(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、下記式(X):
CH2=CR1(CF2)nR2 (X)
(式中、R1はH又はFを表し、R2はH、F又はClを表し、nは1〜10の正の整数を表す。)
で表される単量体及び炭素数2〜10のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素エチレン性単量体、又は前記含フッ素エチレン性単量体と炭素数5以下のエチレン性単量体とを重合してなる含フッ素エチレン性重合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバーレイ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の高周波回路基板用カバーレイは、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂を貼り合わせてなるカバーレイであって、ポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層間の接着強度(初期接着力)が3.0N/cmを超えていること特徴とする。
【0015】
前記カバーレイに用いるポリイミドフィルムの製造に際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液を得る。
【0016】
前記芳香族ジアミン成分の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼン及びこれらのアミド形成性誘導体等が挙げられる。この中でフィルムの引張弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引張弾性率が3.0GPa以上にすることが回路基板用途の点から好ましい。これらの芳香族ジアミンのうち、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。パラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを併用する場合、その配合割合(モル比)は、特に限定されないが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテル:パラフェニレンジアミン=69:31〜100:0(0を除く)が好ましく、70:30〜90:10がより好ましい。
【0017】
前記酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体等の酸無水物が挙げられる。これらの酸無水物のうち、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記した酸無水物成分のモル比としては、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを併用する場合、その配合割合(モル比)は、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物=0(0を除く):100〜97:3が好ましく、30:70〜95:5がより好ましい。
【0018】
本発明のカバーレイに用いるポリイミドフィルムとしては、主として、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1以上の芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1以上の酸無水物成分とからなるものが、好適に挙げられる。
【0019】
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、又はヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は2種以上を混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素も使用できる。
【0020】
重合方法は、特に限定されず、公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法。
【0021】
(2)先に酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を酸無水物成分と当量になるよう加えて重合する方法。
【0022】
(3)一方の芳香族ジアミン成分(a1)を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の酸無水物成分(b1)が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン成分(a2)を添加し、続いて、もう一方の酸無水物成分(b2)を全芳香族ジアミン成分と全酸無水物成分とがほぼ当量になるように添加して重合する方法。
【0023】
(4)一方の酸無水物成分(b1)を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン成分(a1)が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の酸無水物成分(b2)を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン成分(a2)を全芳香族ジアミン成分と全酸無水物成分とがほぼ当量になるように添加して重合する方法。
【0024】
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミック酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミック酸溶液(B)を調製する。こうして得られた各ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミック酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では酸無水物成分を過剰に、またポリアミック酸溶液(A)で酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とがほぼ当量になるよう調整する。
【0025】
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0026】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、通常5〜40重量%の固形分を含有し、好ましくは10〜30重量%の固形分を含有する。また、その粘度は、ブルックフィールド粘度計による測定値で通常10〜10000Pa・sであり、安定した送液のために、好ましくは300〜5000Pa・sである。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0027】
次に、前記ポリアミック酸溶液を用いた本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0028】
