(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セラミック基板の一方の主面に、接合層を介して回路部材が設けられてなる回路基板であって、前記接合層は、前記回路部材が搭載される搭載部と露出部とからなり、該露出部の表面に空隙を備え、該空隙の重心間距離の分散度の平均値が3以上55以下であることを特徴とする回路基板。
前記セラミック基板の一方の主面に、前記回路部材と前記接合層とを1組として、複数組が設けられてなり、隣り合う前記回路部材の端面間の間隔に対する前記端面間におけるそれぞれの前記露出部の長さの合計の比率が25%以上38%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板。
前記搭載部は、銀および銅と、インジウム、亜鉛および錫から選択される少なくとも1種の元素Aと、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選択される少なくとも1種の元素Bと、モリブデン、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選択される少なくとも1種の元素Cとを含み、前記銀、前記銅、前記元素A、前記元素Bおよび前記元素Cの含有量の合計100質量%のうち、前記銅の含有量が35質量%以上50質量%以下、前記元素Aの含有量が0.5質量%以上22質量%以下、前記元素Bの含有量が1質量%以上8質量%以下、前記元素Cの含有量が9.5質量%以上11.5質量%以下であり、残部が前記銀からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回路基板。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本実施形態の回路基板および電子装置について図面を用いて説明する。なお、以降の図において同じ部材については、同じ符号を付す。
【0013】
図1は、本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線での断面図であり、(c)は露出部の一部を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【0014】
図1に示す本実施形態の回路基板10は、セラミック基板1と、接合層2と、回路部材3とを備え、セラミック基板1の一方の主面に、接合層2を介して回路部材3が設けられてなるものである。そして、接合層2は、ろう材が熱処理されてなるものであり、回路部材3が搭載される搭載部2bと露出部2aとからなる。なお、露出部2aとは、接合層2において、搭載部2bを除く領域のことである。そして露出部2aは、
図1(c)の露出部2aの表面の一部を走査型電子顕微鏡で撮影した写真に示すように、表面に複数の空隙2cを備えている。なお、空隙2cとは、露出部2aの表面において開口しており、所望の深さを有するものである。
【0015】
そして、露出部2aの表面における空隙2cは、重心間距離の分散度(以下、単に分散度ともいう。)の平均値が3以上55以下である。このように、露出部2aの表面における空隙2cの分散度の平均値が3以上55以下であることにより、冷熱サイクルによって露出部2aにクラックが生じたとしても、空隙2cの存在によりクラックの進展を抑制することができる。それ故、本実施形態の回路基板10は、高い接合強度を有する。また、クラックの進展が抑制されていることにより、露出部2aを構成する粒子の脱落も抑制されることとなるため、例えば、回路の短絡などの不具合をも抑制することができる。
【0016】
ここで、分散度とは、重心間距離法と呼ばれる手法により求められるものであり、空隙2c間の重心間距離の標準偏差を、空隙2cの重心間距離の平均値で除すことによって求められる値である。ここで分散度とは、空隙2cのばらつき度合いを示す指標であり、空隙2cの数が同じ場合において、分散度の値が小さければ、空隙2c間の重心間距離が均等であり、空隙2cが均一に分散していることを示し、分散度の値が大きければ、空隙2c間の重心間距離がばらついて、空隙2cの分散が不均一であることを示す。なお、分散度が、空隙2c間の重心間距離の標準偏差を、空隙2cの重心間距離の平均値で除すというものであることから、空隙2cの個数が少なく、重心間距離が離れている場合、分散度は小さい値を示す。
【0017】
それ故、分散度の平均値が3未満では、空隙2cの数が少なく、また空隙2c間の距離が長いため、クラックの進展を抑制する効果が減少する。また、分散度の平均値が55を超えるときには、空隙2cのばらつきが大きいため、空隙2c間の距離が長い部分においてクラックの進展を抑制することができなくなる。
【0018】
次に、空隙2cの分散度の平均値の算出にあたっては、走査型電子顕微鏡(SEM)により露出部2aの表面を撮影した画像を画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製、なお、以降に画像解析ソフト「A像くん」と記した場合、旭化成エンジニアリング(株)製の画像解析ソフトを示すものとする。)を用いて重心間距離法という手法で解析すればよい。
【0019】
そして、SEMによる観察においては、倍率を200倍とし、露出部2aの空隙2cが平均的に観察される部分から、面積が1×10
4μm
2〜4×10
