が異なるアクセサリ装置等が負荷装置として接続されてもよい。また、電池やキャパシタ等の蓄電機器が接続されてもよい。α相スイッチング回路16は、直流端子の対としての正極端子58および負極端子60を備える。これらの端子には、負荷装置の他、蓄電機器や電圧コンバータ回路が接続されてもよい。電力変換回路は、第1〜第3端子の電圧、および正極端子58と負極端子60との間の電圧を調整する。
【0019】
U相スイッチング回路10は、上アームスイッチング素子24H、下アームスイッチング素子24L、第1キャパシタ22、各スイッチング素子に接続されたダイオード26、第1端子18、電位基準端子20および電位基準線28(電位基準導体)を備える。電位基準線28は、U相スイッチング回路10、V相スイッチング回路12および追加ポート回路42に共有されている。
【0020】
ここでは、各スイッチング素子が備える3つの端子のうち、図1における上側の端子を上端子a、下側の端子を下端子bとする。残りの1つの端子は、上端子aおよび下端子bの間を導通状態または開放状態、すなわち、オンまたはオフに制御するための制御端子gである。各スイッチング素子は、例えば、端子gにオン電圧が与えられることでオンになり、端子gにオン電圧より低いオフ電圧が与えられることでオフになる。
【0021】
上アームスイッチング素子24Hの下端子bと下アームスイッチング素子24Lの上端子aは共通に接続されている。上アームスイッチング素子24Hの上端子aは第1端子18に接続され、下アームスイッチング素子24Lの下端子bは電位基準線28に接続されている。各スイッチング素子の上端子aと下端子bとの間には、下端子bの側をアノードとしてダイオード26が接続されている。第1キャパシタ22は、第1端子18と電位基準線28との間に接続されている。電位基準線28の一端には電位基準端子20が設けられている。
【0022】
V相スイッチング回路12は、上アームスイッチング素子34H、下アームスイッチング素子34L、第2キャパシタ32、各スイッチング素子に接続されたダイオード36、第2端子30、および電位基準線28を備える。
【0023】
上アームスイッチング素子34Hの下端子bと下アームスイッチング素子34Lの上端子aは共通に接続されている。上アームスイッチング素子34Hの上端子aは第2端子30に接続され、下アームスイッチング素子34Lの下端子bは電位基準線28に接続されている。各スイッチング素子の上端子aと下端子bとの間には、下端子bの側をアノードとしてダイオード36が接続されている。第2キャパシタ32は、第2端子30と電位基準線28との間に接続されている。
【0024】
トランス14の1次巻線38は、U相スイッチング回路10における上アームスイッチング素子24Hおよび下アームスイッチング素子24Lの共通接続点と、V相スイッチング回路12における上アームスイッチング素子34Hおよび下アームスイッチング素子34Lの共通接続点との間に接続されている。
【0025】
追加ポート回路42は、1次巻線38のタップから引き出された経路において直流電圧を入出力する。追加ポート回路42は、インダクタ48、第3キャパシタ46、第3端子44を備える。インダクタ48の一端はトランス14の1次巻線38のタップに接続され、他端は第3端子44に接続されている。第3キャパシタ46は、第3端子44と電位基準線28との間に接続されている。本実施形態においては、タップは、1次巻線38の端子間電圧が二等分される位置に設けられたセンタータップである。
【0026】
α相スイッチング回路16は、上アームスイッチング素子50H、下アームスイッチング素子50L、第1分圧キャパシタ54、第2分圧キャパシタ56、各スイッチング素子に接続されたダイオード52、正極端子58および負極端子60を備える。上アームスイッチング素子50Hの下端子bと下アームスイッチング素子50Lの上端子aは共通に接続されている。上アームスイッチング素子50Hの上端子aは正極端子58に接続され、下アームスイッチング素子50Lの下端子bは負極端子60に接続されている。各スイッチング素子の上端子aと下端子bとの間には、下端子bの側をアノードとしてダイオード52が接続されている。
【0027】
第1分圧キャパシタ54の一端および第2分圧キャパシタ56の一端は共通に接続されている。第1分圧キャパシタ54の他端は正極端子58に接続され、第2分圧キャパシタ56の他端は負極端子60に接続されている。トランス14の2次巻線40は、上アームスイッチング素子50Hおよび下アームスイッチング素子50Lの共通接続点と、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の共通接続点(分圧出力点)との間に接続されている。第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56は分圧回路を構成し、正極端子58と負極端子60との間の電圧が分圧された電圧が、分圧出力点から2次巻線40の一端に与えられる。
