(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
触媒系によって生成される複数の樹脂の物理的特性を測定することを含み、該物理的特性がそれぞれの樹脂のメルトインデックス(MI)、それぞれの樹脂の密度、及びそれぞれの樹脂のメルトフロー比を含む、請求項3に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリオレフィン重合体は、気相重合方法を用いて製造できる。典型的な気相流動床重合方法では、1種以上の単量体を含有するガス流を触媒の存在下において反応条件下で流動床に連続的に通過させる。このガス流を流動床から引き出し、そして反応器に再循環させる。再循環ガス流を反応器中において重合熱により加熱する。この熱は、例えば、熱交換器などの反応器の外部の冷却システムによってサイクルの別の部分で除去できる。
【0003】
反応により発生した熱は、反応器内の樹脂及びガス流の温度を重合体の融点又は触媒失活温度未満に維持するため或いは重合体特性を制御するために除去できる。また、熱の除去は、凝集を生じる場合のある重合体粒子の過度な粘着性を防ぐのに役立つ場合もある。粒子の凝集は、製品として反応器から取り出すことのできない塊又は重合体シートの形成をもたらす可能性がある。さらに、このような塊又はシートは、反応器の分配板上に落下し、これにより床の流動化を損ない、不連続事象をもたらす可能性がある。さらに、重合反応は発熱反応であるため、流動床重合方法で製造される重合体の量は、反応区域から取り出すことができる熱の量に関連する。
【0004】
しばらくの間、反応器の外部でのガス流の温度(そうでなければ、再循環流温度として知られている)は、重合体の凝集や反応器系の閉塞といった問題を引き起こすことなく再循環流の露点未満には低下できないと考えられていた。再循環流の露点とは、液状凝縮物がガス状再循環流中で最初に形成し始める温度のことである。露点を算出してガス組成を知ることができ、また露点は熱力学的状態方程式を使用して定義される。しかし、米国特許第4543399号及び同4588790号に記載されているように、再循環流は、流動床重合方法において露点未満の温度に冷却でき、反応器の外部で循環ガス流の一部の凝縮をもたらすことができることが分かった。次いで、同伴液体を含有する得られた流れを、凝集又は目詰まり現象を引き起こすことなく反応器に戻すことができる。再循環流の一部を意図的に凝縮する方法は、「凝縮モード」操作として当業界で知られている。再循環流の温度を凝縮モード操作においてその露点未満の点にまで低下させると、重合体製造の増加が可能になる。
【0005】
ガス露点温度未満の温度まで再循環流を冷却すると、同伴固形物を両相に含むことのできる二相気体/液体混合物が生じる。凝縮モード操作におけるこの二相気体/液体混合物の液相は、一般に、混合物の気相に同伴する。液体の気化は、熱を加えたとき又は圧力を低下させたときにのみ発生する。例えば、米国特許第4543399号及び同4588790号に記載されるように、気化は、二相混合物が流動床に入ったときに発生し、樹脂が必要な気化熱を与える。このように、気化は、流動床から反応の熱を抽出する追加手段を与える。
【0006】
再循環ガスの冷却能力は、所定の反応温度及び冷却熱伝達媒体の所定の温度でしばらくの間増大できる。これは、反応器に、非重合性の非反応性材料を添加することによって実行でき、このものは、プロセス熱交換器で遭遇する温度で凝縮可能である。このようなものは、集合的に誘導縮合剤(ICA)として知られている。反応器内のICA濃度の増加は、反応器ガスの露点温度の対応する上昇を引き起こすが、これは、反応器からのより高い(熱伝達の制限された)製造速度のためにさらに高レベル凝縮を促進させる。好適なICAは、それらの比熱及び沸点特性に基づいて選択される。特に、ICAは、材料の相対的に高い部分が重合体製造プラントで利用可能な冷却水の温度で凝縮するように選択され、これらは、典型的には約20〜40℃の沸点を有する化合物である。ICAは、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、イソペンタン、ブタン、イソブタン、及び同様に重合プロセスにおいて非反応性である他の炭化水素化合物が挙げられる。
【0007】
米国特許第5352749号には、ICAであるか、共重合体であるか又はそれらの組み合わせであるかを問わず、反応系において許容することができる凝縮性ガスの濃度の限界が記載されている。一定の限界濃度を超えると、凝縮性ガスは、反応器における流動化の突然の喪失及びその後の流動床内の温度を制御する能力の喪失を引き起こす可能性がある。反応器内におけるICAの上限は、製造される重合体の種類に依存する場合がある。例えば、米国特許第5352749号、同5405922号及び同5436304号は、流動化嵩密度対沈降嵩密度の比を追跡することによってこの限界を特徴づけるものである。イソペンタンの濃度が増加すると、嵩密度比が着実に減少することが見出された。イソペンタンの濃度が十分に高い、すなわち0.59の嵩密度比に相当する場合には、反応器内における流動化が失われることが見出された。したがって、この比率(0.59)は、流動化の喪失のため、反応器が機能化をもたらす引き返せない点あると決定した。PCTパンフレットWO2005/113615(A2)に記載されるように、過剰ICA濃度により重合反応器を操作しようとする試みは、重合体粒子が流動床中に懸濁されて凝集性又は「粘着性」になる場合があり、場合によっては流動床を大きな塊の形態で固化させる原因となる可能性がある。
【0008】
ICAを使用しつつ粘着性を制御することの複雑さに加えて、様々な重合体製品は、ICA材料を許容する能力が大きく異なり、あるものは、比較的高い許容度(反応器内におけるICAの分圧で表される)、例えば、50psiaを有し、他の重合体は、わずか5psiaしか許容しない場合がある。これら後者の重合体では、同様の条件下での熱伝達制限製造速度は実質的に低い。より均一な共単量体組成分布を有する重合体は、反応器内におけるICAの分圧に対してより高い許容度を有することが知られている。典型的なメタロセン触媒は、より均一な共単量体組成を有する重合体を生成することができる触媒の良い例である。しかし、ある時点で、これらのメタロセン生成重合体は粘着性を誘発する限界ICA濃度に達する。限界ICA濃度は、重合体の種類に加えて、反応器温度、共単量体の種類及び濃度を含めていくつかの要因に依存する。さらに、温度、ICAレベル及共単量体レベルは、全て粘着性の発現に影響を及ぼすため、粘着性が発生し始める時点を決定することは、従来困難であった。
【0009】
表題「Agglomeration Detection by Acoustic Emission」、PAA Application note:2002/111(2000年)及び「Acoustic Emission Technology−−a New Sensing Technique for Optimising Polyolefin Production」(2000年)のProcess Analysis & Automation Limited(PAA)による2つの論文には、ポリオレフィンの流動床製造におけるプロセス制御が反応器及び再循環配管上の様々な位置に配置されたアコースティックエミッションセンサーを利用することによって実行できることが示唆されている。これらの刊行物は、樹脂粒子の粘着性を検出するのではなく、塊やシートなどの反応器中の大きな重合体塊を検出するという問題を解決すると主張し、商用流動床反応器内における直径が約1.5メートルの塊の検出を示す一つの具体例しか提供していない。重合体の粘着性又は凝集性の検出に関する言及はない。実際には、PAA文献には、そのままにしておけば凝集体の形成につながる可能性のある樹脂粘着性を検出することではなく、凝集体が反応器内で形成された後に凝集体を検出することが記載されている。
【0010】
PCT出願公開第WO2003/051929号には、流動床反応器内でのシートの発現及び存在を検出するために数学的カオス理論を使用することが記載されている。しかし、PAA論文と同様に、この文献にも、反応器内の樹脂がいつ粘着性になろうとしているのかを予測する方法又は最大製造速度のために極限冷却能力の限界付近での重合反応器の安全な運転を可能にする任意の方法が記載されていない。
【0011】
WO2005/113615及び対応米国特許出願公開番号2005/0267269号には、それ未満では重合反応器内の樹脂が粘着性になることができない臨界温度の実験室での決定及びこの予め決定された臨界温度を反応器を制御するために使用することが記載されている。
【0012】
米国特許出願第11/227710号には、定常状態運転中に、反応器の内容物のアコースティックエミッションの時系列測定値を生成することにより、重合反応器の運転中に樹脂粘着性を監視することが記載されている。その後、追加のアコースティックエミッション測定値を生成し、そして処理して、これらが定常状態反応器運転を示すアコースティックエミッションから逸脱するかどうかを決定する。このような逸脱は、反応器中の重合体粒子の過度の粘着性の発現の指標として処理される。アコースティックエミッション測定値が定常状態反応器のそれから逸脱すると判断されたときには是正処置を講ずることができる(例えば、ICA及び/又は単量体レベル及び/又は反応器の温度を調節することができる)。しかし、この出願には、反応器内の樹脂が粘着性になると予測される基準温度の生成が教示されていない。
