特許第6235767号(P6235767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6235767
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20171113BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61L9/12
   F04D25/08 307E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-545604(P2017-545604)
(86)(22)【出願日】2017年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2017017868
【審査請求日】2017年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598112279
【氏名又は名称】佐伯 午郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 午郎
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−102362(JP,A)
【文献】 特開2006−325454(JP,A)
【文献】 特開2007−32351(JP,A)
【文献】 実開昭61−149795(JP,U)
【文献】 実開平4−57698(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
A61L 9/00−9/22
B65D 85/00
F04D 25/08−25/14
F24F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇風機の吸込み部分に装着される除菌装置であって、
収容空間を有する筐体と、
前記収容空間へ収容され、殺菌性の物質を格納した通気性の袋体と、を備え、
前記筐体は、
前記吸込み部分と接する面に設けられ空気の吸込み方向に貫通された通気孔と、
前記空気の吸込み方向に対して側方向に貫通された、前記空気が流入する流入孔と、
前記吸込み部分へ引っ掛ける引っ掛け部分と、を有し、
前記除菌装置は前記扇風機の羽根の回転中心に対して偏心位置に装着され、
前記空気の吸込み方向に対する前記筐体の断面形状は扇形である、
除菌装置。
【請求項2】
前記流入孔が設けられた面の面積は、前記通気孔が設けられた面の面積よりも小さく、
前記流入孔が設けられた面の開孔率は、前記通気孔が設けられた面の開孔率よりも大きい、
請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記筐体は、可燃性の材料から構成される、
請求項1又は2に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、除菌装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
伝染病の集団感染や食中毒の発生等の対策として家屋や店舗、病院、ビル等の各種建物の室内を除菌することが行われている。室内の除菌装置として特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5840819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内を除菌する除菌装置の1つとして、送風機を内蔵し、殺菌性の物質を拡散させる装置がある。このような除菌装置であれば、送風機を内蔵することにより室内の隅々まで殺菌性の物質を行き届かせることができ、室内の除菌効果は高まる。しかしながら、殺菌性の物質を拡散させる目的のためだけの送風機の開発は、費用対効果が低い。そこで、除菌装置にかかる費用を抑えるために、室内には通常持ち運びが自在な扇風機やサーキュレータの他、空気清浄機、加湿空気清浄器、羽根の無い扇風機、据置式のパッケージクーラ、天井や壁に装着されるエアーコンディショナ等の送風機が設置されているので、これらの送風機の吹出し口に殺菌性の物質を装着し、吹出し口から吹出される気流に殺菌性の物質を混ぜて室内に気散させる除菌装置も開発されている。このような除菌装置であれば、既に設置されている送風機を利用して除菌するため、費用は安く抑えられる。しかしながら、吹出し口は空気が勢いよく吹出す場所であるため、殺菌性の物質を吹出し口に固定し続ければ、殺菌性の物質は過量に気散され、除菌性能は短時間しか発揮されない。