【0028】
上アームスイッチング素子50Hと下アームスイッチング素子50Lの組では、これら2つのスイッチング素子がそれぞれの一端で共通に接続され、それぞれの他端の間に直流電圧が印加(入力)され、または、それぞれの他端の間から直流電圧が出力される。そして、2つのスイッチング素子が交互にオンオフすることで、共通接続点に接続された経路にスイッチングに応じた電流が流れる。上アームスイッチング素子24Hと下アームスイッチング素子24Lの組、および上アームスイッチング素子34Hと下アームスイッチング素子34Lの組についても同様の動作が実行される。一般に、このような2つのスイッチング素子の組はハーフブリッジと称される。
【0029】
各スイッチング素子には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられる。各スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、ドレイン端子が上端子aに対応し、ソース端子が下端子bに対応し、ゲート端子が制御端子gに対応する。制御端子gとしてのゲート端子に印加される電圧に従って、ドレイン端子およびソース端子との間がオンまたはオフに制御される。各スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、コレクタ端子が上端子aに対応し、エミッタ端子が下端子bに対応し、ゲート端子が制御端子gに対応する。制御端子gとしてのゲート端子に印加される電圧に従って、コレクタ端子およびエミッタ端子との間がオンまたはオフに制御される。
【0030】
U相スイッチング回路10の第1端子18、V相スイッチング回路12の第2端子30、および、追加ポート回路42の第3端子44のそれぞれに車両搭載用のアクセサリ装置が接続される場合、U相スイッチング回路10およびV相スイッチング回路12が備えるスイッチング素子には、MOSFETが用いられてもよい。α相スイッチング回路16の正極端子58および負極端子60に電動車両の二次電池が接続される等、正極端子58と負極端子60との間に高電圧が印加される場合、α相スイッチング回路16が備える各スイッチング素子にはIGBTが用いられてもよい。
【0031】
図2には、U相スイッチング回路10およびV相スイッチング回路12が備える各スイッチング素子にMOSFETが用いられ、α相スイッチング回路16が備える各スイッチング素子にIGBTが用いられた場合の回路が示されている。すなわち、図1におけるスイッチング素子24H、24L、34Hおよび34Lとして、図2では、MOSFET62H、62L、64Hおよび64Lがそれぞれ用いられ、図1におけるスイッチング素子50Hおよび50Lとして、図2ではIGBT66HおよびIGBT66Lがそれぞれ用いられている。
【0032】
(2)電力変換回路の動作の概要
電力変換回路の動作について図1を参照して説明する。制御部68は、U相スイッチング回路10が備える上アームスイッチング素子24Hおよび下アームスイッチング素子24Lに、それぞれ、制御信号S1およびS2を出力し、各スイッチング素子をオンまたはオフに制御する。また、制御部68は、V相スイッチング回路12が備える上アームスイッチング素子34Hおよび下アームスイッチング素子34Lに、それぞれ、制御信号S3およびS4を出力し、各スイッチング素子をオンまたはオフに制御する。さらに、制御部68は、α相スイッチング回路16が備える上アームスイッチング素子50Hおよび下アームスイッチング素子50Lに、それぞれ、制御信号S5およびS6を出力し、各スイッチング素子をオンまたはオフに制御する。
【0033】
制御部68は、U相スイッチング回路10が備える上アームスイッチング素子24Hおよび下アームスイッチング素子24Lを交互にオンオフする。下アームスイッチング素子24Lがオンからオフに切り替わることで、トランス14の各巻線における電磁気的状態およびインダクタ48に流れる電流が変化して1次巻線38およびインダクタ48に誘導起電力が発生する。第1キャパシタ22は、その誘導起電力および第3キャパシタ46の充電電圧に基づく電圧によって、インダクタ48、1次巻線38およびダイオード26を介して充電される。第1端子18と電位基準端子20との間からは、第1キャパシタ22の充電電圧に応じた第1電圧V1が出力される。
