特許第6235596号(P6235596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235596新規粉末、粉末組成物、それらの使用方法及並びにその粉末及び粉末組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235596
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】新規粉末、粉末組成物、それらの使用方法及並びにその粉末及び粉末組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20171113BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20171113BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20171113BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20171113BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20171113BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B09B3/00 304K
   C02F1/70 ZZAB
   B22F9/08 A
   B22F1/00 T
   B22F1/00 U
   C22C38/00 301Z
   C22C38/00 302Z
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-532389(P2015-532389)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-500551(P2016-500551A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2013069326
(87)【国際公開番号】WO2014044692
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】12185424.4
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13177597.5
(32)【優先日】2013年7月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509020295
【氏名又は名称】ホガナス アクチボラグ (パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルソン、ペル − オロフ
(72)【発明者】
【氏名】ベリ、シグルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダルソン、ヒルマン
(72)【発明者】
【氏名】バスティアエンス、リーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリミロヴィク、ミリカ
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭32−004707(JP,B1)
【文献】 特開2000−080401(JP,A)
【文献】 特開2005−131570(JP,A)
【文献】 特開2009−262011(JP,A)
【文献】 特開2004−292806(JP,A)
【文献】 特開2002−210452(JP,A)
【文献】 特開昭49−125208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1、B22F 9、
C02F 1、C22C38、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.7−40重量%のホウ素及び10重量%の含有量までの不可避的不純物を含む又はからなる、汚染された土壌又は水の浄化のためのホウ素−鉄合金粉末。
【請求項2】
60重量%を超える鉄含有量を有する、請求項1に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項3】
0.7−30重量%のホウ素含有量を有する、請求項1又は2に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項4】
20mmと0.5mmの間の粒子サイズ範囲を有する粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項5】
0.5mmと10μmの間の粒子サイズ範囲を有する粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項6】
50μmと1μmの間の粒子サイズ範囲を有する粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項7】
凝集した粒子を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項8】
ガスアトマイズ又は水アトマイズ溶融鉄−ホウ素合金から製造された、請求項4から7のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項9】
