【文献】
Jinhee Park et al.,,Reversible Alteration of CO2 Adsorption upon Photochemical or Thermal Treatment in a Metal-Organic Framework,Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society,2011年12月13日,Vol. 134, No. 1,p. 99-102
【文献】
Banglin Chen et al.,,A Triply Interpenetrated Microporous Metal-Organic Framework for Selective Sorption of Gas Molecules,Inorganic Chemistry,米国,American Chemical Society,2007年 9月14日,Vol. 46, No. 21,p. 8490-8492
【文献】
Antje Modrow et al.,,The first porous MOF with photoswitchable linker molecules,Dalton Transactions,英国,The Royal Society of Chemistry,2010年11月24日,Vol. 40, No. 16,p. 4217-4222
【文献】
Nobuhiro Yanai et al.,,Guest-to-Host Transmission of Structural Changes for Stimuli-Responsive Adsorption Property,Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society,2011年12月11日,Vol. 134, No. 10,P. 4501-4504
【文献】
Antje Modrow et al.,,Systematic Investigation of porous Inorganic-Organic Hybrid Compounds with photo-Switchable Properties,Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie,ドイツ,WILKY-VCH Verlag GmbH,2012年 2月 7日,Vol. 638, No. 12-13,p. 2138-2143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属有機構造体は、金属原子どうしの間を橋渡しする分子鎖の中にシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性の基を含む一つ以上の配位子を有する、請求項1に記載の方法。
金属有機構造体は、金属原子どうしの間を橋渡しする分子鎖の中にシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性のアゾ結合またはエテン結合を含む一つ以上の配位子を有する、請求項2又は3に記載の方法。
金属はSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Ti、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2から5のいずれかに記載の方法。
切り替え刺激としての光を使用することによって第一の立体配座と第二の立体配座との間で可逆的に切り替えが可能な金属有機構造体の使用であって、第一の立体配座になっているときにガス流れから第一のガス種を吸着し、そして第二の立体配座への切り替えによって第一のガス種を放出することによって、ガス流れから第一のガス種を分離するためのガス分離物質としての前記使用であり、金属有機構造体は、この金属有機構造体において隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基を含む少なくとも一つの配位子を有する、前記使用。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願は、ガス分離物質において用いるのに適したものにする特性を有する可能性に基づいて選択された金属有機構造体の開発に基づいている。研究した金属有機構造体において多くの驚くべき特徴が具現化されることが見いだされ、それらの特徴は、(場合により唯一の)切り替え機構として光を拠りどころとするガス分離物質において用いるのに必要な特性を有するさらなる金属有機構造体の選択と開発につながるものである。
【0018】
「ガス分離物質」という用語は、一般的な意味において、ガスについての必要な分離を可能にする物質を指すものとして用いられる。ガス分離物質はガス分離膜の形になっているか、あるいは微粒子状吸着物質またはその他の物質のような何らかの物理的構造物からなるガス分離吸着剤の形になっていてもよい。ガス分離物質はガス分離装置の一部を形成していてもよく、例えば、ガス分離器、ガス分離カートリッジ、あるいはガス流れの処理において用いられる他の何らかの装置、設備または装置の一部を形成していてもよい。ガス分離物質は金属有機構造体から成っていてもよく、あるいはその金属有機構造体はガス分離膜またはガス分離吸着剤の一つの要素を構成していてもよい。
【0019】
金属有機構造体は化合物の周知の種類のものである。金属有機構造体は金属原子(または金属中心)とそれら金属原子どうしの間を橋渡しする有機配位子(有機リガンド)を含み、それにより結晶質で多孔質の配列を形成している。
【0020】
研究した金属有機構造体を開発するのに用いるために選択した配位子のうちの一つはアゾベンゼンに基づくものである。アゾベンゼンとその誘導体は、可視光と紫外光をそれぞれ照射するとアゾ結合の回りでシス状態とトランス状態へと明瞭で効率的な可逆性の光異性化をすることのできる光互変性分子(フォトクロミズム分子)である(配位したトランスのλmaxは約370nm、配位したシスのλmaxは約460nm)。アゾベンゼンの4,4’-ジカルボキシレート(AzDC)への転化は、MOF構造の中に組み入れることのできる配位子をもたらす。
【0021】
研究した金属有機構造体として選択した第二の配位子は、配位子であるトランス-ビス(4-ピリジル)エチレン(4,4’-BPE) であったが、これは金属錯体に配位結合したときにシス-トランス光異性化可能性を有する(配位したトランス4,4’-BPEのλmaxは約280〜310nm、配位したシス4,4’-BPEのλmaxは約280nm)。この第二の配位子は「柱状配位子(pillar ligand)」と呼ばれる種類のものであり、これは二つの金属原子に配位結合することができて、それにより二つの平坦な金属−配位子の配列の間に柱を作る。
【0022】
