(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、アイダイアグラムを表示する場合、位相や閾値電圧を変化させて所定のパターン信号を測定対象に入力したときの測定結果から所望のビットエラーレートのアイダイアグラムを予測して表示を行っていた。
【0005】
しかし、測定対象に入力されるパターン信号は、位相や閾値電圧を変化させているため、
図2(b)に示すように、パターン信号の位相を変化させたときの測定結果からは位相方向(水平方向)に対しての予測ポイントしか得られず、また、パターン信号の閾値電圧を変化させた測定結果からは電圧方向(垂直方向)に対しての予測ポイントしか得ることができなかった。このため、予測したアイダイアグラム(
図2(b)の四角で示す予測ポイントを結ぶ一点鎖線で示すアイダイアグラム)は理想的なアイダイアグラムに対して形が歪になり、精度の高いアイダイアグラムを予測して表示することができなかった。その結果、例えばE−12(=10
-12 )以下の低レートのアイダイアグラムを予測する場合には、測定ポイント数や得られた結果によっては信頼性が薄くなってしまい、アイダイアグラムの精度がさらに失われるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、所望のアイダイアグラムを高精度に予測して表示することができるアイダイアグラム表示装置およびアイダイアグラム表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたアイダイアグラム表示装置は、位相と閾値電圧が制御されるパターン信号を測定対象に入力したときの位相と電圧との関係を示すアイダイアグラムを表示するアイダイアグラム表示装置1において、
測定ポイント数と測定を行うビットエラーレートの範囲を設定する操作部3aと、
アイダイアグラムの中心をオートサーチにて求めるオートサーチ手段3baと、該オートサーチ手段にて求めた中心より位相と閾値電圧を個別に二分岐探索でふるように前記測定対象に入力されるパターン信号の位相と閾値電圧を変えて実測定ポイントを探索し、前記アイダイアグラムの中心と前記実測定ポイントとの間のポイントに閾値電圧を設定して二分岐探索で位相をふるように前記測定対象に入力されるパターン信号の位相を変えて実測定ポイントを探索する実測定ポイント探索手段3bbと、
前記実測定ポイントそれぞれにおける二分岐探索
の途中の測定ポイント
である、ビットエラーレートと閾値電圧もしくは位相の結果
から作成されるバスタブ曲線を
用いて仮予測ポイントを算出する仮予測ポイント算出手段3bcと、該仮予測ポイント算出手段にて算出した仮予測ポイントをそれぞれ結んだ線分と前記実測定ポイントと前記アイダイアグラムの中心との間を結んだ線分との交点を予測結果ポイントとしてアイダイアグラムを予測するアイダイアグラム予測手段3bdとを有する制御部3bとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載されたアイダイアグラム表示方法は、位相と閾値電圧が制御されるパターン信号を測定対象に入力したときの位相と電圧との関係を示すアイダイアグラムを表示するアイダイアグラム表示方法において、
測定ポイント数と測定を行うビットエラーレートの範囲を設定するステップと、
アイダイアグラムの中心をオートサーチにて求めるステップと、
求めた前記アイダイアグラムの中心より位相と閾値電圧を個別に二分岐探索でふるように前記測定対象に入力されるパターン信号の位相と閾値電圧を変えて実測定ポイントを探索するステップと、
前記アイダイアグラムの中心と前記実測定ポイントとの間のポイントに閾値電圧を設定して二分岐探索で位相をふるように前記測定対象に入力されるパターン信号の位相を変えて実測定ポイントを探索するステップと、
前記実測定ポイントそれぞれにおける二分岐探索
の途中の測定ポイント
である、ビットエラーレートと閾値電圧もしくは位相の結果
から作成されるバスタブ曲線を
用いて仮予測ポイントを算出するステップと、
