(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒と予備の筆記芯を収容する芯ケースとの間に重量体をスライド可能に装填し、前記軸筒を振ることにより生ずる前記重量体の慣性力により、筆記芯を把持するチャックを前進移動させて、筆記芯を繰り出すシャープペンシルであって、
前記重量体として、竹の子ばねもしくは円すいコイルばねを用いたことを特徴とする振出式シャープペンシル。
【背景技術】
【0002】
振出式シャープペンシルは、軸筒と予備の筆記芯を収容する芯ケースとの間に、例えば円筒状に成形された重量体(錘)が軸方向にスライド可能に配置される。そして、前記軸筒を振ることにより生ずる前記重量体の慣性力を利用して、筆記芯を把持するチャックを前進移動させて瞬間的に開き、筆記芯を繰り出すように動作する。
【0003】
前記した重量体としては、慣性力によりチャックを瞬間的に開く動作を与えるために、ある程度の重量を確保する必要があり、例えばパイプ状の金属筒が多用される。
前記重量体として金属筒を利用した場合には、ある程度の重量を確保することができるものの、重量体の衝撃が大きく作用するために、筆記芯を折損する問題が生ずる。
このために、振出し時の重量体の衝撃を吸収する衝撃吸収体を備えることで、芯折れの対策を施したシャープペンシルが特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示された振出式のシャープペンシルによると、重量体の衝撃を吸収する衝撃吸収体として、2つのゴム製のOリングが用意され、一方のOリングが芯ケース前端部のチャック位置に配置され、また他方のOリングが芯ケースの後端部を囲む中子にそれぞれ装着された構成が採用されている。
この特許文献1に開示されたシャープペンシルによると、衝撃吸収体としての前記したOリングを用意する必要があり、部品点数の増加や組み立て工数の増加などの課題が残される。
【0005】
一方、線材をコイル状に巻回することで直線状のコイルスプリングを成形し、これを重量体として採用した振出式のシャープペンシルが特許文献2に開示されている。
この特許文献2に開示された振出式のシャープペンシルによると、前記コイルスプリングはその重量を大きくとることが困難なため、コイル状に巻回する線材として、断面が四角形になされたものを採用している。
これによると断面が円形の線材によるコイルスプリングに比較して、その重量を大きくとることが可能であると記載されている。
【0006】
また特許文献2には、前記したコイルスプリングの中央部を密着状態に巻回し、その両端部にはコイル間に若干大きな隙間を持たせた構成にすることで、コイルスプリングの前記両端部が、振出し時の衝撃を吸収する衝撃吸収体として有効に機能することが記載されている。
【0007】
この特許文献2に開示された構成によると、特許文献1に開示されたシャープペンシルに比較して、部品点数や組み立て工数の増加について解消することができるものの、コイル状に巻回する線材の断面形状の変更の範囲においては、それ程の重量の増加を見込むことは期待できない。
【0008】
特にコイル状に巻回する線材の断面積を増加させた場合には、衝撃吸収体としてのスプリングのばね定数が極端に増大するために、衝撃吸収体としての機能を落とし、芯折れ対策の機能を減退させる結果となる。
また、直線状のコイルスプリングによって全体重量を確保するには、軸方向(スライド方向)の長さ寸法もある程度大きく設定する必要が生じ、この場合にはコイルスプリングの軸方向の長さ寸法が増大した分、コイルスプリングの移動ストロークが減少するという設計上の制約も浮上する。このために筆記芯の繰り出し機能を十分に果たすことができないという問題が生ずる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係るシャープペンシルについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分もしくは同一の機能を果たす部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面については代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0021】
先ず
図1〜
図8は、第1の実施の形態を示したものであり、これは慣性力によりチャックを前進移動させる重量体として竹の子ばねを用いると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づいて筆記芯を除々に一方向に回転させる回転駆動機構を搭載したシャープペンシルについて示している。
【0022】
図1および
図2に示すように、軸筒1の先端部には飾りリング2が取り付けられた口先部材3が螺合されることで、口先部材3は軸筒1に対して着脱可能に取り付けられている。前記軸筒1の軸芯に沿って筒状に形成された第1および第2の芯ケース4A,4Bが収容されている。