4μm
2(例えば、縦方向および横方向の長さがそれぞれ100μm〜200μm)となる範囲の4〜6箇所を対象とすればよい。この手法の設定条件としては、例えば、明度を暗、2値化の方法を手動、小図形除去面積を5μm
2、画像の明暗を示す指標であるしきい値を60と設定すればよい。
【0020】
なお、この設定条件において、2μm以下の空隙2cについては除外され、本実施形態の回路基板10における露出面2aの空隙2cの最大値は30μm程である。また、平均的に観察される部分との記載は、特異な領域を敢えて選択するということを排除するための記載である。
【0021】
また、空隙2cは、円相当径での平均値が4μm以上12μm以下であることが好適である。空隙2cの円相当径での平均値が4μm以上12μm以下であるときには、高い接合強度を有しつつ、冷熱サイクルによるクラックの進展を抑制することができる。
【0022】
なお、空隙2cの円相当径の平均値の算出にあたっては、SEMにより露出部2aの表面を撮影した画像を画像解析ソフト「A像くん」を用いて粒子解析という手法で解析すればよい。なお、観察領域や設定条件については、空隙2cの円相当径の測定時と同様とすればよい。
【0023】
次に、本実施形態の回路基板に、複数の回路部材を用いた例について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態の回路基板の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線での断面図である。
【0025】
本実施形態の回路基板20は、セラミック基板1の一方の主面において、回路部材3と接合層2とを1組として、複数組が設けられてなり、このような構成は、
図1に示す回路基板10と比べ、多機能・省スペース化の点で好適である。
【0026】
そして、このような構成において、隣り合う回路部材3の端面間の間隔L
0に対する端面間における露出部2aの長さL
1、L
2の合計の比率が25%以上38%以下であることが好適である。
【0027】
隣り合う回路部材3の端面間の間隔L
0に対する端面間における露出部2aの長さL
1、L
2の合計の比率が25%以上38%以下であるときには、回路部材3の端面間において、セラミック基板1の主面上に沿って生じる沿面放電の発生を抑制しつつ、露出部2aを有していることによる接合強度の向上および冷熱サイクルによるクラックの進展抑制を図ることができるため、回路基板20の信頼性が向上する。なお、隣り合う回路部材3の端面間の間隔L
0は、例えば、0.8mm以上2.2mm以下である。
【0028】
図3は、本実施形態の回路基板のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線での断面図である。
【0029】
図3に示す、本実施形態の回路基板30は、
図2に示した回路基板20と平面視したときの接合層2の形状が異なるものを示したものであり、接合層2が
図3に示すような形状であるとき、露出部2aの長さL
1、L
2は、端面間においてそれぞれの露出部2aの最短距離となる部分の長さを測定すればよい。
【0030】
図4は、本実施形態の回路基板のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D’線での断面図であり、(c)は(a)に示す回路部材の拡大図である。
【0031】
図4に示す、本実施形態の回路基板40は、平面視して矩形状の回路部材3の四方の端面が湾曲して角錐台状となっているものであり、その他の構成は回路基板20と同様の構成としている。
【0032】
図4に示すように、回路部材3の端面が湾曲している場合には、隣り合う回路部材3の端面間の間隔L
0は、回路部材3間において最短距離となる部分の長さとすればよい
また、回路部材3の端面の湾曲度は、8%以上22%以下であることが好適である。ここで、湾曲度とは、
図4(c)に示すように、湾曲している端面の両端を結ぶ直線の距離をx、この直線から最も湾曲している部分までの法線方向の距離をyとしたとき、y/x×100という計算式で表される値であり、光学顕微鏡等を用い、回路部材3の側面または断面について、100倍以上200倍以下の倍率の画像を用いて求めることができる。
【0033】
湾曲度が8%以上22%以下であるときには、放熱特性を維持しつつ、回路部材3の端面の延長線上にあたるセラミック基板1の部位に掛かる応力集中を緩和することができるため、クラックが生じにくくなる。
【0034】
以下に、本実施形態の回路部材を構成する部材について
図1において付した符号により説明する。
【0035】
まず、接合層2は、銀および銅が、接合層2を構成する全成分100質量%のうち、50質量%以上含むものであることが好適である。また、インジウム、亜鉛および錫から選ばれる1種の元素Aと、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種の元素Bとを含有することが好ましい。
【0036】
接合層2に含まれる元素Aは、接合層2となるろう材に含まれる成分であり、インジウム、亜鉛および錫から選択される少なくとも1種からなる元素Aは、融点が低く溶融しやすく、接合時における流れ性を良好することができるため、接合層2とセラミック基板1または回路部材3との間に生じる隙間を減少させることができる。この隙間の有無については、超音波探傷法により確認することができる。
