(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤ異常車両特定部は、グループ化された車両群内で前記タイヤセンサによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量を求め、基準範囲を超えた統計量をもつ車両がある場合に該車両をタイヤが異常な車両であると特定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ異常管理システム。
前記タイヤ異常車両特定ステップは、グループ化された車両群内で前記検出ステップによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量を求め、基準範囲を超えた統計量をもつ車両がある場合に該車両をタイヤが異常な車両であると特定することを特徴とする請求項7に記載のタイヤ異常管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タイヤは車両毎に異なる環境に置かれるため、単にタイヤの状態を測定するのみで、タイヤの異常状態を早期に判断することは容易ではない。すなわち、タイヤの異常状態を検出できた段階では、既にタイヤの異常の程度が大きくなっているおそれがある。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの異常状態を迅速に検出することができるタイヤ異常管理システム及びタイヤ異常管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、複数の車両にそれぞれ作業を割り当て、この割り当てられた作業を行う各車両に装着されたタイヤの異常状態を管理するタイヤ異常管理システムであって、各車両のタイヤ圧力および/またはタイヤ温度を検出するタイヤセンサと、各車両に割り当てられた作業に対するタイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化するグループ化処理部と、グループ化された車両群内で前記タイヤセンサによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度に基づいてタイヤが異常な車両であると特定するタイヤ異常車両特定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、上記の発明において、前記タイヤ異常車両特定部は、グループ化された車両群内で前記タイヤセンサによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量を求め、基準範囲を超えた統計量をもつ車両がある場合に該車両をタイヤが異常な車両であると特定することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、上記の発明において、無線接続された各車両から通知される積載量情報及び車両速度情報をもとに実稼働中の車両のタイヤ負荷である実タイヤ負荷を算出する実タイヤ負荷算出部を備え、前記グループ化処理部は、各車両に割り当てられた作業に対する実タイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、上記の発明において、各車両に割り当てられた計画段階の作業に対する予測タイヤ負荷を算出する予測タイヤ負荷算出部を備え、前記グループ化処理部は、各車両に割り当てられた作業に対する予測タイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、上記の発明において、前記タイヤ異常車両特定部によって特定された車両の情報を外部出力することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理システムは、上記の発明において、前記タイヤ負荷は、TKPHであることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、複数の車両にそれぞれ作業を割り当て、この割り当てられた作業を行う各車両に装着されたタイヤの異常状態を管理するタイヤ異常管理方法であって、各車両のタイヤのタイヤ圧力および/またはタイヤ温度を検出する検出ステップと、各車両に割り当てられた作業に対するタイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化するグループ化処理ステップと、グループ化された車両群内で前記検出ステップによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度