【0034】
あるいは、下アームスイッチング素子24Lがオンからオフに切り替わると共に、上アームスイッチング素子24Hがオフからオンに切り替わることで、第1キャパシタ22の充電電圧および誘導起電力に基づく電圧によって第3キャパシタ46が充電される。充電経路は、上アームスイッチング素子24H、1次巻線38およびインダクタ48である。第3端子44と電位基準端子20との間からは、第3キャパシタ46の充電電圧に応じた第3電圧V3が出力される。
【0035】
ただし、1次巻線38およびインダクタ48に発生する誘導起電力は、必ずしもU相スイッチング回路10の動作のみでは定まらない。この誘導起電力は、U相スイッチング回路10、V相スイッチング回路12およびα相スイッチング回路16のそれぞれの動作に基づくトランス14を介した相互作用によって定まる。
【0036】
制御部68は、V相スイッチング回路12が備える上アームスイッチング素子34Hおよび下アームスイッチング素子34Lを交互にオンオフする。U相スイッチング回路10と同様の動作原理によって、1次巻線38に発生した誘導起電力、インダクタ48に発生した誘導起電力、および第3キャパシタ46の充電電圧に基づく電圧が第2キャパシタ32に印加される。第2キャパシタ32はその電圧に基づき充電され、第2端子30と電位基準端子20との間から第2電圧V2が出力される。あるいは、第2キャパシタ32の充電電圧および誘導起電力に基づく電圧によって、第3キャパシタ46が充電され、第3端子44と電位基準端子20との間から第3電圧V3が出力される。
【0037】
インダクタ48は、第1端子18と第3端子44との間の昇降圧、または、第2端子30と第3端子44との間の昇降圧のための誘導起電力を発生する他、1次巻線38に流れる電流に含まれるリプル成分を低減する。トランス14における漏れ磁束に起因する漏れインダクタンスが1次巻線38に含まれる場合には、インダクタ48を用いずに、第3端子44と1次巻線38のタップとを直接接続してもよい。
【0038】
制御部68は、α相スイッチング回路16が備える上アームスイッチング素子50Hおよび下アームスイッチング素子50Lを交互にオンオフする。上アームスイッチング素子50Hがオンであり、下アームスイッチング素子50Lがオフであるときは、2次巻線40に発生した誘導起電力によって第1分圧キャパシタ54が充電され、あるいは、第1分圧キャパシタ54の充電電圧に応じた電力が2次巻線40に供給される。上アームスイッチング素子50Hがオフであり、下アームスイッチング素子50Lがオンであるときは、2次巻線40に発生した誘導起電力によって第2分圧キャパシタ56が充電され、あるいは、第2分圧キャパシタ56の充電電圧に応じた電力が2次巻線40に供給される。第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の充電電圧に基づき、正極端子58と負極端子60との間から第4電圧V4が出力される。あるいは、正極端子58と負極端子60との間に印加された第4電圧V4に応じて、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56が充電される。
【0039】
(3)各制御信号および各電圧のタイミングチャート
図3(a)、(b)および(c)には、それぞれ、制御信号S2、S4およびS6のタイミングチャートが示されている。横軸は時間を示し縦軸は信号レベルを示す。信号レベルは、例えば、電圧値である。上述のように、制御信号S2、S4およびS6は、それぞれ、下アームスイッチング素子24L、下アームスイッチング素子34L、および、下アームスイッチング素子50Lに与えられる。各スイッチング素子は、制御信号のレベルがハイレベルHのときにオンとなり、制御信号のレベルがローレベルLのときにオフとなる。
【0040】
図3には示されていないが、上アームスイッチング素子24Hに与えられる制御信号S1、上アームスイッチング素子34Hに与えられる制御信号S3、および、上アームスイッチング素子50Hに与えられる制御信号S5は、それぞれ、制御信号S2、S4およびS6のレベルのハイ、ローを反転したものとなる。
【0041】
