特許第6235706号(P6235706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235706難燃性と透明性に優れた熱可塑性共重合体樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235706
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】難燃性と透明性に優れた熱可塑性共重合体樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20171113BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20171113BHJP
   C08G 64/08 20060101ALI20171113BHJP
   C08G 77/48 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C08G81/00
   C08J5/00CEZ
   C08G64/08
   !C08G77/48
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-521191(P2016-521191)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公表番号】特表2016-524646(P2016-524646A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】KR2014005241
(87)【国際公開番号】WO2014204146
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0068931
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515349788
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】リ,ホンチョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨンド
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミラン
(72)【発明者】
【氏名】スン,キョンモ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/122767(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/066000(WO,A1)
【文献】 特開2012−153824(JP,A)
【文献】 特開2011−144219(JP,A)
【文献】 特開2012−236926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00−81/02
64/00−64/42
77/00−77/62
C08J 5/00−5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサン、及び
【化1】
[式中、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表し、
は、独立して、炭素数1〜13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
は、独立して、炭素数2〜8のアルキレン基を表し、
mは、独立して、0〜4の整数を表し、
nは独立に1〜200の整数を表し、
Aは、下記の式(2)又は(3)の構造を表し、
【化2】
式中、Xは、Y又はNH−Y−NHを表し、ここで、Yは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状脂肪族基、シクロアルキレン基、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくはカルボキシ基で置換された又は非置換の炭素数6〜30の単核又は多核のアリーレン基を表し、
【化3】
式中、Rは、炭素数6〜30の芳香族若しくは芳香族/脂肪族混合型炭化水素基を表すか、又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。]
分岐状ポリカーボネートブロックを繰り返し単位として含有してなる、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体であって、
前記分岐状ポリカーボネートブロックが、分岐状ポリカーボネートオリゴマーを前記式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンと反応させることによって、共重合体内に導入されたものであ
分岐状ポリカーボネートオリゴマーが、オリゴマー性ポリカーボネートに分岐剤を添加し、反応させて製造されたものであり、
分岐剤が、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、メリト酸、トリメリット酸、トリメリット酸クロリド、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、レソルシル酸、レゾルシンアルデヒド、trimellitiltrichloride、2,4,4−トリメチル−2,4−7−トリヒドロキシフラボン、フロログルシン、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項2】
Aが、式(2)の構造を表すことを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項3】
Aが、式(3)の構造を表すことを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項4】
分岐状ポリカーボネートオリゴマーが、オリゴマー性ポリカーボネートに分岐剤を投入し、反応して製造されたものであるか、又は、二価フェノール類化合物及びホスゲンを分岐剤と共に混合するホスゲン法で製造されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項5】
分岐剤が、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH)、酸ハロゲン(−COCI)及びホルミル基(−CHO)よりなる群から独立的に選択された分岐化官能基を3個以上有する有機化合物であることを特徴とする、請求項4に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項6】