に基づいてタイヤが異常な車両であると特定するタイヤ異常車両特定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、上記の発明において、前記タイヤ異常車両特定ステップは、グループ化された車両群内で前記検出ステップによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量を求め、基準範囲を超えた統計量をもつ車両がある場合に該車両をタイヤが異常な車両であると特定することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、上記の発明において、無線接続された各車両から通知される積載量情報及び車両速度情報をもとに実稼働中の車両のタイヤ負荷である実タイヤ負荷を算出する実タイヤ負荷算出ステップを含み、前記グループ化処理ステップは、各車両に割り当てられた作業に対する実タイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、上記の発明において、各車両に割り当てられた計画段階の作業に対する予測タイヤ負荷を算出する予測タイヤ負荷算出ステップを含み、前記グループ化処理ステップは、各車両に割り当てられた作業に対する予測タイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、上記の発明において、前記タイヤ異常車両特定ステップによって特定された車両の情報を外部出力することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかるタイヤ異常管理方法は、上記の発明において、前記タイヤ負荷は、TKPHであることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、タイヤセンサが、各車両のタイヤ圧力および/またはタイヤ温度を検出し、グループ化処理部が、各車両に割り当てられた作業に対するタイヤ負荷が所定範囲内である車両群にグループ化し、タイヤ異常車両特定部が、グループ化された車両群内で前記タイヤセンサによって検出されたタイヤ圧力またはタイヤ温度に基づいてタイヤが異常な車両であると特定するようにしているので、タイヤの異常状態を迅速に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0023】
(実施の形態1)
[システム概要]
図1は、この発明の実施の形態1であるタイヤ異常管理システムを含む管理システムの概要構成を示す模式図である。この管理システム1は、砕石現場や鉱山などの広域作業現場に設けられ、複数のダンプトラック2を走行させて土砂や鉱石などの運搬作業を行う。広域作業現場には、積込場E21,E22がある。積込場E21,E22には、積込機械3が配置される。積込機械3は、ダンプトラック2に積荷を積み込むことが可能である。積込機械3は、油圧ショベル、電気ショベル、及びホイールローダなどである。ダンプトラック2は、積荷を運搬する走行可能な車両の一例である。積荷は、採掘によって発生した土砂や鉱石である。
【0024】
ダンプトラック2は、積込場E21,E22と排土場E10,E11との間の走行路HLを走行することが可能である。ダンプトラック2は、積込場E21,E22において積荷が積み込まれる。積込場E21,E22は、鉱山において積荷の積込作業が行われる領域である。ダンプトラック2は、積込場E21,E22の積込位置P21,P22において積荷が積み込まれる。積込機械3は、積込位置P21,P22に配置されたダンプトラック2に積荷を積み込む。その後、ダンプトラック2は所定の走行路HLを介して目的の排土場E10,E11に移動する。そして、ダンプトラック2は、目的の排土場E10,E11において積荷を下ろす。排土場E10,E11は、鉱山において積荷の排出作業が行われる領域である。ダンプトラック2は、排土場E10,E11の排土位置P10,P11において積荷を排土する。
【0025】
この管理システム1は、少なくとも複数のダンプトラック2を管理する。各ダンプトラック2は、管理装置4からの指令信号によって作動する無人ダンプトラックであり、ダンプトラック2に作業者は搭乗していない。管理装置4は、管制施設6に配置される。管理装置4とダンプトラック2との間は、基地局5を介した無線接続される無線通信システムが形成される。
【0026】
[走行経路網の一例]
ダンプトラック2は、積荷の運搬を積込場から排土場に運搬し、排土場において積荷を排土し、その後空荷で積込場に戻るというサイクルの作業を繰り返す。ダンプトラック2が行う作業は、積載物の積込、積荷走行、排土、空荷走行などを含む。広域作業現場では、