【0037】
また、接合層2に含まれる元素Bは、接合層2となるろう材に含まれる成分であり、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選択される少なくとも1種からなる元素Bは、セラミック基板1および回路部材3との濡れ性が良好であるとともに、セラミック基板1に含まれる成分と元素Bとの反応によって、セラミック基板1と回路部材3とを強固に接合することができる。セラミック基板1と回路部材3との接合強度については、JIS C 6481−1996(IEC 249−1(1982))に準拠して引きはがし強さを測定することにより確認することができる。
【0038】
接合層2は、銀、銅、元素Aおよび元素Bに加えて、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選択される少なくとも1種からなる元素Cを含有してもよい。
【0039】
接合層2に元素Cを含む、すなわち、ろう材に元素Cを含むときには、モリブデン、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選択される少なくとも1種からなる元素Cは、融点が高く溶融しにくく、接合時においてろう材の粘性が高くなり過ぎるのを抑えることができるため、露出部2aが広がり過ぎたり、他の接合層と繋がったりするといった不要なはみ出しを抑制することができる。
【0040】
そして、接合層2とセラミック基板1または回路部材3との間に生じる隙間が少なく、セラミック基板1と回路部材3とを強固に接合することができ、不要なはみ出しを抑制するには、接合層2は、銀、銅、元素A、元素Bおよび元素Cを含み、これらの含有量の合計100質量%のうち、銅の含有量が35質量%以上50質量%以下、元素Aが0.1質量%以上22質量%以下、元素Bが1質量%以上8質量%以下、元素Cが9.5質量%以上11.5質量%以下であり、残部が銀からなることが好適である。この接合層2を構成する成分の同定および含有量の確認にあたっては、接合層2における搭載部2bにおいて行ない、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置を用いることにより確認することができる。
【0041】
次に、本実施形態の回路基板10において、回路部材3は、金属成分を主成分とする。なお、本実施形態の回路部材3における主成分とは、回路部材3を構成する全成分100質量%のうち、70質量%以上占める成分をいう。
【0042】
より具体的には、銅を用いるのが好ましく、銅の含有量が90質量%以上であり、銅の含有量が多い、無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれかからなることが好適である。特に、無酸素銅のうち、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれかからなることが好適である。このように、回路部材3が、銅の含有量が多いものからなるときには、高い熱伝導率により放熱特性に優れているとともに、電気抵抗が低いことにより回路特性(電子部品の発熱を抑制し電力損失を少なくする特性)に優れたものとなる。また、銅の含有量が多いときには、降伏応力が低くなり、加熱すると塑性変形しやすくなるため、回路部材3の接合強度が上がり、より信頼性が高くなる。
【0043】
また、本実施形態の回路基板10に用いるセラミック基板1については、例えば、窒化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化硼素質焼結体、炭化珪素質焼結体、炭化硼素質焼結体、酸化アルミニウム質焼結体および酸化ジルコニウム質焼結体のいずれかであることが好適である。なお、窒化珪素質焼結体を例に挙げれば、窒化珪素質焼結体とは、窒化珪素が主成分である焼結体であり、ここで主成分とは、焼結体を構成する全成分100質量%のうち、70質量%以上を占める成分のことをいう。
【0044】
また、本実施形態の回路基板10に用いるセラミック基板1としては、耐電圧性および耐熱衝撃性が高いことから、窒化珪素質焼結体を用いることが好適である。
【0045】
セラミック基板1が窒化珪素質焼結体からなり、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が、1mm
2当たりに50個以上200個以下存在することが好適である。このような構成を満たしているときには、接合時に、接合層2となるろう材に含まれる金属成分が白点に浸入して、強いアンカー効果が得られるため、接合強度を高くすることができる。なお、上記構成によれば、白点に浸入する金属成分の量は少なく、セラミック基板1は高い絶縁耐力有しているものであることから、絶縁破壊しにくいものでありながら、回路部材3との接合強度の高い回路基板10とすることができる。
【0046】
また、上記構成において、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上であることが好適である。
【0047】
このような構成を満たしているるときには、それぞれの白点に浸入した金属成分による放電が抑制されるため、絶縁耐力の低下を抑制することができる。なお、隣り合う白点間の距離の平均値とは、それぞれの白点の重心間距離の平均値と、測定する範囲内の白点の円相当径の平均値とを求め、重心間距離の平均値から円相当径の平均値を差し引いた値のことである。
