(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御軸に沿って動作可能なレーザ加工機と、前記制御軸を駆動する軸駆動部と、前記レーザ加工機にレーザ光を供給するレーザ発振器と、前記軸駆動部及び前記レーザ発振器を制御する制御装置とを具備するレーザ加工システムにおいて、
前記制御装置は、
所定のレーザ加工プログラムから、前記軸駆動部に指令する移動データ及び前記レーザ発振器に指令するレーザ出力指令データを作成するデータ作成部と、
前記データ作成部で作成した前記移動データ及び前記レーザ出力指令データを、それぞれ前記軸駆動部及び前記レーザ発振器へ予め定めた指令周期で送るデータ送信部とを具備し、
前記データ作成部は、
前記レーザ加工プログラムを解析して、実行中のブロックのレーザ出力指令と該実行中のブロックの次ブロックのレーザ出力指令を作成し、
前記制御軸の移動速度と実行中のブロックの残移動距離から実行中のブロックの残時間を計算し、該残時間が所定の切換時間未満になったときに、前記レーザ発振器に送られるレーザ出力指令データに含まれるレーザ出力指令を、実行中のブロックのレーザ出力指令であるレーザ停止指令から次のブロックのレーザ出力指令であるレーザ照射指令に切換える第1の切換手順と、
前記制御軸の移動速度と実行中のブロックの移動距離から実行中のブロックの実行時間を計算し、該実行時間が所定の切換時間を超えたときに、前記レーザ発振器に送られるレーザ出力指令データに含まれるレーザ出力指令を、前のブロックのレーザ出力指令であるレーザ照射指令から実行中のブロックのレーザ出力指令であるレーザ停止指令に切換える第2の切換手順と、の少なくとも一方を行う、レーザ加工システム。
前記切換時間は、レーザ励起電源の立上り時間、ワークにレーザ光を照射してから実際に切断されるまでの時間、前記制御装置から前記レーザ発振器へのデータ転送に関する遅れ時間、及び前記制御軸を駆動するサーボの遅れ時間の少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【背景技術】
【0002】
一般にレーザ加工においては、レーザ光を照射する加工ノズルの駆動軸の移動とレーザ出力とが同期している必要がある。このため、従来は、レーザ発振器を数値制御装置(CNC)で制御し、軸の移動指令と同じ計算周期でレーザ出力指令を計算し、さらにサーボアンプにレーザ発振器を接続して軸の移動指令とレーザ出力指令とを同じルートで出力することで、軸の移動指令とレーザ出力指令との同期性を確保している。
【0003】
これに関連する従来技術として、例えば特許文献1には、切断開始ビームオンのNCコードを複数種類登録できる開始・終了コード登録部と、画面上に描画した切断形状の所要箇所に付加されたビームオン属性の種類を、マンマシンインタフェース部からの入力により切断開始ビームオンのNCコードの登録可能な種類の範囲内で、各々個別に変更するビームオンオフ属性変更部とを有する自動プログラミング装置が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、ビームオンオフ指令が出力された場合に、移動指令に関するデータと加速度の時定数とから、加工ヘッドの移動経路が移動指令における目標の座標に接近するまでの遅延時間を計算する遅延時間演算手段と、レーザ発振器のレーザビームの出力を制御し、ビームオンオフ指令を受け取ると、遅延時間演算手段が計算した遅延時間だけ時間をカウントした後に、ビームオンオフ指令を実行するレーザ出力制御手段とを有するレーザ加工装置が記載されている。
【0005】
さらに特許文献3には、加工プログラムを解析して各軸の移動指令とレーザビームのオンオフ指令を出力するプログラム解析手段と、該移動指令に基づき補間処理を行いサーボアンプに移動距離を出力する補間手段と、遅延動作用移動距離を設定する移動距離設定手段と、該オンオフ指令が出力された後の実際の移動距離と該遅延動作用移動距離とに基づき、レーザ発振器に出力するビームオンオフ指令を遅らせるビームオンオフ遅延手段とを有するレーザ加工装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなレーザ加工装置では、軸の移動指令とレーザ出力指令の同期はとれているが、レーザ発振器の励起電源の応答の遅れや、レーザ光がワークに照射されてから実際に切断されるまでの遅れ時間、さらにはCNCから発振器へのデータ転送時間の遅れ等が考慮されていないため、レーザ加工精度が低下するという問題が生じることがある。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、ピアシングの条件を自動プログラミング装置で設定することができるが、レーザ励起電源の応答遅れ等については考慮されていない。また特許文献2及び3に記載の技術も、レーザ励起電源の応答遅れについて考慮していない。