図2に示した走行経路網に示すように、複数の積込場の積込位置P21〜P24、複数の排土場の排土位置P11〜P15、複数の交差点P31〜P34、これらの間を結ぶ複数の走行路HLを有する。なお、
図2において、積込位置P21,P22は、鉱石の積込位置であり、積込位置P23,24は、表土の積込位置である。また、排土位置P11は、クラッシャへの排土位置であり、排土位置P12,P13は、鉱石の排土位置であり、排土位置P14,P15は、表土の排土位置である。その他、給油位置P41及び駐機場位置P42がある。具体的なダンプトラック2の作業は、例えば、
図2に示した走行経路R1を経由する作業であり、積込位置P21から鉱石を積み込んで交差点P31,P32を介して鉱石を運搬し、排土位置P13で鉱石を排土し、交差点P32,P31を介して積込位置P21に戻る。ダンプトラック2は、管理装置4からの運行指示に従った作業を行う。運行指示には、積込場、排土場、走行経路の情報が含まれる。なお、ダンプトラック2が行う作業には、給油位置への走行や駐機場位置への走行が含まれてもよい。
【0027】
[ダンプトラック]
図3及び
図4に示すように、ダンプトラック2は、車両本体21と、ベッセル22と、処理部23と、ジャイロセンサ24と、速度センサ25と、荷重センサ26と、アンテナ27aが接続された通信部27と、アンテナ28aが接続され、車両本体21の位置を検出するGPS装置28と、タイヤ圧力センサ33と、タイヤ温度センサ34と、センサ情報取得部35とを有する。車両本体21には、駆動装置が配置される。駆動装置は、ディーゼルエンジンのような内燃機関と、内燃機関によって作動する発電機と、発電機で発生した電力によって作動する電動機とを含む。電動機によって車輪29が駆動される。車輪29は、タイヤ29a及びホイール29bを含む、いわゆる電気駆動式である。なお、内燃機関の動力が、トルクコンバータを含むトランスミッションを介して車輪に伝達される、いわゆる機械駆動式であってもよい。
【0028】
ベッセル22は、積荷が積載される荷台を含む。ベッセル22は、車両本体21の上部に揺動可能に配置される。積込機械3により、ベッセル22に積荷が積み込まれる。排土時は、ベッセル22を持ち上げて積荷を排出する。荷重センサ26は、サスペンションシリンダ30に設けられ、ベッセル22の積載量を検出する。荷重センサ26は、検出信号を処理部23に出力する。処理部23は、荷重センサ26の検出信号をもとに、ダンプトラック2の積載量を求める。
【0029】
ジャイロセンサ24は、ダンプトラック2の方位変化量を検出する。ジャイロセンサ24は、検出信号を処理部23に出力する。処理部23は、ジャイロセンサ24の検出信号に基づいて、ダンプトラック2の方位を求めることができる。
【0030】
速度センサ25は、ダンプトラック2の走行速度を検出する。速度センサ25は、車輪29の駆動軸の回転速度を検出して、ダンプトラック2の走行速度を検出する。速度センサ25は、検出信号を処理部23に出力する。処理部23は、速度センサ25の検出信号と、処理部23内に内蔵されている図示しないタイマからの時間情報とに基づいてダンプトラック2の移動距離(走行距離)を求めることができる。
【0031】
GPS装置28は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星7(
図1参照)からの信号を用いてダンプトラック2の位置を検出する。検出信号は、処理部23に出力される。
【0032】
タイヤ圧力センサ33及びタイヤ温度センサ34は、それぞれタイヤ29a内に組み込まれて、それぞれタイヤ圧力及びタイヤ温度を検出する。センサ情報取得部35は、タイヤ圧力センサ33及びタイヤ温度センサ34と無線接続して、タイヤ圧力情報及びタイヤ温度情報を取得する。センサ情報取得部35は、取得したタイヤ圧力情報及びタイヤ温度情報を処理部23に出力する。タイヤ圧力センサ33及びタイヤ温度センサ34は、周波数が低いRFIDとし、センサ情報取得部35が非接触でタイヤ圧力情報及びタイヤ温度情報を取得することができる。より確実には、タイヤ圧力センサ33及びタイヤ温度センサ34のそれぞれがバッテリを内蔵して、センサ情報取得部35と無線接続することが好ましい。
【0033】
処理部23は、ダンプトラック2を識別する識別ID23aを有する。処理部23は、識別ID23aとともに、少なくとも車両位置情報、積載量情報、車両速度情報、タイヤ圧力情報、及びタイヤ温度情報を、通信部27を介して管理装置4側に送信する。
【0034】