【0013】
他の背景の参考文献としては、米国特許出願公開第2004/063871号、同2005/0267269号、同2007/073010号、並びにWO2005/049663及びWO2006/009980、並びに「Model Prediction for Reactor Control」,Ardellら、Chemical Engineering Progress,American Inst.Of Chem.Eng.,US,第79巻,第6号(1983年6月)が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
ここで説明するのは、重合反応器について非粘着操作レジーム(「安全」レジーム)を決定し、そして該重合反応器を該非粘着レジーム内で操作するためのシステム及び方法である。ここで使用するときに、非粘着操作レジームとは、樹脂の粘着が問題とならないレジームを示す。これらの方法は、制御システムに統合できる又は反応パラメータを制御するように変更を奨励するための別のシステムで使用できる非粘着操作レジームのモデルを開発することを含むことができる。
【0023】
非粘着操作レジームのモデルの開発に使用されるパラメータは、樹脂粘着性の実験的判定中に測定された値に基づくことができる。任意の単一の目標樹脂について、樹脂粘着性は、温度と誘導縮合剤(ICA)の等価分圧との関数として測定できる。例えば、これは、撹拌オートクレーブ反応器内における樹脂をイソペンタン(iC
5)などのICAの測定量で置き換え、そして樹脂が付着し、撹拌機を停止させるまで温度をゆっくりと上昇させることによって実行できる。その後、粘着温度を反応器温度及びICAの等価分圧の関数として予測するモデルを構築することができる。この等価分圧は、ヘキセン及びヘキセンの様々な異性体などの反応器内に存在する可能性のある他の凝縮性物質を説明するために使用される。このモデルは、一般に、使用される樹脂の種類に特有のものである。
【0024】
重合反応で使用されるICAのモデル及び露点を使用して非粘着操作レジームを決定する。重合反応中に、この反応器は、温度及びICA濃度を非粘着操作レジーム内に保持するように制御される。非粘着操作レジームは、反応パラメータを制御して温度及びICA含有量の両方を増大させ、それによってより多くの反応熱を除去することを可能にすることにより、凝集なしに製造速度を最大化させるのに役立つ指針を提供できる。
【0025】
本明細書を通して、表現「希釈剤」(又は「凝縮性希釈剤」又は「凝縮性希釈ガス」)とは、重合体樹脂が生成される重合反応器内に存在する凝縮性ガス(又は凝縮性ガスの混合物)をいう。希釈剤は、プロセス熱交換器において遭遇する温度では凝縮性である。希釈剤の例としては、誘導凝縮剤(ICA)、共単量体、共単量体の異性体及びそれらの組み合わせが挙げられる。このような材料としては、イソブタン、イソペンタン、ヘキセン及び反応器内における他の材料が挙げられる。
【0026】
連続反応によって生成される生成物を参照すると、この生成物の特性に関する表現「瞬間」値は、ここでは、この生成物の直近の生成量の特性値を示す。この直近生成量は、典型的には、直近の及び以前に生成された生成物の混合物が反応器を出る前にこの生成物の以前の生成量との混合を受ける。これに対し、連続反応によって生成される生成物を参照すると、ここでの特性の「平均」(又は「床平均」)値(時間「T」での)は、時間Tで反応器を出る生成物の特性値を示す。
【0027】
ここで、表現「乾燥重合体樹脂」(又は重合体樹脂の「乾燥バージョン」)は、溶解したガスの実質的な量を含有しない重合体樹脂を示すために使用される。乾燥重合体樹脂の例は、重合反応器において予め製造され、その後製造時に重合体中に溶解された実質的に全ての未反応共単量体及びICAにパージされた重合体である。ここで説明するように、重合体樹脂の乾燥バージョンは、これが有意な量の凝縮性希釈ガス及び共単量体の存在下にあった場合における同じ重合体樹脂とは有意に異なる溶融挙動を有する。
【0028】
表現「ポリエチレン」とは、エチレン及び任意に1種以上のC
3〜C
10α−オレフィンの重合体を意味するのに対し、表現「ポリオレフィン」とは、1種以上C
2〜C
10α−オレフィンの重合体を意味する。
【0029】
図1Aは、実施形態に従って監視及び制御できる重合システム100の概略断面図である。重合システム100は、流動床反応器102を備える。流動床反応器102は、底端部104と、頂部拡大部106と、直線部108と、該直線部108内にある分配板110とを備える。粒状重合体及び触媒粒子の流動床112は、直線部108内に収容されている。この床は、分配板110を介して再循環ガス114の定常流によって流動化される。
図1Aに示すように、再循環ガス114の流量は、流動床112を循環させるように調節される。
【0030】
重合システム100は、流動床112内の反応区域120への重合触媒118の添加を制御するための触媒供給装置116を有する。反応区域120内では、触媒粒子は、エチレン及び共単量体及び任意に他の反応ガスと反応して粒状重合体粒子を生成させる。新たな重合体粒子が生成されると、他の重合体粒子を、生成物排出システム122を介して流動床から連続的に引き出す。生成物排出システム122を通過した後に、重合体粒子は、不活性窒素の流れで脱気(又は「パージ」)されて、溶解炭化水素材料の実質的に全てが除去される。
【0031】
また、重合システム100は、流動床反応器102に結合された再循環ガスライン124と、循環ガス冷却器126と、圧縮機128とを備える冷却ループを有する。運転中に、冷却器126からの冷却循環ガスは、流動床反応器102に入口130を介して流れ、その後流動床112を通って上方向に伝搬し、そして流動床反応器102から出口132を介し出る。
【0032】
拡大部106は、「減速区域」としても知られており、流動床からの粒子同伴の量を最小にするように設計されている。拡大部106の直径は、概して、直線部108からの距離と共に増大する。増大した直径は、再循環ガス114の速度の減少をもたらし、これが同伴粒子の大部分を再度流動床112に沈降させ、これにより再循環ガスライン124を介して流動床112から「持ち越し」される固体粒子の量を最小限にとどめることを可能にする。
【0033】
1個以上の温度センサ134を流動床に設置し、そして制御システム及び冷却ループと共に使用して、プロセス設定点付近における流動床112の温度T
rxを制御することができる。流動床反応器102から熱エネルギーを運ぶ加熱反応器ガス136を出口132から引き出し、そして圧縮機128によって冷却器126に圧送し、その際、加熱反応器ガス136の温度が低減し、存在する任意のICAが液体に凝縮される。任意の凝縮液体を含む冷却器126からの再循環ガス114は、反応器入口130に流れて流動床112を冷却する。冷却器126の入口及び出口付近にある温度センサ(図示せず)は、制御システムにフィードバックを与えて(
図1B)、冷却器126が流動床反応器102に入る再循環ガス114の温度を低下させる量を調節することができる。
【0034】
また、流動床反応器102は、反応器壁から床に少し、例えば、1インチの約8分の1〜4分の1突出するように流動床反応器102の直線部108の壁に沿った位置に取り付けられる膜温度センサ132を備えることができる。膜温度センサ132は、運転中に流動床反応器102の壁付近における樹脂の温度T
wを検出するように構成及び配置される。
【0035】
流動床112内の温度センサ134は、反応器壁から離れた流動床反応器102内の所定位置で反応器の運転中に床の温度を感知するように配置及び構成された抵抗温度センサを備えることができる。抵抗温度センサは、膜温度センサ132よりも深くに、例えば反応器壁から約8〜18インチ離れて床に突出するように取り付けることができる。
【0036】
他のセンサ及び他の装置を使用して、重合反応中に他の反応パラメータを測定することができる。反応パラメータは、瞬間及び床平均樹脂生成物特性、例えば、重合反応中に重合システム100によって生成される重合体樹脂生成物のメルトインデックス及び密度を含むことができる。樹脂生成物の特性は、従来、樹脂が反応器を出たときにそれを定期的に、例えば、約1時間に1回サンプリングすることにより測定され、そして品質管理実験室で適切な試験を行うことにより測定されていた。これらの試験の結果を使用して操作中にモデルを調節することができる。
【0037】
他の測定された反応パラメータは、反応器ガス組成、例えば、反応ガス、ICA、不活性ガス及び他の物質の異性体、例えば、窒素、不活性炭化水素等の濃度及び分圧を含むことができる。反応器ガス組成は、ガスクロマトグラフシステム138を用いて測定できる。
【0038】
