【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
Nat. Med.,2003年 6月,Vol. 9, No. 6,pp. 653-660
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Trends Cardiovasc. Med.,2002年,Vol. 12, No. 2,pp. 88-96
【文献】
Cell,1998年,Vol. 93, No. 5,pp. 741-753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エフリン−B2と抗体Fcフラグメントとを結合させて構成したタンパク性物質の、脈管形成を刺激するための活性化がもたらされた単核細胞(MNC)を含有する脈管形成組成物を調製すべく前記単核細胞(MNC)に発現しているEphB4に結合させるための、前記脈管形成組成物を含有する脈管形成刺激剤の製造における使用。
【背景技術】
【0002】
ニュ−ロン誘導の中枢系において最初に見つけられたエフリンファミリ−のメンバ−な
らびにそのEph受容体チロシンキナ−ゼは脈管形成(angiogenesis)に関与するファクタ
−であることは知られている。Eph受容体およびそれらのエフリンリガンドの多くのイソ
型の組織発現特異性について記載されている。脊椎動物においては、第1に、少なくとも
16種類のEph受容体、つまり10種類のEphA受容体(EphA1からEphA10)と6種類のEphB
受容体(EphB1からEphB6)が知られている。第2に、少なくとも9種類のエフリンリガン
ド、つまりエフリン−A1からエフリン−A6ならびにエフリン−B1からエフリン−B3が知ら
れている。元来、サブクラスEphAおよびEphBの区別は、それらの細胞外ドメイン配列のホ
モロジ−に基づいているが、この区別はまたそれらのリガンドの優先的結合にも相応して
いる。つまり、エフリン−Aリガンドは一般的にはグリコシルホスファチジルイノシト−
ル(GPI)によってそのメンブレンに結合していて、エフリン−BリガンドはPDZ−結合ド
メインを有する細胞内細胞質ドメインを有するトランスメンブレンである。
【0003】
図1に示すように、
・Eph受容体は、細胞外ドメイン、フィブロネクチンタイプIII反復体(リピ−ト)、シ
ステインリッチ領域および特異的リガンド結合ドメインから構成されている。また、Eph
受容体は、チロシンキナ−ゼ活性を有するドメイン、ステイル(sterile)αモチ−フ(S
AM)およびPDZ−結合モチ−フからなる細胞内ドメインの延長部を有していて;
・エフリン−Aリガンドは、GPI(GPIアンカ−)を介してメンブレンに結合していて;
・エフリン−Bトランスメンブレンリガンドは細胞質テ−ル(tail)およびPDZ−結合モ
チ−フからなる細胞内延長部を有している。
【0004】
Eph受容体チロシンキナ−ゼ(特にEphB4)とそのリガンド(特にエフリン−B2)との間
の相互作用、つまりトランスメンブレンタンパク質に関して、その表面でEphを発現する
細胞中のEph受容体によって誘導されるシグナル伝達(フォワ−ドシグナル伝達)と、そ
の表面でエフリンを発現する細胞中のエフリンリガンドによって誘導されるリバ−スシグ
ナル伝達とからなる2方向シグナル伝達が発生する。この2方向シグナル伝達は細胞/細
胞接触、移行および細胞粘着の役割を果たしている。
【0005】
EphB4/エフリン−B2対(カップル)の動静脈での発現の特異性は既知である(非特許
文献1)。EphB4は静脈でだけ発現し、エフリン−B2は動脈で発現する。
【0006】
EphB受容体とエフリン−Bリガンドは特に胚発達中に発現する。またEphBはマウスの胚
細胞(ES)の内皮細胞への分化に関与していると思われる(非特許文献2)。
【0007】