亜鉛をベースとするMOFの中でのこれらの二つの配位子の組み合わせは三重に相互貫入した構造体であるZn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5を生成し、これは水素と二酸化炭素の高い受容力と選択的吸着性を実現する開いた位相を呈する。これは
図1に概略的に示されている。
【0023】
今回初めて確認されたZn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5の強い光応答性は、広帯域の光源またはフィルターを通した光源のいずれの使用にも関係なく、その性質が動的かつ局所的である。この独特な性質は吸着実験を行う間にリアルタイムでの二酸化炭素の取り込みと放出を誘発するために利用することができたが、このことは、このようなMOFを含むガス分離物質をガス分離のための極めて費用対効果の高いプロセスにおいて利用できることを証明している。紫外光への曝露によって、集結した太陽光源に類似する広帯域の輻射を用いての吸着したCO
2の69%までの瞬間的な放出を生じさせる。さらに、その応答性は十分に可逆性であることが見いだされた。この動的かつ局所的な構造変化は、ひと組の光とX線に基づく実験を用いて直接に特徴づけられ、また幾つかの注意深い制御実験を用いて紫外線だけの因子として切り離された。
【0024】
Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5を用いて得られた結果に基づいて、MOF構造について成すことのできるある範囲の変形を出願人は確認したが、それにより、本願のプロセスにおいて他のMOFを用いることを可能にするであろう望ましい性能の結果も得られた。
【0025】
Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5は相互貫入した(interpenetrated)金属有機構造体である。特に、Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5は三重に相互貫入した金属有機構造体であり、言い換えれば、それは三重の相互貫入を有する。これは本発明の分野において良く理解されている概念である。相互貫入とは、それぞれが同じ構造になっている基本的な分子(この場合は、Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5)からなる独立した網または網状構造が交差している(相交わっている)ことを指す。三重の相互貫入の場合、三つの独立した網または網状構造が互いに交差している。
【0026】
好ましい態様によれば、本願において用いることのできるその他のMOFも相互貫入した金属有機構造体である。これらは二重、三重、四重またはもっと大きな度合いの相互貫入を有していてもよい。一つの態様によれば、MOFは三重の相互貫入を有する。
【0027】
ガス種の捕捉と放出を可能にするかもしれない空洞を有する先行技術のMOFのその他の部類のものは、異性化が可能な官能基(例えばアゾ基)を介して配位子につながっている、バルクな側基(かさばった側基)を拠りどころとするものである。MOFを含むそのような側基においては、つながっている基はMOFによって作られた空洞の中に突き出ていて、そして刺激を受けると空洞から外に出る(例えば、熱の刺激を受けるとバルクな基は空洞の中に突き出て、そして光を当てるとバルクな基は折りたたまれて空洞から外に出る)。バルクな側基の例としてはフェニル環がある。本願において用いるのに適したMOFは好ましくは、バルクな側基を有していないものである。
【0028】
ガス種の捕捉と放出を可能にするかもしれない空洞を有する先行技術のMOFのさらなる部類のものは、ゲスト・ホストMOF(主客MOF)である。これらのMOFは、硬直していて刺激を与えても立体配座が変化しない三次元のホスト構造体であって、刺激を与えると異性化することが可能な異性化性ゲスト分子を空洞の中に含んでいるホスト構造体を拠りどころとする。そのゲスト分子は、ゲスト分子に伴う細孔の中にガス種が適合することを可能にするようなある立体配座を有するか、あるいは空洞を埋めるか遮断するかしてガス種が細孔の中に保持されるのが防がれるような別の立体配座を有する。本願に適したMOFは好ましくは、異性化性ゲスト分子を有していないものである。
【0029】
本願において特に重要なMOFは、金属種と1種以上の配位子を含む。金属種はMと表示することができる。
【0030】
金属種はSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Tiおよびランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。幾つかの態様によれば、金属種はZn、Y、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Tiおよびランタノイドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの態様において、MOFは単一の金属種を含む。これらの金属は正に帯電し、分子は対イオンまたは電荷の釣り合いを保つための対イオンを含むであろうということが理解されよう。
【0031】
好ましくは、MOFは、このMOFにおいて隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基を含む少なくとも一つの配位子を有する。従って、このことから、(アゾ基のような)異性化が可能な基を介して付加した側基を含む配位子は除外される。そのような配位子の例は、アゾベンゼン4,4’-ジカルボキシレート(AzDC)および4,4’-ビピリジルエテン(BPE)である。「MOFにおいて隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基」が存在する、という要件の概念は、これらの例を参照することによって説明される。これらの例において、異性化が可能なアゾ基(-N=N-)またはエテン基(-CH=CH-)はそれぞれ主鎖の一部を形成し、これにより、隣接する金属原子は配位子の配位を介して金属原子に付加している。
【0032】
MOFは第一の立体配座と第二の立体配座の間で配座を変化させることができる。立体配座の変化は分子における構造の変化である。構造の変化とは、MOFにおける原子の相対的な位置の変化を指す。一つの例はシス異性体からトランス異性体への変化である(この逆もある)。構造の変化の他の例は、原子についての開環と閉環の再配列、および環系の中でのその他の構造変化、例えば、いす形と舟形の環系配置どうしの間の転位である。立体配座を変えるMOFの成分は、MOFの配位子成分である。
【0033】
異性化のような配位子が受ける立体配座の変化(すなわち、構造の変化)は適切には、1本の分子の中での構造の変化または異性化を含む。
【0034】