前記仮予測ポイントのそれぞれを結んだ線分と前記実測定ポイントと前記アイダイアグラムの中心との間を結んだ線分との交点を予測結果ポイントとしてアイダイアグラムを予測するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望のアイダイアグラムを高精度に予測して表示することができる。これにより、低レートのビットエラーレートのアイダイアグラムであっても、従来より高精度に予測して理想的なアイダイアグラムに近づけて表示を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、アイダイアグラム表示装置1は、パターン発生部2、エラーレート測定部3を備えて構成され、例えばデータ伝送機器などの測定対象4に対し、位相と閾値電圧が制御されるパターン信号を入力したときの任意のビットエラーレートにおける位相と電圧との関係を示すアイダイアグラムを表示する機能を有する。
【0013】
パターン発生部2は、ユーザが所望するビットエラーレートのアイダイアグラムを予測して表示するにあたって、エラーレート測定部3の後述する制御部3bによって位相や閾値電圧が可変制御される既知パターンのパターン信号(テスト信号)を発生して測定対象4に入力する。
【0014】
エラーレート測定部3は、操作部3a、制御部3b、記憶部3c、表示部3dを含んで構成される。
【0015】
操作部3aは、例えば装置本体に設けられる各種キー、スイッチ、ボタンや表示部3dの表示画面上のソフトキーなどで構成され、アイダイアグラム表示に関わる各種設定や指示を行う際にユーザにより操作される。
【0016】
具体的には、所望のビットエラーレートのアイダイアグラムを予測して表示を行うための測定の開始や終了の指示の他、表示部3dに表示される設定画面において、測定ポイント数(例えば4ポイント、8ポイント、16ポイント)の選択設定、ビットエラーレートの測定範囲(実測定ポイントのビットエラーレートよりどこまで低レートの測定を行うかを示す範囲)の設定、予測するビットエラーレートの設定を操作部3aの操作により行い、これらの操作部3aの操作に基づく指示や設定情報が制御部3bに入力される。
【0017】
制御部3bは、操作部3aからの指示や設定情報に基づいて装置全体を統括制御するもので、操作部3aからの指示によりユーザが所望するビットエラーレートのアイダイアグラムを予測して表示を行うための測定の開始や終了を制御する。制御部3bは、操作部3aからの設定情報に基づいてパターン発生部2に入力される位相や閾値電圧を制御する。制御部3bは、各測定ポイントの測定結果や計算結果を記憶部3cに記憶制御する。制御部3bは、測定結果や測定結果に基づくビットエラーレートのアイダイアグラムや等高線アイダイアグラムを表示部3dに描画表示制御する。
【0018】
また、制御部3bは、ユーザが所望するビットエラーレートのアイダイアグラムを予測するため、オートサーチ手段3ba、実測定ポイント探索手段3bb、仮予測ポイント算出手段3bc、アイダイアグラム予測手段3bdを含んで構成される。
【0019】
オートサーチ手段3baは、周知のオートサーチ(例えば特許第3394944号)によりアイダイアグラムの中心(
図2(a)のO)を探索する。すなわち、オートサーチ手段3baは、測定対象4からの入力信号のハイレベルとローレベルの中間の信号レベルを、入力信号を二値化するための閾値信号レベルとし、この閾値信号レベルで入力信号を二値化した二値化波形信号の振幅の中心をアイダイアグラムの中心として求める。
【0020】
実測定ポイント探索手段3bbは、オートサーチ手段3baにて求めたアイダイアグラムの中心より位相と閾値電圧を個別に二分岐探索でふるように測定対象4に入力されるパターン信号の位相と閾値電圧を変えて実測定ポイントを探索する。また、実測定ポイント探索手段3bbは、上記探索により得られた実測定ポイントとオートサーチ手段3baにて求めたアイダイアグラムの中心との間のポイントに閾値電圧を設定して二分岐探索で位相をふるように測定対象4に入力されるパターン信号の位相を変えて実測定ポイントを探索する。
【0021】
仮予測ポイント算出手段3bcは、実測定ポイント探索手段3bbにより測定の過程で得られた実測定ポイントの測定結果からバスタブ曲線を引いて最小二乗法により仮予測ポイント(
図2(a)の四角で示すポイント)を算出する。
【0022】
アイダイアグラム予測手段3bdは、仮予測ポイント算出手段3bcにて算出した仮予測ポイントをもとにアイダイアグラムの中心O方向への予測結果ポイント(
図2(a)の三角で示すポイント)を算出し、算出した予測結果ポイントからアイダイアグラムを予測する。