プロセス制御変数は、樹脂についての重合システム100及び特性にとって所望の生産性を得るように制御される。例えば、流動床反応器102内の気相組成を制御するために使用されるパラメータは、ICA及び共単量体の濃度、単量体の分圧並びに触媒のタイプ及び特性並びに反応プロセスの温度を含むことができる。例えば、移行中に重合反応を制御プロセスの制御変数によって制御して、生成物、例えば、顆粒状樹脂が移行の開始時に設定された初期仕様に準拠する特性を有し、移行中に生成された生成物が最初に設定された仕様に準拠しなくなり、しかもその生成物が移行の終了時に設定された最終仕様に準拠した特性を有するのを確保することができることが知られている。ここで説明した方法では、反応中の樹脂の粘着性は、反応に使用されるICAの温度及び等価分圧を調整(又は調節)する制御システムによって制御される。
【0039】
図1Bは、重合システム100を制御するために使用できる制御システム140の簡略ブロック図である。制御システム140は、分散制御システム(DCS)、直接デジタル制御装置(DDC)、プログラマブル論理制御装置(PLC)又はここで説明したモデルに基づいて新たな制御設定データを受け入れかつ提案することのできる任意の他の好適なシステム若しくはシステムの組み合わせとすることができる。制御システム140は、ストレージシステム144からの機械可読命令を実装するプロセッサ142を有する。例示プロセッサとしては、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、仮想プロセッサ、クラウド実装の仮想プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)又はこれらのシステムの任意の組合せが挙げられる。例示ストレージ装置144としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ、仮想ハードドライブ、RAMドライブ、クラウドストレージシステム、光学記憶システム、物理的に符号化された命令(例えば、ASICにおいて)又はこれらのシステムの任意の組合せが挙げられる。
【0040】
ストレージシステム144は、重合システム100の制御設定を生成するためにプロセス及び樹脂データを使用する非粘着レジーム148の粘着モデル146及び二次元表現又はマップを備えることができる。制御設定の調整は、とりわけ、温度センサ134及び132の出力、GC138及びラボデータ150に基づいて決定できる。新たな制御設定を決定した後、制御システム140は、例えば、特に、プロセス冷却システム152、ICA添加及び再循環システム154、流れ制御システム156及びキルシステム158に対して調節を行い又は推奨することができる。したがって、制御変数をここで説明したモデルと連携して使用して、安全操作レジームでの反応器操作を維持するように反応器のパラメータを調整することができる。
【0041】
本明細書に記載の方法は、反応器の製造速度を、例えば反応器温度及びICAを増大させることによって増加させることを可能にすると共に、反応器内における過度の粘着性又は液体の形成をもたらす可能性のある反応器内の条件を回避することを可能にする。これらの方法は、利用可能なプロセス及び樹脂特性データを使用し、かつ、例えば、プラント現場でプロセスコントロールシステムにおいてオンラインで又は例えばスプレッドシート、データベース若しくは用途特化プログラムを使用してオフラインで実施できる。
【0042】
ここで説明するときに、モデルは、メタロセン触媒を用いたポリエチレン重合反応などの重合反応中に重合システム100に存在する化合物を補う。例えば、様々な共単量体の異性体は比較的不活性であり、かつ、回収システムを装備した反応器内に蓄積する場合がある。これらの異性体は、実質的な量で存在し得るため、これらは粘着性に影響を与える場合がある。したがって、単にICA濃度を使用するに過ぎないモデルは、粘着を回避する操作レジームを正確に予測しないことがある。
【0043】
ガスクロマトグラフ(GC)138を使用して、ICAに加えて、異性体のための組成データを提供することができる。例えば、GCからのデータを分析して、反応器からの循環ガスのサンプル中における1−ヘキセン共単量体と共単量体のC
6及びC
6+異性体とを別々に特徴付けることができる。いくつかの商用重合反応では、(全反応器ガスの)2.5モル%程度に高い異性体濃度を反応器システムで得ることができるところ、これは、1−ヘキセン共単量体の約1〜1.5モルパーセント濃度よりも実質的に高い場合がある。これらのレベルでは、異性体自体(共単量体を除く)は樹脂が粘着し凝集する傾向が増す場合がある。このようなデータを、ICAの「有効分圧」と呼ばれる用語としてモデルに組み込むことができる。ICAの有効分圧は、ICAの存在量に基づいて、ICAの分圧を調節する。
【0044】
モデルパラメータを開発するための粘着性試験
米国特許第7774178(178特許)では、パイロットプラント反応器内で重合の不在下に実行された試験は、様々なチーグラー・ナッタ及びメタロセン触媒樹脂について樹脂粘着温度を測定した。循環ガス中に存在するイソペンタンあり及びイソペンタンなしでこれらの樹脂について粘着温度を測定した。各試験のために一定に保持された他のプロセス条件には、エチレン分圧、水素濃度及びヘキセン濃度が含まれた。床粘着温度実験からのデータを、樹脂の特性及び反応条件に基づいてポリエチレン生成物についての処理温度限度を特定するために使用される溶融開始温度(MIT)モデルと比較した。
【0045】
図2A及び2Bは、一連の示差走査熱量測定(DSC)曲線からの溶融開始温度(MIT)曲線の決定を示すプロット図である。
図2Aにおいて、x軸202は摂氏温度を表し、y軸204は熱流を表す。MIT206は、DSC曲線の2つの部分の間にある接線208及び210の遮断点として特定される。急勾配の接線210は、より高いエネルギーの流れを表すところ、これは、樹脂が相を変化させるときに発生する。
図2Bに示すように、MIT206値の連続を樹脂の密度に対してプロットすることができる。
図2Bでは、x軸212は密度を表すのに対し、y軸214は、DSCプロットによって決定されるように、個々の樹脂のそれぞれのMIT値を表している。
【0046】
データから、MITモデルは、一般に、実験的に見出された粘着温度変化(例えば、炭化水素の存在下での乾燥樹脂対樹脂についてのMIT間で変位が見出された変位)と比較して、炭化水素の存在下のため溶融開始温度の大きな低下を予測することを決定した。粘着性を関連する樹脂の理論的な性質に相関させたモデルを開発した。いくつかのケースでは、MITでのモデル化された変化は、粘着温度で観察された変化と一致した。
【0047】
実際の粘着温度に加えて、178特許は、イソペンタンがメタロセン樹脂の粘着温度を押下げることを特定した。循環ガス中における約15モル%のイソペンタンでは、粘着温度を5〜6℃押し下げる。さらに、典型的にはメタロセン触媒と共に使用されるヘキセン共単量体の低い濃度は、樹脂の粘着温度に影響を与えなかった。
【0048】
しかし、178特許は、高速流動化嵩密度シグナル及び表層熱分析により、樹脂粘着温度を決定する際における任意の有意な改善が得られなかったことを確認した。さらに、溶融開始温度の計算は、パイロットプラント決定粘着温度又はイソペンタンが反応器中に存在する場合の影響の大きさを正確に予測しなかった。
【0049】
同じパイロットプラントで実施した別の研究では、樹脂粘着温度は以前の結果との比較を可能にするために、以前の研究の様々な触媒を用いて製造された樹脂についての縮合剤(イソヘキサン及びiC5)の様々な濃度での床沈降試験を使用して測定した。イソヘキサンの当量濃度がイソペンタン(iC5)のそれよりも約2.5倍低いことが判明した。これらの結果を使用してこの研究で作成したモデルを検証してメタロセン触媒についての操作性窓を獲得することができる。
【0050】
研究室実験のセットアップ及びサンプルデータ
粘着性試験を、様々なメタロセン触媒による樹脂製造の際における操作性窓をより理解するために、ここで説明するような試験装置で行った。多くの触媒の試験を通して、ユニークなパラメータを、様々な触媒を用いて製造された多数の樹脂のそれぞれについて開発できることが判明した。これらの触媒で製造された樹脂に関連する粘着性のリスクを、温度と、MI/密度/MFRの目標と、エチレン分圧と、誘導縮合剤(iC
5又はイソヘキサン)濃度と、連続添加物との組み合わせを使用することによって低減できた。
【0051】
図3A及び3Bは、粘着温度を測定するために使用できる試験装置300の図である。装置300は、ミキシングモーター304を有するオートクレーブ反応器302を使用する。ミキシングモーター304は、オートクレーブ302内の樹脂床に挿入されているミキサーブレード306を回転させる。オートクレーブ302内の温度を、ミキサーブレード306を回転させるのに必要なトルクがミキシングモーター304から利用可能なトルクを克服し、そしてミキサーブレード306が回転を停止するまで徐々に上昇させるが、これは、樹脂が粘着又は凝集する温度を示す。使用できる例示ミキシングモーター304は、ガストマニュファクチャリング社製の空気駆動モーター型式#2AM−NCC−16である。