幾つかの態様において、MOFは光互変性の配位子を含む。光互変性物質は光に曝露すると色が変化する物質である。光互変性物質は一般に、光に曝露すると構造の変化または電子の変化を受けることによって色が変化する効果を示す。それに対応して、光互変性配位子は配位子の形になっている光互変性物質である。配位子は化学の分野で良く理解されている用語であり、本発明においては、金属原子の自由軌道に電子を与えることによって金属原子に配位結合する分子を指す。特に重要な配位子は二座配位子または多座配位子である。MOFにおいては一つ以上の光互変性配位子が存在していてもよい。光互変性配位子の例としては、アゾベンゼン、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロオキサジンおよびキニンがある。
【0035】
幾つかの態様において、MOFは以下の異性化が可能な基を一つ以上含む一つ以上の配位子を含む:
− アゾ(-N=N-)
− エテン(-C=C-)
− アザ(-N=C-)
− ニトロン(-C=N
+(O
−)-)
− 閉環反応または開環反応が可能なポリエン基、その特定の例はジアリールエテンであり、これはフルギドを含む種類である、
− スピロ炭素原子によって結合した二つの複素環基であって、開環と閉環が可能なもの、スピロピランとスピロオキサジンはその例である、および
− キラル炭素原子(これは遊離配位子においてキラルであってもよく、あるいは一つ以上の金属原子に配位結合したときにのみキラルであってもよく、トリアリールメタンはその例である)。
【0036】
上の異性化が可能な基は配位子の分子鎖の中にあるのが適当である。この言い方は、配位子の主鎖に対して側鎖になっている異性化が可能な基を除外するものである。ある基が配位子の分子鎖の中にあるか否かを確証するためには、(金属原子に配位結合している)一端から他端までの原子をずっとたどって、異性化が可能な基(または異性化が可能な基の一部)がそれら端部の間の少なくとも一つの区域を通過しているならば、その異性化が可能な基は分子鎖の一部を形成していることになる。
【0037】
幾つかの態様において、MOFは二つの配位子を含み、それらの各々が分子鎖の中に異性化が可能な基を含んでいる。前に説明したように、異性化の形態はシス-トランス異性化であってよく、あるいはMOFの中で構造の変化(立体配座の変化)を生じさせる任意のその他の異性化であってもよい。
【0038】
幾つかの態様において、MOFはシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性のアゾ結合またはエテン結合を含む一つ以上の配位子を含む。そのアゾ結合またはエテン結合は、金属原子どうしを橋渡しする配位子鎖の中にあるのが適切である。言い換えると、アゾ基またはエテン基は配位子の主鎖に対する側鎖ではない。
【0039】
幾つかの態様において、適当な配位子は以下の構造から選択することができる:
A.L
a-X
a-Ar-N=N-Ar-X
a-L
a
B.L
b-X
b-CH=CH-X
b-L
b
C.L
c-X
c-オリゴチオフェン-X
c-L
c
ここで、L
a、L
bおよびL
cはそれぞれ独立に金属原子と配位結合することのできる配位結合基であり、
X
aは直接の結合(direct bond)であるか、あるいは置換または非置換のアリールおよび-N=N-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、ただし、いずれの-N=N-基も他のいずれの-N=N-基と直接に隣接しておらず、
X
bは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリールおよび-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、
X
cは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリール、-N=N-および-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、ただし、いずれの-N=N-基も他のいずれの-N=N-基と直接に隣接しておらず、
Arは置換または非置換のアリールであり、そして
「オリゴチオフェン」は2個から8個までのチオフェン単位を含む置換または非置換のオリゴチオフェンである。
【0040】
上の配位子の定義において、芳香環またはチオフェン単位を介しての結合の付加は、任意の適当な環原子を介してのものであると認められる。また、各々の分子の端部におけるX
aは異なる定義のものであってもよいが、しかし幾つかの態様において、両方のX
aは同じものであると認められる。このことはX
bとX
cにも同様に適用される。
【0041】
置換について言えば、適当な置換基は-H、-NH
2、-BR、-Cl、-NO
2、-CH
3、-OCH
2R
1、および-O-CH
2R
2からなる群から選択することができ、ここでR
1は約1〜5個の炭素を有するアルキルまたはアルケンであり、そしてR
2はアリールまたは置換アリールである。R
2の場合のアリール基の上の置換基は-H、-NH
2、-BR、-Cl、-NO
2、-CH
3、および-OCH
2R
1からなる群から選択することができる。アルキルはC1〜C6の直鎖、枝分れまたは環状のアルキルを指し、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチルなどが含まれる。アルケンはC2〜C6の直鎖または枝分れのアルケンを指し、1-プロペン、1-ブテン、1,3-ブタジエンなどが含まれる。
【0042】
L
a、L
bおよびL
cはそれぞれ、金属原子と配位結合することのできる配位結合基を表している。このような基は当分野でしばしば「リンカー(linkers)」と呼ばれる。この機能を含む基の範囲には、カルボキシレート基およびN供与環、例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジルおよびトリアゾール、カルバメート、チオカルバメートなどが含まれる。N供与環は置換されていても、置換されていなくてもよい。置換基は-H、-NH
2、-BR、-Cl、-NO
2、-CH
3、および-OCH
2R
1からなる群から選択することができる。幾つかの態様において、N供与環は置換されていない。
【0043】
幾つかの態様によれば、L
a、L
bおよびL
cはそれぞれ独立にカルボキシレートおよびピリジル環からなる群から選択される。幾つかの態様において、L
aはカルボキシレートである。幾つかの態様において、L
cはカルボキシレートである。幾つかの態様において、L
bはピリジルである。
【0044】
X
aは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリールおよび-N=N-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖である。幾つかの態様によれば、X
aは置換または非置換のアリール基と-N=N-が交互にある連なりを含む。幾つかの態様によれば、X
