特許第6235564号(P6235564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235564陽電子放出断層撮影における散乱された同時発生を用いた減衰マップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235564
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】陽電子放出断層撮影における散乱された同時発生を用いた減衰マップ
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01T1/161 A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-509532(P2015-509532)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-519555(P2015-519555A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】IB2013053181
(87)【国際公開番号】WO2013164731
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】61/642,730
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/661,455
(32)【優先日】2012年6月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ベルカー,ヤンニック
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,フォルクマー
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503570(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0059682(US,A1)
【文献】 特開2010−002235(JP,A)
【文献】 特開2003−294843(JP,A)
【文献】 特開2000−180550(JP,A)
【文献】 北村圭司、石川亮宏、水田哲郎、吉田英治、山谷泰賀,jPET-D4における各種データ補正法の開発,平成17年度次世代PET装置開発研究報告書,日本,独立行政法人放射線医学総合研究所,2006年 3月 1日,47-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161− 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真の同時発生イベントと散乱イベントを含んでいるイベントデータを生成する陽電子放出断層撮影(PET)スキャナであり、前記イベントデータは、応答系統(LOR)のそれぞれのエンドポイントとそれぞれのエンドポイントのエネルギを含む、陽電子放出断層撮影スキャナと、
一つまたはそれ以上のプロセッサであり、
前記真の同時発生イベントに基づいて、複数の活動マップと減衰マップのペアを生成し、かつ、
前記散乱イベントに基づいて、前記複数の活動と減衰マップのペアから一つの活動マップと一つの減衰マップを選択する、
ようにプログラムされているプロセッサと、
を含む、画像システム。
【請求項2】
前記一つまたはそれ以上のプロセッサは、さらに、
前記活動と減衰マップのペアのそれぞれに基づいて、少なくとも前記散乱イベントの分布をシミュレーションし、かつ、
散乱イベントの前記シミュレーションされた分布と記録された散乱イベントから構成された散乱イベントの記録された分布との間の比較に基づいて、前記活動と減衰マップのペアを選択する、ようにプログラムされている、
請求項1に記載の画像システム。
【請求項3】
前記一つまたはそれ以上のプロセッサは、さらに、
前記エンドポイントの位置に基づいて、散乱イベントの分布を減衰コンポーネントへと分割する、ようにプログラムされている、
請求項1または2に記載の画像システム。
【請求項4】
前記一つまたはそれ以上のプロセッサは、さらに、
前記真の同時発生イベントと前記選択された減衰マップ、または、前記選択された活動マップ、のうち少なくとも一つに基づいて、画像を再構成する、ようにプログラムされている、
請求項1乃至3いずれか一項に記載の画像システム。
【請求項5】
前記複数の活動マップと減衰マップのペアは、類似の分布である、
請求項1乃至4いずれか一項に記載の画像システム。
【請求項6】
前記分割は、活動の点光源としてのボクセルを含んでいる、
請求項3に記載の画像システム。
【請求項7】
前記散乱イベントの分布は、計算された偏向角度を含んでいる、
請求項2乃至6いずれか一項に記載の画像システム。
【請求項8】
前記散乱イベントの分布は、偏向角度のオフセットの発生頻度を含んでいる、