制御信号S2、S4およびS6の周期は同一の時間長Tである。トランス14の1次巻線38および2次巻線40に印加される電圧が0となる期間を排除したシームレス制御を行うため、制御信号S2のハイレベルHおよびローレベルLを反転したものが制御信号S4とされる。そのため、制御信号S2のデューティ比をDuとすると、制御信号S4のデューティ比DvはDv=1−Duとなる。制御信号S6のデューティ比Dαは、制御信号S2のデューティ比Duと同一であり(Dα=Du)、制御信号S6は、制御信号S2に対して位相差φだけ位相が進んでいる。位相差φは、制御信号S6が制御信号S2に対して進相である場合に正の値となる。
【0042】
このように、制御信号S2は、1周期のうち時間Du・Tの間だけハイレベルHとなり、時間(1−Du)・Tの間だけローレベルLとなり、ハイレベルHおよびローレベルLを交互に繰り返す。制御信号S4は、1周期のうち時間Dv・T=(1−Du)・Tの間だけハイレベルHとなり、時間(1―Dv)・T=Du・Tの間だけローレベルLとなり、ハイレベルHおよびローレベルLを交互に繰り返す。制御信号S6は、1周期のうち時間Dα・T=Du・Tの間だけハイレベルHとなり、時間(1−Dα)・T=(1−Du)・Tの間だけローレベルLとなり、ハイレベルHおよびローレベルLを交互に繰り返す。
【0043】
図3(d)には、1次巻線38の端子間電圧Vp(以下、1次電圧Vpとする。)が示されている。ただし、回路図の下側の一端に対して上側の一端の電位が高い場合を正電圧としている。制御信号S2がローレベルLとなり、制御信号S4がハイレベルHとなるタイミングでは、1次電圧Vpは第1電圧V1となる。
【0044】
すなわち、上アームスイッチング素子24Hおよび下アームスイッチング素子34Lがオンとなり、下アームスイッチング素子24Lおよび上アームスイッチング素子34Hがオフとなることによって、1次巻線38の上端は第1端子18に接続され、下端は電位基準端子20に接続され、1次電圧Vpは第1電圧V1となる。
【0045】
制御信号S2がハイレベルHとなり、制御信号S4がローレベルLとなるタイミングでは、1次電圧Vpは負極性の第2電圧−V2となる。すなわち、上アームスイッチング素子24Hおよび下アームスイッチング素子34Lがオフとなり、下アームスイッチング素子24Lおよび上アームスイッチング素子34Hがオンとなることによって、1次巻線38の上端は電位基準端子20に接続され、下端は第2端子30に接続され、1次電圧Vpは負極性の第2電圧−V2となる。
【0046】
図3(e)には、2次巻線40の端子間電圧Vs(以下、2次電圧Vsとする。)が示されている。ただし、回路図の下側の一端に対して上側の一端の電位が高い場合を正電圧としている。制御信号S6がローレベルLとなるタイミングでは、2次電圧Vsは、Vs=C2・V4/(C1+C1)となり、制御信号S6がハイレベルHとなるタイミングでは、2次電圧Vsは、Vs=−C1・V4/(C1+C1)となる。ただし、C1およびC2は、それぞれ、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56のキャパシタンスである。
【0047】
すなわち、制御信号S6がローレベルLとなるタイミングでは、上アームスイッチング素子50Hがオンとなり、下アームスイッチング素子50Lがオフとなる。これによって、2次巻線40の上端および下端は、それぞれ、第1分圧キャパシタ54の上端および下端に接続され、2次電圧Vsは第1分圧キャパシタ54の端子間電圧VC1となる。
【0048】
負極端子60を基準とした正極端子58の電圧である第4電圧V4によって、第1分圧キャパシタ54の端子間電圧VC1は、VC1=C2・V4/(C1+C1)で表される。したがって、制御信号S6がローレベルLとなるタイミングでは、2次電圧Vsは、Vs=VC1=C2・V4/(C1+C1)となる。
【0049】
制御信号S6がハイレベルHとなるタイミングでは、上アームスイッチング素子50Hがオフとなり、下アームスイッチング素子50Lがオンとなる。これによって、2次巻線40の上端および下端は、それぞれ、第2分圧キャパシタ56の下端および上端に接続され、2次電圧Vsは第2分圧キャパシタ56の負極性の端子間電圧−VC2となる。
【0050】
第2分圧キャパシタ56の端子間電圧VC2は、VC2=C1・V4/(C1+C1)で表される。したがって、制御信号S6がハイレベルHとなるタイミングでは、2次電圧Vsは、Vs=−VC2=−C1・V4/(C1+C1)となる。
【0051】
図3(f)には、1次巻線38に流れる電流iuが示されている。電流iuは、1次巻線38の上端に流入する方向を正とする。2次電圧Vsが立ち上がった後、1次電圧Vpが立ち上がるまでの時間τ1の間、1次電圧Vpと2次電圧Vsとの差異に応じて、各巻線に流れる電流が変化する。これによって、時間τ1の間、1次巻線電流iuは負値から正値へと急激に変化する。
