特許第6235782号(P6235782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235782熱硬化性エラストマー組成物、ハードディスクドライブ用ガスケットおよびハードディスクドライブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235782
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】熱硬化性エラストマー組成物、ハードディスクドライブ用ガスケットおよびハードディスクドライブ
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/08 20060101AFI20171113BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171113BHJP
   C08G 59/34 20060101ALI20171113BHJP
   C08G 59/36 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20171113BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08L63/08
   C08L23/20
   C08K3/36
   C08G59/34
   C08G59/36
   C09K3/10 K
   C09K3/10 L
   F16J15/10 X
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-19697(P2013-19697)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-148649(P2014-148649A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藏田 寿彦
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−070151(JP,A)
【文献】 特開2007−246816(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/029733(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/012689(WO,A1)
【文献】 特開2007−155769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08G 59/00−59/72
C08K 3/00−13/08
C09K 3/10
F16J 15/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)−[CHC(CH]−単位を主とする液状ポリマーと、
(B)熱硬化性官能基を1分子中に2個以上有するポリマーと、
(C)熱硬化性官能基を有するモノマーと、を含み、
前記(A)成分と前記(B)成分の質量比率((A):(B))が、30:70〜70:30であり、
前記(B)成分が、水添物ではない、ポリイソプレン由来の単位、ポリブタジエン由来の単位、および、スチレン−ブタジエン共重合体由来の単位からなる群より選択されるいずれかを主とするポリマーであることを特徴とする、熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、数平均分子量が2,000以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、炭素数6以上の炭化水素、イソボルニル化合物、および、ジシクロペンタジエン誘導体、からなる群より選択される少なくとも1種であり、かつ、当該(C)成分の前記熱硬化性官能基が、ビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項4】
(D)成分として、重合開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項5】
(E)成分として、無機充填剤および有機充填剤から選択される少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記(E)成分が、フュームドシリカであることを特徴とする、請求項5に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項7】
ハードディスクドライブ用ガスケット用であることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エラストマー組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の熱硬化性エラストマー組成物を少なくとも一部に用いたことを特徴とする、ハードディスクドライブ用ガスケット。
【請求項9】
請求項8に記載のハードディスクドライブ用ガスケットを少なくとも一部に有することを特徴とする、ハードディスクドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性エラストマー組成物、ハードディスクドライブ用ガスケットおよびハードディスクドライブに関するものである。
【0002】
近年、コンピュータおよび録画機器等に用いられるハードディスクドライブ(以下、単に「HDD」ということがある)は、防塵および水蒸気の侵入防止のために、ガスケットが用いられている。
ガスケットにおいて、水蒸気のバリア性(以下、単に「バリア性」という)を向上させるためには、ガスケットを硬くすることが最も容易な手法であるが、ガスケットは、接着または封止する対象の部材により圧縮されて使用されるため、耐久の観点から、柔軟性も必要となる。