【0009】
そこで本発明は、軸移動に対してレーザ出力指令を切換えるタイミングを適切に調整し、軸移動と切断位置との同期精度を向上させることを企図したレーザ加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、制御軸に沿って動作可能なレーザ加工機と、前記制御軸を駆動する軸駆動部と、前記レーザ加工機にレーザ光を供給するレーザ発振器と、前記軸駆動部及び前記レーザ発振器を制御する制御装置とを具備するレーザ加工システムにおいて、前記制御装置は、所定のレーザ加工プログラムから、前記軸駆動部に指令する移動データ及び前記レーザ発振器に指令するレーザ出力指令データを作成するデータ作成部と、前記データ作成部で作成した前記移動データ及び前記レーザ出力指令データを、それぞれ前記軸駆動部及び前記レーザ発振器へ予め定めた指令周期で送るデータ送信部とを具備し、前記データ作成部は、前記レーザ加工プログラムを解析して、実行中のブロックのレーザ出力指令と該実行中のブロックの次ブロックのレーザ出力指令を作成し、前記制御軸の移動速度と実行中のブロックの残移動距離から実行中のブロックの残時間を計算し、該残時間が所定の切換時間未満になったときに、前記レーザ発振器に送られるレーザ出力指令データに含まれるレーザ出力指令を、実行中のブロックのレーザ出力指令
であるレーザ停止指令から次のブロックのレーザ出力指令
であるレーザ照射指令に切換える第1の切換手順と、前記制御軸の移動速度と実行中のブロックの移動距離から実行中のブロックの実行時間を計算し、該実行時間が所定の切換時間を超えたときに、前記レーザ発振器に送られるレーザ出力指令データに含まれるレーザ出力指令を、前のブロックのレーザ出力指令
であるレーザ照射指令から実行中のブロックのレーザ出力指令
であるレーザ停止指令に切換える第2の切換手順と、の少なくとも一方を行う、レーザ加工システムを提供する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記切換時間は、レーザ励起電源の立上り時間、ワークにレーザ光を照射してから実際に切断されるまでの時間、前記制御装置から前記レーザ発振器へのデータ転送に関する遅れ時間、及び前記制御軸を駆動するサーボの遅れ時間の少なくとも1つに基づいて決定される、レーザ加工システムを提供する。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記切換時間は、レーザ光の照射を開始する場合と停止する場合とで別々に設定される、レーザ加工システムを提供する。
【0013】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記切換時間は、パラメータで指定される、レーザ加工システムを提供する。
【0014】
第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記切換時間は、前記レーザ加工プログラムに含まれる指令によって設定される、レーザ加工システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザ励起電源の応答時間が遅い場合等でも、軸の移動と切断位置の同期精度を向上させ、レーザ加工精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るレーザ加工システムの主要部の機能ブロック図である。レーザ加工システム10は、制御軸に沿って動作可能なレーザ加工機12と、レーザ加工機12の制御軸を駆動する軸駆動部14と、レーザ加工機12にレーザ光を供給するレーザ発振器16と、軸駆動部14及びレーザ発振器16を制御する制御装置(CNC)18とを有する。
【0018】