分岐状ポリカーボネートオリゴマーの製造に用いられた二価フェノール類化合物量100mol%に対して、0.001〜15mol%の分岐剤が用いられることを特徴とする、請求項4に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項7】
分岐状ポリカーボネートオリゴマーが、800〜20,000の粘度平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項8】
式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサン:分岐状ポリカーボネートブロックの含量比が、重量比で0.1:1〜10:1であることを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項9】
ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体が、15,000〜200,000の粘度平均分子量(Mv)を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体。
【請求項10】
オリゴマー性ポリカーボネートに1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、メリト酸、トリメリット酸、トリメリット酸クロリド、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、レソルシル酸、レゾルシンアルデヒド、trimellitiltrichloride、2,4,4−トリメチル−2,4−7−トリヒドロキシフラボン、フロログルシン、及びこれらの混合物からなる群より選択される分岐剤を添加し、反応させて分岐状ポリカーボネートオリゴマーを製造する工程、及び
製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマーと、下記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンを共重合し、前記分岐状ポリカーボネートブロックを共重合体内に導入する工程、
【化4】
[式中、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表し、
は、独立して、炭素数1〜13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
は、独立して、炭素数2〜8のアルキレン基を表し、
mは、独立して、0〜4の整数を表し、
nは、独立して、1〜200の整数を表し、
Aは、下記の式(2)又は(3)の構造を表し、
【化5】
式中、Xは、Y又はNH−Y−NHを表し、ここで、Yは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状脂肪族基、シクロアルキレン基、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくはカルボキシ基で置換された又は非置換の炭素数6〜30の単核又は多核のアリーレン基を表し、
【化6】
式中、Rは、炭素数6〜30の芳香族若しくは芳香族/脂肪族混合型炭化水素基を表すか、又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。]
を含む、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
分岐状ポリカーボネートオリゴマーが、オリゴマー性ポリカーボネートに分岐剤を投入し、反応して製造されるか、又は、二価フェノール類化合物及びホスゲンを分岐剤と共に混合するホスゲン法で製造されることを特徴とする、請求項10に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9の何れか一項に記載のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性と透明性に優れた熱可塑性共重合体樹脂及びその製造方法に関する。詳しくは、特定構造のポリシロキサンと分岐化されたポリカーボネートオリゴマーを共重合して得られる、難燃性はもちろん、透明性、流動性、低温衝撃強度などの物性バランスに優れた熱可塑性共重合体樹脂、その製造方法及びこれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性(特に、衝撃強度)及び透明性に優れ、電気部品、機械部品及び産業用樹脂として広範囲に使われている。特に、電気電子分野の中で、熱が多く発散されるTVハウジング、コンピュータモニターハウジング、複写機、プリンター、ノートブック電池、リチウム電池のケース材料などとしてポリカーボネート樹脂を使用する場合には、耐熱性及び機械的物性だけでなく優れた難燃性が求められる。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与するために用いられる最も通常的な方法は、ポリカーボネート樹脂にハロゲン難燃剤である臭素系又は塩素系化合物を混合することである。しかし、ハロゲン難燃剤を使用する場合、火災発生時、難燃機能は十分に発揮されるが、樹脂加工中にハロゲン化水素ガスが発生し、金型の腐食と環境汚染の問題を引き起こすだけでなく、燃焼時、人体に有害な毒性ガスであるダイオキシンが生成されるので、これに対する使用規制の動きが拡大されつつある。
【0004】
このような規制に対処するために、非ハロゲン難燃剤としてアルカリ金属塩と、滴下防止剤(anti-dripping agent)としてフッ素化ポリオレフィン系樹脂とを同時に使用する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が開発された。しかし、この場合、ポリカーボネート樹脂の難燃性を確保するために使われる金属塩系難燃剤及びフッ素化エチレン系樹脂によって、ポリカーボネート樹脂の長所の一つである透明性が低下する問題が発生した。
【0005】
このような透明性の低下現象を克服するために、シリコン系添加物及びシリコン系共重合体との合金などが提案された。しかし、シリコン系添加物を使用する技術は、非ハロゲン難燃剤として環境への負荷が少ないという長所はあるが、透明性が依然として低調であり、比較的高価であり、外装材として使用時、様々な着色が制限されるという短所があった。さらに、大型射出品に適用するには、その流動性が足りず、大型製品への適用が制限される問題があった。