これに対し、管理装置4は、識別ID23aとともに、計画された作業に対応した走行経路を走行するように、ダンプトラック2に対して走行経路や速度指令を出力する。走行制御部31は、入力された走行経路や速度指令をもとに、対応するアクチュエータ32を駆動制御してダンプトラック2を走行制御する。
【0035】
[管理装置]
図5に示すように、管理装置4は、管理部40と、操作入力部41と、表示部42と、記憶部43と、アンテナ44aを含む通信部44とを有する。
【0036】
操作入力部41は、キーボード、タッチパネル、マウスなどを含む。操作入力部41は、管理部40に操作信号を入力可能である。なお、操作入力部41は、表示部42を兼ねるタッチパネルであってもよい。
【0037】
表示部42は、例えば、液晶ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイを含む。表示部42は、ダンプトラック2の位置に関する情報などを表示可能である。
【0038】
記憶部43は、作業割当DB(データベース)55と、走行経路情報DB(データベース)56と、地
図DB(データベース)57とを有する。作業割当DB55は、たとえは、ダンプトラック2の識別ID23a毎に、1日分の複数の作業内容が記述される。この作業内容には、積込場と排土場と走行経路とが記述される。また、ダンプトラック2の識別ID23a毎に、設定タイヤ負荷と、実タイヤ負荷と、所定タイヤ負荷とが記述される。設定タイヤ負荷と所定タイヤ負荷は、予め設定される値である。一方、実タイヤ負荷は、ダンプトラック2の稼働中にリアルタイムで更新される値である。
【0039】
一般に、タイヤ負荷には、タイヤ自体に予め設定された負荷指標であるタイヤTKPH(Ton Km Per Hour)と実作業での負荷指標である作業条件TKPHとがある。設定タイヤ負荷は、タイヤTKPHであり、タイヤの発熱に対する限界を超えない範囲で、どれだけの仕事量が可能かを示す指標であり、(荷重×速度)で示される。一方、作業条件TKPHは、実タイヤ負荷であり、(平均タイヤ負荷荷重)×(平均作業速度)で示される。平均タイヤ負荷荷重は、
平均タイヤ負荷荷重=((空車時のタイヤ負荷荷重)+(積載時のタイヤ負荷荷重))/2
平均作業速度は、
平均作業速度=((1サイクルの距離)×(1日のサイクル回数))/(1日の総作業時間)
で求められる。空車時のタイヤ負荷荷重は、予め登録しているダンプトラック2の空車時の荷重をダンプトラックのタイヤ数で除算した平均タイヤ負荷荷重である。また、積載時のタイヤ負荷荷重は、ダンプトラック2側から送られる積載量情報をもとに求めたダンプトラック2の積載時の荷重をダンプトラックのタイヤ数で除算した平均タイヤ負荷荷重である。ここで、設定タイヤ負荷>実タイヤ負荷となるようにタイヤを使用することが好ましい。この条件を満足しないで使用すると、タイヤがヒートセパレーションなどを起こしてタイヤ寿命が短くなる。なお、所定タイヤ負荷は、この実施の形態で設定される値であり、設定タイヤ負荷以下の閾値である。
【0040】
走行経路情報DB56は、
図2に示した走行経路網の情報が記述される。この走行経路網の情報には、それぞれ積込位置、排土位置、交差点などの位置情報と、それぞれの接続関係情報が含まれる。さらに、走行経路情報DB56には、各走行路HL上に設定された車両速度が規定されている。
【0041】
通信部44は、アンテナ44a及び基地局5を介して各ダンプトラック2に通信接続される。
【0042】
管理部40は、作業割当処理部50と、タイヤ異常検出部51と、運行指示制御部52と、監視部53とを有する。作業割当処理部50は、操作入力部41からの操作入力に従って、1日分の作業割当DB55を作成する処理を行う。この際、作業割当DB55の実タイヤ負荷は、設定されない。
【0043】
タイヤ異常検出部51は、実タイヤ負荷算出部61、グループ化処理部62、及びタイヤ異常車両特定部63を有する。実タイヤ負荷算出部61は、無線接続された各ダンプトラック2から通知される積載量情報及び車両速度情報をもとに実稼働中のダンプトラック2の実タイヤ負荷を算出する。グループ化処理部62は、各ダンプトラック2に割り当てられた作業に対するタイヤ負荷が所定範囲内であるダンプトラック群にグループ化する。タイヤ異常車両特定部63は、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量を求め、基準範囲を超えた統計量をもつダンプトラック2がある場合に該ダンプトラック2をタイヤが異常なダンプトラックであると特定する。この統計量は、得られたタイヤ圧力またはタイヤ温度に統計演算を施したものであり、例えば、グループ化されたダンプトラック群のタイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差である。なお、このタイヤ異常検出部51の詳細処理については後述する。
