(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235541
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/20 20060101AFI20171113BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B29C45/20
B29C45/76
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-175176(P2015-175176)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47667(P2017-47667A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長野 泰昌
(72)【発明者】
【氏名】白石 亘
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−027248(JP,A)
【文献】
特開2000−351133(JP,A)
【文献】
特開2013−056516(JP,A)
【文献】
特開2002−336951(JP,A)
【文献】
特開平06−328527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と、該金型に当接可能なノズルと、該ノズルを前記金型に当接させる弾性部材と、を備え、前記弾性部材を変形させることで前記ノズルにノズルタッチ力を発生させる射出ユニットを有する射出成形システムにおいて、
前記弾性部材を撮影する弾性部材撮影手段と、
該弾性部材撮影手段で撮影した前記弾性部材の画像データから前記弾性部材の変形量を算出する変形量算出手段と、
事前に求めた前記弾性部材の変形量とノズルタッチ力との相関関係に基づいて、前記変形量算出手段で算出された変形量データをノズルタッチ力に換算するノズルタッチ力換算手段と、
を備えることを特徴とした射出成形システム。
【請求項2】
所定のノズルタッチ力を設定して制御することが可能なノズルタッチ力制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記弾性部材撮影手段の撮影位置を移動させる弾性部材撮影位置移動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記射出ユニットを撮影する射出ユニット撮影手段と、
前記射出ユニット撮影手段で撮影した前記射出ユニットの画像データに基づいて、前記射出ユニットの位置を算出する射出ユニット位置算出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形システム。
【請求項5】
正常なノズルタッチにおいて前記射出ユニット位置算出手段が算出した前記射出ユニットの位置を射出ユニット基準位置として記憶する射出ユニット基準位置記憶手段と、
前記変形量算出手段が所定量の前記弾性部材の変形を算出した際に、前記射出ユニット位置算出手段が算出した前記射出ユニットの位置と前記射出ユニット基準位置の差が所定量を超えた場合には警告を発することを特徴とする請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記射出ユニット撮影手段の撮影位置を移動させる射出ユニット撮影位置移動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記射出ユニット撮影手段の位置が、前記射出ユニット撮影位置移動手段の位置座標に基づいて算出されることを特徴とした請求項6に記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記射出ユニット撮影手段が、前記弾性部材撮影手段を兼ねていることを特徴とした請求項4〜7のいずれかに記載の射出成形システム。
【請求項9】
前記ノズルタッチ力換算手段で換算されたノズルタッチ力と、前記射出ユニット位置算出手段で算出された射出ユニット位置と、前記射出ユニット基準位置とを表示することが可能な表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の射出成形システム。
【請求項10】
前記射出ユニット撮影位置移動手段がロボットであることを特徴とした請求項6又は7に記載の射出成形システム。
【請求項11】
前記射出ユニット撮影手段が、成形品を取り出すための成形品取出手段の近傍に配置されていることを特徴とした請求項4〜10のいずれかに記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形システムに関し、特に射出成形機においてモータなどの動力装置によって射出ユニットを前進させ、所定のノズルタッチ力を発生させる射出成形システムに関する。
