特許第6235628号(P6235628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235628
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】自動車の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20171113BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B62D25/08 E
   B60R19/04 M
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-18913(P2016-18913)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-136947(P2017-136947A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 智哉
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169806(JP,A)
【文献】 特開2013−119359(JP,A)
【文献】 特開2015−113025(JP,A)
【文献】 特開2009−154859(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/156052(WO,A1)
【文献】 特開平07−047977(JP,A)
【文献】 特開2008−080818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレーム(16)が、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部(A)と、前記フレームフロア部(A)の前端の車幅方向外側の第3折れ点(P3)から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部(B)と、前記フレーム傾斜部(B)の前端の車幅方向内側の第2折れ点(P2)から前方に延び、前後方向中間の車幅方向外側の第1折れ点(P1)で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹み、車幅方向内壁が前後方向に直線状であるフレーム直線部(C)と、前記フレーム直線部(C)の前端の車幅方向内側の分岐点(P4)から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部(D)とを備える自動車の車体構造であって、
前記フロントサイドフレーム(16)は車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体(24)と、前記フレーム本体(24)の開口部を閉塞するバックプレート(26)とを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部(D)において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレーム(25)が前記フレーム本体(24)の内側に嵌合し、前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)は、前記分岐点(P4)で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)に接続するとともに、前記分岐点(P4)よりも前方で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部(D)の前部で前記補強フレーム(25)の開口部は前記バックプレート(26)で閉塞されることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
フロントピラー(12)と、前記フロントピラー(12)から前方に延びるアッパーメンバ(18)と、前記アッパーメンバ(18)の前端から前方に延びて前記フロントサイドフレーム(16)の前記フレーム拡幅部(D)の車幅方向外側に重なるロアメンバ(19)とを備え、車幅方向に整列する前記フレーム本体(24)、前記補強フレーム(25)および前記ロアメンバ(19)の前端に接続した取付プレート(20)にバンパービームエクステンション(21)を支持し、前記バンパービームエクステンション(21)は前記フレーム本体(24)、前記補強フレーム(25)および前記ロアメンバ(19)に跨がるように上下方向寸法よりも車幅方向寸法が大きい断面横長に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記補強フレーム(25)の後部において、前記フレーム本体(24)の上壁(24a)および下壁(24c)を上下方向外側に折り曲げたフランジ(24d,24e)を前記バックプレート(26)の上縁および下縁を上下方向に延長したフランジ(26b,26c)に接続し、前記補強フレーム(25)の前部において、前記バックプレート(26)の上縁および下縁を車幅方向外側に折り曲げたフランジ(26d,26e)を前記補強フレーム(25)の上壁(25a)および下壁(25c)を車幅方向外側に延長したフランジ(25d,25e)と、前記ロアメンバ(19)の上壁(27a)および下壁(27c)とに接続したことを特徴とする、請求項2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記バンパービームエクステンション(21)は断面横長の筒体であって、車幅方向内壁(21d)および車幅方向外壁(21f)の間に前後方向に延びる隔壁(21e)を備え、前記バンパービームエクステンション(21)の車幅方向内壁(21d)は前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)の前方に整列し、前記バンパービームエクステンション(21)の隔壁(21e)は前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)の前方に整列し、前記バンパービームエクステンション(21)の車幅方向外壁(21f)は前記ロアメンバ(19)の車幅方向外壁(28)の前方に整列することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記フレーム拡幅部(D)の前部で前記補強フレーム(25)の上壁(25a)および下壁(25c)の車幅方向外端は前記フレーム本体(24)から車幅方向外側に突出することを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項6】