【0003】
熱硬化性エラストマーとしては、エポキシ系樹脂を主成分とする組成物が主流である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、エポキシ系樹脂としては、例えば、エポキシアクリレートが挙げられる。エポキシアクリレートは、硬いためバリア性は良いが、HDD用ガスケットに用いるためには柔軟性の点で改良の余地がある。
【0006】
さらに、HDD用ガスケットにおいては、被着体(被着材ともいう)同士を封止した後に被着体の接着を解除(剥離)し、その後同一のHDD用ガスケットを用いて再度被着体同士を封止することができる性質、いわゆるリワーク性も要求される。
本発明者によれば、圧縮永久歪が大きい(悪い)と、接着を解除して同一のHDD用ガスケットを用いて所定の寸法で、HDD用ガスケットを挟むカバーを閉じて再度接着するときに、HDD用ガスケットが所定の寸法(高さ)まで復元せずに隙間を生じてしまい、接着または封止が不十分となり、十分なリワーク性を得られない場合があることが分かった。そのため、十分なリワーク性を確保するために、小さな(良好な)圧縮永久歪が必要である。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、硬化させたときに、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さい熱硬化性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さいハードディスクドライブ用ガスケットを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、耐久性およびバリア性に優れ、かつ、十分なリワーク性を有するハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(A)−[CHC(CH]−単位を主とする液状ポリマーと、(B)熱硬化性官能基を1分子中に2個以上有するポリマーと、(C)熱硬化性官能基を有するモノマーと、を含み、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比率((A):(B))が、25:75〜75:25である、ことを特徴とする。
(A)成分である上記特定の液状ポリマーが、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の硬化物に、優れた柔軟性とバリア性を付与し得る。
また、(B)成分と(C)成分が、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物に熱硬化性を付与する。
そして、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比率((A):(B))が、25:75〜75:25であることにより、当該熱硬化性エラストマー組成物の硬化性を確保しながら、優れたバリア性と小さい圧縮永久歪を有する硬化物が得られる。
【0009】
本明細書において、(A)成分の液状ポリマーにおける−[CHC(CH]−単位の割合、ならびに、(B)成分のポリマーにおけるポリイソプレン由来の単位、ポリブタジエン由来の単位、スチレン−ブタジエン共重合体由来の単位、および、エチレン−プロピレン共重合体由来の単位、ならびに、これらの水添物由来の単位、の割合は、NMRのピーク比を用いて求めることができる。
本明細書において、「液状」は、成形する温度、例えば室温(25℃)において、流動性を有することを意味する。
本明細書において、「数平均分子量」は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値で表される数平均分子量を意味する。
本明細書において、熱硬化性とは、加熱により三次元構造または網状構造となって硬化する性質をいい、熱硬化性官能基とは、熱硬化性を有する原子または原子団をいう。
本明細書において、エポキシ基は、エポキシ環を意味し、オキセタニル基は、オキセタン環を意味し、エポキシ基は、グリシジル基を含むものとする。
本明細書において、ガスケットは、シール材、封止材、密封材またはパッキンと同義とする。また、本明細書において、ガスケットは、特に断りのない限り、固定用シール(静止用シール)と運動用シールの両方を含むものとする。
【0010】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、前記(B)成分が、数平均分子量が2,000以上で、ポリイソプレン由来の単位、ポリブタジエン由来の単位、スチレン−ブタジエン共重合体由来の単位、および、エチレン−プロピレン共重合体由来の単位、ならびに、これらの水添物由来の単位、からなる群より選択されるいずれかを主とするポリマーであることが好ましい。
斯かる(B)成分を用いることにより、熱硬化性エラストマー組成物の硬化物について、さらに小さい圧縮永久歪を有する硬化物が得られる。
【0011】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物では、前記(C)成分が、炭素数6以上の炭化水素、イソボルニル化合物、および、ジシクロペンタジエン誘導体、からなる群より選択される少なくとも1種であり、かつ、当該(C)成分の前記熱硬化性官能基が、ビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基であることが好ましい。斯かる(C)成分を用いることにより、より高い柔軟性およびバリア性を得ることが可能となる。また、相溶性と強靭性にも優れる。
