特許第6235573号(P6235573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235573ヒートエンジンと電気的コンプレッサとを備えるアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235573
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ヒートエンジンと電気的コンプレッサとを備えるアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/05 20160101AFI20171113BHJP
   F02M 25/06 20160101ALI20171113BHJP
   F02M 26/08 20160101ALI20171113BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20171113BHJP
   F02B 33/34 20060101ALI20171113BHJP
   F02B 37/04 20060101ALI20171113BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F02M26/05
   F02M25/06
   F02M26/08
   F02B37/00 301F
   F02B37/00 302F
   F02B33/34
   F02B37/04 C
   F02B37/16 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-516660(P2015-516660)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公表番号】特表2015-523493(P2015-523493A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】FR2013051294
(87)【国際公開番号】WO2013186464
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】1255415
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508021716
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176603
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 允史
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン、ポトー
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン、ラムザイヤー
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209784(JP,A)
【文献】 特開2009−222007(JP,A)
【文献】 特開2011−058401(JP,A)
【文献】 特開2002−339757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/05
F02B 33/34
F02B 37/00
F02B 37/04
F02B 37/16
F02M 25/06
F02M 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 空気入口(11)とヒートエンジン(2)の入口に接続される出口との間で延びる吸気回路(4)と、
− 前記ヒートエンジン(2)の出口に接続される入口と排ガス出口(13)との間で延びる排気回路(6)と、
− 前記ヒートエンジン(2)と、
− 前記排気回路(6)内の排ガスの全てあるいは一部を前記ヒートエンジン(2)の上流側に再導入できるようにする戻しループ(22)と、
− 電気的コンプレッサ(30)と、
を備えるアセンブリ(1)であって、
前記電気的コンプレッサ(30)は、前記戻しループ(22)を通って再循環するガスを受け入れることができるように前記アセンブリ(1)内に配置されると共に、前記吸気回路(4)内に配置され、
前記戻しループ(22)は、
− 前記電気的コンプレッサ(30)の上流側で前記吸気回路(4)に通じる第1の出口部(44)と、