車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレーム(16)が、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部(A)と、前記フレームフロア部(A)の前端の第3折れ点(P3)から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部(B)と、前記フレーム傾斜部(B)の前端の第2折れ点(P2)から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点(P1)で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部(C)と、前記フレーム直線部(C)の前端の分岐点(P4)から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部(D)とを備える自動車の車体構造であって、
前記フロントサイドフレーム(16)は車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体(24)と、前記フレーム本体(24)の開口部を閉塞するバックプレート(26)とを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部(D)において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレーム(25)が前記フレーム本体(24)の内側に嵌合し、前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)は、前記分岐点(P4)で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)に接続するとともに、前記分岐点(P4)よりも前方で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部(D)の前部で前記補強フレーム(25)の開口部は前記バックプレート(26)で閉塞され、前記フレーム拡幅部(D)の前部で前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)は前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)から車幅方向外側に離間し、パワーユニット(31)を支持するマウント(32)を前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)と前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)との間に設けたことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項7】
車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレーム(16)が、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部(A)と、前記フレームフロア部(A)の前端の第3折れ点(P3)から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部(B)と、前記フレーム傾斜部(B)の前端の第2折れ点(P2)から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点(P1)で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部(C)と、前記フレーム直線部(C)の前端の分岐点(P4)から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部(D)とを備える自動車の車体構造であって、
前記フロントサイドフレーム(16)は車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体(24)と、前記フレーム本体(24)の開口部を閉塞するバックプレート(26)とを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部(D)において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレーム(25)が前記フレーム本体(24)の内側に嵌合し、前記補強フレーム(25)の車幅方向内壁(25b)は、前記分岐点(P4)で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)に接続するとともに、前記分岐点(P4)よりも前方で前記フレーム本体(24)の車幅方向内壁(24b)から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部(D)の前部で前記補強フレーム(25)の開口部は前記バックプレート(26)で閉塞され、前記パワーユニット(31)を支持する他のマウント(35)の取付ブラケット(38)は両端の二つの固定部(38a)にて前記フロントサイドフレーム(16)に接続され、前記第2折れ点(P2)は前記二つの固定部(38a)の間にあることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項8】
前記第1折れ点(P1)の車幅方向外側の凹みは転舵された前輪(30)の前端との干渉を回避するためのものであり、前記第1折れ点(P1)における前記フレーム直線部(C)の断面積は、その前後における前記フレーム直線部(C)の断面積よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項9】
