(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、還元剤の流量を制御するための制御値を有しており、前記還元剤ポンプの異常時は、前記制御値に基づいて前記洗浄水ポンプを制御することにより還元剤を前記噴射ノズルから噴射する制御を行う請求項2に記載の還元剤噴射装置。
排ガス脱硝装置に排ガスを導く排気管の内部に設けられた噴射ノズルと、還元剤ポンプを有し前記噴射ノズルに接続された還元剤供給系と、洗浄水ポンプを有し前記噴射ノズルに接続された洗浄水供給系とを有する還元剤噴射装置の運転方法であって、
通常運転時に、還元剤供給系からの還元剤を前記還元剤ポンプにより前記噴射ノズルに圧送して噴射することで前記排ガス脱硝装置を動作させる通常運転ステップと、
運転終了時に、洗浄水供給系からの洗浄水を前記洗浄水ポンプにより前記噴射ノズルに圧送して前記噴射ノズルを洗浄するノズル洗浄ステップと、
還元剤ポンプの異常時に、前記還元剤供給系を前記洗浄水ポンプに接続し、前記洗浄水ポンプにより還元剤を前記噴射ノズルに圧送して噴射することで前記排ガス脱硝装置を動作させる緊急運転ステップと、
を有する還元剤噴射装置の運転方法。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1〜3には、排ガスの浄化に用いられる排ガス脱硝装置に還元剤を供給する還元剤噴霧装置又は還元剤供給装置に関する発明が開示されている。
まず、下記特許文献1に記載された還元剤噴霧装置では、噴霧器11への配管に三方弁21を設け、尿素水22と純水23の切換を行う構成となっている。この発明では、噴霧器11が二重化されてはいるが、ポンプ9の二重化についての記載は無い。
【0003】
次に、下記特許文献2に記載された還元剤供給装置の発明は、尿素の固形化による閉塞の防止を目的としている。同文献の
図4に係る実施例では、流量制御ポンプ2245に、三方バルブ( 流量制御バルブ2243) を介して還元剤供給部2221と貯水タンク2231を接続し、両者でポンプを兼用することが記載されている。但し、ポンプは1台であり、尿素水ポンプの二重化は考えられていない。
【0004】
さらに、下記特許文献3に記載された還元剤噴射装置の発明は、噴霧ノズルの閉塞防止のために尿素水と洗浄水の切換を行うものである。同文献の
図1に示すように、この発明では、水、尿素水の各供給系統に、流量計、圧力計、電磁弁をそれぞれ備えることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献に開示されているような従来の還元剤噴射装置を有する脱硝装置では、尿素水ラインと洗浄水ライン、それぞれのラインにポンプを搭載しており、脱硝装置が停止している間に尿素水噴射ノズル内に残った尿素水を結晶化させないため、洗浄水は脱硝装置の始動及び停止時に尿素水噴射ノズルより噴射するものとされていた。
【0007】
ディーゼルエンジンを駆動源としており、NOx排出について条約等で規制を受ける、前述したような従来の還元剤噴射装置を有する脱硝装置が設けられた船舶では、その航行中に尿素水ポンプが故障した場合には、脱硝装置を停止せざるを得ない。そして、脱硝装置を停止すれば、エンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物が高くなり、当該運航海域が排ガス規制エリア(ECA、Emission Control Area )である場合には条約に違反する恐れが生じる。このような問題を解決するためには、尿素水ポンプが故障した場合のバックアップとして、もう1台尿素水ポンプを搭載しておき、その尿素水ポンプを用いることにより、排気ガス中の窒素酸化物を低いレベルで維持することが考えられる。