請求項2乃至7いずれか一項に記載の画像システム。
【請求項9】
散乱イベントは、190keVと509keVとの間のエネルギを含んでおり、応答系統(LOR)の偏向は、4.2°以上である、
請求項1乃至8いずれか一項に記載の画像システム。
【請求項10】
真の同時発生イベントと散乱イベントを含んでいるイベントデータを受け取るステップであり、前記イベントデータは、応答系統(LOR)のそれぞれのエンドポイントとそれぞれのエンドポイントのエネルギを含む、ステップと、
前記真の同時発生イベントに基づいて、複数の活動マップと減衰マップのペアを生成するステップと、
前記散乱イベントに基づいて、前記複数の活動と減衰マップのペアから一つの活動マップと一つの減衰マップを選択するステップと、
を含む、画像表示の方法。
【請求項11】
前記方法は、さらに、
前記活動と減衰マップのペアのそれぞれに基づいて、少なくとも前記散乱イベントの分布をシミュレーションするステップと、
散乱イベントの前記シミュレーションされた分布と記録された散乱イベントから構成された散乱イベントの記録された分布との間の比較に基づいて、前記活動と減衰マップのペアを選択するステップと、を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、さらに、
前記エンドポイントの位置に基づいて、散乱イベントの分布を減衰コンポーネントへと分割するステップと、を含む、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、さらに、
前記真の同時発生イベントと前記選択された減衰マップに基づいて、画像を再構成するステップと、を含む、
請求項10乃至12いずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
散乱イベントの分布は、計算された偏向角度を含んでいる、
請求項10乃至13いずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項10乃至14いずれか一項に記載の方法を実行するように、一つまたはそれ以上の電子データ処理デバイスをコントロールするソフトウェア、を運んでいる固定のコンピュータで読取り可能なストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には核医学画像に関する。より特定的に、本発明は、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)における減衰の見積りに関連するアプリケーションに関する。しかしながら、本発明は、また、他の利用シナリオにおけるアプリケーションに使用され、必ずしも上述のアプリケーションに限定されないことが理解されよう。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(PET)においては、放射性医薬品が患者に対して施される。放射性医薬品が崩壊において陽子を放出すると、陽子は近くの電子に衝突して、消滅イベントにおいてエネルギーに係る2つの光子を反対方向に放出する。光子は、およそ511keVのエネルギーである。放出された光子は、円周状に配置された検出器によって記録される。ほとんど同時に真の同時発生イベントが測定され、どこで光子が放出されたかを判断するために使用される。真の同時発生イベントに係る放出のパス(path)は、応答系統(line of response:LOR)と呼ばれている。飛行時間(time−of−flight:TOF)PETを用いて陽子のそれぞれの衝突の時間を使用することができ、放出された陽子の出所をポイントでより良く見積もるためにLORに沿った距離を計算する。放射性医薬品の崩壊によって放出された光子の量又は数量は、活動と呼ばれる。
【0003】
放射性医薬品は、癌の成長といった特定の代謝性活動に係る場所を特定するために施される。放射性医薬品は、ターゲットの代謝性活動の領域に集中する。放射性医薬品がターゲット領域において崩壊して光子が放出されると、放出された光子に基づいてターゲット領域の活動が測定され、PETシステムによって画像が再構成される。再構成された画像は、放射性医薬品の測定された活動によってコントラスト(contrast)された、特定の代謝性活動の領域を示している。
【0004】
しかしながら、いくらかの放出された光子は吸収されてしまう。減衰は、検出される以前に通らなければならない材料または物質に基づいて吸収される光子を含んでいる。光子は、吸収されるか、されないかのいずれかである。より密度の濃い材料は、より大きな減衰を有し、より多くの光子を吸収する。検出器に衝突する光子の測定においては、活動と減衰の両方が主要な変数である。多くの減衰を伴う大量の活動は、測定において、より少ない減衰を伴うより小さな活動と同様に見える。
【0005】