前記フロントサイドフレーム(16)は前記第3折れ点(P3)の前後に補強部材(36,37)を備えることを特徴とする、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の自動車の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、前記フレームフロア部の前端の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、前記フレーム傾斜部の前端の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部と、前記フレーム直線部の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントサイドフレームの車幅方向外面に設けた脆弱部から枝フレームを前方かつ車幅方向外側に斜めに延出させ、フロントサイドフレームの前端と枝フレームの前端とを連結部材で連結し、ナローオフセット衝突時にフロントサイドフレームを脆弱部にて屈曲させてパワーユニットを後方に押圧することで衝突エネルギーを吸収するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
またフロントサイドフレームが前から後に順番に配置された第1折れ点、第2折れ点および第3折れ点を備え、第1折れ点よりも前方のフロントサイドフレームの車幅方向外面とロアメンバの前端とを三角形状のガセットで連結することで、ナローオフセット衝突時にフロントサイドフレームが第1折れ点、第2折れ点および第3折れ点の順番で折れ曲がることで衝突エネルギーを吸収するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5357953号公報
【特許文献2】特許第5469697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、ナローオフセット衝突時にフロントサイドフレームが一カ所の脆弱部のみで屈曲するため、フロントサイドフレームによるエネルギー吸収性能を充分に発揮できない可能性があった。
【0006】
また上記特許文献2に記載されたものは、ガセットの部分に斜め衝突の衝突荷重が入力したときに、衝突荷重が第1折れ点に集中してしまい、フロントサイドフレームが第1折れ点のみで折れ曲がってエネルギー吸収性能を充分に発揮できない可能性があった。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の斜め衝突時にもフロントサイドフレームを第1〜第3折れ点で確実に折り曲げてエネルギー吸収性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、前記フレームフロア部の前端の車幅方向外側の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、前記フレーム傾斜部の前端の車幅方向内側の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の車幅方向外側の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹み、車幅方向内壁が前後方向に直線状であるフレーム直線部と、前記フレーム直線部の前端の車幅方向内側の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える自動車の車体構造であって、前記フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、前記フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームが前記フレーム本体の内側に嵌合し、前記補強フレームの車幅方向内壁は、前記分岐点で前記フレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、前記分岐点よりも前方で前記フレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部の前部で前記補強フレームの開口部は前記バックプレートで閉塞されることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、フロントピラーと、前記フロントピラーから前方に延びるアッパーメンバと、前記アッパーメンバの前端から前方に延びて前記フロントサイドフレームの前記フレーム拡幅部の車幅方向外側に重なるロアメンバとを備え、車幅方向に整列する前記フレーム本体、前記補強フレームおよび前記ロアメンバの前端に接続した取付プレートにバンパービームエクステンションを支持し、前記バンパービームエクステンションは前記フレーム本体、前記補強フレームおよび前記ロアメンバに跨がるように上下方向寸法よりも車幅方向寸法が大きい断面横長に構成されることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記補強フレームの後部において、前記フレーム本体の上壁および下壁を上下方向外側に折り曲げたフランジを前記バックプレートの上縁および下縁を上下方向に延長したフランジに接続し、前記補強フレームの前部において、前記バックプレートの上縁および下縁を車幅方向外側に折り曲げたフランジを前記補強フレームの上壁および下壁を車幅方向外側に延長したフランジと、前記ロアメンバの上壁および下壁とに接続したことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2または請求項3の構成に加えて、前記バンパービームエクステンションは断面横長の筒体であって、車幅方向内壁および車幅方向外壁の間に前後方向に延びる隔壁を備え、前記バンパービームエクステンションの車幅方向内壁は前記フレーム本体の車幅方向内壁の前方に整列し、前記バンパービームエクステンションの隔壁は前記補強フレームの車幅方向内壁の前方に整列し、前記バンパービームエクステンションの車幅方向外壁は前記ロアメンバの車幅方向外壁の前方に整列することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記フレーム拡幅部の前部で前記補強フレームの上壁および下壁の車幅方向外端は前記フレーム本体から車幅方向外側に突出することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0013】