【0006】
特許文献1には、熱可塑性ポリカーボネート樹脂に芳香族スルホン化合物の金属塩とペルフルオロアルカンスルホン酸の金属塩とを添加し、透明性及び難燃性を改善した樹脂組成物が開示されている。しかし、この特許文献1に開示されたポリカーボネート樹脂組成物は、射出条件によって射出時、表面に気泡が発生するブルーム現象、耐熱度及び透明度低下などの短所がある。
【0007】
そこで、難燃性を十分に発揮しながら、同時に優れた透明性、流動性及び低温衝撃強度など調和のとれた物性を具現しうる新しいポリカーボネート系樹脂に対する開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国 公開特許公報 第2007−0070326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためのものであり、難燃性、透明性、流動性及び機械的強度(特に、低温衝撃強度)に優れた熱可塑性共重合体樹脂、その製造方法及びこれを含む成形品を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した技術的課題を達成するための本発明は、下記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンと分岐状ポリカーボネートブロックとを繰り返し単位として含むポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表し、
【0013】
は、独立して、炭素数1〜13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表し、
【0014】
は、独立して、炭素数2〜8のアルキレン基を表し、
【0015】
mは、独立して、0〜4の整数を表し、
【0016】
nは、独立して、1〜200の整数を表し、
【0017】
Aは、下記の式(2)又は(3)の構造を表し、
【0018】
【化2】
【0019】
式中、Xは、Y又はNH−Y−NHを表し、ここで、Yは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状脂肪族基、シクロアルキレン基、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくはカルボキシ基で置換された又は非置換の炭素数6〜30の単核又は多核のアリーレン基を表し、
【0020】
【化3】
【0021】
式中、Rは、炭素数6〜30の芳香族若しくは芳香族/脂肪族混合型炭化水素基を表すか、又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0022】
本発明の他の側面によれば、分岐状ポリカーボネートオリゴマーを製造する工程、及び製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマーと前記式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンとを共重合する工程を含む、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の側面によれば、前記ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を含む成形品が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、難燃性と透明性が顕著に優れると同時に、流動性、衝撃強度(特に、低温衝撃強度)などの物性バランスに優れ、事務機器及び電気電子製品のハウジングなど、難燃フィルム及びシートの製品を生産するのに有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使われた用語「反応生成物」は、二つ以上の反応物が反応して形成される物質を意味する。
【0026】
さらに、本明細書で記載された化学式において、水素、ハロゲン原子及び/又は炭化水素基などを代表して表現するために使われた英文字「R」は、数字として表示される下付きを有するが、前記「R」がこのような下付きにより限定されるものではない。前記「R」は、互いに独立して、水素、ハロゲン原子及び/又は炭化水素基などを表す。例えば、二つ以上の「R」が同じであるか、又は他の数字の下付きを有しているかに関係なく、この「R」は、同じ炭化水素基を表してもよく、他の炭化水素基を表してもよい。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(A)ヒドロキシ末端ポリシロキサン
【0029】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体に、繰り返し単位として含まれるヒドロキシ末端ポリシロキサンは、下記の式(1)で表される構造を有する。
【0030】
【化4】
【0031】
式中、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。例えば、前記ハロゲン原子は、Cl又はBrであり、前記アルキル基は、炭素数1〜13のアルキル基、例えば、メチル、エチル又はプロピルであり、前記アルコキシ基は、炭素数1〜13のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ又はプロポキシであり、前記アリール基は、炭素数6〜10のアリール基、例えば、フェニル、クロロフェニル又はトリルであってもよい。
【0032】
は、独立して、炭素数1〜13の炭化水素基又はヒドロキシ基を表す。例えば、Rは、炭素数1〜13のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数2〜13のアルケニル基又はアルケニルオキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜13のアラルキル基又はアルアルコキシ基、又は、炭素数7〜13のアルカリール基又はアルカリールオキシ基であってもよい。
【0033】
は、独立して、炭素数2〜8のアルキレン基を表す。
【0034】
mは、独立して、0〜10の整数、好ましくは、0〜4の整数を表す。
【0035】
nは、独立して、1〜200の整数、好ましくは、1〜50の整数、より好ましくは、5〜20の整数を表す。シリコンブロック単位が少なすぎると、共重合体の耐衝撃性及び難燃性が足りず、また、多すぎると押出及び射出時、シリコンブロックが凝集して、透明性を低下させる。
【0036】
Aは、下記の式(2)又は(3)の構造を示す。