− 前記電気的コンプレッサ(30)の下流側、且つ、前記ヒートエンジン(2)の燃焼室へとガスを流入させるマニホールドの上流側で、前記吸気回路(4)に通じる第2の出口部(45)と、
を有し、
前記吸気回路(4)が機械的コンプレッサ(9)を含み、前記排気回路(6)がタービン(20)を含み、前記戻しループ(22)は、前記タービンの下流側に入口(24)を有するとともに、前記機械的コンプレッサ(9)の上流側に前記出口部(44,45)を有する、アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記戻しループ(22)の前記第1の出口部(44)および前記第2の出口部(45)がこの戻しループ(22)の唯一の出口部である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記吸気回路(4)は、前記電気的コンプレッサ(30)の上流側で始まって前記電気的コンプレッサ(30)の下流側に通じるバイパス分岐部(40)を含む、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記戻しループ(22)内で再循環するガスを前記ループ(22)の前記第1の出口部(44)または前記第2の出口部(45)へと向かわせるように構成されたバルブのシステム(46,48)を備える、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記バルブのシステム(46,48)は、前記吸気回路(4)の前記入口(11)から生じるガスを前記バイパス分岐部(40)へとあるいは前記電気的コンプレッサ(30)へと向かわせるようにも構成される、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のアセンブリ(1)を制御するための方法であって、過渡段階中に、前記電気的コンプレッサ(30)は、前記戻しループ(22)内で再循環するガスの全てあるいは一部を圧縮するように作動されて使用される、方法。
【請求項7】
前記電気的コンプレッサ(30)は、前記吸気回路(4)の前記入口(11)から生じるガスも受け入れ、さらに、前記電気的コンプレッサ(30)は、前記ガスも圧縮する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記過渡段階の後に定常状態段階が続き、前記定常状態段階において、前記アセンブリ(1)は、前記戻しループ(22)内で再循環するガスまたは前記吸気回路(4)の前記入口(11)から生じるガスが前記電気的コンプレッサ(30)に供給されないように制御される、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記定常状態段階中に前記電気的コンプレッサ(30)の動作が停止される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記電気的コンプレッサ(30)が可変リラクタンスモータにより駆動される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ヒートエンジンと電気的コンプレッサとを備えるアセンブリ、および、特に過渡段階中におけるこのアセンブリの制御である。このアセンブリは、車両内に搭載支持されてもよい。
【0002】
本発明が意図する範囲内で、過渡段階は、その最中にエンジントルク設定点が一定である定常状態段階とは対照的に、その最中にエンジントルク設定点が増大する段階である。
【背景技術】
【0003】
空気入口とヒートエンジンの入口に接続される出口との間で延びる吸気回路と、ヒートエンジンと、ヒートエンジンの出口に接続される入口と排ガス出口との間で延びる排気回路と、排気回路内の排ガスの全てあるいは一部をヒートエンジンの上流側に再導入できるようにする戻しループとを備えるアセンブリを使用することは、車両における既知の手法である。
【0004】
戻しループは、一般に、排気回路内に位置する当該戻しループの入口がタービンの下流側にあり、且つ、吸気回路内に位置する当該戻しループの出口が吸気回路内に配置される機械的コンプレッサの上流側にあるように配置される。この配置のため、戻しループはLP(「低圧(low pressure)」を表わす)戻しループと称される。
【0005】
本出願の全体にわたって、用語「上流側」および「下流側」は、ガスがアセンブリを通じて流れる方向に関して規定される。
【0006】
