特許第6235546号(P6235546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235546
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   B62M7/02 Y
   B62M7/02 G
   B62M7/02 N
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-228695(P2015-228695)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-94900(P2017-94900A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡介
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−271091(JP,A)
【文献】 特開平02−197484(JP,A)
【文献】 特開2013−159185(JP,A)
【文献】 特開2006−009648(JP,A)
【文献】 特開昭61−116016(JP,A)
【文献】 実開平02−123487(JP,U)
【文献】 特開平01−223093(JP,A)
【文献】 特開2003−063472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(12)に搭載されて、気筒部後面側に排気ポート(64)を有するエンジン(34)と、
シリンダーユニット(46)、及び該シリンダーユニット(46)から後方に延びるリザーブタンク(48)を有して、前記シリンダーユニット(46)の一端を前記エンジン(34)の後方で前記車体フレーム(12)に連結するリアクッション(45)と、
前記排気ポート(64)に接続されて、前記リアクッション(45)の左右側方を通って車体後方に向かって延びる排気管(52)と、
前記エンジン(34)および前記リアクッション(45)の間に配置されて、前記排気管(52)を上方から覆う位置で広がる遮熱体(54)と、を備え
前記遮熱体(54)は前記シリンダーユニット(46)の軸線方向に延びて該シリンダーユニット(46)の周囲を覆う縦壁(73)を有し、さらに前記縦壁(73)は前記リザーブタンク(48)と前記排気管(52)との間にも位置することを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動二輪車において、前記エンジン(34)は、単一のシリンダー(65)に臨む左右1対の前記排気ポート(64)を有し、前記排気管(52)は、前記排気ポート(64)にそれぞれ接続されて前記リアクッション(45)の左右側方をそれぞれ通る1対で構成されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】
請求項2に記載の自動二輪車において、前記遮熱体(54)は、前記エンジン(34)を支持する左右1対の前部フレーム(16)に跨って左右を支持され、燃料タンク(19)の後方に配置される乗員シート(28)を支持する左右1対のリアフレーム(42)に跨って左右を支持されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の自動二輪車において、前記遮熱体(54)は、前記リアクッション(45)の左右で前記排気管(52)を少なくとも部分的に覆う後部板(67)と、前記後部板(67)の前方で前記後部板(67)に上方から重ねられ前記後部板(67)に支持される前部板(68)とを備えることを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】
請求項4に記載の自動二輪車において、前記縦壁(73)、前記リアクッション(45)と前記排気管(52)との間で前記リアクッション(45)の周方向に連続するようにして、前記後部板(67)に備えられることを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項に記載の自動二輪車において、前記排気管(52)は、異なる管径を有し、相互に直列に連結される複数の管材(53a、53b、53c、53d、53e)から形成されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項に記載の自動二輪車において、前記排気管(52)は、前記リザーブタンク(48)の後方で相互に交差して左右入れ替わることを特徴とする自動二輪車。
【請求項8】