この第1および第2の芯ケース4A,4Bは、合成樹脂により成形された円筒状の接続部材5を中央にして軸方向に直線状に連結されており、中央の接続部材5は後述する重量体としての竹の子ばねの前進位置の受け部(竹の子ばねの前進位置のストッパー)として機能する。
【0023】
前記第1の芯ケース4Aの先端部には短軸の芯ケース継手6が取り付けられ、前記芯ケース継手6を介して真ちゅう製のチャック7が連結されている。
前記チャック7内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、またチャック7の先端部が周方向に複数(例えば3つ)に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具8内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具8は前記チャック7の周囲を覆うようにして配置された回転駆動機構21の一部を構成する回転カム23の先端部内面に装着されている。
【0024】
前記回転カム23の前端部には、前記した口先部材3内に収容されて、その前端部が口先部材3より突出するスライダー9が、回転カム23の外周面を覆うようにして嵌合されて取り付けられ、さらにスライダー9の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ11がパイプ保持具12を介して取り付けられている。
また、前記スライダー9の内周面における前記した先端パイプ11の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック13が装着されている。
【0025】
前記した構成により、第1芯ケース4Aに続くチャック7内に形成された通孔、および前記保持チャック13の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ11に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した回転カム23と芯ケース継手6との間には、コイル状のチャックスプリング14が配置されている。
【0026】
前記チャックスプリング14は、その前端部が回転カム23の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング14の後端部は前記芯ケース継手6の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング14の軸方向の拡開作用により、前記チャック7は回転カム23内を後退させて、その先端部がリング状の締め具8内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0027】
前記した回転カム23を含む筆記芯の回転駆動機構21は、その外郭がホルダー部材22により構成され、このホルダー部材22の前半部に、円柱状に形成された前記回転カム23が回転可能にかつ軸方向に僅かにスライド可能に装着されている。
また、前記ホルダー部材22における回転カム23の装着位置の直後には、ゴム素材(エラストマー)により成形されたクッション部材24が装着されており、このクッション部材24に、前記した回転カム23との間で滑り動作がなされる滑り部材(トルクキャンセラーとも言う。)25が取り付けられている。
【0028】
前記トルクキャンセラー25はリング状に形成されて、前記回転カム23の後端面に当接し、前記クッション部材24の弾性により、回転カム23を軸方向の前方に押し出す作用を与えている。
一方、前記ホルダー部材22における前記クッション部材24の装着位置の直後には、周方向に複数のスリット22aを形成することで蛇腹状になされており、この蛇腹構造によりスプリング体22bが構成されている。加えてスプリング体22bの直後には、円環状のアンダーカット部22cが形成され、このアンダーカット部22cによって、ホルダー部材22は軸筒1内において嵌合されて固定されている。
【0029】
前記した円環状のアンダーカット部22cが軸筒1内において嵌合されることにより、その直前のスプリング体22bの作用により、前記回転カム23を支持するホルダー部材22の前半部を、前方に向かって押し出す作用を与えている。これによりホルダー部材22の一部を軸筒内に形成された段部1a(
図2参照)に当接させて、回転カム23を含む回転駆動機構21の位置決めを果たしている。
【0030】
なお、前記ホルダー部材22におけるアンダーカット部22cを境とした後半部は、軸筒1内に沿ったガイド筒22dを形成しており、このガイド筒22dは前記した芯ケース4A,4Bの接続部材5を収容すると共に、重量体として機能する竹の子ばね16のスライド空間を形成している。
すなわち、前記竹の子ばね16は前記した第2芯ケース4Bに、中央の貫通孔が挿通されて第2芯ケース4Bを軸として、ガイド筒22d内を軸方向にスライド可能となるように装填されている。
