(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235579
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】Cimicifuga抽出物の新規な薬理学的用途
(51)【国際特許分類】
A61K 36/71 20060101AFI20171113BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A61K36/71
A61P3/10
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-519213(P2015-519213)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2015-521991(P2015-521991A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2013064062
(87)【国際公開番号】WO2014006104
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2015年2月23日
【審判番号】不服2016-16540(P2016-16540/J1)
【審判請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】01034/12
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】508374140
【氏名又は名称】マックス−ツェラー・ゾーネ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ボーネン,ゲオルグ
【合議体】
【審判長】
關 政立
【審判官】
井上 明子
【審判官】
田村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−016312(JP,A)
【文献】
特表2011−519569(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/002609(WO,A1)
【文献】
特開2007−99777(JP,A)
【文献】
特開平8−175994(JP,A)
【文献】
特開平7−149628(JP,A)
【文献】
PHYTOMEDICINE, 2012.06.01, Vol.19, No.8−9, pp.846−853
【文献】
JOURNAL OF MEDICINAL FOOD, 2010, Vol.13, No.3, pp.599−604
【文献】
MATURITAS, 2008, Vol.60, No.3−4, pp.209−215
【文献】
PLANTA MEDICA, 1999, Vol.65, No.8, pp.712−714
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-A61K36/9068
A23L1/27-1/308
MEDLINE/CAplus/BIOSIS/EMBASE/WPIDS (STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病の治療的又は予防的処置に使用するための、シミシフガ・ラセモサ(Cimicifuga racemosa)の抽出物の薬学的組成物。
【請求項2】
前記組成物が経口投与用である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のいずれか記載の組成物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項4】
以下の工程:
(i)シミシフガ・ラセモサ(Cimicifuga racemosa)から植物材料を準備する工程、
(ii)抽出剤を用いて植物材料を処理する工程、及び
(iii)前記抽出物を濃縮する工程
を含む、請求項1〜3のいずれか記載の組成物を製造する方法。
【請求項5】
(ii)から得られた抽出物が、溶液メディエーターの存在下で濃縮される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記溶液メディエーターは、前記抽出剤中にコロイド状に分散又は溶解することのできる有機ポリマーである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記溶液メディエーターは、少なくとも約1000ダルトン単位の平均分子量を有する有機ポリマーである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記溶液メディエーターは、ポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cimicifuga種、好ましくはCimicifuga racemosa(Actaea racemosa L;ブラックコホッシュとも呼ばれる)の抽出物の新規用途に関する。特に、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療的又は予防的処置に使用するための、Cimicifuga属、好ましくはCimicifuga racemosaの抽出物、医薬品を調製するためのこのような抽出物の使用、前記抽出物を含む対応する薬学的組成物、並びに、好ましくは前記抽出物又は薬学的組成物の経口投与による糖尿病の治療的又は予防的処置のための方法に関する。