また請求項6に記載された発明によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、前記フレームフロア部の前端の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、前記フレーム傾斜部の前端の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部と、前記フレーム直線部の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える自動車の車体構造であって、前記フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、前記フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームが前記フレーム本体の内側に嵌合し、前記補強フレームの車幅方向内壁は、前記分岐点で前記フレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、前記分岐点よりも前方で前記フレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部の前部で前記補強フレームの開口部は前記バックプレートで閉塞され、前記フレーム拡幅部の前部で前記補強フレームの車幅方向内壁は前記フレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離間し、パワーユニットを支持するマウントを前記補強フレームの車幅方向内壁と前記フレーム本体の車幅方向内壁との間に設けたことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0014】
また請求項7に記載された発明によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、前記フレームフロア部の前端の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、前記フレーム傾斜部の前端の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部と、前記フレーム直線部の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える自動車の車体構造であって、前記フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、前記フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、前記フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームが前記フレーム本体の内側に嵌合し、前記補強フレームの車幅方向内壁は、前記分岐点で前記フレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、前記分岐点よりも前方で前記フレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、前記フレーム拡幅部の前部で前記補強フレームの開口部は前記バックプレートで閉塞され、前記パワーユニットを支持する他のマウントの取付ブラケットは両端の二つの固定部にて前記フロントサイドフレームに接続され、前記第2折れ点は前記二つの固定部の間にあることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0015】
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜請求項7の何れか1項の構成に加えて、前記第1折れ点の車幅方向外側の凹みは転舵された前輪の前端との干渉を回避するためのものであり、前記第1折れ点における前記フレーム直線部の断面積は、その前後における前記フレーム直線部の断面積よりも小さいことを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0016】
また請求項9に記載された発明によれば、請求項1〜請求項8の何れか1項の構成に加えて、前記フロントサイドフレームは前記第3折れ点の前後に補強部材を備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
【0017】
なお、実施の形態のフロントピラーロア12は本発明のフロントピラーに対応し、実施の形態のバックプレート28は本発明の車幅方向外壁に対応し、実施の形態のバルクヘッド36およびスチフナ37は本発明の補強部材に対応する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の構成によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、フレームフロア部の前端の車幅方向外側の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、フレーム傾斜部の前端の車幅方向内側の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の車幅方向外側の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹み、車幅方向内壁が前後方向に直線状であるフレーム直線部と、フレーム直線部の車幅方向内側の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える。
【0019】
フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームがフレーム本体の内側に嵌合し、補強フレームの車幅方向内壁は、分岐点でフレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、分岐点よりも前方でフレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、フレーム拡幅部の前部で補強フレームの開口部はバックプレートで閉塞されるので、斜め衝突時に補強フレームの前端に入力した衝突荷重は補強フレームの車幅方向内壁に伝達された後に、分岐点においてフレーム直線部に切り替えて伝達されるので、フレーム直線部の車幅方向外縁に凹みを構成する第1折れ点に荷重が集中することなく、第2折れ点に優先的に荷重を伝達することができる。その結果、中央の第2折れ点が先に折れ曲がるので、それに続いて前後の第1折れ点および第3折れ点を確実に折り曲げることができ、これら第1〜第3折れ点の折れ曲がりにより斜め衝突時の衝突エネルギーの吸収効果が高められる。特に、フロントサイドフレームの分岐点から前端までのフレーム拡幅部で、車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームとが嵌合するので、フロントサイドフレームの車幅方向内縁の強度が向上してスムーズな荷重伝達が可能になる。