【0012】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(D)成分として、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。重合開始剤を用いることにより、生産性が高まる。
【0013】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(E)成分として、無機充填剤および有機充填剤から選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。斯かる(E)成分を用いることにより、熱硬化性エラストマー組成物に擬塑性が付与され、熱硬化性エラストマー組成物の成形性が高まる。
【0014】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、前記(E)成分が、フュームドシリカであることが好ましい。(E)成分として、フュームドシリカを用いることにより、優れた擬塑性を有するという利点がある。
【0015】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、ハードディスクドライブ用ガスケット用として好適に用いられる。
【0016】
本発明に係るハードディスクドライブ用ガスケットは、上記熱硬化性エラストマー組成物を少なくとも一部に用いたことを特徴とする。
本発明に係るハードディスクドライブ用ガスケットは、上記熱硬化性エラストマー組成物を少なくとも一部に用いたことにより、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さい。
【0017】
本発明に係るハードディスクドライブは、上記ハードディスクドライブ用ガスケットを少なくとも一部に有することを特徴とする。
本発明に係るハードディスクドライブは、上記ハードディスクドライブ用ガスケットを少なくとも一部に有することにより、耐久性およびバリア性に優れ、かつ、十分なリワーク性を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硬化させたときに、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さい熱硬化性エラストマー組成物を提供することができる。また、本発明によれば、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さいハードディスクドライブ用ガスケットを提供することができる。さらに、本発明によれば、耐久性およびバリア性に優れ、かつ、十分なリワーク性を有するハードディスクドライブを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(熱硬化性エラストマー組成物)
以下、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の好適な実施形態の一例を詳細に説明する。
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(A)−[CHC(CH]−単位を主とする液状ポリマーと、(B)熱硬化性官能基を1分子中に2個以上有するポリマーと、(C)熱硬化性官能基を有するモノマーと、を含み、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比率((A):(B))が、25:75〜75:25である、ことを特徴とする。
(A)成分である上記特定の液状ポリマーが、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の硬化物に優れた柔軟性とバリア性を付与し得る。
また、(B)成分と(C)成分が、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物に熱硬化性を付与する。
そして、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比率((A):(B))が、25:75〜75:25であることにより、当該熱硬化性エラストマー組成物の硬化性を確保しながら、優れたバリア性と小さい圧縮永久歪を有する硬化物が得られる。
以下、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の(A)〜(C)成分および適宜含まれていてもよいその他の成分について説明する。
【0020】
<(A)成分>
(A)成分は、−[CHC(CH]−単位(ポリイソブチレン由来の単位)を主とする液状ポリマーである。
(A)成分の分子中には、当該−[CHC(CH]−単位以外に、(A)成分の合成の際に用いられる変性剤等の成分が含まれていてもよい。(A)成分は、−[CHC(CH]−単位を主とすればよく、末端が変性されたポリマーおよび−[CHC(CH]−単位以外の他の構成単位または繰り返し単位を含むポリマー(例えば、ブロック共重合体)であってもよい。(A)成分は、熱硬化性エラストマー組成物を硬化させたときに、優れた柔軟性およびバリア性を発揮するため、−[CHC(CH]−単位を分子中に80質量%以上含むことが好ましい。
(A)成分は、−[CHC(CH]−単位を主とするため、通常、非反応性(非架橋性)の液状ポリマーである。上述したように、(A)成分は優れた柔軟性を発揮する作用を有するため、当該(A)成分にはエポキシ基およびビニル基等の反応性官能基が含まれないことが好ましいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、(A)成分には、エポキシ基等の反応性官能基が含まれていてもよい。
上述したように(A)成分は、液状である。(A)成分が固体である場合、他の成分との混合が困難となる。