請求項2に記載の自動二輪車において、前記排気管(52)の各々に接続されて、前端よりも後端で相互に接近する1対の排気マフラー(31)と、前記排気マフラー(31)を相互に連結する連結ステー(66)とを備えることを特徴とする自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームに搭載されて、気筒部後面側に排気ポートを有するエンジンと、排気ポートに接続されて、車体後方に向かって延びる排気管とを備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は自動二輪車を開示する。自動二輪車は、気筒部後面側に排気ポートを有するエンジンを備える。排気ポートに排気管は接続される。排気管には屈曲部が形成される。排気管は屈曲部に向かって後上がりに延びる。排気管は屈曲部から重力方向に下降する。屈曲部の形成に応じて排気管の長さが確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−51323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、排気管は屈曲部で最も乗員シートに接近することから、屈曲部と乗員シートとの間にのみ遮熱板が配置される。
こうして遮熱板の広がりはできる限り縮小される。しかしながら、こうした構造では、屈曲部以外で排気管は乗員シートから十分な距離で離れなければならず、乗員シートや燃料タンクと排気管との間に大きな空間が要求されてしまう。特に、排気ポート直後で排気管の温度は最も高まることから、排気ポートの直後で排気管の直上に他の構成品を配置することはできなかった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたもので、排気ポートの直後であっても排気管に他の構成品を接近させることができる自動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、車体フレームに搭載されて、気筒部後面側に排気ポートを有するエンジンと、シリンダーユニット及び該シリンダーユニットから後方に延びるリザーブタンクを有して、前記シリンダーユニットの一端を前記エンジンの後方で前記車体フレームに一端を連結するリアクッションと、前記排気ポートに接続されて、前記リアクッションの左右側方を通って車体後方に向かって延びる排気管と、前記エンジンおよび前記リアクッションの間に配置されて、前記排気管を上方から覆う位置で広がる遮熱体とを備え、前記遮熱体は前記シリンダーユニットの軸線方向に延びて該シリンダーユニットの周囲を覆う縦壁を有し、さらに前記縦壁は前記リザーブタンクと前記排気管との間にも位置する自動二輪車は提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記エンジンは、単一のシリンダーに臨む左右1対の前記排気ポートを有し、前記排気管は、前記排気ポートにそれぞれ接続されて前記リアクッションの左右側方をそれぞれ通る1対で構成される。
【0008】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記遮熱体は、前記エンジンを支持する左右1対の前部フレームに跨って左右を支持され、燃料タンクの後方に配置される乗員シートを支持する左右1対のリアフレームに跨って左右を支持される。
【0009】
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記遮熱体は、前記リアクッションの左右で前記排気管を少なくとも部分的に覆う後部板と、前記後部板の前方で前記後部板に上方から重ねられ前記後部板に支持される前部板とを備える。
【0010】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、前記縦壁、前記リアクッションと前記排気管との間で前記リアクッションの周方向に連続するようにして、前記後部板に備えられる。
【0011】
側面によれば、第5側面の構成に加えて、前記排気管は、異なる管径を有し、相互に直列に連結される複数の管材から形成される。
【0012】
側面によれば、第6側面の構成に加えて、前記排気管は、前記リザーブタンクの後方で相互に交差して左右入れ替わる。
【0013】
側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記排気管の各々に接続されて、前端よりも後端で相互に接近する1対の排気マフラーと、前記排気マフラーを相互に連結する連結ステーとを備える。
【発明の効果】
【0014】
第1側面によれば、遮熱体は、最も高温となる排気ポート直後で排気管の輻射熱を遮蔽する。排気管から上方に向かって熱の伝わりは抑制される。こうして排気管の直上に燃料タンクや燃料ポンプは配置されることができる。さらに、縦壁は排気管の輻射熱からリアクッションのリザーブタンクを保護することができる。その結果、リザーブオイルの温度上昇に伴う粘度変化を低減させることができて、クッション性能は向上する。