図3Aにおいて、ミキシングモーター304は、磁気カプラ308を回転させ、その後ミキサーブレード306を回転させる。使用できる例示磁気カプラ308は、オートクレーブエンジニア製MagneDrive(登録商標)2である。
【0052】
試験装置300は、乾燥状態のみならず、イソペンタン(iC
5)及びイソヘキサン(iC
6)などの誘導縮合剤の存在下でも粘着性実験を実行することができる。詳細は特定の試験装置300について提示されているが、回転ミキサーブレードのトルクを一貫して測定することができる任意の装置を使用して特定の樹脂についてのモデルを開発することができると解される。
【0053】
図4は、粘着温度を測定するための方法400を示すプロセスフロー図である。方法400は、例えば、
図3A及び
図3Bの試験装置300と共に使用できる。方法400は、樹脂サンプルを篩い分けするブロック402から始まる。篩いは、粘着性の測定を妨害する可能性のある凝集体を除去する。例えば、樹脂サンプルを12号メッシュ(約1.68mmの開口を有する)を通して篩い分けすることができる。ブロック404では、樹脂の測定量を試験装置に添加する。例えば、篩い分けされた重合体樹脂の約300gを、
図3A及び
図3Bの試験装置300に添加することができる。ブロック406では、試験装置を、iC
5などのICAを添加する前に真空下に置いてICAの分圧の適切な測定を確保する。ブロック408では、予測分圧に到達させるために所定量のICAの量を試験装置に添加する。例えば、
図3A及び3Bの試験装置300を使用して、添加されたiC
5の0、約25cc、約50cc、約100cc又は約200ccに相当する5つのレベルを、試験した各樹脂について試験する。ブロック410では、試験装置をその後一定の速度で撹拌する。例えば、
図3A及び3Bの試験装置300の空気作動撹拌モーター304を使用して、約30psi(約207kPa)の一定の窒素圧力を加えて一定のトルクを保持する。
【0054】
ブロック412では、反応器の温度をトルク限界を超えるまでゆっくりと上昇させる。例えば、
図3A及び3Bの試験装置300を使用して、トルク制限を超えたときにミキシングモーターを停止させるが、これは粘着温度を示す。この試験は、空気作動ミキシングモーターの停止に限定されるものではない。例えば、トルク測定装置を使用して、トルクが予め設定された目標を超えた時を決定するために試験装置に加えられるトルクを測定することができる。
【0055】
図5は、
図3A及び3Bの試験装置300での粘着温度試験中における温度及び攪拌速度のプロット
図500である。x軸502は分で表す試験期間を表すのに対し、左のy軸504は、摂氏で表す試験装置の温度を表す。右のy軸506は、RPMで表すミキサー速度を表す。試験中、反応器内の温度508をゆっくり上昇させる。試験のほとんどについて、ミキサー速度は比較的一定である。しかし、樹脂が凝集し始めると、ミキサー速度は、符号512で示されるように緩やかになり始め、その後停止する。ミキサー速度がゼロに低下するときの点が粘着温度514である。上述のように、この試験をICA(例えば、iC
5)の多数の様々な添加レベルで繰り返し、粘着温度を特徴付けるために使用きるデータを得る。
【0056】
図6は、メタロセン触媒を使用して製造された樹脂についての粘着を示す、試験装置の温度に対するイソペンタン(iC
5)の分圧のプロット
図600である。この例では、樹脂は41.72のメルトインデックス(MI)、0.954g/ccの密度及び18.5のメルトフロー比(MFR)を有する。プロット600では、x軸602は摂氏温度を示すのに対し、y軸604はiC
5の分圧を表す。
【0057】
基準曲線606は、試験装置温度でのiC
5の分圧を示す。その後の曲線608、610、612及び614は、iC
5608の約200cc、iC
5610の約100cc、iC
5612の約50cc、及びiC
5614の約25ccの添加後の樹脂の分圧を示す。各曲線が終了する点616、618、620及び622は、それぞれの分圧での粘着温度を示す。
【0058】
図7は、
図6に関して説明した樹脂についてのiC
5の分圧に対する樹脂の粘着温度のプロット図である。同様の符号は、
図6に関して説明したとおりである。y軸702は摂氏温度で表す粘着温度を表す。樹脂粘着温度704は、反応器内におけるiC
5濃度と実質的に線形相関を与える。
【0059】
モデル開発
図1〜7に関して説明した粘着性試験を3種のメタロセン触媒(ここでは触媒1、触媒2及び触媒3という。)により生成された12種の異なる樹脂について実施した。
図7に関連して説明したように、各樹脂について、信頼性の高い相関を得るために5つの異なるiC
5レベルを実施した。樹脂密度は、0.912g/ccから0.954g/ccに変化し、MIは0.5から42g/10分に変化し、MFRは16から36まで変化した。粘着温度をiC
5濃度の線形関数として相関させた。試験からの結果は、モデルの開発によって、試験したメタロセン触媒系を包含する樹脂粘着温度T
stickを予測することが可能になった。線形関数の係数を、樹脂密度、MI及びMFRの関数として生成した。試験樹脂はメタロセン触媒を用いて製造されたが、このモデルは経験的に生成されるため、それらのパラメータは、例えばこれらの樹脂についてモデル開発を繰り返すことにより他の触媒系のために調節できる。
【0060】
これら3種の触媒によって生成された樹脂についての樹脂粘着温度を予測するために使用される基本的なモデル式は、次式1で示される。
【数1】
【0061】
式1では、C
1及びC
2として識別されるパラメータを、それぞれ式2及び3に示すように決定する。上記粘着温度測定値から収集されたデータを実験データと組み合わせ、そして多変数最小二乗解析で使用してこれらの方程式の係数を生成することができる。
【数2】
【0062】
式2及び3では、Dは、g/ccで表す樹脂の密度を表し、MIは樹脂のメルトインデックス(ASTM D 1238により190℃、2.16kgの荷重で測定されるときの)を表し、MFRはMIに対するHLMI(ASTM D1238により190℃、21.6kg荷重で測定されるときの)の比を表す。式4に示されるように効果的な分圧を形成させるためにヘキサンの過剰の異性体、例えば、ヘキサン類がICA(iC
5)の分圧を調節することで構成される。
【数3】
【0063】
式4において、P
6は、反応器内における運転温度でのヘキサンの分圧を表す。係数2.7を、ヘキサンの分圧対iC
5の分圧又は使用した他のICAの比を反映するように変更することができる。
【0064】
図8A及び8Bは、様々な樹脂についてのモデル対実験データのプロット図を示す。同様の符号は、
図6及び
図7に関連して定義されたとおりである。各プロット図について、個々の樹脂のパラメータは、MI/密度/MFRとしてプロット図上に示されている。各プロット図において、個々の測定値をデータ点として示しているのに対し、モデルからの出力を線として示している。
図8A及び
図8Bから分かるように、モデルは、様々なメタロセン触媒により形成された樹脂についての実験室実験からの実験データを実質的に予測する。
【0065】
図9及び10は、モデルの精度を示す。
図9は、様々な樹脂についての予測粘着温度904に対する実験粘着温度902のプロット
図900である。
図10は、平均誤差1006及び最大誤差1008を示す
図9のデータ点1004のそれぞれについての残差1002のプロット
図1000である。モデルは、2℃の平均誤差を有し、最大誤差は約5℃である。
【0066】
粘着温度モデルの検証
モデル予測を、パイロットプラント規模の気相流動床反応器で行われた床沈降実験に対して検証した。これらの実験では、未反応の実施を実行して、樹脂が凝集した温度を決定した。この試験を、高温で、例えば、約75℃を超える温度で高純度の窒素パージにより反応器を乾燥させることによって開始した。試験樹脂サンプルを、10メッシュの篩(約0.25mmの開口を有する)に通して凝集物を除去し、その後、反応器に充填した。窒素流を用いて、樹脂を約10体積百万分率(ppmv)の水になるまで乾燥した。試験樹脂を少なくとも85℃に加熱し、そして反応器条件を所望のエチレン分圧、共単量体濃度及びICA(iC5)濃度に調節した。次いで、サンプルを溶融流れ及び粒子径の測定のために集めた。
【0067】
その後、樹脂温度を30分毎に約1℃の速度で約2℃又は3℃ずつ上昇させた。目標温度に達したら、その温度を30分間安定化させた。流動化嵩密度、床重量及び表面温度を記録した。その後、循環圧縮機を停止し、そして床を分配板上に沈降させた。約15分後、循環圧縮機をオンに戻して樹脂を流動化させた。床が流動化しなかった場合には、試験を終了した。床が流動化した場合には、反応器に約5分与えて安定させてから、温度の次の上昇を開始させた。この手順を床が流動化を失った点に凝集するまで繰り返した。
【0068】
実験、反応器条件、実験粘着温度及びモデル予測に使用される樹脂の特性を以下の表1にまとめる。流動化が失われた温度を、「T−s、exp、℃」と示された列に示している。ここで説明するモデルで予測された比較値を、「T−s、モデル、℃」と示された列に示している。
