(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
同様の要素、同じ種類の要素、および全く同様に作動する要素は、図中で同じ参照番号を与えられることがある。
【0020】
図1に薬物送達デバイス1が示されている。薬物送達デバイス1はハウジング2を備える。薬物送達デバイス1および/またはその部材は、遠位端および近位端を有する。遠位端は矢印12で示されている。近位端は矢印13で示されている。「遠位端」という用語は、薬物送達デバイス1の端部、または薬物送達デバイス1の投薬端部に最も近いかもしくは最も近くに配置予定の、薬物送達デバイス1の部材を示す。「近位端」という用語は、システム1の端部、またはシステム1の投薬端部から最も遠いかもしくは最も遠くに配置予定の、システム1の部材を示す。遠位端と近位端は軸の方向に互いに離隔されている。この軸は、薬物送達デバイス1またはその要素の縦軸とすることができる。
【0021】
薬物送達デバイス1は貯蔵器3を備える。貯蔵器3は、貯蔵器ホルダ4の中に保持される。貯蔵器ホルダ4は、貯蔵器3の位置を機械的に安定させる。貯蔵器ホルダ4(詳細には貯蔵器ホルダ4の近位端)は、たとえばねじ付係合部によって薬物送達デバイス1のハウジング2に連結可能である。別法として貯蔵器3は、ハウジング2に直接連結することもできる(たとえば、
図1参照)この場合、貯蔵器ホルダ4は余分なものになり得る。
【0022】
貯蔵器3は薬物14を(好ましくは薬物14の複数の用量を)含む。薬物14は液体薬物とすることができる。本明細書で使用する用語「薬物」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0023】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0024】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0025】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0026】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0027】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0028】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0029】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0030】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各アンチハウジングの基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0031】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0032】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類によりアンチハウジングのアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0033】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0034】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各アンチハウジングは、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各アンチハウジングにつき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0035】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与のアンチハウジングの固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0036】
「アンチハウジングフラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全アンチハウジングと本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0037】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0038】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0039】
栓8は、貯蔵器3の中に動かせるようにして保持される。栓8は、貯蔵器3を近位で封止する。特に貯蔵器は、たとえばあらかじめ充填されるカートリッジとすることができる。貯蔵器3の遠位端と環境の間に流体連通がたとえば針(諸図には明示されていない)を介して確立されていれば、栓8が貯蔵器3に対して遠位方向に動くことにより、薬剤14が貯蔵器3から投薬される。
【0040】
着脱キャップ16が、貯蔵器ホルダ4の遠位端を覆って解放可能に保持される。
【0041】
薬物送達デバイス1は、ペン型デバイス(具体的にはペン型注射器)とすることができる。デバイス1は、薬物14の固定用量(すなわち使用者が変えることができない用量)を投薬するように構成することができる。デバイス1は再使用可能デバイスとすることができ、これは貯蔵器3を、交換貯蔵器から複数の用量を投薬するための交換貯蔵器と取り換えることができる(詳細には再設定作業中に)ことを意味する。あるいは、デバイス1は使い捨てデバイスとすることもできる。この場合、貯蔵器3は取り換えることができない。貯蔵器は、たとえば貯蔵器ホルダ4と解放不能に連結することができる。薬物送達デバイス1は、多用量デバイス(すなわち薬物14の複数の用量を設定および投薬するように構成されたデバイス)とすることができる。薬物送達デバイス1は駆動機構を備える。この駆動機構は、薬物14の用量を設定および投薬するために使用される。
【0042】
駆動機構はピストンロッド7を含む。ピストンロッド7は遠位端および近位端を有する。ピストンロッド7の遠位端は、ピストンロッド7がデバイス1の中に導入されたときに、薬物送達デバイス1の遠位端12に最も近くなる端部とすることができる。ピストンロッド7の近位端は、ピストンロッド7がデバイス1の中に導入されたときに、薬物送達デバイス1の遠位端12から最も遠くなる端部とすることができる。ピストンロッド7は、デバイス1のハウジング2の中を通って延びる。ピストンロッド7は、たとえば薬物14を送達する目的のために、薬物送達デバイス1を通じて軸方向の動きを移すように設計されている。ピストンロッド7は、薬物14の用量を送達するために、用量送達方向の軸方向に変位可能である。用量送達方向は、ハウジング2に対して遠位方向とすることができる。好ましくは、ピストンロッド7は、用量設定方向の軸方向には変位しないようになっており、これについては後で詳細に説明する。用量設定方向は、ハウジング2に対して近位方向とすることができる。好ましくは、ピストンロッド7は、たとえばハウジング2との機械的な協働によって、薬物14の用量を設定および送達するときにハウジング2に対して回転しないようになっている。ピストンロッド7は外部構造体および内部構造体を含み(
図2参照)、これらについては後で詳細に説明する。図を分かりやすくするために、ピストンロッド7の内部構造は
図1に示されていない。デバイス1はナット33を備える(
図2参照)。ナット33は、ピストンロッド7とねじ係合される。具体的には、ナット33はピストンロッド7の遠位端部にねじで留められる。ナット33によって、ピストンロッド7の長さを変えることができる。このようにして、ピストンロッド7の長さは、デバイス1からの第1の用量を設定および投薬する前にピストンロッド7が栓8に当接するように調整することができる。ピストンロッド7と栓8を当接させるための使用者操作の準備工程は、このようにして余分なものになる。
【0043】
図2は、
図1の薬物送達デバイスの断面側面図を概略的に示す。
【0044】
駆動機構は駆動部材17を含む。駆動部材17は、ピストンロッド7の内部7Aに配置される。駆動部材17は、薬物14の用量を設定するために、ハウジング2に対して用量設定方向に変位される。駆動部材17は、薬物14の用量を設定するときにピストンロッド7に対して変位される。駆動部材17は、薬物14の用量を送達するために、ハウジング2に対して用量送達方向に変位される。用量を送達するとき、遠位方向の駆動部材17の動きは、ハウジング2に対して遠位方向のピストンロッド7の動きに変えられる。ピストンロッド7は一組の窪み32を備える(たとえば