ある種のEph受容体、特にEphB4は腫瘍中で過剰発現することが知られている。このこと
は、これらのEph受容体が腫瘍増殖の役割を果たしていることを示唆している。またEphB
4によるエフリン−B2の活性化(リバ−スシグナル伝達)が腫瘍の成長を刺激しているこ
とを示している(非特許文献3)。
【0008】
他方、(i)腫瘍形成中のエフリン−B2発現の増加ならびに二次的には(ii)この増加
によるエフリン−B2の腫瘍誘発の可能性の懸念も先行技術には報告されている。このこと
は、いくつかの刊行物が、一方では腫瘍マ−カ−としてエフリン−B2の検出を利用するこ
と、また他方ではエフリン−B2を阻害することを提案している理由を説明している。例え
ば、特に特許文献1は、腫瘍脈管構造のマ−カ−としてエフリン−B2の検出を推奨して、
上記腫瘍脈管構造を視覚化する技法を記載している。他方、特許文献2は、受容体とその
リガンドとの相互作用を防止して脈管形成を制限するためにEph、特にEphB4インヒビタ
−またはエフリン、特にエフリン−B2インヒビタ−の使用を提案している。また、特許文
献3および特許文献4は、脈管形成を減少もしくは調節するために抗Eph抗体(特に抗Eph
B4抗体)または抗エフリン抗体(特に抗エフリン−B2抗体)のいずれかを使用することを
推奨している。
【0009】
簡潔に言えば、Eph/エフリン対(カップル)に関する先行特許文献は、特に下記に示す
方法に関するものである:
・PDZドメインに結合するタンパク質によるエフリン−Bシグナル伝達(リバ−スシグナ
ル伝達)(特許文献5、6参照);
・エフリン−B2またはEphB4発現の調節(特許文献7、8参照);
・がんおよび脈管形成関連疾患を処置する観点でのエフリン−B2/EphB4相互作用の阻
害(特許文献8、9参照);
・腫瘍脈管構造のマ−カ−としてのエフリン−B2の使用。
【0010】
さらに、Fcタンパク質(つまり、抗体のFcフラグメント)と対をなしたエフリン−B2リ
ガンドは内皮細胞HUVECの移動を誘発することが報告されている(非特許文献4)。
【0011】
最後に、スフィンゴシンキナ−ゼ(sphingosine kinase)をコ−ドする配列および脈管形
成タンパク質をコ−ドする配列を有するアデノウィルスが知られている(特許文献10)
。この文献は、アデノウイルスを局所注射した後のスフィンゴシンキナ−ゼと、エフリン
−B2と考えられる脈管形成タンパク質の発現を目的としている。さらに、エフリン−B2の
水溶性インヒビタ−を注射して造血幹細胞の異常な増殖を減少させる方法も知られている
(特許文献11)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
Eph受容体/エフリンリガンドシステムの成分の特異性については文献に記載されている
(E. B. Pasquale, Curr. Opin. Cell Biol., 1997; 9(5):608)。便利なように、下記に
示す本文献の表1(アメリカ特許第6579683号に記載されているような)には、あ
る種のカップルの特異性が記載されていて、第1欄に示した受容体に対する親和性を減少
させる順に第2欄にリガンドを記載している。
【0025】
この発明の細胞マ−カ−/特異的リガンドシステムにおいては、カップルの2成分はそ
れぞれアミノ酸配列の形であっても、または適切であれば核酸配列の形であってもよい。
しかしながら、はじめは、Eph受容体はEPCメンブレン上にアミノ酸配列の形で発現させる
のは明らかに好ましい。同様に、エフリンリガンドは、アミノ酸配列の形またはエフリン
ペプチドフラグメントの形で使用されるのが非常に有利である。これは、Ephとエフェリ
ンとがアミノ酸の形で結合するからであって、タンパク質/タンパク質の相互作用は前脈
管形成活性を観察するために必要である。その結果、後記するように、Ephとエフェリン