【0037】
【化5】
【0038】
式中、−X−は、−Y−又は−NH−Y−NH−であり、ここで、Yは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状脂肪族基、シクロアルキレン基(例えば、炭素数3〜6のシクロアルキレン基)、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくはカルボキシ基で置換された又は非置換の炭素数6〜30の単核又は多核のアリーレン基を表す。例えば、Xは、ハロゲン原子で置換された又は非置換の脂肪族基、主鎖に酸素、窒素又は硫黄原子を含む脂肪族基、又は、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン又はジフェニルフェノールから誘導されるアリーレン基であってもよい。
【0039】
【化6】
【0040】
式中、Rは、炭素数6〜30の芳香族若しくは芳香族/脂肪族混合型炭化水素基を表すか、又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。ここで、Rは、炭素原子の他にハロゲン、酸素、窒素又は硫黄を含む構造を有するものであってもよい。例えば、Rは、フェニル、クロロフェニル又はトリル(好ましくは、フェニル)であってもよい。
【0041】
前記式(2)の例示的な構造は、下記の式(2a)〜(2h)でありうる。
【0042】
【化7】
【0043】
一具体例において、前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンは、下記の式(1a)で表されるヒドロキシ末端シロキサンとアシル化合物との反応生成物(即ち、エステル結合を有するヒドロキシ末端シロキサン)であってもよい。
【0044】
【化8】
【0045】
式中、R、R、R、m及びnは、前記の式(1)の定義と同義である。
【0046】
前記の式(1a)で表されるヒドロキシ末端シロキサンは、例えば、ヒドロキシ基と二重結合を有している下記の式(1b)で表される化合物とシリコンを含有している下記の式(1c)で表される化合物を、白金触媒を用いて、2:1のモル比で合成して製造される。
【0047】
【化9】
【0048】
式中、R及びmは、前記の式(1)の定義と同義であり、kは1〜7の整数を表す。
【0049】
【化10】
【0050】
式中、R及びnは、前記の式(1)の定義と同義である。
【0051】
具体的に、前記の式(1a)のヒドロキシ末端シロキサンとしてダウコーニング社のシロキサンモノマー(
)が用いられるが、必ずしもこれに限定されない。また、前記の式(1a)のヒドロキシ末端シロキサンの製造と関連して、米国特許US6,072,011号を参照することができる。
【0052】
前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサン製造に用いられるアシル化合物は、例えば、芳香族、脂肪族、又は芳香族と脂肪族を含む混合型の構造を有していてもよい。前記アシル化合物が芳香族又は混合型の場合、6〜30の炭素数を有してもよく、脂肪族の場合、1〜20の炭素数を有してもよい。また、前記アシル化合物は、ハロゲン、酸素、窒素又は硫黄原子を更に含んでいてもよい。
【0053】
他の具体例において、前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンは、前記の式(1a)のヒドロキシ末端シロキサンとジイソシアネート化合物との反応生成物(即ち、ウレタン結合を有するヒドロキシ末端シロキサン)であってもよい。
【0054】
ここで、前記ジイソシアネート化合物は、例えば、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート又は4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネートであってもよい。
【0055】
さらに別の具体例において、前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンは、前記の式(1a)のヒドロキシ末端シロキサンと下記の式(1d)で表されるリン−含有化合物(芳香族又は脂肪族ホスフェート化合物)との反応生成物であってもよい。
【0056】
【化11】
【0057】
式中、Rは、前記の式(1)の定義と同義であり、Rは、独立して、リン、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、(炭素数1〜20の)アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。
【0058】
式(1a)で表されるヒドロキシ末端シロキサンと式(1d)で表されるリン−含有化合物のモル比は、3:1〜1:1、より好ましくは、2:1〜1.5:1の範囲で維持することが好ましい。式(1d)の化合物に対する式(1a)の化合物のモル比が、1未満のとき未反応リン−含有化合物によって物性が低下し、そのモル比が3を超えるとリン−含有化合物の導入を通した十分な難燃効果を期待することが難しくなることがある。
【0059】
式(1a)のヒドロキシ末端シロキサンと式(1d)のリン−含有化合物とを反応して得られる式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンの具体的な例は、以下の構造を有していてもよい。
【0060】
【化12】
【0061】
式中、R、R、R、m及びnは、前記の式(1)の定義と同義である。
【0062】
(B)分岐状ポリカーボネートブロック
【0063】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体に、繰り返し単位として含まれる分岐状ポリカーボネートブロックは、分岐状ポリカーボネートオリゴマーを前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンと反応させることによって、本発明の共重合体に導入される。
【0064】
前記分岐状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法には特別な制限がない。例えば、分岐状ポリカーボネートオリゴマーは、オリゴマー性ポリカーボネートに分岐剤を添加し、反応して製造することができる。また、二価フェノール類化合物及びホスゲンを分岐剤と共に混合するホスゲン法でも製造することができるが、これらに限定されない。
【0065】