【0005】
そこで、本願は、長時間安定的に除菌性能を発揮することができる、費用対効果の高い除菌装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、空気の吸込み部分に除菌装置を装着し、除菌装置の筐体内に殺菌性の物質を格納した通気性の袋体を収容することとした。
【0007】
詳細には、空気を吸込み、吹出す装置の吸込み部分に装着される除菌装置であって、収容空間を有する筐体と、収容空間へ収容され、殺菌性の物質を格納した通気性の袋体と、を備え、筐体は、吸込み部分と接する面に設けられ、空気の吸込み方向に貫通された通気孔と、空気の吸込み方向に対して側方向に貫通された、空気が流入する流入孔と、を有する。
【0008】
このような除菌装置であれば、流入孔から筐体内に流入した空気が通気孔を通って吸込み部分へ吸込まれる際に、袋体内の殺菌性の物質も吸込まれる空気に混じって吸込み部分へ吸込まれる。そして、吸込まれた殺菌性の物質は、吹出し部分へ送られ、吹出し部分から室内に気散され、室内は除菌される。殺菌性の物質は直接吸込み部分に装着されているわけではなく、筐体に収容され、筐体に設けられた通気孔から吸込まれる。従って、吸込まれる際に一度に過量に吸込まれず、少量ずつ吸込まれることになる。すなわち、殺菌性の物質が少量ずつ混ざった空気が吹出し部分から室内に気散されるため、長時間室内の隅々まで除菌することができる。また、流入孔は吸込み方向に対して側方向に貫通されている。従って、流入孔から流入した空気は、そのまま一直線に通気孔へ吸込まれるのではなく、筐体内で進行方向を変え、通気孔へ吸込まれる。そして、その吸込み経路途中に通気性の袋体が置かれているため、流入した空気は、その袋体に格納された殺菌性の物質全体とよく混合する。従って、通気孔から吸込まれる空気には継続的に一定量の殺菌性の物質が混ざり、除菌は安定的に行われる。また、除菌装置は、殺菌性の物質を通気孔と流入孔とを備えた筐体に収容しただけの簡易な構成であるため、安価に作製することができ、さらに既に室内に備わっている送風機に装着するだけである。従って、除菌装置にかかる費用は安く抑えられる。また、筐体の外形は、三角形、平行四辺形、台形、ドーナツ型であってもなくてもよい。
【0009】
また、流入孔が設けられた面の面積は、通気孔が設けられた面の面積よりも小さく、流入孔が設けられた面の開孔率は、通気孔が設けられた面の開孔率よりも大きい。このような構造であれば、吸込み方向の筐体の長さは短いが、多量の空気が筐体全体に渡って緩やかに流入し、殺菌性の物質全体とよく混合する。そして、その多量の混合された空気は少量ずつ通気孔より吸込まれる。従って、筐体は薄型化されつつも、除菌性能は長時間安定的に発揮される。
【0010】
また、空気を吸込み、吹出す装置は扇風機であって、除菌装置は扇風機の羽根の回転中心に対して偏心位置に装着されてもよい。このような構成であれば、除菌装置は扇風機の羽根の回転が生み出す吸込み気流上に存在することとなるので、殺菌性の物質を無駄なく効率的に吸込ませることができる。
【0011】
また、空気の吸込み方向に対する筐体の断面形状は扇形であってもよい。このような形状であれば、扇形の円弧部分近傍に流入孔が設けられる場合、その流入孔から流入した空気が筐体の中央へ集まる。従って、筐体中央に殺菌性の物質が収容されていれば、流入した空気に殺菌性の物質が混ざりやすくなる。
【0012】
また、筐体は吸込み部分へ引っ掛ける引っ掛け部分を備えてもよい。このような筐体であれば、吸込み部分へ容易に装着・脱着することができる。
【0013】
また、筐体は、可燃性の材料から構成されてもよい。このような構成であれば、筐体の廃棄が容易である。
【発明の効果】
【0014】
上記の除菌装置は、長時間安定的に除菌性能を発揮することができ、費用対効果は高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、除菌装置の斜視図である。
