特許第6235583号(P6235583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235583画像獲得データから肝線維症を検出及びステージ決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235583
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】画像獲得データから肝線維症を検出及びステージ決定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171113BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61B6/03 360D
   A61B5/05 380
   A61B5/05 382
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-521821(P2015-521821)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2015-525637(P2015-525637A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】US2013050139
(87)【国際公開番号】WO2014011925
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/670,499
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501346962
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ミシシッピ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】スミス,アンドリュー
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−143062(JP,A)
【文献】 特開2005−319080(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/002421(WO,A1)
【文献】 特表2008−543748(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041534(WO,A1)
【文献】 特開2012−115383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14,5/05,8/00−8/15,5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコンピュータ断層撮影又は磁気共鳴医用画像を含む肝臓の1以上の医用画像を処し、
複数の肝臓区画の各々について面小結節測定値を定量し、
該表面小結節測定値の組合せに基いて、前記複数の肝臓区画の各々について肝表面小結節スコアを算出し、
前記複数の肝臓区画の各々についての肝表面小結節スコアから算出した平均又はメジアンの肝表面小結節スコアに少なくとも基いて、少なくとも1つの肝線維症又は肝硬変の重篤度のステージを決定すること
を含んでなる、対象者における少なくとも1つの肝線維症又は肝硬変の確認を補助するデータを取得するための、コンピュータにより実行する方法。
【請求項2】
肝表面小結節スコアが連続単位で表わされ、高い肝表面小結節スコアが高いステージの肝線維症又は肝硬変に関連付けられる請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記表面小結節測定値の定量が、前記複数の肝臓区画の各々について検出された肝臓境界を決定することを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記肝表面小結節スコアの算出が、前記複数の肝臓区画の各々について検出された肝臓境界に平滑化スプライン関数をフィットさせることを更に含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記医用画像の少なくとも1つを処理して少なくとも1つの肝容積測定値を獲得し、該測定値と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定する臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記医用画像の少なくとも1つを処理して少なくとも1つの肝形態測定値を獲得し、該測定値と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
肝臓の年齢、肝臓が属する身体のボディー・マス・インデックス、血液臨床検査結果、尿臨床検査結果若しくは唾液臨床検査結果の少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを取得して考慮し;該考慮と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導くことを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの血液臨床検査結果を取得して考慮し、該結果と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスを用いて、少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスから肝硬度の物理的尺度を取得し;該測定結果と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
肝硬度の物理的尺度を取得する工程が、トランジェントエラストグラフィー(TE)、超音波剪断波エラストグラフィー(SWE)、超音波音響放射圧エラストグラフィー(ARFI)、超音波歪(静的又は圧迫)エラストグラフィー又は磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)の少なくとも1つにより肝硬度定量値を測定することを含む請求項に記載の方法。
【請求項11】
肝臓の1以上の医用画像を処理する工程が、炎症、線維性組織、瘢痕化又は再生結節の少なくとも1つの存在と関連付けられる肝表面の不規則な外向き突起及び内向き突起に起因する肝表面小結節を測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検出された肝臓境界の各画素で、該検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離を測定することを更に含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記測定された距離に数学的調整を適用することを更に含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記数学的調整が前記距離の指数関数的増幅又は対数変換の1以上を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出された肝臓境界を自動的に2mm切り取ることを更に含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記検出された肝臓境界の長さを測定し、記録することを更に含んでなる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の肝臓区画から検出された肝臓境界の長さの合計が10cmを超える請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先の出願