aは置換または非置換のアリール基を一つ含むか、あるいはそれが一続きになったものを含む。幾つかの態様において、X
aは置換または非置換のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様において、アリール基の数は2〜5である。幾つかの態様において、X
aは2〜5個のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様によれば、X
aは置換または非置換のアリールである。幾つかの態様において、X
aは置換または非置換のフェニルである。幾つかの態様において、X
aはフェニルである。上で述べたように、分子の各々の端部におけるX
aは同じであっても、異なっていてもよい。異なる場合、一つのX
aはX
a’と表示してもよく、そしてX
a’はX
aと同じ定義のものである。幾つかの態様によれば、各々のX
aは同じである。
【0045】
X
bは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換の芳香環および-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖である。幾つかの態様によれば、X
bは直接の結合である。幾つかの態様によれば、X
bは一つの置換または非置換のアリール基であるか、あるいはそれが一続きになったものである。幾つかの態様によれば、X
bは置換または非置換のアリール基と-CH=CH-が交互にある連なりを含む。幾つかの態様において、X
bは置換または非置換のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様において、アリール基の数は2〜5である。幾つかの態様において、X
bは2〜5個のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様によれば、X
bは置換または非置換のアリールである。幾つかの態様において、X
bは置換または非置換のフェニルである。幾つかの態様において、X
bはフェニルである。上で述べたように、分子の各々の端部におけるX
bは同じであっても、異なっていてもよい。異なる場合、一つのX
bはX
b’と表示してもよく、そしてX
b’はX
bと同じ定義のものである。幾つかの態様によれば、各々のX
bは同じである。
【0046】
X
cは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリール、-N=N-および-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖である。幾つかの態様によれば、X
cは直接の結合である。他の態様によれば、X
cは一つの置換または非置換のアリール基であるか、あるいはそれが一続きになったものである。幾つかの態様によれば、X
cは置換または非置換のアリール基と-CH=CH-が交互にある連なりを含む。幾つかの態様において、X
cは置換または非置換のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様において、アリール基の数は2〜5である。幾つかの態様において、X
cは2〜5個のフェニル基が一続きになったものである。幾つかの態様によれば、X
cは置換または非置換のアリールである。幾つかの態様において、X
cは置換または非置換のフェニルである。幾つかの態様において、X
cはフェニルである。上で述べたように、分子の各々の端部におけるX
cは同じであっても、異なっていてもよい。異なる場合、一つのX
cはX
c’と表示してもよく、そしてX
c’はX
cと同じ定義のものである。幾つかの態様によれば、各々のX
cは同じである。
【0047】
単独で用いられるか、または「置換アリール」のような複合語の中で用いられる「アリール」という用語は、芳香族炭化水素または芳香族複素環式環系の単一の残基(residue)、多核の残基、共役の残基、および縮合した残基を示す。アリールの例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、フェノキシフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンズアントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、ピレニル、インデニル、アズレニル、クリセニル、ピリジル、4-フェニルピリジル、3-フェニルピリジル、チエニル、フリル、ピリル、ピロニル、フラニル、イマダゾリル、ピロリジニル、ピリジニル、ピペリジニル、インドリル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピラジニル、チアゾリル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、プリニル、キナゾリニル、フェナジニル、アクリジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、その他同種類のものがある。幾つかの態様によれば、アリールは炭素環式アリール基である。別の態様によれば、アリールはヘテロアリールであり、N、OおよびSから独立して(他のものとは無関係に)選択される1〜4個のヘテロ原子を含む。幾つかの態様によれば、アリール基は単一の環を含む(従って、縮合した環系を含まない)。幾つかの態様によれば、アリールはフェニルまたは置換フェニルである。幾つかの態様によれば、アリールは非置換アリール(例えばフェニル)である。
【0048】
オリゴチオフェンはジチオフェンであってよい。チオフェン環どうしの間の結合は4,4’ または2,5’ あるいは他のものであってもよい。
【0049】
MOFは好ましくは二つの異なる配位子を含む。
【0050】
幾つかの態様において、MOFは構造Aの配位子と構造Bの配位子を含む。幾つかの態様において、MOFは構造Aの配位子と構造Cの配位子を含む。幾つかの態様において、MOFは構造Bの配位子と構造Cの配位子を含む。
【0051】
金属原子1個当りの配位子の相対的な数は一様でなくてもよい、ということが理解されよう。
【0052】
従って、幾つかの態様において、MOFは次の式のものであってよい:
M(配位子1)(配位子2)
0.5
配位子1は第一の型の配位子を指し、そして配位子2は第二の型の配位子を指す。前に述べたように、配位子1は構造Aのものであってよく、そして配位子2は構造Bのものであってよい。従って、MOFは式 M(A)(B)
0.5のものであってよい。配位子A、BおよびCの他の組み合わせも可能である。
【0053】
MOFは、外輪形二核M
2単位と、配位子1による橋渡し部分(bridging)、および配位子2によって形成された柱を含んでいてもよい。配位子1はジアニオン配位子(例えば、ジカルボキシレート配位子)であってよく、そして配位子2はジ-N-ドナー環を含む配位子(例えば、ジピリジル配位子)であってよい。
【0054】