【0002】
射出成形機は型締部と射出部を備え、樹脂の排出時以外の通常の射出成形動作では、射出部のノズルは固定側金型に当接し、金型に対しての所定のノズルタッチ力が発生した状態が維持される。しかしながら、ノズルを金型にタッチさせたまま連続成形運転を行うとノズル先端部の熱が金型に奪われるため、これを防ぐために計量工程終了後にノズルを金型から離すスプルブレイクと呼ばれる動作が行われる。スプルブレイクには、ノズルの後退によってスプルをノズルと金型の間で切断し、金型が開いて成形品を取り出す際に成形品が金型から抜けやすくなるという効果もある。スプルブレイク動作を行った場合には次回の成形サイクルで再びノズルを前進させる必要がある。
【0003】
ノズルタッチ力を発生させるノズルタッチ機構部にはバネなどの弾性部材が設けられており、弾性部材の伸びを制御することにより所望のノズルタッチ力を発生させることができる。ノズルタッチ力を発生させるノズルタッチ機構部に関する文献として、以下の文献がある。
特許文献1には、弾性部材をノズルが金型に当接するノズルタッチ工程で弾性変形が生じるように設置し、ボールネジ軸に弾性部材の弾性変形量を検出する位置検出手段を設け、あらかじめ目標ノズルタッチ力を弾性変形量に換算して設定しておき、ノズルタッチ工程で目標ノズルタッチ力となるように制御する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、射出ユニットにおいてノズルタッチ力が発生する位置にサーボモータが駆動されたことを検出して、その位置にサーボモータを位置決めすることによってノズルタッチ力を維持する技術が開示されている。
特許文献3には、射出装置においてノズルタッチ力を弾性部材で制御し、ノズルタッチが行われる位置が、弾性部材であるバネが縮み始めると反応する位置に近接スイッチを設定しておくことによって、ノズルが固定側金型にタッチしたことを検出する技術が開示されている。
【0005】
また、型締部の移動や金型の変形を画像を使って計測することに関する文献として、以下の文献がある。
特許文献4には、固定金型と可動金型に作用する型締力に応じて伸びるタイバーを備える射出成形機において、タイバーにタイバーの伸び量を画像計測するためのマーカを設け、マーカを撮像することによってタイバーの位置を計測する技術が開示されている。
特許文献5には、射出成形機の金型に設けられた測定対象マークの異なる時刻における位置情報から、測定対象マークの変位量を算出し、測定対象マークの変位量を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−351133号公報
【特許文献2】特開平05−200784号公報
【特許文献3】特開2013−56516号公報
【特許文献4】特開2013−126722号公報
【特許文献5】特開2010−145231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に開示されている技術は、弾性部材の弾性変形量やサーボモータの位置検出器でサーボモータの位置決めを行って、ノズルタッチ位置を制御しているため、樹脂漏れや金型の変形といった成形中の異常の発生を検知することができないことがある。
特許文献3に開示されている技術は、近接スイッチを弾性部材が縮み始める位置に設置しているため、近接スイッチがノズルタッチ機構部に組み込まれているため、機械振動やバックラッシの影響で正確な検知が行えないおそれがある。これは特許文献2に開示されている技術においても同様であり、サーボモータの位置検出器でサーボモータの位置決めを行っているため、機械振動やバックラッシの影響で正確な検知が行えない可能性がある。
特許文献4,5に開示されている技術は、型締部のタイバーの伸びや金型の変形を画像を使って計測することが開示されているのみであって、ノズルタッチ力の検知や調整を行うことについては、記載も示唆もされていない。
【0008】
そこで本発明は、ノズルタッチ力を検出し、樹脂漏れや金型変形などの異常の検出を行い、正確なノズルタッチ力の制御を行うことが可能な射出成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明では、金型と、該金型に当接可能なノズルと、該ノズルを前記金型に当接させる弾性部材と、を備え、前記弾性部材を変形させることで前記ノズルにノズルタッチ力を発生させる射出ユニットを有する射出成形システムにおいて、前記弾性部材を撮影する弾性部材撮影手段と、該弾性部材撮影手段で撮影した前記弾性部材の画像データから前記弾性部材の変形量を算出する変形量算出手段と、事前に求めた前記弾性部材の変形量とノズルタッチ力との相関関係に基づいて、前記変形量算出手段で算出された変形量データをノズルタッチ力に換算するノズルタッチ力換算手段と、を備えることを特徴とした射出成形システムが提供される。