[01] 本出願は、2012年6月11日に出願した米国特許出願第61/670499号の利益を主張する。この出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[02] 本明細書に記載の方法の例は、疑われているか又は疑われていない慢性肝疾患を有する個体において、肝生検の必要性を低減させるか又は回避するために、肝線維症及び/又は肝硬変についてスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、該疾患の治療応答性を評価するように設計される。
【0003】
[03] 肝線維症は、異なる治療条件下で退行し、安定化し又は硬変に進行し得る肝臓の炎症及び線維性瘢痕化の状態である。肝硬変は、慢性進行性肝線維症の結果であり、肝組織が線維性瘢痕組織及び再生結節に置き換わることで特徴付けられる。肝硬変は代償不全となり得、肝不全、腹水症、静脈瘤、肝細胞ガン腫、肝性脳症及び死亡に至り得る。
【0004】
[04] 代償性肝硬変は無症候性であるので、肝硬変は診断されないことが多く、米国人口の最大1%(3.1百万人)が肝硬変を有すると推定されている。肝硬変は、11番目の死亡原因であり、米国で毎年25,000人の死亡を引き起こしている。欧州でも同様な数値が報告されており、C型肝炎ウイルス(HCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)がより一般的であるアジア及びアフリカでは、より高い数値が推定される。肝硬変のほとんどの形態は進行性であり、(侵襲的でリスクを伴う高価な)肝移植をしなければ、前記合併症や死亡に至る。
【0005】
[05] 肝硬変は、しばしば、肝疾患の合併症が臨床的に明らかになる代償不全まで、疑われず、無痛性である。代償不全性肝硬変の患者は、黄疸、腹水、出血性静脈瘤及び/又は肝性脳症の症候を示し、診断は臨床提示、病歴、血液臨床検査及び画像所見によりなされる。時には、代償不全性肝硬変を診断するために肝生検が必要となる。しかし、代償性肝硬変は無症候性であり、診断は、代表的には、偶然のスクリーニング検査(例えば、肝臓トランスアミナーゼ)又はX線所見により肝疾患が示唆され、患者が臨床評価及び肝生検を受けたときに開始される。
【0006】
[06] 肝線維症及び肝硬変の最も一般的な原因は、HCV感染、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及びアルコール性肝疾患であるが、他の原因も多い。現在、肝線維症及び肝硬変の最も一般的な原因は、HCV感染であり、米国で毎年15,000人の死亡に関係する。HCV感染の自然経過は一定していないが、最大20%の人は肝硬変に進行する。線維症も炎症も示さないHCV患者では、10〜20年にわたって重度の線維症又は肝硬変に進行するリスクは低い。架橋状線維症を有するHCV患者では、肝硬変に進行するリスクが高い。
【0007】
[07] 米国の成人人口の最大30%がNAFLDを有する。NAFLDには、単なる脂肪症、炎症を伴う脂肪症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)及びNASH硬変が含まれる。発症率が増加している肥満との関連性のため、NAFLD及びNASHは発症率が増加している。NASHは、トランスアミナーゼ上昇を伴うNAFLD患者の40%〜75%程度に存在し、トランスアミナーゼが正常であるNAFLD患者の多くがNASHを有する。NASHは、10〜20%の人で肝硬変に進行する可能性があり、次の10年で肝硬変の原因の第1位となると予測される。一般人口におけるNAFLDの高い罹患率及びいずれのNAFLD患者もNASHを有し得ることを考慮すれば、西洋諸国の人口の1/4近く(米国では775,000人に相当)がNASHについてのスクリーニングを必要とすると推定される。
【0008】
[08] 肝線維症及び肝硬変の治療は、肝硬変への進行を停止又は遅延させて、代償不全性肝硬変の合併症を低減又は遅延させるものである。HCV感染又はNAFLDを有する患者が全て肝線維症又は肝硬変を発症するとは限らない。それが代償不全性でなく、門脈圧亢進の臨床的に検出可能な徴候(例えば腹水症又は症候性静脈瘤)に至らない場合、肝硬変は診断が困難である。肝線維症及び代償性肝硬変は無症候性であり、スクリーニング手段がなければ、HCV感染又は既知のNAFLDを有する患者においてさえ検出できない。
【0009】
[09] いずれかの原因の肝線維症及び肝硬変を診断する従来法は、無作為肝生検による。HCV感染患者における生検による肝線維症のステージ決定は、しばしばMETAVIR法より行われる。METAVIR法は、肝臓病理学者による組織病理学的生検サンプルの主観的評価に基づいて疾患を5群(F0〜F4)に分類するものである。肝線維症をステージ決定する類似の組織病理学的分類法(F0〜F4)がNAFLDで使用される。生検は、サンプリングエラー、生検サンプルの主観による定性的評価及び(連続単位でない)カテゴリー分類、生検結果報告における観察者内及び観察者間でのバラツキ、高コスト、比較的長い手順時間(特に、意識鎮静を使用する場合)、低い処理能力並びに疼痛、出血、感染及び(稀ではあるが)死亡のリスクに起因して、次善の臨床ツールである。更に、生検結果により、肝硬変の重篤度をステージ決定することはできない。肝硬変のステージ決定は、合併症の予測及び治療並びに肝移植の割当てに重要である。肝硬変のステージ決定は、チャイルド・ピュー(Child-Pugh)分類又は末期肝疾患モデル(Model for End Stage Liver Disease;MELD)スコアにより行われるような臨床因子及び臨床検査因子の組合せによる。肝生検のこのような短所が、生検に代替できる非侵襲検査の開発への関心を抱かせる。
【0010】
[010] 超音波、コンピュータ断層撮影(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)による医用画像のルーチンの定性的評価は、一般に、肝硬変の検出に関して感度が悪く、肝硬変の重篤度のステージ決定に関して不正確であると考えられている。しかし、極度の肝表面小結節及び静脈瘤に関する主観的な医用画像評価の特異性は、末期肝硬変では高い。医用画像法の現在の役割は、静脈瘤、腹水、肝細胞ガン腫及び肝静脈又は門脈の血栓症の検出を含む、肝硬変の合併症の検出である。ルーチンの医用画像法は、臨床実務では、肝線維症又は初期ステージの(代償性)肝硬変をスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、又は該疾患の治療応答性を評価するために使用されていない。
【0011】
[011] 肝線維症を非侵襲的にステージ決定する2つの有力な方法としては、臨床検査(主に血液検査)及び肝臓の物理的硬度を測定する検査が挙げられる。種々の血液検査は、HCV感染個体において、正常肝臓及び炎症性肝臓と肝線維症及び肝硬変との弁別に関して中度〜高度の正確性(受信者動作特性曲線[ROC]下面積のメジアン範囲0.59〜0.86)を有し、非硬変肝臓と硬変肝臓との弁別に関して中度〜高度の正確性(ROCメジアン範囲0.65〜0.91)を有する。NAFLD患者において、血液検査を用いて類似の正確性が見出されている。
【0012】
