(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第2制御を実行する際、前記重送検出センサにより検出される前記媒体の重送検出回数の増加に応じて、前記トルク制御機構が与える前記搬送負荷が高くなるように設定する請求項1または2に記載の媒体供給装置。
前記制御部は、前記セパレータローラの回転駆動を再開する場合には、前記第1制御の実行前における前記媒体を搬送する搬送速度よりも遅い搬送速度で当該媒体を前記搬送方向の下流側へ搬送させる請求項1〜3のいずれか一つに記載の媒体供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る媒体供給装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
〔実施形態〕
まず、
図1及び
図2を参照して実施形態に係る媒体供給装置の構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る媒体供給装置のハードウェア構成図である。
図2は、
図1に示す媒体供給装置の機能ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る媒体供給装置1は、ホッパ2上に積層された複数の媒体Sから、搬送対象の媒体S1を1枚ずつ分離して搬送方向に供給するリタードローラ方式の給紙装置である。媒体供給装置1は、例えば、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、文字認識装置等の画像読取装置やプリンタ等の画像形成装置などに搭載される自動給紙機構(Auto Document Feeder:ADF)に適用される。本実施形態では、その一例として、媒体供給装置1が画像読取装置に搭載されてシート状の媒体Sを分離搬送する場合について説明する。媒体S,S1とは、例えば、原稿や名刺等のシート状の読み取り対象物や印刷用紙、枚葉紙等のシート状の被記録媒体を含む。
【0018】
なお、以下の説明では、
図1の上下方向及び左右方向を媒体供給装置1の上下方向及び前後方向として記載し、
図1の上側、下側、左側、右側を、それぞれ媒体供給装置1の上側、下側、前面側、背面側とし、鉛直方向、すなわち
図1の上下方向を「上下方向」として記載する。また、媒体供給装置1により媒体Sを搬送する方向を「搬送方向」、当該搬送方向と媒体Sの厚み方向にそれぞれ直交する方向を「幅方向」、搬送方向及び幅方向にそれぞれ直交する媒体Sの厚み方向を「高さ方向」と記載する。
図1の例では、媒体供給装置の前面側が搬送方向の上流側であり、背面側が搬送方向の下流側である。
【0019】
媒体供給装置1は、ホッパ2、給送部3、分離部4、搬送部5、重送検出センサ6、媒体検出センサ7、及び制御装置10を少なくとも備える。
【0020】
ホッパ2は、積層された媒体Sを積載すると共に上下方向(媒体Sの厚み方向)に沿って昇降可能なものであり、略矩形状に形成された積載面2aを有する。ホッパ2は、この積載面2aに媒体Sを複数枚積層させて積載する。そして、このホッパ2は、不図示の動力伝達機構を介してホッパ駆動モータ(不図示)に接続されている。ホッパ2は、ホッパ駆動モータを駆動することで、積載面2a上に積載されている媒体Sの積載量に応じて上下方向に沿って昇降する。
【0021】
給送部3と分離部4と搬送部5とは、搬送対象の媒体S1を搬送方向に搬送する搬送経路上に所定の間隔をあけて設けられており、搬送方向の上流側から下流側に向かって給送部3、分離部4、搬送部5の順で位置している。
【0022】
給送部3は、いわゆる、上取り給紙方式の用紙給送機構であり、ホッパ2に積載された媒体Sを給送するものであり、ピックローラ31を有する。ピックローラ31は、ホッパ2に積載された媒体Sのうち最上層に位置する搬送対象の媒体S1を給送するものであり、例えば発泡ゴム、ソリッドゴムなどの摩擦力の大きい材料により円柱状の形状で形成される。ピックローラ31は、その中心軸が、積載面2aの幅方向にほぼ平行、すなわち、積載面2aに沿いつつ媒体Sの搬送方向に直交する方向に設置されている。また、このピックローラ31は、その中心軸がホッパ2上面側(積載面2a側)に設定されると共に、その外周面がホッパ2の積載面2aに対して高さ方向に沿って所定の間隔を有する位置に設定されている。媒体Sは、積載面2a上において、搬送方向に対してこのピックローラ31より上流側に後端(搬送方向上流側端部)が位置するように積載される。上述したホッパ2は、高さ方向に沿って上昇することでこのピックローラ31に接近する一方、下降することでこのピックローラ31から離間する。なお、本実施形態では、上取り給紙方式を一例に説明するが、これに限定されず、下取り給紙方式などの他の給紙方式も適用可能である。
【0023】
また、このピックローラ31は、不図示の伝達ギヤやベルトを介して駆動手段としてのピックローラ駆動モータ(不図示)に接続されており、中心軸を回転中心としてこのピックローラ駆動モータの回転駆動力により回転駆動する。ピックローラ31は、ピック方向、すなわち、外周面が積載面2a上にて分離部4、搬送部5側に向かう方向(
図1中に矢印で示す反時計回り方向)に回転駆動する。
【0024】
分離部4は、ホッパ2から給送部3により給送される媒体Sを1枚ずつ分離するものであり、セパレータローラ41と、リタードローラ42とを有する。セパレータローラ41は、例えば発泡ゴム、ソリッドゴムなどの摩擦力の大きい材料により円柱状の形状で形成される。セパレータローラ41は、ピックローラ31の搬送方向下流側にて、このピックローラ31とほぼ平行に設けられている。すなわち、セパレータローラ41は、その中心軸が積載面2aに沿いつつ媒体Sの搬送方向に直交する方向に設置されている。また、このセパレータローラ41は、その中心軸がホッパ2上面側に設定されると共に、その外周面がホッパ2の積載面2aに対して高さ方向に沿って所定の間隔を有する位置に設定されている。このセパレータローラ41は、不図示の伝達ギヤやベルトを介してセパレータローラ駆動モータ41aに接続されており、中心軸を回転中心としてこのセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動力により回転駆動する。セパレータローラ41は、ピックローラ31と同様に、外周面が積載面2a上にて搬送部5側に向かう方向(
図1中に矢印で示す反時計回り方向)に回転駆動する。
【0025】
また、本実施形態において、セパレータローラ41には、不図示のワンウェイクラッチ(回転規制手段)が設けられている。ワンウェイクラッチは、セパレータローラ41が搬送対象の媒体S1を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制するよう配置されている。ワンウェイクラッチの具体的な構成としては、例えば、ローラ式、カム式、コイルバネ式、ラチェット式、スプラグ式などの構成を適用することができる。また、ワンウェイクラッチの軸方向両側に、焼結軸受、樹脂軸受、ボールベアリングなどの支持部材を配置し、ワンウェイクラッチに掛かるラジアル荷重を支持する構成としてもよい。
【0026】