【0052】
1次電圧Vpが立ち上がった後、2次電圧Vsが立ち下がるまでの時間τ2の間は、1次電圧Vpと2次電圧Vsとの差異が比較的小さくなり、各巻線に流れる電流の変化は小さくなる。これによって、時間τ2の間、1次巻線電流iuは時間τ1の間に比べて緩やかに変化する。
【0053】
2次電圧Vsが立ち下がった後、1次電圧Vpが立ち下がるまでの時間τ3の間、1次電圧Vpと2次電圧Vsとの差異に応じて、各巻線に流れる電流が変化する。これによって、時間τ3の間、1次巻線電流iuは正値から負値へと急激に変化する。
【0054】
1次電圧Vpが立ち下がった後、2次電圧Vsが立ち上がるまでの時間τ4の間は、1次電圧Vpと2次電圧Vsとの差異が比較的小さくなり、各巻線に流れる電流の変化は小さくなる。これによって、時間τ4の間、1次巻線電流iuは時間τ3の間に比べて緩やかに変化する。以降、時間τ1〜時間τ4における変化と同様の変化が繰り返される。
【0055】
制御信号S2がローレベルLであり、制御信号S4がハイレベルHである間、1次電圧Vpと1次巻線電流iuとの積で定まる電力が、1次巻線38とU相スイッチング回路10との間で授受される。一方、制御信号S2がハイレベルHであり、制御信号S4がローレベルLである間、1次電圧Vpと1次巻線電流iuとの積で定まる電力が、1次巻線38とV相スイッチング回路12との間で授受される。
【0056】
U相スイッチング回路10およびV相スイッチング回路12は、1次巻線38との間で授受された電力に応じて、それぞれに接続された負荷装置または蓄電機器との間で電力を授受する。これらの電力は、位相差φの大きさによって定まる。すなわち、位相差φの大きさに応じて、時間τ1およびτ3における1次巻線電流iuの変化量が変化する。この変化量に応じて1次巻線電流iuの波高値が定まり、1次巻線38とU相スイッチング回路10との間で授受される電力、および、1次巻線38とV相スイッチング回路12との間で授受される電力が定まる。
【0057】
制御信号S6がローレベルLである間、2次電圧Vsと2次巻線40に流れる電流との積で定まる電力が、2次巻線40と第1分圧キャパシタ54との間で授受される。制御信号S6がハイレベルHである間、2次電圧Vsと2次巻線40に流れる電流との積で定まる電力が、2次巻線40と第2分圧キャパシタ56との間で授受される。α相スイッチング回路16は、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の充電状態に応じて、自らに接続された負荷装置または蓄電機器との間で電力を授受する。
【0058】
本実施形態に係る電力変換回路では、U相スイッチング回路10における下アームスイッチング素子24Lに対するデューティ比Duと、V相スイッチング回路12における下アームスイッチング素子34Lに対するデューティ比Dvとの間にDv=1−Duの関係がある。すなわち、U相スイッチング回路10におけるハーフブリッジと、V相スイッチング回路12におけるハーフブリッジは、オンオフの状態が逆の関係にある。これによって、図3(d)に示されているように、1次電圧Vpには電圧が0となる期間がない。
【0059】
また、α相スイッチング回路16の動作によって2次巻線40は、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56に交互に接続される。これによって、図3(e)に示されているように、2次電圧Vsには電圧が0となる期間がない。
【0060】
このようなシームレス制御が実行されることで、トランス14の1次巻線側および2次巻線側で電力伝送が行われていない期間が低減され、一定時間当たりに伝送される電力が大きくなる。
【0061】
(4)各分圧キャパシタのキャパシタンス値の決定
第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の各キャパシタンスは、次のように定められる。すなわち、各キャパシタンスは、1次電圧Vpの正の波高値のn倍と、2次電圧Vsの正の波高値が同一となり、1次電圧Vpの負の波高値のn倍と、2次電圧Vsの負の波高値とが同一となるように決定される。ただし、nは1次巻線38の巻数に対する2次巻線40の巻数の比である。
【0062】
1次電圧Vpの正の波高値はV1であり、2次電圧Vsの正の波高値はC2・V4/(C1+C1)である。したがって、各分圧キャパシタンスを決定する第1の条件は次の(数1)で表される。
【0063】
(数1)n・V1=C2・V4/(C1+C2)
【0064】