前記分岐剤には、例えば、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH)、酸ハロゲン(−COCI)及びホルミル基(−CHO)よりなる群から独立的に選択された分岐化官能基を3個以上(例えば、3〜4個)有する有機化合物を使用することが好ましい。このような分岐剤の例には、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)、メリト酸、トリメリット酸、トリメリット酸クロリド、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、レソルシル酸、レゾルシンアルデヒド、trimellitiltrichloride、トリヒドロキシフラボン誘導体(例えば、2,4,4−トリメチル−2,4−7−トリヒドロキシフラボン)、フロログルシン、又はこれらの混合物などを挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
分岐状ポリカーボネートオリゴマー製造において、好ましくは、用いられた二価フェノール類化合物量100mol%に対して、0.001〜10mol%の分岐剤が用いられてもよく、好ましくは、0.01〜3mol%、より好ましくは、0.03〜1.5mol%の分岐剤が用いられてもよい。分岐剤の使用量が少なすぎると、結果として得られる共重合体の耐衝撃性及び難燃性が十分ではなく、また、多すぎると、射出時剥離が生じて、透明度が低下することがある。
【0067】
分岐状ポリカーボネートオリゴマー製造に用いられる二価フェノール類化合物は、例えば、下記の式(4)で表される化合物であってもよい。
【0068】
【化13】
【0069】
式中、Lは、官能基を有しない直鎖状、分岐状若しくは環状アルキレン基、又はスルフィド、エーテル、スルホキシド、スルホン、ケトン、フェニル、イソブチルフェニル、ナフチルのような官能基を含む直鎖状、分岐状若しくは環状アルキレン基を表してもよい。好ましくは、Lは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状アルキレン基であってもよい。RとRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基を表してもよい。a及びbは、独立して、0〜4の整数を表してもよい。
【0070】
前記の式(4)で表される化合物は、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソブチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ジフェニル−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル[ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル]、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3'−ジクロロジフェニルエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェノール[p,p'−ジヒドロキシフェニル]、3,3'−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、4,4’−チオジフェノール[ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン]、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、メチルヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、及び2,6−ジヒドロキシナフタレンであってもよいが、これらに制限されない。このうち、代表的なものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。他の2作用性フェノール類は、米国特許US2,999,835号,US3,028,365号,US3,153,008号,US3,334,154号、及びUS4、131、575号などを参照してもよい。前記二価フェノール類は、単独又は互いに組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本発明の一具体例によれば、前記二価フェノール類化合物(例えば、ビスフェノールA)をアルカリ水溶液に添加した後、その結果として得られる混合物と、ホスゲンガスが注入された有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)を混合して反応させればオリゴマー性ポリカーボネートを製造することができる。このとき、ホスゲン:二価フェノール類化合物のモル比は、約1:1〜1.5:1、好ましくは、約1:1〜1.2:1の範囲内で維持されてもよい。製造されるオリゴマー性ポリカーボネートの分子量は、800〜20,000であってもよい。このように製造されたオリゴマー性ポリカーボネートを含む有機相−水相の混合物に分岐剤を添加し、段階的に分子量調節剤及び触媒を投入することによって、分岐状ポリカーボネートオリゴマーが形成されていてもよい。
【0072】
本発明の他の具体例によれば、前記二価フェノール類化合物(例えば、ビスフェノールA)と分岐剤をアルカリ水溶液に添加した後、その結果として得られる混合物と、ホスゲンガスが注入された有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)を混合して反応(このとき、ホスゲン対二価フェノール類化合物のモル比は、約1:1〜1.5:1、好ましくは、約1:1〜1.2:1の範囲内で維持される。)させ、ここに、段階的に分子量調節剤及び触媒を投入することによって、分岐状ポリカーボネートオリゴマーが形成されていてもよい。
【0073】
ポリカーボネートオリゴマー形成反応は、一般に約15〜60℃範囲の温度で行われる。反応混合物のpH調節のために、アルカリ金属水酸化物が反応混合物に添加されてもよい。前記アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウムであってもよい。
【0074】
前記分子量調節剤には、ポリカーボネート製造に用いられるモノマーと類似の単官能化合物が用いられてもよい。前記単官能化合物は、例えば、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)、p−クミルフェノール、p−イソオクチルフェノール、及びp−イソノニルフェノールのようなフェノールを基本とする誘導体、又は脂肪族アルコール類であってもよい。好ましくは、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)が用いられる。