MOFは好ましくは、吸着した(分離した)第一のガス種の少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも65%を放出することができる。実施例で検討したMOFは、吸着したガス種の69%を放出することができた。従って、本願の方法は次の工程を含んでもよい:
− 金属有機構造体の立体配座を第二の立体配座に切り替えることによって、分離した第一のガス種の少なくとも40%をガス分離物質から放出させる工程。
【0055】
量については、前に示したガス放出についての好ましいパーセントによって示されるように、さらに多くてもよい。
【0056】
第一のガス種は二酸化炭素であってもよい。ガス流れは第二の(あるいはさらに多くの)ガス種を含むだろう。第二のガス種はN
2、O
2、H
2、CO、CH
4など、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。他の態様によれば、第一のガス種はN
2、O
2、H
2、COまたはCH
4のうちの一つである。第一のガス種はガス流れの中の第二のガス種から選択的に分離され、この場合、吸着したガス種の少なくとも90%、または少なくとも95%、少なくとも99%または100%が第一のガス種である。
【0057】
ガス流れは排ガスの流れ、例えば発電所の排ガスの流れであってもよい。
【0058】
Zn(AzDC)(4,4’-BPE)0.5についての検討
三重に相互貫入した構造体であるZn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5の合成とその特性についての検討を、以下の実施例に示す。この構造体は、外輪形二核Zn
2単位、橋渡しするAzDCジアニオン、および4,4’-BPE柱状配位子から組み立てられている。固体状態における光応答性の調査によって、光活性のある構造体が明らかになった。励起スペクトルでの455nmおよび380nmのそれぞれにおいて、シスおよびトランスAzDCのn-TT
★(S1状態)およびTT- TT
★(S2状態)の転移を検出することができる(
図10)。Znへの4,4’-BPEの配位によって、光の照射の下で光活性のある種が生じる。4,4’-BPE配位子のトランス異性体は、310〜375nmの領域において金属から配位子への電荷移動と配位子内での電荷移動について重なり合った励起帯を示す。この領域における励起はトランス→シス異性化を引き起こす。シスAzDCとシス4,4’-BPEの両者は、それらのトランス状態へ戻ることができる。
【0059】
図2に示すように、Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5はCO
2を吸着する間に先例のないほどの動的な切り替えを示し、静的な照射条件の下では240%の容量の変化を伴い、また動的な測定の間には69%程度である。動的な照射の等温線は連続条件の下で得られた値に従うが、しかし、用いられた動的な測定条件の下では取り込みの逆転(reversal)は全く完全なものではなかった。この現象が実験上または物質上の人為結果ではなく、観察された動的な光応答性だけによるものであることを確証するために、一連の入念な対照実験を行った。局部的な温度の監視を慎重に行うことによって、温度は0.2℃未満だけ変化することが示され、局部的な加熱が顕著な影響を及ぼしたということは除外された。さらに、SAPO 34ゼオライトおよび光活性のある基を含まない構造体であるCu-BTCを含めた対照の物質を用いた実験によって、CO
2の取り込みの変化はほとんど無いことが示された(Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5についての69%に対して0.2〜2%)。
図12を参照されたい。我々の知るかぎりでは、このMOFは、これまでに報告されたものの中で最も強い光応答性を示す。静的な条件の下で行った唯一の比較できる実験において、30%の取り込みの変動が観察された。
【0060】
図3は、照射の下で540〜700cm
−1の領域についてピーク強度の顕著な変化が観察され、一方、残りのスペクトルは変化しなかったことを示す。550cm
−1におけるピーク強度の増大はAzDCに伴うC-C-CとC-C-Nの曲げモードが原因かもしれず、これはシス-トランス異性化の抑制によって起こったアゾ基の回りでの低エネルギーの構造変化を示している。これらの曲げモードは吸着したCO
2の照射による自然放出が原因と思われ、これにおいては孔のある表面が活性化されて、表面エネルギーが増大した(
図3b)。遊離配位子であるAzDCについての同様の実験によってこの効果が確認された(
図3a)。537cm
−1における強度の増大は、配位子の中のC-C-N結合の回りで曲げモードが活性化したことを示す。さらに、1516cm
−1においてその遊離配位子における極めて小さなピークが増加したことが観察され、これは本来のトランス物質が励起したときに形成される高エネルギーのシスN=N引張りモードが原因である。これらのモードは構造体の中で変化したことが認められなかったが、このことは、この構造体におけるAzDCの制限された性質を強調していて、AzDCはこれらの転移を行うことができなかった。このことはまた、XRDにおいて変化が見られなかった理由も説明するものである(
図3d)。この結果は同様の紫外線と可視線の実験においても検証され、このときシス異性体のほんのわずかな部分だけが検出された(
図3c)。構造体を365nmの光と460nmの光のいずれかに連続して曝露し、そして吸収ピークの強度を監視した。励起波長がシス構造とトランス構造のいずれかの形成を促進したか否かにかかわらず、トランスAzDC成分とシスAzDC成分に関する吸収は補完し合っていて、また周期的に変化することが見いだされた。(シスAzDCを促進する)370nmの光と(トランスAzDCを促進する)460nmの光のいずれかによって連続して照射する下で、二つの別個の実験を通してシスのピークとトランスのピークの付加的な性質を与える補完的な形で、構造体の小さな部分が両方の異性体の立体配座の間で定期的に変動することが見いだされた。4,4’-BPEの配位子も構造体の中で配位する間に明らかに転移を行ったが、同様の付加的な効果は、かなりの重なり合いがあったこの配位子の励起プロフィールからはあまり明瞭ではなかった。おそらくは、異性体の転移を促進する照射の下であっても起こる本来の状態へのこの継続的な復帰は、相互貫入した構造体の中で誘起した構造上の応力から生じるものであり、これは位相についても重要となる成分によるものであって、側基によるものではない。さらに、主として曲げの動きによる迅速な変化は、当初の三重に相互貫入した構造体を維持して、そして拘束に適応するために、構造体の全体で生じるはずである。
【0061】
図4は、比較的少ない輻射束を有するものであるフィルターを通した光源を用いるときに、CO