制御装置18は、所定の加工プログラム20を読出・解析して、軸駆動部14に指令すべき移動データ及びレーザ発振器16に指令すべきレーザ出力指令データを作成するデータ作成部22と、データ作成部22で作成した移動データ及びレーザ出力指令データを、それぞれ軸駆動部14及びレーザ発振器16に予め定めた指令周期で送るデータ送信部24とを有する。なお制御装置18は、必要に応じ、データ作成部22が作成したデータの形式を、データ送信部24による送信に適した形式に変換するデータ変換部26を有してもよい。
【0019】
図2は、レーザ加工システム10の構成例を示す図である。レーザ加工機12は、互いに直交する3つの直動軸(X軸28、Y軸30及びZ軸32)と、X軸28及びY軸30によってX−Y面(略水平面)に沿って可動に構成されたX−Yテーブル34と、Z軸32によってX−Yテーブル34に対してZ方向(略上下方向)に変位可能な加工ノズル36とを有し、加工ノズル36からレーザ光を照射することによって、X−Yテーブル34上に載置された被加工物(ワーク)38に対し所定のレーザ加工ができるように構成されている。
【0020】
また
図2の例では、軸駆動部14は、X軸28、Y軸30及びZ軸32(例えばサーボモータ)をそれぞれ駆動制御するためのX軸アンプ40、Y軸アンプ42及びZ軸アンプ44を含む。一方、制御装置18は、CPU46、ROM48、RAM50、不揮発性メモリ52、データ入出力部(I/O)54及び表示器付きマニュアルデータ入力部(MDI)56を有し、I/O54を介して各アンプ及びレーザ発振器16に上述の移動データ及びレーザ出力指令データを送信できるようになっている。
【0021】
なお
図2の例では、上述のデータ作成部22及びデータ変換部26の機能はCPU46が担うことができ、データ送信部24の機能はI/O54が担うことができる。またレーザ加工プログラム20は、RAM50又は不揮発性メモリ52に格納してもよいし、制御装置18に接続された他の機器に記憶させてもよい。
【0022】
次に、レーザ加工システム10における処理について、
図3〜
図5を参照しつつ説明する。
図3は、制御軸への速度指令(軸移動)とレーザ発振器へのレーザ出力指令(レーザ出力)とを、同じ時間軸で対比可能に表したグラフであり、グラフ58が時間と速度指令との関係、グラフ60が時間とレーザ指令との関係を表している。一般に、制御装置18(CNC)では、加工プログラムのあるブロック(通常は加工プログラムの1行に対応し、軸駆動部14やレーザ発振器16への指令の単位となる)を実行中に、次ブロック以降のブロック情報を読み出して、予め軸の移動量等を計算している。
図3の例では、ブロック62において、制御軸を速度Vで移動させながらワーク38のある部位(領域)についてレーザ出力Pでのレーザ加工を行い、ブロック64ではレーザ照射を停止して速度Vでの軸移動のみを行い、ブロック66において、制御軸を速度Vで移動させながらワーク38の他の部位(領域)についてレーザ出力Pでのレーザ加工を行うものとする。
【0023】
ここで、本発明では、加工プログラムのあるブロック(現ブロック)を実行中に、次ブロックの指令を先読みして次ブロックのレーザ出力指令を作成・記憶しておき、軸の送り速度とブロックの残移動距離からブロックの残時間を計算し、残時間が所定の切換時間未満になったら、データ作成部22が作成したレーザ出力指令を現ブロックから次ブロックのものに切換えることで、加工プログラムのブロック切換えに先立ってレーザ出力指令を切換えることができ(
図3のブロック62→64)、以後、これを第1の切換手順とも称する。これは
図3の切換え時間がマイナスの場合で、レーザ励起電源の応答遅れ時間、レーザ光がワークに照射されてから実際にワークが切断されるまでの時間等を考慮して、レーザ出力条件を早めに指令する場合に使用される。
【0024】
或いは、前のブロックの実行が終了し、現在のブロックの実行を開始してからも前のブロックのレーザ出力指令を継続し、現在のブロック(実行中のブロック)の実行時間が所定の切換時間を経過したらレーザ出力指令を現在のブロック(実行中のブロック)のレーザ出力指令に切換える(遅れてレーザ出力指令を切換える)ことができ(
図3のブロック64→66)、以後、これを第2の切換手順とも称する。これは