は、アミノ酸配列のタンパク質の形で専ら阻害しあう。
【0026】
Ephマ−カ−としては、EphA またはEphBが使用できる。しかしながら、Ephマ−カ−は
、EphB マ−カ−が脈管形成に優先的に関与していることから、EphBであるのが好ましい
。他方、現在の技術水準では、EphAマ−カ−は、中枢神経に主に関与していると思われる
。
【0027】
この発明においては、EphB マ−カ−としてはEphB4またはEphB1であるのが有利であり
、EphB マ−カ−のうちでは、EphB4がEphB1よりも好ましい。
【0028】
エフリンリガンドのなかでは、エフリン−Bリガンド、特にエフリン−B2リガンドまた
はエフリン−B1リガンドが好ましい。加えて、同じ生物学的活性を有するエフリン−B2の
ペプチドフラグメントに相応する、例えばエフリン−B2リガンドの変形もまた好ましい。
この結果、この発明のシステムにおいては、第1に、EphB4またはEphB1マ−カ−を使用す
ること、第2に、エフリン−B2またはエフリン−B1リガンドを使用することが有利であり
、Eph/エフリンカップルはEphB4/エフリン−B2であるのが特に好ましい。
【0029】
リガンドLがEPC−Ephを活性化することができるためには、大部分の場合、それが下記
構造のタンパク物質の形状で結合たんぱく質Kに関連するかまたは融合することが重要で
あり:
L−K (I)
また組換えエフリン−B2タンパク質は、出願人の知る限りでは、上記結合タンパク質Kの
導入なしにEPC-Ephだけを活性化できる物質であると考えられる。
【0030】
この発明に適している結合タンパク質Kとしては、特に数多くの抗体Fcフラグメントで
あって、例えばペプシン、パパインもしくはあらゆるその他の適切な物質による抗体の分
解によって得られるもの)が挙げられる。例えば、抗体製造の副産物として市販されてい
るFcフラグメント、例えばFab'やF(ab)'なども好ましい。
【0031】
変法として、上記タンパク物質L-Kは、好ましくはヒトの組換えエフリン−B2タンパク
質で置換されていてもよい。
【0032】
この発明に適するEPCは、外側メンブレンで発現したEph細胞マ−カ−(特にEphB、好ま
しくはEphB1、より好ましくはEphB4)からなる細胞である。かかるEPC細胞は、骨髄、末
梢血、好ましくは臍帯血からの単核細胞またはCD34もしくはCD133を発現する細胞から得
ることができる。
【0033】
単核細胞は骨髄で産生され、そこでは高濃度で見いだされ、血流中を通過し、帯血や末
梢血中で見いだされる。単核細胞は、数多くの細胞が(i)Ephマ−カ−(より好ましくは
EphB4マ−カ−)を発現するためにまたは(ii)その外側メンブレン上に既に発現した上
記マ−カ−を含有するために必要な遺伝的物質を有していることから、かかる細胞から選
択することができる。この発明においては、単核細胞としては、分化した後実質的に発現
するかまたはEphB4を含む比較的大量のEPCを提供することから、CD34+またはCD133+細
胞が好ましい。
【0034】
分化によって産生されるEPCの単核細胞中の濃度は、その細胞の由来によって変化する
。その濃度は、骨髄や臍帯血中では多かれ少なかれ均等であるが、末梢血中では低い。
【0035】
タンパク物質L−Kが組換えエフリン−B2タンパク質で置換できる上記構造式(II)で
表されるこの発明の細胞物質は、その外側メンブレン上に、その特異的リガンドに結合し
たEphマ−カ−、特にEphB4またはEphB1をそれぞれ有する1種または複数種の細胞からな
っている。変形として、上記細胞物質は、上記構造式(II)で表される数種類の細胞と、
また適切であれば上記タンパク物質で活性化されない他の細胞とを含んでいる培養物から
なっていてもよい。したがって、かかる培養物は、活性化EPCと、非活性化EPCまたは単核