減衰補正は、いくつかのシステムにおいてX線コンピュータトモグラフィ(CT)を通じて扱われている。いくつかのシステムは、組み合わせ又はハイブリッドシステムである。CT画像の輝度は減衰と強く相関しているので、CTシステムは減衰補正に対して役に立つ。例えば、骨は、輝度において非常に明るくて濃い。骨は、より大きな減衰を有している。しかしながら、複数のスタンドアロンのPETシステムが存在しており、磁気共鳴(MR)画像とPET画像の組み合わせについて、より大きな興味がある。CTを含まないものである。
【0006】
スタンドアロンのPETシステムを用いた減衰補正は、最尤推定期待値最大化法(Maximum Likelihood Expectation Maximization:MLEM)及び活動と減衰の最尤再構成(Maximum−Likelihood of Activity and Attenuation:MLAA)といったアルゴリズムを含んでいる。これらの技術は、測定された陽子放出に係る真の同時発生を使用し、活動と減衰の組み合わせの反復を使用して、活動と減衰の両方を見積るユニークな解法に集中するように努めている。これらの技術は、時々、制限され追加の外部情報を必要とする。例えば、頭といった、円周状に対称な減衰が存在する場合、真の同時発生イベントは、活動と減衰との間の相違を識別するための情報を提供しない。
【0007】
いくつかの放射された光子は、偏向され、または、コンプトン(Compton)散乱される。光子が散乱されると、偏向の角度に基づいて、光子はエネルギを失う。典型的なPETシステムにおいて、散乱された光子は、単純に除外される。例えば、511keV光子の測定された衝突は、第1の光子を確立する。450keVの第2の光子に係るほとんど同時発生の衝突は、対応する、しかし散乱された光子を示している。ほとんどのPETにおいて、2つのイベントは、さらなる処理から除外される。いくつかのPETシステムにおいては、エネルギが論理的な511keVに近い場合、LORの軌跡には不確定性が存在する。イベントが511keVに十分近い場合、LORは、感度を改善するために、再構成において使用される。他には、511keVからさらに離れたエネルギをもつ散乱された光子は、捨てられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以降は、散乱された同時発生に基づいた新規で改善された減衰マップを開示する。上記に参照された問題又は他のものを取り扱うものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様に従って、画像システムは、陽電子放出断層撮影(PET)スキャナと一つまたはそれ以上のプロセッサを含んでいる。PETスキャナは、真の同時発生イベントと散乱イベントを含むイベントデータを生成し、イベントデータは、応答系統(LOR)のそれぞれのエンドポイントと、それぞれのエンドポイントのエネルギを含んでいる。一つまたはそれ以上のプロセッサは、真の同時発生イベントに基づいて、複数の活動マップと減衰マップのペアを生成し、複数の活動マップと減衰マップのペアから散乱イベントに基づいて一つの活動マップと一つの減衰マップを選択するようにプログラムされている。
【0010】
別の態様に従って、画像に係る方法は、真の同時発生イベントと散乱イベントを含むイベントデータを受け取るステップを含んでおり、イベントデータは、応答系統(LOR)のそれぞれのエンドポイントと、それぞれのエンドポイントのエネルギを含んでいる。真の同時発生イベントに基づいて、複数の活動マップと減衰マップのペアが生成される。散乱イベントに基づいて、複数の活動マップと減衰マップのペアから一つの活動マップと一つの減衰マップが選択される。
【0011】
別の態様に従って、画像処理システムは、陽電子放出断層撮影(PET)イベントデータのリストと、一つまたはそれ以上のプロセッサを含んでいる。PETイベントデータのリストは、複数の散乱されていない同時発生イベントと散乱された同時発生イベントを含んでおり、かつ、イベントデータは、エンドポイントとそれぞれのイベントのエネルギを含んでいる。一つまたはそれ以上のプロセッサは、散乱イベントから減衰マップを生成するようにプログラムされている。一つまたはそれ以上のプロセッサは、さらに、同時発生イベントと生成された減衰マップに基づいて、画像を再構成するようにプログラムされている。
【0012】
一つの利点は、PET情報を使用して見積られた減衰マップにある。
【0013】
別の利点は、既存のPETの使用の容易さを含んでいる。
【0014】
別の利点は、既存のハードウェアを用いて収集され得る情報を使用することにある。
【0015】
さらなる利点が、以降の詳細な説明を読んで理解することで、当業者に対して正しく理解されよう。
【0016】
本発明は、種々のコンポーネントとコンポーネントの構成、および、種々のステップとステップの構成の形式であってよい。図面は、好適な実施例を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、PETスキャナにおける対称的な画像シェルに係る一つの実施例を示している。