図5参照)。窪み32は、ピストンロッド7の内面に沿って縦方向に延びる。駆動部材17は、少なくとも1つの可撓アーム18を備える。窪み32は、用量送達方向の駆動部材17の動きをピストンロッド7に移すために、駆動部材17と機械的に協働し、詳細には駆動部材17の可撓アーム18と機械的に協働する。
【0045】
駆動機構は用量部材5を含む。薬物送達デバイス1は用量ボタン6を備える。用量ボタン6は、用量部材5と一体化して形成することができ、あるいは用量部材5と連結することができる。後者の場合、用量ボタン6は用量部材5に固定することができ、詳細には、用量部材5に対し、回転の動きに抗して固定することができる。使用者が、薬物14の用量を設定するために、用量部材5をハウジング2に対して動かす。この動きにより駆動部材17は、ピストンロッド7に対して近位に動かされる。薬物14の用量を設定する前に、用量ボタン6は、ハウジング3に対して開始位置に配置される。
【0046】
デバイス1は阻止要素10を備える。阻止要素10は、ハウジング3から径方向内向きに突出する。阻止要素10は、爪アームを備えることができる。阻止要素10は可撓性とすることができる。詳細には、阻止要素10は、ハウジング3に対して径方向に可撓性である。阻止要素10は、ハウジング2に対し、軸方向および回転の動きに抗して固定される。デバイス1は、複数の阻止要素10を備えることができる。異なる阻止要素10が、ピストンロッド7の主縦軸に対して同じ軸方向位置を有する。デバイス1は内部スリーブ9を備える。内部スリーブ9は、ハウジング2の中の挿入スリーブとすることができる。好ましくは、内部スリーブ9は、ハウジング2に対し、回転および並進運動の動きに抗して固定される。内部スリーブ9は、阻止要素10を備えることができる。阻止要素10は、内部スリーブ9から径方向内向きに突出する。別法として、阻止要素10はハウジング2の一部とすること、またはハウジング2に固定することができる。この場合、内部スリーブ9は余分なものになり得る。
【0047】
ピストンロッド7は、複数の相互作用機能11を備える。相互作用機能11は、ピストンロッド7の外面に沿って延びる。続いている各相互作用機能11は、ピストンロッド7の外面に沿って均等な軸方向寸法(たとえば、用量送達中にピストンロッド7の動きの方向に沿って見て、均等な長さ)を有する。これは、たとえば、固定用量薬物送達デバイス1の提供を可能にする助けになり得る。
【0048】
図3は、
図1の薬物送達デバイスの一部分の断面側面図を概略的に示す。
図4は、別の実施形態の
図1の薬物送達デバイスの一部分の断面側面図を概略的に示す。
【0049】
それぞれの相互作用機能11は、少なくとも1つの窪み31を備える。それぞれの相互作用機能11は、少なくとも1つの隆起(elevation)30を備える。言い換えると、それぞれの相互作用機能11は、隆起30および窪み31で形成された少なくとも1つ(たとえば、厳密に1つ)の対を備える。隆起30は、ピストンロッド7の外面から径方向内向きに突出する。続いている相互作用機能11の隆起30および窪み31は、
図2、3および4から明らかなように、ピストンロッド7に沿って交互に配置される。
【0050】
相互作用機能11は、阻止要素10と機械的に協働する。それによって、1つだけの相互作用機能11が、1つの用量送達動作中に、すなわち既定の、したがって固定の薬物14の用量を送達するために、阻止要素10と機械的に協働する。薬物の1つの用量を送達するために、ピストンロッド7は、阻止要素10に対する初期位置から、阻止要素10に対する最終位置まで動かされる。それぞれの相互作用機能11(特に厳密に1つの相互作用機能11)は、初期位置と最終位置の間の経路に沿って設けられる。ピストンロッド7が初期位置から最終位置の方へ動かされるとき、それぞれの相互作用機能11は、阻止要素10と機械的に協働する。具体的には、それぞれの相互作用機能11は阻止要素10に沿って摺動する。阻止要素10とピストンロッド7(詳細には相互作用機能11)の機械的な協働により、送達動作が完了したときにピストンロッド7が後向きに動くことが防止され、これについては以下のページで詳細に説明する。以下では、用量を設定および送達する動作について詳細に説明する:
【0051】