【0023】
記憶部3cは、操作部3aの操作により設定される設定情報、アイダイアグラム表示を行うために測定される各測定ポイントの測定結果、計算結果を記憶する。
【0024】
表示部3dは、例えば液晶表示器などで構成され、測定対象4のアイダイアグラム表示に関わる設定画面、測定結果や予測したアイダイアグラムなどを表示する。
【0025】
次に、上記のように構成されるアイダイアグラム表示装置1を用いて測定対象4の所望のビットエラーレートのアイダイアグラムを予測して表示を行う場合のアイダイアグラム表示方法について説明する。ここでは、予測するアイダイアグラムのビットエラーレートが1E−15(=10
-15 )の場合を例にとって説明する。
【0026】
ビットエラーレート1E−15のアイダイアグラムを予測して表示するにあっては、まず操作部3aを操作して必要な各種設定を行う。具体的には、予め決められたポイント数(例えば4、8、16)の中から選択して測定ポイント数を設定する。例えばポイント数8を測定ポイント数として選択して設定する。
【0027】
また、実測定ポイントのビットエラーレートよりどこまで低レートの測定を行うかを示すビットエラーレートの測定範囲(下限値)を設定する。例えばビットエラーレート1E−7(=10
-7)まで測定を行う場合は1E−7に設定する。
【0028】
さらに、予測するアイダイアグラムのビットエラーレートを設定する。ここでは、予測するアイダイアグラムのビットエラーレートが1E−15なので、1E−15に設定する。なお、本実施の形態のアイダイアグラム装置1では、ユーザが特に意識することなくビットエラーレート1E−6〜1E−20のアイダイアグラムの等高線(1E−1ステップ)を表示から得ることができる。
【0029】
以上の設定が完了すると、操作部3aを操作し、設定したエラービットレートのアイダイアグラムを予測して表示するために測定対象4の測定の開始を指示する。操作部3aの指示により測定対象4の測定が開始されると、オートサーチ手段3baの周知のオートサーチによりアイダイアグラムの中心(
図2(a)のO)を求める。このオートサーチでは、測定対象4からの入力信号のハイレベルとローレベルの中間の信号レベルを、入力信号を二値化するための閾値信号レベルとし、この閾値信号レベルで入力信号を二値化した二値化波形信号の振幅の中心をアイダイアグラムの中心として求める。
【0030】
次に、実測定ポイント探索手段3bbは、アイダイアグラムの中心Oより位相を二分岐探索でふるように測定対象4に入力されるパターン信号の位相を変え、ビットエラーレート1E−7の実測定ポイントの点を探索する(
図2(a)の丸で示す左端と右端の実測定ポイント)。また、実測定ポイント探索手段3bbは、アイダイアグラムの中心Oより閾値電圧を二分岐探索でふるように測定対象4に入力されるパターン信号の閾値電圧を変え、ビットエラーレート1E−7の実測定ポイントの点を探索する(
図2(a)の丸で示す上端と下端の実測定ポイント)。この探索により、ビットエラーレート1E−7のアイダイアグラムの上下左右4点の実測定ポイントを表示部3dの表示画面上に描画する。
【0031】
次に、実測定ポイント探索手段3bbは、アイダイアグラムの中心Oとアイダイアグラムの上端の中央との間のポイントに閾値電圧を設定し、そこから二分岐探索で位相をふるように測定対象4に入力されるパターン信号の位相を変え、ビットエラーレート1E−7の実測定ポイントの点を探索する(
図2(a)の丸で示す左上と右上の実測定ポイント)。同様に、実測定ポイント探索手段3bbは、アイダイアグラムの中心Oとアイダイアグラムの下端の中央との間のポイントに閾値電圧を設定し、そこから二分岐探索で位相をふるように測定対象4に入力されるパターン信号の位相を変え、ビットエラーレート1E−7の実測定ポイントの点を探索する(
図2(a)の丸で示す左下と右下の実測定ポイント)。
【0032】
これにより、ビットエラーレート1E−7のアイダイアグラムの8点の実測定ポインントが得られ、この8点の実測定ポントからビットエラーレート1E−7のアイダイアグラム(
図2(a)の実線で示すアイダイアグラム)を表示部3dの表示画面上に描画する。
【0033】
次に、仮予測ポイント算出手段3bcは、二分岐探索による途中の測定ポイントの結果からバスタブ曲線を引いて最小二乗法により仮予測ポイントを算出する(