【0010】
本願の請求項2に係る発明では、所定のノズルタッチ力を設定して制御することが可能なノズルタッチ力制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形システムが提供される。
請求項2に係る発明では、ノズルタッチ力を適切に制御することが可能となる。
本願の請求項3に係る発明では、前記弾性部材撮影手段の撮影位置を移動させる弾性部材撮影位置移動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形システムが提供される。
請求項3に係る発明では、弾性部材撮影手段の撮影位置を移動可能とすることによって、広範囲にわたって、弾性部材の撮影及び測定を行うことが可能となる。
【0011】
本願の請求項4に係る発明では、前記射出ユニットを撮影する射出ユニット撮影手段と、前記射出ユニット撮影手段で撮影した前記射出ユニットの画像データに基づいて、前記射出ユニットの位置を算出する射出ユニット位置算出手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形システムが提供される。
請求項4に係る発明では、射出ユニット撮影手段によって射出ユニットを撮影することによって、樹脂漏れや金型変形などの異常の検出を行い、正確なノズルタッチ力の制御を行うことが可能となる。
【0012】
本願の請求項5に係る発明では、正常なノズルタッチにおいて前記射出ユニット位置算出手段が算出した前記射出ユニットの位置を射出ユニット基準位置として記憶する射出ユニット基準位置記憶手段と、前記変形量算出手段が所定量の前記弾性部材の変形を算出した際に、前記射出ユニット位置算出手段が算出した前記射出ユニットの位置と前記射出ユニット基準位置の差が所定量を超えた場合には警告を発することを特徴とする請求項4に記載の射出成形システムが提供される。
請求項5に係る発明では、基準となる射出ユニット基準位置と位置算出手段が算出した射出ユニットの位置とに基づいて、差が所定量を超えた場合に警告を発するようにしたことで、作業者に対して異常発生を容易に報知することが可能となる。
【0013】
本願の請求項6に係る発明では、前記射出ユニット撮影手段の撮影位置を移動させる射出ユニット撮影位置移動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の射出成形システムが提供される。
請求項6に係る発明では、射出ユニット撮影手段の撮影位置を移動可能とすることによって、広範囲にわたって、射出ユニットの撮影及び測定を行うことが可能となる。
【0014】
本願の請求項7に係る発明では、前記射出ユニット撮影手段の位置が、前記射出ユニット撮影位置移動手段の位置座標に基づいて算出されることを特徴とした請求項6に記載の射出成形システムが提供される。
請求項7に係る発明では、射出ユニット撮影位置移動手段の装着位置と、射出ユニット撮影手段の搬送位置に基づいて、射出ユニット撮影手段の位置を算出することによって、射出ユニット撮影位置移動手段の位置座標に基づいて、射出ユニット撮影手段の位置を算出することが可能となる。
【0015】
本願の請求項8に係る発明では、前記射出ユニット撮影手段が、前記弾性部材撮影手段を兼ねていることを特徴とした請求項4〜7のいずれかに記載の射出成形システムが提供される。
請求項8に係る発明では、射出ユニット撮影手段が弾性部材撮影手段を兼ねていることによって、1台の撮影手段によって、射出ユニットの位置と弾性部材の位置や変形量の両方を測定することが可能となる。
【0016】
本願の請求項9に係る発明では、前記ノズルタッチ力換算手段で換算されたノズルタッチ力と、前記射出ユニット位置算出手段で算出された射出ユニット位置と、前記射出ユニット基準位置とを表示することが可能な表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項
5に記載の射出成形システムが提供される。
請求項9に係る発明では、表示手段によってノズルタッチ力や射出ユニット位置、射出ユニット基準位置を表示することによって、作業者に対して射出ユニット位置やノズルタッチ力を報知することが可能となる。
【0017】
本願の請求項10に係る発明では、前記射出ユニット撮影位置移動手段がロボットであることを特徴とした請求項
6又は7に記載の射出成形システムが提供される。