鉄−ホウ素合金融液からの様々なサイズの研削又は粉砕(milled)された固化片から製造された、請求項4から7のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末を含む、汚染された土壌又は水の浄化のためのホウ素鉄合金粉末組成物。
【請求項11】
汚染された土壌、地下水又は帯水層の浄化方法であって、
請求項1−10のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物を提供する工程、
ホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物を、汚染土壌、水又は地下水と接触させる工程、及び、
ホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物を、汚染土壌、水又は地下水とインキュベートし、汚染物質を分解する工程、
を含む、上記方法。
【請求項12】
前記分解反応が終了した後、ホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物が、土壌又は帯水層に残る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記汚染物質が、ハロゲン化及び臭素化炭化水素、他の有機物又は金属を含む、炭化水素である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記汚染物質が、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)及びシス− ジクロロエチレン(cDCE)を含む塩素化エテンの群;1,1,1,2テトラクロロエタン(1111TeCE)、1,1,2,2テトラクロロエテン(1122TeCE)、1,1,1トリクロロエタン(111−TCA)、1,1,2トリクロロエタン及び1,1ジクロロエタン(11−DCA)を含むクロロエタンの群;クロロホルム、ジクロロブロモメタンを含むクロロメタンの群;並びに1,2,3−トリクロロプロパンを含む塩素化プロパンの群、からの群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
汚染された土壌又は水の浄化のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載のホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物の使用。
【請求項16】
ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌又は水の浄化のための、請求項15に記載のホウ素−鉄合金粉末又は粉末組成物の使用。
【請求項17】
前記汚染物質が、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)及びシス− ジクロロエチレン(cDCE)を含む塩素化エテンの群;1,1,1,2テトラクロロエタン(1111TeCE)、1,1,2,2テトラクロロエテン(1122TeCE)、1,1,1トリクロロエタン(111−TCA)、1,1,2トリクロロエタン及び1,1ジクロロエタン(11−DCA)を含むクロロエタンの群;クロロホルム、ジクロロブロモメタンを含むクロロメタンの群;並びに1,2,3−トリクロロプロパンを含む塩素化プロパンの群、からの群から選択される請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明につながる研究は、助成契約第226565号の下で、欧州共同体の第7次フレームワークプログラム(FP7/2007−2013)から資金提供を受けた。
【0002】
本発明は、新規材料、及び汚染された土壌、水又は地下水の浄化のためのその新規材料の使用、並びに汚染された土壌、水又は地下水の浄化のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近代産業時代は、生活条件と全体的な健康状況を向上させる数多くの化学物質を人類に提供している。しかしながら、これまで、より費用対効果のある物質及び方法の探索が終了した場合、これらの物質及び方法の無統制な使用に起因する環境条件への長期的な影響については、長期間、時には未だに軽視されていることは、よく知られかつ認識されている。
【0004】
様々な用途におけるハロゲン化炭化水素(例えば塩素化化合物)の使用により、これらの物質がしばしば非常に安定で、生体内に蓄積する傾向があることから、健康及び環境問題を作り出してきた。
【0005】
環境及び健康被害の側面からそのような物質の取り扱いが十分ではない工業用地又は他の場所において、ハロゲン化炭化水素は、土壌及び地下水に蓄積してきており、健康及び環境に対して長期的な脅威を構成し得る。よって、汚染された土壌、水及び地下水におけるハロゲン化炭化水素の含有量を減少させるのに適した方法及び材料を見つけることが、最も重要である。これらの汚染物質は、様々な濃度レベルで例えば土壌の大部分に含まれている可能性があるため、汚染物質を分解してその含有量を減らすために用いられる材料は、好ましくはかなり安価で、かつ様々な濃度レベルで効果的で、全体的な状態を変化させる能力を有するべきである。
【0006】