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、及びポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作製し、これを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられる。
【0029】
前記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤及びゲル化遅延剤等を含有することができる。
【0030】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、及びイソキノリン、ピリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、及び無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられるが、無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。
【0032】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、前記環化触媒及び前記脱水剤を含有させたポリアミック酸溶液を、スリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成型し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う方法が挙げられる。
【0033】
前記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体又は気体の熱媒により及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0034】
前記ゲルフィルムは、支持体からの受熱及び/又は熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0035】
前記支持体から剥離されたゲルフィルムは、必要に応じて、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸処理を施されてもよい。機械搬送方向への延伸倍率(MDX)、及び機械搬送方向に直交する方向への延伸倍率(TDX)は、1.01〜1.9倍、好ましくは1.05〜1.6倍で実施される。
【0036】
前記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーター等で15秒から10分加熱される。次いで、熱風及び/又は電気ヒーター等により、250〜500℃の温度で15秒から20分熱処理を行う。
【0037】
また、走行速度を調整しポリイミドフィルムの厚みを調整するが、ポリイミドフィルムの厚みとしては、通常2〜250μm程度であり、2〜100μm程度が好ましい。これより薄くても厚くてもフィルムの製膜性が著しく悪化するので好ましくない。
【0038】
本発明に用いるポリイミドフィルムとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に限定されないが、例えば、カプトンのENタイプ(例えば、50EN−S(商品名、東レ・デュポン株式会社製)、100EN(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)、カプトンのHタイプ(例えば、カプトン100H(商品名、東レ・デュポン株式会社製)等)等が挙げられる。
【0039】
本発明におけるポリイミドフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、可塑剤や他の樹脂等を含んでいてもよい。
【0040】
前記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ヘキシレングリコール、グリセリン、β−ナフトール、ジベンジルフェノール、オクチルクレゾール、ビスフェノールA等のビスフェノール化合物、p−ヒドロキシ安息香酸オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ペプチル、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクトン、フェノール類のリン酸エステル化合物、N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルベンゼンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド等が挙げられる。
【0041】
ポリイミドに配合する前記他の樹脂としては、相溶性に優れるものが好ましく、例えば、エステル及び/又はカルボン酸変性オレフィン樹脂、アクリル樹脂(特に、グルタルイミド基を有するアクリル樹脂)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。
【0042】
本発明におけるポリイミドフィルムは、また、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、各種添加剤等を含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、強化剤(フィラー)等を挙げることができる。また、ポリイミドフィルム表面をインク等でコーティングしても良い。
【0043】
本発明のカバーレイに用いるフッ素樹脂は、特に限定されないが、含フッ素エチレン性重合体が好ましい。本発明における含フッ素エチレン性重合体は、含フッ素エチレン性ポリマー鎖にカルボニル基又はカルボニル基含有官能基が結合されたものである。
【0044】
前記「カルボニル基」は、ポリイミドフィルム中のイミド基もしくはアミノ基と基本的に反応し得る−C(=O)−を有する官能基をいう。具体的には、カーボネート、カルボン酸ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、酸無水物、イソシアネート基等が挙げられる。前記カルボニル基としては、特に限定されないが、導入が容易であり、ポリアミド系樹脂との反応性の高いことから、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸基、エステル基及び酸無水物基が好ましく、カーボネート基及びカルボン酸ハライド基がより好ましい。
【0045】
本発明における含フッ素エチレン性重合体中のカルボニル基の数は、積層される相手材の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力、該重合体の形態と接着方法等の違いにより適宜選択されうるが、カルボニル基の数が主鎖炭素数1×10
6個に対して合計3〜1000個であることが好ましい。上記カルボニル基の数が主鎖炭素数1×10
6個に対し、3個未満であると、充分な接着力が発現しない場合がある。また、1000個を超えると接着操作に伴い、カルボニル基の化学変化によって接着力を低下させる場合がある。より好ましくは3〜500個、更に好ましくは3〜300個、特に好ましくは5〜150個である。なお、含フッ素エチレン性重合体中のカルボニル基の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により測定することができる。