【0069】
図11は、モデル予測に対する実験データのプロット図である。
図11では、x軸1102は、粘着温度の予測値を表すのに対し、y軸1104は、測定された粘着温度を表す。点1108として示されるパイロットプラント実施からの実験粘着温度及びモデル予測ライン1106は、実質的な一致を示す。
【0070】
一般に、モデル予測は、床沈降実験から3℃の平均誤差を有していた。反応器条件内における実験セットアップ及び変動におけるサイズ差を考慮すると、モデルは、測定データを効果的に予測する。
【0071】
表1:ポリエチレン樹脂粘着温度試験
【表1】
【0072】
非粘着動作レジームを生成するために粘着温度モデルを使用する
粘着温度モデルを露点計算と組み合わせて、現在試験されているメタロセン触媒で作られた樹脂を製造するための操作性窓、例えば反応器操作のマップにおける非粘着操作レジームを定義することができることができる。特に、他のメタロセン触媒、チーグラー触媒又はクロム触媒によって製造された樹脂に固有の他のモデルを作成することができる。このモデルは樹脂特性及び反応器条件の経験的な測定に基づくため、触媒の混合物及び組み合わせから生成される樹脂も製造することができる。
【0073】
図12は、反応器を非粘着レジームで操作するための方法1200のプロセスフロー図である。この方法1200は、粘着温度についてのモデルの開発のブロック1202から始まる。このモデルは、例えば、
図4に関して論じた方法400で行われた測定を使用しかつその測定データを適合させて
図7に関して説明した式1〜4のためのパラメータを開発することによって開発できる。ブロック1204において、ICA(例えば、iC
5)についての露点を、ICAについての等価分圧のそれぞれで決定できる。露点は、液体ICAが反応器内で凝縮し始めるICAの温度及び等価分圧の条件を示す。液体ICAの形成は、計装タップでの凝縮により凝集及びケース操作上の問題の可能性を高める可能性がある。
【0074】
ブロック1206では、
図13に関して説明したように、粘着温度及び露点を使用して非粘着レジームを識別することができる。非粘着レジームが確立されたら、ブロック1208において、ICA濃度及び温度を調節して安全操作レジームの状態で保持することができる。例えば、新たな樹脂製造実施の開始を、緩やかな初期製造速度で実施できる。その後、ICA濃度、温度又はその両方を徐々に増大させて製造速度を増加させると共に、反応器を安全な操作レジーム内に維持することができる。反応器の混乱により操作が非粘着レジームを離れ、又はその混乱が、粘着がすぐに起こるかもしれないことを示す場合には、制御システムは、例えば、特に、温度を低下若しくは上昇させることによって、再循環システムから戻るICAの量を減少させることによって、又はキル溶液を注入して反応を減速若しくは停止することによって、操作を非粘着レジームに戻すための変更を推奨することができる。反応器が凝集によって停止する前に、制御システムは、問題のある動作を特定することができる。方法1200について
図13〜19に関連してさらに説明する。
【0075】
図13は、樹脂の凝集を回避するための操作性窓のプロット1300である。プロット1300に示されるように、反応器の温度及びICAの等価分圧は、反応器の操作のための二次元空間又はマップを定める。プロット
図1300において、x軸1302は、この例ではICA、すなわちiC
5の等価分圧を表す。iC
5の等価分圧は、方程式4の式を使用して計算できる。y軸1304は、粘着温度(℃)を表す。モデルからの予測粘着温度(T
stick)1306は、上側の破線としてプロットされている。限界値を与えるために、方程式5を使用して、T
stick1306をより低い値に調整して安全裕度を設ける。
【数4】
【0076】
式5において、T
reactor,maxは、凝集の実質的なリスクなしに使用できる最大操作温度を表す。UTD
maxは、実験で測定された粘着温度と粘着が実際に始まることのできる温度との間に緩衝を与える高温度差分を表す。典型的には、反応器を安全に操作するために粘着温度よりも下に10℃の裕度が可能である。したがって、T
reactor,maxの値は、反応器についての温度上限1308を与える。
【0077】
図13では、露点(T
dew)1310を下破線としてプロットしている。最大操作温度と同様に、露点1310は、式6を使用して、より広い安全性裕度を与えるように調節できる。
【0079】
式(6)において、LTD
maxは、反応器内のICAの実際の露点よりも上の約10℃で発生する毛管凝縮の主要因である低温度差分である。T
reactor,minの値は、反応器の温度下限1312を与える。
【0080】
温度上限1308及び温度下限1312は、反応器について2次元空間内で非粘着レジーム1314を定める。これらの限界1308及び1312によって定められた別の領域は、粘着レジーム1316であり、ここでは、樹脂が溶融し始め、それによって粘着性になる。他の領域は、粘着+液体レジーム1318を含み、ここでは、樹脂の溶融及びiC
5(又は他のICA)の両方の凝縮が樹脂を粘着性にする可能性が高い。温度上限1308未満でかつ温度下限1312は、液体レジーム1320であり、ここでは、iC
5(又は他のICA)が凝縮し始め、樹脂を粘着性にする。
【0081】
正方形1322は、iC
5の温度及び等価分圧によってマッピングされた現在の反応器状態を表す。反応器を凝集なしで操作するために、操作者は、非粘着レジーム1314内での現在の反応器の状態を表す正方形1322を維持する。操作者は、反応器のパラメータを変更して正方形1322を限界1308及び1312が交わるネックに向かって移動させて生産性を増加させることができると共に、依然として非粘着レジーム1314内にとどまることができる。正方形1322がネックの近くに推し進められると、操作の柔軟さが少なくなり、誤差の幅が減少し、温度及び濃度偏位などのプロセス不調がさらに問題となる。
【0082】
非粘着操作レジームモデルの検証
一連の重合実験をパイロットプラント反応器内で実施して、触媒1及び触媒2の両方で製造された低密度(0.918g/cc)及びVLDPE(0.912g/cc)樹脂のiC
5濃度に応じた粘着温度を決定する。実施からのデータを表2に示しており、その結果を使用して、モデルによって予測される操作性窓を検証することができる。また、商業サイズの生産設備での触媒1による2回の商業的実施からのデータも含まれる。表2に示すように、これらのケースのそれぞれを図面の一つに関連して示す。
【0083】
表2:パイロットプラント及び商業プラント実施からの実験データ
【表2】
【0084】
パイロットプラントで行った触媒1の実験では、iC
5濃度が一定の限界を超えて増加すると、結露がタップで発生したが、これにより床レベルを制御するのが困難になった。触媒2で行ったパイロットプラントでは、塊の形成、シーティング及び拡大部の汚れが所定のiC
5濃度よりも上で観察された。
【0085】
図14は、第1のケーススタディにおける液体レジームでの操作を示すパイロットプラント実施のプロット1400である。同様の符号の項目は
図13に関して説明したとおりである。この実施は触媒1を使用して超低密度ポリエチレン(VLDPE)樹脂を製造し、その樹脂及び反応器のパラメータを表2のケース1に記載した。正方形1402は、液体レジーム1320で反応器下限1312を下回り、この場合には毛管凝縮が予想される。正方形1402は、17.3mol%のiC
5及び80℃の反応器温度での反応器操作を示し、それよりも上では、該操作はタップでの結露及び床レベルでの制御の喪失をもたらした。これらの操作は、矢印1404によって示されるように、反応器のiC
5濃度を低下させてiC
5の等価分圧を低下させ、そしてこれらの操作を非粘着レジーム1314に戻すことによって回復できる。
【0086】
図15は、商業プラント実施中における非粘着レジーム内での操作のプロット1500である。同様の符号の項目は、
図13に関して説明したとおりである。プロット1500は、触媒1によるVLDPE樹脂の商業的製造についての操作性窓のモデル予測を示しており、その樹脂及び反応器パラメータを表2にケースC1で記載した。正方形1502は、12.1%のiC
5及び80℃の反応器温度での操作を示す。正方形1502は、限度1308及び1312が交わるネックに非常に近い非粘着レジーム1314内にあるが、これは、既に最大安全製造限度に近いことを意味する。
【0087】
図16は、樹脂粘着をもたらした液体レジーム1320での操作を示すパイロットプラント実施のプロット1600である。同様の符号の項目は、
図13に関して説明したとおりである。プロット1600は、触媒によるメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)樹脂のパイロットプラント製造についての操作性窓のモデル予測を示し、該樹脂及び反応器のパラメータを表2のケース2に記載している。正方形1602は、18.9%のiC