浄化技術は多種多様であるが、その場外(ex−situ)法とその場(in−situ)法に分類することができる。その場外法は、影響土壌の掘削とそれに続く表面の処理を含む。その場法は、土壌を除去することなしに、汚染を処理することを追求している。より伝統的な浄化アプローチ(1970年代から1990年代まで汚染サイトでほとんど専ら使用されたアプローチ)は、主に、土壌掘削と埋立地への処分(“dig and dump”)及び地下水への処分(“pump and treat”)からなる。その場技術には凝固及び安定化が含まれており、米国で広く使用されてきた。
【0007】
ハロゲン化/塩素化炭化水素で汚染された土壌、水又は地下水を処理するための、興味深いその場浄化技術の一つは、害の少ない種への物質の分解に基づいており、その種の最終生成物の一つは塩化物イオンである。
【0008】
土壌中及び水中のハロゲン化炭化水素を分解するため、元素の形態で鉄、いわゆるゼロ価鉄(ZVI)が、多くの発明者や科学者から提案されている。ZVI単独及び様々な元素及び物質との組み合わせが、前記内容との関連において、その使用方法とともに記載されている。鉄はかなり安価で材料であり、高い酸化還元能力を有しかつ健康及び環境に対する影響が小さいので、この目的のため、鉄は最も適した作用物質である。
【0009】
特許出願WO2004/007379には、塩素化炭化水素で汚染された土壌及び/又は地下水のその場(in situ)浄化のための担持触媒(support catalysts)が記載され、担持触媒は、吸収剤としての活性炭を含みかつZVIで含浸されている。ZVIの適した形状の例としては、粉末、切り屑(turnings)、削り屑(chips)である。中でも、その出願はまた、活性炭と鉄塩との混合物を熱分解し、その後、生成した酸化鉄を還元することによって作られた担持触媒が開示されている。
【0010】
米国特許7,635,236(Zhao)には、安定度が高くかつ分散可能なZVIナノ粒子を調製するための、及び汚染サイトにおける無機化学毒素に対する浄化技術においてそのナノ粒子を使用するための方法が開示されている。特許を取得した方法は、以下の工程を含む。水性担体(carrier)とカルボキシメチルセルロースを含む安定化剤中に分散したZVIナノ粒子の組成物を準備する工程及び、当該組成物を汚染サイトに供給する工程。
【0011】
米国特許出願2009/0191084(Liskowitz)は、粒子の形態でのZVI、又は黒鉛炭素を豊富化した(enriched)鉄ウール、及びZVIの表面上に触媒部位を生成することになっている硫黄を教示しており、例えばトリクロロエチレンで汚染された環境を含む水性酸素(aqueous oxygen)中において、前記触媒部位で原子状水素の生成を促進することを教示している。生成した原子状水素は、トリクロロエチレンのエチレン及びエタンへの還元を促進する。一方、純粋なZVIは、腐食鉄から溶解汚染化合物への電子移動を伴う反応連鎖を促進する傾向がある。トリクロロエチレンの場合、この化合物は、1,2シス−ジクロロエチレンに分解し、さらに、元の化合物よりも有害であるとされている塩化ビニルに分解する。少なくとも4%の黒鉛炭素と0.5%の硫黄の含有量を有するアトマイズ(atomized)ZVIが推奨される。
【0012】
米国特許出願2010/0126944は、有機ニトロ化合物、特にニトロ芳香族化合物及びニトロアミンを、その表面上に金属銅の不連続なコーティングを有するZVIを含むバイメタル粒子で分解することを開示している。水が3.5−4.4のpHを有する場合、特に、水中に酢酸が存在する場合に、高い分解速度が達成される。
【0013】
特許出願US2011/0130575には、負の帯電部位を有する2:1アルミノシリケートを含む粘土;粘土の表面上に分散したサブ−ナノサイズのZVI粒子を含む2:1アルミノシリケート粘土、が記載されている。新規粘土の合成方法も、浄化用途での、例えば脱塩素還元での新規粘土の使用と同様に記載されている。
【0014】
韓国特許KR1076765B1は、ニッケル、パラジウム又は銅を結合したZVIを用いた、水の硝酸塩還元を開示している。
【0015】
EP特許EP0506684(Gilham)は、嫌気条件下で、汚染地下水を金属体、例えば、やすり粉、微粒子、繊維などの形態のZVIと接触させることにより、帯水層中の地下水からハロゲン化有機汚染物質を洗浄する手順を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌又は水の浄化に使用される、開示されたZVIの多くは、生産に高いコストがかかるナノサイズのZVI粒子を含むが、一方でその他の機能はZVIと高価な金属との間の相乗効果に基づいている。したがって、ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌、水又は地下水の浄化のため、特にその場での浄化のため、効率的かつ費用対効果のあるZVI系材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(概要)
本発明は、ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌、水又は地下水の浄化に適した鉄−ホウ素合金粉末又は鉄−ホウ素合金粉末組成物、並びに該粉末又は該粉末組成物の使用に関する。さらに、本発明は、ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌、水又は地下水の浄化方法を提供する。市販のかなり微細なゼロ価鉄粉と比べて、本発明の新規材料がハロゲン化炭化水素の分解のための同程度の又はより高い活性を有することが示されている。