しかしながら、この場合には、脱硝装置における尿素水の供給システムが複雑化し、また船舶に占める本装置全体の設置面積が増加し、尿素水ポンプの設備コストも増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の課題を解決することを目的としており、還元剤を噴射ノズルから噴射して排ガス脱硝装置に供給する還元剤噴射装置において、還元剤ポンプにバックアップを設ける必要がなく、かつ還元剤ポンプが故障した際には洗浄水ポンプを還元剤の供給用に使用することができる還元剤噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された還元剤噴射装置は、
排ガス脱硝装置に排ガスを導く排気管の内部に設けられた噴射ノズルと、
還元剤を前記噴射ノズルに送る還元剤配管と、
前記還元剤配管中に設けられた還元剤ポンプと、
洗浄水を前記噴射ノズルに送る洗浄水配管と
前記洗浄水配管中に設けられた洗浄水ポンプと、
前記洗浄水ポンプよりも上流側の前記洗浄水配管に設けられて前記還元剤配管からの還元剤を前記洗浄水配管に導入する切替部と、
を備えている。
【0010】
請求項2に記載された還元剤噴射装置は、請求項1に記載の還元剤噴射装置において、前記還元剤ポンプの異常時に前記切替部の切り換えを行う制御部を備えている。
【0011】
請求項3に記載された還元剤噴射装置は、請求項2に記載の還元剤噴射装置において、前記制御部は、還元剤の流量を制御するための制御値を有しており、前記還元剤ポンプの異常時は、前記制御値に基づいて前記洗浄水ポンプを制御することにより還元剤を前記噴射ノズルから噴射する制御を行う。
【0012】
請求項4に記載された船舶は、エンジンと、排ガス脱硝装置と、請求項1〜3のいずれか一つに記載の還元剤噴射装置を備えている。
【0013】
請求項5に記載された還元剤噴射装置の運転方法は、
排ガス脱硝装置に排ガスを導く排気管の内部に設けられた噴射ノズルと、還元剤ポンプを有し前記噴射ノズルに接続された還元剤供給系と、洗浄水ポンプを有し前記噴射ノズルに接続された洗浄水供給系とを有する還元剤噴射装置の運転方法であって、
通常運転時に、還元剤供給系からの還元剤を前記還元剤ポンプにより前記噴射ノズルに圧送して噴射することで前記排ガス脱硝装置を動作させる通常運転ステップと、
運転終了時に、洗浄水供給系からの洗浄水を前記洗浄水ポンプにより前
記噴射ノズルに圧送して前記噴射ノズルを洗浄するノズル洗浄ステップと、
還元剤ポンプの異常時に、前記還元剤供給系を前記洗浄水ポンプに接続し、前記洗浄水ポンプにより還元剤を前記噴射ノズルに圧送して噴射することで前記排ガス脱硝装置を動作させる緊急運転ステップと、
を有している。
【0014】
請求項6に記載された還元剤噴射装置の運転方法は、請求項5記載の還元剤噴射装置の運転方法において、
前記緊急運転ステップにおいては、
前記噴射ノズルから所定量の還元剤を噴射するように前記還元剤ポンプを制御するための制御値に基づいて前記洗浄水ポンプを制御することにより、前記洗浄水ポンプによって前記噴射ノズルから噴射する還元剤の量を調節する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば次に説明する船舶の技術分野において、又は当該技術分野における次のような技術的要請に対応するに際し、以下に各項ごとに説明するような作用・効果を得ることができる。
船舶の技術分野においては、IMOの海洋汚染防止条約によりNOx排出について規制が行われているが、その3次規制では、排ガス規制エリアを航行する船舶に対し、NOxの排出を1次規制での規制値から80%削減することが定められている。このような規制に対応するため、船舶のディーゼルエンジン等においてはSCR(Selective