【0020】
また請求項2の構成によれば、フロントピラーと、フロントピラーから前方に延びるアッパーメンバと、アッパーメンバの前端から前方に延びて前記フロントサイドフレームのフレーム拡幅部の車幅方向外側に重なるロアメンバとを備え、車幅方向に整列するフレーム本体、補強フレームおよびロアメンバの前端に接続した取付プレートにバンパービームエクステンションを支持し、バンパービームエクステンションはフレーム本体、補強フレームおよびロアメンバに跨がるように上下方向寸法よりも車幅方向寸法が大きい断面横長に構成されるので、前面衝突の衝突荷重に対してフレーム本体、補強フレームおよびロアメンバにそれぞれ反力を発生させ、バンパービームエクステンションを効果的に圧壊してエネルギー吸収効果を高めることができるだけでなく、車幅方向に長い断面形状のバンパービームエクステンションは衝突荷重により倒れ難いため、その圧壊を一層確実に行わせることができる。
【0021】
また請求項3の構成によれば、補強フレームの後部において、フレーム本体の上壁および下壁を上下方向外側に折り曲げたフランジをバックプレートの上縁および下縁を上下方向に延長したフランジに接続し、補強フレームの前部において、バックプレートの上縁および下縁を車幅方向外側に折り曲げたフランジを補強フレームの上壁および下壁を車幅方向外側に延長したフランジと、ロアメンバの上壁および下壁とに接続したので、フレーム拡幅部の後部でフレーム本体およびバックプレートを強固に一体化するとともに、フレーム拡幅部の前部で補強フレーム、バックプレートおよびロアメンバを強固に一体化することができる。
【0022】
また請求項4の構成によれば、バンパービームエクステンションは断面横長の筒体であって、車幅方向内壁および車幅方向外壁の間に前後方向に延びる隔壁を備え、バンパービームエクステンションの車幅方向内壁はフレーム本体の車幅方向内壁の前方に整列し、バンパービームエクステンションの隔壁は補強フレームの車幅方向内壁の前方に整列し、バンパービームエクステンションの車幅方向外壁はロアメンバの車幅方向外壁の前方に整列するので、バンパービームエクステンションに入力した衝突荷重をフロントサイドフレームに効率的に伝達し、バンパービームエクステンションの圧壊を促進してエネルギー吸収効果を高めることができる
【0023】
また請求項5の構成によれば、フレーム拡幅部の前部で補強フレームの上壁および下壁の車幅方向外端はフレーム本体から車幅方向外側に突出するので、重量の増加を最小限に抑えながらフロントサイドフレームの前部を拡幅することができる。
【0024】
また請求項6の構成によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、フレームフロア部の前端の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、フレーム傾斜部の前端の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部と、フレーム直線部の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える。
【0025】
フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームがフレーム本体の内側に嵌合し、補強フレームの車幅方向内壁は、分岐点でフレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、分岐点よりも前方でフレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、フレーム拡幅部の前部で補強フレームの開口部はバックプレートで閉塞されるので、斜め衝突時に補強フレームの前端に入力した衝突荷重は補強フレームの車幅方向内壁に伝達された後に、分岐点においてフレーム直線部に切り替えて伝達されるので、フレーム直線部の車幅方向外縁に凹みを構成する第1折れ点に荷重が集中することなく、第2折れ点に優先的に荷重を伝達することができる。その結果、中央の第2折れ点が先に折れ曲がるので、それに続いて前後の第1折れ点および第3折れ点を確実に折り曲げることができ、これら第1〜第3折れ点の折れ曲がりにより斜め衝突時の衝突エネルギーの吸収効果が高められる。特に、フロントサイドフレームの分岐点から前端までのフレーム拡幅部で、車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームとが嵌合するので、フロントサイドフレームの車幅方向内縁の強度が向上してスムーズな荷重伝達が可能になる。
【0026】
しかもフレーム拡幅部の前部で補強フレームの車幅方向内壁はフレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離間し、パワーユニットを支持するマウントを補強フレームの車幅方向内壁とフレーム本体の車幅方向内壁との間に設けたので、フレーム本体および補強フレームが閉断面を構成する部分にマウントを設けてパワーユニットの支持剛性を高めることができる。
【0027】
また請求項7の構成によれば、車体前部に前後方向に配置される左右のフロントサイドフレームが、フロアの下面に沿って前後方向に延びるフレームフロア部と、フレームフロア部の前端の第3折れ点から車幅方向外側に屈曲しながら斜め前方に延びるフレーム傾斜部と、フレーム傾斜部の前端の第2折れ点から前方に延び、前後方向中間の第1折れ点で車幅方向外縁が車幅方向内側に凹むフレーム直線部と、フレーム直線部の前端の分岐点から車幅方向外縁が車幅方向外側に拡幅しながら前方に延びるフレーム拡幅部とを備える。
【0028】