【0044】
運行指示制御部52は、後述するように、作業割当DB55に記述された作業内容を実行させる指示を各ダンプトラック2に出力して、ダンプトラック2の走行制御を指示する。
【0045】
監視部53は、ダンプトラック2の稼働状況を監視する。また、監視部53は、ダンプトラック2から送られてくる車両位置情報や車両速度情報をもとに、ダンプトラック2の稼働状況を表示部42に表示する。この際、表示部42には、地
図DB57による地図と、この地図上に、走行経路情報DB56による走行経路網が表示されるとともに、ダンプトラック2のアイコンが表示される。このアイコンは、積荷状態と空荷状態とで別態様の表示となる。例えば、荷台の色を積荷状態と空荷状態とで変えるようにしている。また、このアイコンには、ダンプトラックの識別IDも添えられる。なお、表示部42には、タイヤ異常車両特定部63が特定したダンプトラック2の情報及びタイヤ29aが異常である旨を表示出力する。もちろん、このダンプトラック2の情報及びタイヤが異常である旨の情報は、図示しない通信手段を介してサービスマンなどの外部に通知することが好ましい。
【0046】
[ダンプトラックの走行制御]
上述したように、管理部40は、ダンプトラック2に、走行経路や速度指令を出力する。これに対し、ダンプトラック2は、入力された走行経路や速度指令をもとに、積込場と排土場との間の走行路HLを走行する。処理部23は、推測航法を用いてダンプトラック2の現在位置を推測しつつ、生成された走行経路に従ってダンプトラック2を走行させる。推測航法とは、経度及び緯度が既知の起点からの方位と移動距離とに基づいて、ダンプトラック2の現在位置を推測する航法をいう。ダンプトラック2の方位は、ダンプトラック2に配置されたジャイロセンサ24を用いて検出される。ダンプトラック2の移動距離は、ダンプトラック2に配置された速度センサ25を用いて検出される。処理部23は、ダンプトラック2の方位及び移動距離をもとに、ダンプトラック2が計画された走行経路に従って走行するように、走行制御部31に対して操舵指令や速度指令を出力する。
【0047】
処理部23は、上述した推測航法によって求められた推測位置を、GPS装置28を用いて補正しつつ、ダンプトラック2を走行させる。ダンプトラック2の走行距離が長くなると、ジャイロセンサ24及び速度センサ25の検出誤差の蓄積によって、推測された位置と実際の位置との間に誤差が生じる。この結果、ダンプトラック2は、走行経路から外れて走行してしまう可能性がある。このため、処理部23は、GPS装置28によって検出されたダンプトラック2の位置情報を用いて補正しつつ、ダンプトラック2を走行させる。
【0048】
[タイヤ異常検出処理]
ここで、
図6に示したフローチャートを参照して、タイヤ異常検出部51によるタイヤ異常検出処理手順について説明する。なお、この処理は、所定間隔ごとに繰り返し行われる。
【0049】
図6において、まず、実タイヤ負荷算出部61は、各ダンプトラック2の積載量情報、車両速度情報、タイヤ圧力情報、及びタイヤ温度情報を取得する(ステップS101)。そして、実タイヤ負荷算出部61は、1作業サイクルの実タイヤ負荷を算出する(ステップS102)。なお、ステップS102では、1作業サイクルの実タイヤ負荷を算出するようにしているが、これに限らず、複数の作業サイクルの実タイヤ負荷を算出するようにしてもよい。その後、グループ化処理部62は、実タイヤ負荷算出部61が算出した実タイヤ負荷が所定範囲内となるダンプトラック群にグループ化する処理を行う(ステップS103)。その後、タイヤ異常車両特定部63は、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度をもとにした統計量、例えば、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差を求め、基準範囲を超えた統計量(偏差)をもつダンプトラック2があるか否かを判断する(ステップS104)。
【0050】