細胞との細胞混合物であってもよい。
【0036】
この発明の具体的な態様によれば、上記培養物は、その投与部位に接触する前に、下記
(a)と(b)との培養によって得ることができる:
(a)Eph類、特にEphB4またはEphB1からなる群から選ばれる内皮前駆細胞(EPC);
(b)構造式:
L−K (I)
で表されるタンパク物質であって、上記マ−カ−に特異的なリガンド(L)であって、結
合タンパク質(K)、特に抗体Fcフラグメントに関連しているかまたは融合するタンパク
物質である。
【0037】
有利な態様としては、培養は10〜60分間、特に30分間インビトロで行うのがよい
。この培養時間は細胞物質の投与直前の時間である。
【0038】
変形として、上記細胞物質は、精製された細胞培養物の形または(i)L−Kもしくは
組換えエフリン−B2タンパク質で活性化されたEPC細胞と、(ii)L−Kもしくは組換え
エフリン−B2タンパク質で活性化されない非活性化前駆体、例えば単核細胞ならびに/も
しくはEPCとを含む細胞混合物からなる細胞培養物の形であるのがよい。さらに、細胞物
質は凍結状態で保存するのがよい。
【0039】
細胞物質は、上気した観点からして、上記構造式(II)で表されるように、上記マ−カ
−がEphB4またはEphB1であり、上記リガンドがエフリン−B2またはエフリン−B1である。
【0040】
好ましい態様によれば、この発明に係る上記細胞物質の製造方法は、下記の工程からな
っている:
(工程1)骨髄、末梢血または臍帯血由来の単核細胞を使用する工程;
(工程2)工程1で得た上記細胞を、Ephマ−カ−を有するEPCを得るために分化させる
工程;
(工程3)工程2で得たEPCを、エフリンをEphに結合することによって、インビトロで活
性化する工程。
【0041】
上記方法は、必要に応じて、工程1と工程2との間に、工程1aを追加することもでき
る:
(工程1a)CD34+ および/またはCD133+単核細胞を単離する工程。
【0042】
工程1aは、(工程1)+(工程1a)+(工程2)からなる3工程を構成する。しか
しながら、上記工程1aを実行すると、(工程1)+(工程2)からなる2工程に比べて
製造費用が増加する。実際には、非活性化EPC細胞は細胞培地中の活性化EPC細胞を希釈す
るのに役立つことから、2工程方法は、現状では3工程方法よりも明らかに利益がより一
層上がる方法である。
【0043】
この発明の方法によれば、上記リガンドLは、構造式(II):
EPC−Eph−L−K (II)
(式中、上記Ephマ−カ−はEphB4 またはEphB1、上記リガンドLがB2 またはエフリン−B
1であるのが好ましい)
で表される細胞物質を得るために、結合タンパク質Kに関連するかまたは融合する。
【0044】
医薬品として、この発明の細胞物質は、特に脈管不全の処置、より好ましくは虚血性心
臓、脳または末梢組織の脈管再生のために使用することができる。
【0045】
この発明の細胞物質は、各用量に上記構造式(II)で表される物質が含まれる単位用量
の形で調剤することができる。変法として、上記物質(II)の成分、つまり、EPC-Eph と
タンパク物質L-Kを接触しないように調剤することも可能である。培養は、下記反応式:
EPC−Eph + L−K → EPC−Eph−L−K
に従って投与前に特に10〜60分間(好ましくは20〜30分間)行ないのがよい。
【0046】
この場合、この発明は、治療的に許容される量のこの発明の前脈管形成システムの2つ
の成分であって、それぞれが生理学的に許容される賦形剤と調剤されている医薬組成物を
提供する。これら2成分は投与前に培養されて構造式(II)で表される細胞物質に生成さ
れる。
【0047】
上記したように、この発明の細胞物質は、特に心臓もしくは脳のレベルまたは末梢レベ