リタードローラ42は、ピックローラ31に直接接触する搬送対象の媒体S1以外の媒体Sの給送を規制するものである。リタードローラ42は、セパレータローラ41と長さがほぼ同じであり、円柱状の形状で形成される。リタードローラ42は、セパレータローラ41と同様に、その中心軸が媒体Sの搬送方向と水平に交差するように、すなわち、媒体Sの幅方向に沿うように設けられ、中心軸を回転軸線として回転可能に設けられる。リタードローラ42は、積載面2a側にて、高さ方向にセパレータローラ41と対向して接するように設けられる。本実施形態では、リタードローラ42は、セパレータローラ41の回転駆動方向とは反対方向に回転駆動させることで、所望の搬送負荷をセパレータローラ41との間に進入した媒体Sに作用させる機能を有し、給送部3による最上層の媒体S1の給送に同伴された媒体Sを停止、分離する構成となっている。つまり、リタードローラ42は、ホッパ2に積層されている複数の媒体Sのうち、搬送対象となる1枚の媒体S1以外の媒体Sが搬送方向に繰り出されるのを防止するためのローラとして機能する。
【0027】
具体的には、リタードローラ42は、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bを介してリタードローラ駆動モータ42aに接続されており、中心軸を回転中心としてこのリタードローラ駆動モータ42aの回転駆動力により回転駆動する。上述のように、リタードローラ42は、一定の搬送負荷(空転トルク)を有しつつ、搬送方向に対して逆方向に駆動制御する必要がある。そのため、本実施形態のトルク制御機構としては、例えば、DCモータ又はブラシレスDCモータが好ましい。このDCモータ又はブラシレスDCモータは、電流とトルクが比例関係にあり、逆転トルクの制御性に優れているので、リタードローラ42の逆方向回転駆動とトルク制御を同時に行う制御において適した部材である。この他、トルク制御機構としてヒステリシスブレーキやマイクロパウダクラッチを採用してもよい。
【0028】
より具体的には、リタードローラ42は、搬送方向に略直交に配置された中心軸と、この中心軸の周囲に設けられた外周面としてのローラとを備える。このローラは、例えば内層に発泡ゴム、ソリッドゴムなどのニップ幅を形成しやすい軟らかい材料を用いて円柱状に形成されている。リタードローラ42のローラは、セパレータローラ41の外周面としてのローラに接圧している。これにより、リタードローラ42の外周面とセパレータローラ41の外周面との間には、セパレータローラ41とリタードローラ42との接触面であるニップ部が形成されている。媒体Sは、セパレータローラ41とリタードローラ42との間のニップ部を通過して搬送方向の下流側に給送される。
【0029】
リタードローラ42は、セパレータローラ41から所定の従動回転トルク以上のトルクを受けるときにはセパレータローラ41の回転にしたがって従動回転可能であり、かつ、セパレータローラ41から従動回転トルクより小さいトルクを受けるときには所定の回転負荷を発生するよう構成されている。このような構成は、リタードローラ駆動モータ42aの回転駆動力により回転駆動される中心軸が駆動軸であり、この軸が搬送方向とは逆方向に回転することで搬送負荷を発生させることで実現できる。
【0030】
例えば、ニップ部に1枚の媒体Sのみが進入している場合には、上述の
図1に示すように、リタードローラ42は従動回転トルク以上のトルクを受けて従動回転する。一方、他の媒体Sも一緒に重送されニップ部に進入した場合には、ニップ部の摩擦係数が相対的に小さくなるため、後述の
図4に示すように、セパレータローラ41の回転駆動を停止させてワンウェイクラッチを設けたセパレータローラ41で搬送対象の1枚の媒体S1を停止保持する。更に、セパレータローラ41の回転駆動を停止させることで、リタードローラ42に回転負荷を発生させて、セパレータローラ41側の媒体S1以外でニップ部に進入した媒体Sを、搬送対象の媒体S1に対して相対移動させて分離する。そして、搬送対象の媒体S1のみをニップ部から送り出し、他の媒体Sはニップ部の中に保持することで、搬送対象となる1枚の媒体S1以外の媒体Sが搬送方向に繰り出されるのを防止する。本実施形態においては、リタードローラ42が発生する回転負荷及びそれに伴い発生する媒体Sに対して作用する搬送負荷の大きさは、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bにより調整可能である。
【0031】
ここで、リタードローラ42の制御トルクにて、1枚分離するための条件の一例について説明する。この条件は、リタードローラ制御トルクによる回転負荷が、紙と紙との間の摩擦力より大きい必要がある。トルクリミッタ42bによる制御トルク値をT
Lとし、リタードローラ半径をrとし、リタードローラ回転負荷をF
B≒T
L/rとし、リタードローラ荷重をWとし、紙と紙との間の摩擦係数をμ
p−pとすると、F
B>μ
p−p・Wとなり、ゆえに、T
L>μ
p−p・W・r=T
minとなる。従って、リタードローラ42の制御トルクは、このT
minより高い必要がある。
【0032】
更に、1枚を搬送する際、リタードローラ42が従動回転するための条件の一例について説明する。紙1枚を分離部4のローラ対で搬送する際には、リタードローラ42は紙を介してセパレータローラ41に従動回転(搬送方向回転)する必要がある。仮にリタードローラ42が紙に対してスリップ(逆回転)すると、紙の搬送が不安定になり、搬送時のジャムや紙にダメージを与えるため、避ける必要がある。紙1枚の搬送時にリタードローラ42が従動回転する条件としては、つまり、リタードローラ制御トルクによる回転負荷が、リタードローラ42と紙との間の摩擦負荷より低いことが条件となる。リタードローラ42と紙との間の摩擦係数をμ
ret−pとすると、μ
ret−p・W>F
Bとなり、ゆえに、T
L<μ
ret−p・W・r=T
maxとなる。従って,リタードローラの制御トルクは,このT
maxより低い必要がある。この他、薄紙ジャムやダメージを起こさない負荷トルク条件としては、一般的には上記T
minよりやや高い制御トルクがジャム発生の限界点になると考えられる。当然ながら、薄紙の厚さ、剛性、状態、給紙機構等に依るが、概略的には、後述の
図16に示すように、T
min<T
jam<<T
maxの関係にある。
【0033】
搬送部5は、給送部3により給送され分離部4を通過した媒体S1をさらに搬送方向下流側の、この媒体供給装置1が搭載される装置の各部に搬送するものである。搬送部5の搬送方向下流側には、例えば、この媒体供給装置1が画像読取装置に搭載されている場合、媒体S1上の画像を読み取る画像読取手段としての光学ユニットなどが設けられており、したがって、搬送部5により画像読取装置内を搬送される媒体S1は、この光学ユニットにより画像が読み取られる。
【0034】
具体的には、搬送部5は、回転駆動可能なフィードローラ51と、このフィードローラ51に従動して回転可能な従動ローラ52とを有する。フィードローラ51と従動ローラ52とは、長さがほぼ同じであり、ともに円柱形状に形成される。フィードローラ51と従動ローラ52とは、ともにその中心軸が媒体S1の搬送方向と水平に交差するように、すなわち、媒体S1の幅方向に沿うように設けられ、中心軸を回転軸線として回転可能に設けられる。従動ローラ52は、フィードローラ51と対向して接するように設けられると共に、フィードローラ51側に接圧されている。