【0075】
前記触媒には、重合触媒及び/又は相間移動触媒が用いられる。前記重合触媒は、例えば、トリエチルアミン(TEA)であり、前記相間移動触媒は、下記の式(5)で表される化合物である。
【0076】
(R (5)
【0077】
式中、Rは、独立して、炭素数1〜10のアルキル基を、Qは、窒素又はリンを、Zは、ハロゲン原子又は−OR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数6〜18のアリール基を表してもよい。)を表してもよい。
【0078】
前記相間移動触媒は、例えば、[CH(CHNZ、[CH(CHPZ、[CH(CHNZ、[CH(CHNZ、[CH(CHNZ、CH[CH(CHNZ、CH[CH(CHNZであってもよい。ここで、Zは、Cl、Br又は−OR(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数6〜18のアリール基であってもよい。)であってもよい。
【0079】
前記相間移動触媒の含量は、反応混合物の約0.1〜10重量%が好ましい。相間移動触媒の含量が0.1重量%未満のとき、反応性が劣ることがあり、10重量%を超えると、沈澱物が生ずるか、結果として得られる共重合体の透明性が低下することがある。
【0080】
前記のようにして分岐状ポリカーボネートオリゴマーを形成した後、塩化メチレンに分散された有機相をアルカリ洗浄した後、分離する。次いで前記有機相を0.1N塩酸溶液で洗浄した後、蒸留水で2〜3回洗浄する。
【0081】
洗浄が完了すれば、塩化メチレンに分散された前記有機相の濃度を一定に調整し、70〜80℃範囲で一定量の第2次蒸留水を用いて造粒化する。第2次蒸留水の温度が70℃未満のとき、造粒速度が遅くなり、造粒化時間が過度にかかる恐れがあり、80℃を超えると、一定の粒径を有するポリカーボネートを得ることが難しい。造粒が完了した後、先ず100〜110℃で5〜10時間、次に110〜120℃で5〜10時間乾燥することが好ましい。
【0082】
製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマーの好ましい粘度平均分子量は、800〜20,000、より好ましくは、800〜15,000、最も好ましくは、1,000〜12,000である。オリゴマー性分岐状ポリカーボネートの粘度平均分子量が800未満のとき、分子量分布が広くなり、物性が低下する恐れがあり、20,000を超えると、反応性が低下する恐れがある。
【0083】
(C)ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体
【0084】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンと分岐状ポリカーボネートブロックとを繰り返し単位として含む。
【0085】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体において、式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンのブロック:分岐状ポリカーボネートブロックの含量比は、重量比で0.1:1〜10:1の範囲内であってもよく、好ましくは、0.2:1〜5:1、より好ましくは、0.4:1〜2.5:1であってもよい。共重合体中のシロキサンブロック部分の相対的含量が少なすぎると、難燃性及び低温衝撃強度が低下する恐れがあり、多すぎると、透明性、流動性、耐熱性、室温衝撃強度などの物性が低下し、製造費用が増大する。
【0086】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、塩化メチレン溶液で測定時、好ましくは、15,000〜200,000、より好ましくは、15,000〜70,000の粘度平均分子量(Mv)を有する。前記共重合体の粘度平均分子量が15,000未満のとき、機械的物性が顕著に低下する恐れがあり、200,000を超えると、溶融粘度の上昇により樹脂の加工に問題が生ずる恐れがある。
【0087】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、前述したように、分岐状ポリカーボネートオリゴマーを製造した後、製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマーと前記の式(1)で表されるヒドロキシ末端ポリシロキサンとを共重合することによって製造することができる。
【0088】
本発明の一具体例によれば、すでに製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマーを含有する有機相−水相混合物にヒドロキシ末端ポリシロキサンを添加し、段階的に分子量調節剤及び触媒を投入することによって、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体が製造される。前記分子量調節剤及び触媒については前述したものと同様である。
【0089】
また、一具体例によれば、製造された共重合体が塩化メチレンに分散された有機相をアルカリ洗浄した後、分離し、次いで前記有機相を0.1N塩酸溶液で洗浄した後、蒸留水で2〜3回洗浄し、洗浄が完了すれば塩化メチレンに分散された前記有機相の濃度を一定に調整し、70〜80℃範囲で一定量の純水を用いて造粒化する。純水の温度が70℃未満のとき、造粒速度が遅れ、造粒時間が非常に長くなることがあり、純水の温度が80℃を超えると、一定の大きさで共重合体の形状を得ることが難しくなることがある。造粒が完了した後、先ず100〜110℃で5〜10時間、次に110〜120℃で5〜10時間乾燥することが好ましい。
【0090】
本発明に係るポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、難燃性と透明性が顕著に優れると同時に、流動性、衝撃強度(特に、低温衝撃強度)などの物性バランスに優れ、事務機器及び電気電子製品のハウジングなど、難燃フィルム及びシートの製品を生産するのに有用に使用することができる。
【0091】
従って、本発明の他の側面によれば、本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を含む成形品が提供される。
【0092】