【0021】
(A)成分の数平均分子量は、上記柔軟性およびバリア性を発揮し得る範囲であれば特に制限はないが、熱硬化性エラストマー組成物の硬化物における硬化物表面への(A)成分のブリードアウト(移行)を抑制する観点からは、(A)成分の数平均分子量は、20,000以上が好ましく、また、熱硬化性エラストマー組成物の粘度が適度で生産性が高まる観点では、50,000以下が好ましいことから、20,000〜50,000がより好ましい。
【0022】
このような(A)成分の市販品としては、例えば、株式会社カネカ製の商品名エピオン(登録商標)200A(数平均分子量5,000)、400A(数平均分子量10,000)、600A(数平均分子量15,000)、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名テトラックス3T(数平均分子量30,000)、テトラックス4T(数平均分子量40,000)、テトラックス5T(数平均分子量50,000)、テトラックス6T(数平均分子量60,000)等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物では、(A)成分と後述する(B)成分の質量比率((A):(B))が、25:75〜75:25である。これにより、当該熱硬化性エラストマー組成物の硬化性を確保しながら、優れたバリア性と小さい圧縮永久歪を有する硬化物が得られる。
(A)成分が炭化水素系の骨格による疎水性と−[CHC(CH]−単位の嵩高い(バルキーな)骨格とを有することにより、アモルファス性と排除体積の増大を両立し、水蒸気の拡散速度の低下による優れたバリア性を発揮する(ただし、(A)成分のみが独立して存在する場合に応力により流動して永久歪として残りやすいという性質がある)。一方、(B)成分が架橋により、応力を除荷した際に(B)成分自身のエントロピー弾性に従って形状を一定程度まで復元することにより、小さい圧縮永久歪を発揮する。そして、この(A)成分と(B)成分の質量比率が上記特定範囲であることにより、架橋密度と架橋の不均一性とが適度となる((B)成分の架橋構造の隙間に、(A)成分が取り込まれても、(A)成分が(B)成分のエントロピー弾性による復元に悪影響を及ぼさない)ことにより、優れた柔軟性とバリア性を確保しながら、小さい圧縮永久歪が得られる。
上記質量比率((A):(B))は、小さい圧縮永久歪を得る観点から、50:50〜30:70であることが好ましい。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は、熱硬化性官能基を1分子中に2個以上有するポリマーである。
(B)成分は、熱硬化性エラストマー組成物に熱硬化性を付与する。また、(B)成分は、上述したように、熱硬化性エラストマー組成物の硬化物が小さい圧縮永久歪を発揮するのに寄与する。
【0026】
(B)成分の有する熱硬化性官能基は、加熱により硬化が可能な反応性官能基であればよい。このような熱硬化性官能基としては、例えば、ビニルエーテル基(CH=CH−O−)、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、イソシアネート基(−N=CO)、イミド結合(−CONHCO−)、アリル基、シロキサン結合(Si−O)等が挙げられる。熱硬化性官能基は、これらのうち、ビニルエーテル基、エポキシ基およびオキセタニル基のうち少なくとも1種であることが好ましい。
(B)成分の1分子中の熱硬化性官能基の数は、2個以上であるが、ポットライフの低下を抑制する観点から、2〜4個が好ましい。(B)成分の1分子中の熱硬化性官能基の数が1個では熱硬化性が不十分となるおそれがある。
また、(B)成分は、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂等であってもよい。
【0027】
(B)成分の数平均分子量は、要求される性能、用途、生産性等を考慮して適宜調節すればよく、特に限定されない。(B)成分は、数平均分子量が2,000以上であることが好ましく、3,000〜20,000であることがより好ましい。
(B)成分の数平均分子量が、2,000以上であることにより、小さい圧縮永久歪を得やすい。
(B)成分の数平均分子量が、20,000以下であることにより、熱硬化性エラストマー組成物の粘度を低く保つことができ、生産性が高まる。
【0028】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、前記(B)成分が、数平均分子量が2,000以上で、ポリイソプレン由来の単位、ポリブタジエン由来の単位、スチレン−ブタジエン共重合体由来の単位、および、エチレン−プロピレン共重合体由来の単位、ならびに、これらの水添物由来の単位、からなる群より選択されるいずれかを主とするポリマーであることが好ましい。
斯かる(B)成分を用いることにより、熱硬化性エラストマー組成物の硬化物について、さらに小さい圧縮永久歪が得られる。
この場合、(B)成分は、上記構成単位を主とするポリマーであればよく、(B)成分の合成の際に用いられる変性剤等の成分が含まれていてもよく、末端が変性されたポリマーおよび上記構成単位以外の構成単位または繰り返し単位を含むポリマー(例えば、ブロック共重合体)であってもよい。(B)成分は、上記構成単位を80質量%以上含むことが好ましい。
【0029】
さらに、(B)成分が、水添物ではない(炭素−炭素不飽和結合を有する)、ポリイソプレン由来の単位、ポリブタジエン由来の単位、スチレン−ブタジエン共重合体由来の単位、および、エチレン−プロピレン共重合体由来の単位、からなる群より選択されるいずれかを主とするポリマーであることが好ましい。このような水添物ではないポリマーは、安価、入手が容易、さらに合成プロセスを短縮可能という利点を有する。