【0035】
フィードローラ51は、媒体S1を搬送する際には、外周面が従動ローラ52との接触面にて分離部4側から、この媒体供給装置1が適用される装置内部側に向かう方向(
図1中に矢印で示す反時計回り方向)に回転駆動する。従動ローラ52は、フィードローラ51に接圧することで、フィードローラ51の回転に従動して、外周面がフィードローラ51との接触面にて分離部4側から装置内部側に向かう方向(
図1中に矢印で示す時計回り方向)に回転駆動する。そして、この搬送部5は、従動ローラ52の負圧によりフィードローラ51の外周面と従動ローラ52の外周面との間に媒体S1を挟持すると共に、フィードローラ51が上述のとおり回転駆動することで媒体S1を搬送する。そして、媒体S1は、搬送経路に沿って設けられた複数のフィードローラ(不図示)と従動ローラ(不図示)とのローラ対間を順次受け渡されることで、この媒体供給装置1が適用される装置内部の各部、例えば、上述の光学ユニットに搬送される。
【0036】
なお、上述のフィードローラ51も、不図示の伝達ギヤやベルトを介してフィードローラ駆動モータ(不図示)に接続されている。また、ここではフィードローラ51は、その回転速度が伝達ギヤなどにより調整されることでピックローラ31、セパレータローラ41の回転速度と比較して、相対的に高い回転速度で回転駆動する。つまり、搬送部5は、分離部4により分離された媒体S1を給送部3により給送される媒体S1の速度より高い速度で搬送可能である。ただし、搬送部5は、これに限らず、給送部3により給送される媒体S1の速度と同等の速度で媒体S1を搬送するものであってもよい。
【0037】
重送検出センサ6は、搬送経路上にて媒体S1の重送を検出するものである。重送検出センサ6は、媒体S1の搬送経路上に配置され、媒体S1が同時に給送される重送状態を検出する。重送検出センサ6は、分離部4と搬送部5との間の任意の位置に配置されている。なお、本実施形態における重送検出センサ6の配置位置の詳細については
図6及び
図7を用いて後述する。重送検出センサ6は媒体S1の搬送経路をはさんだ状態で一対配置されており、媒体S1の厚さ方向に沿って互いに対向している。そして、この対向するセンサの間を複数の媒体Sが同時に給送される重送状態で通過したことを検出する。なお、重送検出センサ6の検出方式は、超音波による検出方式や光学式センサによる検出方式や赤外線による検出方式などを適用可能であるが、これらに限定されない。
【0038】
媒体検出センサ7は、搬送経路上にて媒体S1の有無を検出するものである。媒体検出センサ7は、媒体S1の搬送経路上に配置され、媒体S1の先端の通過を検出する。媒体検出センサ7は、搬送部5より搬送方向の直後に配置されている。本実施形態では、媒体検出センサ7は媒体S1の搬送経路をはさんだ状態で一対配置されており、媒体S1の厚さ方向に沿って互いに対向している。そして、この対向するセンサの間を媒体S1が通過したことを検出する。なお、媒体検出センサ7は、媒体S1が搬送部5に進入したことを検出できれば、搬送部5の上流(例えば、搬送部5の直前)などの任意の位置に配置してもよい。媒体検出センサ7の検出方式は、超音波による検出方式や光学式センサによる検出方式や赤外線による検出方式などを適用可能であるが、これらに限定されない。また、
図1に図示しないが、媒体供給装置1には、媒体Sが分離部4のセパレータローラ41とリタードローラ42の接触面であるニップ部に進入したことを検出するために、分離部4の近傍(例えば、分離部4の直前)などに配置されていてもよい。
【0039】
制御装置10は、媒体供給装置1の各部を制御するものである。制御装置10は、
図2に示すように、上述の重送検出センサ6や媒体検出センサ7などの各種センサ、上述のセパレータローラ駆動モータ41a及びリタードローラ駆動モータ42aなどの各種駆動モータ、並びに、トルクリミッタ42bなどの各種制御機構が電気的に接続されている。制御装置10は、重送検出センサ6、媒体検出センサ7などの各種センサから情報を受け取る。制御装置10は、セパレータローラ駆動モータ41aやリタードローラ駆動モータ42aなどの各種駆動モータ、トルクリミッタ42b等の各種制御機構を制御して、給送部3、分離部4、搬送部5の各ローラやホッパ2を駆動させて、搬送対象の媒体S1を搬送方向に搬送したり、重送検出時には当該搬送方向と反対方向へ媒体S1を戻したりして重送状態を解消させる制御を実行する。この重送状態を解消させる制御の詳細については後述する。
【0040】
制御装置10は、制御部としてのコントローラ10aと、記憶部としてのメモリ10bを少なくとも備える。具体的には、制御装置10は、各種処理を実行するコントローラ10aとして機能するCPU(Central Processing Unitと)、各情報を記憶するメモリ10bとして機能するRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータである。上述した制御装置10の各機能の全部又は一部は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。本実施形態では、メモリ10bには、例えば、上述の画像読取手段としての光学ユニットにより読み取られた媒体Sの画像データや、重送検出センサ6が同じ媒体Sに対して重送を検出した回数(重送検出回数)のデータや、各種パラメータの設定値などが記憶される。
【0041】
本実施形態において、制御部としてのコントローラ10aは、重送検出センサ6が媒体Sの重送を検出した場合、セパレータローラ41の回転駆動を停止し、リタードローラ42に媒体Sを搬送方向の上流側へ搬送させる第1制御を実行する。
【0042】
具体的には、この第1制御において、コントローラ10aは、重送検出センサ6から重送状態を検出したことを示す制御信号を受信した場合、セパレータローラ駆動モータ41aへ回転駆動を停止させる制御信号を送り、このセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動を停止させる。これにより、ワンウェイクラッチを設けた停止状態にあるセパレータローラ41からリタードローラ42へ与えられるトルクが所定の従動回転トルクより小さくなるため、リタードローラ駆動モータ42aによる回転駆動力により、リタードローラ42がセパレータローラ41の回転駆動方向とは反対方向に回転駆動する。この結果、リタードローラ42によって、セパレータローラ41側の搬送対象の媒体S1以外でニップ部に進入した媒体Sが搬送対象の媒体S1に対して相対移動して分離される。この第1制御が実行される際の媒体供給装置1の動作の詳細については
図5〜
図6及び
図8〜
図9を参照して後述する。
【0043】
次に、
図3〜
図10を参照して、本実施形態に係る媒体供給装置1の動作について説明する。
図3〜
図6及び
図8〜
図10は、実施形態に係る媒体供給装置1の動作の一例を示す図である。
図7は、媒体供給装置1における重送検出センサ6の配置位置の一例について説明するためのグラフである。
【0044】