一方、1次電圧Vpの負の波高値はV2であり、2次電圧Vsの負の波高値はC1・V4/(C1+C1)である。したがって、各分圧キャパシタンスを決定する第2の条件は次の(数2)で表される。
【0065】
(数2)n・V2=C1・V4/(C1+C2)
【0066】
第1電圧V1および第2電圧V2が設計仕様によって予め定められている場合、C2/C1=V1/V2が成立するように第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の各キャパシタンスが定められる。
【0067】
これによって、1次電圧Vpおよび2次電圧Vsが同一極性となる期間(図3の期間Q1およびQ2)において、1次電圧Vpのn倍と2次電圧Vsとが同一となる。そのため、各巻線に流れる電流が低減され、トランス14で発生する損失が低減される。
【0068】
より具体的には、図3(d)を参照して説明したように、U相スイッチング回路10、およびV相スイッチング回路12は、1次巻線38の端子間に時間的に交互に第1電圧V1および負極性の第2電圧−V2を与える。また、図3(e)を参照して説明したように、α相スイッチング回路16が備えるハーフブリッジのスイッチング動作によって、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56は交互に2次巻線40に接続され、第1分圧キャパシタ54の端子間電圧、および第2分圧キャパシタ56の端子間電圧が交互に2次巻線40に印加される。そして、上述のように各キャパシタンスの値が定められることで、第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56は、第1電圧V1と第2電圧V2との比に応じた分圧比で、正極端子58と負極端子60との間に現れる電圧を分圧する。これによって、1次電圧Vpおよび2次電圧Vsが同一極性となる期間において、1次電圧Vpのn倍と2次電圧Vsとが同一となり、トランス14で発生する損失が低減される。
【0069】
(5)第1電圧V1〜第4電圧V4の相互の関係
次に、第1電圧V1〜第4電圧V4の相互の関係について図1を参照して説明する。ここでは、各電圧が一定値に収束した状態について説明する。この状態では図3に示されている位相差φは0である。各端子における電圧の制御は、後述のように、スイッチング状態を変更すること行われる。
【0070】
追加ポート回路42における第3電圧V3と、U相スイッチング回路10における第1電圧V1との関係は、デューティ比Duによって次の(数3)のように表される。
【0071】
(数3)V3=(1−Du)・V1
【0072】
同様に、追加ポート回路42における第3電圧V3と、V相スイッチング回路12における第2電圧V2との関係は、デューティ比Dvによって次の(数4)のように表される。
【0073】
(数4)V3=(1−Dv)・V2
【0074】
Dv=1−Duが成立するシームレス制御が実行される場合、
【0075】
(数5)V3=Du・V2
【0076】
が成立する。(数3)および(数5)からDuを消去すると、第1電圧V1および第2電圧Vを用いて、第3電圧V3が次の(数6)のように表される。
【0077】
(数6)V3=V1・V2/(V1+V2)
【0078】
さらに、(数1)および(数2)を用いて、次の(数7)のように、第4電圧V4、第1電圧V1および第2電圧V2の関係が表される。
【0079】
(数7)V4=n・(V1+V2)
【0080】
(6)各端子の電圧値の設計
第1電圧V1〜第4電圧V4のうちいずれか3つが設計仕様によって定められると、残りの1つの電圧および巻線比nが(数6)および(数7)に基づいて定まる。例えば、正極端子58と負極端子60との間に、電動車両の二次電池が接続され、V4=200Vであるものとする。第1端子18と電位基準端子20との間には、V1=14Vで動作するアクセサリ装置が接続され、第2端子30と電位基準端子20との間には、V2=11Vで動作するアクセサリ装置が接続されるものとする。この場合、(数6)に基づいて、第3電圧V3がV3=6.16Vとして求められる。第3端子44と電位基準端子20との間には、V3=6.16Vで動作するアクセサリ装置またはV3=6.16Vの電圧を出力する蓄電機器が接続可能となる。さらに、(数7)に基づいて、トランス14の巻線比nとしてn=8が決定される。
【0081】
また、巻線比nが予め定められている場合には、第1電圧V1〜第4電圧V4のうちいずれか2つが設計仕様によって定められると、残りの2つの電圧が(数6)および(数7)に基づいて定まる。
【0082】