【0048】
また、白点における凹凸度が1.1以上2.9以下であることが好適である。ここで、凹凸度とは、白点の輪郭の凹凸の度合いを示すものであり、数値が大きいほど、輪郭に凹凸が多く存在するということである。そして、白点の凹凸度が1.1以上2.9以下であるときには、回路部材2を接合するろう材の塗布等において、白点の輪郭から欠けが生じることを抑制しつつ、回路部材2との接合強度を向上させることができる。
【0049】
また、白点における円形度が0.7以上0.9以下であることが好適である。ここで、円形度とは、数値が大きいほど、白点の輪郭が真円に近づき、真円の円形度は1である。そして、白点における円形度が0.7以上0.9以下であるときには、回路部材2を接合するろう材の塗布等において、白点の輪郭から欠けが生じることを抑制しつつ、回路部材2との接合強度を向上させることができる。
【0050】
次に、円相当径が2μm以上30μm以下の白点の1mm
2当たりの個数、白点の凹凸度および円形度の求め方について説明する。まず、セラミック基板1の主面を研磨して鏡面に加工する。そして、鏡面に研磨加工した面を測定面とし、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察し、例えば、面積が1.2mm
2(横方向の長さが1.2mm、縦方向の長さが1mm)となる範囲をCCDカメラを用いて暗視野で撮影する。次に、撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、面積が1.2mm
2における2μm以上30μm以下の白点の個数、観察された白点の凹凸度および円形度を求めることができる。そして、円相当径が2μm以上30μm以下の白点の1mm
2当たりの個数については、1mm
2当たりの個数に換算すればよい。
【0051】
また、隣り合う白点間の距離の平均値については、上述したものと同じ画像を用いて、まず、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の円相当径の平均値を求め、次に、重心間距離法という手法で解析することによって白点の重心間距離の平均値を求める。そして、白点の重心間距離の平均値から白点の円相当径の平均値を差し引くことにより、隣り合う白点間の距離の平均値を求めることができる。
【0052】
そして、粒子解析および重心間距離法というこれらの手法における設定条件としては、ともに、例えば、明度を明、2値化の方法を手動、小図形除去面積を0μm
2、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1倍以上1.4倍以下とすればよい。
【0053】
次に、本実施形態の電子装置について、
図5を用いて説明する。
【0054】
図5は、本実施形態の電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のE−E’線での断面図である。
【0055】
図5に示す例の電子装置Sは、本実施形態の回路基板10の回路部材3上に半導体素子等の電子部品5が搭載されたものである。
【0056】
この電子装置Sによれば、回路基板10との接合強度が高い回路部材3上に電子部品5が載置されていることから、信頼性の高い電子装置Sとすることができる。なお、
図5においては、回路部材3が1つの例を示したが、
図2〜4に示すように、複数個の回路部材3を使用しても構わない。
【0057】
次に、本実施形態の回路基板の製造方法の一例について、
図1を基に説明する。
【0058】
図1に示す例の回路基板10を得るには、まず、セラミック基板1および回路部材3となる銅を主成分とするブロックを準備する。また、インジウム、亜鉛および錫から選択される少なくとも1種からなる元素Aと、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選択される少なくとも1種からなる元素Bとを含有する、銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペースト状のろう材を準備する。
【0059】
また、上記ろう材には、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選択される少なくとも1種からなる元素Cを含むものであってもよい。
【0060】
そして、ろう材が別処理されてなる接合層2において、銀、銅、元素A、元素Bおよび元素Cを含むものであるとき、銀、銅、元素A、元素Bおよび元素Cの含有量の合計100質量%のうち、銅の含有量が35質量%以上50質量%以下、元素Aの含有量が0.5質量%以上22質量%以下、元素Bの含有量が1質量%以上8質量%以下、元素Cの含有量が9.5質量%以上11.5質量%以下であり、残部が銀からなるものとするには、ろう材の質量比率を接合層2の質量比率と同じものとすればよい。
【0061】
そして、セラミック基板1の一方の主面上に、スクリーン印刷法、ロールコーター法および刷毛塗り法等のいずれかによりろう材を塗布し、塗布したろう材上に、回路部材3となる銅を主成分とするブロックを配置する。その後、真空雰囲気中、800℃以上900℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、セラミック基板1にブロックを接合する。