図3に示す媒体供給装置1は、ホッパ2に積層された複数のシート状の媒体Sから搬送対象の媒体S1がピックローラ31によりピックされる直前の状態にある。このとき、分離部4のニップ部の近傍に設置された媒体検出センサ(不図示)により、分離部4に媒体Sの少なくとも一部が到達していることが確認されていないため、ピックローラ31はピックローラ駆動モータ(不図示)により搬送方向へ回転駆動している。セパレータローラ41はセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動力により搬送方向へ回転駆動している。ここで、
図3に示す状態において、リタードローラ42は、ピックローラ31によって複数枚繰り出された際にシート状の媒体Sから搬送対象の1枚の媒体S1を分離するために、シート状の媒体Sから1枚分離するのに適宜な空転負荷(負荷トルク)を持って媒体Sを戻す方向に逆回転駆動制御されている。このときのリタードローラ42の逆回転方向の空転トルクは、分離部4のニップ部に媒体S1が1枚搬送されたときには、リタードローラ42は搬送方向に従動回転し(上述の
図1の状態)、且つ、ニップ部に2枚以上搬送されるときには余剰な媒体Sと搬送対象の1枚の媒体S1の間に滑りを誘発するべく、所定の適切な範囲内の空転トルクに制御される(後述の
図4の状態)。なお、
図3に示す状態では、リタードローラ42はセパレータローラ41に対して従動回転状態になっており、ピックローラ3により媒体Sが繰り出されるのを待機している状態にある。また、フィードローラ51及び従動ローラ52はフィードローラ駆動モータ(不図示)の回転駆動力により搬送方向へ回転駆動している。なお、本実施形態において、媒体S1が媒体検出センサ7によってフィードローラ51と従動ローラ52との接触面であるニップ部を通過したと判断された場合には、セパレータローラ41の搬送方向への回転駆動は停止されるが、それまでは
図3以降の状態において常時回転駆動しているものとする。
【0045】
図4に示す媒体供給装置1は、上述の
図3に示す状態から、ホッパ2に積層された複数のシート状の媒体Sのうち、搬送対象の1枚の媒体S1及び当該媒体S1から下層に位置する3枚の媒体S2が、ピックローラ31によりピックされて、分離部4のニップ部に到達した後に、分離部4により搬送対象の1枚の媒体S1のみが正常に分離されている状態にある。このとき、分離部4のニップ部の近傍に設置された媒体検出センサ(不図示)により、分離部4に媒体Sの一部(
図4において媒体S1及び媒体S2)が既に到達していることが確認されているため、ピックローラ31は停止している。セパレータローラ41はセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動力により搬送方向へ回転駆動している。リタードローラ駆動モータ42aの回転駆動力により搬送方向の反対方向へ回転駆動しているものの、リタードローラ42は、上述のようにニップ部に2枚以上の媒体Sが搬送されたときには余剰な媒体Sと搬送対象の1枚の媒体S1の間に滑りを誘発するべく、所定の適切な範囲内の空転トルクに制御されていることにより、リタードローラ42自体は停止状態にある。
図4に示す状態において、搬送対象の媒体S1は、矢印Aが示す方向(すなわち、搬送方向)へ搬送されている。
【0046】
図5に示す媒体供給装置1は、上述の
図3に示す状態から、ホッパ2に積層された複数のシート状の媒体Sのうち、上述の1枚の媒体S1及び3枚の媒体S2を含む媒体S3が、ピックローラ31によりピックされて、分離部4のニップ部に到達した後に、上述の
図4に示す状態とは異なり、そのまま重送した状態で分離部4のニップ部を通過している状態にある。このとき、分離部4のニップ部の近傍に設置された媒体検出センサ(不図示)により、分離部4に媒体Sの一部(
図5において、媒体S3)が既に到達していることが確認されているため、ピックローラ31は停止している。重送検出センサ6により媒体S3は重送状態にあることが確認されているため、セパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動は減速制御されており、これに伴いセパレータローラ41の搬送方向への回転駆動もスルーダウン状態にある。スルーダウン状態にあるセパレータローラ41から媒体S3を介してリタードローラ42に伝達されるトルクも小さくなってきているため、これに伴いリタードローラ42の従動回転による搬送方向への回転駆動もスルーダウン状態にある。
図5に示す状態において、媒体S3は、矢印Aが示す方向(すなわち、搬送方向)へ搬送されているものの、媒体S3の搬送速度は低下しつつある。
【0047】
図6に示す媒体供給装置1は、上述の
図5に示す状態から、セパレータローラ41及びリタードローラ42が完全に停止した状態にある。このとき、ピックローラ31も停止している。
図6及び
図7において、分離部4のセパレータローラ41とリタードローラ42との接触面であるニップ部から重送検出センサ6までの距離をL
0とする。重送検出センサ6からフィードローラ51と従動ローラ52との接触面であるニップ部までの距離をL
s−rとする。重送検出センサ6からのスルーダウン距離をL
tdとする。
図7では、セパレータローラ41の周速度V
fが重送検出後にスルーダウンし、周速度V
fが0になる搬送方向位置にて、媒体S3の搬送方向側の先端が停止する様子を表している。すなわち、
図6及び
図7において、媒体S3の搬送方向側の先端は、重送検出後にスルーダウン距離L
td分だけ、重送検出センサ6の配置位置から搬送方向へ移動した位置にて停止している。
【0048】
ここで、セパレータローラ41を駆動制御するセパレータローラ駆動モータ41aを停止するためには、上述の
図5に示すように減速制御するのが一般的である。例えば、セパレータローラ駆動モータ41aがステッピングモータの場合は、一定速度の状態から速度ゼロに停止制御する際には、パルスレートを所定のスルーダウンテーブル(スルーダウンパルス)で減速させる。従って、この距離分だけ、重送状態の複数枚の媒体S3の先端は重送検出センサ6から下流側に搬送されることになる。この距離がスルーダウン距離L
tdである。
【0049】
このスルーダウン距離L
tdは、上述の距離L
s−rより小さくすること(L
td<L
s−r)が求められる。これは、重送検出センサ6により重送状態であると確認された媒体S3がスルーダウン距離L
td分だけ下流側に搬送された結果、更にフィードローラ51により重送状態のまま次の工程へ搬送されることを防ぐためである。また、重送しやすい媒体S3のようなシート群は分離が難しいシート状態であるため、一度の再分離制御だけで終わらず、同じシートの給送中に再度重送を検出する場合が考えられる。例えば、接触するシート間の摩擦係数が高いシートや、静電気等で密着しやすい平滑度の高い塗工紙では一度重送検出後に再分離制御しても、再度重送を検出する可能性がある。このような分離しにくいシートでも確実な再分離を行うために、後述する第2制御のように、同じシートで2度目の重送が検出された場合には1度目の重送検出のときのリタードローラ42の逆方向への負荷トルクよりも高く設定することが有効となる。この2度目の重送が検出された場合においてより安定な再分離を可能にするためには、重送検出センサ6の配置位置は、フィードローラ51の上流側に、セパレータローラ41のスルーダウン制御(減速制御)によるスルーダウン距離L