図3の切換え時間がプラスの場合で、サーボの遅れ時間を考慮してレーザ出力条件を遅れて指令する場合に使用される。
【0025】
図4は、第1の切換手順の詳細を示すフローチャートである。先ずステップS11において、実行中のブロック62の残り時間(=ブロック62の残りの移動距離/制御軸の移動速度)を計算する。次のステップS12では、計算された残り時間(ブロック残時間)と、予め定めた切換時間t1とを比較する。ブロック残時間がt1以上であれば、現ブロック62でのレーザ出力指令が続行され、より具体的には出力Pのレーザ光を照射するためのピークパワー、周波数及びデューティ比が、制御装置18からレーザ発振器16に出力される(ステップS13)。
【0026】
一方、ブロック残時間がt1未満となったら、レーザ発振器16へのレーザ出力指令が、現ブロック62の次のブロック64のものに切換えられる(ステップS14)。
図3の例ではレーザ照射を停止する指令が出力されるが、出力Pと異なる出力でのレーザ照射を行うための指令(ピークパワー、周波数及びデューティ比)をレーザ発振器16に出力してもよい。ステップS11〜S14の処理は、所定の制御周期で反復される。
【0027】
ここで切換時間t1は少なくとも、レーザ発振器16が具備するレーザ励起電源の応答遅れ時間に基づいて定められ、この応答遅れ時間には、レーザ励起電源の立上り時間や立下り時間が含まれる。すなわち本願発明では、実際のレーザ加工では、レーザ発振器に対してレーザ照射を開始する指令を送ってから実際にレーザ光が照射されるまでの時間(立上り時間)や、レーザ発振器に対してレーザ照射を停止する指令を送ってから実際にレーザ光が照射されなくなるまでの時間(立下り時間)があることを考慮し、その立上り時間や立下り時間に相当する切換時間分だけ、ブロック切換えに先立ってレーザ出力指令を切換えることにより、軸移動とワーク切断位置との同期精度を大きく向上させ、極めて高精度のレーザ加工を行うことができる。
【0028】
また切換時間は、レーザ励起電源の応答遅れ時間に加え、ワーク38にビームが照射されてから実際にワーク38が切断されるまでの時間や、制御装置18からレーザ発振器16にデータを転送する際の遅れ時間に基づいて求めてもよい。このような時間をさらに考慮(通常は合算)することにより、軸移動とワーク切断位置との同期精度がさらに向上する。
【0029】
図5は、第2の切換手順の詳細を示すフローチャートである。先ずステップS21において、実行中のブロック62の実行時間(経過時間)(=ブロック66の移動距離/制御軸の移動速度)を計算する。次のステップS22では、計算された実行時間(ブロック実行時間)と、予め定めた切換時間t2とを比較する。ブロック実行時間がt2以下である間は、現ブロック66の前のブロック64でのレーザ出力指令が継続される(ステップS23)。
図3の例ではレーザ照射を停止する指令が継続されるが、出力Pと異なる出力でのレーザ照射を行うための指令(ピークパワー、周波数及びデューティ比)をレーザ発振器16に出力してもよい。
【0030】
一方、ブロック実行時間がt2を超えたら、レーザ発振器16へのレーザ出力指令が、前ブロック64から現ブロック66のものに切換えられる(ステップS24)。
図3の例では、出力Pのレーザ光を再び照射するためのピークパワー、周波数及びデューティ比が、制御装置18からレーザ発振器16に出力される。ステップS21〜S24の処理は、所定の制御周期で反復される。
【0031】
第2の切換手順は、レーザ励起電源の応答遅れ等を考慮してレーザ出力指令を早く切り替える点では第1の切換手順と共通するが、加工プログラムのブロック(
図3の例ではブロック66)の開始時刻がサーボの遅れ時間(時定数)を考慮して、応答遅れ等に相当する時間よりも大きい時間早めに設定されているために、結果として前ブロック64の終了時(ブロック66開始時)よりも後にレーザ出力指令が切換えられる。このように、軸の速度指令がサーボ遅れ時間等を考慮して設定されている場合にも、レーザ励起電源の応答遅れ時間等に加え、該サーボ遅れ時間を考慮した切換時間を設定することにより、本発明が適用可能である。
【0032】
次に、レーザ加工システム10における他の処理について、
図4〜
図6を参照しつつ説明する。