【0015】
第2側面によれば、排気管は単一のシリンダーを共有するので、シリンダーに共通1本の排気管が配置される場合に比べて、個々の排気管の管径は縮小されることができる。その結果、リアクッションの左右それぞれで排気管の配置スペースは縮小される。配管の制約が緩和され、排気管のレイアウト性が向上する。排気管の形状は容易に線形に近づくことができ、排気効率の向上は容易に実現されることができる。
【0016】
第3側面によれば、エンジンの支持にあたって左右1対の前部フレームは十分に相互間隔を有して並列する。同様に、乗員シートの支持にあたって左右1対のリアフレームは十分に相互間隔を有して並列する。したがって、遮熱体は左右方向(車幅方向)に十分な広がりを有することができる。しかも、遮熱体は前部フレームおよびリアフレームに安定して支持されることができる。
【0017】
第4側面によれば、前部板は排気ポートの直後で排気管に被さる。前部板は後部板に比べて容易に車体フレームから取り外されることができ、前部板の取り外しに応じてエンジンは簡単に露出することができる。こうして排気ポート直後の排気管では簡単にメンテナンスは実現されることができる。
【0018】
第5側面によれば、後部板は排気管の輻射熱からリアクッションを保護することができる。リアクッションに対して熱の影響は十分に抑制されることができる。
【0019】
第6側面によれば、1本の管材で連続して拡径されるテーパー状の管径を設定する場合に比べて、生産性を向上させながら同等な排気特性を確保することができる。
【0020】
側面によれば、左右の排気管がそのまま線形で後方に延びる場合に比べて、排気管の長さを長く確保することが可能で、その結果、排気性能は向上し、特に、リアクッションおよびリザーブタンクの保護と車両後部の小型化とが図れる。
【0021】
側面によれば、車体の後部に配置される排気マフラーが接近することで、車体の後部は小型化される。しかも、排気マフラーが相互に連結されることで、排気マフラーの支持剛性は高められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の全体構成を概略的に示す側面図である。
図2】自動二輪車の構造をさらに詳細に示す拡大部分側面図である。
図3】エンジンおよび排気管の構造を概略的に示す一部破断平面図である。
図4】遮熱体の構造を詳細に示す自動二輪車の拡大部分平面図である。
図5】遮熱体単体の拡大斜視図である。
図6】遮熱体の構造を詳細に示す自動二輪車の拡大部分斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る自動二輪車の排気管を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ここで、車体の上下前後左右は自動二輪車に乗車した乗員の目線に基づき規定されるものとする。
【0024】
図1は本発明の第1実施形態に係る自動二輪車11を概略的に示す。自動二輪車(鞍乗り型車両)11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着されるカウルカバー13とを備える。車体フレーム12は、フロントフォーク14を操向可能に支持するヘッドパイプ15と、該ヘッドパイプ15から後下がりに延びる左右1対のメインフレーム16、16と、メインフレーム16、16の後端から下方に延びる左右1対のピボットフレーム17、17とを備える。フロントフォーク14には車軸18回りで回転自在に前輪WFが支持される。メインフレーム16には上方から燃料タンク19が搭載される。燃料タンク19はメインフレーム16に支持される。ここでは、メインフレーム16およびピボットフレーム17は協同で前部フレームを形成する。
【0025】
ピボットフレーム17には水平方向に延びる支軸21を介してスイングアーム22が連結される。スイングアーム22は支軸21回りで上下方向に揺動可能にピボットフレーム17に支持される。スイングアーム22の自由端には車軸23回りで回転自在に後輪WRが支持される。
【0026】
カウルカバー13は、前方からヘッドパイプ15を覆うフロントカウル24と、該フロントカウル24の後縁に接続されて、メインフレーム16の下方の空間を左右側方から覆う左右1対のセンターカウル25と、センターカウル25の下縁に接続されて、下方からメインフレーム16下方の空間を覆うアンダーカウル26と、左右1対のピボットフレーム17に連結されて、後輪WRの上方空間でピボットフレーム17から後方に延びるリアカウル27とを備える。リアカウル27は乗員シート28の左右両側を覆う。後述されるように、リアカウル27には左右1対の排気マフラー31が連結される。