このような炭素−炭素不飽和結合を有する(B)成分としては、例えば、日本曹達株式会社製の商品名JP−200(エポキシ変性ポリブタジエン、数平均分子量2,200、ビニル基およびエポキシ基含有)、クレイバレー社の商品名Ricon657(エポキシ変性ポリブタジエン、数平均分子量3,000〜6,000、エポキシ基含有)等が挙げられる。
【0030】
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、上述した(A)成分との質量比率の範囲内で、用途、使用状態、要求される性能等に応じて適宜調節すればよい。
【0031】
<(C)成分>
(C)成分の熱硬化性官能基を有するモノマーは、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物に熱硬化性(成形性)を付与する働きに加え、粘度を調節する働きも有する。
(C)成分としては、従来公知の熱硬化性組成物に用いられている熱硬化性官能基を有するモノマーを用いることができる。
(C)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)成分の熱硬化性官能基を有するモノマーは、熱硬化性官能基を1個以上有するモノマーであればよく、熱硬化性官能基を1個のみ有することが好ましい。
(C)成分の有する熱硬化性官能基は、(B)成分で挙げたものと同様であり、好ましい熱硬化性官能基も同様である。
【0032】
(C)成分の熱硬化性官能基を有するモノマーとしては、例えば、特開2012−103472号公報に記載の熱硬化性モノマーである、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、アクリレート系モノマー、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物では、前記(C)成分が、炭素数6以上の炭化水素、イソボルニル化合物、および、ジシクロペンタジエン誘導体、からなる群より選択される少なくとも1種であり、かつ、当該(C)成分の前記熱硬化性官能基が、ビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基であることが好ましい。斯かる(C)成分を用いることにより、より高い柔軟性およびバリア性を得ることが可能となる。また、相溶性と強靭性にも優れる。
【0034】
ビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基を有する炭素数6以上の炭化水素の炭素数は、6〜24がより好ましい。
この炭素数6以上の炭化水素部分は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
この炭素数6以上の炭化水素としては、例えば、1,2−エポキシヘキサデカン(ユニオンカーバイド社製の商品名CYRACURE UVR−6216)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(アイ・エス・ビージャパン社製の商品名Rapi−cure EHVE)等が挙げられる。
【0035】
(C)成分は、ビニルエーテル基、エポキシ基またはオキセタニル基を有する炭素数6以上の炭化水素であることがより好ましく、1,2−エポキシヘキサデカンまたは2−エチルヘキシルビニルエーテルであることがさらに好ましい。
【0036】
(C)成分の熱硬化性官能基を有するモノマーの分子量は、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の用途、使用状態、要求される性能等に応じて適宜選択すればよいが、1000未満であることが好ましい。これにより本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の粘度を低減する効果が高まる。
【0037】
熱硬化性エラストマー組成物における(C)成分の含有量は、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物の用途、使用状態、要求される性能等に応じて適宜調節すればよいが、前記(A)成分、(B)成分および(C)成分の3成分の総量に対して、25〜55質量%であることが好ましい。この範囲内であることにより、(A)成分と(B)成分に対する(C)成分のバランスが適度で、熱硬化性エラストマー組成物を硬化させたときに、優れた柔軟性とバリア性をより両立しやすい。
【0038】
<任意成分>
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて、(D)成分(重合開始剤);(E)成分(無機充填剤、有機系チクソ性付与剤(揺変剤));カップリング剤;酸化防止剤(老化防止剤);光安定剤;カルボジイミド類(耐湿熱老防剤);ステアリン酸等の脂肪酸(滑剤);ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩(滑剤);ステアリン酸アマイド等の脂肪酸アミド(増稠剤);脂肪酸エステル(可塑剤);ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等の内部離型剤;プロセスオイル等の軟化剤;着色剤;レベリング剤;溶媒;などを含有させることができる。
以下、(D)成分および(E)成分について詳細に説明する。
【0039】
<(D)成分>
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(D)成分として、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、重合開始剤を用いなくとも加熱により硬化可能であるが、重合開始剤を用いることにより、生産性が高まる。