【0046】
従って、本発明の含フッ素エチレン性重合体が、例えば、カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するものである場合、カーボネート基を有する場合、カーボネート基の数が主鎖炭素数1×10
6個に対し3〜1000個であることが好ましい。また、本発明の含フッ素エチレン性重合体が、カルボン酸ハライド基を有する場合、そのカルボン酸ハライド基の数が主鎖炭素数1×10
6個に対し3〜1000個であることが好ましい。本発明の含フッ素エチレン性重合体が、カーボネート基とカルボン酸ハライド基の両方を有する場合、カーボネート基とカルボン酸ハライド基の合計数が主鎖炭素数1×10
6個に対し3〜1000個であるものが好ましい。前記カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基の数が主鎖炭素数1×10
6個に対し、3個未満であると、充分な接着力が発現しない場合がある。また、1000個を超えると接着操作に伴い、カーボネート基あるいはカルボン酸ハライド基の化学変化によって接着界面に出てくるガスの発生が悪影響を及ぼし、接着力を低下させる場合がある。耐熱性、耐薬品性の観点からより好ましくは、3〜500個、更に好ましくは3〜300個、特に好ましくは5〜150個である。なお、ポリアミド系樹脂との反応性に特に優れるカルボン酸ハライド基が、含フッ素エチレン性重合体中に、主鎖炭素数1×10
6個に対して10個以上、より好ましくは20個以上存在していれば、カルボニル基合計の含有量を主鎖炭素数1×10
6個に対して150個未満にしても、ポリアミド系樹脂からなる層(A)との優れた接着性を発現することができる。
【0047】
本発明における含フッ素エチレン性重合体中のカーボネート基とは、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R基〔Rは有機基(例えば、C
1〜C
20アルキル基(好ましくはC
1〜C
10アルキル基)、エーテル結合を有するC
2〜C
20アルキル基等)又はVII族元素である。〕の構造のものである。カーボネート基としては、例えば、−OC(=O)OCH
3、−OC(=O)OC
3H
7、−OC(=O)OC
8H
17、−OC(=O)OCH
2CH
2CH
2OCH
2CH
3等が好ましく挙げられる。
【0048】
本発明における含フッ素エチレン性重合体中のカルボン酸ハライド基とは、具体的には−COY〔Yはハロゲン元素〕の構造のもので、−COF、−COCl等が例示される。
【0049】
これらのカルボニル基を有する含フッ素エチレン性重合体はそれ自体、含フッ素樹脂がもつ優れた特性を維持することができ、成形後の積層体に含フッ素樹脂が有するこのような優れた特徴を低下させずに与えうる。
【0050】
本発明における含フッ素エチレン性重合体は、そのポリマー鎖にカルボニル基を含むが、該カルボニル基がポリマー鎖に含有される態様は特に限定されず、例えば、カルボニル基又はカルボニル基を含有する官能基がポリマー鎖末端又は側鎖に結合していてよい。そのなかでも、ポリマー鎖末端にカルボニル基を有するものが、耐熱性、機械特性、耐薬品性を著しく低下させない理由で又は生産性、コスト面で有利である理由で好ましいものである。このうち、パーオキシカーボネートやパーオキシエステルのようなカルボニル基を含むか、或いはカルボニル基に変換できる官能基を有する重合開始剤を使用してポリマー鎖末端にカルボニル基を導入する方法は、導入が非常に容易で、しかも導入量の制御も容易なことから好ましい態様である。なお、本発明では、パーオキサイドに由来するカルボニル基とは、パーオキサイドに含まれる官能基から直接又は間接的に導かれるカルボニル基をいう。
【0051】
なお、本発明における含フッ素エチレン性重合体においては、カルボニル基を含まない含フッ素エチレン性重合体が存在していても、重合体全体として主鎖炭素1×10
6個に対して合計で上述の範囲の数のカルボニル基を持っていればよい。
【0052】
本発明において、上記含フッ素エチレン性重合体の種類、構造は、目的、用途、使用方法により適宜選択されうるが、なかでも融点が160〜270℃であることが好ましい。このような重合体であれば、特に加熱溶融接着加工により積層化する場合、特にカルボニル基と相手材との接着性を充分に発揮でき、相手材と直接強固な接着力を与えうるので有利である。比較的耐熱性の低い有機材料との積層も可能となる点で、融点は、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下、特に好ましくは200℃以下である。融点は、セイコー型DSC装置(セイコー電子社製)を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点(Tm)とした。
【0053】
本発明における含フッ素エチレン性重合体の分子量については、該重合体が熱分解温度以下で成形でき、しかも得られた成形体が含フッ素エチレン性重合体本来の優れた機械特性等を発現できるような範囲であることが好ましい。具体的には、メルトフローレート(MFR)を分子量の指標として、フッ素樹脂一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度におけるMFRが0.5〜100g/10分であることが好ましい。MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)社製)を用い、各種温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
【0054】
前記含フッ素エチレン性ポリマー鎖の構造は、一般に、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体から誘導される繰り返し単位を有するホモポリマー鎖又はコポリマー鎖であり、含フッ素エチレン性単量体のみ、又は含フッ素エチレン性単量体とフッ素原子を有さないエチレン性単量体を重合してなるポリマー鎖であってよい。
【0055】
上記含フッ素エチレン性単量体は、フッ素原子を有するオレフィン性不飽和単量体であり、具体的には、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、式(X):
CH
2=CR
1(CF
2)
nR
2 (X)
(式中、R
1はH又はFを表し、R
2はH、F又はClを表し、nは1〜10の正の整数を表す。)
で表される単量体、炭素数2〜10のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類等が挙げられる。
【0056】
上記フッ素原子を有さないエチレン性単量体は、耐熱性等を低下させないためにも炭素数5以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0057】