【0031】
この構成により、竹の子ばね16は前進した状態で、
図1および
図2に示すように螺旋径の小さい軸中心側に突出する一端部が、連結部材5に当接するように作用する。
また竹の子ばね16は後退した状態で、
図3に示すように螺旋径の大きい円環状の他端部が、後述するノック棒32の前端部に当接するように構成されている。
すなわちこの実施の形態においては、前記竹の子ばね16は、前記連結部材5と前記ノック棒32との間において往復移動できるように装填されている。
なお、この実施の形態において用いられる前記竹の子ばね16のさらに詳細な構成については、
図4に基づいて後で説明する。
【0032】
一方、前記回転カム23、クッション部材24、トルクキャンセラー25の軸芯部分は、前記した第1芯ケース4Aを通す空間部になされており、これにより第1および第2芯ケース4A,4Bとチャック7等は独立して軸方向に移動可能になされている。
そして、前記回転駆動機構21は、ホルダー部材22、回転カム23、クッション部材24、トルクキャンセラー25等を備えてユニット化されており、このユニット化された回転駆動機構21の構成については、
図5〜
図8に基づいて後で詳細に説明する。
【0033】
図2に示されているように、軸筒1の後端部にはクリップ31aが一体に形成された円筒状のクリップ支持体31が、軸筒1の内周面に嵌合されて取り付けられている。また、前記クリップ支持体31内に沿って円筒状に形成されたノック棒32が装着されており、このノック棒32の前端部と、前記したホルダー部材22の後端部(ガイド筒22d)との間には軸スプリング33が装着され、この軸スプリング33によってノック棒32を軸筒の後部に向かって突出させる作用を与えている。
なお、前記ノック棒32の外径が太くなされた段部32cが、前記クリップ支持体31の内周面の一部に軸方向に当接することで、ノック棒32の抜け止め機構が形成されると共に、ノック棒32の位置決めを果たしている。
【0034】
前記ノック棒32の後端部には、消しゴム34が着脱可能に装着され、前記消しゴム34を覆うノックカバー35が、ノック棒32の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。前記ノック棒32における消しゴム34の装着位置には、小口径になされた筆記芯の補給孔32aが形成され、その直前には軸方向に直交するようにして当接部32bが形成されている。
【0035】
加えて、ノック棒32に形成された当接部32bと、前記した第2芯ケース4Bの後端部とは、軸方向に所定の間隔をもって対峙した構成にされている。
この構成によると、筆記に伴いチャック7および芯ケース4A,4Bが若干後退しても、第2芯ケース4Bの後端部が前記ノック棒32に衝突することはなく、前記回転駆動機構21の回転動作に障害を与えるのを避けることができる。
【0036】
以上の構成において、前記したノックカバー35をノック操作することにより、前記した軸スプリング33は収縮し、ノック棒32の前記当接部32bが、連結部材5により直線状に連結された第1と第2の芯ケース4A,4Bを前方に押し出す。
これにより、チャック7が前進してスライダー9を若干前方に押し出す。しかしスライダー9の一部が口先部材3内に当接してその前進が阻まれるため、チャック7の先端部が締め具8から相対的に突出してチャック7による筆記芯の把持状態が解除される。
そして、前記ノック操作を解除することにより、前記軸スプリング33の作用により、ノックカバー35は元の状態に後退すると共に、チャックスプリング14の作用によりチャック7および芯ケース4A,4Bも軸筒1内において後退する。
【0037】
この時、筆記芯は保持チャック13に形成された通孔内において摩擦により一時的に保持されており、この状態でチャック7が後退してその先端部が前記締め具8内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。
すなわち、ノックカバー35のノック操作の繰り返しによりチャック7が前後に移動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック7から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0038】
また、このシャープペンシルにおいては、軸筒1を振ることにより、重量体として機能する前記竹の子ばね16が、芯ケース4A,4Bを連結する円筒状の連結部材5に慣性力により衝突する。
この作用を受けて、第1芯ケース4A、芯ケース継手6を介してチャック7が前進し、その先端部が締め具8から相対的に突出して、チャック7は瞬間的に開かれる。この動作が繰り返されることで、筆記芯はチャック7から順次繰り出される。
【0039】