重合開始剤としては、例えば、光もしくは熱により成長活性種としてカチオンを生ずるカチオン重合開始剤、または、光もしくは熱によりラジカルを生ずるラジカル重合開始剤を挙げることができる。これらは熱硬化性組成物に用いられている従来公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、熱硬化性基がエポキシ基、ビニルエーテル基の場合は、カチオン重合開始剤を用いればよく、熱硬化性基がビニル基の場合は、ラジカル重合開始剤を用いればよく、熱硬化性基が、ビニル基、およびエポキシ基またはビニルエーテル基の場合は、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用すればよい。
【0040】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ユニオンカーバイド社製の商品名CYRACURE UVI−6990(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム・ヘキサフルオロホスファート)、日本化薬株式会社製の商品名カヤラッドPCI−220、620、株式会社ADEKA製の商品名アデカオプトマーSP−150、170、日本曹達株式会社製の商品名CI−5102、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S、みどり化学株式会社製の商品名DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TOS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103、ローディア社製の商品名PI−2074、三新化学工業株式会社製の商品名SI−60L、SI−80L、SI−100L等が挙げられる。これらの中でも、CYRACURE UVI−6990およびSI−100Lが好ましい。
【0041】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系重合開始剤;2,5−ビス(ヒドロパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド系重合開始剤;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルジオキシ)−3−ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系重合開始剤;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルジオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルジオキシ)バリレート等のパーオキシケタール系重合開始剤;アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、3,3',4,4'−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル系重合開始剤;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート系重合開始剤;ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系重合開始剤が挙げられる。
【0042】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の含有量は、熱硬化性エラストマー組成物中の熱硬化性成分の種類、含有量等に応じて適宜調節すればよい。重合開始剤の含有量は、例えば、上記必須成分((A)〜(C)成分)の合計量100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
【0043】
<(E)成分>
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、(E)成分として、無機充填剤および有機充填剤から選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
斯かる(E)成分を用いることにより、熱硬化性エラストマー組成物に擬塑性が付与され、熱硬化性エラストマー組成物の成形性が高まる。
無機充填剤としては、シリカ(SiO)、アルミナ、チタニアおよびこれらの複合酸化物、層状酸化物;ならびに粘土鉱物等が挙げられる。これらの中でも、シリカがより好ましい。より具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末(例えば、日本アエロジル株式会社製の商品名アエロジル300)等が挙げられる。本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物では、前記(E)成分が、フュームドシリカであることが好ましい。フュームドシリカを用いることにより、優れた擬塑性を有するという利点がある。フュームドシリカとしては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の商品名HDK(登録商標)N20が好ましく挙げられる。
【0044】
無機充填剤の平均粒径は、増粘性、擬塑性を付与する観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。なお、無機充填材の平均粒径は、例えば、BET吸着、又は、SEMなどの方法により求めることができる。熱硬化性エラストマー組成物が無機充填剤を含有する場合、その含有量は、適宜調節すればよく、熱硬化性エラストマー組成物の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜15質量部である。