5及び85℃の反応器温度での操作を示し、これは、液体レジーム1320での温度下限1312のすぐ下であった。この領域では、毛管凝縮が予想され、その後、反応器は、タップでの結露及び床レベルでの制御喪失となった。これらの操作は、矢印1604によって示されるように、温度を上昇させてiC
5の凝縮を低下させ、そして操作を非粘着レジーム1314に戻すことによって回復できる。
【0088】
図17は、非粘着性レジーム1314内での商業実施のプロット1700である。同様の符号の項目は
図13に関して説明したとおりである。プロット1700は、触媒1で製造されたmLLDPE樹脂の商業的製造についての操作性窓のモデル予測を示しており、該樹脂及び反応器のパラメータを表2においてケースC2で記載している。正方形1702によって17%のiC
5及び85℃の反応器温度で示される反応器操作点は、非粘着レジーム1314の範囲内であったが、温度下限1312に近かった。iC
5濃度の増加又は温度の低下は、操作を液体レジーム1320に移動させ、樹脂における粘着性又は反応器制御の喪失を生じさせる場合がある。反応器の温度は、MFR制御についての要件によって決定される場合が多いため、液体レジーム1320は、矢印1704によって示されるように、その温度でiC
5レベルを調節することによって回避できる。
【0089】
図18は、粘着及び液体レジーム1318の両方で実行されたパイロットプラント実施のプロット1800である。同様の符号の項目は
図13に関して説明したとおりである。プロット1800は、触媒2によるVLDPE樹脂の製造についての操作性窓を示しており、該樹脂及び反応器のパラメータを表2にケース3で記載している。正方形1802によって20.3%のiC
5及び85℃の反応器温度で示される反応器操作点は、粘着及び液体レジーム1318に置かれ、ここでは、樹脂溶融と液体凝縮の両方が発生する。予想できたように、このレジーム1318の操作は、反応器内の拡大部の汚れ及び塊をもたらした。
【0090】
図19は、樹脂粘着に至る液体レジーム1318で実行されたパイロットプラント実施の別のプロット1900である。同様の符号の項目は
図13に関して説明したとおりである。プロット1900は、触媒2によるmLLDPE樹脂の製造についての操作性窓を示しており、該樹脂及び反応器のパラメータを表2にケース4で記載している。正方形1902によって18.3%のiC
5及び80℃の反応器温度で示される反応器操作点は、液体レジーム1320にあり、ここでは、液体の凝縮が発生し、樹脂を粘着させる。この点での操作は、反応器内の床全体の塊化をもたらした。
【0091】
図14〜19の例で示すように、モデルは、パイロットプラント反応器及び商業プラントの両方で操作性窓を実質的に予測する。このモデルは、依然として非粘着レジーム1314のままでiC
5の濃度を増加させることによって製造速度を最大にするように最適な動作条件を設定するために使用できる。また、このモデルを使用して、操作上の問題又はシャットダウンが発生する前に、問題のあるレジーム1316、1318及び1320の操作を特定し、かつ、反応器条件を調節することができる。
【0092】
ここで説明した方法を経験的モデルを決定する際に使用して、反応器内での粘着を防止することができる。例えば、粘着温度は、広範囲の樹脂特性にわたってiC
5分圧と共に直線的に変化する。メタロセン触媒を用いて製造された樹脂についての粘着温度は、反応器内におけるICAの密度、MI、MFR、温度及び等価分圧と相関していた。この相関は、パイロット反応器での床沈降試験で検証したところ、±3℃以内に一致することが判明した。さらに、樹脂粘着温度に及ぼす粒度の影響は、樹脂溶融及びiC
5凝縮についての実験誤差内で無視できる程度であると認められる。したがって、本明細書に記載される方法は、粘着温度相関及び露点の計算を使用して、メタロセン触媒を用いた重合プロセスについての安全操作性窓を決定する。
【0093】
試験条件及び材料
表1及び本明細書の他の箇所において、重合体密度とは、ASTM1505及びASTM D−1928に従って測定された密度をいう。プラックを作製し、そして100℃で1時間状態調整して平衡結晶化度に近づける。次に、密度の測定を密度勾配カラムで行う。本明細書を通して、略語「MI」(又はI
2)はメルトインデックスを指す。MIは、ASTM D1238に従って測定される(190℃で2.16kg荷重)。フローインデックス(FI又はI
21)は、ASTM D1238に従って測定される(190℃で21.6kg)。メルトインデックス比(MIR)は、FI対MIの比(FI/MI)を決定することによって算出される。
【0094】
表1及び本明細書の他の箇所では、触媒1は、ユニベーションテクノロジーズLLCからXCAT(商標)HP−100触媒として市販されているメタロセン触媒である。触媒2は、メチルアルモキサンで活性化されたシリカ担持ビス(n−プロピルシクロペンタジエン)ハフニウムジメチルである。触媒3は、XCAT(商標)EZ−100触媒としてユニベーションテクノロジーズLLCから市販されているメタロセン触媒である。
【0095】
反応器
ここで説明する方法は、任意の数の設計を含めて、任意の数のパイロットプラント又は商業サイズ反応器で使用することができる。例えば、モデルは、本発明に従って監視し随意に制御することができる気相流動床重合反応などの商業規模の反応で使用することができる。このような反応のいくつかは、
図1に関して説明した流動床反応器102の形状を有する反応器内で行うことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、連続気相流動床反応器を、これが重合を実行するように稼働する間に本発明に従って監視し、そして随意に制御する。重合は、例えば混合T字配置で、一次単量体及び水素のガス状供給流れと液体又は気体の共単量体とを混合させることによって実施される。次いで、この混合物を反応床の下の再循環ガスラインに導入することができる。
【0097】
例えば、一次単量体はエチレンとすることができ、共単量体は1−ヘキセンとすることができる。エチレン、水素及び共単量体のそれぞれの流量は、一定のガス組成目標を維持するように制御される。エチレン濃度は、一定のエチレン分圧を維持するように制御される。水素は、一定の水素対エチレンモル比を維持するように制御される。ヘキセンは、一定のヘキセン対エチレンモル比を維持するように制御される(あるいは、共単量体及びエチレンの流量は一定の比に保持される)。全てのガスの濃度をオンラインガスクロマトグラフによって測定して再循環ガス流中の比較的一定の組成を確保する。固体又は液体触媒は、キャリアとして精製窒素を使用して流動床に直接注入される。触媒の供給速度は、一定の製造速度を維持するように調節される。
【0098】
成長しつつある重合体粒子を含有する反応器床は、反応区域を通る組成供給物及び再循環ガスの連続流によって流動状態に維持される。いくつかの実施態様では1〜3フィート/秒の表面ガス速度を使用してこれを達成し、そして反応器を300psigの全圧で操作する。一定の反応器温度を維持するために、再循環ガスの温度を継続的に上方又は下方調整して、重合による熱発生速度の変化に対応する。流動床を、粒状生成物の形成速度に等しい速度で床の一部分を取り出すことによって一定の高さに維持する。
【0099】
生成物を、一連の弁を介して連続的に又はほぼ連続的に固定容量チャンバーに取り出し、これを同時にもとの反応器に排出する。これにより、生成物の高効率除去が可能になると共に、もとの反応器に未反応ガスの大部分を再循環することが可能になる。取り出した生成物をパージして同伴炭化水素を除去し、そして加湿窒素の小さな流れで処理して微量の残留触媒を失活させる。他の実施形態において、反応器を、様々な異なる方法(例えば、スラリー、又は気相プロセス)のいずれかを使用して重合を実行するように動作している間に本発明に従って監視し、そして随意に制御する。
【0100】
いくつかの実施形態では、連続気相プロセス(例えば、流動床プロセス)である重合反応を本明細書に記載の技術に従って監視し、随意に制御する。このようなプロセスを行うための流動床反応器は、典型的には、反応区域といわゆる減速区域とを備える。反応区域は、反応区域を通して重合熱を除去するようにガス状単量体及び希釈剤の連続流によって流動化された、成長しつつある重合体粒子と形成された重合体粒子と少量の触媒粒子との床を含む。任意に、再循環ガスの一部を冷却し、そして圧縮して、反応区域に再び入ったときに循環ガス流の熱除去容量を増大させる液体を形成させることができる。この操作方法を「凝縮モード」という。ガス流の好適な速度は、簡単な実験によって容易に決定できる。循環ガス流に対するガス状単量体の組成は、粒状重合体生成物及びそれに関連する単量体が反応器から取り出される速度に等しい速度であり、そして反応器を通過するガスの組成は、反応区域内で本質的に定常状態のガス組成を維持するように調節される。
【0101】