【0002】
発明の背景
Cimicifuga抽出物、その調製、並びにその医学的使用は周知である。例えば、国際公開公報第99/47149号は、心血管疾患及び更年期障害の選択的処置のための、臓器選択的なエストロゲン型の医薬品としての使用のためのCimicifuga抽出物の使用を記載している。米国特許第6,267,994号は、高用量の抗エストロゲン化合物の毒性を示さない組成物としての、抗腫瘍療法に使用するためのCimicifuga抽出物を開示している。国際公開公報第01/05415号は、エストロゲン型の効果を有し、Cimicifuga抽出物又は誘導体の成分を含む、薬学的組成物を開示している。Phytomedicine, Vol. 19 (2012), p.846-853は、ラットにおける体脂肪の蓄積を低減させることのできるCimicifuga racemosaの特殊な抽出物を開示している。
【0003】
国際公開公報第2005/002609A1号は、更年期障害及び閉経後の苦難を処置するのに有用である、有機ポリマー、特にポリ(ビニルピロリドン)などの溶液メディエーターと共に抽出剤を使用して、植物抽出物、特にCimicifuga racemosaの抽出物を調製するための方法を教義している。
【0004】
Seidlova-Wuttke et al. (Phytomedicine, 19, 2012, 846-853)は、閉経後の状況を模倣した卵巣摘出(ovx)ラットにおける腹部貯蔵脂肪(高脂血症)を減少させ、従って、代謝症候群(MB)を予防するための、Cimicifuga racemosa抽出物の使用を開示している。
【0005】
Kiss et al. (J. Med. Food, 13(3) 2010, 599-604)は、Olimpiq StemXCell(Crystal Institute Ltd., Hungary)と呼ばれる植物抽出物の複合栄養サプリメントを投与することによる、CCl
4により誘発されたマウスモデルにおける肝損傷及びアロキサンにより誘発された実験糖尿病ラットモデルにおける膵損傷の再生を教義している。サプリメントは、Cimicifuga racemosa並びに8つのさらなる植物成分を含む。栄養補助食品の投与により、両方の臓器のより迅速かつより効率的な再生が起こり、これは、膵臓については血糖値の低下によって示された。
【0006】
Rachon et al. (Maturitas 60, 2008, 209-215)は、ovxラットを使用した閉経モデルにおいて耐糖能(腹腔内ブドウ糖負荷試験、IPGTT)、ベースラインの血糖値及び空腹時血漿中インスリン(FPI)に対する、食用Cimicifuga racemosa抽出物CR BNO1055の効果を教義している。同じ抽出物及び同じ閉経モデルを使用するKiss et al.の結果とは逆に、ベースラインの血糖値に対する抽出物BNO 1055の統計学的に有意な効果は全く観察されず、前記抽出物は、エストラジオール(E2)対照と同じように空腹時血漿中インスリンを降下させた。E2の投与だけが、IPGTTにおけるブドウ糖のAUCの有意な低下をもたらし、BNO1055の投与はそれをもたらさなかった。前記抽出物は、卵巣摘出ラットにおけるブドウ糖の代謝に対して効果を及ぼすが、この効果は、グルコース関連疾患の処置に必要とされるような血糖を降下させない。
【0007】
Liu et al. (Planta medica 65, 1999, 712-714)は、Cimicifuga dahuricaの根茎から抽出されたイソフェルラ酸が、5及び10mg/kgの投与量で静脈内に適用された場合に、糖尿病ラットの血漿中グルコース値を低下させるであろうことを教義している。しかしながら、効果は非常に弱い。なぜなら、血糖の正常化を全くもたらすことができなかったからである。
【0008】
The Eur. J. Clin. Pharmacol., Vol. 58 (2002), 235-241は、多くの医学的効能におけるCimicifuga racemosaの臨床効力の系統的レビューを提供する。
【0009】
彼女らのレビュー論文(Phytotherapeutische Optionen bei Diabetes mellitus Typ 2, Zeitschrift fur Phytotherapie 2013; 34: 6-11)において、著者Karin Kraftは、2型糖尿病患者を処置するための現在の植物療法の選択肢を要約しているが、Cimicifuga産物は、植物療法剤の網羅的リストには含まれていない。
【0010】
本発明の根底にある問題は、Cimicifuga植物性産物についての新規な医学的効能の提供である。
【0011】
驚くべきことに、Cimicifuga種(属)の抽出物は、糖尿病の治療的又は予防的処置における使用に関して優れた有用性を有することが判明した。
【0012】
それ故、第1の局面において、本発明は、糖尿病の治療的又は予防的処置において使用するためのCimicifuga属の抽出物に関する。好ましくは、本発明を実施するための抽出物におけるCimicifuga属に由来する植物材料は、Cimicifuga racemosaに由来する。及び好ましい態様において、本発明の抽出物は、2型糖尿病を処置又は予防するために使用されるか、あるいは、それはコントロールの不十分なインスリン依存性1型糖尿病の補助的処置のために使用される。