【0045】
有機充填剤(有機系チクソ性付与剤)としては、従来公知のものを用いてよく、例えば、水添ひまし油、アマイドワックスまたはこれらの混合物が挙げられる。具体例としては、特開2012−72204号公報に記載のものを挙げることができる。
【0046】
<熱硬化性エラストマー組成物の粘度>
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、以下の方法で測定する温度50℃、剪断速度1.0s−1における粘度が1〜10,000Pa・sであることが好ましい。粘度が斯かる範囲であることにより、熱硬化性エラストマー組成物は、適度の流動性を有し、ハンドリング性が良好であると共に、ガスケット等の所望のシール材の形状に合わせて、熱硬化性エラストマー組成物の形状を保持することができ、それによりシール材の形状を保持することができる。
熱硬化性エラストマー組成物の粘度は、より好ましくは10〜2,000Pa・s、さらに好ましくは30〜1,000Pa・sである。
<<粘度測定方法>>
レオメーター「RS−600」(ハーケ社製)を用いて測定する。熱硬化性エラストマー組成物を50℃に調整し、ギャップ0.2mmで、剪断速度を1〜10s−1の範囲で変えながら、剪断応力を測定し、剪断速度と応力の1/2乗をプロットしたキャソンプロットから最小二乗法による近似線を引き、1s−1における粘度を算出する。
【0047】
<熱硬化性エラストマー組成物の調製方法>
本発明の熱硬化性エラストマー組成物の調製方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前記(A)〜(C)成分および前記任意成分を、温度調節可能な混練機(例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー等)を用いて混練することにより、調製することができる。
【0048】
<熱硬化性エラストマー組成物の用途>
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、例えば、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、電子ペーパーおよびプラズマディスプレイ等の各種表示装置(特に、フレキシブルディスプレイ)用シール材;太陽電池用シール材;デスクトップ型、ノート型、タブレット型等の各種コンピュータ、携帯電話、カメラ等の各種電子部品用シール材;HDD用ガスケット;インクタンク用シール材;自動車部品、水浄化装置、空気浄化装置、撹拌機、スピーカー、ポンプ等のシール材;防振装置、防水装置、ダンパー、土木および建築等の構造物用シール材;Oリング等のパッキン等の用途に用いることができる。
【0049】
本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、ハードディスクドライブ用ガスケット用として好適に用いられる。上述したように、本発明に係る熱硬化性エラストマー組成物は、硬化させたときに、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さいためである。
【0050】
(ハードディスクドライブ用ガスケット)
本発明に係るハードディスクドライブ用ガスケットは、上記熱硬化性エラストマー組成物を少なくとも一部に用いたことを特徴とする。すなわち、本発明に係るハードディスクドライブ用ガスケットは、上記熱硬化性エラストマー組成物を熱硬化させた硬化物を少なくとも一部に含むハードディスクドライブ用ガスケットである。
本発明に係るハードディスクドライブ用ガスケットは、上記熱硬化性エラストマー組成物を少なくとも一部に用いたことにより、柔軟性およびバリア性に優れ、かつ、圧縮永久歪が小さい。
ガスケットの厚さは、用途により適宜調整することができるが、通常、0.1〜2mm程度である。
【0051】
本発明に係るHDD用ガスケットは、当該HDD用ガスケットの柔軟性とバリア性を両立する観点から、柔軟性は、後述するJIS−A硬度が80以下であることが好ましく、25〜70であることがより好ましく、30〜60であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明に係るHDD用ガスケットのバリア性は、用途に応じて適宜調節することができる。本発明に係るHDD用ガスケットのバリア性は、後述する透湿度が10以下であることが好ましい。
【0053】
本発明に係るHDD用ガスケットの圧縮永久歪は、後述する圧縮永久歪が50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
<ハードディスクドライブ用ガスケットの製造方法>
上記熱硬化性エラストマー組成物を被着体に塗布し、加熱して硬化させることにより、ハードディスクドライブ用ガスケットを製造することができる。
被着体は、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、金属であってもよいし、硬質樹脂であってもよい。加工性等から金属の被着体が好ましい。
被着体としての金属は、特に制限はなく、従来公知の被着体を用いることができる。例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板等を挙げることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。
【0055】