td(減速距離)の2倍以上離れた位置であることが望ましい(条件式:L
s−r>2×L
td)。例えば、後述の
図11に示すように、重送検出センサ6とフィードローラ51間L
s−r=35mmであり、セパレータローラ41のスルーダウン距離L
td=10mmの場合も上記条件式を満たしている。
【0050】
図8に示す媒体供給装置1は、上述の
図6に示す状態から、セパレータローラ41が停止した状態で、リタードローラ42がリタードローラ駆動モータ42aの回転駆動力により搬送方向の反対方向へ回転駆動されている状態にある。このとき、搬送対象の媒体S1のみセパレータローラ41により停止保持され、余剰な媒体S2については搬送方向の反対方向へ戻されつつある。
図8に示す状態において、余剰な媒体S2は、矢印Bが示す方向(すなわち、搬送方向の反対方向)へ搬送されている。
【0051】
図9に示す媒体供給装置1は、上述の
図8に示す状態から、余剰な媒体S2の全てが分離部4のニップ部から上流側に戻された状態にある。このとき、重送検出センサ6は、1枚の媒体S1を検出して重送状態が解消されたことを確認する。そのため、再度、媒体S1を搬送方向へ搬送すべくこの制御(上述の第1制御)の実行を解除する必要がある。そこで、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の回転駆動を再開させることで、リタードローラ42をセパレータローラ41と同様に搬送方向へ回転駆動させ始める。
【0052】
ここで、
図2に戻り、本実施形態において、制御部としてのコントローラ10aは、上述の第1制御を実行後、当該第1制御を解除してセパレータローラ41の回転駆動を再開し、媒体Sを搬送方向の下流側へ搬送させた際に重送検出センサ6が当該媒体Sの重送を検出した場合には、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bが与える搬送負荷が第1制御の実行前における重送検出時よりも高くなるように設定した上で、セパレータローラ41の回転駆動を停止し、リタードローラ42に媒体Sを搬送方向の上流側へ搬送させる第2制御を実行する。
【0053】
具体的には、この第2制御において、コントローラ10aは、上述の第1制御を実行後、重送検出センサ6から重送状態が解消されたことを示す制御信号を受信した場合、セパレータローラ駆動モータ41aへ回転駆動を再開させる制御信号を送り、このセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動を再開させる。これにより、セパレータローラ41からリタードローラ42へ与えるトルクが従動回転トルク以上になるため、リタードローラ42は従動回転トルク以上のトルクを受けて従動回転する。この結果、媒体Sは、セパレータローラ41とリタードローラ42との間のニップ部を通過して搬送方向の下流側に給送される。そして、このとき再度、コントローラ10aが重送検出センサ6から重送状態を検出したことを示す制御信号を受信した場合には、コントローラ10aは、トルクリミッタ42bに与えるトルク制御用の電流を第1制御の実行前における重送検出時よりも高い値に設定して、リタードローラ42により発生する回転負荷が第1制御時よりも大きくなるように変更する。この上で、コントローラ10aは、セパレータローラ駆動モータ41aへ回転駆動を停止させる制御信号を送り、このセパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動を停止させる。
【0054】
これにより、第2制御において、ワンウェイクラッチを設けた停止状態にあるセパレータローラ41からリタードローラ42に与えられるトルクが、変更されたリタードローラ42の回転負荷によって第1制御時よりも相対的に小さくなるため、リタードローラ42がセパレータローラ41の回転駆動方向とは反対方向に回転駆動する際に、媒体Sに対して作用する搬送負荷が第1制御時よりも大きくなる。この結果、リタードローラ42によって、セパレータローラ41側の搬送対象の媒体S1以外でニップ部に進入した媒体が、第1制御と比べてより好適に分離されることになる。このようにして、本実施形態の媒体供給装置1では、一度重送が検出された媒体Sの重送状態を解消させた後に、一度重送が検出された同じ媒体Sに対して再度重送検出された場合であっても、再度重送が検出された媒体Sの重送状態を、従来技術と比べて好適に解消することが可能となる。この第2制御を実行して重送状態を解消させた後に、セパレータローラ駆動モータ41aの回転駆動を再開させる際の媒体供給装置1の動作の詳細については、
図10を用いて後述する。
【0055】
図10に示す媒体供給装置1は、上述の第2制御を実行して重送状態を解消させた後に、この第2制御の実行を解除し、そして、再度、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の回転駆動を再開させる。このセパレータローラ41の回転駆動に伴い、リタードローラ42の回転駆動が停止されつつある。
図10に示す状態において、搬送対象の媒体S1は、矢印Aが示す方向(すなわち、搬送方向)へ搬送されており、当該媒体S1の下流側の先端は、搬送部5のニップ部を通過して、媒体検出センサ7の搭載位置まで到達しつつある。
【0056】
このように、本実施形態の媒体供給装置1によれば、一度、重送検出センサ6にて2枚以上と検出されセパレータローラ41の停止制御により余剰なシートをリタードローラ42が逆送することで1枚と検出された後に、搬送対象の1枚目のシートが分離部4の次のフィードローラ51に到達したと判断されるより前に再度、重送検出センサ6にて2枚以上と検出された場合は、リタードローラ42の逆方向への負荷トルクを最初の重送検出時により高く設定することで、確実な再分離を行えるようにすることができる。
【0057】
ここで、
図11は、媒体供給装置1における各パラメータの設定値の一例を示す表である。
図11において、セパレータローラ41の周速度V
fの設定値は700mm/sである。リタードローラ42の逆転周速度V
reの設定値は300mm/sである。分離部4のニップ部と重送検出センサ6の配置位置間の距離L
0の設定値は25mmである。重送検出センサ6の配置位置とフィードローラ51のニップ部間の距離L
s−rの設定値は35mmである。セパレータローラ41のスルーダウン距離L
tdの設定値は10mmである。これらの設定値は一例として挙げたものであり、本実施形態では媒体供給装置1における各パラメータの設定値は、所定の適切な条件等を満たす範囲であれば、
図11に挙げた値に限定されない。
【0058】
また、本実施形態の媒体供給装置1は、媒体Sが薄いシートの場合も対応可能である。薄いシートはコシが弱く、厚みのあるシートに比べて分離時に搬送時のジャム(詰まり)が発生しやすい傾向にある。一方で、薄いシートはリタードローラ42の逆方向の負荷トルクが比較的低くても分離が可能である。つまり、重送検出していないときや一度目の重送検出時には、薄いシートがジャムなどのダメージを起こさない比較的低めの負荷トルクに設定しておく。これにより、一度目の重送検出で薄いシートの再分離が可能となる。続いて、二度目の重送検出するのは薄いシートの可能性はほとんどなく、分離しにくいシートを対象とした高めの負荷トルクで分離を行うことが可能となる。