【0013】
より好ましい態様において、本発明に使用するための抽出物は、以下の工程:
(i)Cimicifuga属から、好ましくはCimicifuga racemosaから植物材料を準備する工程、
(ii)抽出剤を用いて植物材料を処理する工程、及び
(iii)前記抽出物を濃縮する工程
を含む方法によって調製される。
【0014】
上記の工程(ii)から得られた抽出物は、溶液メディエーター、好ましくは、抽出剤中にコロイド状に分散又は溶解することのできる有機ポリマー、より好ましくは少なくとも約1000ダルトン単位の平均分子量を有する有機ポリマー、最も好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で濃縮される。
【0015】
この局面の最も好ましい態様において、本発明を実施するための抽出物はCimicifuga racemosaから作られ、前記抽出物は経口投与用である。
【0016】
第2の局面において、本発明は、糖尿病の治療的又は予防的処置のための医薬品を調製するための、Cimicifuga属の抽出物の使用に関する。この使用のためのCimicifuga属はCimicifuga racemosaであることが好ましい。処置しようとする疾患が、2型糖尿病又はコントロールの不十分なインスリン依存性1型糖尿病であることが特許請求された使用のためにさらに好ましく、本発明の抽出物は補助的処置のために使用される。最も好ましい態様において、この局面は、前記抽出物がCimicifuga racemosaから作られ、前記抽出物が経口投与用である、使用に関する。
【0017】
第3の局面において、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、又はコントロールの不十分なインスリン依存性1型糖尿病の治療的又は予防的処置のための、本発明の抽出物と場合により少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物に関し、本発明の抽出物は、補助的処置のために使用される。本発明の薬学的組成物は、Cimicifuga属がCimicifuga racemosaであり、前記抽出物が経口投与用であるものが好ましい。
【0018】
第4の局面において、本発明は、本発明の抽出物又は本発明の薬学的組成物を薬学的に有効な量で投与することを含む、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療的又は予防的処置のための、あるいは、コントロールの不十分なインスリン依存性1型糖尿病の補助的処置のための方法と読み取ることができる。
【0019】
好ましい態様において、本発明の組成物は、静脈内投与、腹腔内投与又は経口投与、好ましくは経口投与される。
【0020】
本発明の全ての局面に関する非常に好ましい態様において、本発明を実施するための抽出物は、Cimicifuga racemosaに由来する植物材料から得られる。以下において、本発明は、この種に関して詳述されているが、本発明は、この特定のCimicifuga種に限定されない。その植物の種々の部分、例えば葉、根、幹、枝もしくは種子などから、及び/又は異なる抽出法及び抽出溶媒によって得られたCimicifuga racemosaの抽出物が本発明に適しているが、好ましい抽出物は、根材料から得られたものである。別の好ましい抽出物は、上記の欧州特許第1644015号に開示された方法に従って調製されたものである。他の方法によって調製されたCimicifuga racemosaの抽出物も本発明に適している。
【0021】
一般的に、好ましくはCimicifuga racemosa抽出物を産生する方法は、植物材料を含水アルカノール抽出剤で処理し、これにより生抽出物又は一次抽出物が得られ、これは例えば沈降又はろ過による微粒子の除去のための任意選択の処理の後に、抽出剤と抽出剤に可溶性の植物構成成分とを含む一次抽出物が得られることに基づく。
【0022】
典型的には、一次抽出物は、その後、抽出剤の部分的な蒸発によって濃縮され、そのより揮発性の高い成分(例えばアルカノール基に1〜4個の炭素原子を含むアルカノール構成成分)といくらかの水を除去し、典型的には5〜50容量%の残留溶媒(すなわち水)を含むいわゆる濃縮抽出物を形成する。さらに溶媒を除去すると、固体状、ペースト状又は液状の材料が得られ、これは実質的に、植物材料の抽出に使用された溶媒を含んでいない。その後、この産物をそのまま使用しても、又は加工して、最終医薬品に必要とされるあらゆる補助剤、添加剤、コーティング成分などを場合により添加して、特定の適用形、例えば丸剤、ローション剤、液剤、散剤などを産生し得る。
【0023】