反応区域を出るガスは、同伴粒子を除去する減速区域に通される。より微細な同伴粒子及びダストをサイクロン及び/又は微細フィルターで除去することができる。ガスを圧縮機で圧縮し、そして熱交換器を通過させ、そこで重合熱が除去され、その後反応区域に戻す。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態に従って監視され任意に制御される反応は、オレフィンの単独重合体(例えば、エチレンの単独重合体)及び/又はオレフィン、特にエチレンと少なくとも1種の他のオレフィンとの共重合体、三元共重合体などを生成することができる。オレフィンは、例えば、一実施形態では2〜16個の炭素原子を含むことができ;別の実施形態では、エチレン及び他の実施形態では3〜12個の炭素原子を含む共単量体;さらに別の実施形態ではエチレン及び4〜10個の炭素原子を含む共単量体;さらに別の実施形態ではエチレン及び4〜8個の炭素原子を含む共単量体である。本発明に従って監視され任意に制御された反応は、ポリエチレンを製造することができる。このようなポリエチレンは、エチレンの単独重合体及びエチレンと少なくとも1種のα−オレフィンとのインターポリマーとすることができ、その際、エチレン含有量は、関与する全単量体の少なくとも約50重量%である。本発明の実施形態で利用できる代表的なオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセンなどである。また、ここで利用できるのは、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどのポリエン並びに重合媒体中でその場で形成されたオレフィンである。理解できるように、共単量体の選択は、粘着温度について予測値及び実際の値を変更することができるICAの有効分圧の決定に影響を与える。
【0103】
オレフィンが重合媒体中でその場で形成される場合には、長鎖分岐を含むポリオレフィンの形成が生じる場合がある。ポリエチレン又はポリプロピレンの製造の際に、共単量体が重合反応器中に存在してもよい。存在する場合には、共単量体は、最終樹脂への共単量体の望ましい重量パーセントの取り込みを達成することになるエチレン又はプロピレン単量体と共に、任意のレベルで存在することができる。ポリエチレン製造の一実施形態では、共単量体は、気相において約0.0001〜約50;別の実施形態では約0.0001〜約5;さらに別の実施形態では約0.0005〜約1.0;さらに別の実施形態では約0.001〜約0.5のモル比(共単量体対エチレン)の範囲内でエチレンと共に存在する。絶対的な用語で表現すると、ポリエチレンを製造する際に、重合反応器中に存在するエチレンの量は、一実施形態では約1000気圧まで、及び別の実施形態では約500気圧まで、及びさらに別の実施形態では約100気圧まで、及びさらに別の実施形態では約50気圧まで、及びさらに別の実施形態では約10気圧までの範囲とすることができる。
【0104】
ポリオレフィンの最終特性を制御するために水素ガスをオレフィン重合に使用する場合が多い。いくつかの種類の触媒系について、水素濃度(又は分圧)を増加させると、生成ポリオレフィンの分子量又はメルトインデックス(MI)が変化する場合があることが知られている。このように、MIは、水素濃度に影響を受ける場合がある。重合における水素の量は、全重合性単量体、例えば、エチレン又はエチレンとヘキセン若しくはプロピレンとのブレンドに対するモル比として表すことができる。いくつかの重合プロセスにおいて使用される水素の量は、最終ポリオレフィン樹脂の望ましいMI(又は分子量)を達成するのに必要な量である。一実施形態では、気相における全単量体に対する水素のモル比(H
2対単量体)は、約0.00001を超える。モル比は、別の実施形態では約0.0005を超え、さらに別の実施形態では約0.001を超え、さらに別の実施形態では約10未満であり、さらに別の実施形態では約5未満であり、さらに別の実施形態では約3未満であり、さらに別の実施形態では約0.10未満であり、ここで、望ましい範囲は、ここで説明した任意の上限モル比と任意の下限モル比との任意の組合せを含むことができる。別の言い方をすれば、任意の時点での反応器中における水素の量は、一実施形態では約10ppmまで、或いは他の実施形態では約100又は約3000又は約4000又は約5000ppmまで、或いはさらに別の実施形態では約10ppm〜約5000ppmの間、或いは別の実施形態では約500ppm〜約2000ppmの間である。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態に従って監視され任意に制御される反応器は、2個以上の反応器を直列的に使用する段階的反応器の構成要素であることができ、その際、一方の反応器は、例えば、高分子量成分を生成することができ、他方の反応器は低分子量成分を生成することができる。
【0106】
本発明に従って監視され任意に制御された反応器は、嵩高配位子メタロセン型触媒系の存在下で、かつ、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム及びトリ−n−ヘキシルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、ジブチル亜鉛などの任意の捕捉剤の非存在下で又はそれを本質的に含まずにスラリー又は気相プロセスを実施することができる。「本質的に含まない」とは、これらの化合物が反応器又は任意の反応器成分に意図的に添加されず、かつ、存在する場合には、反応器中において約1ppm未満で存在することを意味する。
【0107】
本発明に従って監視され任意に制御される反応器は、1種以上の触媒を、触媒系(又はその成分)の重量に基づいて、例えば、ステアリン酸アルミニウムなどの金属−脂肪酸化合物約10重量%までと共に使用することができる。好適な場合がある他の金属としては、他の第2族及び第5〜13族金属が挙げられる。他の実施形態では、金属−脂肪酸化合物の溶液を反応器に供給する。他の実施形態では、金属−脂肪酸化合物を触媒と混合し、そして別々に反応器に供給する。これらの物質を触媒と混合することができ、或いは溶液、スラリー又は固体(好ましくは粉末)として触媒系若しくはその成分と共に又はそれなしで反応器に供給することができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態に従って監視され任意に制御される反応器において、担持触媒は、活性剤と化合でき、かつ、タンブリング及び/又は他の適切な手段によってエトキシ化又はメトキシ化アミンなど(その例は、ICIスペシャリティーズ社から入手できるKEMAMINE AS−990である)の帯電防止剤約2.5重量%まで(触媒組成物の重量を基準にして)と化合できる。他の帯電防止組成物としては、OCTASTAT化合物群、より具体的にはOctastat2000、3000及び5000が挙げられる。
【0109】
金属脂肪酸及び帯電防止剤を固体スラリー、溶液、又は固体として(好ましくは粉末として)反応器に別個の供給物として添加することができる。さらに、この方法の利点の一つは、添加剤のレベルのオンライン調節を可能にすることである。
【0110】
本発明に従って製造することができる重合体の例としては、次のものが挙げられる:C
2〜C
18α−オレフィンの単独重合体及び共重合体;ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンゴム(EPR);エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM);ポリイソプレン;ポリスチレン;ポリブタジエン;スチレンと共重合されたブタジエンの重合体;イソプレンと共重合されたブタジエンの重合体;ブタジエンとアクリロニトリルとの重合体;イソプレンと共重合されたイソブチレンの重合体;エチレンブテンゴム及びエチレンブテンジエンゴム;並びにポリクロロプレン;ノルボルネン単独重合体及び1種以上のC
2〜C
18α−オレフィンとの共重合体;1種以上のC
2〜C
18α−オレフィンとジエンとの三元共重合体。
【0111】
本発明に従って監視され任意に制御される反応器に存在することができる単量体としては、次の1種以上が挙げられる:C
2〜C
18αオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン及び任意に少なくとも1種のジエン、例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルオクタジエン(例えば、1−メチル−1,6−オクタジエン及び7−メチル−1,6−オクタジエン)を含めてオクタジエン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン;及び易縮合性単量体、例えば、イソプレン、スチレン、ブタジエン、イソブチレン、クロロプレン、アクリロニトリル、ノルボルネンなどの環状オレフィン類。
【0112】
流動床重合を本発明のいくつかの実施形態に従って監視し任意に制御することができる。この反応は、任意のタイプの流動重合反応であることができ、かつ、単一の反応器又は複数の反応器、例えば2個以上の直列の反応器で実施できる。
【0113】