ルで損傷を受けた脈管組織を再生するのに使用される。この物質は、動脈炎、冠状もしく
は心臓の脈管不全または脳の脈管不全の処置に使用する組成物の製造に特に適している。
動物モデルにおいては、第1に、下肢の重篤な虚血の処置に、第2に、切断を避けること
を可能にする回復を確保するという点でよい結果を得ている。
【0048】
この発明の細胞物質は、哺乳動物、特に人にそれ自体既知の方法で投与することができ
る。例えば、上記細胞物質は、(i)脈管患部内にまたはその付近に注射すること、(ii
)静脈注射することまたは(iii)適切なベクタ−を使用してその患部部位に伝達させる
ことができる。変法として、上記細胞物質は、第1に、EPC-Eph細胞と、第2に、遺伝子
治療分野で知られているベクタ−に結合させたタンパク物質を、注射、特に静脈注射によ
って別々に投与することができる。
【0049】
成人においては、この細胞物質は、適切である場合には非活性化EPCの細胞混合物に含
まれたその細胞(II)を静脈注射によって投与することができる。かかる細胞混合物は、
注射1回当たり全体として約10
5ないし10
9個の細胞を含んでいてもよい。
【0050】
この発明の他の利点ならびに特徴は、製造ならびに薬理学的試験に関する下記の実施例
によってより一層理解されるであろう。当然のことながら、下記実施例の各要素は限定的
なものではなく、例示として挙げたものであって、例えば細胞物質はEPC-EphB4-エフリン
-B2-Fcとして例示する。
【実施例1】
【0051】
EPC-EphB4の製造:
(A)ヒト臍帯血(30〜50 ml)を採取し、ヘパリンナトリウムの抗凝固剤溶液を入れた
殺菌チュ−ブに注入した。臍帯血単核細胞をパンコ−ル(1.077 g/ml;Dominique Dutsch
er S.A., Brumath, France)を用いて密度こう配遠心分離によって単離した。得られた単
核細胞はプラスチック皿上で24時間37℃で培養して付着細胞から分離した。EphB4マ
−カ−を発現する単核細胞と、上記マ−カ−を発現しない単核細胞とを含む細胞混合物が
得られた。
【0052】
(B)上記(A)で得られた細胞混合物を、コラ−ゲンタイプI(Sigma-Aldrich, Saint
-Quentin, France)でコ−ティングした6ウェルプレ−トの各ウェルに注入した分化のた
めにhVEGFを含む培地に注入した(Le Ricousse-Roussanne S/ et al., Cardiovasc. Res.
, 2004; 62: 176-184参照)。15日間培養した後、EPC−EphB4に富む細胞混合物を回収
した。
【実施例2】
【0053】
EPC-EphB4の製造:
(A)上記実施例1(A)で得られた細胞混合物を用いて、CD34+細胞を単離し、標準の
免疫磁気分離法、特に抗CD34モノクロ−ナル抗体からなるCD34単離キット(Miltenyi Bio
tech, Paris, France)によって非付着細胞から精製した。抗CD34モノクロ−ナル抗体(
前の抗体と異なる抗体が好ましい)を用いたフロ−サイトメトリによって得られた細胞の
分析によって、その細胞の75%(±5.6%)がCD34マ−カ−であることが判明した。
【0054】
(B)上記(A)で得られた細胞混合物(1.5 x 10
6 〜3.5 x 10
6 CD34+細胞)は、フィ
ブロネクチン、ラミニン(laminin)、ヘパリンナトリウムスルフェ−ト、コラ−ゲンタ
イプ I およびIV(Sigma-Aldrich)を含むマトリックスでコ−ティングした6ウェルプレ
−トの各ウェルに注入したhVEGF、bFGFならびにIGF1を含む培地(R&D Systems Inc., Oxf
ord, UK)に注入した。15日間培養した後、EPC−EphB4に富む細胞混合物を回収した。
【実施例3】
【0055】
EPC-EphB4−エフリン−B2−Fcの製造:
上記実施例1(B)で得られた細胞混合物(EphB4マ−カ−と共にEPC細胞を含む)は、
融合タンパク質エフリン−B2−Fc、EphB4−FcまたはCD6−Fc(CD6−Fcはエフリン−B2で
のEPC活性化によって認められる効果を示すためのネガティブコントロ−ルとして使用し
た)3μg/mlを用いて37℃で30分間培養した。それぞれの非結合融合タンパク質は洗
浄(少なくとも2回)して除去した。この処理によって3種類の細胞混合物を得た。1つ
は構造式:EPC-EphB4−エフリン−B2−Fcで表されるこの発明の細胞物質を含む細胞混合
物、2つ目はEphB4−Fc融合タンパク質でのEPC活性化によって得られた細胞を含む細胞混
合物、3つ目はCD6−Fc融合タンパク質でのEPC活性化によって得られた細胞を含む細胞混
合物であった。
【実施例4】
【0056】
実施例2(B)で得られた細胞混合物を出発物質として使用する以外は、上記実施例3の
方法と同様にして構造式:EPC-EphB4−エフリン−B2−Fcで表される細胞を得た。
試験プロトコル:
時間T=0に、7週齢の雄ヌ−ドマウス(PBS、非活性化EPCおよびHUVECコントロ−ル
を含む試験および実験製品当たり1バッチ6匹)の右大腿動脈を結紮し虚血を誘発させた
。T=+4.5時間に、実施例3に従って培養して構造式:EPC-EphB4−エフリン−B2−F
cで表されるこの発明の細胞物質と、その他の2種類の比較用細胞物質を得た。次に、T
=+5時間に、実施例3で得た3種類の細胞混合物(106細胞/マウス)を下眼窩にそれ
ぞれ静脈注射した。T=+12日に、マウスを解剖して、虚血肢と非虚血肢の腓腹筋を摘出
して、下記について調べた:
・脈管形成スコア;
・毛細血管(キャピラリ−)密度(キャピラリ−数/mm
2);
・皮膚血流フロ−。
試験1:脈管形成スコア
脈管形成スコア(つまり血管密度)は、マイクロアンジオグラフィ−によって決定した。
詳細には、虚血肢の血管密度は、非虚血肢と比較して、高解像マイクロアンジオグラフィ
−によって測定した(Silvestre J.S. et al., Cir. Res., 2001; 89: 259-264参照)。
得られた結果は、
図2のグラフに示すように、虚血肢/非虚血肢の割合で決定した。
【0057】
エフリン−B2−FcまたはCD6−Fc融合タンパク質で活性化されたまたは活性化されてい
ないEPCを注射すると、PBSを注射したコントロ−ル群に比べて血管密度の僅かな増加が観
測された。EPCがエフリン−B2−Fc融合タンパク質で活性化されたときの血管密度は、非
活性化EPCの注射の場合に比べて、25.5%、つまり、1.34倍脈管形成スコアが増加した。
試験2:キャピラリ−密度(キャピラリ−数/mm
2)
虚血した筋肉のキャピラリ−(毛細血管)密度は、内皮細胞に特異的なCD31マ−カ−に
対する抗体で腓腹筋の標識切片を用いて、非虚血肢の同一筋肉の切片と比較して調べた。
得られた結果は、
図3のグラフに示すように、虚血肢/非虚血肢の割合で表した。
【0058】
この発明のエフリン−B2−Fc融合タンパク質で活性化したEPCをマウスに注射した場合
、そのキャピラリ−密度は、非活性化EPCに比べて36.7%、つまり1.57倍増加したことが観
測された。
試験3:皮膚血流フロ−
血流フロ−の定量的評価(虚血肢/非虚血肢の割合で表す)は、血管数の変化が機能適
合、つまり虚血肢の浸潤の変化に対応していることを証明するために行った。その結果は
図4のグラフに示す通りであった。
【0059】
この発明のエフリン−B2−Fc融合タンパク質で活性化したEPCを注射すると、虚血肢に
おいては、非虚血肢の場合に比べて、1.37倍(27.1%の増加)の血液フロ−の増加が観測
された。
【実施例5】
【0060】
本実施例では、EphB4マ−カ−タンパク質合成が阻害されている細胞製剤によるEphB4マ