本発明のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を成形して成形品として製造する方法は特に制限されることはなく、プラスチック成形分野から一般に使われる方法を用いて成形品を製造することができる。
【0093】
以下、実施例及び比較例を通して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
製造例1:ヒドロキシ末端ポリシロキサンの製造
500mLの3口−フラスコにコンデンサーを取り付け、窒素雰囲気下でダウコーニング社製のモノマーBY16−799(0.4mol)をクロロホルム(300mL)に溶かした後、トリエチルアミン(TEA)触媒(67mL)を添加した。前記溶液を還流下に、テレフタロイルクロリド(TCL、0.2mol)をクロロホルム(1,000mL)に溶かした後、1時間ゆっくり添加し、12時間還流させた。反応が終わった溶液の溶媒を除去した後、アセトンに溶かし、熱い蒸留水で洗浄した。真空オーブンで24時間乾燥させることによって、下記の式(6)で表される、エステル結合を有するヒドロキシ末端ポリシロキサンを製造した。H−NMR分析による2.6ppmで観察されるポリシロキサンのメチレン基のピーク、8.35ppmで観察されるTCLのベンゼン環の水素ピーク及び6.75〜7.35ppmで観察されるポリシロキサンのベンゼン環の水素ピークで、合成されたことを確認した。
【0095】
【化14】
【0096】
製造例2:ホスフェート含有ヒドロキシ末端ポリシロキサンの製造
500mLの3口−フラスコにコンデンサーを取り付け、窒素雰囲気下に、Dami Polychem社製のPMS−25(下記表1参照)(22.52g、0.01mol)をトルエン(100mL)に溶かした後、トリエチルアミン(TEA)触媒(1.01g、0.01mol)を添加した。前記溶液を還流下に、フェニルホスホン酸ジクロリド(phenylphosphonic dichloride)(0.97g、0.005mol)を1時間ゆっくり添加し、5時間還流させた。反応が終わった溶液の溶媒トルエンを除去した後、真空オーブンで24時間乾燥させることによって、下記の式(7)で表されるホスフェート含有ヒドロキシ末端ポリシロキサンを製造した。
【0097】
【化15】
【0098】
製造例3:分岐状ポリカーボネートオリゴマーの製造
1Lの3口−フラスコにビスフェノールA(60g、0.263mol)と1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)(0.274g、0.0009mol)を5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液330mL(18.46g、0.462mol)に溶解した後、ホスゲン(26.0g、0.263mol)を塩化メチレンに捕集し、テフロン(登録商標)チューブ(20m)を通してゆっくり投入しながら反応した。外部温度は0℃を維持した。管型反応器を通過した反応物を窒素環境下で、約10分間界面反応して、粘度平均分子量が約1,000であるオリゴマー性ポリカーボネートを製造した。前記製造されたオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物中の有機相(215mL)と水相(322mL)を採取し、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)(1.383g、9.21mmol、ビスフェノールAに対して3.5mol%)、テトラブチル塩化アンモニウム(TBACl)(0.731g、2.63mmol、ビスフェノールAに対して1mol%)、15重量%トリエチルアミン(TEA)(0.1mL)を混合した後、30分反応して、分岐化されたポリカーボネートオリゴマー溶液を製造した。
【0099】
実施例1
前記製造例3で製造された分岐状ポリカーボネートオリゴマー溶液に、前記の式(6)で表されるポリシロキサン化合物を9g(ビスフェノールAに対して15重量%)投入し、層分離した後、有機相のみを採取し、前記有機相と同じ量の塩化メチレン(283g)、1.1N水酸化ナトリウム水溶液(110mL、総混合物に対して20体積%)、15重量%トリエチルアミン(15μL)を混合し、1時間反応した後、さらに15重量%トリエチルアミン(167μL)と塩化メチレン(128g)を投入し、1時間さらに反応した。層分離後、粘度が上昇した有機相に純水を投入し、アルカリ洗浄した後、分離した。次いで、前記有機相を0.1N塩酸溶液で洗浄した後、蒸留水で2〜3回洗浄した。洗浄終了後、前記有機相の濃度を一定にした後、76℃で一定量の第2次蒸留水を用いて造粒した。造粒が完了した後、まず、110℃で8時間、次に120℃で10時間乾燥した。これにより、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体が製造された。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0100】
実施例2
式(6)で表されるポリシロキサン化合物を2.1g(ビスフェノールAに対して3.5重量%)使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0101】
実施例3
0.81N水酸化ナトリウム水溶液(110mL)を使用し、分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール(PTBP)を0.395g(2.62mmol、ビスフェノールAに対して1.0mol%)使用したことを除いて、前記製造例3と同様にして分岐状ポリカーボネートオリゴマー溶液を製造した。そして、この溶液に、式(6)で表されるポリシロキサン化合物を9g(ビスフェノールAに対して15重量%)投入し、実施例1と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0102】
実施例4
式(6)で表されるポリシロキサン化合物を2.1g(ビスフェノールAに対して3.5重量%)使用したことを除いては、前記実施例3と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0103】
実施例5
式(7)で表されるポリシロキサン化合物を9g(ビスフェノールAに対して15重量%)使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0104】
実施例6
式(7)で表されるポリシロキサン化合物を2.1g(ビスフェノールAに対して3.5重量%)使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0105】