図2図2は、散乱イベントに基づいて減衰を見積るPETシステムに係る一つの実施例を示している。
図3図3は、種々の対称的なシェルの実施例について散乱イベントの分布を模式的に示している。
図4図4は、散乱イベントに基づいて減衰を見積る実施例を使用した一つの方法のフローチャートである。
図5図5は、散乱だけに基づいて減衰を生成する実施例を使用した一つの方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、PETスキャナにおける対称的な画像シェル10に係る一つの実施例が模式的に示されている。シェルは、検出器表面12の中、または、PETスキャナのボアの中に配置されている。画像シェル10の中心には、放射性医薬品14の点光源が置かれている。放射性医薬品が放射線を発し、放射線が材料に衝突すると、消滅イベントが発生する。消滅イベントは、511keVのガンマ光子を2つ生じ、光子は反対方向に放出される。真の同時発生イベントとは、光子が検出器表面12に向かって反対方向に妨げられることなく進行し、2つのエンドポイント16、18を確立するものである。真のイベントに対する応答系統は、エンドポイント間の直線である。
【0019】
均一な密度と厚みのシェルが存在すると、減衰と散乱が生じる。いくつかの光子が吸収され、検出器への衝突回数または記録イベントの回数が減少する。活動は、光源によって光子が放射される際に測定される崩壊の量である。減衰は、イベントの記録された量を減じるように動作する。光子が検出器に到達しないからである。対称的な画像シェルに対して、記録された光子フラックス(flux)は、半径状に対称であり、A・e(−μ・d)に比例している。ここで、Aは点光源における活動であり、μは線形減衰係数であり、dはシェルの厚さである。不感時間効果(dead time effect)のために、真の同時発生レートは、シェルの半径と共にわずかに変化する。変化は、例えば、単調であり、かつ、統計的な変動のレベルを顕著に上回るものである。この項は、シェルの半径を含んでいないので、シェルを、PETシステムのボアの中のどこにでも配置することができる。そして、真(511keV)のイベントだけを用いて、活動と減衰の所定のペアを区別することができる。例えば、シェルの内側のあらゆる半径に対して、そして、任意のスケールパラメータα>0に対して、(A、μ、d)と(A、μ*α、d/α)の分布を区別することができない。より大まかに言えば、同一の減衰パスの積である∫μ(s)ds、sはLORに沿ったパラメータであって全ての測定されたLORに沿った(A、μ、d)としてのもの、を生じている全ての減衰分布は、認識することができない。この状況は、減衰自己クロストークと呼ばれる。さらに、(A、μ、d)と(A*e((αー1)*μ*d、μ*α、d)も認識可能ではない。後者は、活動と減衰との間のクロストークと呼ばれるもので、医療事例において理解され観察されてきており、活動または減衰のいずれかにおいて定数の既知でないオフセットについて解かれている。減衰自己クロストーク及び活動と減衰との間のクロストークは、散乱イベントに係る量、分布、および、特性を使用して解かれる。
【0020】
散乱イベント22は、光子が、シェルといった材料に衝突して、エネルギ損失を伴って角度24で偏向された場合に生じる。オリジナルの放出パス18に沿ってエンドポイントに衝突する代わりに、光子は、偏向されて異なるエンドポイント26に衝突する。記録されたエンドポイント16、26は、応答系統(LOR)28を形成する。LOR角度30は、オリジナルの進行ライン20と記録されたエンドポイントとの間の角度として算出される。イベントは、散乱されたものとして知られている。変更された光子のエンドポイント26において記録されたエネルギが、508keVまたはそれ以下といった、511keVより小さいからである。
【0021】
図2は、散乱イベントに基づいて減衰を見積るPETシステム36に係る一つの実施例を模式的に示している。システムは、PETスキャナ38を含んでいる。PETスキャナ38は、患者を受け入れる円環体形状の開口部40またはボアを有している。患者は、ベットまたはカウチといった患者サポート43によって支持されている。放射性医薬品が患者に施され、患者は、スキャナの開口部40またはボアの中に置かれる。開口部またはボアには、患者から放出される光子を検出する検出器42が並んでいる。PETスキャナは、同時発生プロセッサ44を含んでいる。それぞれの光子が検出器に衝突すると、同時発生プロセッサ44は、衝突の時間、エネルギ、そして場所をメモリの中に記録する。記録された衝突のリストは、メモリの中に、例えば、リストモードで、保管される。同時発生プロセッサは、散乱イベントと散乱されていないイベントがを特定するために、メモリに対して時間及びエネルギのゲーティングまたはフィルタリングを提供することができる。散乱イベントは、メモリの中に含まれている。例えば、190keVから509keVの間のエネルギをもったイベントを含んでおり、およそ511keVの別の衝突とペアにされたイベントは、散乱されたLORを含んでいる。エネルギ感度または検出器によるエネルギ損失は、ゲーティングパラメータにおいて調節される。別のゲーティングパラメータは、4.2°より大きいか等しいといった、LOR角度を含み得る。スキャナとメモリは、イベントデータの保管と検索のためにネットワーク48に接続されている。ストレージは、ソフトウェアストレージおよび画像ストレージを含んでよい。