含フッ素エチレン性単量体とフッ素原子を有さないエチレン性単量体とを使用する場合、その単量体組成は、含フッ素エチレン性単量体10モル%以上100モル%未満(例えば30モル%以上100モル%未満)とフッ素原子を有さないエチレン性単量体0モル%を超え90モル%以下(例えば0モル%を超え70モル%以下)の量比であってよい。
【0058】
本発明における含フッ素エチレン性重合体においては、含フッ素エチレン性単量体及びフッ素原子を有さないエチレン性単量体の種類、組合せ、組成比等を選ぶことによって重合体の融点又はガラス転移点を調整することができる。
【0059】
本発明における含フッ素エチレン性重合体としては、耐熱性、耐薬品性の面では、テトラフルオロエチレン単位を必須成分とするカルボニル基含有含フッ素エチレン性重合体が好ましく、また、成形加工性の面では、フッ化ビニリデン単位を必須成分とするカルボニル基含有含フッ素エチレン性共重合体が好ましい。
【0060】
本発明における含フッ素エチレン性重合体の好ましい具体例としては、含フッ素エチレン性重合体が本質的に下記の単量体を重合してなるカルボニル基含有含フッ素エチレン性共重合体(I)〜(V)等を挙げることができる:
(I)少なくとも、テトラフルオロエチレン及びエチレンを重合してなる共重合体、
(II)少なくとも、テトラフルオロエチレン及び下記式(Y):
CF
2=CFR
3 (Y)
(式中、R
3はCF
3又はOR
4を表し、R
4は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)
で表される化合物を重合してなる共重合体、
(III)少なくとも、フッ化ビニリデンを重合してなる共重合体、
(IV)少なくとも、下記(a)、(b)及び(c)を重合してなる共重合体、
(a)テトラフルオロエチレン20〜90モル%
(b)エチレン10〜80モル%
(c)CF
2=CFR
3 (Y)
(式中、R
3は前記と同一意味を表す。)
で表される化合物1〜70モル%、並びに、
(V)少なくとも、下記(d)、(e)及び(f)を重合してなる共重合体。
(d)フッ化ビニリデン15〜60モル%
(e)テトラフルオロエチレン35〜80モル%
(f)ヘキサフルオロプロピレン5〜30モル%
これらの具体例には、前記の単量体を含み、かつ本発明の効果を妨げない範囲で、他の公知の単量体を加えてもよい。
【0061】
これら例示のカルボニル基含有含フッ素エチレン性重合体はいずれも、特に耐熱性に優れている点で好ましい。
【0062】
前記共重合体(I)として、例えば、カルボニル基を有する単量体を除いた(側鎖にカルボニル基含有官能基を有する場合)単量体全体に対し、テトラフルオロエチレン単位20〜90モル%(例えば20〜60モル%)、エチレン単位10〜80モル%(例えば20〜60モル%)及びこれらと共重合可能な他の単量体単位0〜70モル%とからなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体等が挙げられる。
【0063】
前記共重合可能な他の単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、式(X):
CH
2=CR
1(CF
2)
nR
2 (X)
(式中、R
1はH又はFを表し、R
2はH、F又はClを表し、nは1〜10の正の整数を表す。)
で表される単量体、炭素数2〜10のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類、プロピレン等が挙げられ、通常これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0064】
また、前記共重合体(I)としては、例えば、以下のものが、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体の優れた性能を維持し、融点も比較的低くすることができ、他材との接着性を最大限に発揮できる点で好適に挙げられる。
(I−1)テトラフルオロエチレン単位62〜80モル%、エチレン単位20〜38モル%、その他の単量体単位0〜10モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(I−2)テトラフルオロエチレン単位20〜80モル%、エチレン単位10〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン単位0〜30モル%、その他の単量体単位0〜10モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体。
【0065】
前記共重合体(II)としては、例えば、以下のものが、好適に挙げられる。
(II−1)テトラフルオロエチレン単位65〜95モル%(好ましくは75〜95モル%)、ヘキサフルオロプロピレン単位5〜35モル%(好ましくは5〜25モル%)からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(II−2)テトラフルオロエチレン単位70〜97モル%、CF
2=CFOR
4(R
4は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)単位3〜30モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(II−3)テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、CF
2=CFOR
4(R
4は前記と同じ)単位からなるポリマー鎖のカルボニル基を有する共重合体であって、ヘキサフルオロプロピレン単位とCF
2=CFOR
4単位の合計が5〜30モル%である共重合体。
【0066】
前記(II−1)〜(II−3)は、パーフルオロ系共重合体でもあり、含フッ素ポリマーの中でも耐熱性、電気絶縁性等に最も優れている。
【0067】
前記共重合体(III)としては、例えば、カルボニル基を有する単量体を除いた(側鎖にカルボニル基含有官能基を有する場合)単量体全体に対し、フッ化ビニリデン単位15〜99モル%、テトラフルオロエチレン単位0〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン又はクロロトリフルオロエチレンのいずれか1種以上の単位0〜30モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体等が挙げられる。
前記共重合体(III)の具体例としては、以下のものが、好適に挙げられる。
(III−1)フッ化ビニリデン単位30〜99モル%、テトラフルオロエチレン単位1〜70モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(III−2)フッ化ビニリデン単位60〜90モル%、テトラフルオロエチレン単位0〜30モル%、クロロトリフルオロエチレン単位1〜20モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(III−3)フッ化ビニリデン単位60〜99モル%、テトラフルオロエチレン単位0〜30モル%、ヘキサフルオロプロピレン単位5〜30モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体、