Catalytic Reduction、選択触媒還元)システムが排ガス脱硝装置として広く使用されている。SCRシステムでは、排ガス中に噴射ノズルより還元剤を噴射し、反応器において触媒で化学反応させることで、NOxの低減を行う。
【0016】
請求項1に記載の発明では、還元剤ポンプに異常が発生した際に、切替部で切り換えを行って洗浄水ポンプに還元剤を導入し、洗浄水ポンプを用いて還元剤を噴射ノズルに圧送し、排ガス中に還元剤を噴霧することができる。これにより、還元剤ポンプ異常時でも排ガス脱硝装置の運転を継続でき、また、装置の冗長性を得るために予備の尿素水ポンプを備える必要がない。
【0017】
さらに、切替部は、より具体的には、洗浄水配管中の洗浄水ポンプの上流側に挿入された三方切換弁と、その三方切換弁に一端が接続し、もう一端が、還元剤配管中の還元剤ポンプの上流側あるいは還元剤タンクに接続された、分岐配管とを有するものとすることができる。また三方弁を用いず、洗浄水配管中の洗浄水ポンプの上流側に一端が接続し、もう一端が、還元剤配管中の還元剤ポンプの上流側あるいは還元剤タンクに接続された、分岐配管と、分岐配管中および洗浄水配管中の分岐配管より上流側にそれぞれ設けられた開閉弁とを有するものとすることもできる。
還元剤としては尿素水が代表的であるが、他の薬剤も適用可能である。
【0018】
切替部の切り換えは手動で行うことも可能であるが、より好適には、請求項2に記載の発明のように、還元剤ポンプの異常をセンサ等で検知し制御部により自動で行うことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、以下に説明するような作用・効果が得られる。
すなわち、前記SCRシステムを運転する際には、排ガス中のNOx排出量に応じた還元剤の流量制御が重要となる。還元剤が少ないと充分な脱硝反応が行われず、還元剤(尿素水)が多すぎると加水分解されたアンモニアが触媒後流に流出するためである。還元剤ポンプの正常時は、脱硝装置に接続されるエンジンの出力の大きさに応じて適切な流量の還元剤が、還元剤ポンプにより噴射ノズルに圧送される。一方で、洗浄水ポンプの流量は、通常は前述と無関係な洗浄に適した流量に設定される。したがって、還元剤ポンプの異常時に洗浄水ポンプを用いて還元剤を噴射する際には、洗浄水ポンプの系統においても、還元剤の流量を制御することが望ましい。
【0020】
還元剤の流量の制御値は、より具体的には、脱硝装置に接続されるエンジンの出力の大きさに対する還元剤の流量の関係を示すテーブル、グラフ、関数等のデータとすることができる。また、還元剤の流量制御値は、エンジンから排出される排ガス中のNOx濃度をセンサにより計測し、計測されたNOx排出量と還元剤の流量との関係を示すテーブル、グラフ、関数等のデータとすることができる。また、脱硝装置によって処理された排ガス中でのNOx濃度をセンサにより計測し、これからのフィードバック演算により求めた還元剤の流量とすることができる。
【0021】
還元剤の流量の制御値に基く制御は、流量の制御値に基いて洗浄水ポンプの回転数を制御するものとすることができるが、他の制御、例えば、流量の制御値に基いてコントロールバルブを制御するものでも良い。洗浄水ポンプの容量が還元剤ポンプの容量と同等の場合には、流量の制御値に基づいて、還元剤ポンプを運転したのと同等の速度で洗浄水ポンプを運転するのが標準的であるが、必要に応じて相対的に早い速度または遅い速度としても良い。洗浄水ポンプの容量が還元剤ポンプの容量よりも小さい場合には、流量の制御値に基づいて、洗浄水ポンプを相対的により早い速度で運転し、適切な還元剤の流量を得ても良い。また、容量の小さな洗浄水ポンプでは充分な還元剤の流量が得られない場合には、制御部は、洗浄水ポンプの容量が上限に達する際にエンジンの出力を制限する制御を行っても良い。
【0022】