【0018】
(詳細説明)
本発明は、上記の課題に対する解決策を提供し、ホウ素(B)と合金化したZVI粒子が、驚くべきことにハロゲン化/塩素化炭化水素で汚染された水及び土壌を分解する点で高い効率を示すという予想外の発見に基づいている。また、いわゆるナノサイズのスケールを上回り比較的粗い粒子サイズを有している、Bと合金化したZVIは、より微細なZVI及び/又はナノスケールのZVIと比べて、ハロゲン化/塩素化炭化水素で汚染された水及び土壌の分解のための同等の又はより高い活性を有することも示されている。
【0019】
さらに、本発明の材料は、比較的長い寿命を示すことから、浄化の目的、特に汚染土壌/地下水の浄化に適している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第一の態様において、0.1−40重量%、好ましくは0.1−30重量%、好ましくは0.1−20重量%、好ましくは0.1−10重量%、好ましくは0.1−5重量%、又は好ましくは0.3−4重量%のB−含有量を有するB−鉄合金粉末(B−ZVI合金粉末とも称する)が提供される。本発明の第一の態様によれば、ホウ素含有量の他の間隔は、0.5−15重量%、0.5−10重量%、0.5−7重量%、0.5−5重量%、0.5−4重量%、0.7−4重量%、0.7−3.5重量%、又は0.8−3重量%である。40重量%より多いBの含有量は、反応効率の点で改善された特性に寄与せず、また、材料のコストを著しく増加させる。0.1重量%未満のB−含有量は、その合金粉末に所望の特性を与えないであろう。これに関連して、20重量%より多い、又は10重量%より多い、又はさらに7重量%より多いB−含有量では、過剰な量のBが容器(recipient)に放出されるリスクを高める可能性があり、これにより、潜在的な環境問題を構成する。最適なB−含有量は、例えば、分解される化学物質(例えば塩素化炭化水素)の種類及び濃度、並びに汚染された土壌、水又は地下水の種類に依存する。
【0021】
好ましくは、B−ZVI合金粉末は、鉄Feの含有量を60重量%より多く、好ましくは80重量%より多く、好ましくは85重量%より多く、好ましくは90重量%より多く、好ましくは93重量%より多く、好ましくは95重量%より多く、好ましくは96重量%より多く、好ましくは96.5重量%より多く有する。
【0022】
炭素、酸素、硫黄、マンガン、リンなどの不可避的不純物の量は、重量で、10%未満、好ましくは7%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満であるべきである。
【0023】
いくつかの実施形態では、炭素及び硫黄が浄化に寄与し、これによりこれらの元素の含有量を所望のレベルに制御することができる。そのようなレベルは、5重量%まであってもよい。
【0024】
また、銅、銀、金、白金及びパラジウムなどの他の元素を意図的に添加してもよい。
【0025】
粒子サイズは、20mmと1μmの間にあってもよい。最適な粒子サイズ範囲は、例えば、分解されるハロゲン化炭化水素の種類及び濃度、並びに汚染された土壌又は地下水の種類に依存する。
【0026】
一実施形態において、本発明のB−ZVI合金粉末粒子は、20mmと0.5mmの間の粒子サイズ、好ましくは10mmと1mmの間の粒子サイズを有する。
【0027】
代わりに、もしくはこの実施形態に加えて、粒子サイズは、SS EN 24497にしたがって標準ふるいにより測定された、又はSS−ISO 13320−1にしたがってレーザー回折により測定された重量平均粒径、X50によって定義することができ、8と3mmの間である。
【0028】
別の実施形態では、0.5mmと10μmの間の粒子サイズ、好ましくは250μmと10μmの間を使用してもよい。代わりに、もしくはこの実施形態に加えて、粒子サイズは、SS EN 24497にしたがって標準ふるいにより測定された、又はSS−ISO 13320−1にしたがってレーザー回折により測定された重量平均粒径、X50によって定義することができ、150μmと20μmの間である。
【0029】
さらなる実施形態では、50μmから1μmの間の粒子サイズ、好ましくは30μmから1μmの間を使用してもよい。代わりに、もしくはこの実施形態に加えて、粒子サイズは、SS−ISO 13320−1にしたがってレーザー回折により測定された重量平均粒径、X50によって定義することができ、20μmと5μmの間である。
【0030】
微細な粒子から、例えば、凝集、圧縮及び粉砕(milling)、熱処理及び粉砕、又は圧縮、熱処理及び粉砕などの既知の方法によって凝集体を生成し、より粗い多孔性又は非多孔性粒子に変えることによって製造することができる、粗い粒子サイズを特定の用途に使用することは興味深い。このような既知の方法の例としては、金属ハンドブック、第9版、第7巻、粉末冶金、米国金属学会、1984、293−492頁、金属粉末の圧密(Metals Handbook、Ninth Edition、Volume 7、Powder Metallurgy、American Society for Metals、1984、page293−492、Consolidation of Metal Powders)の中に見出すことができる。用途に応じて、すなわち、処理すべき土壌又は流体の種類、及び汚染物質の種類に応じて、ZVI−B合金粉末組成物(B−鉄合金粉末組成物又はB−ZVI合金粉末組成物とも称する)を生成し、最適な効率を得るために、B−ZVI合金粉末と既知の物質との様々な混合物を選ぶことができる。粒子サイズは、SS EN 24497にしたがって標準ふるいにより、又はSS−ISO 13320−1にしたがってレーザー回折により決定される。粒子サイズ間隔は、その間隔内にある粒子の重量によって、80%以上と解釈されなければならない。