[012] 肝硬度の増大は肝線維症及び肝硬変の増大と関連付けられている。画像又は臨床測定デバイスから肝硬度の定量的な物理的尺度を提供する幾つかの技法が提案されている。具体的には、肝硬度は、トランジェントエラストグラフィー(TE)、超音波剪断波エラストグラフィー(SWE)、超音波音響放射圧エラストグラフィー(ARFI)、超音波歪(静的又は圧迫)エラストグラフィー、磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)及びその他の方法により測定される。これら方法の各々は、軽度肝線維症と重度肝線維症及び肝硬変との弁別及び非硬変肝と硬変肝との弁別に関して中度〜高度の正確性を有する。トランジェントエラストグラフィー及び超音波エラストグラフィー技法の課題は、中度〜重度の肥満患者における適用可能性が制限されていること、種々の因子(オペレーターの経験、患者の体型、腹水の有無など)に関連して結果再現性が最適でないこと、肝臓全体又は肝臓中心域の剛性を評価できないこと、測定専用デバイスの必要性、専用デバイスなしでは先行研究の超音波画像で剛性測定を行えないこと、異なるベンダー間で方法が標準化されていないこと及び肝硬度の他の原因(例えば、心疾患に由来する肝うっ血)に起因する偽陽性症例である。MREの主な課題は、中度〜重度の肥満患者又は鉄過剰患者における適用可能性が制限されていること、測定専用デバイスの必要性、専用デバイスなしでは先行研究の磁気共鳴画像で剛性測定を行えないこと、可搬性の欠如及びMRI設備の必要性、処理能力が低く時間がかかること、複数のスキャナー及びベンダー間で技法を標準化できないこと、MREに対する禁忌を有する個体の頻度(例えば、ペースメーカーを有するか又は閉所恐怖症の個体)、高コスト、アーチファクト及びMRE検査の失敗並びに肝硬度の他の原因に起因する偽陽性症例である。
【0013】
[013] 医用画像上での区画の肝容積の評価及び肝実質小結節の主観的評価は、重度の肝線維症及び肝硬変の特徴に関して、その価値が評価されたが、読取者は画像専門家であったにもかかわらず、これら方法の全体的な正確性は芳しくない(<67%)。この乏しい正確性は、特に、MRIによる肝実質小結節の存否についての評価において、観察者間で一致性が乏しいこと(3人の読取者間での全体κ 0.33)に帰することができる。同様な乏しい正確性(45%)が、高周波超音波による肝表面小結節の主観的分析で見られた。CT画像上での主観的な定性的小結節評価による肝硬変診断の正確性は、より高かった(ROC 0.92)が、観察者間の一致性は、ルーチンの臨床実務としては満足できないものであった(κ 0.75)。専門家が医用画像を解釈したときでさえ、これら技法は、臨床実務に組み込むに十分に高い正確性又は再現性を有するものとは認められていない。なぜならば、特に、慢性肝疾患患者の看護のあらゆる時点で、専門の読取者を普遍的に準備できないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[014] CT、MRI及び超音波による肝疾患の医学的撮像から25年以上経っているにもかかわらず、本特許出願まで、医用画像上で肝表面小結節を測定する定量法を提案するか発明した者はいない。先行の方法は全て、肝臓の医用画像の解釈を専門家が行うので、肝表面小結節の存否に関して(定量的でない)定性的な二値的評価であった。
【0015】
[015] よって、本発明は、既存の技法及び先行技術では達成できない、長年の要求に答えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
[016] 本明細書に記載の方法の例は、疑われていないか又は疑われている慢性肝疾患を有する個体において、肝生検の必要性を低減させるか又は回避するために、肝線維症及び/又は肝硬変についてのスクリーニング、該疾患の診断、該疾患の重篤度のステージ決定及び該疾患の治療応答性の評価の少なくとも1つの用途に設計される。本方法は、肝線維症及び肝硬変の診断及び/又は治療の分野の当業者たるX線技師及び医師による肝臓の医用画像の解釈における使用を意図するものである。
【0017】
[017] 本発明の1つの実施形態は、肝臓の1以上の医用画像を計算機を用いて処理して、肝表面の小結節を定量し、肝表面小結節スコアを算出することを含んでなる、対象者における少なくとも1つの肝線維症又は肝硬変を確認する方法である。
[018]
実施形態では、本方法は、肝表面小結節スコアを計量値(metric)として処理することを更に含んでなり、ここで、該処理工程は、個体のコンピュータ断層撮影(CT)画像、磁気共鳴(MR)画像又は超音波グレースケール医用画像の少なくとも1つを考慮する。
【0018】
[019] 本発明の別の1つの実施形態では、肝表面小結節スコアは連続単位で表わされ、高い肝表面小結節スコアが高いステージの肝線維症又は肝硬変に関係付けられる。
[020] 本発明の別の1つの実施形態は、肝臓境界縁区画の検出及び該区画の医用画像の画質向上並びに検出された肝臓境界からの肝表面小結節の測定を実行するソフトウェアアルゴリズムを用いる計算機で肝表面小結節スコアを作成することを更に含んでなる。
【0019】
[021] 別の1つの実施形態は、肝臓境界の検出された区画と滑らかな肝表面の区画の軌跡を模倣する平滑化スプライン関数との間の乖離を考慮することにより計算機で肝表面小結節スコアを作成することを更に含んでなる。
[022] 別の1つの方法は、前記医用画像の少なくとも1つを処理して少なくとも1つの肝容積測定値を獲得し、該測定値と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定する臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる。
【0020】
[023] 別の1つの実施形態は、前記医用画像の少なくとも1つを処理して少なくとも1つの肝形態測定値を獲得し、該測定値と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を含んでなる。
[024] 別の1つの実施形態は、医用画像上で又は内視鏡検査報告により静脈瘤を特定し、静脈瘤の存在を門脈圧亢進を有する肝硬変を診断するために利用する工程を含んでなる。
【0021】
[025] 別の1つの実施形態は、肝臓の年齢、肝臓が属する身体のボディー・マス・インデックス、血液臨床検査結果、尿臨床検査結果若しくは唾液臨床検査結果の少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを取得して考慮し;該考慮と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導くことを含んでなる。
【0022】
[026] 別の1つの実施形態は、少なくとも1つの血液臨床検査結果を取得して考慮し、該結果と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる。他の可能な検査結果としては、例えば、尿臨床検査結果、唾液臨床検査結果、血小板数、アルブミンレベル、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)レベル、プロトロンビン時間及び国際標準化比(INR)レベル、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、アルカリホスファターゼレベル、ビリルビンレベル、血清ウイルスレベル又は力価、α-フェトプロテイン(AFP)レベル、トータルコレステロールレベル、LDHコレステロールレベル、HDLコレステロールレベル、トリグリセリドレベル、α-2-ミクログロブリンレベル、ハプトグロビンレベル、アポリポタンパク質A1レベル、ヒアルロン酸レベル、アミノ末端プロペプチドレベル、組織メタロプロテアーゼインヒビターレベルの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0023】
[027] 別の1つの実施形態は、少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスを用いて、少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスから肝硬度の物理的尺度を取得し;該測定結果と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせて肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導く工程を更に含んでなる。肝硬度の物理的尺度を取得する工程は、トランジェントエラストグラフィー(TE)、超音波剪断波エラストグラフィー(SWE)、超音波音響放射圧エラストグラフィー(ARFI)、超音波歪(静的又は圧迫)エラストグラフィー又は磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)の少なくとも1つにより肝硬度定量値を測定することを含んでいてもよい。