そのようなLP戻しループを伴うアセンブリは、エンジンが戻しループを通じて再循環するガスのレベル(より一般的には、EGRのレベルと称される)を確保できることから、多くの利点を与える。前記ガスのレベルは、特に低速および高負荷でエンジンの動作範囲にわたって満足される。
【0007】
それにもかかわらず、そのようなLP戻しループは、この戻しループを通じて再循環するガスによって辿られるべき経路の長さに関して、および、以下で「新鮮な空気」とも称される吸気回路の入口から生じるガスと戻しループ内で再循環されたガスとの割合を測定することに関して、不都合を有する。これらの不都合は、高負荷での過渡段階、および、戻しループ内に位置されるバルブを開放してガスを前記ループを通じて再循環させた後の段階における動作にあまりうまく適さない。
【0008】
排気回路内におけるその入口がタービンの上流側にあり且つ吸気回路内におけるその出口が機械的コンプレッサの下流側にあるHP(「高圧(high pressure)」を表わす)戻しループとも称される戻しループの使用は、このループを通じて再循環するガスが辿らなければならない経路の長さを減らすことができるようにするが、他の不都合をもたらす。
【0009】
負荷下での加速段階またはその最中に排ガスがアセンブリの戻しループ内で再循環される段階などの過渡段階中であってもヒートエンジン内の排ガスの満足できる再循環を可能にするアセンブリの利点を享受する必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的はこの要求を満たすことであり、また、本発明は、その態様のうちの1つによれば、
− 空気入口とヒートエンジンの入口に接続される出口との間で延びる吸気回路と、
− ヒートエンジンの出口に接続される入口と排ガス出口との間で延びる排気回路と、
− 前記ヒートエンジンと、
− 排気回路内の排ガスの全てあるいは一部をヒートエンジンの上流側に再導入できるようにする戻しループと、
− 電気的コンプレッサと、
を備え、
電気的コンプレッサが、戻しループを通じて再循環するガスを受け入れることができるようにアセンブリ内に位置される、
アセンブリを使用して、前記要求を達成する。
【0011】
電気的コンプレッサは、戻しループを通じて再循環するガスの全てあるいは一部を圧縮できるようにする。電気的コンプレッサが動作中のとき、電気的コンプレッサは、戻しループを通じた排ガスの経路をこれらのガスを吸引することによって加速してもよい。したがって、電気的コンプレッサは、過渡段階中にヒートエンジンを通じて再循環されるガス(またはEGR)の割合を、これらのガスがエンジン内へ再導入されるまでにこれらのガスをエンジンの出口からエンジン内へ移動させるために要する時間を減らすことによって、高めることができるようにしてもよい。
【0012】
過渡段階の開始直後から得られるEGRの割合により、エンジンは、ノッキング/ピンギングから保護され得ると同時に、所望の性能が動的に確保される。
【0013】
得られるアセンブリは、更に、相対的に小型である。
【0014】
電気的コンプレッサは、例えば、2〜5kWあるいは更には50kW程度の公称電力を有する電気モータによって駆動される。
【0015】
電気的コンプレッサを駆動する電気モータは、可変リラクタンスモータであってもよい。
【0016】
ヒートエンジンは内燃ヒートエンジンであってもよい。ヒートエンジンは、例えば、ガソリンエンジン、または、ディーゼルエンジンである。別の例としては、ヒートエンジンが多種燃料エンジンである。エンジンが別の燃料(エタノール、LPG、NGVガス)で動いてもよい。
【0017】
吸気回路が機械的コンプレッサを備えてもよく、排気回路がタービンを備えてもよく、戻しループは、タービンの下流側の排気回路に入口を有するとともに、機械的コンプレッサの上流側の吸気回路に出口を有する。このとき、戻しループは、前述したように、LP戻しループである。
【0018】
過渡段階以外において、機械的コンプレッサは、戻しループ内で再循環するガスおよび/または吸気回路の入口から生じるガスを圧縮するとともに、その動作によりもたらされる吸引作用によってEGRガスの循環を促進させるために使用されてもよい。
【0019】
機械的コンプレッサは、タービンに接続されて、該タービンにより駆動されてもよく、このとき、機械的コンプレッサおよびタービンはターボチャージャーを形成する。別の方法として、機械的コンプレッサは、特にベルトを介して、ヒートエンジンにより駆動されてもよい。
【0020】
戻しループは、排ガスを新鮮な空気と混合させる前に且つ排ガスをヒートエンジン内へ再導入する前に排ガスを冷却するための空冷式または水冷式の熱交換器を備えてもよい。