2の絶対的な取り込み量が増大し、そして光に曝露したときに放出される量が減少することを示す。光をフィルターに通して365nmにすると、AzDC配位子とBPE配位子の両者において光異性化が促進される(
図10および
図11)。フィルターに通さない場合の取り込み量の変化と輻射束を変化させることにより、
図4が得られる。これにおいて、フィルターに通した365nmの光を用いることによって、CO
2の放出の効率が大いに向上することが示される。両者の場合において、光を照射しないときの吸着量は同等であるが、フィルターに通した365nmの照射を用いるとCO
2の脱着がより効率的になることが見いだされる。この効果は高い分圧において最も顕著であり、さらに、燃焼後の捕捉ガスの流れにおいて遭遇する分圧(約115mmHg)に近い分圧において、フィルターに通さない光が極めて類似する応答性を示すことが注目される。この結果は、光の強度が制限的な要因ではない場合に、光を365nmのものにろ過することが好ましいが、しかし、フィルターに通さない光や集結した日光のような他の場合もほぼ同様に機能し、特に燃焼後の捕捉流れにおいて良好であることを意味する。集結した日光を用いて20W/cm
2までの照度(200太陽光当量)を得ることができる。これらの顕著な結果は、光によって誘発されるZn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5における構造の変化が動的であるという事実から生じる。
【0062】
以上の結果は、相互貫入した構造体であるZn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5は光誘発性の動的な構造適応性を示すことができて、これによりCO
2の取り込みにおいて大きな変化が生じる。低いエネルギーでCO
2の捕捉と放出を行うこの顕著な性質を利用するための実施要綱が、初めて確立された。CO
2の捕捉性能における変化は、動的な測定の下で69%程度と極めて強く、静的な条件においては240%まで増大することが見いだされた。構造体の特徴づけにより、構造上の適応性はAzDC配位子とBPE配位子の両者によるものであり、それは可逆的かつ局所的な規模で生じ、一つだけの配座についての配列を促進するような照射の下であってもそうであることが示された。これは、十分に捩った場合に自然に巻きがほどけるような、捩れたロープに類似する。
【0063】
この方策は再生可能なエネルギーによるCO
2の捕捉と放出のための道筋を提示し、また広帯域の照射の下であっても依然として有効であることが見いだされた。このことは、捕捉したガスを放出するために、エネルギー集約的な温度と圧力の変動を行う代わりに、フィルターに通さない日光を用いることができる、ということを意味する。
【0064】
本発明の基礎をなす原理を証明する以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0065】
第1節:実験手順 S1
S1.1 AzDC(1)(配位子1)の合成
4-ニトロ安息香酸(15.0304g、0.09モル)を水酸化ナトリウム水溶液(51.0039g、1.28モル、225mlの水の中)に、この溶液を加熱することによって溶解させた。この溶液の中にグルコースの熱水溶液(101.0159g、0.56モル、150mlの水の中)を50℃でゆっくり添加すると、この中で最初に形成した黄色い沈殿物は、グルコースをさらに添加すると褐色の溶液にすぐに変化した。この混合物を室温において一晩反応させると、薄黒い溶液を形成した。この熟成させた溶液にメタノールを、明るい褐色の沈殿物が形成するまで添加した。ろ過した沈殿物を水に溶解させ、次いで、酢酸(20mL)を用いて酸性化させると、薄いピンク色の沈殿物が得られた。生成物をろ過し、過剰な水で洗浄し、そして一晩乾燥して最終生成物を得た(4.92g、17ミリモル、38.5%)。
1H NMR(DMSO、400MHz):σ(ppm)8.04〜8.06(d、4H)、σ 8.18〜8.20(d、4H)、σ 13.0(brs、1H)、
13C NMR(DMSO、500MHz):122.86、130.72、133.50、154.17、166.67。
【0066】
S1.2 Zn(AzDC)(4,4’-BPE)0.5(2)(構造体2)の合成
Zhou他(B. Chen、S. Ma、E. J. Hurtado、E. B. Lobkovsky、H. C. Zhou)著のInorganic Chemistry(無機化学)2007, 46, 8490-8492 に記述された一般手順に従って、構造体2を加溶媒熱分解(solvothermal)によって合成した。Zn(NO
3)
26H
2O、1、および4,4’-BPEの混合物をDMF(100mL)の中に懸濁させ、そして100℃で24時間加熱した。生じた赤いブロック状の結晶をろ過し、DMFとヘキサンで洗浄し、そして空気中で乾燥した。BET表面積:126.4575m
2/g。
【0067】
第2節:ガス吸着の測定 S2
S2.1 概括的なガス吸着の手順
マイクロメリティクス(Micromeritics)ASAP2040装置を用いる容量測定法によって、活性化した構造体2のガス吸着等温線を低圧(0〜1.2バール)において記録した。およそ100mgの乾燥メタノールで交換したサンプルを、予め乾燥して秤量した石英のBET管の中で秤量した。サンプルについて150℃において10
−6トルの動真空の下で少なくとも24時間にわたって排気を行って活性化し、それにより全ての溶媒分子を除去した。分析を行う前に、ガス抜きしたサンプルの正確な重量を計算した。超高純度のH
2、CO
2およびCH
2ガスを用いてガス吸着の測定を行った。ガス吸着の等温線を
図5に示す。
【0068】
第3節:X線粉末回折(PXRD) S4
S3.1 概括的なPXRDの手順
ブルカーD8改良型X線回折計を用いてPXRDデータを記録し、黒鉛サンプルのモノクロメーターで単色化したCuKα放射線(40kV、40mA)を用いてX線回折パターンを測定した。各々のサンプルについて5〜85°の2シータ範囲にわたって走査を行い、このとき0.02°のステップ幅と1ステップ当り4秒のカウント時間を用いた。合成後の2を乾燥メタノールで溶媒交換するときにPXRDパターンは広くなる。これは、ゲストの含有量と組成が変化することによって構造のわずかな変化が生じるときの、相互貫入した構造体の典型的な特徴である。
【0069】
S3.2 光応答性のPXRDパターン
1.00Åの入射波長を有するオーストラリアシンクロトロンにおいて粉末回折ビームラインを用いて、PXRDデータを得た。サンプルを直径が0.3mmの石英細管の中に封入し、2<2θ<82の範囲で測定した。紫外-可視光源としてアクティキュア(Acticure(登録商標))4000を用いて、測定を行う間ずっとサンプルに光を照射した。結果を
図6に示す。
【0070】
S3.3 X線結晶構造
ダイヤモンドv3.1を用いて2の結晶の単位格子の構造を構成した。これを
図7に示す。
【0071】
第4節:光応答性の特徴づけ S5