一般的には、本発明の目的に適したCimicifuga racemosaの抽出物は、アクテイン、23−epi−26−デオキシアクテイン、27−デオキシアクテイン及びシミラセモシドCを含む。アクテインは、16,23:23,26:24,25−トリエポキシ側鎖を有するアセチルアクテオールのキシロシドである。27−デオキシアクテインは、上記した化合物の定量的決定のための標準物質として使用される。さらに他の公知である活性成分の群は、フェルラ酸、ヘスペレチン酸(hesperatinic acid)及びアシルカフェ酸などの芳香族酸である。さらに、以下のヒドロキシ桂皮酸エステルが、Cimicifuga racemosaの含水エタノール抽出物から単離された:フシノール酸(fucinolic acid)並びにシミシフーガ酸(cimicifugaic acid)A、B、E及びF。フラボノイド、ビオカニンA、ホルモノネチン及びカンホロール(camphorol)も報告されている。他の成分は、タンニン、樹脂及び脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びパルミチン酸)である。Cimicifuga racemosa中のフェルラ酸の含量はかなり低いことが注記されている。
【0024】
このような多くの構成成分があるので、抽出条件は、得られる抽出物の組成に対してかなりの影響を及ぼす傾向があり、意図しない構成比の変化は望ましくない。
【0025】
抽出剤中に可溶性又は不溶性である種々の添加剤が示唆され、これを使用することにより、抽出物の調製における濃縮工程は改善される。有機酸又はゼラチンなどの種々の添加剤が、抽出物を濃縮する時の意図しない沈降を防ぐために使用され得るが、本発明に従って使用するに好ましい添加剤は、「溶液メディエーター」とも呼ばれるが、これは上記の欧州特許第1644015号に明記されているようなポリビニルピロリドンである。
【0026】
抽出用溶媒の蒸発によって得られた抽出物は、全ての残留抽出剤を実質的に除去するためのさらなる処理(好ましくは噴霧乾燥による)にかけられ得、これにより実質的に乾燥した産物を得ることができる。
【0027】
本発明の好ましい態様におけるPVPの添加は、医学的処置における抽出物の使用又は医薬品の構成成分としての抽出物の使用を損ねるものではない。なぜなら、PVPは、大半の諸国において現行の製薬学的用途のための食品医薬品規制の下で承認されているからである。
【0028】
溶液メディエーターとしてのPVPの有効量は、一般的に、最終抽出物の重量に基づいて約5重量%から約50重量%の範囲である。約15重量%から約35重量%の範囲が多くの目的にとって好ましい。
【0029】
抽出剤は、好ましくは、水及び/又は通常液体のアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの極性物質である。このようなC
1−4アルコールと互いの混合物及び/又は水との混合物がさらにより好ましい。約40重量%から約80重量%のこのようなアルカノール、好ましくはエタノールと、約60重量%から約20重量%の水の混合物が特に好ましい。
【0030】
抽出手順は、慣用的な装置で実施され得る。いずれの場合においても、溶液メディエーターが添加され、その後、抽出剤のあらゆる著しい除去が行なわれる。このような除去又は濃縮は、抽出物の成分に影響を及ぼし得る条件を回避するように注意しながら、公知の方法で、例えば高温及び/又は減圧での蒸留によって行なうことができる。濃縮は、一定又は可変の温度及び/又は圧力条件で行なわれ得る。
【0031】
抽出物を産生する好ましい方法は、乾燥した植物材料を、約50〜60容量%のエタノールと約50〜40容量%の水とを含むエタノール−水の混合物を用いて抽出することによって行なわれる。濃縮時に、共沸混合物のアルカノール性構成成分といくらかの水は、約25〜50重量%の固体濃度に達するまで除去される。得られた濃縮抽出物は、その後、任意の慣用的な方法で、例えば噴霧乾燥によって処理され得、これにより乾燥した産物が得られる。このような最終濃縮工程中に、例えば噴霧乾燥時に、溶液メディエーターPVPはさらに、噴霧乾燥補助剤として作用する。一般的に、PVPは、前記抽出物の均一な稠度が、濃縮過程の全段階において維持されるという効果を及ぼす。
【0032】
本発明による抽出物、薬学的組成物、すなわち医薬品は通常、薬学的に活性であってもよいがその必要はない慣用的かつ周知の医薬品の成分と共に又はその非存在下で投与するのに適した量の、Cimicifuga属、好ましくはCimicifuga racemosaの抽出物を含む。他方で、本発明による抽出物又は薬学的組成物は、実質的に、例えば液体形又は固体形で、希釈剤を含む又は含まない、新規抽出物からなり得る。
【0033】
本発明による処置のために、例えば医学的処置のために又は医薬品の調製のために使用されるCimicifuga racemosaの抽出物は、2型糖尿病を処置又は予防し、コントロールの不十分な1型糖尿病の補助的処置として役立つという臨床的な目的を有し得る。
【0034】
医薬品の全種類の適用法が、本発明に従って適切であると考えられているが、経口投与が多くの目的にとって好ましく、前記抽出物は、そのままで、あるいは固体及び/又は液体の添加剤で希釈して使用されても、及び/又は添加剤もしくは補助剤及び/又は他の薬理学的に活性な構成成分を含んでいてもよい。薬理学的に適切な組成物の調製はスタンダードであり、詳細な説明を必要としない。
【0035】
好ましい投与量は、もちろん必要とされる処置の強度に依存して、1日あたり約1〜約1000mg、好ましくは約1〜約200mg/日、より好ましくは約1〜約100mg/日、最も好ましくは約2〜約50mg/日の範囲である。
【0036】
一般的に、さらなる明記がなされていない本明細書において使用されているような「抽出物」という用語は、物理形(すなわち粘性状、ペースト状又は固体状)に関係なく、任意の形態の抽出産物から抽出剤を除いたものを指す。