【0022】
システムは、ワークステーション50を含んでいる。ワークステーション50は、ネットワーク48に接続されている。ワークステーション50は、電子プロセッサまたは電子プロセッサデバイス52、少なくとも一つの入力デバイス54、および、マップ、画像、メニュー、そして、ユーザコントロールを表示するディスプレイ56を含んでいる。ワークステーション50は、コンピュータアレイ、アレイプロセッサ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、タブレット、モバイルコンピューティングデバイス、スマートフォン、および類似のもの、を含み得る。入力デバイスはキーボード、マウス、マイクロフォン、および類似のもの、であってよい。
【0023】
活動と減衰マップ発生器58は、イベントデータを入力して、活動マップと減衰マップのペアを生成する。ペアは、イベントデータに基づいた類似の分布を含んでよい。活動と減衰マップ発生器は、真の散乱されていない同時発生ペアに対するイベントデータをフィルタして、マップのペアを生成する。アルゴリズムは、MLAA、MLEM、等を含み得る。
【0024】
代替的な実施例において、活動と減衰マップ発生器58は、散乱だけから直接的に減衰マップを生成する。それぞれのLORに対して、クライン−ニシナの公式(Klein−Nishina formula)または、XCOMといった散乱クロスセクションデータベースを使用して、散乱された光子のエネルギに基づいてコンプトン角度が算出される。LORおよびコンプトン角度のエンドポイントから、可能な散乱ポイントに係る表面が計算される。エネルギが既知である限り、それぞれの可能な散乱ポイントは、LORエンドポイントを通る円弧のファミリ上に置かれる。エネルギ値におけるいくらかの不確実性を伴って、可能な散乱ポイントの表面は、可能な散乱ポイントのボリュームになっている。幾何学的な考察と他の先天的な情報からそれぞれの散乱ポイントの可能性が計算される。逆投射のステップにおいて、全てのLORに係る貢献の可能性が合計される。それぞれのLORは、再び、クラインーニシナの公式と幾何学的情報に基づいて、重み付けされ得る。任意的なフィルタリングは、減衰マップを生成するために、フィルタされた逆投射(FBP)におけるアプローチといったものをフォローすることができる。散乱イベントと同様に散乱されていないイベントを使用することも、また、考えられる。
【0025】
シミュレータ60は、複数のマップペアを入力し、それぞれのマップペアを生成することができた散乱イベント(シミュレーションされたリストモードデータ)の分布をシミュレーションする。散乱イベントのシミュレーションされた分布は、比較器62によって、リストモードメモリからの散乱イベントに係る実際の分布と比較される。比較器は、代替的に、点光源としてのそれぞれのボクセルといったものにより、分布を組成コンポーネントに分解することができる。分布は、最も合う活動と減衰マップのペアを選択するために、最小二乗法に基づいて実際の分布と比較され得る。散乱イベントに基づいた活動と減衰マップのペアの選択は、類似の分布を含んでいる生成されたペア間のクロストークまたは自己クロストークを解決する。
【0026】
再構成ユニット64は、選択された減衰マップとイベントとデータに基づいて、一つまたはそれ以上のマップを再構成する。散乱だけから減衰マップを直接に生成する実施例において、生成された減衰マップは選択された減衰マップである。イベントデータは、散乱イベントを取り除くようにフィルタされ、真の同時発生LORを再構成において入力する。選択された減衰マップは、再構成の最中に減衰補正を提供する。代替的に、活動マップは、患者の中の放射性医薬品または代謝性活動の存在を表わす一つまたはそれ以上の画像として再構成され得る。
【0027】
同時発生プロセッサ44、活動と減衰マップ生成器58、シミュレータ60、比較器62、および、再構成ユニット64は、一つまたはそれ以上の電子データ処理デバイス、または、ネットワーク48によりワークステーション50と動作可能に接続されたネットワークベースのサーバーコンピュータ、または、類似のものによって、好適に具現化される。さらに、開示された活動と減衰マップ生成および選択技術は、電子データ処理デバイスによって読取り可能であり、電子データ処理デバイスによって実行可能なインストラクション(例えば、ソフトウェア)を保管している固定のストレージ媒体を使用して好適に実施され、開示された活動と減衰マップの生成および選択技術を実行する。
【0028】