S4.1 概括的な光応答性の特徴づけの手順
固体状態でのサンプルの励起波長と放射波長を、フレックスステーション(FlexStation(登録商標))3ベンチトップマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて蛍光下方測定モードで室温において、コーニング(Corning)黒色透明平底マイクロプレートの中で読み取った。AzDCの励起スペクトルを
図8に示す。380nmと455nmにおける励起帯は、2におけるトランスAzDCとシスAzDCのそれぞれによるものである。およそ330nmと430nmのピークは、トランスおよびシスの遊離AzDC配位子のそれぞれに特徴的なものである。
図9は4,4’-BPE配位子の励起スペクトルを示す。300nmの領域と285nmにおける励起波長はそれぞれ、トランスおよびシスのピークに相当する。遊離BPEは固体状態において光活性を有していないことが見いだされた。
【0072】
第5節:光応答性の対照の実験 S6
S5.1 概括的な光応答性の対照の手順
対照の検討のために、非光活性多孔質物質としてバソライト(Basolite)C300とシリカアルミナを選択した。およそ1mgのガス抜きしたサンプルを石英のBET管の中で用いた。バソライトC300を150℃で24時間にわたって活性化させ、またシリカアルミナを90℃で1時間、次いで350℃で5時間にわたって活性化させた。分析を通してずっとフィルターに通さない光の点灯と消灯を切り替えることによって、実験を行った。ガス吸着の等温線を
図10に示す。バソライトC300とシリカアルミナはそれぞれ、約0.2%以下と2%以下の応答性を示す。この応答性は、Zn(AzDC)(4,4’-BPE)
0.5における69%の応答性と比較して、極めて低い。これは、光を点灯したときの条件の急な変化によるものである。
【0073】
第6節:光応答性のガス吸着の実験の構成 S7
S6.1 概括的な光応答性のガス吸着の実験の設定
光の実験のために、予め秤量して乾燥した注文品のアルミニウム箔付き石英BET管を用いた。光を点灯したときにサンプルへの最大限の露光量と露光範囲が得られるように、BET管と光誘導器を収容するために、注文品のBET光容器を用いた。実験の全体を通して温度を303Kまたは273Kに維持するために、コール・パーマー(Cole Palmer)モデルBT15で加熱した循環浴を用いた。温度を監視するために、光容器の内部で石英BET管と光誘導器の間に温度プローブを嵌め込んだ。分析を行う際にサンプルの光の応答を誘発させるために、紫外-可視光源としてアクティキュア(Acticure(登録商標))4000を用いた。フィルターを用いずに(200〜500nm)(24600mW/cm
2)、そして365nmのフィルターを用いて(5600mW/cm
2)、光を最も高い強度の出力で固定した。365nmのフィルターを用いて濾波した光についてのスペクトルの出力を
図13に示す。
【0074】
第7節:ガス分離装置の構成 S7
分離のプロセスを
図11に概略的に示す。活性化する光が存在しない場合に(
図11a)、第一の(目標の)ガス種を含むガス流れはMOF吸着剤と接触し、このとき、MOFはその目標のガス種を捕捉することが可能な第一の立体配座になっている。図示しているように、非吸着ガスは吸着剤を通過し続ける。次いで、
図11bに示すように、MOFに光(h
ν)を照射すると、金属有機構造体の立体配座はガス種をガス分離物質から追い出す第二の立体配座に切り替わり、それによって、分離されたガス種はガス分離物質から放出される。吸着したガスの放出通路を含む配置の中にMOFを置いてもよく、その通路を開けることによって、吸着したガス種(吸着して放出したガス種)を非吸着ガスとは異なる方向へ向けるようにしてもよい。この操作を行う間は、非吸着ガス種の通路を閉じてもよい。吸着したガス種を除去した後、MOFは再生され、第一のガス種をさらに吸着するのに用いるための用意がなされる。
【0075】
ガス分離装置についての一つの特定の配置を
図12に示す。
図12において、MOF吸着剤を含むガス分離装置は、ガス流れの中でカートリッジ容器の中に配置されたカートリッジの形になっている。供給ガスは光が存在しない状態でカートリッジを通過し、この時に、MOFは目標のガス種を捕捉することが可能な第一の立体配座になっていて、非吸着ガスは(上方の右側の角へ向かう矢印によって示される方向へ)カートリッジを通って流れる。次いで、分離されたガス種はMOFに光(hν)を照射することによってガス分離物質から放出され、一方、透過ガスはカートリッジを貫く方向へ流れ、分離されたガスをカートリッジの中のMOFから取り出して、その分離されたガスはさらに透過ガスの流れの中でMOFから出ていく。吸着したガス種を除去した後、MOFは再生され、第一のガス種をさらに吸着するのに用いるための用意がなされる。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
ガス分離物質を用いてガス流れから第一のガス種を分離するための方法であって、そのガス分離物質は、第一のガス種を金属有機構造体の中に捕捉させることのできる第一の立体配座と切り替え刺激としての光を使用することによってその捕捉された第一のガス種を放出させることのできる第二の立体配座との間で可逆的に切り替えが可能な金属有機構造体を含み、この方法は:
− 第一のガス種を含むガス流れを第一の立体配座の形になっている金属有機構造体を含むガス分離物質と接触させ、それにより第一のガス種を捕捉する工程、
− 金属有機構造体の立体配座を第二の立体配座に切り替えることによって、分離した第一のガス種をガス分離物質から放出させる工程、および
− 金属有機構造体を第一の立体配座に切り替え、ガス分離物質を再生する工程、
を含む、前記方法。
[2]
金属有機構造体は金属と一つ以上の配位子を含む、[1]に記載の方法。
[3]
金属有機構造体は、この金属有機構造体において隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基を含む少なくとも一つの配位子を有する、[2]に記載の方法。
[4]
金属有機構造体は、金属原子どうしの間を橋渡しする分子鎖の中にシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性の基を含む一つ以上の配位子を有する、[2]に記載の方法。
[5]
金属有機構造体は、金属原子どうしの間を橋渡しする分子鎖の中にシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性のアゾ結合またはエテン結合を含む一つ以上の配位子を有する、[2]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
金属有機構造体は、金属原子どうしの間を橋渡しする分子鎖の中にシス状態とトランス状態の間での可逆的な異性化を可能にする光異性化性のアゾ結合またはエテン結合をそれぞれが含む二つの異なる配位子を有する、[2]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