薬物14の用量を設定するために、用量部材5がハウジング3に対して近位方向に遠位端位置から近位端位置まで動かされる。用量部材5の動きは、用量部材5と駆動部材17の機械的な協働によって、たとえばラックとピニオンの機構によって、駆動部材17に移される。駆動部材17は、ピストンロッド7に対して近位方向にピストンロッド7の中で動かされる。それによって、駆動部材17の可撓アーム18は、ピストンロッド7の内面に沿って配置された窪み32に沿って摺動する。用量設定操作中にピストンロッド7が近位方向に動くことは、ピストンロッド7と阻止要素10の機械的な協働により防止される。具体的には、阻止要素10は、ピストンロッド7が用量設定方向に動くことを防止するようにそれぞれの相互作用機能11と(詳細にはこの相互作用機能11の隆起30と)機械的に協働する。これについては、後でより詳細に説明する。
【0052】
設定された用量を送達するために、用量ボタン6と、したがって用量部材5とが遠位方向に動かされる。用量部材5の動きが、用量部材5と駆動部材17の機械的な協働によって駆動部材17へ移される。可撓アーム18とピストンロッド7の内部構造体(すなわちそれぞれの窪み32)との機械的な協働により、駆動部材17の遠位方向の動きがピストンロッド7の遠位方向の動きに変えられる。それによって、ピストンロッド7は、阻止要素10に対する初期位置から、阻止要素10に対する最終位置まで動かされる。ピストンロッド7が遠位方向に動かされるとき、相互作用機能11は、阻止部材10に沿って摺動する。阻止部材10は最初、隆起30と機械的に協働するようになる。それによって、阻止部材10は、半径方向外向きに偏向される。次に、ピストンロッド7が最終位置の方にさらに動くとき、阻止部材10は、相互作用機能11の隆起30から窪み31に入る。相互作用機能11と阻止部材10の機械的な協働を
図3および
図4に関して詳細に説明する。
【0053】
阻止部材10が隆起30から窪み31に入るとき、動作音が使用者に提供される。詳細には、阻止部材10が隆起30から窪み31まで進むとき、径方向外側に偏向された阻止部材10は、阻止部材10が窪み31と機械的に協働することになるように緩和する。動作音は、阻止部材10が窪み31と当接するようになったときに発生する。
【0054】
しかし、動作音がもたらされたとき、ピストンロッド7はまだ最終位置に位置決めされていない。これは、デバイス1の製造および組立て時に必要な機械的な裕度による。この必要な裕度により、動作音を用量送達動作の終了時に正確に合わせることが不可能になる。加えて、下記のように、後退の動きに対する余裕を設けなければならない。ピストンロッド7を最終位置に置くには、すなわち全用量を送達するには、用量ボタン6は、ハウジング3に対して遠位方向に開始位置を越えてさらに動かさなければならない。したがって、ピストンロッド7は、阻止部材10に対してさらに遠位に駆動される。それによって窪み31は、阻止部材10に沿って摺動する。全用量が投薬されたとき、用量ボタン6は、その最も遠位の位置に配置されている。次に、後退機構(たとえば、ばね)がピストンロッド7と、したがって栓8とを、ピストンロッド6が阻止部材10に対して最終位置に配置されるように、またボタン6がハウジング3に対して開始位置に配置されるように、近位方向にわずかに押す。ピストンロッド7は、それが最終位置にあるとき、隆起30から離して配置されている。後退機構により、たとえば小滴をもたらす可能性がある、送達動作の完了後にピストンロッド7が栓8に力を及ぼすということが防止される。
【0055】
デバイス1の動作に関するさらなる詳細については、同様のデバイスに言及している文献WO2008/058666A1およびWO2008/058668A1を参照されたい。
【0056】
上記のように、相互作用機能11が阻止要素10と機械的に協働するときに、動作音が使用者に提供される。この動作音は、音および/または振動のように、可聴および/または触覚のフィードバックになり得る。動作音は、たとえばカチッという音であり得る。動作音は、用量送達動作が完了する前に、具体的にはピストンロッド7と、したがって相互作用機能11とが阻止要素10に対して最終位置に位置決めされる前に、使用者に提供される。
【0057】
相互作用機能11は、動作音を均質にするように設計することができる。このようにして、動作音を用量送達動作の終了を知らせるものとして使用者が解釈することを防止することができる。そのように解釈した場合には、使用者は、用量送達動作を中断することになる。具体的には、使用者は、用量ボタン6を押してピストンロッド7を用量送達方向に、そうして阻止要素10に対して最終位置まで動かすことを、全用量が送達される前に中止することになる。