「コンピュータで読取り可能なストレージ媒体」は、ここにおいて使用されるように、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行可能なインストラクションを保管することができるあらゆる有形のストレージ媒体を含んでいる。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体は、コンピュータで読取り可能な固定ストレージ媒体として参照されてよい。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体は、また、固定のコンピュータで読取り可能な媒体として参照されてもよい。いくつかの実施例において、コンピュータで読取り可能なストレージ媒体は、また、コンピューティングデバイスのプロセッサによってアクセスし得るデータを保管することもできる。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体の実施例は、これらに限定されるわけではないが、以下のものを含んでいる。フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、半導体ハードドライブ、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、および、プロセッサのレジスタファイル、である。光ディスクの実施例は、コンパクトディスク(CD)およびデジタル多目的ディスク(DVD)を含んでいる。例えば、CD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RW、または、DVD−Rディスクである。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体という用語は、また、ネットワークまたは通信リンクを介してコンピュータデバイスによってアクセスされ得る種々のタイプの記録媒体も参照する。例えば、データは、モデム、インターネット、または、ローカルエリアネットワークにわたり、リトリーブされてよい。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体に対する参照は、おそらく複数のコンピュータで読取り可能なストレージ媒体として解釈されるべきである。プログラムに係る種々の実行可能なコンポーネントは、異なる場所に保管されてよい。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体は、例えば、同一のコンピュータシステムの中の複数のコンピュータで読取り可能なストレージ媒体であってよい。コンピュータで読取り可能なストレージ媒体は、また、複数のコンピュータシステムまたはコンピューティングデバイスの中に分散されたコンピュータで読取り可能なストレージ媒体であってよい。
【0029】
「メモリ」は、コンピュータで読取り可能なストレージ媒体の一つの実施例である。コンピュータメモリは、プロセッサに対して直接的にアクセス可能なあらゆるメモリである。コンピュータメモリの実施例は、これらに限定されるわけではないが、RAMメモリ、レジスタ、および、レジスタファイル、を含んでいる。「コンピュータメモリ」または「メモリ」に対する参照は、おそらく複数のメモリであるものとして解釈されるべきである。メモリは、例えば、同一のコンピュータシステムの中の複数のメモリであってよい。メモリは、また、複数のコンピュータシステムまたはコンピューティングデバイスの中に分散された複数のメモリであってよい。
【0030】
「コンピュータストレージ」または「ストレージ」は、コンピュータで読取り可能なストレージ媒体の一つの実施例である。コンピュータストレージは、あらゆる不揮発性のコンピュータで読取り可能なストレージ媒体であってよい。コンピュータストレージの実施例は、これらに限定されるわけではないが、以下のものを含んでいる。ハードディスクドライブ、USBサムドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、スマートカード、DVD、CD−ROM、および、半導体ハードドライブ、である。いくつかの実施例において、コンピュータストレージは、また、コンピュータメモリであってよく、または、その逆も同様である。「コンピュータストレージ」または「ストレージ」に対する参照は、おそらく複数のストレージであるものとして解釈されるべきである。ストレージは、例えば、同一のコンピュータシステムの中の複数のストレージであってよい。ストレージは、また、複数のコンピュータシステムまたはコンピューティングデバイスの中に分散された複数のストレージであってよい。
【0031】