【0037】
本明細書において使用されているような「糖尿病」という用語は、1型(すなわちインスリン依存性)又は2型(インスリン非依存性)のいずれかの糖尿病を含むことを意味する。
【0038】
「ポリビニルピロリドン」という用語は、食品添加物又は薬品添加物として承認された任意のPVP製品を含むことを意味する。
【0039】
本明細書において使用され「約」などの修飾語句が前に付された数字の表示は、±50%、好ましくは±20%の誤差を含むことを意味する。
【0040】
AMPは、アデノシン一リン酸活性化タンパク質を指す。AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、細胞エネルギー恒常性に関連して重要な周知の酵素(PMID 10409121と比較)である。
【0041】
以下において、本発明は、実践的な実施例及び図面を参照してより詳細に説明され、そのどれもが、添付の特許請求の範囲を超えて本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0042】
以下の実施例及び図面において、%又は部についての言及は、特記しない限り重量基準である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1a】
図1aは、培地対照及びメトホルミンと比較した、1、10及び100μg/mlの投与量の実施例1の抽出物によるAMPKの用量依存的活性化を示した図である。
【
図1b】
図1bは、1日目から7日目にかけての体重(g)の全体的な変化を示した図である:ベースライン(1日目)における処置群間の差異の平均値が調整されている。平均値の標準誤差(SEM)は残りの統計学的モデルから計算される。適切なビヒクルに対する多重比較は、Ze450POについてはウィリアム検定により、メトホルミン及びZe450IPについては多重t検定による。
【
図2a】
図2a及びbは、6日間の処置におよぶ体重の累積的増加を示したグラフである。
図2aは、ビヒクル(対照)の経口投与に対する、Ze450の経口(PO)及び腹腔内(IP)投与の体重の増加を示す。
図2bは、それぞれの対照に対する、メトホルミンの経口投与及びZe450の腹腔内投与を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図2b】
図2a及びbは、6日間の処置におよぶ体重の累積的増加を示したグラフである。
図2aは、ビヒクル(対照)の経口投与に対する、Ze450の経口(PO)及び腹腔内(IP)投与の体重の増加を示す。
図2bは、それぞれの対照に対する、メトホルミンの経口投与及びZe450の腹腔内投与を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図3】
図3は、1日平均食物摂取量(g/日)を示した棒グラフである(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。)。
【
図4】
図4は、1日平均水分摂取量(g/日)を示した棒グラフである。
【
図5a】
図5a及びbは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中のグルコース濃度(mmol/L)を示したグラフである。
図5aは、Ze450の経口投与の効果を示し、
図5bは、メトホルミン及びZe450の腹腔内投与の効果を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図5b】
図5a及びbは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中のグルコース濃度(mmol/L)を示したグラフである。
図5aは、Ze450の経口投与の効果を示し、
図5bは、メトホルミン及びZe450の腹腔内投与の効果を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図6a】
図6a及びbは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中のインスリン濃度(ng/ml)を示したグラフである。
図6aは、Ze450の経口投与の効果を示し、
図6bは、メトホルミン及びZe450の腹腔内投与の効果を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図6b】
図6a及びbは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中のインスリン濃度(ng/ml)を示したグラフである。
図6aは、Ze450の経口投与の効果を示し、
図6bは、メトホルミン及びZe450の腹腔内投与の効果を示す(それぞれのビヒクルに対する有意差:
*P<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【0044】
実施例1 − 抽出物の調製
Cimicifuga racemosaの乾燥した根材料(根茎)を製粉することによって加工して粉末を得、異なる収穫物に由来する材料の分量を均一化のために合わせた。
【0045】
抽出剤を、1,330部のエタノール(96容量%)と1,170部の脱イオン水を混合することによって調製した。抽出は、500部のCimicifuga racemosaあたり2,500部の抽出剤の比に基づいて実施された。