【0058】
動作音を用量送達動作の終了を知らせるものとして使用者が解釈することを回避するために、相互作用機能11は、たとえば以下の文に記載のように、特別に設計することができる:
【0059】
A)一実施形態では(
図3参照)、それぞれの相互作用機能11は、厳密に1つの隆起30および厳密に1つの窪み31を備える。隆起30は、第1すなわち遠位のセクション20Aを備える。隆起30は、第2すなわち近位のセクション20Bを備える。第1のセクション20Aは、ピストンロッド7が阻止要素10に対して初期位置から最終位置の方へ動かされるときに、阻止要素10が最初に機械的に協働するセクションである。
【0060】
遠位セクション20Aは、ピストンロッド7の主縦軸xに対して傾いている。近位セクション20Bは、遠位セクションよりも傾きが小さい。第1のセクション20Aおよび第2のセクション20Bの外面は滑らかである。これは、送達動作中に阻止要素10が第1のセクション20Aおよび第2のセクション20Bと機械的に協働するときに発生する動作音を均質にする(たとえば低減する)助けになり得る。具体的には、隆起30の外面が非常に滑らかであるので、動作音は、ピストンロッド7が最終位置の方へ動いている間に阻止要素10が隆起30から窪み31に入るときだけもたらされる。
【0061】
送達動作中、ピストンロッド7は、上述のように初期位置から最終位置まで動かされる。それによって、最初は、遠位セクション20Aが阻止要素10と機械的に協働するようになる。具体的には、遠位セクション20Aは阻止要素10に沿って摺動する。それによって、阻止部材10は、ハウジング3に対して径方向外向きに偏向される。ピストンロッド7と、したがって相互作用機能11とがさらに遠位に動かされるとき、阻止要素10は遠位セクション20Aから近位セクション20Bまで進む。次に、阻止要素10は、近位セクション20Bを滑り降り、それによって、ピストンロッド7がさらに遠位に動かされるときに、ハウジング3に対して径方向内向きにますます緩和する。ピストンロッド7がさらに動くとき、阻止要素10は径方向外向きに完全に緩和して、第2のセクション20Bから窪み31に入る。阻止要素10が緩和するとき、上述のように、動作音が使用者に提供される。ピストンロッド7が最終位置にあるとき、阻止要素10は第2のセクション20Bから離れて配置されており、用量送達動作が完了する。
【0062】
ここで、使用者が、たとえばさらなる用量を設定するためにボタン6を近位に動かした場合、または使用者が意図せずにボタン6を引っ張った場合、ピストンロッド7は、阻止要素10が第2のセクション20Bと機械的に協働するようになるまで、近位方向にわずかに動かすことができるだけである。言い換えると、ピストンロッド7は、用量送達動作が完了した後の阻止要素10と第2のセクション20Bの間の距離に相当する距離しか近位に動かすことができない。阻止要素10と第2のセクション20Bが機械的に協働すると、ピストンロッド7は、用量送達方向と反対の方向に、すなわち用量設定方向に変位可能になることが防止される。言い換えると、阻止要素10と隆起30は、ピストンロッド7が用量設定方向に動かないように配置される。
【0063】
隆起30と窪み31の間の高さの差は、0.1mmより大きくすることができる。好ましくは、この高さの差は0.3mmよりも小さい。好ましくは、高さの差は0.2mmになる。隆起30と窪み31の間の高さの差は、0.1mmから0.3mmの間とすることができる。
【0064】
隆起30と窪み31の間の高さの差は、従来技術(
図5参照)により知られている相互作用機能11の隆起と窪みの間の高さの差よりも小さい。従来技術では、従来技術により知られている隆起と窪みの間の高さの差は0.3mmよりも大きい。従来技術では、高さの差は、たとえば0.5mmになる。
【0065】
言い換えると、
図3に示された隆起30と窪み31の間の高さの差は、従来技術(
図5)により知られている高さの差と比べて低減されている。このようにして、相互作用機能11と阻止要素10の機械的な協働により生じる動作音、具体的には、阻止要素10が隆起30から窪み31に入るときに生じる動作音は、均質に(たとえば最小限に)することができる。