【0021】
本発明の第1の実施形態によれば、電気的コンプレッサが戻しループの外側に位置され、電気的コンプレッサは、戻しループを起点とする入口パイプによって戻しループに接続される入口を有する。この第1の実施形態によれば、コンプレッサは、その出口が出口パイプによってエンジンの入口に接続されてもよい。
【0022】
この第1の実施形態によれば、電気的コンプレッサは、吸気回路内および戻しループ内のいずれにも位置されなくてよく、それにより、入口パイプおよび出口パイプは、入口パイプの上流側の戻しループ内のガスがヒートエンジンに到達できるようにする更なる経路を形成する。
【0023】
出口パイプは、例えば、ガスをヒートエンジンの燃焼室へ流入させる吸気マニホールドに直接に通じる。このようにすると、EGRガスが吸気回路を流れることなくヒートエンジン内へ再導入されるため、これらのガスは、吸気回路内で循環する新鮮な空気に支障を来さない。結果として、機械的コンプレッサ内の新鮮な空気の流量が最適となり得る。
【0024】
入口パイプにより形成される更なる経路、電気的コンプレッサ、および、出口パイプは、この第1の実施形態に係るアセンブリがLP戻しループと疑似HP戻しループとを有するように、HP戻しループのごとく振る舞ってもよい。
【0025】
戻しループを電気的コンプレッサの入口に接続する入口パイプは、熱交換器の下流側で始まってもよい。
【0026】
出口パイプは、熱交換器を通じて循環する部分を備えてもよい。
【0027】
したがって、この第1の実施形態によれば、電気的コンプレッサを介したガスの再循環は、これらのガスがエンジン内へ再導入されるときに適した温度を有することができるようにする、これらのガスの2つの連続する冷却によって達成されてもよい。
【0028】
アセンブリは、第1の実施形態によれば、戻しループ内で再循環する排気回路からのガスを電気的コンプレッサの入口パイプへとあるいは吸気回路へと向かわせるように構成されたバルブのシステムを備えてもよい。
【0029】
バルブのシステムの1つの形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全てが電気的コンプレッサへと向かわせられてもよい。
【0030】
バルブのシステムの他の形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全てが吸気回路へと向かわせられてもよい。すなわち、電気的コンプレッサにはEGRガスが供給されない。
【0031】
戻しループ内で再循環するガスの一部分が吸気回路へと向かわせられる一方で前記ガスの他の部分が電気的コンプレッサへと向かわせられる形態も想定し得る。吸気回路へ向かわせられるガスの部分と電気的コンプレッサへと向かわせられるガスの部分との間の割合は、経時的に、例えば過渡段階から定常状態段階への切り換え時またはその逆の切り換え時に、変化し得る。
【0032】
バルブのシステムは、例えば、電気的コンプレッサに通じる入口パイプに位置されるバルブと、入口パイプの下流側の戻しループ内に位置される他のバルブとを備える。
【0033】
別の方法として、入口パイプの起点となるポイントで戻しループ内に3方向バルブが位置されてもよい。1つの方向は、入口パイプよりも上流側の戻しループの部分によって形成されてもよく、他の方向は、入口パイプよりも下流側の戻しループの部分によって形成されてもよく、一方、3方向バルブの最後の方向は、入口パイプによって形成されてもよい。
【0034】
第2の実施形態によれば、電気的コンプレッサが吸気回路内に位置されてもよく、戻しループは、電気的コンプレッサの上流側で吸気回路に通じる第1の出口部と、電気的コンプレッサの下流側で吸気回路に通じる第2の出口部とを有する。第2の出口部は、ヒートエンジンの燃焼室内へとガスを流入させる吸気マニホールドの上流側で吸気回路に通じてもよい。
【0035】
戻しループの第1および第2の出口部は、この戻しループの唯一の出口部であってもよい。
【0036】
この第2の実施形態によれば、電気的コンプレッサは、戻しループを通じて再循環するガスに加えて、あるいは、これらのEGRガスとは無関係に、吸気回路の入口から生じる新鮮な空気を受けてもよい。したがって、この第2の実施形態によれば、電気的コンプレッサは、2つの入口、すなわち、新鮮空気入口とEGRガス入口とを有する。
【0037】
戻しループの第1および第2の出口部は、機械的コンプレッサの上流側で吸気回路に通じてもよい。