金属はSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Ti、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、[2]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
金属種はZn、Y、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、およびTiからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9]
配位子は以下の構造:
A.La-Xa-Ar-N=N-Ar-Xa-La
B.Lb-Xb-CH=CH-Xb-Lb
C.Lc-Xc-オリゴチオフェン-Xc-Lc
から選択され、
ここで、La、LbおよびLcはそれぞれ独立に金属原子と配位結合することのできる配位結合基であり、
Xaは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリールおよび-N=N-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、ただし、いずれの-N=N-基も他のいずれの-N=N-基と直接に隣接しておらず、
Xbは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリールおよび-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、
Xcは直接の結合であるか、あるいは置換または非置換のアリール、-N=N-および-CH=CH-からなる群から選択される一つの基または一続きの基を含む鎖であり、ただし、いずれの-N=N-基も他のいずれの-N=N-基と直接に隣接しておらず、
Arは置換または非置換のアリールであり、そして
オリゴチオフェンは2個から8個までのチオフェン単位を含む置換または非置換のオリゴチオフェンである、
[2]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
La、LbおよびLcはそれぞれ独立にカルボキシレートおよびN供与環からなる群から選択される、[9]に記載の方法。
[11]
La、LbおよびLcはそれぞれ独立にカルボキシレートおよびピリジルからなる群から選択される、[9]に記載の方法。
[12]
Xaはアリール、置換アリール、および一続きになった置換または非置換のアリール基からなる群から選択される、[9]から[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
Xaは置換または非置換のフェニルである、[12]に記載の方法。
[14]
Xaはフェニルである、[12]に記載の方法。
[15]
Xbは直接の結合である、[9]から[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
金属有機構造体は構造Aの配位子と構造Bの配位子を含む、[9]から[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
金属有機構造体は構造Aの配位子と構造Cの配位子を含む、[9]から[15]のいずれかに記載の方法。
[18]
金属有機構造体は構造Bの配位子と構造Cの配位子を含む、[9]から[15]のいずれかに記載の方法。
[19]
金属有機構造体は式 M(A)(B)0.5のものであり、ここでMは金属であり、そしてAとBは[9]から[15]のいずれかにおいて定義されたものである、[9]から[15]のいずれかに記載の方法。
[20]
金属有機構造体はM(AzDC)(4,4’-BPE)0.5である、[19]に記載の方法。
[21]
金属有機構造体はZn(AzDC)(4,4’-BPE)0.5である、[20]に記載の方法。
[22]
ガス流れから第一のガス種を分離するために、再生したガス分離物質を再利用する工程をさらに含む、[1]から[21]のいずれかに記載の方法。
[23]
光は広帯域波長の光である、[1]から[22]のいずれかに記載の方法。
[24]
光は日光である、[1]から[23]のいずれかに記載の方法。
[25]
光は唯一の切り替え刺激である、[1]から[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
第二の立体配座は光を当てることによって達成される、[1]から[25]のいずれかに記載の方法。
[27]
光を当てることによって達成される立体配座は張力のかかった立体配座であり、そして光を取り除くことによって他の立体配座の構造へ自然に反転する、[1]から[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
金属有機構造体は相互貫入した金属有機構造体である、[1]から[27]のいずれかに記載の方法。
[29]
MOFは、第二の立体配座に切り替えたときに、吸着した第一のガス種の少なくとも40%を放出することができる、[1]から[28]のいずれかに記載の方法。
[30]
第一のガス種は二酸化炭素である、[1]から[29]のいずれかに記載の方法。
[31]
切り替え刺激としての光を使用することによって第一の立体配座と第二の立体配座との間で可逆的に切り替えが可能な金属有機構造体の使用であって、第一の立体配座になっているときにガス流れから第一のガス種を吸着し、そして第二の立体配座への切り替えによって第一のガス種を放出することによって、ガス流れから第一のガス種を分離するためのガス分離物質としての前記金属有機構造体の使用。
[32]
光は唯一の切り替え刺激である、[31]に記載の使用。
[33]
金属有機構造体は金属Mと一つ以上の配位子を含む、[31]または[32]に記載の使用。
[34]
金属有機構造体は、この金属有機構造体において隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基を含む少なくとも一つの配位子を有する、[31]から[33]のいずれかに記載の使用。
[35]
ガス分離物質を含むガス分離装置であって、ガス分離物質は唯一の切り替え刺激としての光を使用することによって第一の立体配座と第二の立体配座との間で可逆的に切り替えが可能な金属有機構造体を含み、第一の立体配座は第一のガス種を吸着することができて、そして第二の立体配座は第一のガス種を放出することができるものである、前記ガス分離装置。
[36]
ガス分離膜またはガス分離カートリッジの形のものである、[35]に記載のガス分離装置。
[37]
金属有機構造体は、この金属有機構造体において隣接する金属原子どうしの間の結合を形成する分子鎖の中に異性化が可能な基を含む少なくとも一つの配位子を有する、[35]または[36]に記載のガス分離装置。