【0059】
また、
図12は、重送検出回数とリタードローラのトルクの関係の一例を示す表である。具体的には、
図12では、同一シート分離中の重送検出回数nとリタードローラ軸トルク値T
nの対応表(テーブル)の一例が示されている。
図12において、重送検出回数nが1回のときのリタードローラ軸トルク値T
1は50mN・mである。重送検出回数nが2回のときのリタードローラ軸トルク値T
2は70mN・mである。重送検出回数nが3回のときのリタードローラ軸トルク値T
3は80mN・mである。これらのトルク値T
nは一例として挙げたものであり、
図12に挙げた値に限定されない。本実施形態では、重送検出回数n=1のときは、搬送時にジャムを起こさず薄いシートを搬送又は分離可能なトルク値T
1が設定される。この重送検出回数が1回目で薄いシートの分離はほぼ完了すると考えられるので、仮に同一シートで2回目の重送検出となった場合には、そのシートは薄いシートより搬送時におけるジャムやダメージが起きにくいシートと見做せるので、より好適に分離を安定に行える高めのトルク値T
2に設定可能である。このようなテーブルをメモリ10b内に記憶して制御することで、同一シート重送検出回数の初回は低めのトルク値に設定し、重送検出回数が増えるに従い徐々にトルク値を増大させる制御を行うことが可能となる。このように、本実施形態では、制御部としてのコントローラ10aは、上述の第2制御を実行する際、重送検出センサ6により検出される媒体Sの重送検出回数の増加に応じて、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bが与える搬送負荷が高くなるように設定する。また、本実施形態においては、同じシートの2回目の重送検出まで段階的にリタードローラ42の逆方向の負荷トルクを制御する方式を適用してもよいし、2回以上の重送検出に対応するべく同じシートの重送検出回数をカウントし、その重送検出カウント数とリタードローラ42の逆方向の負荷トルクテーブルを有し、重送検出カウント数に応じて逆方向の負荷トルクを段階的に制御することも可能である。
【0060】
これにより、同じシートで重送検出した場合には、負荷トルクを段階的に上げることで、薄いシートの搬送性に配慮しつつ、確実なシート分離を行うことが可能となる。当然ながら、重送検出センサ6はフィードローラ51から離れているほど、再分離可能マージンとして有利ではある。
【0061】
最後に、
図13〜
図16を参照して、本実施形態に係る媒体供給装置1の処理について説明する。
図13及び
図14は、実施形態に係る媒体供給装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図15は、
図13及び
図14に示す媒体供給装置の処理が実行される際における各種機構の状態の一例を示すタイムチャートである。
図16は、リタードローラのトルク制御の一例を示すグラフである。なお、
図13及び
図14のステップS1〜S20は、
図15のタイムチャートの上部に記載された番号1〜20に対応する。
図15のタイムチャートでは、
図15中の左側から右側へ向かって各種制御機構がそれぞれどのような状態にあるかを表している。
【0062】
図13に示すように、制御部としてのコントローラ10aは、積層された複数のシート状の媒体Sから1枚ずつ媒体Sを搬送するための給紙制御を開始することを示すフラグを立てると(ステップS1)、まず、フィードローラ駆動モータを制御してフィードローラ51の駆動を開始させる(ステップS2)。
図15を参照すると、ステップS2以降、フィードローラ51の周速度が一定速度になっている。そして、コントローラ10aは、リタードローラ駆動モータ42aを制御してリタードローラ42の逆転駆動を開始させる(ステップS3)。
図15を参照すると、ステップS3では、リタードローラ42のモータ制御の状態が0からV
reに変化している。そして、コントローラ10aは、メモリ10b内に記憶する重送検出カウント(重送検出回数)を「MF=0」にリセットする(ステップS4)。そして、コントローラ10aは、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bを制御してリタードローラ42の逆方向の負荷トルクをT
1に設定する(ステップS5)。
図15を参照すると、ステップS5では、リタードローラ42の回転負荷の状態が0からT
1に変化している。
【0063】
続いて、コントローラ10aは、シート保持部としてのホッパ2に媒体としてのシートが有るか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6では、例えば、コントローラ10aは、ホッパ2の積載面2a上の任意の位置に設置可能な検出センサ等から出力される検出信号に基づいて、ホッパ2にシート(媒体)が有るか否かを判定する。ステップS6において、コントローラ10aは、シートが無いと判定した場合(ステップS6:No)、上記給紙制御を終了することを示すフラグをたてる(ステップS7)。その後、本処理を終了する。
【0064】
一方、ステップS6において、コントローラ10aは、シートが有ると判定した場合(ステップS6:Yes)、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を開始させる(ステップS8)。
図15を参照すると、ステップS8では、セパレータローラ41の周速度が0からV
fに向けて変化しつつある。また、リタードローラ42の回転状態も0からV
fに向けて変化しつつある。そして、コントローラ10aは、ピックローラ駆動モータを制御してピックローラ31の駆動を開始させることで、ピック動作を開始させる(ステップS9)。
図15を参照すると、ステップS9では、ピック制御の状態が停止から制御中に変化している。
【0065】
続いて、コントローラ10aは、セパレータローラ41とリタードローラ42との間のニップ部に媒体としての用紙の先端が到達したか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10では、例えば、コントローラ10aは、分離部4のニップ部近傍に設置された媒体検出センサ7により出力される検出信号に基づいて、ニップ部に用紙の先端が到達したか否かを判定する。ステップS10において、コントローラ10aは、ニップ部に用紙の先端が到達したと判定した場合(ステップS10:Yes)、ピックローラ駆動モータを制御してピックローラ31の駆動を停止させることで、ピック動作を終了させる(ステップS11)。
図15を参照すると、ステップS10及びステップS11では、セパレータローラニップにシートが到達したかを示す状態が、シート無からシート有に変化しており、ピック制御の状態が制御中から停止に変化している。一方、ステップS10において、コントローラ10aは、ニップ部に用紙の先端が到達していないと判定した場合(ステップS10:No)、ニップ部に用紙の先端が到達したと判定されるまで(すなわち、ステップS10:Yes判定になるまで)、ステップS10の処理を繰り返す。