【0046】
周囲温度の水及びエタノールを、容器の底にメカニカルスターラー及び排出口の備えられた容器中で混合した。撹拌しながらCimicifuga racemosa粉末を加え、300分間撹拌し続けた。その後、スターラーを停止し、固体を沈澱させ、これは通常約180分間要し、いずれの場合においても、沈降物の上に透明な上清が形成されるまで続けた。
【0047】
透明な上清をポンプを用いて取り出し、別々の容器に収集した。沈降物をフィルタープレスに送り込み、さらなる抽出液を回収し、これを上清と合わせ、得られた混合物をフィルターを通して、スターラー及び秤量装置の備えられた混合用容器へと注いだ。その後、ポリビニルピロリドン(PVP;Plasdone(登録商標)KW29−32)を100部の抽出液あたり33部の量で加え、PVPが溶解し、透明な褐色な液体が最初の産物として得られるまで撹拌し続けた。
【0048】
この産物を、標準的なタイプの2段階の濃縮プラントKV102EX型(Unipektin AG, Eschenz, Switzerland)に送り込み、PVPを含む抽出液は抽出剤の蒸発によって濃縮され、これにより少なくとも約9%の固体の濃度を有する暗褐色の濃縮物が得られ、これをその後さらに濃縮して、約18〜26%の固体含量を有するスピスム抽出物が形成された。この濃縮物を、慣用的な噴霧乾燥器に送り込み、約5重量%以下の湿気含量を有する粉末の形状の乾燥抽出物を産生した。
【0049】
濃縮液状抽出物(「スピスム」)並びに乾燥粉末状抽出物の両方を、必要に応じて規格化し得、例えば5〜50mgの抽出物と、約100〜200mgの最終重量を有する錠剤の生産のための通常の固体希釈剤、添加剤及び補助剤とを含む錠剤を生産することによって、本発明に従って1型又は2型糖尿病を予防又は処置するための医薬品として又は医薬品に使用され得る。
【0050】
実施例2 − 抽出物の分析
実施例1の乾燥抽出物は、特徴的な匂いを有する明褐色の微細粉末であった。それは、種々のトリテルペンサポニン及び種々のトリエテルペングリコシド並びに有機酸を含んでいた。
【0051】
実施例1に従って調製された3つのバッチの分析結果は、前記抽出物が、Cimicifuga racemosaの抽出物の規格化に慣用的に使用される物質である27−デオキシアクテインを含んでいたことを示した。
【0052】
実施例3 − 抽出物のAMPK活性
AMPキナーゼの活性化に対する実施例1の抽出物の効果をHepG2細胞において調べた。細胞培地を陰性対照として使用し、細胞培地中2mM溶液のメトホルミンを陽性対照として使用し、一方、試験試料は、細胞培地1mlあたり1、10及び100μg(μg/ml)の実施例1の産物を含んでいた。結果を以下の
図1に提示し、縦軸は、タンパク質1mgあたりの活性化されたAMPKの単位を示す。横軸の黒い棒は、純粋な培地(1)、公知の糖尿病薬であるメトホルミン(2)についての活性値、並びにそれぞれ1μg(3)、10μg(4)及び100μg(5)を用いて得られた活性値を示す。
【0053】
図1aから明らかであるように、実施例1の抽出物は、用量依存的なAMPK活性化効果をもたらし、これは、両方の形態の糖尿病(非インスリン依存性(2型)及びインスリン依存性(1型)糖尿病)(Nat Rev Drug Discov 3 (2004), 340 - 351及びPhysiol Rev 89 (2009) 1025-1078参照)(なぜなら、これらの両方が耐糖能障害及び血糖値上昇をもたらすからである)に対する抗糖尿病活性を含む改善された代謝コントロールを示す。
【0054】
Cimicifuga racemosaの抽出物を含む又はからなる本発明による薬学的組成物は、細胞へのグルコースの取り込み亢進及びインスリンレセプターの感受性の改善によって、ヒト患者の血糖恒常性を改善する医学的有用性を有し、体重の減少をもたらす。
【0055】
さらに、本発明による薬学的組成物は、耐糖能障害を有するヒト患者の血糖を改善し、かつ、確定的な糖尿病への変換を予防又は遅延する。
【0056】
本発明による薬学的組成物は、コントロールの不十分な血糖及び/又は第2のインスリンレセプターの抵抗性の兆候を有する、インスリン依存性1型糖尿病に罹患しているヒト患者の糖尿病症状を処置するのに効果的である。
【0057】
実施例4 − 雄ob/obマウスにおけるグルコースコントロール及び体重に対する抽出物のインビボ活性
体重、1日の食物及び水分摂取量、並びにグルコースコントロールに対する、実施例1に従って調製されZe450と称されたCimicifuga racemosa抽出物の7日間の経口投与の効果を、以下のように雄ob/obマウスにおいて調べた。ob/obマウスは十分に特徴付けられており、かつ、哺乳動物における、特にヒトにおける肥満及び糖尿病のインビボモデルを表現し、この両方の疾患は、レプチンをコードするob遺伝子の突然変異の結果である。前記研究において、メトホルミンは陽性対照であった。
【0058】
試験化合物Ze450は、1.25の塩係数を使用して投与用ビヒクル(PEG300)中で製剤化された。それは試験開始時に製剤化され、分注され、冷蔵庫で保存された。メトホルミンは、1.25の塩係数を使用して脱イオン水中で製剤化された。メトホルミンは、毎日投与直前に調製された。薬物は3ml/kgの適切な投与容量で投与された。メトホルミン及びD−グルコースは、RenaSci Ltdによって供給された。薬物の用量は、遊離塩基に関連する。