【0038】
この第2の実施形態によれば、電気的コンプレッサおよび機械的コンプレッサの両方が吸気回路内に位置されてもよく、電気的コンプレッサが機械的コンプレッサの上流側に配置されてもよい。
【0039】
吸気回路は、電気的コンプレッサの上流側で始まって電気的コンプレッサの下流側に通じるバイパス分岐部を備えてもよい。このバイパス分岐部、または、より普通に英語で呼ばれるような「バイパス」は、吸気回路に入る新鮮な空気が電気的コンプレッサを迂回できるようにしてもよい。
【0040】
この第2の実施形態によれば、アセンブリは、戻しループ内で再循環するガスを前記ループの第1または第2の出口部へと向かわせるように構成されるバルブのシステムを備えてもよい。
【0041】
この第2の実施形態によれば更に、バルブのシステムは、吸気回路の入口から生じるガスをバイパス分岐部へとあるいは電気的コンプレッサへと向かわせるように構成されてもよい。
【0042】
バルブのシステムの1つの形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全ては、電気的コンプレッサへ供給されるように第1の出口部へと向かわせられる。
【0043】
バルブのシステムの他の形態によれば、戻しループを通じて再循環するガスの全ては、これらのガスが電気的コンプレッサを通過しないように第2の出口部へと向かわせられる。
【0044】
戻しループ内で再循環するガスの一部分が第1の出口部へと向かわせられる一方で前記ガスの他の部分が第2の出口部へと向かわせられる形態も想定し得る。第1の出口部へと向かわせられるガスの部分と第2の出口部へと向かわせられるこれらのガスの部分との間の割合は、経時的に、例えば過渡段階から定常状態段階への通過時またはその逆の通過時に、変化し得る。
【0045】
前述した形態のそれぞれにおいて、バルブのシステムは、吸気回路の入口から生じるガスの全てあるいは一部が電気的コンプレッサを通じて循環できるあるいはバイパス分岐部を使用して電気的コンプレッサを迂回できるようにしてもよい。
【0046】
電気的コンプレッサが戻しループ内で再循環するガスおよび吸気回路の入口から生じるガスの両方を受けるときには、新鮮な空気とEGRガスとの均一な混合物を吸気回路内で急速に循環させることができる。
【0047】
バルブのシステムは、第1の出口部に隣接する戻しループの部分にあるバルブと、第2の出口部に隣接する戻しループの部分にあるバルブと、バイパス分岐部のバルブと、バイパス分岐部の入口の下流側で電気的コンプレッサの入口に直接にある吸気回路内のバルブとを備えてもよい。
【0048】
別の方法として、3方向バルブが戻しループに設けられてもよく、1つの方向が第1の出口部に対応し、もう1つの方向が第2の出口部に対応し、一方、他の方向は、第1の出口と第2の出口部との間の分岐の上流側の戻しループの部分に対応する。
【0049】
バイパス分岐部と電気的コンプレッサの入口に通じる吸気回路の部分との間の分岐に3方向バルブが存在してもよい。別の方法として、電気的コンプレッサの入口に通じる吸気回路の部分がバルブを何ら有していなくてもよい。
【0050】
また、本発明の他の態様において、本発明は、
− 空気入口とヒートエンジンの入口に接続される出口との間で延びる吸気回路と、
− ヒートエンジンの出口に接続される入口と排ガス出口との間で延びる排気回路と、
− 前記ヒートエンジンと、
− 排気回路内の排ガスの全てあるいは一部をヒートエンジンの上流側に再導入できるようにする戻しループと、
− 電気的コンプレッサと、
を備えるアセンブリであって、
電気的コンプレッサが、少なくとも戻しループを通じて再循環するガスおよび/または吸気回路の入口から生じるガスを受けるようにアセンブリ内に位置される、アセンブリに関する。
【0051】
前記特徴の全てあるいは一部は、本発明のこの他の態様に適用される。
【0052】
本発明の他の態様において、本発明は、アセンブリに組み込まれる電気的コンプレッサに給気する方法であって、アセンブリが、
− 空気入口とヒートエンジンの入口に接続される出口との間で延びる吸気回路と、
− ヒートエンジンの出口に接続される入口と排ガス出口との間で延びる排気回路と、
− 前記ヒートエンジンと、
− 排気回路内の排ガスの全てあるいは一部をヒートエンジンの上流側に再導入できるようにする戻しループと、
− 電気的コンプレッサと、
を備え、
電気的コンプレッサには、少なくとも戻しループ内で再循環するガスおよび/または吸気回路の入口から生じるガスが供給される、方法にも関連する。