熱硬化性エラストマー組成物を被着体に塗布する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。塗布は、例えば、熱硬化性エラストマー組成物を必要に応じて温度調節し、所望の粘度に調整して、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピング、ディスペンシング等により行うことができる。熱硬化性エラストマー組成物を被着体に塗布し、必要に応じて成形した後、加熱することにより熱硬化性エラストマー組成物を硬化させて、ハードディスクドライブ用ガスケットを得ることができる。
【0056】
熱硬化性エラストマー組成物を硬化させる際の加熱温度としては、適宜調節すればよく、通常、好ましくは100℃〜150℃である。加熱時間は、適宜調節すればよく、通常、好ましくは10分〜数時間程度である。本発明においては、熱硬化性エラストマー組成物を硬化させる際に、加熱に加えて、必要に応じて紫外線等の光照射を行ってもよい。
【0057】
(ハードディスクドライブ)
本発明に係るハードディスクドライブは、上記ハードディスクドライブ用ガスケットを少なくとも一部に有することを特徴とする。本発明に係るハードディスクドライブは、上記ハードディスクドライブ用ガスケットを少なくとも一部に有することにより、耐久性およびバリア性に優れ、かつ、十分なリワーク性を有する。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
(実施例1〜10および比較例1〜4)
表1および2に示す処方で各成分を配合し(各成分における値は質量部を表す)、熱硬化性エラストマー組成物を調製した。そして、以下の方法により、硬度(柔軟性)、透湿度(バリア性)および圧縮永久歪について測定、評価を行った。その結果を表1および2に示す。
【0060】
実施例で用いた各成分を以下に示す。
ポリイソブチレンA((A)成分):株式会社カネカ製 エピオン(登録商標)200A(数平均分子量5,000)
ポリイソブチレンB((A)成分):株式会社カネカ製 エピオン(登録商標)400A(数平均分子量10,000)
ポリイソブチレンC((A)成分):株式会社カネカ製 エピオン(登録商標)600A(数平均分子量15,000)
ポリイソブチレンD((A)成分):JX日鉱日石エネルギー株式会社製 テトラックス(登録商標)3T(数平均分子量30,000)
ポリイソブチレンE((A)成分):JX日鉱日石エネルギー株式会社製 テトラックス(登録商標)4T(数平均分子量40,000)
なお、ポリイソブチレンA〜Eの−[CHC(CH]−単位の割合は99%以上。
エポキシ変性ポリブタジエンA((B)成分):日本曹達株式会社製 JP−200(数平均分子量2,200、ビニル基24〜37個およびエポキシ基8〜11個含有)
エポキシ変性ポリブタジエンB((B)成分):クレイバレー社製 Ricon657(数平均分子量3,000〜6,000、エポキシ基20個未満含有)
エポキシモノマー((C)成分):ユニオンカーバイド社製 CYRACURE UVR−6216
ビニルエーテルモノマー((C)成分):アイ・エス・ビージャパン社製 Rapi−cure EHVE(2−エチルヘキシルビニルエーテル)
重合開始剤A((D)成分):ユニオンカーバイド社製 CYRACURE UVI−6990
重合開始剤B((D)成分):三新化学工業株式会社製 サンエイドSI−100L
フュームドシリカ((E)成分):旭化成ワッカーシリコーン株式会社製 HDK(登録商標)N20
【0061】
<柔軟性(硬度)>
熱硬化性エラストマー組成物を厚さ約2mmに製膜したシートを得た。このシートについて、JIS K 6253に準拠して、タイプAデュロメータにより硬度を測定した。試験体として厚さが約2mmの前記シート3枚を積層した厚さが約6mmのものを用いた。なお、A硬度は、80以下が、良好であることを示す。
【0062】
<バリア性(透湿度)>
厚さ約1mmの前記シートについて、JIS L 1099記載のA法の透湿カップを使用し、JIS Z 0208に準拠して、50℃、相対湿度90%の条件で測定した。なお、透湿度は、小さい方が好ましく、10[g/m・day]以下が好ましい。
【0063】
<圧縮永久歪>
JIS K 6262に準拠して、2cm四方に裁断した厚み2mmの前記シートを5枚重ねて測定用サンプルとし、試験温度70℃の条件にて圧縮永久歪を測定した。なお、圧縮永久歪は、小さい方が好ましく、50%以下が好ましい。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表2より、(A)成分と(B)成分の質量比率が80:20と、(A)成分であるポリイソブチレンが多い比較例1では、熱硬化性エラストマー組成物の十分な硬化性が得られなかった。
一方、(A)成分と(B)成分の質量比率が20:80と、(A)成分であるポリイソブチレンが少ない比較例2や、(A)成分が含まれない比較例3,4では、硬度が高くなりすぎて、柔軟性に劣り、また、透湿度が低く、バリア性に劣る結果となった。
これに対して、(A)成分と(B)成分の質量比率が70:30である実施例1では、圧縮永久歪が小さく、また、良好な硬度と低い透湿度となり、特に柔軟性とバリア性に優れる結果となった。
また、(A)成分と(B)成分の質量比率が30:70である実施例3では、柔軟性およびバリア性に優れ、特に、小さい圧縮永久歪が得られた。
また、実施例2、4〜7の対比から、(A)成分の数平均分子量が小さい程、柔軟性と圧縮永久歪が良好となる傾向があることが分かり、(A)成分の数平均分子量が大きい程、バリア性が良好となる傾向があることが分かる。
そして、(C)成分のエポキシモノマーをビニルエーテルモノマーに代えた実施例8、重合開始剤を他のカチオン重合開始剤に代えた実施例9およびエポキシ変性ポリブタジエンの種類を変えた実施例10でも、柔軟性およびバリア性に優れ、小さい圧縮永久歪が得られた。