フロントサイドフレームは車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と、フレーム本体の開口部を閉塞するバックプレートとを接続して閉断面に構成され、フレーム拡幅部において車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームがフレーム本体の内側に嵌合し、補強フレームの車幅方向内壁は、分岐点でフレーム本体の車幅方向内壁に接続するとともに、分岐点よりも前方でフレーム本体の車幅方向内壁から車幅方向外側に離反し、フレーム拡幅部の前部で補強フレームの開口部はバックプレートで閉塞されるので、斜め衝突時に補強フレームの前端に入力した衝突荷重は補強フレームの車幅方向内壁に伝達された後に、分岐点においてフレーム直線部に切り替えて伝達されるので、フレーム直線部の車幅方向外縁に凹みを構成する第1折れ点に荷重が集中することなく、第2折れ点に優先的に荷重を伝達することができる。その結果、中央の第2折れ点が先に折れ曲がるので、それに続いて前後の第1折れ点および第3折れ点を確実に折り曲げることができ、これら第1〜第3折れ点の折れ曲がりにより斜め衝突時の衝突エネルギーの吸収効果が高められる。特に、フロントサイドフレームの分岐点から前端までのフレーム拡幅部で、車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体と車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレームとが嵌合するので、フロントサイドフレームの車幅方向内縁の強度が向上してスムーズな荷重伝達が可能になる。
【0029】
しかもパワーユニットを支持する他のマウントの取付ブラケットは両端の二つの固定部にてフロントサイドフレームに接続され、第2折れ点は二つの固定部の間にあるので、第2折れ点の強度を相対的に低くして確実な折れ曲がりを可能にすることができる。
【0030】
また請求項8の構成によれば、第1折れ点の車幅方向外側の凹みは転舵された前輪の前端との干渉を回避するためのものであり、第1折れ点におけるフレーム直線部の断面積は、その前後におけるフレーム直線部の断面積よりも小さいので、車幅方向寸法が大きい横置きのパワーユニットを搭載するためにフロントサイドフレームの前部を車幅方向外側に屈曲させても、凹部により前輪がフロントサイドフレームに干渉するのを防止することができ、しかもフレーム直線部の車幅方向内縁を直線状に維持して第1折れ点から第2折れ点への荷重伝達を支障なく行うことができる。
【0031】
また請求項9の構成によれば、フロントサイドフレームは第3折れ点の前後に補強部材を備えるので、第3折れ点の剛性をその前後の補強部材の位置よりも低くし、衝突荷重により第3折れ点を確実に折り曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】自動車の車体左前部の側面図。
図2図1の2方向矢視図。
図3図2の3部拡大図。
図4図1の4−4線断面図。
図5図3の5−5線断面図。
図6図3の6−6線断面図。
図7図3の7−7線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書における前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向は運転席に着座した乗員を基準として定義される。
【0034】
図1および図2に示すように、車室のフロアの車幅方向両側縁に沿って前後方向に延びる左右一対のサイドシル11,11の前端から左右一対のフロントピラーロア12,12が起立し、左右のフロントピラーロア12,12の上端から後上方に延びる左右一対のフロントピラーアッパー13,13の上端が、左右一対のルーフサイドレール14,14の前端に接続される。左右のフロントピラーロア12,12間がフロアから起立するダッシュパネルロア15により連結され、ダッシュパネルロア15の下端に左右一対のフロントサイドフレーム16,16の後端が接続される。左右のフロントサイドフレーム16,16の後端と左右のフロントピラーロア12,12の下端とが、車幅方向に延びる左右一対のアウトリガー17,17により連結される。
【0035】
左右のフロントピラーロア12,12の上端から左右一対のアッパーメンバ18,18が前方に延出し、左右のアッパーメンバ18,18が前端から左右一対のロアメンバ19,19が前下方かつ車幅方向内側に延出する。左右のフロントサイドフレーム16,16の前端および左右のロアメンバ19,19の前端は、車幅方向に隣接した状態で左右一対の取付プレート20,20により連結され、左右の取付プレート20,20の前面に接続された左右一対のバンパービームエクステンション21,21が、車幅方向に延びるバンパービーム22により連結される。左右のアッパーメンバ18,18の車幅方向内面と左右のフロントサイドフレーム16,16の車幅方向外面とが、左右一対のダンパーベース23,23で連結される。
【0036】
図3および図6に示すように、フロントサイドフレーム16は、上壁24a、車幅方向内壁24bおよび下壁24cを有して車幅方向外側に開放するコ字状断面のフレーム本体24と、上壁25a、車幅方向内壁25bおよび下壁25cを有して車幅方向外側に開放するコ字状断面の補強フレーム25と、フレーム本体24および補強フレーム25の開口部を閉塞する板状のバックプレート26とを備える。
【0037】
補強フレーム25の後端部では、フレーム本体24の上壁24a、車幅方向内壁24bおよび下壁24cに補強フレーム25の上壁25a、車幅方向内壁25bが重なり合い、その前方では補強フレーム25の車幅方向内壁25bがフレーム本体24の車幅方向内壁24bから車幅方向外側に次第に離反し、さらに補強フレーム25の前部では、補強フレーム25の上壁25aおよび下壁25cが、フレーム本体24の上壁24aおよび下壁24cの車幅方向外縁に形成した切欠き24f,24gから車幅方向外側に突出する。
【0038】
フロントサイドフレーム16の最前部を除く位置で、フレーム本体24は上壁24aの車幅方向外端を上向きに折り曲げたフランジ24dと、下壁24cの車幅方向外端を下向きに折り曲げたフランジ24eとを備えており、これらのフランジ24d,24eに、バックプレート26の本体部26aの上端および下端を上方および下方に延長したフランジ26b,26cが溶接される。またフロントサイドフレーム16の最前部では、バックプレート26は上端および下端を車幅方向外側に折り曲げたフランジ26d,26eを備えており、これらのフランジ26d,26eが補強フレーム25の前部の上壁25aおよび下壁25cの車幅方向外端を車幅方向外側に延長したフランジ25d,25eに重ね合わされて溶接される。これによりフロントサイドフレーム16はその全長に亙って閉断面に構成される。