本発明の内容は、排ガス脱硝装置に還元剤を供給する技術分野であれば、如何なる用途においても実施可能であるが、請求項4に記載の発明は、IMOの海洋汚染防止条約の排ガス規制エリアを航行する可能性のある船舶に対し特に有用とされるものである。
【0023】
請求項5及び請求項6に記載の方法の発明は、請求項1乃至3に記載の還元剤噴射装置の発明と、請求項1乃至3に記載の還元剤噴射装置を有する請求項5に記載の船舶の発明において、還元剤噴射装置を運転する際、還元剤ポンプに異常が発生した時でも排ガス脱硝装置の運転を継続できるという実用上顕著な効果を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を
図1〜
図5を参照して説明する。
図1〜
図3を参照して実施形態の還元剤噴射装置1等の構成について説明する。
この還元剤噴射装置1は、排ガス脱硝装置2に排ガスを導くエンジン3の排気管4内に還元剤である尿素水を噴射して供給する装置である。排ガス脱硝装置2には還元触媒が設けられており、排ガス中の窒素酸化物(NOX )は還元剤である尿素水と還元触媒により還元され無害化されて環境中に排出される。
【0026】
エンジン3の排気管4には、エンジン3と排ガス脱硝装置2の間に噴射ノズル5が設けられている。噴射ノズル5は、排気管4の周壁に設けられたT継手状の取付部のフランジ板を気密状態に貫通して固定されている。噴射ノズル5には、還元剤を前記噴射ノズル5に送る還元剤配管としての尿素水ライン6と、洗浄水を前記噴射ノズル5に送る洗浄水配管としての洗浄水ライン7に並列に接続されている。
【0027】
尿素水ライン6は、その最も上流側において、還元剤供給源として尿素水タンク8に接続されている。尿素水タンク8から供給される尿素水は、尿素水ライン6中に設けられた還元剤ポンプとしての尿素水ポンプ9により下流に向けて圧送される。尿素水ライン6において、尿素水ポンプ9の下流側(吐出側)には、圧力検知部10が接続され、さらに下流側には流量検知部11が接続されており、流量検知部11の流出側が前記噴射ノズル5に接続されている。
【0028】
洗浄水ライン7は、その最も上流側において、洗浄水供給源として洗浄水タンク12に接続されている。洗浄水タンク12から供給される洗浄水は、洗浄水ライン7中に設けられた洗浄水ポンプ13により下流に向けて圧送される。洗浄水ライン7において、洗浄水ポンプ13の下流側(吐出側)には、圧力検知部14が接続され、さらに下流側には流量検知部15が接続されており、流量検知部15の流出側が前記噴射ノズル5に接続されている。ここで、尿素水ライン6と洗浄水ライン7は合流部16で合流されて噴射ノズル5に接続される。
【0029】
なお、
図1及び
図2においては、洗浄水ポンプ13と尿素水ポンプ9は同一形状のシンボルで表しているが、両ポンプ13,9は、最大出力、最大流量等の性能、仕様が必ずしも同一であるとは限らない。
【0030】
洗浄水ポンプ13よりも上流側の洗浄水ライン7には、切替部として切替弁20が設けられている。この切替弁20は流路の切り替えをアクチュエータ22によって行う電磁弁であり、切り替え可能なポートの数が3つある三方弁である。すなわち、洗浄水タンク12に接続された第1入口Aと、洗浄水ポンプ13に接続された出口Bと、切替操作によって第1入口Aに代えて出口Bに接続される第2入口Cの3つのポートを有している。そして、前記尿素水ライン6は、尿素水タンク8と尿素水ポンプ9の中間位置から分岐したバイパス管21を有しており、このバイパス管21が第2入口Cに接続されている。
【0031】