【0053】
アセンブリは、前述したようになっていてもよい。
【0054】
本発明の他の態様において、本発明の他の主題は、先に規定されたアセンブリを制御するための方法であって、過渡段階中に、電気的コンプレッサは、戻しループ内で再循環するガスの全てあるいは一部を圧縮するように作動されて使用される方法である。
【0055】
これに加えてあるいは代えて、電気的コンプレッサが吸気回路の入口から生じるガスを受けてもよく、また、電気的コンプレッサが前記ガスを圧縮してもよい。
【0056】
過渡段階は、例えば、アセンブリが組み込まれる車両の負荷下での加速に対応してもよく、あるいは、戻しループ内の排ガスの再循環の開始に対応してもよい。
【0057】
過渡段階の後に定常状態段階が続いてもよく、定常状態段階において、アセンブリは、戻しループ内で再循環するガスまたは吸気回路の入口から生じるガスが電気的コンプレッサに供給されないように制御される。
【0058】
アセンブリは、特に前述したようなバルブのシステムを備えてもよく、また、過渡段階中、バルブのシステムは、電気的コンプレッサが
− 第1の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全て、および、
− 第2の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全て、および、吸気回路の入口から生じる新鮮な空気の全て、
を受けるような形態を成してもよい。
【0059】
定常状態段階へと変わる際、バルブのシステムの形態は、
− 第1の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスのより一層大きな割合が、電気的コンプレッサを通じて循環せずに、機械的コンプレッサの上流側に再導入されるように、および、
− 第2の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスのより一層大きな割合が、電気的コンプレッサの下流側で且つ機械的コンプレッサの上流側に通じる第2の出口部を通じて循環するとともに、新鮮な空気のより一層大きな割合がバイパス分岐部を通じて循環するように、
変更されてもよい。
【0060】
定常状態段階中、バルブのシステムの形態は、
− 第1の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全てがその後に吸気回路内へと循環して電気的コンプレッサ内へと循環しない、および、
− 第2の実施形態によれば、戻しループ内で再循環するガスの全てが第2の入口を介して吸気回路に入るとともに、吸気回路の入口から来るガスの全てがバイパス分岐部内へと循環する、
ようになっていてもよい。
【0061】
この方法によれば、アセンブリは、定常状態段階では、電気的コンプレッサを有さない従来技術に係るアセンブリに相当する。
【0062】
定常状態段階では、電気的コンプレッサの動作を停止することができる
この方法によれば、電気的コンプレッサは、ターボチャージャー始動段階中に使用することができ、また、その後、ターボチャージャーが適切に動作している時点で動作を停止することができる。
【0063】
前述した全ての実施形態では、触媒コンバータが排気回路に設けられてもよく、また、戻しループの入口がこの触媒コンバータの下流側に位置されてもよい。
【0064】
本発明は、本発明の幾つかの非限定的な実施形態の以下の説明を読むことによって、また、添付図面を検討することによって、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】第1の実施形態に係るアセンブリを概略的に描く。
図2】第2の実施形態に係るアセンブリを概略的に描く。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアセンブリ1を描く。このアセンブリ1は自動車内燃ヒートエンジン2を備える。このエンジン2は、複数のシリンダ、記載される例では4つのシリンダを備えている燃焼室3を備え、酸化剤と燃料との混合物を受けるようになっている。記載される例では、燃料がガソリンであるが、本発明は、燃料のそのような例に限定されず、燃料としてのディーゼル油の使用にも同様に適用できる。酸化剤は、例えば、純粋な空気、または、空気/EGR混合物である。
【0067】
シリンダ内の燃焼は、エンジン2の仕事を発生させる。エンジン2は従来の態様で動作する。すなわち、ガスが燃焼室3へ流入され、燃焼室3でガスが圧縮されて燃やされ、その後、ガスが排ガスの形態で排出される。