【0039】
またロアメンバ19は、上壁27a、車幅方向内壁27bおよび下壁27cを有して車幅方向外側に開放するコ字状断面のフレーム本体27と、フレーム本体27の開口部を閉塞する板状のバックプレート28とを備えて閉断面に構成される。そしてフロントサイドフレーム16の最前部において、フロントサイドフレーム16のバックプレート26の本体部26aおよび上下のフランジ26d,26eの内側に、ロアメンバ19のフレーム本体27の車幅方向内壁27b、上壁27aおよび下壁27cが重ね合わされて溶接され、これによりフロントサイドフレーム16の前端とロアメンバ19の前端とが車幅方向に接続される。
【0040】
図4および図5に示すように、相互に接続されたフロントサイドフレーム16およびロアメンバ19の前端に板状の取付プレート20が溶接され、この取付プレート20の前面にバンパービームエクステンション21の後端に溶接した取付フランジ21aが複数本のボルト29…で結合される。バンパービームエクステンション21は、上壁21b、下壁21c、車幅方向内壁21d、隔壁21eおよび車幅方向外壁21fを備えるもので、上下方向寸法よりも車幅方向寸法が大きい横長の日字状断面に構成され、バンパービームエクステンション21の車幅方向内壁21dはフロントサイドフレーム16のフレーム本体24の車幅方向内壁24bと前後方向に整列し、バンパービームエクステンション21の隔壁21eはフロントサイドフレーム16の補強フレーム25の車幅方向内壁25bと前後方向に整列し、バンパービームエクステンション21の車幅方向外壁21fはロアメンバ19の車幅方向外壁を構成するバックプレート28と前後方向に整列する。
【0041】
図2および図3に示すように、フロントサイドフレーム16は前から後に順番に配置された分岐点P4、第1折れ点P1、第2折れ点P2および第3折れ点P3を備えており、第3折れ点P3よりも後方の部分がフレームフロア部Aとされ、第3折れ点P3から第2折れ点P2までの間がフレーム傾斜部Bとされ、第2折れ点P2から第1折れ点P1を超えて分岐点P4までの間がフレーム直線部Cとされ、分岐点P4よりも前方の部分がフレーム拡幅部Dとされる。
【0042】
フレームフロア部Aは車幅方向の幅が略一定で前後方向に延び、その前方に連続するフレーム傾斜部Bは車幅方向の幅を減じながら車幅方向外側に向かって湾曲する。フレーム傾斜部Bの前方に連続するフレーム直線部Cは、車幅方向内壁が前後方向に整列するが、車幅方向外壁の前部が車幅方向内側に向かって凹状に湾曲しており、第1折れ点P1の位置で車幅方向の幅が最も小さくなる。つまりフレーム直線部Cは、第1折れ点P1の位置で断面積が最小であり、その前後で断面積が増加している。フレーム直線部Cの前方に連続するフレーム拡幅部Dは、補強フレーム25が存在する範囲に対応し、車幅方向内壁が前後方向に整列するが、車幅方向外壁が前方に向かって次第に拡幅する。
【0043】
よって、フロントサイドフレーム16の車幅方向内壁は、フレームフロア部Aの範囲で前後方向に整列し、フレーム傾斜部Bの範囲で前方側が車幅方向外側に傾斜し、フレーム直線部Cおよびフレーム拡幅部Dの範囲で前後方向に整列する。またフロントサイドフレーム16の車幅方向外壁は、フレームフロア部Aの範囲で前後方向に整列し、フレーム傾斜部Bの範囲で前方側が車幅方向外側に傾斜し、フレーム直線部Cの第1折れ点P1の近傍で一旦車幅方向内側に凹んだ後に、フレーム拡幅部Dの範囲で前方側が車幅方向外側に傾斜する。フレーム直線部Cの第1折れ点P1の近傍の凹みにより、転舵された前輪30(図3)がフロントサイドフレーム16と干渉することが回避される。
【0044】
エンジンおよびトランスミッションを一体化したパワーユニット31は、右側の2個のマウント32,33で右側のフロントサイドフレーム16に支持され、右側の2個のマウント34,35で左側のフロントサイドフレーム16に支持される。
【0045】
図3および図7に示すように、フロントサイドフレーム16の第3折れ点P3の直前位置に、その内部を仕切るバルクヘッド36が設けられ、フロントサイドフレーム16の第3折れ点P3の直後位置に、その下壁24cに重ね合わされるスチフナ37が設けられる。またパワーユニット31の四つのマウント32〜35のうち、左側後部のマウント35は、フロントサイドフレーム16の内部に配置された取付ブラケット38に設けたナットカラー39にボルト40で締結される。ハット状に形成された取付ブラケット38は両端の固定部38a,38aにてフレーム本体24の下壁24cに溶接され、両端の固定部38a,38aの中間のナットカラー支持部38bにナットカラー39が溶接される。フロントサイドフレーム16の第2折れ点P2は、取付ブラケット38の、一方の固定部38aとナットカラー支持部38bとに挟まれた位置に設定されている。
【0046】
図2に示すように、パワーユニット31の四つのマウント32〜35のうち、右側前部のマウント32は、フロントサイドフレーム16のフレーム本体24の車幅方向内壁24bと、補強フレーム25の車幅方向内壁25bとに挟まれた位置、すなわちフレーム本体24および補強フレーム25により構成された閉断面の内部に配置される。
【0047】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0048】
フロントサイドフレーム16は、車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体24と、その開口部を閉塞するバックプレート26とを接続して閉断面に構成され、かつフロントサイドフレーム16のフレーム拡幅部Dにおいて車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレーム25がフレーム本体24の内側に嵌合する。そして補強フレーム25の車幅方向内壁25bは、分岐点P4でフレーム本体24の車幅方向内壁24bに接続するとともに、分岐点P4よりも前方でフレーム本体24の車幅方向内壁24bから車幅方向外側に離反し、フレーム拡幅部Dの前部で補強フレーム25の開口部はバックプレート26により閉塞される。
【0049】