(III−4)フッ化ビニリデン単位15〜60モル%、テトラフルオロエチレン単位35〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン単位5〜30モル%からなるポリマー鎖のカルボニル基含有共重合体。
【0068】
本発明における含フッ素エチレン性重合体の製造方法としては、特に限定されない。本発明の含フッ素エチレン性重合体は、カルボニル基を有するエチレン性単量体を、目的の含フッ素ポリマーに合わせた種類、配合の含フッ素及び/又はエチレン性単量体と共重合することにより製造することができる。前記カルボニル基を有するエチレン性単量体としては、好適には、パーフルオロアクリル酸(フルオライド)、1−フルオロアクリル酸(フルオライド)、アクリル酸フルオライド、1−トリフルオロメタクリル酸(フルオライド)、パーフルオロブテン酸等の含フッ素単量体;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロライド、ビニレンカーボネート、イタコン酸、シトラコン酸等のフッ素を含まない単量体が挙げられる。
【0069】
一方、ポリマー分子末端にカルボニル基を有する含フッ素エチレン性重合体を得るためには種々の方法を採用することができるが、パーオキサイド、特に、パーオキシカーボネートやパーオキシエステルを重合開始剤として用いる方法が、経済性の面、耐熱性、耐薬品性等の品質面で好ましく採用できる。この方法によれば、パーオキサイドに由来するカルボニル基(例えば、パーオキシカーボネートに由来するカーボネート基;パーオキシエステルに由来するエステル基;又は、これらの官能基を変換して得られるカルボン酸ハライド基若しくはカルボン酸基)を、ポリマー鎖末端に導入することができる。これらの重合開始剤のうち、パーオキシカーボネートを用いた場合には、重合温度を低くすることができ、開始反応に副反応を伴わないことからより好ましい。
【0070】
前記パーオキシカーボネートとしては、下記式(1)〜(4):
(1)
(2)
(3)
(4)
〔式中、R及びR
aは、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐状の一価飽和炭化水素基、又は末端にアルコキシ基を含有する炭素数1〜15の直鎖状又は分岐状の一価飽和炭化水素基を表し、R
bは、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐状の二価飽和炭化水素基、又は末端にアルコキシ基を含有する炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐状の二価飽和炭化水素基を表す。〕
で表される化合物等が好適に挙げられる。とりわけ、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が好ましい。
【0071】
パーオキシカーボネート、パーオキシエステル等の開始剤の使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合で得られる重合体100重量部に対して通常0.05〜20重量部であり、特に0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0072】
重合方法としては、工業的にはフッ素系溶媒を用い、重合開始剤としてパーオキシカーボネート等を使用した水性媒体中での懸濁重合が好ましいが、他の重合方法、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等も採用できる。懸濁重合においては、水に加えてフッ素系溶媒を使用してよい。懸濁重合に用いるフッ素系溶媒としては、例えば、ハイドロクロロフルオロアルカン類(例えば、CH
3CClF
2、CH
3CCl
2F、CF
3CF
2CCl
2 H、CF
2ClCF
2CFHCl)、クロロフルオロアルカン類(例えば、CF
2ClCFClCF
2CF
3、CF
3CFClCFClCF
3)、パーフルオロアルカン類(例えば、パーフルオロシクロブタン、CF
3CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
3、CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3)が使用でき、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素溶媒の使用量は、特に限定されないが、懸濁重合の場合、懸濁性、経済性の面から、水性媒体に対して10〜100重量%とするのが好ましい。
【0073】
重合温度は、特に限定されず、0〜100℃であってもよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0〜9.8MPaGであってもよい。
【0074】
なお、分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としは、例えば、イソペンタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素を用いることができる。また、末端のカーボネート基又はエステル基の含有量は、重合条件を調整することによってコントロールでき、パーオキシカーボネート又はパーオキシエステルの使用量、連鎖移動剤の使用量、重合温度等によってコントロールできる。
【0075】
ポリマー分子末端にカルボン酸ハライド基若しくはカルボン酸基を有する含フッ素エチレン性重合体を得るためには種々の方法を採用でき、例えば、上述のカーボネート基又はエステル基を末端に有する含フッ素エチレン性重合体を加熱させ、熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。加熱温度は、カーボネート基又はエステル基の種類、含フッ素エチレン性重合体の種類によって異なるが、通常270℃以上であり、好ましくは280℃以上であり、特に好ましくは300℃以上である。また、加熱温度は、含フッ素エチレン性重合体のカーボネート基又はエステル基以外の部位の熱分解温度以下にすることが好ましく、具体的には400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0076】
<カーボネート基の個数の測定方法>
得られた含フッ素エチレン性重合体の白色粉末又は溶融押出しペレットの切断片を室温にて圧縮成形し、厚さ0.05〜0.2mmの均一なフィルムを作製した。このフィルムの赤外吸収スペクトル分析によって、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基に由来するピークが1809cm
−1(ν
C=O)の吸収波長に現れ、そのν
C=O ピークの吸光度を測定した。下記式(5)によって主鎖炭素数10
6個当たりのカーボネート基の個数(N)を算出した。
N=500AW/εdf (5)
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のν