【0024】
[028] 別の1つの実施形態では、肝臓の1以上の医用画像を処理する工程が、炎症、線維性組織、瘢痕化又は再生結節の少なくとも1つの存在と関連付けられる肝表面の不規則な外向き突起及び内向き突起に起因する肝表面小結節を測定することを含んでもよい。
【0025】
[029] いずれの実施形態又は実施形態のいずれの組合せも、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導くために小結節形成スコアと組み合わせることができると理解される。例えば、少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスを用いて、少なくとも1つの画像測定デバイス又は臨床測定デバイスから肝硬度の物理的尺度を取得し;該測定結果と前記肝表面小結節スコアとを数学的に組み合わせる工程は、肝線維症及び/又は肝硬変をステージ決定するコンポーネント臨床予測アルゴリズムを導くために、肝硬度の物理的尺度を取得する工程と組み合わせることができる。
【0026】
[030] 本発明の1つの実施形態は、連続単位の肝表面小結節スコアを導くソフトウェアアルゴリズムを用いて、個体のルーチン医用画像(CT、MRI又は超音波)上で肝表面小結節を定量する方法である。本発明の別の1つの実施形態は、連続単位を分類又は使用して臨床的に重要である閾値を得られるような本方法の拡張である。
【0027】
[031] 本発明の1つの実施形態は、肝硬変をスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ分けし、該疾患の治療応答性を評価するために使用することができる肝表面小結節スコアの確立である。肝表面小結節スコアを、肝形態尺度、門脈圧亢進の尺度及び臨床検査因子の尺度の少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せと組み合わせて用いるとき、肝線維症及び肝硬変の両方をスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ分けし、該疾患の治療応答性を評価することが可能になる。加えて、肝表面小結節スコアを肝硬度を測定する定量法と数学的に組み合わせて、肝線維症及び肝硬変の両方をスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ分けし、該疾患の治療応答性を評価する代替法を提供することが可能となる。肝表面小結節スコアと他の前記変量及び因子との数学的組合せは、複数の形式及びバリエーションで行うことができるので、本特許出願に独特な着想は数学的組合せであり、特定の数式ではない。
【0028】
[032] 例えば、本発明の1つの実施形態は、肝表面小結節スコアと区画の肝容積(例えば左外側区画の肝容積 対 全肝容積の比)、静脈瘤(門脈圧亢進の徴候)の有無及び血中血小板レベルとの組合せである。
【0029】
[033] 本発明の方法の利点は多数あり、少なくとも以下のものを含む:非侵襲性;肝線維症及び/又は肝硬変の重篤度と相関する肝表面小結節の程度について定量的な連続数値を提供すること;高度に標準化された定量的な画像収集・処理法の利用;医用画像の迅速で、信頼性のある定量的分析を伴う短い走査時間;慢性肝疾患患者を治療する病院で広く利用可能なCT、MRI又は超音波のルーチン医用画像を使用できること;同じ個体の医用画像について複数の画像測定が可能であり、肝表面全体のサンプルを提供できること;新たに収集した画像と同様に以前に集めた医用画像も処理できること;高処理能力;画像収集及び肝表面小結節測定に対する禁忌がほとんどないこと;並びに画像収集の低コスト及び肝表面小結節測定の低コスト。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】肝表面小結節ソフトウェアアルゴリズムが、異なるステージの肝疾患を有する3人の個体の非コントラスト(noncontrast)コンピュータ断層撮影画像を表示し、分析する方法を示す。
図2】肝表面小結節ソフトウェアアルゴリズムが、異なるステージの肝疾患を有する2人の個体の磁気共鳴画像を表示し、分析する方法を示す。
図3】肝表面小結節スコアの算出のために、検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離を測定する方法を示す。
図4】最大平均法及び最大SD法による肝表面小結節測定値をHCV誘導肝線維症/肝硬変のステージ(N=96)と関係付ける方法を示す。
図5】肝表面小結節スコアをHCV誘導肝硬変患者(N=56)におけるMELD及びチャイルド・ピュースコアと関係付ける方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
[039] 本発明は、以下の発明の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することでより容易に理解することができる。
[040] 本明細書で言及する全ての刊行物は、参照により、それら刊行物を引用して記載された方法及び/又は材料が本明細書で開示され説明されているように本明細書に組み込まれる。本明細書で言及する刊行物は、本願出願日前のその開示に関してのみ提供されるにすぎない。本明細書において、本発明が先行発明のために当該刊行物に先行しているとする資格がないことを自認したように解釈されるものではない。更に、本明細書に示す刊行物の刊行日は、実際の刊行日と異なることがあり、自主的に確認する必要がある。
【0032】
[041] 特定の用語が本明細書で使用されているが、それらは一般的で記述的な意味でのみ使用され、限定を目的としていない。全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本明細書で使用する場合、そうでないと定義されていない限り、本発明が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。更に、用語、例えば通常使用される辞書で定義されているものは、本発明が属する分野における当業者が通常理解するような意味を有すると解釈されるべきと理解される。更に、用語、例えば通常使用される辞書で定義されているものは、該当する分野及び本開示に照らした意味と一致する意味を有すると解釈されるべきと理解される。このような通常使用される用語は、本明細書中の開示がそうでないことを定義していない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0033】
[042]
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないこと明白に示していない限り、複数への言及を含むものとする。例えば、用語「測定」は複数の別個の測定を含むものとする。
[043]
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる」は、当該組成物又は方法が示された要素を含み、その他の要素を排除していないことを意味するものとされる。
[044] 本明細書で使用する場合、「対象者」、「個体」又は「患者」は、本明細書中で互換可能に使用されるが、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトをいう。哺乳動物は、ネズミ、サル、ヒト、家畜動物、競技用動物及びペットを含むがこれらに限定されない。
【0034】