よって、斜め衝突時に補強フレーム25の前端に入力した衝突荷重(図3の矢印A1参照)は補強フレーム25の車幅方向内壁25bに伝達された後に、分岐点P4においてフレーム直線部Cに切り替えて伝達されるので、フレーム直線部Cの車幅方向外縁に凹みを構成する第1折れ点P1に荷重が集中することなく、第2折れ点P2に優先的に荷重を伝達することができる。その結果、中央の第2折れ点P2が先に折れ曲がるので、それに続いて前後の第1折れ点P1および第3折れ点P3を確実に折り曲げることができ、これら第1〜第3折れ点P1〜P3の折れ曲がりにより斜め衝突時の衝突エネルギーの吸収効果が高められる。
【0050】
このとき、フロントサイドフレーム16の分岐点P4から前端までのフレーム拡幅部Dで、車幅方向外側に開口するコ字状断面のフレーム本体24と車幅方向外側に開口するコ字状断面の補強フレーム25とが嵌合するので、フロントサイドフレーム16の車幅方向内縁の強度が向上してスムーズな荷重伝達が可能になる。
【0051】
また第1折れ点P1の車幅方向外側の凹みにより、第1折れ点P1におけるフレーム直線部Cの断面積は、その前後におけるフレーム直線部のC断面積よりも小さいので(図3参照)、車幅方向寸法が大きい横置きのパワーユニット31を搭載するためにフロントサイドフレーム16のフレーム拡幅部Dを車幅方向外側に拡幅しても、凹部により前輪30がフロントサイドフレーム16に干渉するのを防止することができ、しかもフレーム直線部Cの車幅方向内縁を直線状に維持して第1折れ点P1から第2折れ点P2への荷重伝達を支障なく行うことができる。
【0052】
またフロントサイドフレーム16は第3折れ点P3の前後に補強部材であるバルクヘッド36およびスチフナ37を備えるので(図7参照)、第3折れ点P3の剛性をその前後のバルクヘッド36およびスチフナ37の位置よりも低くし、衝突荷重により第3折れ点P3を確実に折り曲げることができる。しかもパワーユニット31を支持する左側後部のマウント35の取付ブラケット38は両端の二つの固定部38a,38aにてフロントサイドフレーム16に接続され、第2折れ点P2は二つの固定部38a,38aの間にあるので(図7参照)、第2折れ点P2の強度を相対的に低くして確実な折れ曲がりを可能にすることができる。
【0053】
また車幅方向に整列するフレーム本体24、補強フレーム25およびロアメンバ19の前端に接続した取付プレート20にバンパービームエクステンション21を支持したので、前面衝突の衝突荷重に対してフレーム本体24、補強フレーム25およびロアメンバ19にそれぞれ反力を発生させ、バンパービームエクステンション21を効果的に圧壊してエネルギー吸収効果を高めることができる。
【0054】
またバンパービームエクステンション21は上下方向寸法よりも車幅方向寸法が大きい断面横長の筒体であって、車幅方向内壁21dおよび車幅方向外壁21fの間に前後方向に延びる隔壁21eを備え、バンパービームエクステンション21の車幅方向内壁21dはフレーム本体24の車幅方向内壁24bの前方に整列し、バンパービームエクステンション21の隔壁21eは補強フレーム25の車幅方向内壁25bの前方に整列し、バンパービームエクステンション21の車幅方向外壁21fはロアメンバ19の車幅方向外壁を構成するバックプレート28の前方に整列するので、バンパービームエクステンション21に入力した衝突荷重をフロントサイドフレーム16およびロアメンバ19に効率的に伝達し、バンパービームエクステンション21の圧壊を促進してエネルギー吸収効果を高めることができる。しかも車幅方向に長い断面形状のバンパービームエクステンション21は衝突荷重により倒れ難いため、その圧壊を一層確実に行わせることができる。
【0055】
さらに補強フレーム25の後部において、フレーム本体24の上壁24aおよび下壁24cを上下方向外側に折り曲げたフランジ24d,24eをバックプレート26の上縁および下縁を上下方向に延長したフランジ26b,26cに接続し、補強フレーム25の前部において、バックプレート26の上縁および下縁を車幅方向外側に折り曲げたフランジ26d,26eを補強フレーム25の上壁25aおよび下壁25cを車幅方向外側に延長したフランジ25d,25eと、ロアメンバ19のフレーム本体27の上壁27aおよび下壁27cとに接続したので、フレーム拡幅部Dの後部でフレーム本体24およびバックプレート26を強固に一体化するとともに、フレーム拡幅部Dの前部で補強フレーム25、バックプレート26およびロアメンバ19を強固に一体化することができる。
【0056】
またフレーム拡幅部Dの前部で補強フレーム25の上壁25aおよび下壁25cの車幅方向外端はフレーム本体24の上壁24aおよび下壁24cの切欠き24f,24gから車幅方向外側に突出するので、重量の増加を最小限に抑えながらフロントサイドフレーム16の前部を拡幅することができる。しかもフレーム拡幅部Dの前部で補強フレーム25の車幅方向内壁25bはフレーム本体24の車幅方向内壁25bから車幅方向外側に離間し、パワーユニット31を支持する右側前部のマウント32(図2参照)を補強フレーム25の車幅方向内壁25bとフレーム本体24の車幅方向内壁24bとの間に設けたので、フレーム本体24および補強フレーム25が閉断面を構成する強度の高い部分にマウント32を設けてパワーユニット31の支持剛性を高めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0058】
A フレームフロア部
B フレーム傾斜部
C フレーム直線部
D フレーム拡幅部
P1 第1折れ点
P2 第2折れ点
P3 第3折れ点
P4 分岐点
12 フロントピラーロア(フロントピラー)
16 フロントサイドフレーム
18 アッパーメンバ
19 ロアメンバ
20 取付プレート
21 バンパービームエクステンション
21d 車幅方向内壁
21e 隔壁
21f 車幅方向外壁
24 フレーム本体
24a 上壁
24b 車幅方向内壁
24c 下壁
24d フランジ
24e フランジ
25 補強フレーム
25a 上壁
25b 車幅方向内壁
25c 下壁
25d フランジ
25e フランジ
26 バックプレート
26b フランジ
26c フランジ
26d フランジ
26e フランジ
27a 上壁
27c 下壁
28 バックプレート(車幅方向外壁)
30 前輪
31 パワーユニット
32 マウント
35 マウント
36 バルクヘッド(補強部材)
37 スチフナ(補強部材)
38 取付ブラケット
38a 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7