−カ−の役割を示した。
【0061】
このために、特に所定の遺伝子、具体的にはEphB4マ−カ−を発現する遺伝子をコ−ド
するメッセンジャ−RNAを特異的に分解可能な「干渉RNA」または「siRNA」を使用した。
これらの干渉RNAの作用はトラスンスフェクション(形質転換)と呼ばれている。
【0062】
これらの細胞製剤は、上記の試験プロトコルに類似する試験プロトコルに従って雄ヌ−
ドマウスに投与した。
【0063】
第1ステップでは、内皮プロジェニタ−(progenitor)細胞、つまりEPCを80%融合(co
nfluence)するまで培養した。EphB4マ−カ−タンパク質合成を阻害することができるEphB
4 siRNA溶液、つまり干渉RNAを含有する溶液を、抗生物質も血清も含有していないM199培
地に希釈し、室温で5分間培養した。さらに、どの特定の遺伝子とも対応していないコン
トロ−ルsiRNAの溶液を同様に希釈した。EphB4マ−カ−の発現に対して何ら生物学的効果
を有しない後者の希釈溶液は、干渉RNAがインヒビタ−としての独自の役割を有していな
いことを証明することができる。その上、トランスフェクション剤Dharmafect2(Dharmac
on, Perbio)を上記溶液と同様の条件で調製し、これらの溶液と混合した。次いで、得ら
れた混合物を培養した。
【0064】
これらの培養溶液を内皮プロジェニタ−(progenitor)細胞、つまりEPCと接触させて
、第1の細胞製剤では、EphB4マ−カ−タンパク質合成を阻害させた製剤、また第2の細
胞製剤では、EphB4マ−カ−をコ−ドする遺伝子の発現が阻害されていない製剤をコント
ロ−ルとして調製した。
【0065】
本実施例の結果の要約は、下記表1に示す通りである。
【0066】
【表1】
表中、「1」はコントロ−ルsiRNAでトランスフェクションし、注射前に刺激していな
いEPC;
「2」はコントロ−ルsiRNAでトランスフェクションし、注射前にエフリン−B2−Fcで
刺激したEPC;
「3」はEphB4 siRNAでトランスフェクションし、注射前に刺激していないEPC;
「4」はEphB4 siRNAでトランスフェクションし、注射前にエフリン−B2−Fcで刺激し
たEPC。
【0067】
投与した上記4種類の細胞製剤についての脈管形成スコア、血流フロ−およびキャピラ
リ−密度の測定は実質的には平行であることが判明した。
【0068】
その上、細胞製剤1、3および4の測定結果は実質的に同じであったが、細胞製剤2の
測定結果はほぼ40%高かった。
【0069】
前脈管形成活性がEphB4マ−カ−とエフリン−B2−Fcタンパク物質との関連によって促
進されることは仮説であるので、表1に示す細胞製剤1と4との結果を比較すると、コン
トロ−ルsiRNAを導入したがエフリン−B2−Fcタンパク物質と関連していない内皮プロジ
ェニタ−細胞の効果が、EphB4マ−カ−の発現を阻害させ、エフリン−B2−Fcタンパク物
質と関連させた内皮プロジェニタ−細胞の効果と実質的に均等であることは注目すべきで
ある。したがって、干渉RNAは、インヒビタ−の役割としての活性を有してなく、EphB4マ
−カ−を発現する内皮プロジェニタ−細胞、つまりEPCの活性が、そのマ−カ−を発現せ
ずかつエフリン−B2−Fcタンパク物質と関連させた内皮プロジェニタ−細胞、つまりEPC
の活性よりも高くないことが示されている。
【0070】
さらに、細胞製剤1および3の測定結果を比較すると、EpHB4マ−カ−を発現するかま
たは発現しない内皮プロジェニタ−細胞EPC単独では相当の活性を有することが示されて
いる。
【0071】
その上、最も重要な側面として、細胞製剤2とその他の製剤との測定結果の比較からし
て、EphB4マ−カ−とエフリン−B2−Fcタンパク物質との特異的関連によって、相当の前
脈管形成活性を有していることが示されている。