C=O ピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のν
C=O ピークのモル吸光度係数〔l・cm
−1・mol
−1〕。モデル化合物からε=170とした。
W:モノマー組成から計算される単量体の平均分子量
d:フィルムの密度〔g/cm
3〕
f:フィルムの厚さ〔mm〕
なお、赤外吸収スペクトル分析は、Perkin−Elmer FTIRスペクトロメーター1760X(パーキンエルマー社製)を用いて40回スキャンして行った。得られたIRスペクトルをPerkin−Elmer Spectrum for Windows(登録商標) Ver. 1.4Cにて自動でベースラインを判定させ1809cm
−1のピークの吸光度を測定した。また、フィルムの厚さはマイクロメーターにて測定した。
【0077】
<カルボン酸フルオライド基の個数の測定方法>
上記のカーボネート基の個数の測定方法と同様にして得られたフィルムの赤外スペクトル分析により、カルボン酸フルオライド基(−C(=O)F)のカルボニル基に由来するピークが1880cm
−1(ν
C=O )の吸収波長に現れ、そのν
C=O ピークの吸光度を測定した。カルボン酸フルオライド基のν
C=O ピークのモル吸光度係数〔l・cm
−1・mol
−1〕をモデル化合物によりε=600とした以外は、上記式(5)を用いて上述のカーボネート基の個数の測定方法と同様にしてカルボン酸フルオライド基の個数を測定した。
【0078】
<その他のカルボニル基の個数の測定方法>
上記カーボネート基の個数の測定方法と同様にして得られたフィルムの赤外スペクトル分析により、カルボン酸基、エステル基、酸無水物基等のポリアミド系樹脂中のアミド基やアミノ基等の官能基と基本的に反応し得るその他のカルボニル基の個数も測定することができる。但し、これらのカルボニル基に由来するν
C=O ピークのモル吸光度係数〔l・cm
−1・mol
−1〕はε=530とした以外は、上記式(5)を用いて上述のカーボネート基の個数の測定方法と同様にしてその他のカルボニル基の個数を測定した。
【0079】
<含フッ素エチレン性重合体の組成の測定方法>
19F−NMR分析により測定した。
【0080】
本発明における含フッ素エチレン性重合体は、それ自体が有する接着性と耐熱性や耐薬品性等を損なわないため、単独で用いることが好ましいが、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物又はカーボン等の種々の公知の充填剤を配合できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外に、他のフッ素樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
【0081】
本発明のカバーレイは、前記ポリイミドフィルムと前記フッ素樹脂を組み合わせることにより優れた熱収縮率を有し、十分な接着強度を有する。本発明のカバーレイは、少なくとも、前記ポリイミドフィルムと前記フッ素樹脂を接着状態に積層させて形成される。カバーレイの製造には、前記ポリイミドフィルムと前記フッ素樹脂とを含む構成層を、逐次又は共押出し成形する製造方法;成形体の加熱圧着による製造方法;ポリイミドフィルム又はフッ素樹脂のどちらかの成形体上に、他方の樹脂の前駆体又は溶融させたものを塗布、流延し、樹脂組成物とするように処理を行う製造方法等の製造方法を適用することができ、前記ポリイミドフィルムと前記フッ素樹脂とを含む構成層の間の良好な接着状態が形成される。上記製造は、通常用いられる熱可塑性樹脂の公知の成形磯、例えば、射出成形機、圧縮成形機、ブロー成形機、押出し成形機等を使用することができる。
【0082】
成形条件としては、カルボニル基、特にカーボネート基の種類、含フッ素エチレン性重合体の種類によって異なるが、押出し又はブロー成形にあっては、シリンダー温度が200℃以上になるよう加熱することが適当である。加熱温度は、含フッ素エチレン性重合体自体の熱分解による発泡等の悪影響を抑えられる温度以下にすることが好ましく、具体的には、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0083】
前記加熱圧着による製造方法としては、特に限定されないが、例えば、真空プレス、ラミネーション方法(熱ラミネート法等)やコーティング法が挙げられる。また、フッ素樹脂層は、ポリイミドフィルムの片面又は両面にラミネーション、コーティングしてもよい。
【0084】
真空プレスでは、例えば、公知の真空プレス機を用いてポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを所定の温度、圧力で加熱圧着することにより、カバーレイが得られる。この際のプレス温度は100〜250℃の範囲で行うことが加工を簡単に行う点で好ましい。また、プレス後にアニール処理を行ってもよく、アニール処理温度は100〜250℃の範囲で行うことが好ましい。
【0085】
熱ラミネート法では、特に限定されず、例えば、加熱可能でかつローラー間の距離を任意に調整可能な2つのローラーを用いて、ローラー間に2種類以上のフィルムを重ねて挟み、熱と圧力をかけながら、圧着することにより、カバーレイが得られる。また、必要に応じて、ラミネートを行った直後に、加熱処理を連続で行うことも可能である。同処理は、フッ素樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、融点+50℃以下の範囲が、密着力を向上させることができるため好ましい。Tg以下では目的とする密着力が得られず、融点+50℃以上では、フッ素樹脂の分解が始まり密着力が低下するため好ましくない。加熱時間は、特に限定されず、必要に応じて、適宜設定できる。前記装置は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。
【0086】
銅張積層体に取り付ける前のカバーレイのポリイミド層とフッ素樹脂層間の接着強度は、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせにおいて、精度が向上し、作業効率も高まる点から、3.0N/cmを超えることが好ましく、5.0N/cm以上がより好ましく、8.0N/cm以上がさらに好ましい。前記接着強度の上限値は特に限定されない。
【0087】
本発明のカバーレイにおけるポリイミド層の厚さとしては、特に限定されないが、カバーレイのポリイミド層とフッ素樹脂層の密着力に影響するため、フッ素樹脂層の厚さの0.01〜2.0倍程度が好ましく、0.05〜1.0倍程度がより好ましく、0.1〜0.9倍程度がさらに好ましい。ポリイミド層の厚さが、2.0倍を超えると、基板としての剛性や寸法安定性は向上するものの、誘電率が増加するため好ましくない。また、0.01倍未満であると、ポリイミド層の剛性が低下し、線膨張係数が増加する傾向となり、基板としての剛性や寸法安定性は低下する。
【0088】
本発明のカバーレイは、260℃、30分で測定した熱収縮率が、通常±0.1%未満であり、好ましくは±0.08%未満であり、より好ましくは±0.06%未満である。
【0089】