[045] 句「肝臓の病状」は「肝障害」又は「肝疾患」と互換可能に使用され、任意の構造的及び/又は機能的な肝臓の異常を示す。本発明の実施形態により企図される肝臓の病状の非限定的例は、肝線維症、肝硬変及びその他の中毒性肝損傷と関連する状態を含む。
[046] 本明細書で使用する場合、用語「肝線維症」とは、肝臓における炎症及び瘢痕組織の存在をいう。用語「肝硬変」とは、肝組織が線維性瘢痕組織及び再生結節に置き換わることで特徴付けられる慢性進行性肝線維症により定義される、進行ステージの肝線維症をいう。本明細書及び特許請求の範囲のためには、「硬変」は、肝線維症の1つのタイプであるとみなされ、本明細書で使用される用語「線維症」の意味の範疇に含まれる。
【0035】
[047] 本明細書で使用する場合、用語「形態」とは、肝線維症及び肝硬変の変化に関係する、肝臓又は肝臓の区画の二次元形状又は三次元形状をいう。本明細書及び特許請求の範囲のためには、「形態」はまた、肝表面小結節の原因である、肝形状の二次元的又は三次元的変化をいい得る。
[048] 本明細書で使用する場合、用語「小結節」とは、進行型肝線維症及び肝硬変で見出される、再生結節、線維帯及びその他の形態変化により引き起こされる、肝表面の外向き突起及び内向き陥凹及び全体的凹凸をいう。
[049] 本明細書で使用する場合、用語「肝臓境界」とは、医用画像上での肝臓の外表面又は縁(edge)をいい、そこで肝臓は近接構造(腹部脂肪、腹水、横隔膜、腹壁筋組織並びにその他の近接の器官及び組織を含む)に接する。
【0036】
[050] 上記のとおり、本発明の方法は、肝臓の1以上の医用画像を計算機を用いて処理して、肝表面の小結節を定量し、肝表面小結節スコアを算出する工程を含んでなる、対象者における少なくとも1つの肝線維症又は肝硬変を確認する方法である。
[051] 肝臓の医用画像は、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像化(MRI)又は超音波スキャナを含む画像化デバイスにより得られる。医用画像はグレースケールで表示される。肝表面小結節スコアは、肝表面小結節スコアの定量に最適化された前向き収集医用画像(prospectively gathered medical images)から又は予め収集した医用画像から作成することができる。
[052] 本発明の、個体のCT、MR又は超音波グレースケール医用画像から肝表面小結節スコアを定量する方法の例は、2つの工程:(a)肝臓境界縁の画質向上及び検出、及び(b)肝臓境界小結節の定量に分けられるものを含む。
【0037】
[053] 肝臓境界縁の検出のために、ソフトウェアアルゴリズムを使用して医用画像を調べ、その画質を向上させる。オプションのノイズ除去フィルターと組み合わせたエッジ強調フィルターにより、肝臓境界縁の検出のために、グレースケール画像を最適化する。医用画像中の画素強度は、最適なエッジ検出のために、肝臓と近接構造(特に、腹部脂肪及び腹水)との間のコントラストを最適化する閾値決定及びウィンドウ技法により表示する。
[054] 肝臓境界縁の区画化は、個々の二次元(2D)画像を用いて又は2D画像から再構成した三次元(3D)画像を用いて行うことができる。肝臓の縁(又は表面)を、腹部脂肪、腹水、横隔膜、腹壁筋構造並びにその他の隣接器官及び組織と接触している肝臓の外側縁辺と規定する。微細な肝表面小結節の検出に最も有用な肝表面の部分は、肝表面が腹部脂肪又は腹水に接触する場所である。ただし、より大きな肝表面小結節は、他の界面、特に横隔膜との界面及び肺との界面で検出されることがある。
【0038】
[055] 画像区画化は、ユーザーが指示する関心領域(user-directed region-of-interest)(ROI)を配置することで半自動化できるか、又は画像アトラスを参照して若しくは参照することなく完全自動化できる。エッジ感度(これにより「弱い」エッジがどの程度良好に検出されるかが決定される)はユーザーが調整するが、最適化パラメータに設定されてもよい。肝臓境界縁の検出後、画素を繋ぎ合わせて肝表面に沿って線を引く;この線が「検出された肝臓境界」を表す。異なるエッジ感度を使用して、肝表面小結節スコアの定量に最適な検出された肝臓境界を見つけ出す。
[056] 肝表面小結節スコアは1つの尺度である。肝表面小結節スコアは、肝線維症及び肝硬変で見出される、再生結節、線維帯及びその他の形態変化により引き起こされる、肝表面の外向き突起、内向き陥凹及び全体的凹凸の尺度を提供する連続数値である。小結節性肝表面を有する個体に関して、外向き突起及び内向き陥凹が推定の滑らかな肝表面から大きく逸脱すればするほど、そして肝表面の全体凹凸が大きくなればなるほど、肝表面小結節スコアは大きくなる。複数の位置を測定して、肝表面小結節の妥当なサンプリングを確実にする。このことは、ユーザーが手動で行うか、又は自動若しくは半自動の方法で行うことができる。
【0039】
[057] 検出された肝臓境界が確定したら、種々の測定を行う。スプライン関数(多項式の滑らかな曲線)を、検出された肝臓境界線にフィットさせることができる。微細な又は大きな肝表面小結節を測定する異なる能力を提供する異なる輪郭を利用して複数の異なる多項式を作成することができる。或いは又は加えて、検出された肝臓境界の全体的な凹凸を直接定量することもできる。
[058] 検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離を、画素ごとに測定する。検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離がより長ければ、より大きな肝表面小結節スコアに対応する。凹凸の激しい肝表面小結節は、検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離のより大きな変動と関連し、肝表面小結節スコアが増加する。滑らかな肝表面を有する個体では、検出された肝臓境界とスプライン関数との間の差は小さいと予想される。
【0040】
[059] 肝表面小結節の検出を強化するため、検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離を指数関数的に調整する(例えば、二乗する)。これにより、より長い距離(及び対応する小結節)が強調され、滑らかな肝表面で見出すことができるより短い距離は減弱する。代替の数学的調整(例えば、対数変換)により、肝表面小結節スコアを更に強調してもよい。これら調整済み測定値の平均はROIの長さに関して測定値を補正するので、短い又は長いROIからの値を直接比較することができる。調整済み測定値の標準偏差は、全体での最大距離及び距離の分散範囲についての情報を提供し、またROIの長さに関して測定値を補正する。線間の最大距離の増大は大きな小結節に関連し、距離測定値の分散増大は小結節形成の凹凸の増大に対応する。別の1つの形態では、曲線間面積(ABC、検出された肝臓境界とスプライン関数との間の面積)を肝表面小結節の尺度として使用することができる。ABCを検出された肝臓境界の長さで除して、異なるROI間での長さの差に関して補正する。検出された肝臓境界とスプライン関数との間の距離並びに全体的な表面凹凸及び小結節形成の測定値は、肝表面小結節スコアを作成する種々の数式で得ることができる。
【0041】
[060] 本発明の別の1つの実施形態は、肝表面小結節スコアと以下:
a)医用画像からの肝形態測定値;
b)医用画像上での門脈圧亢進の徴候の有無及び/又は特定;
c)個体の年齢及び/又はボディ・マス・インデックス(BMI)及び/又は1以上の血液、尿又は唾液臨床検査
の1以上又はその任意の組合せとの数学的組合せにより、個体における肝線維症及び肝硬変についてスクリーニングし、該疾患の存在を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、該疾患の治療応答性をモニターする方法である。