【0027】
図2に示されるように、メインフレーム16にはエンジンハンガー33が固定される。エンジンハンガー33はメインフレーム16から下方に延びる。エンジンハンガー33およびメインフレーム16には燃料タンク19の下方でエンジン34が連結される。こうしてエンジン34は車体フレーム12に搭載される。エンジン34はセンターカウル25で側方から覆われ、アンダーカウル26で下方から覆われる。
【0028】
エンジン34は、クランクケース35と、クランクケース35に結合されるシリンダーブロック36と、シリンダーブロック36とともに気筒部を構成するシリンダーヘッド37と、シリンダーヘッド37に結合されるヘッドカバー38とを備える。クランクケース35には、後輪WRの車軸23に平行に延びる軸線回りで回転するクランクシャフト41が収容される。エンジン34は、クランクシャフト41の軸線回りで後方にシリンダー軸Cを傾ける後傾の姿勢で保持される。
【0029】
車体フレーム12はさらに左右1対のリアフレーム42を備える。個々のリアフレーム42はシートレール43および補助フレーム44を備える。シートレール43および補助フレーム44はピボットフレーム17とともに構造体を形成する。シートレール43の前端はピボットフレーム17に連結される。補助フレーム44の前端はシートレール43の前端よりも下方でピボットフレーム17に連結される。補助フレーム44の後端はピボットフレーム17から離れた位置でシートレール43に連結される。シートレール43に作用する重量は補助フレーム44で支持される。リアフレーム42に乗員シート28は支持される。
【0030】
車体フレーム12とスイングアーム22との間にはリアクッション45が設置される。リアクッション45の一端はエンジン34の後方で車体フレーム12に連結される。リアクッション45はシリンダーユニット46を備える。シリンダーユニット46の上端はピボットフレーム17の上端に連結される。シリンダーユニット46の下端はリンク機構47を介してスイングアーム22に連結される。シリンダーユニット46にはオイルダンパーやスプリングが組み込まれる。こうして車体フレーム12に対してスイングアーム22の揺動は規制される。後輪WRから車体フレーム12へ振動の伝達は抑制される。ここで、リアクッション45は車体の略左右中央に位置する。リアクッション45の中心軸はシリンダーユニット46の軸心に一致する。
【0031】
リアクッション45はリザーブタンク48を備える。リザーブタンク48はシリンダーユニット46の上部に接続されてシリンダーユニット46から後方斜め上方に延びる。リザーブタンク48にはオイルが蓄積される。リザーブタンク48はオイルダンパーとの間でオイルをやりとりする。
【0032】
エンジン34には燃料ポンプ49が接続される。燃料ポンプ49は燃料タンク19に下方から差し込まれる。燃料ポンプ49は、ヘッドカバー38とリアクッション45との間に区画される空間に配置される。燃料ポンプ49の供給管51はシリンダーヘッド37の前面に接続される。
【0033】
エンジン34のシリンダーヘッド37には排気管52が接続される。排気管52は燃料ポンプ49の直下でシリンダーヘッド37の後面に接続される。排気管52はリアクッション45の左右側方を通って車体後方に向かって延びる。排気管52には、リアフレーム42の後端よりも後方で排気マフラー31が接続される。
【0034】
排気管52は、相互に直列に接続される複数の管材53a、53b、53c、53d、53eから形成される。1本の排気管52では管材53a、53b、53c、53d、53eは個別に異なる径を有する。すなわち、管材53a、53b、53c、53d、53eの内径は、排気ポートから遠ざかるほど、言い換えると、排気マフラー31に近づくほど、増大する。個々の管材53a、53b、53c、53d、53eごとに内径は一定であればよい。
【0035】
エンジン34およびリアクッション45の間には遮熱体54が配置される。遮熱体54は燃料ポンプ49の下方の空間で上方から排気管52を覆う位置に広がる。遮熱体54の詳細は後述される。
【0036】
エンジン34には電装品ユニット56が支持される。電装品ユニット56は例えば電子燃料噴射装置の制御ユニットその他の電装品を収容する電装品ボックス57を備える。電装品ボックス57は例えばアルミニウムから成型され、外面に放熱フィン58を有する。電装品ボックス57には配線ケーブル59の先端に連結されるカプラー61が結合される。
【0037】
電装品ユニット56の取り付けにあたってエンジン34には金属製の電装品ステー62が固定される。電装品ステー62はエンジン34のクランクケース35およびシリンダーヘッド37にねじ留めされる。電装品ボックス58は電装品ステー62にねじ留めされる。
【0038】