【0062】
次に、ブロックの主面の所望の位置に、塗布したろう材よりも小さい領域となるレジストを印刷し、120℃以上150℃以下でレジストを乾燥させて、硝弗硫酸、弗硝酸、塩酸または塩化第2鉄水溶液等によってエッチングすることにより、ブロックにレジストが印刷されていない部分が除去されて、回路部材3が形成され、除去されたブロックが位置した場所の接合層2が露出面2aとなる。そして、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いてレジストを剥離して、洗浄することにより、本実施形態の回路基板10を得ることができる。
【0063】
ここで、露出部2aの表面に複数の空隙2cを備え、空隙2cの分散度の平均値が3以上55以下である回路基板10を得るには、エッチングする温度を40℃以上50℃以下とし、エッチングする時間を60分以上110分以下とすればよい。
【0064】
また、空隙2cの円相当径での平均値が4μm以上12μm以下である回路基板10を得るには、エッチングする温度を上述した温度と同じにしてエッチングする時間を70分以上100分以下とすればよい。
【0065】
また、分割後に複数のセラミック基板1を得ることが可能な大きさの基板を用準備し、複数の所望の位置にろう材を塗布して、この上にすべてのろう材を覆う大きさの銅を主成分とするブロックを接合し、ブロックの主面の所望の位置にレジストを印刷した後にエッチングを行ない、基板を切断して分割すれば、複数の本実施形態の回路基板10を容易に得ることができる。また、セラミック基板1に接合する回路部材3の数、平面視したときのろう材の塗布形状、接合するブロックの形状を変更すれば、本実施形態の回路基板20〜40を得ることができる。
【0066】
なお、回路部材3の厚みは、例えば、0.5mm以上5mm以下であり、接合層2における搭載部2bの厚みは、例えば、5μm以上60μm以下である。
【0067】
また、セラミック基板1の一方の主面に、回路部材3と接合層2とを1組として、複数組が設けられてなり、隣り合う回路部材3の端面間の間隔のうち、端面間における露出部2aの長さの合計を25%以上38%以下とするには、ろう材を塗布する位置およびブロックの主面に印刷するレジストの位置で調整すればよい。
【0068】
次に、セラミック基板1が窒化珪素質焼結体(以下、窒化珪素質基板と記載する。)からなる例について説明する。円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が、1mm
2当たりに50個以上200個以下存在する窒化珪素質基板を得るには、まず、β化率が20%以下であって、純度が98%以上である窒化珪素の粉末と、添加成分として酸化マグネシウム(MgO)および希土類金属の酸化物(例えば、Sc
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Ce
2O
3、Pr
6O
11、Nd
2O
3、Pm
2O
3、Sm
2O
3、Eu
2O
3、Gd
2O
3、Tb
2O
3、Dy
2O
3、Ho
2O
3、Er
2O
3、Tm
2O
3、Yb
2O
3およびLu
2O
3の少なくともいずれか1種)の各粉末とを、バレルミル、回転ミル、振動ミル、ビーズミル、サンドミルおよびアジテーターミル等の混合装置を用いて、水とともに湿式混合し、粉砕してスラリーを作製する。
【0069】
ここで、具体的な調合量としては、酸化マグネシウムの粉末の添加量が1質量%以上2質量%以下であり、希土類金属の酸化物の粉末の添加量が2質量%以上4質量%以下であり、残部が窒化珪素の粉末である。
【0070】
なお、窒化珪素質基板において、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点を、1mm
2当たりに50個以上200個以下存在させるには、窒化珪素質基板中に含まれるカルシウムの含有量が2質量ppm以上100質量ppm以下となるように、カルシウム粉末を添加すればよい。
【0071】
また、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上である窒化珪素質基板を得るには、窒化珪素の粉末および添加成分の各粉末の合計100質量部に対して、分散剤を2.5質量部添加すればよい。
【0072】
また、白点の凹凸度が1.1以上2.9以下である窒化珪素質基板を得るには、混合装置による混合・粉砕時間を、例えば、24時間以上72時間以下とすればよい。さらに、白点の円形度が0.7以上0.9以下である窒化珪素質基板を得るには、混合装置による混合・粉砕時間を、例えば、36時間以上60時間以下とすればよい。
【0073】
また、他の調合例としては、酸化マグネシウムの粉末の添加量が2質量%以上6質量%以下であり、希土類金属の酸化物の粉末の添加量が12質量%以上16質量%以下であり、酸化アルミニウムの粉末の添加量が0.1質量%以上0.5質量%以下であり、残部が窒化珪素の粉末である。
【0074】
次に、得られたスラリーに有機バインダを加えて混合した後、噴霧乾燥することにより、窒化珪素を主成分とする顆粒を得る。そして、顆粒を用いて、粉末圧延法により成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断することにより、成形体を得る。あるいは、粉末圧延法に代えて、加圧成形法を用い、窒化珪素質顆粒を成形型に充填してから加圧することによって成形体を得る。