[061] 例えば、肝表面小結節スコアは、区画肝容積(例えば、左外側区画 対 全肝容積の比)、静脈瘤(門脈圧亢進の徴候)の有無及び血中血小板レベルと組み合わせてもよい。
【0042】
[062] 医用画像からの肝形態測定には、個体の医用画像上での全体及び/又は区画の肝容積の測定、並びに/或いは全体及び/又は区画の肝形態測定が含まれる。全体及び区画の肝容積及び肝形態は、2Dグレースケール医用画像から導出した3D再構成データセットで定量することができる。肝形態は肝形状の尺度を提供し、これは、連続単位である種々の方法(エロンゲーション形状係数、コンパクトネス係数、ウェイビー係数など)によることができる。肝容積測定値及び形態計測値は共に肝疾患のステージと関連する。医用画像上での門脈圧亢進の徴候の有無及び/又は特定とは、存在する腹水の量及び/又は門脈圧亢進に関連する静脈瘤の有無の同定及び定性的評価をいう。静脈瘤及び腹水は、代表的には、肝硬変患者でのみ見出される。個体の年齢、BMI及び複数の血液、尿又は唾液臨床検査は、肝硬変の重篤度と関係する。これら変量及び因子の各々を肝表面小結節スコアと数学的に組み合わせて、疑われていないか又は疑われている肝線維症又は肝硬変を有する個体において、肝線維症及び肝硬変について正確にスクリーニングし、該疾患を正確に診断し、該疾患の重篤度を正確にステージ決定し、該疾患の治療応答性を正確にモニターすることができる。
【0043】
[063] 本発明の別の1つの実施形態は、肝表面小結節スコアと、画像化又は臨床測定デバイスからの肝硬度の物理的尺度との数学的組合せにより、個体における肝線維症及び肝硬変についてスクリーニングし、該疾患の存在を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、該疾患の治療応答性をモニターする方法である。肝表面小結節スコアは、グレースケールの医用画像(CT、超音波又はMRI)から上記のように測定され、トランジェントエラストグラフィー(TE)、超音波剪断波エラストグラフィー(SWE)、超音波音響放射圧エラストグラフィー(ARFI)、超音波歪(静的又は圧迫)エラストグラフィー、磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)又は他の方法により肝臓の弾性又は硬度を定量的に測定する画像化又は臨床測定デバイスからの肝硬度の物理的尺度と数学的に組み合わされる。肝表面小結節スコア及び肝硬度測定値は連続単位であり、ロジスティック回帰又は多項式により数学的に組み合わせることができる。
【0044】
[064] 本発明は、1以上の好適な実施形態に関して説明され、明示的に言及したものの他に、多くの等価物、代替物、変形体及び改変体が可能であり、本発明の範囲内であることを理解すべきである。特に、当業者は、肝表面小結節の定量用ソフトウェアアルゴリズムは、肝表面小結節の定量的測定値を提供する種々の形式又は代替の形式で記述することができることを理解する。また、肝表面小結節スコアと、医用画像からの肝形態測定値、医用画像上での門脈圧亢進の徴候の有無及び/又は特定、個体の年齢及び/又はボディ・マス・インデックス及び/又は1以上の血液、尿又は唾液臨床検査、肝硬度の物理的尺度との精密な数学的組合せも、種々の形式又は代替形式で記述することができる。
【実施例】
【0045】
実施例
[065] 以下の実施例は本発明の実施形態の例示として意図され、本発明を制限するものと解釈されることを意図していない。
【0046】
[066] 本発明の1つの実施形態は、個体の医用画像(CT、MRI又は超音波)上での肝表面小結節の定量用ソフトウェアアルゴリズムであって、疑われていないか又は疑われている肝線維症及び/又は肝硬変を有する個体において、肝線維症及び/又は肝硬変についてスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、該疾患の治療応答性を評価するために単独で又は他の変量との組合せで使用できる肝表面小結節スコアを導くソフトウェアアルゴリズムである。肝表面小結節スコアは、疑われていないか又は疑われている肝線維症及び/又は肝硬変を有する個体において、肝線維症及び/又は肝硬変についてスクリーニングし、該疾患を診断し、該疾患の重篤度をステージ決定し、該疾患の治療応答性を評価するために、記載されるような他の変量と数学的に組み合わせることができる。数学的組合せは、より低いステージの肝線維症を同定し識別するための正確性を向上させる。
【0047】
[067] 本実施例では、ソフトウェアアルゴリズムが、DICOMフォーマットで肝臓のグレースケール医用画像を開いて表示する(図1及び2)。ユーザーは、肝表面を評価するために所望するとおりに、肝臓の軸位像をスクロールし、画像を拡大しパンすることができる。
[068] ユーザーは、画像のウィンドウー設定を手動で調節して、肝表面境界検出を向上させることができる。CT画像については、ウィンドー幅は225に予め設定され、ウィンドー中心は、モノコントラスト肝臓CT画像については50に、門脈コントラスト強調肝臓CT画像については100に設定する。代替の形態では、ユーザーが肝臓の一部の平均強度を測定し、その測定値を参照してウィンドーを設定する。
【0048】
[069] 脂肪は肝臓とは実質的に異なるシグナル強度を有するので、ユーザーは画像をスクロールして腹部脂肪との肝臓境界の位置を探す。CT画像上で、腹部脂肪の減衰は-190〜-30ハウンスフィールド単位(HU)であり、肝臓より実質的に低い。肝臓の縁を検出する基本原理は、肝臓と脂肪との間での画素強度の差である。そうであるので、画素強度の差及びウィンドー設定がCT、MR及び超音波画像に重要な特徴である。
【0049】
[070] 1つの例では、ユーザーは、円形(circular)ROIツールを選択し、単一のCT画像(単一スライス)上で肝表面に沿って彩色する(図1、中欄)。肝臓左葉の前縁がユーザー規定のROIの配置に好適な部位であるが、明白な肝表面小結節がより高い程度で他の場所に存在すれば、肝臓の前縁又は右外側縁に沿った別の部位を選択してもよい。ユーザーは、腹部脂肪との肝臓境界の位置を選択するように助言されるが、必要であれば、腹水との肝臓境界の位置を選択してもよい。ユーザーは、ROIを配置するとき、天然のシャープな縁及び裂溝を回避し、腹壁筋構造の選択を回避するように助言される。2つの異なるサイズの円形ROIツールが利用可能である。本発明者は、シャープな縁又は裂溝の不注意な選択が、時に、彩色したROIの先頭及び終端で起こることを見出した。そうであるので、これら端部を自動的に2mm切り取って、この問題の発生を低減させる。選択したROIはマスクとして働き、その範囲内で肝臓境界が検出される(図1、右欄)。代替の形態では、肝表面境界の区画化は、ROI配置を規律する予め設定したルール(例えば、肝臓境界は、厚さが少なくとも5ミリメートルと測定される腹部脂肪に対するものとする)を用いて自動的に行う。
【0050】
[071] (「弱い」エッジがどの程度良好に検出されるかを決定する)エッジ感度はユーザーが調整できる。現行版では、各ROIについて12の異なるエッジ感度が選択される。ユーザーが選択したROI内で、処理アルゴリズムが自動的に、肝臓境界縁を抽出し分析して、肝表面小結節を定量する計量値のセットを作成する(図3)。肝表面小結節の測定は12の全ての感度で行い、最高値に対応する画像をユーザーによるデータの確認及び手動の承認のために表示する。
【0051】
[072] 以下は、本発明の肝臓境界区画化アルゴリズムの一例である:
1) 低質のスキャンにおいてノイズを有する画素の境界に対する影響を低減するため、オプションのノイズ除去機能がユーザーに利用可能である。実際には、この機能は、ツールバー上でボタン操作により利用可能であったが、本発明者らのパイロット研究では必要なかったし、使用もしなかった。
2) エッジ検出フィルターを画像全体に適用してエッジマスクを作成し、そこで肝臓と周囲組織との間の高コントラスト界面に沿った画素のみを選択する。