【0066】
続いて、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいて重送を検出したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において、コントローラ10aは、重送を検出したと判定した場合(ステップS12:Yes)、メモリ10b内に記憶する重送検出カウント数MFを「+1」カウントアップする(ステップS13)。そして、コントローラ10aは、トルクリミッタ42bを制御してリタードローラ42の逆方向トルクを、メモリ10b内に記憶された重送検出カウント数MF(この場合1回)に応じて制御する(ステップS14)。そして、コントローラ10aは、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を停止させる(ステップS15)。これにより、ステップS15において、リタードローラ42により重送状態にある媒体を搬送方向の反対方向へ戻す制御(上述の第1制御)が実行されることになる。
図15を参照すると、ステップS12〜ステップS15では、重送検出センサ6の状態は1枚以下から2枚以上に変化しており、重送検出回数カウントの状態が0回から1回に変化している。また、セパレータローラ41の周速度がV
fから0に向けて変化しつつある。また、リタードローラ42の回転状態もV
fから0に向けて変化しつつある。
図15において、このステップ15の後のリタードローラ42の回転状態は、V
fから0に変化し、更に0からV
reに変化して次にステップS16ではV
reを維持した状態となる。
【0067】
続いて、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいて同一のシートに対して重送状態が解消したか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいた結果、重送状態にあったシートが未だ複数枚のままであると判定した場合は(ステップS16:Yes)、重送状態が解消していないため、ステップS16にて重送状態にあったシートが1枚になり、重送状態が解消したと判定されるまで(すなわち、ステップS16:No判定になるまで)、ステップS16の処理を繰り返す。
【0068】
一方、ステップS16において、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいた結果、重送状態が解消したと判定した場合は(ステップS16:No)、再度、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を開始させる(ステップS17)。
図15を参照すると、ステップS16では、重送検出センサ6の状態は2枚以上から1枚以下に変化しており、リタードローラ42の回転状態はV
reを維持した状態にある。また、ステップS17では、セパレータローラ41の周速度が0からV
fに向けて変化しつつある。また、リタードローラ42の回転状態もV
reから0を通過してV
fに向けて変化しつつある。
【0069】
続いて、コントローラ10aは、ステップS17の処理の後、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいて重送を検出したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において、コントローラ10aは、ステップS17の処理の後、重送を検出したと判定した場合(ステップS12:Yes)、メモリ10b内に記憶する重送検出カウント数MFを更に「+1」カウントアップする(ステップS13)。そして、コントローラ10aは、トルクリミッタ42bを制御してリタードローラ42の逆方向トルクを、メモリ10b内に記憶された重送検出カウント数MF(この場合2回)に応じて制御する(ステップS14)。そして、コントローラ10aは、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を停止させる(ステップS15)。これにより、ステップS15において、一度重送状態にあると判定された媒体を分離した後に、再度重送状態にあると判定された場合には、一度目と比べて二度目の方が大きい搬送負荷が媒体に対して作用するように設定した状態で、この媒体を搬送方向の反対方向へ戻す制御(上述の第2制御)が実行されることになる。
図15を参照すると、上記ステップS17の後のステップS12〜ステップ15では、重送検出センサ6の状態は1枚以下から2枚以上に変化しており、重送検出回数カウントの状態が1回から2回に変化している。また、セパレータローラ41の周速度がV
fから0に向けて変化しつつある。また、リタードローラ42の回転状態もV
fから0に向けて変化しつつある。更に、
図15において、リタードローラ42の回転負荷がT
1からT
2に変化している。このステップS15の後のリタードローラ42の回転状態は、V
fから0に変化し、更に0からV
reに変化していく。そして、次のステップS16では、1回目よりも大きなリタードローラ42の回転負荷T
2がある状態で、かつ、リタードローラ42の回転状態としてV
reを維持した状態となる。
【0070】
続いて、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいて同一のシートに対して重送状態が解消したか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいた結果、重送状態にあったシートが未だ複数枚のままであると判定した場合は(ステップS16:Yes)、重送状態が解消していないため、ステップS16にて重送状態にあったシートが1枚になり、重送状態が解消したと判定されるまで(すなわち、ステップS16:No判定になるまで)、ステップS16の処理を繰り返す。
【0071】
一方、ステップS16において、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいた結果、重送状態が解消したと判定した場合は(ステップS16:No)、再度、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を開始させる(ステップS17)。
図15を参照すると、2回目のステップS16では、重送検出センサ6の状態は2枚以上から1枚以下に変化しており、リタードローラ42の回転状態はV
reを維持した状態にある。更に、2回目のステップS16では、リタードローラ42の回転負荷の状態が、1回目のステップS16のときのT
1よりも大きなT
2になっている。また、セパレータローラ41の周速度が0からV
fに向けて変化しつつある。更に、2回目のステップS17では、リタードローラの回転状態もV
reから0に変化し停止状態を維持している。
【0072】