【0075】
次に、得られた成形体を、窒化珪素質焼結体からなるこう鉢に入れて、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉を用いて焼成する。なお、このとき、成形体100質量部に対して、2質量部以上10質量部未満の量の成形体と組成の近似した共材を、成形体の周囲に配置して焼成することにより、成形体の含有成分の揮発を抑制することができる。
【0076】
また、焼成条件については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガスを導入して、窒素分圧を15〜900kPaに維持する。そして、さらに昇温を進め、1640℃以上1750℃以下で4時間以上10時間以下保持した後、170℃/時間以上230℃/時間以下の降温速度で冷却することによって、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が、1mm
2当たりに50個以上200個以下存在する窒化珪素質基板を得ることができる。
【0077】
なお、本実施形態の説明においては、セラミック基板1の一方の主面に回路部材3を備える回路基板10〜40および電子装置Sについて説明したが、セラミック基板1の他方の主面に放熱部材を備えてもよい。
【0078】
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0079】
まず、窒化珪素質基板を準備した。また、回路部材となるブロックを準備した。さらに、錫、チタンおよびモリブデンを含有する、銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペースト状のろう材を準備した。ここで、銀、銅、錫、チタンおよびモリブデンの各含有量は、これらの元素の含有量の合計100質量%のうち、銀を51.9質量%、銅を40質量%、錫を2.6質量%、チタンを2.5質量%、モリブデンを3.0質量%とした。
【0080】
そして、窒化珪素質基板を850℃で熱処理することによって、窒化珪素質基板の表面に付着した有機物や残留炭素を除去した後、窒化珪素質基板の一方の主面上に、準備したろう材をスクリーン印刷法で塗布し、ろう材上に回路部材となる無酸素銅からなるブロックを配置した。その後、真空雰囲気中、840℃で加熱し、同時に30MPaの圧力を加えることによって、窒化珪素質基板にブロックを接合した。
【0081】
次に、ブロックの主面の所望の位置にレジストを印刷し、140℃でレジストを乾燥させて、塩化第2鉄を28.4質量%〜32.4質量%の範囲で含む塩化第2鉄水溶液によってエッチングを行なった。なお、エッチングする温度は45℃とし、エッチングする時間は、表1に示す通りとした。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジストを剥離して洗浄し、窒化珪素質基板の一方の主面上に回路部材が1つ設けられた試料No.1〜7を得た。なお、平面視した構成は
図1に示す回路部材と同じものであり、回路部材の端面からの露出部の長さは、0.2mmとした。
【0082】
そして、露出部における空隙の分散度の平均値を求めるために、露出部の空隙が平均的に観察される部分から、SEMを用いて200倍の倍率として、面積が4×10
4μm
2(縦方向および横方向の長さがそれぞれ200μm)となる範囲を5箇所選択して、画像解析ソフト「A像くん」における重心間距離法という手法で解析することにより、空隙の分散度の平均値を求めた。また、同様に、画像解析ソフト「A像くん」を用いて、粒子解析という手法で解析し、解析によって得られた空隙の円相当径の平均値を表1に示した。
【0083】
なお、解析時の設定条件としては、いずれも粒子の明度を暗、2値化の方法を手動、小図形除去面積を5μm、画像の明暗を示す指標であるしきい値を60とした。
【0084】
次に、各試料につき、回路基板のヒートサイクル試験を行なった。なお、1サイクルは、室温から−45℃に降温して15分保持してから、昇温して125℃で15分保持した後、室温まで降温するというサイクルとし、3500サイクル経過した後に、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で露出部の表面に生じた最も長いクラックの長さを測定し、その値を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示す通り、試料No.2〜6は、試料No.1、7よりも、3500サイクル経過後における最も長いクラックの長さが短かった。これにより、空隙の分散度の平均値が3以上55以下であることにより、ヒートサイクルに曝されてもクラックの進展を抑制できることがわかった。
【0087】
また、試料No.3〜5は、試料No.2、6よりも、3500サイクル経過後における最も長いクラックの長さが短い結果が得られており、空隙の円相当径での平均値が4μm以上12μm以下であることにより、さらにクラックの進展を抑制できることがわかった。
【0088】