【0068】
このエンジン3は、エンジン2の吸気回路4に接続される入口と、ガス排出回路6に接続される出口とを有する。
【0069】
吸気回路の入口11は、それを介して新鮮な空気がアセンブリ1に入る入口を規定し、一方、排気回路6の出口13は、それを介して排ガスがアセンブリ1から除去される出口を規定する。
【0070】
エンジン2の吸気回路4は、考慮されている例では、供給ガス(その流れが矢印F1により表わされる)のための吸気ダクト8と、この場合にはターボチャージャーである供給ガス用の機械的コンプレッサ9と、機械的コンプレッサ9から生じるガスを冷却できるようにする熱交換器10とを備える。この熱交換器10は、一般に、当業者により「charge air cooler(給気冷却器)」の略であるその頭字語「CAC」で称される。これは、その目的が吸入ガス、特に空気を冷却することだからであり、それにより、空気が圧縮されるため、過給されると言われる。CAC5の出口で、ガスは、エンジン2の燃焼室3へとガスを流入させる給気マニホールド12から形成されるエンジン2の入口に通じる。したがって、マニホールド12は、ガスをエンジン2のシリンダヘッドへ入り込ませるための入口ボックスを形成する。
【0071】
ガスをエンジン2へと流入させる吸気マニホールド12の上流側で、吸気回路4は、バタフライタイプのシャッタを備えているバルブ15を備えてもよく、このバルブの機能は、エンジン速度を調整するためにガスの流量を調節することである。このバルブ15は、当業者に良く知られるエンジン制御ユニット(一般的には、エンジン制御ユニット(engine control unit)の略であるその英語の頭字語ECUで称される)によって制御される。
【0072】
エンジン2からの出口は、排ガスマニホールド17により形成される。排ガスマニホールドは、ガス排出回路6の一部を形成する排ガス管または排ガスダクト18に接続される。また、排気回路6は、吸入ガスの機械的コンプレッサ9と一体になって回転するとともにコンプレッサと共にターボチャージャーを形成するタービン20も備える。タービン20は、排気ダクト18の排ガスによって駆動され、排ガスの流れが矢印F2により概略的に示される。
【0073】
アセンブリ1は、排気回路6を通じて循環する排ガスの全てあるいは一部をエンジン2内へ再導入できるようにする戻しループ22を更に備える。この戻しループは、エンジン2内へ再導入される排ガスを案内するダクト23を備える。戻しループ22は、排ガス回路6内に入口24を有し、この入口24を介して、排気回路6からの排ガスが出口13で除去される前に取り出される。戻しループ22の入口24は、この出口13付近であって、排気回路6に存在する触媒コンバータ21の下流側に位置されてもよい。
【0074】
図1の例における戻しループ22は、吸気回路4に通じる出口25を備え、この出口25を介して、排ガスがエンジン2の上流側に再導入される。この場合のこの出口25は、機械的コンプレッサ9の上流側に位置される。この例における戻しループ22はLP戻しループである。
【0075】
戻しループ22は、図1の例では、ループ22内で再循環する排ガスを冷却するための水冷式または空冷式の熱交換器27を更に備える。
【0076】
図1の実施形態によれば、アセンブリは電気的コンプレッサ30を更に備える。このコンプレッサは図示しない電気モータにより駆動され、電気モータの制御は、例えば、エンジン制御ユニットを介してなされる。
【0077】
第1の実施形態によれば、電気的コンプレッサ30は、戻しループ22の外側に位置されて、入口パイプ32によって戻しループに接続される。入口パイプ32は、図1の例では、熱交換器27の下流側の戻しループ22を起点とする。
【0078】
電気的コンプレッサ30は、更に、出口パイプ34によって吸気マニホールド12に接続され、出口パイプ34の一部が熱交換器27内に受けられる。
【0079】
この第1の実施形態によれば、エンジン2から出るガスがループ22の一部、入口パイプ32、電気的コンプレッサ30、および、出口パイプ34をたどることができるようにするとともにこのガスをエンジン2内へ再導入できるようにする更なる再循環経路が存在する。この更なる経路に沿って、ガスが熱交換器27を2回連続して通過する。
【0080】