本発明のカバーレイを、銅張積層体に貼り合わせて、高周波回路基板を製造することができる。銅張積層体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、銅張積層体は片面構造、両面構造のいずれであってもよい。
【0090】
本発明のカバーレイに貼り合わせる銅張積層体の製造方法としては、例えば、基材フィルムと銅箔とを接着剤を介して積層した3層CCLや、基材フィルムに蒸着やスパッタ加工と電気めっきを利用して銅層を形成してなるもの、銅箔上にポリイミド層をキャスティングして形成した所謂キャスト型2層CCL(COC)、基材フィルムに無電解めっきを用いて銅層を形成したもの等が挙げられる。
【0091】
前記基材フィルムとしては、高周波回路用にポリイミドフィルムやLCPフィルム等が挙げられる。また、接着剤層としては、エポキシ系やアクリル系、ポリイミド系接着剤、フッ素樹脂等が挙げられる。接着剤は市販品を使用することができる。市販品としては、特に限定されないが、パイララックス(Pyralux、デュポン株式会社製)のLFシリーズ(アクリル系接着剤)等が挙げられる。これらの中で好ましい形態は、LCPフィルムを用いた銅張積層体、基材フィルムと銅箔とをフッ素樹脂を介して積層体とした銅張積層体である。
【0092】
前記銅張積層体に用いるポリイミドフィルムとしては、上記のカバーレイ用のポリイミドフィルムと同様のものが挙げられ、その組成はカバーレイ用のポリイミドフィルムと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0093】
前記銅張積層体に用いるフッ素樹脂としては、特に限定されないが、公知のフッ素系樹脂を使用でき、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、トヨフロンF、FE、FL、FR、FV(商品名;以上、東レフィルム加工株式会社製)等が挙げられる。
【0094】
前記銅張積層体におけるポリイミド層(ポリイミド接着剤を使用する場合、接着剤を含めた層)の厚さとしては、特に限定されないが、フッ素樹脂層の厚さの0.01〜2.0倍程度が好ましく、0.05〜1.0倍程度がより好ましく、0.1〜0.9倍程度がさらに好ましい。ポリイミド層の厚さが、フッ素樹脂層の厚さの2.0倍を超えると、銅張積層体としての剛性や寸法安定性は向上するものの、誘電率が増加するため好ましくない。また、0.01倍未満であると、ポリイミド層の剛性が低下し、線膨張係数が増加する傾向となり、銅張積層体としての剛性や寸法安定性は低下する。
【0095】
前記銅張積層体をエッチング処理し、配線加工した銅張積層体が得られる。エッチング処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
【0096】
高周波回路基板の製造において、前記カバーレイのフッ素樹脂側を銅張積層体の回路に接するように積層し、カバーレイと銅張積層体とを仮止めを行う。
【0097】
銅張積層体とカバーレイとの仮止め工程としては、公知の方法を使用することができ、特に限定されないが、例えば、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせをし、キスラミネーションをした後に、必要に応じてクイックプレスをして、150〜200℃程度でラミネーションする方法、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせをし、多段プレスする方法等が挙げられる。前記仮止め工程における最大温度は、カバーレイに使用するフッ素樹脂の融点より低ければ、特に限定されないが、続いて行うアニール処理によって十分な接着強度が得られる点から、100〜250℃の範囲内とするのが好適である。仮止め工程の処理時間は特に限定されない。
【0098】
高周波回路基板の製造において、特に限定されないが、前記仮止め工程に続いて、カバーレイを取り付けた銅張積層体をアニール処理する工程を行うことが好ましい。
【0099】
アニール処理工程での加熱最大温度は、特に限定されないが、150℃以上350℃以下の範囲内で、前記仮止め工程の最大温度より高い温度とするのが、得られる高周波回路基板の接着強度が良好である点から好ましく、前記温度差は、20℃以上とするのが好ましい。また、前記アニール処理工程では、フリーテンションで、かつ150℃以上350℃以下で行うのが好ましい。フリーテンションは処理工程を簡単にするという利点があり、アニール温度については、200℃以上280℃以下がより好ましく、205℃以上275℃以下がさらに好ましい。アニール処理時間は特に限定されない。
【0100】
前記アニール処理によって、フッ素樹脂層の接着力に基づいて密着力が高まり、実用的な接着強度(ピール強度)を有する高周波回路基板が得られる。得られる高周波回路基板のアニール処理後の接着強度は、カバーレイとしての性能を確保する面から、8N/cmを超える値が好ましく、10N/cm以上がより好ましい。さらに好ましくは14N/cm以上である。本発明における接着強度は、後記する実施例に記載の方法で測定した値である。
【0101】
本発明のカバーレイと、配線加工した銅張積層体を積層して高周波回路基板を製造することができる。前記高周波回路基板は、ポリイミドフィルムの厚みとフッ素樹脂の厚みが上記の特定の割合となることで、電気特性や機械的特性がより一層高まるだけでなく、寸法安定性が優れるため、銅層の回路形成のためのエッチング処理や、回路形成後の後工程における各種の加熱工程を施しても、カール、ねじれ、反り等の発生をより一層抑制することができる。
【実施例】
【0102】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0103】
本発明における各種特性の測定方法について以下に説明する。
【0104】
(1)ピール強度
サンプルを10mm幅で短冊状へ裁断し、島津製作所製万能引張試験器オートグラフAG−ISを用いて、90℃引き試験(引張速度:50mm/min、測定長:20mm、測定範囲:5.0−20.0mm)にてピール強度を測定した(単位:N/cm)。
【0105】
(2)熱収縮率
190mm×200mmのサイズにサンプルを切り、株式会社ニコン製CNC画像処理装置システムNEXIV VM−250を用いて熱処理前の寸法を測定する。その後、サンプルを260℃に設定したオーブンへ入れ、30分間熱処理を行う。熱処理後のサンプルを恒温高湿下で12時間以上調湿する。調湿後のサンプルを熱処理前と同様に寸法を測定し、熱処理前後での寸法変化率を百分率で示す。
【0106】
(3)伝送損失
カスケード・マイクロテック製基板測定用プローバ装置を用いて1〜40GHzまでの高周波伝送特性を測定した。
【0107】
[合成例1]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/3,3’,4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(分子量108.14)を、モル比で95/5/85/15の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0108】