図4はこの実施の形態において用いられる竹の子ばね16を拡大して示したものである。この発明において「竹の子ばね」とは、JIS B 0103−2012 分類3300に定義されているとおり「長方形断面の材料の長辺がコイル中心線に平行な円すいコイルばね」を指すものである。
図4に示す竹の子ばね16においては、長方形状の金属製の基材16Aを用いて長辺が順次径を拡大させて螺旋状に巻回されている。したがって、竹の子ばね16は軸方向の長さ寸法を小さく成形しつつ、全体重量を大きく確保することができる。
【0040】
そして、この竹の子ばね16は
図1〜
図3に基づいてすでに説明したとおり、中央の貫通孔16aが第2芯ケース4Bに挿通されて軸方向にスライド可能となるように装填されている。加えてすでに説明したとおり、この竹の子ばね16は螺旋径の小さい軸中心側に突出する一端部16bが、芯ケース4A,4Bを連結する連結部材5に当接するように装填されている。
したがって、竹の子ばね16の前進移動に伴う慣性力は、芯ケースの軸芯に近い部分に作用するため、第1および第2芯ケース4A,4Bの姿勢は、軸芯から外れることなく軸芯に沿って円滑に前進移動し、チャック7を効果的に押し出すように作用する。
【0041】
また、この実施の形態において利用される前記竹の子ばね16は、軸方向(スライド方向)に直交する方向の前記基材16Aによる層間に、隙間16cが形成されていることが望ましい。
この構成により前記竹の子ばね16は、スライド方向に圧縮可能になされ、スライド方向に適度なばね効果を持たせることができるので、竹の子ばね16の慣性力による衝撃を効果的に緩和させることができる。したがって、この種の振出式シャープペンシルの芯折れ対策としての効果を十分に発揮することができる。
【0042】
図5および
図6には、筆記芯の回転駆動機構21の外郭を構成するホルダー部材22と、このホルダー部材22に装着されたクッション部材24およびトルクキャンセラー25の詳細な構成が示されている。
前記ホルダー部材22は、合成樹脂により成形されており、このホルダー部材22には、前方寄りに円筒部22eが形成されている。この円筒部22eは、その内周面が前記した回転カム23を回転可能に、かつ軸方向に移動可能に支持する機能を果たす。
【0043】
前記ホルダー部材22を軸筒1内に装着した状態における前記円筒部22eの前端部側には、軸方向に長い一対の弾性部材22fが軸対称の位置(180度対向する位置)にそれぞれ形成されている。この一対の弾性部材22fは前記した円筒部22eに一体に樹脂成形により形成され、かつ細長く形成されることで弾性作用が付与されている。
【0044】
そして、一対の弾性部材22fにおける円筒部22e側の基端部、すなわち前記円筒部22eの端面には円環状に連続して鋸歯状に成形された多数のカム(これを、第1固定カムという。)22gが形成されている。
また、一対の弾性部材22fの先端部には、それぞれ鋸歯状に形成されたカム(これを、第2固定カムという。)22hが形成されている。
なお、前記第2固定カム22hは、前記弾性部材22fの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。
【0045】
前記した円筒部22eの他端部側には、軸方向に伸びる一対の柱状体22iが軸対称の位置に形成されており、この柱状体22iを介して第2円筒部22jが成形されている。
加えて、ホルダー部材22における前記した一対の柱状体22iおよび第2円筒部22jに囲まれた領域には、前記したとおりゴム素材、好ましくはTPE(熱可塑性エラストマー)により成形されたクッション部材24が装着されており、このクッション部材24を介して樹脂製のトルクキャンセラー25が取り付けられている。
【0046】
なお、この実施の形態においては、前記クッション部材24は前記ホルダー部材22とトルクキャンセラー25との間において、ホルダー部材22およびトルクキャンセラー25を一次成形体として、二色成形により一体化されて成形されており、符号24aは二色成形を行う際のTPE注入用のゲート位置を示している。
加えて、前記クッション部材24には、
図6示すように中央部に薄膜体24bが形成されており、この薄膜体24bはそれ自身を形成するエラストマーが軸方向に延伸しつつ変形するように動作する。
【0047】
前記トルクキャンセラー25には、前記クッション部材24の反対面において、周方向にほぼ等間隔をもって半球状の小突起25aが形成されている。これらの小突起25aは前記したクッション部材24の作用により回転カム23の後端部に当接し、回転カム23を前方に押し出す作用を与えつつ、回転カム23の後端面との間で滑りが生ずるように機能する。
【0048】
図7および
図8は、前記したホルダー部材22の軸方向の前方に、回転カム23を装着することで、ユニット化された回転駆動機構21を構成した状態を示している。