図2図2は、除菌装置を装着した扇風機を示した図である。
図3図3は、筐体内の空気の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一形態であり、本発明の技術的範囲を下記の実施形態に限定するものではない。
【0017】
図1は、除菌装置1の斜視図である。除菌装置1は、例えば、殺菌性の物質を格納した通気性の袋体2と、袋体2を収容することのできる収容空間を備える筐体3から構成される。筐体3は扇形形状であり、吸込み部分に接する面4に設けられた通気孔5と、面4に対して側方向に位置する面の1つである面6に設けられた流入孔7と、例えば扇風機のファンガードや空調機の吸込み口のパネルなど(本願の吸込み部分に相当)に引っ掛ける引っ掛け部分8とを備える。殺菌性の物質を格納した通気性の袋体2は、筐体3の収容空間の中央部分に収容される。通気孔5は、吸込み部分に接する面4の全面にわたって、かつ筐体中心に対して対称に、6カ所設けられる。また、流入孔7は、面6の両端にそれぞれ1つずつ設けられる。また、引っ掛け部分8は筐体3の両側面近傍から吸込み方向に向かって延び出ている。また、筐体3の扇形形状の中心角は何度でもよい。
【0018】
図2は、例えば除菌装置1を装着した扇風機9を背面側から見た図である。除菌装置1は扇風機9の羽根10の回転中心に対して上部、かつ扇風機9の裏側のファンガード11に装着される。除菌装置1の筐体3には引っ掛け部分8が備わっているため、ファンガード11に容易に引っ掛け、筐体3を扇風機9に装着することができる。また、除菌の必要がない時や廃棄する時は、筐体3を扇風機9から容易に取り外すこともできる。扇風機9を稼働させると、扇風機9の羽根10によって生み出される吸込み気流によって筐体3の中の空気が通気孔5を通って扇風機9に吸込まれる。通気孔5から吸込まれる筐体3の中の空気は、図3に示すように流入孔7から筐体3の中に流入し、通気性の袋体2に格納された殺菌性の物質が混合された空気である。そして、その扇風機9に吸い込まれた空気は、扇風機9の表側のファンガード12側から室内に気散され、室内は除菌される。このような構成であれば、殺菌性の物質を格納する袋体2が直接ファンガード11に装着されているわけではないため、一度に過量の殺菌性の物質が扇風機9に吸込まれることはなく、少量ずつ通気孔5を通って扇風機9へ吸込まれる。従って、殺菌性の物質は、扇風機9から室内に少量ずつ気散され、除菌効果は長時間発揮される。
【0019】
また、流入孔7は、扇風機9からの吸込み気流に対して側方向に貫通されている。従って、筐体3内に流入した空気は、そのまま一直線に通気孔5を通って扇風機9に吸込まれることはなく、図3に示すように筐体3内にしばらく留まる。そして、流入した空気は筐体3内に収容されている通気性の袋体2に格納された殺菌性の物質全体とよく混合し、その後扇風機9へ吸込まれる。つまり、扇風機9へ吸込まれる空気には殺菌性の物質が継続的に一定量含まれる。上述のような構成であれば、除菌効果は安定的に発揮される。
【0020】
また、面6の面積は面4の面積よりも小さいが、面6の両端に設けられている流入孔7の大きさは面4に設けられている通気孔5よりも大きい。このような構成であれば、筐体3の吸込み方向の長さは短くなる。また、流入孔7に流入する空気の速度は、ベルヌーイの定理に従い、緩やかなものとなる。従って、筐体3は薄型化されつつも、流入した空気は筐体3の中に比較的留まりやすくなり、殺菌性の物質とよく混合し、その後扇風機9へ吸込まれる。従って、除菌効果は安定的に発揮される。なお、通気孔5と流入孔7の大きさと個数は、面6の開孔率が吸込み部分に接する面4の開孔率よりも大きくなるように決めてもよい。
【0021】
また、筐体3は扇形形状であり、流入孔7は面6の両端に設けられているため、図3に示すように流入孔7から流入した空気は筐体3の中央部分に集まる。従って、筐体3の中に流入した空気は、筐体3の中央部分に収容された殺菌性の物質とよく混合された後、通気孔5から扇風機9に吸込まれるため、除菌効果は安定的に発揮される。
【0022】