図2(a)の四角で示す仮予測ポイント)。
【0034】
ここで、仮予測ポイントの計算方法について、
図2(a)のアイダイアグラムの左上の点を例にとって説明する。他の点についても考え方は同様である。
図2(a)に示す仮予測ポイントA’は実測定ポイントAから位相方向のみ予測したものであり、実測定ポイントCの仮予測ポイントC’が実測定ポイントAの閾値電圧より小さくなった時点で仮予測ポイントA’の予測ポイントは実際にありえない点となってしまうため、意味をなさない。
【0035】
アイダイアグラムはOを中心として小さくなるため、実測定ポイントAの真の予測ポイントはアイダイアグラムの中心Oとの線分OA上にあるはずである。線分A’B’は同じレートの等高線のため、線分OAと線分A’B’の交点が真の予測ポイントである。ただし、Oはオートサーチを行った点(測定開始点)とする。
【0036】
したがって、A(a1,a2),A’(a1’,a2’),B’(b1’,b2’),O(o1,o2)とすると、求める交点(x,y)は、以下のようになる。
【0037】
x=((a2’b1’−a1’b2’)(o1−a1)−(o2a1−o1a2)(a1’−b1’))/((o1−a1)(a2’−b2’)−(o2−a2)(a1’−b1’))
【0038】
y=((a2’b1’−a1’b2’)(o2−a2)−(o2a1−o1a2)(a2’−b2’))/((o1−a1)(a2’−b2’)−(o2−a2)(a1’−b1’))
【0039】
なお、a1’=b1’の場合は、線分OAの方程式にx=a1’を代入した値が交点になる。さらに、上述した計算は、隣接する点の測定が終わっているため、1ポイントの測定結果が取得されるたびに行う。
【0040】
このように、仮予測ポイント算出手段3bcは、それぞれの仮予測ポイントを結んだ線分と、8点の実測定ポイントとアイダイアグラムの中心との間を結んだ線分との交点をアイダイアグラムの予測結果ポイント(
図2(a)の三角で示すポイント)として算出する。そして、アイダイアグラム予測手段3bdは、この予測結果ポイントを使用して表示部3dの表示画面上にアイダイアグラム(
図2(a)の点線で示すアイダイアグラム)および1E−1ステップの等高線アイダイアグラムを引いて描画する。
【0041】
なお、どこまで低レートのビットエラーレートの実測定を行うかを設定において、ビットエラーレート1E−9を選択して設定した場合には、予測結果ポイントを使用したアイダイアグラムの描画が完了した後、ビットエラーレート1E−8の予測結果ポイントを実測し、その測定結果に応じてバスタブ曲線を引き直す。その後、ビットエラーレート1E−15のアイダイアグラムを新たに引き直す。同様に、ビットエラーレート1E−9の予測結果ポイントを実測し、バスタブ曲線を引き直すことでビットエラーレート1E−15のアイダイアグラムを更新する。
【0042】
また、測定ポイント数としてポイント数16を選択した場合は、上述した8点の実測定ポイントを探索した後、例えば左上の点とアイダイアグラムの中心Oとの間の中間点に位相を設定し、閾値電圧を二分岐探索することで実測定ポイントを割り出す。
【0043】
ここで、
図3は本実施の形態のアイダイアグラム表示装置1と従来のアイダイアグラム表示装置におけるビットエラーレート1E−15のときに予測されるアイダイアグラムの表示例を示す。
【0044】
図3において、実線で示す本実施の形態のアイダイアグラムと点線で示す従来のアイダイアグラムとを比較すると、特に、右上及び左上の部分の突出部分が小さくなり、より理想的なアイダイアグラムに近づけることができる。
【0045】
このように、本実施の形態のアイダイアグラム表示装置1によれば、実測定ポイントとアイダイアグラムの中心との間を結ぶ線と、同じビットエラーレートの各実測定ポイント間を結ぶ等高線との交点を予測ポイントとしてアイダイアグラムを予測して表示する。これにより、ユーザが所望するアイダイアグラムを高精度に予測して表示を行うことができる。特に、低レートのアイダイアグラムを従来よりも高精度に予測し、理想的なアイダイアグラムに近づけて表示することができる。
【0046】
以上、本発明に係るアイダイアグラム表示装置およびアイダイアグラム表示方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。