「プロセッサ」は、ここにおいて使用されるように、プログラムまたはマシンで実行可能なインストラクションを実行することができる電子的コンポーネントを含んでいる。「プロセッサ」を含んでいるコンピューティングデバイスに対する参照は、おそらく一つまたはそれ以上のプロセッサまたはプロセッサコアを含んでいるものとして解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってよい。プロセッサは、また、複数のコンピュータシステムの中の単一のコンピュータシステムまたは分散コンピュータシステムの集合を参照してよい。コンピューティングデバイスという用語は、それぞれがプロセッサを含んでいるコンピューティングデバイスの集合またはネットワークをおそらく参照するものと解釈されてもよい。多くのプログラムは、同一のコンピューティングデバイスまたは複数のコンピューティングデバイスにわたり分散されたものの中にある複数のプロセッサに、インスタンスを実行させる。
【0032】
「ディスプレイ」または「ディスプレイ装置」は、ここにおいて使用されるように、画像またはデータを表示するように適合された出力デバイスまたはユーザインターフェイスを含んでいる。ディスプレイは、視覚、聴覚、及び/又は、触覚データを出力し得る。ディスプレイの実施例は、これらに限定されるわけではないが、以下のものを含んでいる。コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチ画面、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、ブラウン管(CRT)、ストレージ管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、蛍光表示管(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセントディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、および、ヘッドマウントディスプレイ、である。
【0033】
図3は、種々の対称的なシェルの実施例について散乱イベントの分布を模式的に示している。それぞれのヒストグラムは、5cmから40cmまで5cmのステップの半径をもつ約10cmの均一な厚みであるシェルに対する散乱イベントの分布である。真の同時発生イベントに関して、活動と減衰マップは、シェルサイズ間の相違を識別しない。しかしながら、散乱イベントに関して、分布は、複数の可能性のある活動と減衰マップのペアの中で、シェルサイズを判断または区別するために使用することができる。
【0034】
ヒストグラムの分布における相違は、散乱イベントがどのように自己クロストークを解決するための追加の情報を提供するかを説明している。類似の代替的な構成は、点光源の活動および全てのLORに沿った経路積分といった減衰の両方を変化させることによって、活動と減衰のクロストークをどのように解決するかを説明することができる。第1のヒストグラムは、小さなシェル(r=5cm)に対する散乱イベントの分布を含んでいる。分布は、120秒といった同一の取得時間に対して収集された複数のLOR角度にわたり記録されたエネルギレベルに基づいて、示されている。小さなシェルは、LOR角度の増加につれてより緩やかになるスロープを伴う、より幅広い分布を示している。シェルサイズが増加すると、分布は、LOR角度の増加につれてより険しくなるスロープを伴って、幅がより狭くなる。散乱イベントの実際の分布に基づいて、分布は、真の同時発生イベントに基づき生成された活動と減衰マップのペア間のクロストークおよび自己クロストークの曖昧性を解決するための情報を提供する。
【0035】
図4は、散乱イベントに基づいて減衰を見積る実施例を使用した一つの方法のフローチャートである。ステップ70において、イベントデータが取得される。患者は、放射性医薬品を施され、患者サポート上でスキャナのボアまたは開口部の中に配置される。放射性医薬品が崩壊する際に、陽子が放出され、そして、陽子は、消滅イベントを引き起こして、光子ペアが放出される。放出された光子は、衝突の際に、検出器によって記録される。検出器が衝突を検出すると、イベントペアとそれぞれのイベントのエネルギが、リストモードのメモリの中に、同時発生プロセッサによって記録される。同時発生プロセッサは、リストモードのメモリの中に、散乱イベントと真の同時発生イベントを含んでいる。
【0036】
活動と減衰マップ生成器は、リストモードのメモリからリストモードデータを受け取り、ステップ72において、複数の活動マップと減衰マップのペアを生成する。ペアは、MLAA、MLEM、等といった、アルゴリズムを使用して生成され得る。アルゴリズムは、リストモードのメモリからフィルタされた真の同時発生イベントを使用する。
【0037】
ステップ74において、シミュレータは、複数の活動と減衰マップのペアに基づいて、散乱イベントに係る一つまたはそれ以上の分布をシミュレーションする(例えば、モンテカルロシミュレーション)。存在する場合、飛行時間(TOF)は追加の情報を提供することができる。情報は、散乱イベントの分布からの情報を補足することができ、または、シミュレーションの量を削減するために使用される。シミュレーションされた散乱イベントの分布は、リストモードデータからフィルタされた散乱イベントの実際の分布と比較またはフィットされ、ステップ76において、最も合う活動マップと減衰マップが選択される。選択プロセスは、クロストークおよび自己クロストークの問題を解決し、生成された活動と減衰マップのペアに対する収束性の解決策を提供する。