図6は、制御軸への速度指令(軸移動)とレーザ発振器へのレーザ出力指令(レーザ出力)とを、同じ時間軸で対比可能に表したグラフであり、グラフ68が時間と速度指令との関係、グラフ70が時間とレーザ指令との関係を表している。一般に、制御装置18(CNC)では、加工プログラムのあるブロック(通常は加工プログラムの1行に対応し、軸駆動部14やレーザ発振器16への指令の単位となる)を実行中に、次ブロック以降のブロック情報を読み出して、予め軸の移動量等を計算している。
図6の例では、ブロック72において、制御軸を速度Vで移動させながらワーク38のある部位(領域)についてレーザ出力Pでのレーザ加工を行い、ブロック74ではレーザ照射を停止して速度Vでの軸移動のみを行い、ブロック76において、制御軸を速度Vで移動させながらワーク38の他の部位(領域)についてレーザ出力Pでのレーザ加工を行うものとする。
【0033】
ここで、本発明では、加工プログラムのあるブロック(現ブロック)を実行中に、次ブロックの指令を先読みして次ブロックのレーザ出力指令を作成・記憶しておき、軸の送り速度とブロックの残移動距離からブロックの残時間を計算し、残時間が所定の切換時間未満になったら、データ作成部22が作成したレーザ出力指令を現ブロックから次ブロックのものに切換えることで、加工プログラムのブロック切換えに先立ってレーザ出力指令を切換えることができ(
図6のブロック74→76)、以後、これを第1の切換手順とも称する。これは
図6の切換え時間がマイナスの場合で、レーザ励起電源の応答遅れ時間、レーザ光がワークに照射されてから実際にワークが切断されるまでの時間等を考慮して、レーザ出力条件を早めに指令する場合に使用される。
【0034】
或いは、前のブロックの実行が終了し、現在のブロックの実行を開始してからも前のブロックのレーザ出力指令を継続し、現在のブロック(実行中のブロック)の実行時間が所定の切換時間を経過したらレーザ出力指令を現在のブロック(実行中のブロック)のレーザ出力指令に切換える(遅れてレーザ出力指令を切換える)ことができ(
図6のブロック72→74)、以後、これを第2の切換手順とも称する。これは
図6の切換え時間がプラスの場合で、サーボの遅れ時間を考慮してレーザ出力条件を遅れて指令する場合に使用される。
【0035】
図4は、
図6における第1の切換手順の詳細を示すフローチャートである。先ずステップS11において、実行中のブロック74の残り時間(=ブロック74の残りの移動距離/制御軸の移動速度)を計算する。次のステップS12では、計算された残り時間(ブロック残時間)と、予め定めた切換時間t1とを比較する。ブロック残時間がt1以上であれば、現ブロック74でのレーザ出力指令が続行され、より具体的には出力Pのレーザ光を照射するためのピークパワー、周波数及びデューティ比が、制御装置18からレーザ発振器16に出力される(ステップS13)。
【0036】
一方、ブロック残時間がt1未満となったら、レーザ発振器16へのレーザ出力指令が、現ブロック74の次のブロック76のものに切換えられる(ステップS14)。
図6の例ではレーザ照射を開始する指令が出力されるが、出力Pと異なる出力でのレーザ照射を行うための指令(ピークパワー、周波数及びデューティ比)をレーザ発振器16に出力してもよい。ステップS11〜S14の処理は、所定の制御周期で反復される。
【0037】
ここで切換時間t1は少なくとも、レーザ発振器16が具備するレーザ励起電源の応答遅れ時間に基づいて定められ、この応答遅れ時間には、レーザ励起電源の立上り時間や立下り時間が含まれる。すなわち本願発明では、実際のレーザ加工では、レーザ発振器に対してレーザ照射を開始する指令を送ってから実際にレーザ光が照射されるまでの時間(立上り時間)や、レーザ発振器に対してレーザ照射を停止する指令を送ってから実際にレーザ光が照射されなくなるまでの時間(立下り時間)があることを考慮し、その立上り時間や立下り時間に相当する切換時間分だけ、ブロック切換えに先立ってレーザ出力指令を切換えることにより、軸移動とワーク切断位置との同期精度を大きく向上させ、極めて高精度のレーザ加工を行うことができる。
【0038】
また切換時間は、レーザ励起電源の応答遅れ時間に加え、ワーク38にビームが照射されてから実際にワーク38が切断されるまでの時間や、制御装置18からレーザ発振器16にデータを転送する際の遅れ時間に基づいて求めてもよい。このような時間をさらに考慮(通常は合算)することにより、軸移動とワーク切断位置との同期精度がさらに向上する。