【0031】
使用されるB−ZVI合金粉末は、金属ハンドブック、第9版、第7巻、粉末冶金、米国金属学会、1984、25−30頁、アトマイズ(Metals Handbook、Ninth Edition、Volume 7、Powder Metallurgy、American Society for Metals、1984、page25−30、Atomization)に記載したとおり、溶融−鉄−ホウ素合金のアトマイズ(atomization)から、例えば、ガスアトマイズ又は水アトマイズから直接生じてもよい。代わりに、アトマイズ鉄−ホウ素合金の粉砕(milling)により、又は鉄−ホウ素合金融液の様々なサイズの固化片を粉砕することにより、B−ZVI合金粉末を製造してもよい。フライス作業(milling operations)の例は、金属ハンドブック、第9版、第7巻、粉末冶金、米国金属学会、1984、56−70頁、脆性及び延性材料のフライス(Metals Handbook、Ninth Edition、Volume 7、Powder Metallurgy、American Society for Metals、1984、page56−70、Milling of Brittle and Ductile Materials)に記載されている。本発明の第一の態様の別の実施形態では、B−ZVI合金粉末粒子は、担体(carrier)又はグアーガム又はカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤(thickener)の中に分散され、これにより、粒子の沈降を回避し物質の取り扱いが容易になる(例えば、B−ZVI合金粉末を含む水分散液の、汚染された土壌又は帯水層への注入が容易になる)。一実施形態において、増粘剤は、B−ZVI合金粉末組成物が分散された、濃度0.1−10重量%、好ましくは0.1−6重量%のグアーガム溶液である。
【0032】
ホウ素の存在により、ホウ素なしの同様な材料の分散液と比べて、グアーガムベースの分散液の粘度が増加することも示されている。これにより、グアーガムの少量の添加が可能となり、したがってコストを低減させる。
【0033】
本発明の第二の態様において、汚染された土壌、水又は地下水の浄化のための方法が提供される。汚染は、炭化水素(例えば、塩素化又はホウ素化化合物、染料等のハロゲン化炭化水素)、他の有機物、又は金属の存在が原因である可能性がある。この方法は以下の工程を含む。本発明の第一の態様によるB−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物を提供する工程、B−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物を、汚染された領域中の溝(trench)又は帯水層の中に配置し、汚染された土壌水又は地下水にB−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物を接触させる工程、あるいは代わりに、汚染物質を分解するのに十分な時間、B−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物を汚染された土壌又は帯水層に注入する工程。本発明の方法の一実施形態において、B−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物は、分解反応が減少又は停止した後に、土壌又は帯水層中に残存することが許容される。本発明の方法のB−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物はまた、地上又は地下のレベルで、材料リアクター型容器(material reactor type recipients)中に適用することができる。本発明の方法のB−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物はまた、土壌混合(soilmixing)に適用することができる。
【0034】
本発明の第三の態様において、ハロゲン化炭化水素で汚染された土壌又は(地下)水の浄化のための、B−ZVI合金粉末又はB−ZVI合金粉末組成物の使用が提供され、前記ハロゲン化炭化水素の例としては、塩素化脂肪族炭化水素(CAH;汚染物質の他の非限定的な例として、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)及びシス− ジクロロエチレン(cDCE)を含む塩素化エテン;1,1,1,2テトラクロロエタン(1111TeCE)、1,1,2,2テトラクロロエテン(1122TeCE)、1,1,1トリクロロエタン(111−TCA)、1,1,2トリクロロエタン及び1,1ジクロロエタン(11−DCA)を含むクロロエタンの群;クロロホルム、ジクロロブロモメタンを含むクロロメタンの群;並びに1,2,3−トリクロロプロパンを含む塩素化プロパンの群)が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明の様々な態様及び実施形態を例示するが、本発明をこれらに限定するものと解釈してはならない。