この偏差をとるのは、グループ化されたダンプトラック群のタイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値から、タイヤ圧力またはタイヤ温度の値が大きく外れているダンプトラックがあるか否かを判断するためである。なお、比較対象のタイヤ圧力またはタイヤ温度は、各ダンプトラックごとに、1作業サイクルの測定期間でサンプリングされた平均値に対する平均値を用いている。また、平均値は、統計量の一例であり、例えば、標準偏差などであってもよい。さらに、1つの作業サイクルの期間の中で、行きの積荷の積載状態と帰りの空荷状態とのタイヤ圧力またはタイヤ温度の偏差を統計量とし、この偏差の大小で判断してもよい。あるいは、測定期間におけるタイヤ圧力またはタイヤ温度の最大値と最小値との偏差を統計量とし、この偏差の大小で判断してもよい。また、タイヤ圧力の平均値及びタイヤ温度の平均値の2次元座標上に、各ダンプトラックごとに、タイヤ圧力の平均値に対するタイヤ温度の平均値をプロットし、2次元座標上において、1つのダンプトラックのプロット値に対する他のダンプトラックのプロット値への距離の平均値が基準範囲を超えたか否かを判断してもよい。この場合、タイヤ圧力とタイヤ温度との双方を加味した判断を行うことができる。なお、全ダンプトラックのタイヤ圧力の平均値に対する平均値とタイヤ温度の平均値に対する平均値とで決定される2次元座標上の平均位置を示すプロット値からの距離の大小をもとに判断してもよい。
【0051】
グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差が基準範囲を超えるダンプトラック2がない場合(ステップS104,No)には、本処理を終了する。一方、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差が基準範囲を超えるダンプトラック2がある場合(ステップS104,Yes)には、このダンプトラック2を、タイヤが異常なダンプトラック2として特定する(ステップS105)。さらに、このダンプトラック2が異常である旨を表示部42に表示出力するとともに、図示しない外部のサービスセンターに通知し(ステップS106)、本処理を終了する。
【0052】
なお、上述した実タイヤ負荷算出部61の構成は、ダンプトラック2側に持たせて、算出結果を管理装置4側に送信するようにしてもよい。また、ダンプトラックが有人車両である場合、ダンプトラックが異常である旨を表示する表示部をダンプトラックの運転席に設けてもよい。
【0053】
この実施の形態1では、実タイヤ負荷がほぼ同じである所定範囲のダンプトラック群にグループ化した後、このダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差などの統計量が基準範囲を超えて外れているダンプトラックを異常なダンプトラックとして特定するようにしているので、ほぼ同一実タイヤ負荷条件下で、タイヤの異常を早期に見出すことができ、タイヤの異常状態を迅速に検出することができる。特に、グループ化されたダンプトラック群は、同じようなタイヤ負荷で作業しているので、各ダンプトラックのタイヤ圧力やタイヤ温度は同じような値となるはずであるので、タイヤ圧力やタイヤ温度の小さな変化を早期に見出すことができ、結果的にタイヤの異常を迅速に検出することができる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2であるタイヤ異常管理システムの管理装置4の構成を示すブロック図である。上述した実施の形態1では、実タイヤ負荷をリアルタイムで検出してダンプトラック群のグループ化を行い、このダンプトラック群内でタイヤが異常なダンプトラックを特定するものであったが、この実施の形態2では、計画段階で予測タイヤ負荷を算出し、この予測タイヤ負荷を用いてダンプトラック群のグループ化を行い、このダンプトラック群内でタイヤが異常なダンプトラックを特定するようにしている。
【0055】
図7に示した管理装置4は、
図5に示したタイヤ異常検出部51に替えてタイヤ異常検出部71を設けている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。タイヤ異常検出部71は、予測タイヤ負荷算出部81、グループ化処理部82、及びタイヤ異常車両特定部83を有する。
【0056】
予測タイヤ負荷算出部81は、各ダンプトラック2に割り当てられた計画段階の作業に対する予測タイヤ負荷を算出する。グループ化処理部82は、各ダンプトラック2に割り当てられた作業に対する予測タイヤ負荷が所定範囲内であるダンプトラック群にグループ化する。タイヤ異常車両特定部83は、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差などの統計量が基準範囲を超えるダンプトラック2がある場合に該ダンプトラック2をタイヤが異常なダンプトラック2であると特定する。
【0057】
[予測タイヤ負荷を用いたタイヤ異常検出処理]
ここで、
図8に示したフローチャートを参照して、タイヤ異常検出部71によるタイヤ異常検出処理手順について説明する。なお、この処理は、所定間隔ごとに繰り返し行われる。