[合成例2]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)を、モル比で100/100の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0109】
[合成例3]
オートクレーブに蒸留水380Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、1−フルオロ−1,1−ジクロロエタン75kg、ヘキサフルオロプロピレン155kg、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)0.5kgを仕込み、系内を35℃、攪拌速度200rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレンを0.7MPaまで圧入し、更に引き続いてエチレンを1.0MPaまで圧入し、その後にジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート2.4kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン=40.5/44.5/15.0モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.0MPaに保った。そして、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)についても合計量1.5kgを連続して仕込み、20時間、攪拌を継続した。そして、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥して200kgの粉末(含フッ素エチレン性重合体F−A)を得た。これらの分析結果を表1に示した。
【0110】
[合成例4]
合成例3と同様にして、表1に示した配合で含フッ素エチレン性重合体F−Bを得た。これらの分析結果を表1に示した。
[合成例5]
合成例4で得られた含フッ素エチレン性重合体F−Bの粉末9.5kg、28%アンモニア水700g及び蒸留水10Lをオートクレーブに仕込み、攪拌しながら系を加熱し、80℃に保って7時間攪拌を継続した。そして、内容物を水洗、乾燥処理して粉末9.2kgを得た(含フッ素エチレン性重合体F−C)。このような処理を施すことによって、該樹脂中に含有されている活性な官能基(カーボネート基とカルボン酸フルオライド基)を化学的にも熱的にも安定なアミド基に変換した。なお、この変換が定量的に進んだことは赤外スペクトル分析により確認した。処理後の樹脂の分析結果を表2に示した。また、合成例3に示した含フッ素エチレン性重合体(F−A)には、カーボネート基、カルボン酸フルオライド基以外のいかなるカルボニル基も認められなかった。なお、表1中、TFEはテトラフルオロエチレンを、Etはエチレンを、HFPはヘキサフルオロプロピレンを、HF−Paはパーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)を、それぞれ表す。
【0111】
【表1】
【0112】
[実施例1]
(1)ポリイミドフィルムの作製
合成例1で得たポリアミック酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とβ−ピコリンを、ポリアミック酸溶液に対しそれぞれ17重量%、17重量%の割合で混合、攪拌した。得られた混合物を、T型スリットダイより回転する75℃のステンレス製ドラム上にキャストし、30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.2倍延伸した。次いで幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.3倍延伸した後、380℃にて5分間加熱し、12.5μm厚のポリイミドフィルムを得た。
(2)フッ素樹脂フィルムの作製
合成例3で重合した含フッ素エチレン性重合体を、設定温度を230℃〜280℃とした65φ短軸押出機を用いてペレット化し、その後、設定温度を230℃〜280℃としたTダイを備えた50φ短軸押出機でフィルム化を行い、25μm厚のフッ素樹脂フィルムを得た。
【0113】
(3)カバーレイの作製
上記(1)で得たポリイミドフィルムと、上記(2)で得たフッ素樹脂フィルムとを用いて、真空プレス法により、カバーレイを作製した。具体的には、ポリイミドフィルムとフッ素樹脂フィルムを重ね合わせ、真空プレス機で120℃、30kNで90秒プレスし、その後180℃に設定した電気炉を用いて、フリーテンションで20分間加熱してカバーレイフィルムを得た。得られたカバーレイについて、上記の各特性を測定した。結果を表2に示す。
【0114】
[実施例2]
実施例1の(1)で得たポリイミドフィルムに代えて、合成例2で得たポリアミック酸溶液を用いて、実施例1の(1)と同様にして製造したポリイミドフィルムを使用し、合成例3で得た含フッ素エチレン性重合体(F−A)に代えて、合成例4で得た含フッ素エチレン性重合体(F−B)を使用した以外は、実施例1と同様にしてカバーレイを製造し、上記の各特性を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
[比較例1]
実施例1の(1)で得たポリイミドフィルムと合成例5で得た含フッ素エチレン性重合体(F−C)とを実施例1の(3)の作製方法と同じ方法を用いてカバーレイを作製した。
【0116】
【表2】
(表中、カバーレイの各ピール強度は、ポリイミドフィルム層とフッ素樹脂層の間の接着強度を表す。)
【0117】
比較例1では、銅張積層体とカバーレイとの位置合わせに時間を要し、工業的実施には適していなかった。また、表2に示されるように、比較例1では十分な密着力が得られず、工業的に適していないことが分かった。一方、本発明のカバーレイでは、作業性に優れ、熱収縮率も、±0.1%未満であった。
【0118】
[製造例1]
実施例1の(1)で得たポリイミドフィルムに、18μmの銅箔をエポキシ系接着剤を用いて接着し、両面CCLを作製した。
【0119】
[実施例3]
実施例1の(1)と同様にして得たポリイミドフィルム(厚さ:12.5μm)と、合成例4で得た含フッ素エチレン性重合体(F−B)を用いて、実施例1の(3)に示す方法でカバーレイを作製した。
【0120】
[比較例2]
実施例1の(1)と同様にして得たポリイミドフィルム(厚さ:12.5μm)の片面にバーコーターを用いてエポキシ系接着剤を厚さが25μmになるよう塗布し、150度で5分間熱乾燥し、Bステージ化を行った後、樹脂組成物面にセパレートフィルムをラミネーターによって貼り合わせてカバーレイを作製した。
【0121】
[試験例(伝送特性)]
製造例1で作製したCCLを用いて、所定の配線になるようエッチングを施し、エッチング処理後のCCLと、実施例3のカバーレイ又は比較例2のカバーレイを用いて回路を作製し、伝送特性を測定した。測定結果を
図1に示す。
【0122】
上記のように、本発明のカバーレイを用いると、高周波回路基板製造時の作業性に優れ、機械的特性及び耐熱性に優れた高周波回路基板が得られた。また、本発明のカバーレイは
図1に示されるように、伝送特性も従来のカバーレイと比較して良好な特性を持つ。