従って、アクチュエータ22によって切替弁20の弁体を操作することにより、切替弁20の流路を2つの選択肢から択一的に選択・設定することができる。すなわち、第1には、第1入口Aと出口Bを連通させ、洗浄水タンク12から洗浄水ポンプ13によって洗浄水を洗浄水ライン7に供給する流路である。この流路を、切替弁20の連通しているポートの名称からABと称する。この場合、尿素水ライン6のバイパス管21から洗浄水ライン7に尿素水が流入することはない。第2には、第2入口Cと出口Bを連通させ、尿素水タンク8からバイパス管21及び切替弁20を経て洗浄水ポンプ13によって尿素水を洗浄水ライン7に供給する流路である。この流路を、切替弁20の連通しているポートの名称からCBと称する。この場合、洗浄水タンク12から切替弁20を通って洗浄水ライン7に洗浄水が流入することはない。
【0032】
この還元剤噴射装置1は、排ガス脱硝装置2の通常運転中(連続運転又は停止操作時)に、尿素水ポンプ9と洗浄水ポンプ13の駆動を制御するとともに、連続運転中に尿素水ポンプ9に異常が発生した時には、切替弁20のアクチュエータ22を操作して尿素水ライン6のバイパス管21を洗浄水ライン7に接続するように流路の切り替え制御を行う制御部25を備えている。
【0033】
制御部25には、洗浄水ライン7の圧力検知部14と流量検知部15の信号ラインが接続されている。制御部25は、この信号ラインを介して、洗浄水ライン7の使用時に洗浄水の圧力と流量に関するデータを取得することができる。また制御部25は、洗浄水ポンプ13の駆動を制御するための制御値(パラメータ)を備えている。この制御値は、噴射ノズル5から噴射する洗浄水の流量や圧力が、噴射ノズル5を洗浄する目的に適した値となるように設定されている。制御部25は、洗浄水ライン7の使用時には、この制御値に基づいて洗浄水ポンプ13を制御するが、これに加え、圧力検知部14からの圧力と流量検知部15からの流量を用いて、洗浄水の圧力や流量が目標の値に収斂するように制御を行ってもよい。
【0034】
制御部25には、尿素水ライン6の圧力検知部10と流量検知部11の信号ラインが接続されている。制御部25は、この信号ラインを介して、尿素水ライン6の使用時に尿素水の圧力と流量に関するデータを取得することができる。また制御部25は、尿素水ポンプ9の駆動を制御するための制御値(パラメータ)を備えている。すなわち、本実施形態のようなSCRシステムを運転する際には、排ガス中のNOx排出量に応じた還元剤の流量制御が重要となる。尿素水が少ないと充分な脱硝反応が行われず、尿素水が多すぎると加水分解されたアンモニアが触媒後流に流出するためである。尿素水ポンプ9が正常に作動している際には、排ガス脱硝装置2に接続されるエンジン3の出力の大きさ又は負荷に応じた適切な流量の尿素水を噴射ノズル5に圧送する必要がある。
【0035】
図3は、実施形態において還元剤噴射装置1を制御する際に使用される尿素水流量(縦軸、相対値で表す。)とエンジン3の負荷(横軸、%で表す。)との関係を示す制御データを例示するグラフである。制御部25は、排ガス脱硝装置2の連続運転時には、エンジン3から供給される負荷のデータと、このグラフに示される制御データによって決定される必要な尿素水の流量が実現されるような制御値を予め計算して記憶部に格納しており、駆動時には係る制御値で尿素水ポンプ9を制御し、尿素水の流量を必要な値に設定する。なお、季節による運転環境の変化によりNOx排出量は変化するため、エンジン3の負荷に対する尿素水流量もそれに従った調整がなされており、負荷率毎に調整範囲が存在する。例えば、
図3においては、太い実線で示す基準の尿素水流量に対し、細い実線で囲んだ斜線領域で示すように流量調整範囲が設定され、運転環境が変化しても規制値を満足するようにされる。
【0036】
制御部25は、尿素水ライン6の使用時には、前記制御値に基づいて尿素水ポンプ9を制御するが、これに加え、圧力検知部10からの圧力と流量検知部11からの流量を用いて、尿素水の圧力や流量が目標の値に収斂するように制御を行ってもよい。
【0037】