例えば、正極端子58と負極端子60との間に、電動車両の二次電池が接続され、V4=200Vであるものとする。第1端子18と電位基準端子20との間には、V1=14Vで動作するアクセサリ装置が接続され、トランス14の巻線比nは8であるものとする。この場合、(数7)に基づいて第2電圧V2が11Vとして求められる。第2端子30と電位基準端子20との間には、V2=11Vで動作するアクセサリ装置またはV2=11Vの電圧を出力する蓄電機器が接続可能となる。さらに、(数6)に基づいて、第3電圧V3がV3=6.16Vとして求められる。第3端子44と電位基準端子20との間には、V3=6.16Vで動作するアクセサリ装置またはV3=6.16Vの電圧を出力する蓄電機器が接続可能となる。
【0083】
(7)トランスの構造
図3(d)および(e)に示されているように、1次電圧Vpおよび2次電圧Vsは、直流成分を有する。そのため、トランス14の1次巻線38および2次巻線40を貫くコアを通る磁束にはバイアス成分が含まれる。このバイアス成分による磁気飽和を生じ難くするため、コアによって形成される磁路にギャップが設けられてもよい。
【0084】
(8)電力変換回路の制御
図4には、制御部68の機能ブロック図が示されている。制御部68は、U相スイッチング回路のスイッチングを行うU相スイッチング部76、V相スイッチング回路のスイッチングを行うV相スイッチング部92、および、α相スイッチング回路のスイッチングを行うα相スイッチング部78を備える。
【0085】
制御部68では、第3電圧V3についてのフィードバック制御と、デューティ比Duについてのフィードフォワード制御によって、デューティ比Duについての指令値であるデューティ比指令値Duが求められる。U相スイッチング部76は、デューティ比指令値Duに基づいて制御信号S1およびS2を出力する。
【0086】
また、制御部68では、第1電圧V1および第2電圧V2についてのフィードバック制御によって位相差φが求められる。α相スイッチング部78は、デューティ比指令値Duおよび位相差φに基づいて、制御信号S1およびS2に対して位相差φだけ位相が進んだ制御信号S5およびS6を出力する。
【0087】
さらに、制御部68では、第2電圧V2についてのフィードバック制御と、デューティ比Dvについてのフィードフォワード制御に基づいて、デューティ比Dvについての指令値であるデューティ比指令値Dvが求められる。V相スイッチング部92は、デューティ比指令値Dvに基づいて、制御信号S3およびS4を出力する。
【0088】
フィードバック制御およびフィードフォワード制御について具体的に説明する。加算器70には、第3電圧指令値V3と、極性が反転された第3電圧V3の測定値が入力される。加算器70は、指令値V3から測定値V3を減算した誤差e3を求め、比例積分器72に出力する。比例積分器72は、誤差e3を積分して適切な定数を掛け合わせて比例積分誤差d3を求め、加算器74に出力する。加算器74には、フィードフォワード・デューティ比FF_Duが入力されている。FF_Duは、(数3)に基づいて、次の(数8)によって求められる。
【0089】
(数8)FF_Du=1−V3/V1
【0090】
加算器74は、比例積分誤差d3およびFF_Duを加算してデューティ比指令値Duを求め、U相スイッチング部76およびα相スイッチング部78に出力する。
【0091】
加算器86には、第2電圧指令値V2と、極性が反転された第2電圧V2の測定値が入力される。加算器86は、指令値V2から測定値V2を減算した誤差e2を求め、比例積分器88に出力する。比例積分器88は、誤差e2を積分して適切な定数を掛け合わせて比例積分誤差d2を求め、加算器90に出力する。加算器90には、フィードフォワード・デューティ比FF_Dvが入力されている。FF_Dvは、(数4)に基づいて、次の(数9)によって求められる。
【0092】
(数9)FF_Dv=1−V3/V2
【0093】
加算器90は、比例積分誤差d2およびFF_Dvを加算してデューティ比指令値Dvを求め、V相スイッチング部92に出力する。
【0094】
加算器80には、第1電圧指令値V1と、極性が反転された第1電圧V1の測定値が入力される。加算器80は、指令値V1から測定値V1を減算した誤差e1を求め、加算器82に出力する。加算器82には、指令値V2から測定値V2を減算した誤差e2が入力されている。加算器82は、誤差e1および誤差e2を加算した誤差e12を比例積分器84に出力する。比例積分器84は、誤差e12を積分して適切な定数を掛け合わせて位相差φを求め、α相スイッチング部78に出力する。
【0095】