実施例7
式(7)で表されるポリシロキサン化合物を9g(ビスフェノールAに対して15重量%)使用したことを除いては前記実施例3と同様にしてポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0106】
実施例8
式(7)で表されるポリシロキサン化合物を2.1g(ビスフェノールAに対して3.5重量%)使用したことを除いては、前記実施例3と同様の方法で、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体を製造した。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0107】
比較例1
分岐剤を添加することなく、界面重合法で直鎖状ポリカーボネートを製造した。製造された直鎖状ポリカーボネートの物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0108】
比較例2
商用化されたシロキサン−含有ポリカーボネート(Sabic社製のEXL1414、シロキサン含量:3.5重量%)の物性を測定し、下記表1に記載した。
【0109】
比較例3
商用化された分岐状ポリカーボネート(SAMYANG CORPORATION社製のTRIREX 3026B)の物性を測定し、下記表1に記載した。
【0110】
比較例4
1Lの3口−フラスコにビスフェノールA(60g、0.263mol)と1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)を5.6重量%水酸化ナトリウム水溶液(330mL、18.46g、0.462mol)に溶解した後、ホスゲン(26.0g、0.263mol)を塩化メチレンに捕集し、テフロン(登録商標)チューブ(20m)を通してゆっくり投入しながら反応した。外部温度は0℃に維持した。管型反応器を通過した反応物を窒素環境下で、約10分間界面反応して、粘度平均分子量が約1,000であるオリゴマー性ポリカーボネートを製造した。前記製造されたオリゴマー性ポリカーボネートを含む混合物中の有機相(215mL)と水相(322mL)を採取し、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)(1.383g、9.21mmol、ビスフェノールAに対して3.5mol%)、テトラブチル塩化アンモニウム(TBACl)(0.731g、2.63mmol、ビスフェノールAに対して1mol%)、15重量%トリエチルアミン(TEA)(0.1mL)を混合した後、30分間反応して、直鎖状ポリカーボネートオリゴマー溶液を製造した。
【0111】
製造された直鎖状ポリカーボネートオリゴマー溶液に、前記の式(6)で表されるポリシロキサン化合物(9g、ビスフェノールAに対して15重量%)を加え、層分離した後、有機相(283g)のみを採取し、そこに1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)(0.274g、0.0009mol)を投入し、前記有機相と同じ量の塩化メチレン(283g)、1.1N水酸化ナトリウム水溶液(110mL、総混合物に対して20体積%)、15重量%トリエチルアミン(15μL)を混合し、1時間反応した後、さらに15重量%トリエチルアミン(167μL)と塩化メチレン(128g)を投入し、1時間さらに反応した。層分離後粘度が上昇した有機相に純水を投入し、アルカリ洗浄した後、分離した。次いで、前記有機相を0.1N塩酸溶液で洗浄した後、蒸留水で2〜3回洗浄した。洗浄終了後、前記有機相の濃度を一定にした後、76℃で一定量の第2次蒸留水を用いて造粒した。造粒が完了した後、まず、110℃で8時間、次に120℃で10時間乾燥した。これにより、ポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートランダム共重合体が製造された。製造された共重合体の物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0112】
下記表1に示した物性値は、前記実施例及び比較例で製造された樹脂を130℃で24時間乾燥した後測定したものである。共重合体確認方法及び物性測定方法は以下の通りである。
【0113】
(1)H−NMR(核磁気共鳴分光器):Bruker社製のAvance DRX300を用いて測定した。H−NMRにより0.2ppmで観察されるジメチルシロキサンのメチル基のピークと2.6ppmで観察されるシリコン分岐剤のベンゼン環に隣接した炭素にある水素ピーク及び3.9ppmで観察されるシリコン分岐剤のベンゼン環に置換されたメトキシ基のピークから分岐状ポリカーボネートが合成されたことを確認した。
【0114】
(2)粘度平均分子量:ウベロード粘度を用い、20℃で塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これから極限粘度[η]を下記数式(1)により算出した。
【0115】
[η]=1.23×10−5Mv0.83 (1)
【0116】
(3)衝撃強度:衝撃試験機(CEAST社製のRESIL IMPACTOR)を用いて、室温及び−50℃で衝撃強度を測定した。
【0117】
(4)全光線透過率:3mm厚さの試片に対して、ASTM D 1003に基づいて評価した。
【0118】
(5)難燃性:米国のUnderwriter’s Laboratory Incが規定するUL−94難燃試験方法によって測定した。この方法は、垂直に固定された一定大きさの試片に、バーナーの炎を10秒間当てた後の燃焼時間やドリップ性から難燃性を評価する方法である。燃焼時間は、炎を遠く離した後、試片が燃焼を続ける時間の長さである。ドリップによる綿の点火は、試片の下端から約300mm下にある綿が試片からの滴下(ドリップ)物により点火されることを通して決まり、難燃性の等級は下記の通りに分けられる。
【0119】
【0120】
(6)せん断応答:ASTM D 1238に基づいて260℃でMIR(melt index ratio)を測定した。
【0121】
【表1】
【0122】
前記表1から分かるように、実施例1〜8で製造されたポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートブロック共重合体は、比較例1〜3のポリカーボネート及び比較例4のポリシロキサン−分岐状ポリカーボネートランダム共重合体に比べて、顕著な難燃性、優れた衝撃強度(特に、低温衝撃強度)を示しながらも、透明性は類似するか、より向上された水準を示した。