また、制御部25は、圧力検知部10が検出した圧力や流量検知部11が検出した流量から見て、又は尿素水ポンプ9から送られる故障信号等から見て、尿素水ポンプ9又は尿素水ライン6に異常が発生したと判断される場合には、切替弁20のアクチュエータ22を作動させる制御を行い、切替弁20の流路を第2入口Cから出口Bに至る流路CBに設定するとともに、尿素水ポンプ9を停止し、尿素水ポンプ9を駆動するための前記制御値に基づいて洗浄水ポンプ13を駆動する。これにより、尿素水ポンプ9のバックアップを特に設けていないにも係わらず、尿素水の供給系統に何らかの異常が生じた場合であっても、洗浄水ライン7を利用して尿素水を噴射ノズル5から排気管4内に噴射することができる。
【0038】
図4及び
図5を参照して実施形態の還元剤噴射装置1等の作用について説明する。
図4は、排ガス脱硝装置2の運転手順を示す流れ図である。船舶のディーゼルエンジン3等において、前記還元剤噴射装置1を含む排ガス脱硝装置2であるSCR(選択触媒還元)システムの運転を開始する(S11)。SCR運転を開始すると、排気管4内の排ガス中に噴射ノズル5から尿素水が噴射され、排ガス脱硝装置2(反応器)では触媒によって化学反応が起こりNOxが低減される通常運転の状態となる(S12)。
【0039】
この通常運転においては、切替弁20の流路は次のように設定されている。すなわち、第1入口Aと出口Bが連通しており(
図1に示す状態。流路AB)、第2入口Cは遮断されているので、洗浄水ライン7と、尿素水ライン6は遮断されている。そして、尿素水ポンプ9は駆動され、洗浄水ポンプ13は停止しているので、噴射ノズル5からは尿素水のみが噴射される。
【0040】
排ガス脱硝装置2が正常に動作している間に、尿素水ポンプ9及び尿素水ライン6に故障が検出されたか否かが、制御部25において定期的に判断される(S13)。具体的には、次のように( ア)〜( ウ)のいずれかが成立すれば制御部25は故障と判断する。
( ア)負荷率( 機関回転数、噴射量)が一定の場合において、
図3に示すような制御データに基づいて制御部25が生成する尿素水の流量指令値と、流量検知部11が検出した実流量との差異が所定許容範囲を越えて大きい、又は小さい場合。
( イ)制御部25が、尿素水ポンプ9が故障時に発生する故障信号( 断線、可動部品の固着等) を検出した場合。
( ウ)圧力検知部10が検出した尿素水ライン6の圧力が所定許容範囲を外れて変化したことを制御部25が検出した場合( 尿素水ライン6からの漏れによる圧力低下や、何らかの原因による圧力上昇)。
【0041】
制御部25が、尿素水ポンプ9又は尿素水ライン6に故障が検出されたと判断した場合には(S13、YES)、制御部25は、切替弁20の流路を切り替えることによって、尿素水の供給に利用するラインを、尿素水ライン6から洗浄水ライン7に切り替える(S14)。すなわち、第2入口Cと出口Bを連通させ(
図2に示す状態。流路CB)、尿素水タンク8からバイパス管21及び切替弁20を経て洗浄水ポンプ13に至るラインを、尿素水の供給ラインとする。この場合、洗浄水タンク12から切替弁20を通って洗浄水ライン7に洗浄水が流入することはない。
【0042】
同時に制御部25において、洗浄水ライン7の流量、圧力及び洗浄水ポンプ13の駆動制御値を、尿素水ライン6の流量、圧力及び尿素水ポンプ9の制御値に読み替えて設定する(S15)。
【0043】
これによって、洗浄水ライン7と洗浄水ポンプ13によって噴射ノズル5から尿素水が噴射される切替運転が始まる(S16)。
【0044】
図5は、排ガス脱硝装置2の運転停止手順を示す流れ図である(S21)。
前記SCR(選択触媒還元)システムが通常運転(
図4、S12)又は切替運転(
図4、S16)を行っている状態において、その運転が停止されるのは、例えば負荷率が25%未満といった低い状態にあること、また船舶の現在位置が規制領域の外にあること、といった停止条件が満足される場合である。