様々な実施形態では、多くの異なるタイプの重合触媒の任意のものを本発明に従って監視され任意に制御される重合プロセスで使用することができる。単一の触媒を使用することができ、又は適宜触媒の混合物を使用することができる。触媒は、可溶性又は不溶性、担持又は非担持とすることができる。このものは、充填剤、液体又は溶液、スラリー/懸濁液又は分散液と共に又はそれなしでスプレードライされたプレポリマーであることができる。これらの触媒は、当該技術分野において周知の助触媒及び促進剤と共に使用される。典型的には、これらは、アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水酸化物並びにアルミノキサンである。もっぱら例示の目的で、適切な触媒の例としては、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒、バナジウム系触媒(例えば、オキシ塩化バナジウム及びアセチルアセトン酸バナジウム)、メタロセン触媒及び他の単一部位又は単一部位様触媒、金属ハロゲン化物の陽イオン形態(例えば、三ハロゲン化アルミニウム)、陰イオン開始剤(例えば、ブチルリチウム類)、コバルト触媒及びそれらの混合物、ニッケル触媒及びそれらの混合物、希土類金属触媒(すなわち、57〜103の周期律表の原子番号を有する金属を含有するもの)、例えばセリウム、ランタン、プラセオジム、ガドリニウム及びネオジムの化合物が挙げられる。
【0114】
触媒は、メタロセンを含むことができる。ここで説明するメタロセンとしては、1個以上のCp配位子(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子)が少なくとも1個の第3族〜第12族の金属原子に結合し、かつ、1個以上の脱離基が1個以上の金属原子に結合した「半サンドイッチ」及び「全サンドイッチ」化合物が挙げられる。以下、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」という。メタロセン触媒成分は、担体材料上に担持されていてよく、かつ、別の触媒成分と共に又はそれなしで担持されていてもよい。一実施形態では、1種以上のメタロセン触媒成分は次式(I)で表される:
Cp
ACp
BMX
n (I)
式中、Mは、一実施形態では第3族〜第12族原子及びランタニド族原子よりなる群から選択される金属原子である。例えば、Mは、Ti、Zr、Hf原子から選択できる。それぞれの脱離基XはMに化学的に結合しており;それぞれのCp基はMに化学的に結合しており;nは0又は1〜4の整数であり、特定の実施形態では1又は2のいずれかであることができる。
【0115】
Cp配位子は、シクロアルカジエニル配位子及び複素環式アナログなどの、少なくとも一部分がπ結合系を含む1個以上の環又は環系である。Cp配位子は、これらが置換又は引き抜き反応に対してさほど影響を受けないという点で、触媒化合物に結合した脱離基とは区別される。式(I)においてCP
A及びCP
Bで表される配位子は、同一の又は異なるシクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子であることができ、それらのいずれか又は両方はヘテロ原子を含んでいてよく、またそれらのいずれか又は両方は少なくとも1個のR基により置換されていてもよい。置換R基の非限定的な例としては、水素基、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アシル、アロイル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ及びこれらの組み合わせから選択される基が挙げられる。一実施形態では、CP
A及びCP
Bは、独立して、シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル及びそれぞれの置換誘導体よりなる群から選択される。(本明細書で使用するときに、用語「置換」とは、その用語に続く基が任意の位置に1個以上の水素の代わりに少なくとも1個の部分を有することを意味し、該部分は、ハロゲン基(例えば、Cl、F、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C
1〜C
10アルキル基、C
2〜C
10アルケニル基及びそれらの組み合わせなどの基から選択される。置換アルキル及びアリールの例としては、アシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。)。
【0116】
一実施形態では、上記式(I)におけるそれぞれの脱離基Xは、ハロゲンイオン、水素化物、C
1〜12アルキル、C
2〜12アルケニル、C
6〜12アリール、C
7〜20アルキルアリール、C
1〜12アルコキシ、C
6〜16アリールオキシ、C
7〜18アルキルアリールオキシ、C
1〜12フルオロアルキル、C
6〜12フルオロアリール、及びC
1〜12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体よりなる群から独立して選択できる。本明細書で使用するときに、用語「脱離基」とは、活性化剤によって触媒成分から引き抜かれ、それによってオレフィンの重合又はオリゴマー化に向かう活性種を生成することのできる、触媒成分の金属中心に結合した1個以上の化学的部分をいう。
【0117】
メタロセン触媒成分の構造は、例えば二量体又はオリゴマー構造を含めて米国特許第5026798号、同5703187号及び同5747406号に開示されたもの、例えば、米国特許第5026798号及び同6069213号に開示されたものなどの多くの形態をとることができる。他のものとしては、米国特許出願公開第US2005/0124487A1号、US2005/0164875A1及びUS2005/0148744に記載された触媒が挙げられる。他の実施形態では、メタロセンは、米国特許第6242545号に記載されているように、ハフニウム金属原子と共に形成できる。
【0118】
所定の実施形態では、上記メタロセン触媒成分は、それらの構造異性体又は光学異性体又は鏡像異性体(ラセミ混合物)を含むことができ、一実施形態では純粋な鏡像異性体とすることができる。
【0119】
様々な実施形態では、本発明に従って監視され任意に制御される重合反応は、不活性微粒子など(例えば)の他の添加剤を使用することができる。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を例示しそしてここで記載しているが、本発明は、説明されかつ示された特定の実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。「からなる」及び「から本質的になる」という語句は、特定しない限り、本明細書において具体的に言及したかどうかを問わず、他の工程、要素又は材料を除外するものではなく(ただし、このような工程、要素又は材料が本発明の基本的かつ新規な特徴に影響を及ぼさない場合に限る。)、さらに、使用した要素及び材料と通常関連のある不純物を除外するものでもない。
【0121】
簡潔にするために、ここでは所定の範囲しか明示的に開示していない。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができるだけでなく、任意の下限値からの範囲を任意の他の下限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができ、同様に、任意の上限値からの範囲を任意の他の上限値を組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができる。さらに、所定の範囲内には、たとえ明示的に規定されていなくても、その端点間の全ての点又は個々の値が含まれる。つまり、全ての点又は個々の値は、任意の他の点又は個々の値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定するために、それ自体が下限値又は上限値としての役割を果たし得る。
【0122】
本明細書で使用するときに、「実質的に」、「一般に」及び程度に関する他の用語は、そのように修飾された特性からの許容できるばらつきを示すことを目的とする相対な修飾語である。これは、これが修飾する絶対値又は特性に限定されるものではなく、むしろ、その反意語よりも物理的又は機能的特性の多くを有し、好ましくは、このような物理的又は機能的特性に近づく又は近似させるものである。
【0123】
全ての数値は、「約」又は「およそ」の指示値であり、そして当業者によって予想されるであろう実験誤差及び変動を考慮している。さらに、様々な用語は上で定義した。請求の範囲で使用される用語に関する限り、少なくとも1の印刷された刊行物又は発行された特許に反映されたときに当業者が与えた最も広い定義が与えられなければならない。本願において引用された全ての特許、試験手順及び他の文書は、そのような開示が本願とは矛盾しない範囲で、かつ、援用が認められる全ての法域について参照により全体的に援用される。
【0124】
上記は、本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の他の及びさらなる実施形態がその基本的な範囲から逸脱することなく考案でき、そしてその範囲は請求の範囲によって決まる。