【0058】
図8において、まず、予測タイヤ負荷算出部81は、作業割当DB55から、各ダンプトラック2の計画段階における計画作業を取得する(ステップS201)。その後、予測タイヤ負荷算出部81は、タイヤ圧力情報及びタイヤ温度情報を取得する(ステップS202)。その後、予測タイヤ負荷算出部81は、計画作業に対する予測タイヤ負荷を算出する(ステップS203)。
【0059】
この予測タイヤ負荷(予測作業条件TKPH)は、
予測タイヤ負荷=(予測タイヤ負荷荷重)×(予測作業速度)
で求められる。
予測タイヤ負荷荷重は、
予測タイヤ負荷荷重=((空車時のタイヤ負荷荷重)+(積載時のタイヤ負荷荷重))/2
で求められる。上述したように、空車時のタイヤ負荷荷重は、予め登録しているダンプトラック2の空車時の荷重をダンプトラックのタイヤ数で除算した平均タイヤ負荷荷重である。また、積載時のタイヤ負荷荷重は、ダンプトラック2側から送られる積載量情報をもとに求めたダンプトラック2の積載時の荷重をダンプトラックのタイヤ数で除算した平均タイヤ負荷荷重である。
【0060】
一方、予測作業速度は、走行経路情報DB56に、走行路HL毎に予め登録されている区間車両速度をもとに求めることができる。なお、この予測作業速度は、走行経路情報DB56の走行経路3次元情報をもとに演算されるダンプトラック2への指示速度(速度指令)をもとに求めてもよい。この指示速度は、走行路HLの傾斜情報、曲率情報、旋回加速度制限等を用いて求まる速度である。また、この予測作業速度は、走行経路に対する過去のダンプトラック走行記録情報をもとに、区間速度情報を予測するようにしてもよい。
【0061】
その後、グループ化処理部82は、予測タイヤ負荷算出部81が算出した予測タイヤ負荷が所定範囲内のダンプトラック群にグループ化する(ステップS204)。その後、タイヤ異常車両特定部83は、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差などの統計量が基準範囲を超えるダンプトラックがあるか否かを判断する(ステップS205)。
【0062】
その後、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差などの統計量が基準範囲を超えるダンプトラック2がない場合(ステップS205,No)には、本処理を終了する。一方、グループ化されたダンプトラック群内で、タイヤ圧力またはタイヤ温度の平均値に対する偏差などの統計量が基準範囲を超えるダンプトラック2がある場合(ステップS205,Yes)には、このダンプトラック2を、タイヤが異常なダンプトラック2として特定する(ステップS206)。さらに、このダンプトラック2が異常である旨を表示部42に表示出力するとともに、図示しない外部のサービスセンターに通知し(ステップS207)、本処理を終了する。
【0063】
この実施の形態2では、実施の形態1における実タイヤ負荷の実測と同様な予測タイヤ負荷を用いてダンプトラック群のグループ化を行って、タイヤが異常なダンプトラックを特定するようにしているので、簡易な処理で、タイヤの異常状態を迅速に検出することができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態1,2において、グループ化されるダンプトラック群のタイヤ負荷に対するタイヤ圧力とタイヤ温度の閾値がわかっている場合、この閾値をダンプトラック2側に送信しておき、ダンプトラック2側から管理装置4側に異常判定結果を返信するようにしてもよい。この閾値は、絶対的な値であり、上述した相対的な偏差などの統計量とは異なる。
【0065】
また、上述した実施の形態1,2では、運搬車両の一例として無人ダンプトラックを例にあげて説明したが、有人ダンプトラックでも適用することができる。なお、有人ダンプトラックの場合、作業内容変更などの運行指示を有人ダンプトラックの表示部に表示し、これによって、運行指示を有人ダンプトラックのオペレータに通知するようにしてもよい。
【0066】
さらに、親局としての管理装置4と子局としての各ダンプトラック2との間の無線通信システムは、基地局5を介して接続されるが、基地局5を用いない無線アドホックネットワークシステム、すなわち自律分散型無線ネットワークシステムであってもよい。この場合、1つのダンプトラック2に親局としての管理装置4と同様な機能を搭載しておくことが好ましい。そして、各ダンプトラック2間で車車間通信を行えば、簡易な構成の無線通信システムを実現できる。車車間通信の実現は、ダンプトラック2同士で通信する方式であってもよいし、路側に簡易な無線エリアを作って各ダンプトラック2間を通信接続するようにしてもよい。