【0045】
制御部25は、排ガス脱硝装置2の運転の停止条件が満足されている場合、尿素水ポンプ9又は尿素水ライン6等が故障しているか否かを判断する(S22)。この故障判断は、運転中、定期的に行われているものであり、圧力や流量の異常を示す信号や、尿素水ポンプ9から異常を示す信号が送られた場合には、制御部25には故障フラグが立ち、制御部25は故障モードに入る。
【0046】
尿素水ポンプ9及び尿素水ライン6等は故障しておらず、制御部25が故障モードにない場合(S22、NO)には、尿素水ポンプ9を停止し(S23)、洗浄水ポンプ13を始動し(S24)、噴射ノズル5から洗浄水を噴射して噴射ノズル5の洗浄を行う(S25)。所定時間の洗浄を行った後、洗浄水ポンプ13を停止し(S26)、排ガス脱硝装置2が運転を停止する(S27)。
【0047】
尿素水ポンプ9又は尿素水ライン6等が故障しており、制御部25が故障モードにある場合(S22、YES)には、尿素水タンク8からバイパス管21を経て、切替弁20の第2入口Cから出口Bに至る流路CBが形成されているため(
図2参照)、制御部25は、切替え指令を切替弁20のアクチュエータ22に出力して弁体を駆動し、
図1中に示すように切替弁20の流路を第1入口Aから出口Bに至る流路ABに切替え(S28)、洗浄水ライン7に洗浄水が流れるようにする。
【0048】
同時に制御部25において、尿素水ライン6の流量、圧力を達成するように設定されていた洗浄水ポンプ13の制御値を、元の洗浄水ポンプ13の制御値に戻し(S29)、洗浄水ポンプ13によって噴射ノズル5から所定の圧力、流量によって洗浄水を噴射して噴射ポンプを洗浄する(S30)。所定時間の洗浄を行った後、洗浄水ポンプ13を停止し(S31)、排ガス脱硝装置2が運転を停止する(S27)。
【0049】
本実施形態によれば、尿素水ポンプ9や尿素水ライン6に異常が発生した際に、切替弁20を切り替えて洗浄水ポンプ13で尿素水を噴射ノズル5に圧送するので、排ガス中に尿素水を噴霧する動作を継続することができる。これにより、尿素水ポンプ9等の異常時でも排ガス脱硝装置2の運転を継続でき、また、装置の冗長性を得るために予備の尿素水ポンプ9を備える必要がない。
【0050】
なお、切替弁20としては三方弁を用いたが、三方弁を用いずに、
図6又は
図7に示すような変形例の構造を採用することもできる。
すなわち、
図6に示すように、洗浄水ライン7の洗浄水ポンプ13の上流側と、尿素水タンク8を接続する第2バイパス管B2を設け、このバイパス管B2中に第1開閉弁V1を設ける。また、洗浄水ライン7において、第2バイパス管B2と洗浄水ライン7との連結部と、洗浄水タンク12との間に第2開閉弁V2を設ける。さらに、尿素水ライン6において、尿素水ポンプ9と尿素水タンク8の間に第3開閉弁V3を設ける。
【0051】
この構成によれば、通常運転時には、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を閉止し、第3開閉弁V3を開放して尿素水の供給を行うことができる。噴射ノズル5の洗浄時には、第1開閉弁V1と第3開閉弁V3を閉止し、第2開閉弁V2を開放して洗浄水の供給を行うことができる。尿素水ポンプ9が故障した場合には、第2開閉弁V2と第3開閉弁V3を閉止し、第1開閉弁V1を開放して尿素水の供給を行うことができる。なお、この構成においては尿素水ポンプ9を停止することで尿素水ライン6による尿素水の供給は停止できるため、第3開閉弁V3を設けずに省略することも可能である。
【0052】
また、
図7に示すように、洗浄水ライン7の洗浄水ポンプ13の上流側と、尿素水ライン6の尿素水ポンプ9の上流側とを連結する第3バイパス管B3を設け、さらに洗浄水ライン7における第3バイパス管B3との連結部と、洗浄水タンク12との間に第4開閉弁V4を設け、さらにまた第3バイパス管B3に第5開閉弁V5を設ける。