また、試料No.1〜7において、回路部材と窒化珪素質基板との接合強度を確認するために、3500回のヒートサイクル試験後における試料を用いて、JIS C 6481−1996に準拠して引きはがし強さを測定したところ、試料No.2〜6は、試料No.1、7よりも良好な結果が得られた。
【実施例2】
【0089】
回路部材となるブロックを2個準備し、回路基板の端面間の間隔および露出面の長さ等を表2に示す値としたこと、エッチングする温度を45℃、時間を80分としたこと以外は、実施例1で示した方法と同様の方法により、試料No.8〜12を得た。なお、露出部における空隙の分散度の平均値は29.0であった。
【0090】
ここで、表2に示す、回路基板の端面間の間隔L
0、露出部の長さL
1、L
2の値は、いずれも光学顕微鏡を用いて、100倍の倍率で測定した。
【0091】
そして、実施例1と同様の方法により、3500回のヒートサイクル試験を行ない、その後、JIS C 6481−1996に準拠して引きはがし強さを測定した。また、隣り合う回路部材間の絶縁破壊の強さを、JIS C 2110−1:2010に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示す通り、試料No.9〜11は、試料No.8よりも引きはがし強さの値が大きく、試料No.12よりも絶縁破壊の強さが大きかった。この結果より、隣り合う回路部材の端面間の間隔に対する端面間におけるそれぞれの露出部の長さの合計の比率が25%以上38%以下であることにより、信頼性の高い回路基板となることがわかった。
【実施例3】
【0094】
接合層に含まれるこれらの元素の含有量の合計100質量%のうち、銀、銅、元素A、元素B、元素Cの各含有量が、表3に示す通りとなるろう材を用いて、窒化珪素質基板に2個のブロックの接合を行なった。なお、ろう材塗布時の塗布量等の条件および接合時の条件(真空雰囲気中、850℃、40MPa加圧)については、すべて同じとした。
【0095】
そして、はみ出し長さ、空隙率、引き剥がし強さについて評価した。まず、はみ出し長さについては、接合層間の距離が最も長かった試料No.22、23を基準とし、この基準値との接合層間の距離の長さの差をはみ出し長さとして表3に示した。
【0096】
また、空隙率については、窒化珪素質基板に接合されている回路部材の主面の面積S
oと、この面積S
oにおける窒化珪素質基板と接合層との間に生じている空隙の合計面積S
vとから、S
v/S
o×100で求めたものであり、S
vについては、超音波探傷法により求めることができる。ここで、超音波探傷法の測定条件は、探傷周波数を50MHz、ゲインを30dB、スキャンピッチを100μmとした。
【0097】
また、引きはがし強さについては、JIS C 6481−1996に準拠して測定した。
【0098】
なお、接合層を構成する各元素の同定および含有量については、XRFを用いて行なった。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
表3に示す通り、元素A、元素Bおよび元素Cが、それぞれ錫、チタンおよびモリブデンであり、元素Aおよび元素Bの含有量が同じで、元素Cの含有量が異なる試料No.19〜23を比べると、試料No.20〜22は、接合層のはみ出しが少なく、窒化珪素質基板と接合層との間に空隙が少なかった。
【0101】
また、元素A、元素Bおよび元素Cが、それぞれ錫、チタンおよびモリブデンであり、元素Aおよび元素Cの含有量が同じで、元素Bの含有量が異なる試料No.17、18、21、24〜26を比べると、試料No.18、21、24、25は、接合強度が高かった。
【0102】
また、元素A、元素Bおよび元素Cが、それぞれ錫、チタンおよびモリブデンであり、元素Bおよび元素Cの含有量が同じで、元素Aの含有量が異なる試料No.15、16、21、27〜29を比べると、試料No.16、21、27、28は、接合層のはみ出しが少なかった。
【0103】
この結果より、はみ出しや空隙が少なく、接合強度の高い接合層とするには、元素Aが0.5質量%以上22質量%以下であり、元素Bが1質量%以上8質量%以下であり、元素Cが9.5質量%以上11.5質量%以下であることが好適であることがわかった。
【0104】
また、元素A、元素Bおよび元素Cが、それぞれ錫、チタンおよびモリブデンであり、元素A、元素Bおよび元素Cの含有量が同じで、銅の含有量が異なる試料No.13、14、21、30、31を比べると、試料No.13、21、30は、空隙がない上、接合強度が十分確保され、はみ出しが少なく、銅の含有量は、35質量%以上50質量%以下であることが好適であるとわかった。
【実施例4】
【0105】
まず、β化率が10%(即ち、α化率が90%)、純度が98%である窒化珪素の粉末と、添加成分として酸化マグネシウム(MgO)、酸化エルビウム(Er
2O
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)および酸化モリブデン(MoO
3)の各粉末を、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D
90)が1μm以下となるまで混合・粉砕してスラリーとした。なお、このとき、表4に示す含有量となるカルシウム粉末についても添加した。
【0106】
ここで、上記各粉末の含有量は、焼結体を構成する全成分100質量%のうち、マグネシウムを酸化物換算(MgO)で2.5質量%、エルビウムを酸化物換算(Er