【0039】
図5は、
図6における第2の切換手順の詳細を示すフローチャートである。先ずステップS21において、実行中のブロック74の実行時間(経過時間)(=ブロック74の移動距離/制御軸の移動速度)を計算する。次のステップS22では、計算された実行時間(ブロック実行時間)と、予め定めた切換時間t2とを比較する。ブロック実行時間がt2以下である間は、現ブロック74の前のブロック72でのレーザ出力指令が継続される(ステップS23)。
図6の例ではレーザ照射指令が継続されるが、出力Pと異なる出力でのレーザ照射を行うための指令(ピークパワー、周波数及びデューティ比)をレーザ発振器16に出力してもよい。
【0040】
一方、ブロック実行時間がt2を超えたら、レーザ発振器16へのレーザ出力指令が、前ブロック72から現ブロック74のものに切換えられる(ステップS24)。
図6の例では、出力Pのレーザ光を停止するための指令が、制御装置18からレーザ発振器16に出力される。ステップS21〜S24の処理は、所定の制御周期で反復される。
【0041】
第2の切換手順は、レーザ励起電源の応答遅れ等を考慮してレーザ出力指令を早く切り替える点では第1の切換手順と共通するが、加工プログラムのブロック(
図6の例ではブロック74)の開始時刻がサーボの遅れ時間(時定数)を考慮して、応答遅れ等に相当する時間よりも大きい時間早めに設定されているために、結果として前ブロック72の終了時(ブロック74開始時)よりも後にレーザ出力指令が切換えられる。このように、軸の速度指令がサーボ遅れ時間等を考慮して設定されている場合にも、レーザ励起電源の応答遅れ時間等に加え、該サーボ遅れ時間を考慮した切換時間を設定することにより、本発明が適用可能である。
【0042】
なお第1の切換手順は、実行中のブロックの実行が終了する時点から所定の切換時間(t1)だけ前の時点でレーザ出力指令を切換えるものであり、第2の切換手順は、実行中のブロックの実行を開始した後、所定の切換時間(t2)だけ経過した時点でレーザ出力指令を切換えるものである。従って、第1の切換手順では切換時間がマイナスの値であり、第2の切換手順では切換時間がプラスの値と考えることもできる。そこで、設定された切換時間の符号に応じて、すなわち切換時間がマイナスの値の場合は第1の切換手順に基づく処理を行い、切換時間がプラスの値の場合は第2の切換手順に基づく処理を行うようにすることもできる。或いは、第1又は第2の切換手順のいずれかを選択・決定する手段を設けた上で、切換時間としてはプラスの値(絶対値)を設定するようにしてもよい。
【0043】
例えば、レーザ励起電源の立上り時間と立下り時間は異なることがあるし、ワークにビームが照射されてから実際にワークが切断されるまでの時間と、レーザ光の照射を停止してから実際にワークが切断されなくなるまでの時間は通常相違する。そこで、
図3又は
図6に示した第1及び第2の切換手順のように、レーザ光の照射を停止する場合と開始する場合とでは、切換時間は独立して別々に設定できるようにすることが好ましい。このようにすれば、その相違を補正して、ワークの切断長さの精度向上を図ることができる。
【0044】
また、ワークの材質や板厚等により、ビームが照射されてから実際にワークが切断されるまでの時間や、レーザ光の照射を停止してから実際にワークが切断されなくなるまでの時間は異なるので、切換時間は、適当な入力装置を介して作業者がパラメータとして指定できるようにすることが好ましい。これにより、レーザ光のオンオフのタイミングを自由に調整できるようになるので、ワークの切断位置の調整に関する自由度が向上する。或いは、切換時間は、加工プログラムに含まれる指令によって設定できるようにしてもよい。これにより、加工速度が変更された場合等、サーボの遅れ時間等が変化して切換時間を補正する必要が生じた場合に、該補正の自由度を向上させ、より詳細な設定が可能となる。
【0045】
なお上述の実施形態では、レーザ加工機12は3つの駆動軸(X、Y、Z軸)を有し、ワーク38(が載置されたX−Yテーブル34)がX−Y方向に可動であり、加工ノズル36がZ方向に可動となっているが、本発明の適用対象はこれに限られず、少なくとも1つの制御軸によって加工ノズルがワークに対して移動できる構成のレーザ加工機に対して適用可能である。