前記回転カム23は円筒状に形成されると共に、中央部が大径部になされ、その大径部の軸に直交する上下の面には、円環状に連続して多数の鋸歯状のカム23a,23bがそれぞれ形成されている。なお、以下においては前記ホルダー部材22の第1固定カム22gに噛み合うカム23aを上側のカムと称呼し、第2固定カム22hに噛み合うカム23bを下側のカムと称呼する。
【0049】
そして、前記回転カム23の回転軸23cを、ホルダー部材22に形成された一対の弾性部材22f側から押し込むことで、一対の弾性部材22fは互いに外側に押し広げられつつ、回転軸23cは円筒部22e内に収容される。これにより、回転カム23はホルダー部材22に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に装着される。
【0050】
なお、この実施の形態においては、前記下側のカム23bは円錐形状に成形された傾斜面上に成形されており、これに噛み合う第2固定カム22hは、前記したとおり弾性部材22fの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。したがって、この形態によると前記したクッション部材24の作用により回転カム23が軸方向の前方に向かって付勢されるので、回転カム23の軸芯がホルダー部材22の軸芯に一致した理想的な噛み合い状態を実現させることができる。
【0051】
そして、前記回転駆動機構21の外郭を構成するホルダー部材22は、軸筒1の後端部側より挿入され、すでに
図1〜
図3に基づいて説明したとおり、ホルダー部材22に形成されたアンダーカット部22cを軸筒1内の所定の位置に嵌合させることで、前記回転駆動機構21は軸筒1内の所定の位置に装着される。
【0052】
以上のように構成された筆記芯の回転駆動機構21によると、
図1および
図2に示すようにチャック7が筆記芯を把持した状態で、前記回転カム23はチャック7と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、このシャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記したクッション部材24の作用により、トルクキャンセラー25を介して回転カム23は前方に向かって付勢されている。
【0053】
一方、筆記動作により先端パイプ10から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック7は前記クッション部材24の付勢力に抗して僅かに後退し、これに伴って回転カム23も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転カム23に形成された鋸歯状の上側のカム23aは、前記第1固定カム22gに接合して噛み合い状態になされる。
【0054】
この場合、対峙した状態の上側のカム23aと第1固定カム22gは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように上側カム23aが第1固定カム22gに接合して噛み合い状態になされることによって、回転カム23は上側カム23aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0055】
そして、前記したように上側カム23aが第1固定カム22gに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の鋸歯状の下側カム23bと第2固定カム22hは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0056】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッション部材24の作用により、回転カム23は軸方向に押し出されて僅かに前進し、回転カム23に形成された下側カム23bが、第2固定カム22hに噛み合う。これにより回転カム23は下側カム23bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0057】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転カム23の軸方向への往復運動(クッション動作)に伴って、回転カム23は上側カム23aおよび下側カム23bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記したチャック7を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0058】
以上説明したこの発明に係るシャープペンシルの第1の実施の形態によると、筆記芯を把持するチャックを慣性力により前進移動させる重量体として、竹の子ばねを用いたので、重量体としての軸方向の長さ寸法を小さく成形しつつ、重量を大きく確保することができる。したがって、この種の振出式シャープペンシルとして、理想的な機能を発揮することができる。
【0059】