図3に示されるように、エンジン34は単気筒型に構成される。エンジン34は気筒部後面側に左右1対の排気ポート64を有する。1対の排気ポート64は単一のシリンダー65に臨む。個々の排気ポート64にはそれぞれ排気管52が接続される。1対の排気管52は、排気ポート64の直後で左右に隣り合い、徐々に相互に離れながらリアクッション45のシリンダーユニット46およびリザーブタンク48を迂回する。こうして排気管52はリアクッション45の左右側方を通って、リザーブタンク48の後方で相互に接近し、交差して左右入れ替わる。ピボットフレーム17の上端は相互に接近して協働でリアクッション45の上端を支持する。
【0039】
1対の排気マフラー31は左右に並列に配置される。排気マフラー31は前端よりも後端で相互に接近する。2つの排気マフラー31には共通に1つの連結ステー66が固定される。連結ステー66は相互に排気マフラー31同士を連結する。連結ステー66の取り付け位置で2つのマフラー31は最も相互に接近する。連結ステー66はリアカウル27に連結される。連結ステー66はリアカウル27にねじ留めされればよい。
【0040】
図4および図5に示されるように、遮熱体54は後部板67および前部板68を備える。後部板67は左右1対のリアフレーム42すなわち補助フレーム44に跨がって広がり左右を支持される。後部板67は、リアクッション45の前方で左右の排気管52に跨がって水平面に沿って広がる共通平板部67aと、共通平板部67aの左右端からそれぞれ広がって対応の排気管52ごとに割り当てられる個別平板部67bとを備える。共通平板部67aおよび個別平板部67bと排気管52との間には空気層が形成される。言い換えると、後部板67は所定の間隔で排気管52の外面に向き合わせられる。
【0041】
個別平板部67bは共通平板部67aから対応の排気管52に沿って連続しリアクッション45の左右で排気管52を少なくとも部分的に覆う。個別平板部67bの後端にはフック片71が一体に形成される。フック片71は個々に対応の補助フレーム44に係り合う。2つのフック片71は協働で補助フレーム44に嵌め込まれればよい。こうして後部板67の後端はリアフレーム42に固定される。
【0042】
前部板68は左右1対の前部フレームすなわちメインフレーム16に跨がって広がり左右を支持される。前部板68には左右でメインフレーム16にそれぞれ重ねられる取り付け片72が一体に形成される。前部板68は左右1対の取り付け片72でメインフレーム16に支持される。取り付け片72は、メインフレーム16にねじ留めされてもよく、あるいは、取り付け片72およびメインフレーム16に巻きつけられる針金でメインフレーム16に結合されてもよい。前部板68は後部板67の前方で左右の排気管52に跨がって広がる。前部板68の前縁はシリンダーヘッド37に突き当てられる。前部板68の後端は後部板67に支持される。前部板68は後端で後部板67に上方から重ねられる。前部板68と排気管52との間には空気層が確保される。言い換えると、前部板68は所定の間隔で排気管52の外面に向き合わせられる。
【0043】
共通平板部67aの左右端には個々に固定片74が固着される。固定片74は共通平板部67aの表面から垂直方向に広がる。共通平板部67aの後端には、垂直方向に立ち上がった姿勢で広がる縦壁73が形成される。縦壁73は共通平板部67aから個別平板部67bに連続する。
【0044】
図6に示されるように、固定片74はピボットフレーム(アッパーブラケット)17の内側面に重ねられる。固定片74はねじ75でピボットフレーム17に固定される。縦壁73は、リアクッション45の周方向に連続してリアクッション45と排気管52との間でリアクッション45に向き合わせられ、リアクッション45のシリンダーユニット46から後方に延びるリザーブタンク48に向き合わせられる。縦壁73と排気管52との間には空気層が形成される。言い換えれば、縦壁73は所定の間隔で排気管52の外面に向き合わせられる。
【0045】
共通平板部67a、個別平板部67bおよび縦壁73は連続する1素材から成形されればよい。素材には例えばアルミニウム板が用いられることができる。成形には例えばプレス機が用いられればよい。ここでは、縦壁73と平板部67a、67bとは滑らかな湾曲面で接続され、良好な整風作用に応じてリアクッション45の冷却性能は高められる。同様に、前部板68はアルミニウム板といった1素材から成形されればよい。
【0046】
自動二輪車11の走行中、あるいは、その他の状況で、エンジン34が作動すると、排気管52から輻射熱は放出される。前部板68および後部板67は、最も高温となる排気ポート64直後で排気管52の輻射熱を遮蔽する。排気管52から上方に向かって熱の伝わりは抑制される。こうして排気管52の直上に燃料タンク19や燃料ポンプ49は配置されることができる。燃料タンク19や燃料ポンプ49の高温化は抑制される。燃料タンク19はできる限り地面に近づくことができ、車両の低重心化に寄与することができる。