【0066】
さらに、従来技術(
図5)では、窪みはアンダーカット11Bを備えていた。このアンダーカット11Bにより、阻止要素10が隆起から窪みの中にカチッと留められた。それによって、使用者が送達動作の終了を知らせるものと誤解しやすい動作音が作成された。
図3に示されるように、窪み31は、もはやアンダーカットを備えていない。むしろ、窪み31は傾斜している。具体的には、送達動作中に隆起から窪みに至る、阻止要素10の傾斜した移行部がある。阻止部材10が窪みに入るときに明瞭な動作音をもたらす可能性のある高さの急な変化は、このようにして防止することができる。むしろ阻止要素10は、隆起30から窪み31に滑り降りて入ることができる。阻止要素10が、窪み31の中にカチッと留まらないで滑り降りて窪み31に入るとき、もたらされる動作音が低減される。具体的には、阻止要素10は、動作音を生じさせることなく窪み31に滑って入ることができる。言い換えると、窪み31のこの特別な設計により、阻止要素10が隆起30から窪み31に入るときに生じる動作音を均質化(具体的には最小化)することができる。
【0067】
動作音は、相互作用機能11と阻止要素10の機械的な協働によって発生する動作音を使用者がほとんど認識できないか、またはもはや認識できないように最小化することができる。
【0068】
要するに、隆起30(詳細にはセクション20A、20B)が滑らかな外面を有し、阻止要素10が通るときに顕著な動作音を発生する別の構造を何も持たないという特徴と、隆起30と窪み31の間の高さの差が低減されているという特徴とには、従来技術のデバイスと比較して、使用者が動作音を送達動作の終了を知らせるものとしてもはや解釈しなくなるという効果がある。したがって、使用者が用量送達動作を顕著な動作音により中断するリスクが最小限になる。このようにして、使用者にやさしく安全な薬物送達デバイス1が提供される。
【0069】
隆起30と窪み31の間の低減された高さの差により、ピストンロッド7に対する阻止要素10の角度は、従来技術(
図5)により知られている阻止部材10の設計と比較して、低減することができる。これには、外側寸法が小さい(具体的には直径が小さい)デバイス1が得られるという利点があり得る。
【0070】
B)別の実施形態では(
図4参照)、相互作用機能11は複数の歯を備える。詳細には、相互作用機能11は、複数の隆起22、23および窪み31を備える。詳細には、相互作用機能11は、2つまたは3つ以上の隆起22、23、および2つまたは3つ以上の窪み31を備える。相互作用機能11は、ピストンロッド7の初期位置と最終位置の間の経路に沿って最後に設けられている1対の隆起23と窪み31を備える。このそれぞれの隆起23は、以下では最後または近位の隆起23と呼ばれる。最後の隆起23は鋸歯とすることができる。それぞれの窪み31は、以下では最後または近位の窪み31と呼ばれる。最後の隆起23および最後の窪み31は、阻止要素10に対するピストンロッド7の初期位置と最終位置の間の経路に沿って最後に設けられている。相互作用機能11は、近位の隆起23と比較してより遠位に配置されている1つまたは2つ以上の隆起22および窪み31を備える。これらの隆起22および窪み21は、以下では遠位の隆起22および遠位の窪み31と呼ばれる。用量送達中にピストンロッド7が動く方向に沿って見て、最後の窪み31の長さは、それぞれの遠位の窪み31の長さよりも長くすることができる。
【0071】
それぞれの隆起22、23は、第1すなわち遠位のセクション22A、23A、および第2すなわち近位のセクション22B、23Bを備える。それぞれの第1のセクション22A、23Aは、ピストンロッド7が初期位置から最終位置の方へ動かされるときに阻止要素10が、それぞれの第2のセクション22B、23Bと比較して、最初に機械的に協働するセクションである。それぞれの第1のセクション22A、23Aは、ピストンロッド7の主縦軸に対して傾いている。それぞれの第2のセクション22B、23Bは、それぞれの第1のセクション22A、23Bよりも傾きが小さい。それぞれの第2のセクション22B、23Bは、ピストンロッド7の主縦軸に対して垂直に伸びることができる。
【0072】
同じ相互作用機能11に属する2つの続いている隆起22、23の間の軸方向距離Dは、1つの相互作用機能11の最後の隆起23と、続いている送達動作中に阻止要素10が機械的に協働する、続いている相互作用機能に属する隆起22との間の距離Dよりも小さい。