【0059】
68匹の雄のob/obマウス(約7/8週令;4匹の予備;Janvier, Franceからの)を標準的な食餌(Harlan Teklad Global 2018食餌)及び水道水に自由に近づけるようにして1匹ずつ飼った。全マウスを、24±2℃及び55±20%の湿度で、16時間点灯/8時間消灯という逆の位相の明暗サイクルで維持した(点灯は約17:30〜09:30(時間))。
【0060】
動物を施設に1週間かけて慣れさせた。第2週の間に、動物にビヒクルを1日1回経口投与(n=50)又は腹腔内投与(n=18)する(−6日目から0日目まで)というベースラインプロトコールを確立した。ベースライン投薬の前に、動物は統計学者によって2つの群(n=50及びn=18)に体重に基づいて割り当てられた。投薬は毎日08:45から始まり、よって動物の約半分が消灯する前に投薬され、半分が消灯した後(09:30)に投薬された。体重、食物及び水分摂取量は、毎日記録された。ベースライン期の間に、動物は側面尾静脈から採血され(30μl)、試料はヘパリンリチウムのコーティングされたチューブ(Sarstedt CB300LH)に入れられ、すなわち、試料は自由に摂食している動物から採取された。採血は16:00に開始された。全ての血液試料を収集直後に遠心分離にかけ、血漿画分を凍結保存し(−80℃)、その後、市販されているキット及び試薬(Thermo Scientific Infinity glucose reagent TR15498, Alpco mouse ultrasensitive insulin kit 80-INSMSU-E10)を使用して、血漿グルコース(2回)及びインスリン(1回実施)を決定した。その後、ベースライン処置を継続した。ベースライン期の終了に向けて、動物を体重、ベースラインの食物及び水分摂取量、並びに血漿グルコース及びインスリンに基づいて8つの処置群に割り当てた。
【0061】
体重、食物及び水分摂取量は、投薬6日前から投薬が開始された6日後まで毎日測定された。動物は、7日目の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)のために6日目に一晩かけて断食した。また、−4日目から6日目まで動物から自由に採血した。ベースライン期の間に、A群及びB群の動物に水をPO(経口)投与した。C〜F群の動物に0日目までPEG300(PO)を投薬し、0日目に5%Tween80、5%PEG400、90%食塩水に切り替えた。動物2、4、9、11及び13(G群及びH群)は−6日目にPEG300の腹腔内(IP)投薬に悪く反応したので、これらの群の他の動物にはこの日に食塩水を腹腔内投薬した。−5日目から0日目に、G群及びH群の動物に5%Tween80、5%PEG400、90%食塩水を腹腔内投薬した。
【0062】
マウスに、1日1回経口的に又は腹腔内に(初回の投薬時に約8/9週令)7日間、以下に詳述したようなビヒクル又は試験薬を投与した:
【0063】
【表1】
【0064】
全ての処置は、1日1回、経口で、経管栄養法によって、又は腹腔内に投薬された。処置期間中、食物摂取量、水分摂取量及び体重は投薬期間中毎日記録された。投薬後、動物を検査し、あらゆる明白な行動を記録した。投薬は全ての群について毎日08:45に開始した。6日目の午後に、ベースライン期についての血液試料を前記したように収集した。動物は、摂食状態で16:00に採血を受けた。30μlの血液をヘパリンリチウムのコーティングされたチューブ(Sarstedt Microvette CB300 LH)に入れた。各試料を直ちに遠心分離にかけ、血漿を分注チューブに分配した。全ての血漿試料を−80℃で凍結させ、続いて市販されているキット及び試薬を使用してグルコース(2回)及びインスリン(1回実施)含量についてアッセイした。続いて食物を各動物から取り除いた。
【0065】
翌日の朝に(7日目)、マウスはOGTTを受けた。各動物に、ビヒクル又は試験化合物を投薬し、適切な間隔(例えば60分間)後、動物にD−グルコース(2g/kgを経口的に)を投薬した。ベースラインの血液試料は、化合物の投薬直前(時間=−15分)及びグルコース負荷直前(時間=0分)に採取された。さらに他の血液試料はグルコース投与の15分後、30分後、45分後及び60分後に採取された。全ての血液試料(30μl)は尾静脈から採取された。血液試料は、ヘパリンリチウム化チューブ(Sarstedt Microvette CB300 LH)に入れられ、血漿を遠心分離によって分離した。全ての血漿試料を−80℃で凍結させ、続いて市販されているキット及び試薬を使用してグルコース(2回)及びインスリン(1回実施)についてアッセイした。
【0066】
OGTTの終了時に(すなわち最後の投薬から2時間後に)、B群、D群、E群、F群及びH群の全ての動物を計画1の方法によって殺滅し、末梢血試料を心臓穿刺を介して採取した。各末梢血試料(0.6ml)をヘパリンリチウム収集用チューブ(例えばSarstedt multivette(登録商標)600LH)に入れた。血液試料を遠心分離にかけ、血漿画分(約250μl)を標識された収集バイアルに移した。血漿を分析するまで−80℃で凍結保存した。全ての他の動物もと殺した。
【0067】