【0047】
自動二輪車11では、排気管52は、シリンダー65を共有する1対の排気ポート64にそれぞれ接続されてリアクッション45の左右側方をそれぞれ通る1対で構成される。単一のシリンダー65に共通1本の排気管が配置される場合に比べて、個々の排気管52の管径は縮小されることができる。その結果、リアクッション45の左右それぞれで排気管52の配置スペースは縮小される。自動二輪車11の車幅は縮小されることできる。配管の制約は緩和され、排気管52のレイアウト性は向上する。排気管52の形状は容易に線形に近づくことができ、排気効率の向上は容易に実現されることができる。
【0048】
遮熱体54の前部板68は、エンジン34を支持する左右1対のメインフレーム16に跨って広がり左右を支持される。遮熱体54の後部板67は、燃料タンク19の後方に配置される乗員シート28を支持する左右1対のリアフレーム42に跨って広がり左右を支持される。エンジン34の支持にあたって左右1対のメインフレーム16は十分に相互間隔を有して並列する。同様に、乗員シート28の支持にあたって左右1対のリアフレーム42は十分に相互間隔を有して並列する。したがって、遮熱体54は左右方向(車幅方向)に十分な広がりを有することができる。しかも、遮熱体54はメインフレーム16およびリアフレーム42に安定して支持されることができる。
【0049】
後部板67はピボットフレーム17およびリアフレーム42に固定される。後部板67の前方で前部板68はシリンダーブロック36の直後から排気管52に被さる。前部板68は後部板67から分離して容易にメインフレーム16から取り外されることができ、前部板68の取り外しに応じてエンジン34は簡単に露出することができる。こうして排気ポート64直後の排気管52では簡単にメンテナンスは実現されることができる。
【0050】
リアクッション45と排気管52との間で後部板67の縦壁73はリアクッション45のシリンダーユニット46の軸線方向に延びてリアクッション45のシリンダーユニット46の周囲を覆う。こうして後部板67は排気管52の輻射熱からリアクッション45を保護することができる。リアクッション45に対して熱の影響は十分に抑制されることができる。
【0051】
縦壁73は、同様に、リアクッション45のシリンダーユニット46から後方に延びるリザーブタンク48と排気管52との間に位置する。こうして縦壁73は排気管52の輻射熱からリアクッション45のリザーブタンク48を保護することができる。その結果、温度上昇に伴うリザーブオイルの粘度変化を低減させることができて、クッション性能は向上する。
【0052】
排気管52は複数の管材53a〜53eから形成される。管材53a〜53eは個々に異なる管径を有する。したがって、1本の管材で連続して拡径されるテーパー状の管径を設定する場合に比べて、生産性を向上させながら同等な排気特性を確保することができる。
【0053】
自動二輪車11では、排気管52はリアクッション45の後方で相互に交差して左右入れ替わる。左右の排気管52がそのまま線形で後方に延びる場合に比べて、排気管52の長さを長く確保することが可能で、その結果、排気性能は向上し、特に、リアクッション45およびリザーブタンク48の保護と車両後部の小型化とが図れる。
【0054】
排気マフラー31は連結ステー66で相互に連結される。車体の後部に配置される排気マフラー31が接近することで、車体の後部は小型化される。しかも、排気マフラー31が相互に連結されることで、排気マフラー31の支持剛性は高められる。
【0055】
図7は本発明の第2実施形態に係る自動二輪車11aを概略的に示す。第2実施形態では排気管52はリアクッション45の左右側方を通ってそのまま線形で後方に延びる。したがって、第1実施形態に係る自動二輪車11に比べて排気管52の長さは縮小される。その他の構成は前述の第1実施形態のそれと同様である。
【符号の説明】
【0056】
11…自動二輪車(鞍乗り型車両)、11a…自動二輪車(鞍乗り型車両)、12…車体フレーム、16…前部フレームとしてのメインフレーム、17…前部フレームとしてのピボットフレーム、19…燃料タンク、28…乗員シート、31…排気マフラー、34…エンジン、45…リアクッション、46…シリンダーユニット、48…リザーブタンク、52…排気管、53a…管材、53b…管材、53c…管材、53d…管材、53e…管材、54…遮熱体、64…排気ポート、65…シリンダー、66…連結ステー、67…後部板、68…前部板、73…縦壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7