また、除菌装置1の装着位置は羽根10の真裏であるため、羽根10によって生み出される吸込み気流上に筐体3の通気孔5が位置することとなる。従って、殺菌性の物質は、扇風機9に吸込まれる過程において失われることは少なく、扇風機9に効率的に吸込まれる。従って殺菌性の物質は、無駄なく除菌に用いることができる。
【0023】
ところで、袋体2に収容される殺菌性の物質の具体例としては、例えば、多孔性の無機質固形担体に二酸化塩素を担持させた粒子状の殺菌性の物質が挙げられる。このような殺菌性の物質が収容される場合、袋体2を形成する袋材としては、全面に当該無機質固形担体の粒径より小さな径の微細孔を有するものが好ましい。なお、ここでいう全面とは、概ね袋体2の表面全体という程度の意味であり、微細孔が形成されていない領域を一部に有する袋体2を排除するものではない。また、殺菌性の物質としては、二酸化塩素に代えて金属イオン等を放つ抗菌性の金属材料等を適用してもよい。
【0024】
二酸化塩素を担持させる無機質固形担体としては、例えば、セピオライトからなる多孔性の微粒子が挙げられる。セピオライトからなる多孔性の微粒子に二酸化塩素を吸着させる方法としては、例えば、亜塩酸ナトリウム水溶液に無機酸を添加し、発生した混合体を亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄することにより、混合体中の塩素を二酸化塩素に転化して二酸化塩素を生成し、これを無機質固形担体に吸着させる方法がある。セピオライトに吸着された二酸化塩素は、周囲の空気の振動などの物理的な力や微粒子同士の衝突により、セピオライトから解離する。
【0025】
例えば、袋体2に収容する殺菌性の物質として、セピオライトからなる多孔性の微粒子に二酸化塩素を吸着させたものを用いる場合、セピオライト微粒子に担持された二酸化塩素は、流入孔7から筐体3の中へ流入した空気の流れによって微粒子表面から解離し、袋体2の全面に形成された微細孔から袋体2の外へ放出される。そして、袋体2より体積が大きい筐体3内の隙間に二酸化塩素が放出され、筐体3の中の空気と混じって通気孔5から扇風機9に吸い込まれ、室内に気散される。また、二酸化塩素は、健康への影響が懸念されているPM(Particulate Matter:微小粒子状物質とも呼ばれ、例えば、PM2.5等がある)に取り付いて室内空間の下部へ沈降させる効能もある。また、袋体2に収容される物質は、消臭、防虫、芳香機能を有していてもいなくてもよい。
【0026】
また、筐体3は、例えば厚紙や段ボールシートなどの安価な可燃性板状材料を組み立てることによって作製されてもよい。このような筐体であれば、組み立てずに板状のまま大量輸送できるので輸送コストを低減することもでき、費用対効果を高める。また、必要でなくなった場合や壊れた場合には可燃ごみとして容易に廃棄処分できる。
【0027】
また、流入孔7は、吸込み部分と接する面4に対する側方の面で、面6以外の面に設けられてもよい。また、吸込み部分と接する面4に対して対面する面に、通気孔5よりも小さく、空気の吸込みに影響を及ぼさない程度の孔が設けられてもよい。
【0028】
また、除菌装置1の外形は扇形に限らず、例えばドーナツ型であってもよい。このような除菌装置1は吸込み部分近傍に支柱等の出っ張りがないタイプの送風機に装着することができる。
【0029】
上述のような除菌装置1は、厚紙などによって作製される筐体3に、殺菌性の物質を収容しただけであり、かつ既に室内に備わっている扇風機9に取り付けるだけの安価な装置であるが、長時間安定的に除菌性能を発揮することができる、費用対効果の高い除菌装置である。
【符号の説明】
【0030】
1・・除菌装置
2・・通気性の袋体
3・・筐体
4・・吸込み部分に接する面
5・・通気孔
6・・吸込み部分に接する面に対して側方向に位置する面
7・・流入孔
8・・引っ掛け部分
9・・扇風機
10・・羽根
11・・扇風機の裏面のファンガード
12・・扇風機の表面のファンガード
【要約】
本願は、長時間安定的に除菌性能を発揮することができる、費用対効果の高い除菌装置を開示する。この課題を解決するため、本発明では、空気を吸込み、吹出す装置の吸込み部分に収容空間を備える筐体を設け、収容空間内に殺菌性の物質を気散させる通気性の袋体を収容する。
図1
図2
図3