3) 工程2で得られたマスクをユーザーが規定した彩色ROIマスクと重ねて、所望の境界を除く全ての領域を排除する(図1、中欄)。
【0052】
4) 「スケルトン化」フィルターを適用して、残っているエッジ形状を単一画素が繋がった線分にする。
5) 必要な場合、その端点が十分に近接していれば、不連続の線分を「繋ぎ合わせる」。
6) 最大/最長の線を除き、全ての線分を除去する。最長の線を所望の境界エッジと推定し、「検出された肝臓境界」と名付ける(図1、右欄)。
7) この線の両端を、上記のとおり自動的に2mm切り取る。
8) 検出された肝臓境界線の長さを測定し、記録する。
【0053】
[073] 以下は、本発明の肝表面小結節定量アルゴリズムの一例である:
1) 検出された肝臓境界線を参照として用い、ROIの範囲内にスプライン関数を描写する。スプライン関数は、検出された肝臓境界にフィットする滑らかな多項関数(滑らかな線)である。スプライン関数は、検出された肝臓境界より滑らかな(節の少ない)軌跡を有するように設計され、滑らかな肝臓境界はそのように見えるはずである線を本質的に模倣する(図1、右欄)。検出された肝臓境界は、頻繁に、スプライン関数と複数の点で交差する。
2) スプライン関数の輪郭フィットパラメータは現行版において手動で調整でき、輪郭パラメータの変更により、スプライン関数が、検出された肝臓境界に正確にマッチし又は該境界からの距離が顕著に変化する。最適な輪郭フィットは20mm設定で見出され、広範な肝表面小結節の最適な検出及び定量を可能にする比較的滑らかなスプライン関数が提供された。
【0054】
3) 検出された肝臓境界の各画素の中心とスプライン関数との間の最短距離を測定する。現行版のソフトウェアでは、距離を二乗して大きな変動の重要性を増大させる。ROI内での二乗距離(di,i=1,...,n)の平均及び標準偏差を算出して10を乗じ、それぞれ平均法(Mean Method)又はSD法(SD Method)により肝表面小結節スコアを導く。肝表面小結節スコアを規定する数式は以下のとおりである:
【数1】
【0055】
4) 上記距離は、実際には、上記した12の全てのエッジ検出感度レベルで行う。各エッジ検出感度により、異なる検出された肝臓境界及び対応するスプライン関数が得られる。SD法により最高値が得られた感度レベルでの検出された肝臓境界及び対応するスプライン関数を、ユーザーによる検討のためにスクリーン上に描写する(最大SD法(Max SD Method))。最高の平均法に対応する感度レベルも記録する(最大平均法(Max Mean Method))が、視覚的に表示しない。
5) 検出された肝臓境界を緑色で表示し、スプライン関数を赤色で表示し、ROIの長さ並びに最大SD法及び最大平均法による肝表面小結節スコアは、ツールバー中にボックス内で表示する。
【0056】
6) ユーザーが画像(図1、右欄)、ROI長及び肝表面小結節スコアを検討し、検出された肝臓境界及び対応するスコアが適切であることを確証する。適切であれば、ユーザーはツールバーのボタンを選択して、最大SD法及び最大平均法による両方の肝表面小結節測定値を保存する。検出された肝臓境界又は測定値が適切又は正確であるように見えるとユーザーが考えないとき、異なるスライスにスクロールするか又はROIツールを選択することによりスコアを破棄し、新たなROIの配置及び新たな測定値の算出のために別の位置を選択する。
7) ユーザーは、各患者について、5つの別個の位置に5つの別個のROIを配置して、肝表面小結節測定を5回行う。メジアンの肝表面小結節スコア(最大SD法又は最大平均法による)を記録する。ソフトウェアアルゴリズムの別の1つの形態では、ユーザーは、最低3回の肝表面小結節測定を行う。測定した検出された肝臓境界の長さの合計が10cmを超えるまで追加の測定が必要である。
【0057】
[074] 図1は、肝表面小結節ソフトウェアアルゴリズムにより導出した、3人の患者の非コントラスト薄層スライス肝臓CT画像を示す。上列(A)は肝疾患を有さない患者のものであり(METAVIRステージF0)、中列(B)は進行型肝硬変を有するHCV感染患者のものであり(METAVIRステージF4及びチャイルド・ピュー分類A=F4A)、下列(C)は後期ステージ肝硬変を有するHCV感染患者のものである(METAVIRステージF4及びチャイルド・ピュー分類B=F4B)。左側の画像は、所定のウィンドー設定(中心50、幅225)での肝臓の拡大図である。中欄の画像は、ペイントツールによる肝表面ROIのユーザー指示選択を示す。右欄の画像は、検出された肝臓境界(濃ダークグレーの画素で構成された線)及びスプライン関数(薄いダークグレーの線)を描く、処理された肝臓画像の5倍拡大図を示す。F0疾患の患者については、肝表面境界とスプライン関数曲線とはほぼ重複し、肝表面小結節スコアは低い(2.0)。F4A疾患の患者については、軽度の肝表面小結節が存在し、肝表面境界とスプライン関数曲線とは断続的に離間し、対応する肝表面小結節スコアは上昇してした(3.8)。F4B疾患を有する患者については、重度の肝表面小結節が存在し、肝表面境界とスプライン関数曲線とは断続的に顕著に離間し、対応する肝表面小結節スコアは顕著いに上昇した(11.2)。本実施例では、肝表面小結節スコアは、最大SD法による5回測定のメジアンであった。
【0058】
[075] 図2は、肝表面小結節ソフトウェアアルゴリズムにより導出した、2人の患者のT2加重MR画像を示す。上列(A)は肝疾患を有さない患者のものであり(METAVIRステージF0)、下列(B)は初期肝硬変を有するHCV感染患者のものである(METAVIRステージF4及びチャイルド・ピュー分類A=F4B)。左側の画像は、肝臓と腹部脂肪又は腹水との間での最適なコントラストのために調整したウィンドー設定での肝臓の拡大図である。中欄の画像は、ペイントツールによる肝表面ROIのユーザー指示選択を示す。右欄の画像は、検出された肝臓境界(大きな白色の画素で構成された線)及びスプライン関数(薄いダークグレーの線)を描く、処理された肝臓画像の5倍拡大図を示す。F0疾患の患者については、肝表面境界とスプライン関数曲線とはほぼ重複し、肝表面小結節スコアは低い(2.1)。F4B疾患の患者については、重度の肝表面小結節及び対応する肝表面小結節スコアの顕著な上昇(14.2)が存在する。本実施例では、肝表面小結節スコアは、最大SD法による5回測定のメジアンであった。
【0059】
[076] 図3は、ユーザーが規定した関心領域(ROI)により選択された、肝表面の高倍率の非強調薄層スライスCT画像を示す。これら画像は、初期肝硬変を有するHCV感染患者のものである(METAVIRステージF4及びチャイルド・ピュー分類A)。肝臓は画像の右下半分にあり、腹部脂肪は画像の左上半分にある。肝表面小結節ソフトウェアにより検出される肝表面は、大きい画素で濃い色の線で描かれ、「検出された肝臓境界」と名付けられる。スプライン関数(薄いダークグレーの線)も描かれ、検出された肝臓境界より滑らかな(節の少ない)軌跡を有するように意図的に設計され、この患者について滑らかな肝臓境界はそのように見えるはずである線を本質的に模倣する。検出された肝臓境界とスプライン関数との間に見られる薄い白色線は、検出された肝臓境界画素の中心とスプライン関数との間の最短距離を表す。検出された肝臓境界の各画素の中心とスプライン関数との間の最短距離を測定する。現行版のソフトウェアでは、距離を二乗して大きな変動の重要性を増大させる。ROI内での二乗距離(di,i=1,...,n)の平均及び標準偏差を算出して10を乗じ、それぞれ平均法又はSD法により肝表面小結節スコアを導く。
【0060】
[077] 上記の技法は、肝臓境界のエッジ強調及び検出に続く、個体の医用画像上での肝表面小結節の量及び程度に対応する連続測定数値を提供するソフトウェアアルゴリズムを用いる肝臓境界小結節定量により、MR画像(図2)及び超音波画像に適用可能である。