体重、食物摂取量及び水分摂取量は、平均値±SEMとして表現された。体重、体重増加、1日及び平均の食物及び水分摂取量データ、並びに累積食物摂取量を、共変数としてのベースラインを用いてANCOVAによって分析し、続いて適切な比較(両側)を行なって、適切な対照群の有意差を決定した。P<0.05が統計学的に有意であると判断された。ベースラインは、体重に関する1日目の数値、又はベースライン期間におよぶ平均食物もしくは水分消費量として設定された。
【0068】
血漿グルコース及びインスリンのデータを、1因子としての処置、及び共変数としての採血順及びベースラインの体重及び血漿グルコース又はインスリンを用いてロバスト回帰によって分析し、続いて適切な比較(両側)を行なって、適切な対照群の有意差を決定した。ログ変換を適宜使用した。
【0069】
AUC(0〜60分)を台形公式(全AUC及びベースラインのAUCとして計算)によって計算し、同じ方法によって分析した。
【0070】
動物は全処置に対して十分な耐容性を示した。ベースライン期間中に処置群間に体重の統計学的差異はなかった。6日間の処置後、メトホルミンは全体重に対して有意な効果を及ぼさなかった(
図1b)。経口の対照と比較して、Ze450は、有意かつ用量依存的な体重の減少を引き起こした(−1.99〜2.61g)。30mg/kgのZe450の腹腔内投与は、最も強力な体重の減少を示した(−4.49g;p<0.001)。
【0071】
6日間の処置におよぶ累積体重は、経口投与されたZe450に対して有意で用量依存的な減少を示した(
図2A参照)。この減少は、2つのより高い経口用量についても有意であった(例えば30mg/kg及び90mg/kgのZe450)。最大の減少が、Ze450が腹腔内注射によって投与された処置群において観察された。メトホルミンに関しては、その対照群と比較して実質的に全く減少が見られなかった(
図2B参照)。体重の減少は、食物摂取量の有意な減少と一致する(
図3参照)。
【0072】
食物摂取量の最大の減少が、30mg/kg/日のZe450の腹腔内注射を受けた群において観察された。このことは、経口投与群で観察された食物摂取量の減少が、動物の上部消化管の局所刺激及び有害な食物の回避に起因しなかったことを示す。
【0073】
抗糖尿病作用に関する非常に感度の高いマーカーの効果は、水分摂取量の減少である。メトホルミンは、毎週の平均水分摂取量の有意(p=0.002)な減少を示した。経口投与用のZe450の2つの最も高い投与量(1日30mg/kg及び90mg/kg)では、水分摂取量の同程度な減少が観察された(P=0.022)。最大の減少が、30mg/kg/日のZe450の腹腔内投与後に観察された。
【0074】
OGTT中の経口グルコースボーラスに対するグルコース及びインスリン応答の効果を
図5及び6に示す。経口によるZe450の処置は、中間(10mg/kg)及び高い(30mg/kg)投与量群においてOGTTの最初の30分間の間にグルコース濃度の増加を有意に減少させた。対照(ビヒクル)と比較して、グルコース濃度/時間曲線のプロファイルは延長され、これは全ての経口によるZe450による処置に関して、60分後に統計学的に有意であった(p<0.05)(
図5a)。これはまた、腹腔内によるZe450による処置に関しても明白であり、平均グルコース濃度はOGTTの開始から15分後から60分後の間で実質的に不変であった。グルコースに対するメトホルミンの効果は、Ze450の腹腔内投与の効果と類似していた(
図5b)。
【0075】
インスリン濃度に対する処置の効果を
図6a及び6bに示す。Ze450の各経口投与は、ビヒクル対照と比較して、グルコース濃度を有意に減少させた。減少は用量依存的であったが、用量に比例はしていなかった。30mg/kgの用量のZe450がほぼ最大の効果を示し、これは、90mg/kgまで用量を増加させることによってさらに有意に増加しなかった。類似の効果が、メトホルミン及びZe450の腹腔内投与で見られた。
【0076】
ob/obマウスにおける上記の実験の効果は以下のように要約される。Ze450は、質的にメトホルミンと類似した抗糖尿病効果を有する:
・ 経口投与されたZe450は、体重の有意かつ用量依存的な減少をもたらす。
・ 前記減少は、食物摂取量の有意かつ用量依存的な減少と一致する。両方の効果(体重増加の減少及び食物摂取量の減少)がさらに、Ze450の腹腔内投与によって増強され、このことは、a)活性成分が、低下した経口バイオアベイラビリティを有し、b)食物摂取量の減少は、上部消化管の局所刺激及び続く食物の回避ではなくむしろ、内分泌作用及び中枢作用の結果であることを示す。
・ Ze450は、水分摂取量を用量依存的に有意に減少させ、これは、経口糖尿病薬の典型的な効果と一致する。
・ Ze450は、OGTTにおける経口グルコースボーラス後のグルコース正常化効果を示す:ピーク濃度は有意に減少し、グルコース濃度/時間プロファイルは延長される。
・ Ze450は、OGTT中のグルコースボーラスに対するインスリン応答を有意に低下させる。
・ Ze450は、OGTT中のグルコース及びインスリン応答の調節を誘導し、これは、グルコースの代謝、恒常性の有意な改善及びインスリンに対する感受性の改善を示す。
【0077】
それ故、インビボにおいて確立された代表的な糖尿病動物モデルにおいて、抽出物Ze450によって示されるようなCimicifuga属の抽出物は、哺乳動物において有意な抗糖尿病効果を有することが証明された。