【0038】
ステップ78において、再構成ユニットによって一つまたはそれ以上の画像が再構成される。再構成ユニットは、一つまたはそれ以上の画像を再構成するために、フィルタされた真の同時発生イベントと選択された減衰マップを使用する。代替的に、再構成ユニットは、選択された活動と減衰マップのペアに係る活動マップから再構成することができる。一つまたはそれ以上の画像は、ワークステーションのディスプレイ56または他のディスプレイ上に表示される。
【0039】
図5を参照すると、別の実施例においては、散乱だけに基づいて減衰マップが生成される。ステップ80において、それぞれのLORに対して、クライン−ニシナの公式、または、XCOMといった散乱されたクロスセクションのデータベースを使用して、散乱された光子のエネルギからコンプトン角度が計算される。ステップ82において、LORのエンドポイントとコンプトン角度から、可能な散乱ポイントに係る表面が計算される。エネルギが既知である限り、それぞれの可能な散乱ポイントは、LORエンドポイントを通る円弧のファミリ上に置かれる。エネルギ値におけるいくらかの不確実性を伴って、可能な散乱ポイントの表面は、可能な散乱ポイントのボリュームになっている。ステップ84において、幾何学的な考察と他の先天的な情報からそれぞれの散乱ポイントの可能性が計算される。それぞれのLORは、再び、クラインーニシナの公式と幾何学的情報に基づいて、重み付けされ得る。ステップ86において、フィルタされた逆投射(FBP)におけるアプローチといった、それぞれのLORに対する可能な分布に対して、フィルタリングと逆投射が適用されて、減衰マップと画像が生成される。散乱と同様に、散乱されていないイベントの使用も考えられる。
【0040】
全てのイベントからの減衰補正された画像再構成は、散乱補正及び類似のものを含んでいる、真のもの及び光電ピーク散乱からの標準の画像再構成を含み得るが、追加の散乱イベントを合体してもよい。
【0041】
ここにおいて提示された説明的な実施例に関して、所定の構成及び/又は機能の特徴が、定められたエレメント及び/又はコンポーネントの中に組み入れられているものとして記述されていることが正しく理解されるべきである。しかしながら、これらの特徴は、また、同一または類似の利点に対して、好適な他のエレメント及び/又はコンポーネントの中に同様に組み込まれているものと考えられる。所望のアプリケーションに対して適切な他の代替的な実施例を達成するために、典型的な実施例に係る異なる態様が、好適であるとして選択的に使用され得ることも正しく理解されるべきである。態様に係るそれぞれの利点をそれによって実現する他の代替的な実施例は、その中に組み込まれている。
【0042】
ここにおいて説明された所定のエレメントまたはコンポーネントは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または、それらの組み合わせを介して、その機能性を好適に実施させ得ることも、正しく理解されるべきである。加えて、一緒に組み込まれているものとしてここにおいて説明された所定のエレメントは、好適な環境下において、スタンドアロンなエレメントであるか、そうでなければ、分割されることが正しく理解されるべきである。同様に、一つの所定のエレメントによって実行されるものとして説明された複数の所定の機能性は、個々の機能性を個別に実行するように動作する複数の別個のエレメントによって実行されてよい。または、所定の個々の機能性は、分割され、協調している複数の別個のエレメントによって実行されてよい。代替的に、そうでなければ、ここにおいて、お互いに別個のものとして説明及び/又は示される、いくつかのエレメントまたはコンポーネントは、物理的または機能的に好適に組み合わされてよい。
【0043】
つまり、本発明の仕様は、好ましい実施例に関して明らかにされてきた。本発明の明細書を読んで理解すれば、他人に対して変形および代替が生じるのが明らかである。全てのこうした変形および代替は、それが添付の特許請求の範囲内にあるか、それらの均等物である限り、本発明に含まれるものとして理解されるべきである。つまり、上記に開示された種々のもの、他の特徴と機能性、または、それらの代替は、多くの他の異なるシステムまたはアプリケーションの中に望ましくは結合されてよいことが正しく理解されるべきである。そして、また、種々の現在では予見できない、もしくは、予期しない代替、変形、変化、または、改善が、当業者によって後に行われ、同様に、以降の特許請求の範囲によって包含されるように意図されていることも、正しく理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5