2O
3)で14質量%、アルミニウムを酸化物換算(Al
2O
3)で0.3質量%、モリブデンを酸化物換算(MoO
3)で0.5質量%となるようにそれぞれ秤量した。
【0107】
次に、得られたスラリーに有機バインダを加えて混合した後、噴霧乾燥することにより、窒化珪素質顆粒を得た。そして、窒化珪素質顆粒を用いて、粉末圧延法により成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断することにより、平板状の成形体を得た。
【0108】
次に、得られた成形体を、窒化珪素質焼結体からなるこう鉢に入れて、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に入れて焼成した。なお、このとき、成形体100質量部に対して6質量部の共材(窒化珪素、酸化マグネシウムおよび希土類金属の酸化物等の成分を含む。)を、成形体の周囲に配置した状態で焼成した。
【0109】
焼成条件については、室温から1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガスを導入して、窒素分圧を100kPaに維持した。そして、焼成炉内の温度を上げて1690℃で5時間保持した。そして、降温速度を200℃/時間として冷却することによって、窒化珪素質基板を得た。
【0110】
そして、各試料につき、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点の1mm
2当たりの個数を測定するために、まず、主面を鏡面に研磨加工した面を測定面とし、光学顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察し、面積が1.2mm
2(横方向の長さが1.2mm、縦方向の長さが1mm)となる範囲をCCDカメラを用いて暗視野で撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することによって求め、1mm
2当たりの個数に換算した。
【0111】
ここで、この手法の設定条件としては、明度を明、2値化の方法を手動、小図形除去面積を0μm
2、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1.2倍とした。
【0112】
次に、各試料の絶縁耐力を評価するために、各試料の絶縁破壊の強さ(MV/m)をJIS C 2141−1992(IEC 672-2(1980))に準拠して測定し、その値を表1に示した。なお、各試料に形成する電極の材質は黄銅とし、各試料の周囲媒質としてシリコーン油を用いた。
【0113】
次に、各試料である窒化珪素質基板を用いて、実施例1の試料No.4と同様の方法により、回路基板を形成し、窒化珪素質基板と回路部材との引きはがし強さ(kN/m)をJIS C 6481−1996に準拠して測定することにより、接合強度を評価した。結果を表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
表4に示す通り、試料No.44〜48は、窒化珪素質基板が高い絶縁耐力を有するものでありながら、窒化珪素質基板と回路部材との接合強度が高かった。これにより、窒化珪素質基板において、円相当径が2μm以上30μm以下の大きさの白点が、1mm
2当たりに50個以上200個以下存在することが好適であることがわかった。
【実施例5】
【0116】
実施例4と同様に、窒化珪素の粉末と、添加成分として、酸化マグネシウム粉末、酸化エルビウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化モリブデン粉末を用い、実施例4と同様の添加量で秤量した。また、窒化珪素質基板における含有量が5ppmとなるカルシウム粉末も添加し、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D
90)が1μm以下となるまで粉砕してスラリーとした。なお、この粉砕にあたっては、窒化珪素粉末および添加成分の各粉末の合計100質量部に対して、表5に示す量の分散剤(カルボキシル基含有水溶性重合体)を添加した。そして、以降の工程については、実施例4に示した方法と同じ方法により窒化珪素質基板を得た。
【0117】
そして、隣り合う白点間の距離の平均値を求めるため、まず、実施例4と同様の方法により撮影した画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」による粒子解析という手法で解析することにより、白点の円相当径の平均値を求め、次に、重心間距離法という手法で解析することによって白点の重心間距離の平均値を求めた。そして、白点の重心間距離の平均値から白点の円相当径の平均値を差し引くことにより、隣り合う白点間の距離の平均値を求めた。なお、設定条件は、実施例4と同様とした。
【0118】
また、各試料の絶縁耐力は、実施例4で示した方法と同じ方法を用いて絶縁破壊の強さ(MV/m)を測定した。結果を表5に示す。
【0119】
【表5】
【0120】
表5に示す通り、試料No.51〜53は、絶縁破壊の強さの値として大きな値が得られており、高い絶縁耐力を有するものとするには、隣り合う白点間の距離の平均値が4μm以上であることが好適であることがわかった。