【0073】
それぞれの隆起22、23は、ピストンロッド7の外面から0.3mm以上立ち上がっている。具体的には、それぞれの隆起22、23と相互作用機能11の窪み31との間の高さの差は0.3mm以上である。それぞれの隆起22、23と相互作用機能11の窪み31との間の高さの差は0.5mm以下とすることができる。たとえば、最後の隆起23と1つの窪み31の間の高さの差は0.5mmまで発生する。それぞれの隆起22、23と相互作用機能11の窪み31との間の高さの差は、たとえば0.3mmと0.5mmの間とすることができる。最後の隆起23と1つの窪み31の間の高さの差は、従来技術(
図5)により知られている相互作用機能11の隆起と窪みの間の高さの差と同様にすることができる。最後の隆起23と1つの窪み31の間の高さの差は、遠位の隆起22のうちの1つと1つの窪み31の間の高さの差よりも大きくすることができる。代替形態として(図示せず)、最後の隆起23と1つの窪み31の間の高さの差は、遠位の隆起22のうちの1つと1つの窪み31の間の高さの差と同様に(たとえば等しく)することができる。遠位の隆起22と1つの窪み31の間の高さの差は、たとえば0.4mmまで発生し得る。
【0074】
相互作用機能11との、すなわち相互作用機能11のそれぞれの隆起22、23および窪み31との、阻止要素10の機械的な協働を指して、実施形態Aと呼ぶ。
【0075】
しかし、この実施形態では、複数の隆起22、23および窪み31と阻止要素10の機械的な協働によって得られる動作音は、使用者に対する一連の触覚および/または可聴の信号を含む。具体的には、阻止要素10がそれぞれの隆起22、23から、続いている窪み31に入るときには、いつも動作音が発生する。それによって、阻止要素10が最後の隆起23から最後の窪み31に入るときに生じる動作音は、阻止要素10が遠位の隆起22から遠位の窪み31に入るときに生じる動作音と同様になり、好ましくは等しくなる。言い換えると、音の1つを送達動作の終了を知らせるものとして使用者が誤解することになる、使用者に特に顕著であるものが何もないように、すべての音を同じ音量とすることができる。
【0076】
それぞれの隆起22、23の外面は滑らかである。これは、送達動作中に阻止要素10が相互作用機能11と機械的に協働するときに発生する動作音を均質にする(たとえば低減する)助けになり得る。
【0077】
用量送達が完了した後、阻止要素10は、実施形態Aに関して説明したように、最後の隆起23の近位セクション23Bから離れたところに配置される。ここで用量ボタン6を近位に動かした場合、ピストンロッド7は、阻止要素10が第2のセクション23Bと機械的に協働するまで近位方向にわずかに動かすことができるだけである。阻止要素10と第2のセクション23Bが機械的に協働すると、ピストンロッド7は、用量設定動作でそれ以上変位可能になることが防止される。
【0078】
要するに、隆起22、23が滑らかな外面を有し、送達動作時に一連の動作音が得られるという特徴には、動作音が均質化されるという効果がある。それゆえに、使用者がどの音も用量送達動作の終了を知らせるものとして解釈しないので、使用者が送達動作を中断するリスクが最小限になる。このようにして、使用者にやさしく安全な薬物送達デバイス1が提供される。
【0079】
これまで説明した相互作用機能11の隆起および窪みが、従来技術(
図5)により知られている相互作用機能11と比較して数が増加したことにより、ピストンロッド7に対する阻止要素10の角度は、従来技術により知られている阻止要素10の設計と比較して、より急傾斜にならなければならない。さもなければ、阻止要素10は、それぞれの隆起22、23および窪み31と係合することができない。このことには、デバイス1の外径がより大きいことにより非常に簡単に取り扱うことができるデバイス1が得られるという利点があり得る。これは、把持する能力が低下した高齢の使用者に特に有益であり得る。
【0080】
もちろん、本明細書で説明した異なる実施形態の諸特徴を互いに組み合わせて、上記で説明しなかった別の実施形態を形成することが可能である。具体的に、たとえば異なる相互作用機能を得るには、一連の動作信号が得られる実施形態(実施形態B)と、動作音が最小限になる実施形態(実施形態B)とを組み合わせることができる。