アセンブリ1は、図1に描かれるように、入口パイプ32の上流側でループ22内を再循環するガスの全てあるいは一部を前記入口パイプ32へとあるいは吸気回路4へと選択的に向かわせることができるようにするバルブのシステムを備えてもよい。この例におけるバルブのシステムは3方向バルブ36を備え、該バルブ36の1つの方向は、入口パイプ32の上流側の戻しループ22の部分によって形成され、バルブの他の方向は、入口パイプ32の下流側の戻しループ22の部分によって形成されるとともに、バルブの最後の方向は、入口パイプ32によって形成される。
【0081】
ここで、図1のアセンブリが機能する態様について説明する。過渡段階中、電気的コンプレッサ30が作動され、また、3方向バルブ36は、ループ22内を再循環するガスが入口パイプ32へと向かわせられて電気的コンプレッサ30により圧縮されるように動作される。これらの圧縮ガスは、その後、出口パイプ34により、吸気マニホールド12内へと直ちに再導入され、吸気マニホールドでこれらのガスが新鮮な空気と混合される。これは、ひいては、エンジン2内のEGRの最適な割合を確保する。アセンブリ1のこの形態は数秒間にわたって維持され得る。
【0082】
3方向バルブ36は、その後、入口パイプ22内で循環する排ガスの量を漸進的に減少させ且つそれに応じて吸気回路2内へ再導入されるそのようなガスの量を増大させるように動作されてもよい。
【0083】
最後に、3方向バルブ36は、戻しループ22が全体的に排ガスによってたどられて、その後に電気的コンプレッサ30の動作が停止される形態を採用してもよい。したがって、これは、例えば定常状態段階である。
【0084】
ここで、図2を参照して、電気的コンプレッサ30の位置に関して図1に関連して説明された実施形態と異なる本発明の第2の実施形態について説明する。この例において、電気的コンプレッサ30は、機械的コンプレッサ9の上流側の吸気回路4内に位置される。
【0085】
この例では更に、吸気回路4がバイパス分岐部40を備え、このバイパス分岐部40の入口41が電気的コンプレッサ30の上流側に位置され、バイパス分岐部40の出口42が電気的コンプレッサ30の下流側で且つ電気的コンプレッサ9の上流側に位置される。したがって、バイパス分岐部40は、吸気回路の入口から生じるガスが電気コネクタ30を迂回できるようにする。
【0086】
図2では更に、戻しループ22が2つの別個の出口部44,45を備える。
【0087】
第1の出口部44は、電気的コンプレッサ30の上流側で且つバイパス分岐部40の入口41の下流側で吸気回路4に通じ、一方、出口部45は、電気的コンプレッサ30の下流側で吸気回路4に通じる。
【0088】
図2に描かれるように、バルブのシステムが設けられてもよい。この例におけるバルブのシステムは、第1の出口部44と第2の出口部45との間の分岐で戻しループ22内に位置される3方向バルブ46を備える。1つの方向が分岐の上流側の戻しループ22により形成され、一方、他の2つの方向が各出口部44,45によって形成される。
【0089】
バルブのシステムは、バイパスパイプ40に位置されるバルブ48を更に備える。
【0090】
この例では、戻しループ22をエンジン2の入口に接続する更なる経路が存在しない。
【0091】
バルブのシステムは、電気的コンプレッサ30が、
− 戻しループ22内を再循環するガスおよび吸気回路4の入口11から生じるガスの両方、
− 戻しループ22内で再循環するガスのみ、
− 吸気回路4の入口11から生じるガスのみ、
を受けるように動作され得る。
【0092】
ここで、図2のアセンブリ1が高負荷過渡段階中にどのように機能するかの1つの例について説明する。
【0093】
3方向バルブ46およびバルブ48は、このとき、ループ22内を再循環する全てのガスおよび新鮮な空気の全てが電気的コンプレッサ30へと向かわせられて該コンプレッサにより圧縮されるように動作され得る。そのようにすると、新鮮な空気とEGRガスとの均一な混合物の吸気回路4を通じた急速な流れが促進される。
【0094】
この過渡段階が終わると、バルブ48が徐々に閉じられ得るとともに、新鮮な空気がバイパスパイプ40のみを通じて流れるとともにEGRガスが第2の出口部45内でのみ流れるまで、3方向バルブ46の形態が徐々に変えられ得る。したがって、定常状態段階中、電気的コンプレッサ30が短絡される。そのため、アセンブリ1は、電気的コンプレッサ30を有さず且つLP戻しループを有するアセンブリのように振る舞う。
【0095】
本発明は、今しがた説明してきた例に限定されない。
【0096】
表現「1つの〜を備える」は、別段に明記されなければ、表現「少なくとも1つの〜を備える」と同じ意味であると理解されるべきである。
図1
図2