本願の請求項11に係る発明では、前記射出ユニット撮影手段が、成形品を取り出すための成形品取出手段の近傍に配置されていることを特徴とした請求項4〜10のいずれかに記載の射出成形システムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ノズルタッチ力を検出し、樹脂漏れや金型変形などの異常の検出を行い、正確なノズルタッチ力の制御を行うことが可能な射出成形システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の射出成形システムを示した図である。
【
図2】弾性部材の画像データを撮影する例を示した図である。
【
図3】射出装置の画像データを撮影する例を示した図である。
【
図4】表示手段に基準位置、測定位置、ノズルタッチ力を表示した例を示した図である。
【
図5】表示手段に異常発生を表示した例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の射出成形システムを示した図である。10は射出成形機であり、可動プラテン12と固定プラテン14が設けられており、それぞれのプラテンには可動プラテン12に可動側金型16が設けられ、固定プラテン14に固定側金型18が設けられている。
【0021】
20は射出装置であり、射出シリンダ22とその先端部に設けられたノズル23、射出シリンダ22の内部に設けられて樹脂を撹拌搬送するスクリュ24が設けられている。また、モータ28の駆動によってボールネジ27が回転されて弾性部材26の変形量が変更されて、射出シリンダ22の位置が変更され、射出シリンダ22と固定側金型18との間のノズルタッチの関係や接触した際のノズルタッチ力が変更される。これらの、ノズル23の前後進用に動力を発生するモータ28、モータ28からの動力を伝達するボールネジ27、ノズル23のノズルタッチ力を発生させる弾性部材26と、弾性部材26の両端部に設けられる図示しない受圧板等でノズルタッチ機構部を構成している。
【0022】
制御手段40においては、弾性部材26の変形量や位置の算出、射出装置20の位置の算出、射出シリンダ22と固定側金型18との間のノズルタッチ力の換算、換算されたノズルタッチ力と設定されたノズルタッチ力との比較、射出装置20や射出シリンダ22等の制御、各種設定値の記憶を行う。また、モータ28に対してモータの制御指令を出し、後述するように表示手段44に対して、各種の値の表示指令を出す。さらに、入力手段42によって設定されたノズルタッチ力等が制御手段40に入力される。
【0023】
固定プラテン14上には多関節ロボット30が備えられている。多関節ロボット30としては従来公知の多関節ロボットを用いることができ、間にいくつか設けられた関節部を上下左右や自在回転させることによって、自由度の高い動きをすることが可能となる。多関節ロボット30の先端部には、撮像手段としてのビデオカメラ32と、成形品取出し用のハンド34が互いに近傍に設けられている。ビデオカメラ32では、後述するように弾性部材26の変形量や、射出装置20や射出シリンダ22の位置を撮像して、撮像した画像や、弾性部材26の変形量や、射出装置20や射出シリンダ22の位置を制御手段40に送信する。
【0024】
ノズルタッチ機構部は、モータ28を回転駆動してボールネジ27を回転させることによって、射出装置20を固定プラテン14に対して前後進させて、ノズル23を固定プラテン14に対してノズルタッチさせる。
表示手段44では、制御手段40からの表示指示を受けて、作業者の種々の値や制御手段40における処理結果、入力手段42への入力内容を確認するために、算出値や制御手段40における処理結果、入力手段42への入力内容を表示する。
【0025】
図2は、ビデオカメラ32によって弾性部材26の画像データを撮影する例を示している。ビデオカメラ32は多関節ロボット30の先端部に取り付けられているため、関節の動きによって簡単に姿勢変化を行うことができるため、射出装置20やスクリュ24の種類によって弾性部材26の位置が変わったとしても、撮影したい座標位置や撮影角度にビデオカメラ32を簡単に移動させることができ、撮影したい部分に近づいて撮影することを容易に行うことができる。具体的には、
図2に示されているように、ビデオカメラ32を弾性部材26の真上に来るように移動させて撮影を行う。
【0026】
弾性部材26の変形量を求める際には、弾性部材26の周期ごとにマーカー等をつけて、これらのマーカー間の距離を画像データに基づいて算出したり、図示しない受圧板などの弾性部材26を挟む2つの部品の部品間の距離を撮影して撮影された画像データに基づいて算出する。ビデオカメラ32が取り付けられている固定プラテン14側の多関節ロボット30の位置は定まっているため、ビデオカメラ32が弾性部材26の真上に来るように移動させることによって、弾性部材26の位置や伸び量を検出することが可能となる。
【0027】