このような構成によれば、第3電圧指令値V3と第3電圧V3の測定値との差異に基づくフィードバック制御に基づいて、U相スイッチング回路に対する制御信号S1およびS2が生成されると共に、第2電圧指令値V2と第2電圧V2の測定値との差異に基づくフィードバック制御に基づいて、V相スイッチング回路に対する制御信号S3およびS4が生成される。さらに、制御信号S1およびS2の生成に際しては、デューティ比Duについてのフィードフォワード制御が実行され、制御信号S3およびS4の生成に際しては、デューティ比Dvについてのフィードフォワード制御が実行される。
【0096】
これによって、第2電圧V2および第3電圧V3が指令値に迅速に近付けられ、あるいは、指令値に迅速に合わせられる。すなわち、第2電圧V2および第3電圧V3の各指令値からの差異が迅速に補償される。第1電圧V1は、第2電圧V2および第3電圧から一意に定まるため、第2電圧V2および第3電圧V3に対する制御と共に、第1電圧V1に対する制御も実行される。
【0097】
また、このような構成によれば、第1電圧指令値V1と第1電圧V1の測定値との差異、および、第2電圧指令値V2と第2電圧V2の測定値との差異に基づくフィードバック制御に基づいて位相差φが求められる。これによって、第1電圧V1および第2電圧V2の各指令値からの差異が、α相スイッチング部78のスイッチングタイミングの調整によって補償される。
【0098】
なお、α相スイッチング部78が位相差φについての制御を実行する代わりに、U相スイッチング部76およびV相スイッチング部92が、位相差φについての制御を実行してもよい。この場合、U相スイッチング部76は、制御信号S1およびS2を、それぞれ、制御信号S5およびS6に対して位相差φだけ遅らせた信号とする。V相スイッチング部92は、制御信号S3およびS4を、それぞれ、制御信号S1およびS2のハイレベル、ローレベルを反転させた信号とする。
【0099】
また、上記では、第1電圧V1〜第4電圧V4の電圧値が一定値に収束している場合に、制御信号S1およびS2が、それぞれ、制御信号S5およびS6と同相となり、α相スイッチング回路16のハーフブリッジと、U相スイッチング回路10のハーフブリッジとが同相で動作する場合について説明した。このような動作の他、第1電圧V1〜第4電圧V4の電圧値が一定値に収束している場合に、α相スイッチング回路16のハーフブリッジと、V相スイッチング回路12のハーフブリッジとが同相で動作するような動作が実行されてもよい。制御信号S3およびS4は、それぞれ、制御信号S5およびS6と同相となり、制御信号S1およびS2は、それぞれ、制御信号S3およびS4に対してハイレベル、ローレベルが反転した信号となる。第1分圧キャパシタ54および第2分圧キャパシタ56の各キャパシタンスは、C1/C2=V1/V2が成立するように定められる。
【0100】
この場合における制御部68の機能ブロックが図5に示されている。この図に示されている機能ブロックでは、図4に対し、U相とV相の機能が入れ換えられている。すなわち、第1電圧指令値V1および第1電圧V1の測定値と、第2電圧指令値V2および第2電圧V2の測定値とがそれぞれ入れ換えられ、デューティ比Duおよびデューティ比指令値Duと、デューティ比Dvおよびデューティ比指令値Dvとがそれぞれ入れ換えられている。また、U相スイッチング部76とV相スイッチング部92とが入れ換えられている。
【0101】
また、上記では、Dv=1−Duが成立するシームレス制御について説明した。一定時間内に伝送される電力が問題とならない場合には、Dvが1−Duよりも小さい値に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10 U相スイッチング回路、12 V相スイッチング回路、14 トランス、16 α相スイッチング回路、18 第1端子、20 電位基準端子、22 第1キャパシタ、24H,34H,50H 上アームスイッチング素子、24L,34L,50L 下アームスイッチング素子、26,36,52 ダイオード、28 電位基準線、30 第2端子、32 第2キャパシタ、38 1次巻線、40 2次巻線、42 追加ポート回路、44 第3端子、46 第3キャパシタ、48 インダクタ、54 第1分圧キャパシタ、56 第2分圧キャパシタ、58 正極端子、60 負極端子、62H,62L,64H,64L MOSFET、66H,66L IGBT、68 制御部、70,74,80,82,86,90 加算器、72,84,88 比例積分器、76 U相スイッチング部、78 α相スイッチング部、92 V相スイッチング部。
図1
図2
図3
図4
図5