【0036】
当該分野で既知の種々の鉄材料を参照材料として選択し、本発明の粉末及び組成物と比較した。粒子サイズ分布、化学分析及び比表面積に関して、全ての材料を評価した。HELOSレーザー回折センサーをRODOS分散ユニット回折とともに用い、レーザー回折法によりSS−ISO 13320−1にしたがって、粒子サイズ分布X10、X50及びX90を測定した。ユニットのX10、X50及びX90は、粒子サイズを表している−材料の粒子の割合(10%、50%、90%)は、示されたサイズよりも小さい。焦点距離は、R3及びR5とした。開始/停止条件のトリガーしきい値は、それぞれ2%とした。光散乱モデルはフラウンホーファーにしたがった。乾式分散を用い、インジェクション径を4mm、初期圧力を3barとした。分散ユニットを、光学濃度が5から15%に到達するように設定した。
【0037】
比表面積は、液体Nの温度でNの吸着を用いたBET法(Brunauer−Emmett−Teller法)にしたがって、マイクロメトリックス社のFlowsorbIII装置を用い、一点法により分析した。全ての試料は、分析する前に110℃で30分脱気した。
【0038】
化学分析は、標準的な分析方法を用いて行った。以下の表1は、使用した材料の特性を示している。材料1〜3は、ベンチマークした本発明の組成物に対する参照材料である。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1−反応試験
以下の例は、表1に記載の種々の材料の、いくつかのCAHの分解能力を示している。使用したCAHは、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TC)、シス−ジクロロエチレン(cDCE)及び1,1,1トリクロロエタン(111−TCA)であった。
【0041】
全てのバッチ試験は、100mlの嫌気性模擬(simulated)地下水と60mlのヘッドスペースを含む、ブチル/PFTEの灰色の隔壁を備えた160mlのガラスバイアルの中で調製し、5gのZVIを試料2〜6に添加し、0.5gのZVIをナノスケールのZVI試料1に添加した。ナノスケールの粒子は、反応性が高いため低濃度のものを選択した。模擬地下水は、およそ5mg/lのPCE、5mg/lのTCE、5mg/lのc−DCE及び5mg/lの111−TCAに上昇させた(spiked)。
【0042】
実験は、嫌気条件下で3回(in triplicates)に設定した。バイアルを、次いで12℃で連続的に穏やかに混合するために置いた。H、CAH、アセチレン、エタン及びメタンを、開始時(単なるブランク)と14、28、49及び105日後に測定した。CAH濃度(分解生成物を含む)を、GC−FID装置(VARIAN)を用いて測定した。
【0043】
各サンプリング時点での水素の生成を、GC−TCD装置(インターサイエンス)を用いて分析した。各サンプリング時に酸化還元電位及びpHを、酸化還元/pH計(ラジオメーター)を用いて測定した。
【0044】
時間に対するPCE、TCE及びc−DCEの濃度を、表2〜4に示す。表5及び6は、分解生成物であるエテンとエタンの時間に対する濃度を示している。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
上記の表2〜4からわかるように、ホウ素を含む本発明の材料(No.4〜7)は、参照材料(No.1〜3)と比べて、汚染物質TCE及びc−DCEを低減するための優れた反応速度を示している。市販の材料のNo.2(HQ、カルボニル鉄粉末、BASF)は、本発明の材料と比べて、汚染物質PCEの分解に関して、同等の反応速度を示している。上記の表5及び6は、害の少ない、分解反応の反応生成物(エテン及びエタン)の濃度を示す。本発明の材料によれば、参照材料と比べてエテン及びエタンの濃度がより速く増加することがわかる。
【0051】
実施例2−腐食速度
実施例1の汚染物質の分解の間、様々なZVI材料が部分的に消費されただけでなく、ZVI材料と嫌気性水との反応により水素が発生していた。このようにして、生成した水素の測定により、各ZVI材料の腐食速度を計算することができた。実施例1のいくつかのZVI材料の腐食速度と寿命を、以下の表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
上記の表7からわかるように、本発明の材料は、ナノZVI材料1よりもかなり長く、既知のマイクロスケールのZVIと同じオーダーの寿命を示している。
【0054】
実施例3
ZVIの存在下での多数の汚染物質の脱塩素率を、擬一次反応速度式;C=C*e−kt(Cは任意の時点における濃度、Cは初期濃度、kは一次崩壊定数[日−1]及びtは反応時間[日])を用いて計算した。半減期を、t1/2=ln2/k[日]として計算した。
【0055】
【表8】
【0056】
上記表8は、本発明の材料で処理した汚染物質PCE、TCE、c−DCE及び1,1,1TCA全体の半減期(No.4〜6)が、比較のためのマイクロスケールの材料で処理した汚染物質の半減期(No.2及び3)に比べて、著しく短いことを示している。PCEについてのみ、既知のナノスケールの鉄(No.1)がより良好な結果を示している。