事前にロードセル等の力センサを固定側金型18とノズル23との間に挟んだ状態でノズルタッチ力を変化させ、その際にビデオカメラ32によって弾性部材26の変形量や弾性部材26を挟む2つの部品の部品間距離を撮影して、弾性部材26の変形量とノズルタッチ力との関係を換算係数として求めて記憶しておく。この換算係数を弾性部材26の変形量に乗じたりして用いることによって、弾性部材26の変形量を計測してノズルタッチ力を求めることが可能となる。
【0028】
ノズルタッチ力を制御する場合は、所定のノズルタッチ力を設定し、算出されたノズルタッチ力と比較することで制御を行い、設定値との差が所定値以下となった場合にはノズル23の前進を停止させる制御命令を出すことによってノズルタッチ機構部を停止させることで、所望のノズルタッチ力を得ることが可能となる。このように、作業者が所望するノズルタッチ力に調整することができるため、ノズルタッチ力の不足によって射出時に樹脂が漏れることを防止したり、ノズルタッチ力が強すぎて、金型が変形したり金型に力が加わりすぎることにより発生する成形品の不良を抑えることが可能となる。
【0029】
次に、射出装置20の位置を算出する場合の例を説明する。
図3は、射出装置20の位置をビデオカメラ32によって撮像して位置の算出を行っている状態を示しており、
図3(a)は射出装置20が正常時の状態を示しており、
図3(b)は射出装置20に異常が発生している状態を示している。なお、
図3においては、ビデオカメラ32が取り付けられている多関節ロボット30等の記載を省略している。
【0030】
図3においては、射出装置20の一部に図示しないマーカ等を設けておき、マーカを真上から撮像範囲の中心になるように、ビデオカメラ32の位置を移動させる。ビデオカメラ32が取り付けられている固定プラテン14上の多関節ロボット30の位置はあらかじめ定まっているため、多関節ロボット30の取り付け位置と、撮像時のビデオカメラ32との位置によって、射出装置20の位置を算出することが可能となる。
図3(a)の正常時における距離をA1として記憶しておく。多関節ロボット30は、射出成形機に対する多関節ロボット30自身の各姿勢での位置情報を取得することが可能であるため、任意の姿勢での撮影画像に映っている射出ユニットの正確な位置も算出することが可能である。
また、ビデオカメラ32はノズルタッチ機構部上に配置しなくともよいため、ノズルタッチ機構部が前後進やノズルタッチした際に発生する振動の影響がなく、精密に弾性部材の変形量と射出装置20の位置を算出することが可能となる。
【0031】
図3(b)は、ノズル23の先端部と固定側金型18との間に、樹脂漏れした樹脂50が存在した異常発生時の状態を示している。
図3(a)の場合と同様に、マーカを真上から撮像範囲の中心になるように、ビデオカメラ32の位置を移動させて撮像することによって、射出装置20の位置を算出する。
図3(b)の場合は樹脂漏れした樹脂50がノズル23と固定側金型18との間に存在することによって、距離がA1より大きいA2となる。このとき、
図4に示されているように、表示手段44において、射出ユニットの基準位置、測定されて射出ユニット位置算出手段で算出された射出ユニット位置、ノズルタッチ力換算手段で換算されたノズルタッチ力を表示するようにすることもできる。
【0032】
金型変形や樹脂漏れの有無などを自動で検出したい場合には、正常なノズルタッチにおける射出装置20の位置を射出ユニット基準位置A1として記憶手段に記憶しておく。そして、実際の測定時の射出装置20の位置を測定し、測定結果があらかじめ定められた所定量以上となった場合には、表示手段44や警告灯、警報発生手段等を用いて警告を発生するようにする。
図5は表示手段44における警告表示の例であり、異常発生して、射出ユニットの基準位置からずれていることを表示している。
【0033】
なお、本実施形態においては、1つのビデオカメラ32によって、弾性部材26の位置や変形量の撮影と、射出装置20の位置測定のための撮影の両方を行っているが、弾性部材26の撮影用と射出装置20の撮影用で異なるビデオカメラを用いるようにすることもできる。また、本実施形態においては、ビデオカメラ32を移動させる移動手段として多関節ロボット30を用いているが、ロボットではなく他の機構等を用いることも可能である。さらに、本実施形態においては、多関節ロボット30を固定プラテン14の上に固定するようにしているが、固定位置を確定して測定の際の基準位置として用いることができれば、他の箇所に固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 射出成形機
12 可動プラテン
14 固定プラテン
16 可動側金型
18 固定側金型
20 射出装置
22 射出シリンダ
23 ノズル
24 スクリュ
26 弾性部材
27 ボールネジ
28 モータ
30 多関節ロボット
32 ビデオカメラ
34 ハンド
40 制御手段
42 入力手段
44 表示手段