【0053】
この構成によれば、通常運転時には、第4開閉弁V4と第5開閉弁V5を閉止すれば、尿素水の供給を行うことができる。噴射ノズル5の洗浄時には、第5開閉弁V5を閉止し、第4開閉弁V4を開放して洗浄水の供給を行うことができる。尿素水ポンプ9が故障した場合には、第4開閉弁V4を閉止し、第5開閉弁V5を開放して尿素水の供給を行うことができる。
【0054】
以上説明した実施形態では、還元剤としては実施形態で説明したように尿素水が代表的であるが、他の還元性の薬剤も適用可能である。
【0055】
以上説明した実施形態では、切替弁20を電磁弁とし、尿素水ポンプ9の異常をセンサ等で検知し制御部25により自動で切替弁20の流路を切り替えることとしたが、手動で行うことも可能である。
【0056】
以上説明した実施形態では、尿素水の流量の制御値を決定するための制御データとしては、エンジン3の出力の大きさに対する尿素水の流量の関係を示すグラフを例示したが、データ形式には限定はなく、グラフ、関数等のデータとすることもできる。なお、排ガス脱硝装置2によって処理された排ガス中でのNOxの量をセンサにより計測し、これからのフィードバック演算により求めた尿素水の流量とすることもできる。
【0057】
以上説明した実施形態では、尿素水の流量の制御は、尿素水の流量の制御値に基いて洗浄水ポンプ13の回転数を制御して行うことができるが、他の制御値と制御機器による制御、例えば、尿素水の流量の制御値に基いて流量制御弁を制御するものでも良い。
【0058】
また、洗浄水ポンプ13の容量が尿素水ポンプ9の容量と同等の場合には、尿素水の流量の制御値に基づいて、尿素水ポンプ9を運転したのと同等の速度で洗浄水ポンプ13を運転して尿素水を供給するのが標準的であるが、必要に応じて相対的に早い速度または遅い速度としても良い。洗浄水ポンプ13の容量が尿素水ポンプ9の容量よりも小さい場合には、尿素水の流量の制御値に基づいて、洗浄水ポンプ13を相対的により早い速度で運転し、適切な尿素水の流量を得ても良い。また、容量の小さな洗浄水ポンプ13では充分な尿素水の流量が得られない場合には、制御部25は、洗浄水ポンプ13の容量が上限に達する際にエンジン3の出力を制限する制御を行っても良い。
【0059】
本発明が適用される船舶の技術分野においては、排ガス規制エリアを航海する船舶の大部分がSCRシステムを搭載している。また、ECA内では、SCRシステムが故障しても脱硝動作を維持するという冗長性が船級から要求されている。通常、尿素水ポンプは、冗長性を維持するため設備コストの高額化を受忍しつつバックアップとして2台を用意しておき、万が一、尿素水ポンプが故障した場合には、バックアップの尿素水ポンプを稼働させることになっていた。しかしながら、以上説明した実施形態及び変形例の説明から明らかなように、本発明によれば、仮に尿素水ポンプ9が故障した場合であっても、従来から存在している洗浄水ポンプ13を尿素水ポンプ9のバックアップとして使用することができるため、バックアップ専用の尿素水ポンプを用意する必要がなく、設備コストの高額化を招来することなく、ECA内での排ガス規制の遵守を確実に達成することができるという実用上顕著な効果が得られる。
【解決手段】還元剤噴射装置1は、排気管4の内部に設けられた噴射ノズル5と、尿素水ライン6と、尿素水ポンプ9と、洗浄水ライン7と、洗浄水ポンプ13と、洗浄水ポンプの上流側で洗浄水ラインに設けられて尿素水ラインからの尿素水を洗浄水ラインに導入する切替弁22を有する。通常作動時は切替弁を流路ABとするが、尿素水ポンプが故障した場合には切替弁を流路CBとして洗浄水ポンプで尿素水を流量制御して噴射ノズルに供給する。