続いて、コントローラ10aは、重送検出センサ6から出力される検出信号に基づいて重送を検出したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において、コントローラ10aは、重送を検出せずに重送状態が解消されたと判定した場合(ステップS12:No)、搬送部5のフィードローラ51と従動ローラ52との間のニップ部に用紙の先端が到達したか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18において、例えば、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部から上流方向に向かって直前の位置に配置可能な媒体検出センサ等から出力される検出信号に基づいて、搬送部5のニップ部に用紙の先端が到達したか否かを判定する。ステップS18において、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部に用紙の先端が到達していないと判定した場合(ステップS18:No)、ステップS12の処理へ戻る。一方、ステップS18において、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部に用紙の先端が到達したと判定した場合(ステップS18:Yes)、セパレータローラ駆動モータ41aを制御してセパレータローラ41の駆動を停止させる(ステップS19)。
図15を参照すると、ステップS12,ステップS18及びステップS19では、フィードローラシートセンサの状態がシート無からシート有に変化しており、セパレータローラ41の周速度がV
fから0に向けて変化しつつある。
【0073】
続いて、コントローラ10aは、搬送部5のフィードローラ51と従動ローラ52との間のニップ部を用紙の後端が通過したか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、例えば、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部から上流側の所定の位置に配置可能な媒体検出センサと、搬送部5のニップ部から下流側の所定位置に配置された媒体検出センサ7とから出力される検出信号に基づいて、搬送部5のニップ部を用紙の後端が通過したか否かを判定する。ステップS20において、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部を用紙の後端が通過していないと判定した場合は(ステップS20:No)、搬送部5のニップ部を用紙の後端が通過したと判定されるまで(すなわち、ステップS20:Yes判定されるまで)、ステップS20の処理を繰り返す。一方、ステップ20において、コントローラ10aは、搬送部5のニップ部を用紙の後端が通過したと判定した場合は(ステップS20:Yes)、メモリ10b内に記憶する重送検出カウント(重送検出回数)を「MF=0」にリセットする(ステップS4)。そして、コントローラ10aは、トルク制御機構としてのトルクリミッタ42bを制御してリタードローラ42の逆方向トルクをT
1に設定する(ステップS5)。
図15を参照すると、ステップS20,ステップS4及びステップ5では、重送検出回数カウンタの状態が2回から0回に変化しており、フィードローラシートセンサの状態がシート有からシート無に変化している。また、リタードローラ42のモータ制御の状態がT
2からT
1に変化している。その後、コントローラ10aは、次の紙の給紙を行うために、ステップS6においてホッパ2上にシートがあると判定する処理へ移行して、ホッパ2上にシートがないと判定されるまで本処理の実行を続ける。
【0074】
ここで、上述の
図15において、リタードローラ42の回転負荷の状態として、重送検出回数0回〜2回に夫々対応するトルク値0〜T
2を一例に説明したが、これに限定されない。本実施形態の媒体供給装置1は、
図16に示すように、重送検出回数(
図16において、1回目〜5回目)の増加に応じて、リタードローラ42のトルク値(
図16において、T
1〜T
5)を高める設定を行うことができる。但し、トルク値T
nの値は、上述のT
maxを超えない値に設定されるものとする。
【0075】
本実施形態では、重送検出センサ6にて、複数のシートを検出して再分離制御を行うが、重送検出センサ6が媒体を「1枚」と判断するのは、余剰なシートが戻り始めた段階であり、余剰なシートがニップ部(セパレータローラ41とリタードローラ42対の接触部)の上流側に戻ることが給紙として安定した状態である。そのためには、重送検出センサ6が「1枚」と検出したら直ちにセパレータローラ41を搬送方向に回転駆動するのではなく、リタードローラ42の逆回転により余剰なシートが戻りきる時間分待ってから、セパレータローラ41の回転駆動を再開するディレイ制御をすることが望ましいことになる。つまり、重送検出した後に重送検出センサ6において2枚以上と検出された状態から、1枚と検出された際には、セパレータローラ41の回転再開までにディレイ時間を設け、そのディレイ時間t
dはリタードローラの逆転周速度V
reとすると、条件式:t
d≧L
0/V
reを満足することでさらに安定した分離制御が行える。そこで、本実施形態では、制御部としてのコントローラ10aは、上述の第1制御を実行後、媒体Sの重送状態が解消されて重送検出センサに6より当該媒体Sが1枚であると判定されたときから所定時間経過後に、当該第1制御を解除してセパレータローラ41の回転駆動を再開する。例えば、上述の
図11の設定値の場合、セパレータローラ回転再開までのディレイ時間t
dは、t
d≧25/300≒0.083[sec]となり、重送検出センサ6で「複数枚」から「1枚」となってから、少なくとも0.083秒経過後にセパレータローラ41を再稼働することになる。
【0076】
また、本実施形態では、重送検出したシート束は傾向として分離が難しく、再度重送検出しやすい可能性があるため、確実に分離してフィードローラ51に到達するまでは、より安全な低速度のシート分離速度が望ましい。そこで、重送検出したシート束において再分離制御を行い1枚と検出されてからフィードローラ51に到達したと検出されるまでは、安定した分離状態を保持するように、セパレータローラ51の給送速度を通常の搬送時より遅く設定することが望ましい。そこで、本実施形態では、制御部としてのコントローラ10aは、セパレータローラ41の回転駆動を再開する場合には、上述の第1制御の実行前における媒体Sを搬送する搬送速度よりも遅い搬送速度で当該媒体Sを搬送方向の下流側へ搬送させる。以上の制御及び条件によって、より好適に安定な再分離が可能となる。
【0077】
なお、上述の実施形態では、セパレータローラ41を停止保持する一実施形態としてセパレータローラ41の駆動伝達系にワンウェイクラッチを設置する場合を説明したが、他の方法としてセパレータローラ41の駆動系のモータを停止保持する制御を行い、この保持トルク(ステッピングモータの場合、最大静止トルク)によってセパレータローラ41の逆回転を防止してもよい。また、本実施形態における制御により、余剰なシートがホッパ2上に戻される際に、ホッパ2上のシートが連られて戻されることを防止するために、ホッパ2上に積載されたシート束の上からシートを順次繰り出すピックローラ31は、重送検出した際に、シート束から離間するように制御してもよい。また、同様の理由から、重送検出した際には、ピックローラ31に対してホッパ2を離間制御してもよい。