[078] 研究所の倫理委員会が許可した遡及的パイロット(概念実証)研究の一部として、電子カルテを使用して、2006年1月1日〜2011年3月31日の間にルーチンの肝臓CT撮像(薄層(0.6〜2.0mm)及び厚層(2.5〜5.0mm)スライス軸位像の非コントラスト及び門脈位相差強調画像(それぞれ、NCCT-薄層、NCCT-厚層、CECT-薄層及びCECT-厚層撮像)を含む)を行った患者を特定した。CT撮像から1年未満でHCV感染患者から得た肝生検標本(N=31)を、METAVIRスコア決定のために専門の肝病理学者が調べた。生検がない正常肝臓の患者(N=30)をスコアF0に割り当てた。HCV誘導肝硬変について臨床管理されているが生検がない患者(N=35)をスコアF4に割り当てた。チャイルド・ピュースコア決定を用いて、生検により証明された臨床肝硬変(F4)の重篤度をA、B又はCに群分けした(N=56)。CT撮像の6ヶ月以内の以下の血中レベルを記録した:AST、ALT、総ビリルビン、アルブミン、INR、血小板及びクレアチニン。
【0061】
[079] 各CT研究(NCCT-薄層、NCCT-厚層、CECT-薄層及びCECT-厚層)の5回測定を、或るバージョンの肝表面小結節ソフトウェアアルゴリズムを用い、疾患状態について知らない、特別研究の訓練を受けた身体撮像放射線技師が行った。ユーザーは、所定のウィンドー設定で画像を視覚的に検査し、肝臓左葉の前縁(最も見つけ易い表面小結節があり、肝縁辺が腹部脂肪に接する)に沿ってROIを選択した。この領域で測定が可能でない場合、又は明らかにより大きな肝表面小結節が他の場所に存在する場合、肝臓の前縁又は右外側縁をROI配置のために選択した。ROIを配置するとき、天然のシャープな縁及び裂溝(特に、鎌状間膜の裂溝)並びに腹壁筋構造の選択を回避した。合計5回の測定を行い、最大平均法及び最大SD法によるメジアン肝表面小結節スコアを記録した。
[080] 同じ読取者がまた、総肝容積(TLV)及び左外側区画容積(LLSV)を測定し、各撮像シリーズについて門脈静脈瘤の有無を調べた。LLSV対TLV比(LLSV:TLV比)を算出した。
【0062】
[081] ROC曲線下面積(AUC)を用いて、硬変肝と非硬変肝との弁別に関する小結節スコアの正確性を評価した。ロジスティック回帰分析を行い、肝線維症及び肝硬変のステージに対する肝表面小結節スコア、肝撮像法及び臨床検査変量の共同効果を評価した。3セットのステージ決定:F2〜F4C対F0〜F1、F3〜F4C対F0〜F2及びF4A〜F4C対F0〜F3についてモデル構築した。本発明者らは多変量分析で以下の変量を考慮した:肝容積測定値(TLV、LLSV、LLSV:TLV比)、AST、ALT、総ビリルビン、アルブミン、INR、血小板、クレアチニン、チャイルド・ピュースコア及びMELDスコア。変量のp値がいずれかのロジスティック回帰モデルで5%有意レベルに達した場合、当該変量を有意と決定し、最終モデルに残した。
【0063】
[082] CECT-薄層撮像法については、最大平均法及び最大SD法によるメジアンの肝表面小結節スコアを図4に示す。図4中のバーは、それぞれの患者群のメジアンの肝表面小結節スコアを表す。いずれの方法による肝表面小結節スコアも、肝硬変個体において、非肝硬変個体より実質的に高かった。肝硬変個体のスコアは、チャイルド・ピュー分類が高くなるにつれて漸進的に増大した。非肝硬変(F0〜F3)と肝硬変(F4A〜F4C)とを弁別する受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、最大平均法については0.982であり、最大SD法については0.982であった。CECT-薄層撮像法については、最大SD法によるメジアンの肝表面小結節スコアは以下のとおりであった:F0〜F2=1.59(N=33)、F3=1.78(N=7)、F4A=4.71(N=35)、F4B=7.58(N=16)、F4C=8.65(N=5)。全体傾向は、いずれの肝表面小結節スコア決定法によっても、そして全ての撮像法について、肝表面小結節スコアは、肝疾患のステージが前進的に高くなるにつれて増大するというものであった。
【0064】
[083] 硬変肝(N=56)と非硬変肝(N=40)とを弁別する最大SD法による肝表面小結節スコアのAUは、NCCT-薄層、NCCT-厚層、CECT-薄層及びCECT-厚層撮像法についてそれぞれ0.976、0.977、0.982及び0.977であった。各個体のCECT-薄層撮像法についての最大SD法によるメジアン肝表面小結節スコアは、MELDスコア(スピアマン相関=0.476、P=0.0002)及びチャイルド・ピュースコア(スピアマン相関=0.563、P<0.0001)と関係した。当該スコアを図5に示す。全体傾向は、肝表面小結節スコアとMELDスコア及びチャイルド・ピュースコアとの間の中程度の正の相関であった。肝表面小結節スコアは、MELDスコアが高くなるにつれ、チャイルド・ピュースコアが高くなるつれ、増大した。最大平均法による肝表面小結節スコアについて結果はほぼ同一であった。本発明者らは、ルーチンのCT画像での肝表面小結節スコアは、硬変肝と非硬変肝との識別に関して高度に正確であると結論する。
【0065】
[084] (最大平均法及び最大SD法による)肝表面小結節スコアと他の撮像法及び臨床検査変量の組合せを、HCV誘導肝疾患のステージについて、ロジスティック回帰モデルで評価した。小結節形成スコアに加え、血小板及び肝容積(LLSV:TLV比)のベースライン測定値を、肝疾患のステージの予測指標として同定した。本発明者らは、F2〜F4CとF0〜F1との弁別、F3〜F4CとF0〜F2との弁別及びF4A〜F4CとF0〜F3との弁別に使用する一連のロジスティック回帰モデルを構築した。p(x)は、所与の共変量値xに関して進行ステージの疾患を有する確率とする。NS、PLT及びLVは、それぞれ肝表面小結節スコア、血小板レベル及びLLSV:TLV比を指すものとする。ロジスティック回帰モデルは、次のように数学的に表すことができる
【数2】
(式中、logit(z)=ln [z/(1-z)])。個々のロジスティック回帰モデルにおける3変量のオッズ比を表1に示す。
【数3】
は回帰係数の最尤推定値とする。全患者についてのリスクスコアは、下式で計算した:
【数4】
【0066】
[085] 各リスクスコアセットについてのAUCは、本研究に参加した個体を弁別する基本モデルの検出を示す(表1を参照)。F2〜F4CをF0〜F1と弁別するAUCは、最大平均法では0.958であり、最大SD法では0.961であった。F3〜F4CをF0〜F2と弁別するAUCは、最大平均法では0.966であり、最大SD法では0.974であった。F4A〜F4CをF0〜F3と弁別するAUCは、最大平均法では0.997であり、最大SD法では0.997であった。単変量分析で、小結節形成スコア単独は非常に高い弁別力を有していたが、有意な撮像法及び臨床検査変量を探索することは有用であった。これら変量は、より低いステージの肝疾患において、分類の正確性を大いに改善する能力を有していた。
【0067】
【表1】
【0068】
[086] 以下の参考文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる:
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【0070】
[086] 本発明において、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、種々の改変及び変形を行い得ることが、当業者に明らかである。本発明の他の側面は、本明細書の考慮及び本明細書に記載した本発明の実施から当業者に明らかである。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考えられるものと意図されている。本発明の真正の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲に示されている。
図1
図2
図3
図4
図5