また、筆記芯が受ける筆記圧に基づいて筆記芯を除々に一方向に回転させる回転駆動機構を備えたので、筆記芯の偏摩耗を防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能である。また回転駆動機構の存在による前記重量体の移動ストロークの制限を、竹の子ばねの採用によりカバーすることができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【0060】
次に
図9および
図10は、第2の実施の形態を示したものであり、これは慣性力によりチャックを前進移動させる重量体として、円すいコイルばねが用いられている。また第2の実施の形態においては、第1の実施の形態において採用した筆記芯の回転駆動機構は搭載されていない。
なお、
図9においては先に説明した第1の実施の形態における各部と同一の機能を果たす部分は同一の符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0061】
図9に示す軸筒は、先軸1Aと後軸1Bとにより構成され、これら先軸1Aと後軸1Bは中央の止めリング41を介して連結されている。また先軸1Aの周面を囲撓するようにして被覆ゴム42が取り付けられ、この被覆ゴム42はゲル剤43を封止することで、グリップ部を構成している。
【0062】
芯ケース4の外側に、比較的長尺の継手部材44が配置されており、この継手部材44の前端部はチャック7に連結されている。そして、継手部材44の直後に重量体として機能する円すいコイルばね45がスライド可能に配置されている。
すなわち、前記円すいコイルばね45は、継手部材44とその後部に位置する内止めリング46の内周面との間を、軸方向に往復移動するように収容されている。
そして、前記円すいコイルばね45は、中央の貫通孔が芯ケース4に挿通されて、芯ケース4を軸としてスライド可能に装填されている。
【0063】
この構成により、円すいコイルばね45は前進した状態で、
図9に示すようにコイル径の小さい軸中心側に突出する一端部が、継手部材44の後端部に当接する。これにより、円すいコイルばね45の慣性力が、継手部材44を介して筆記芯を把持するチャック7に伝達され、チャック7を前進移動させることで、筆記芯が繰り出される。
なお、この実施の形態において用いられる前記円すいコイルばね45のさらに詳細な構成については、
図10に基づいて後で説明する。
【0064】
この第2の実施の形態においては、前記した重量体として機能する円すいコイルばね45の作用により、振出式のシャープペンシルが構成されると共に、ノックカバー35を軸方向にノック操作することで、芯ケース4を介してチャック7を前進させることができる。これにより芯を繰り出すことができることは第1の実施の形態と同様である。
【0065】
さらにこの第2の実施の形態においては、ノック棒32内に芯ロック機構48が配置されている。この芯ロック機構48は、ノックカバー35を前記した芯を繰り出す以上の深いノック操作をすること(さらに押し込むこと)で、回転子49が軸方向に移動して所定量回転し、ノック棒32が押し込み状態にロックされるように作用する。
【0066】
このロック状態において再度ノックカバー35をノック操作することで、再び前記回転子49が所定量回転して、ノック棒32の押し込み状態が解除され、元の状態に復帰するように作用する。この芯ロック機構48の基本原理は、いわゆるカーンノック機構と称されノック式ボールペン等に多用されている。
【0067】
したがって、芯ロック機構48をロック状態に設定することで、前記芯ケース4および前記チャック7は前進した状態に保持される。これにより、重量体としての前記した円すいコイルばね45が前進移動しても、その慣性力により筆記芯が繰り出されるのを阻止することができる。
【0068】
図10は、この第2の実施の形態において用いられる円すいコイルばね45を拡大して示したものである。この発明において「円すいコイルばね」とは、JIS B 0103−2012 分類3242に定義されているとおり「円すい形のコイルばね」を指すものである。
図10に示す円すいコイルばね45においては、断面が円形状の線材45Aを用いて順次コイル径を拡大させて螺旋状に巻回されている。したがって、円すいコイルばね45は軸方向の長さ寸法を小さく成形しつつ、全体重量を確保することができる。
【0069】
そして、この円すいコイルばね45は、
図9に基づいてすでに説明したとおり、中央の貫通孔45aが芯ケース4に挿通されて軸方向にスライド可能となるように装填される。
加えてすでに説明したとおり、この円すいコイルばね45はコイル径の小さい軸中心側に突出する一端部45bが、継手部材44の後端部に当接するように装填されている。
これにより、円すいコイルばね45の前進移動に伴う慣性力は、継手部材44を介してチャック7を効果的に押し出すように作用する。
【0070】
また、この実施の形態において利用される前記円すいコイルばね45は、軸方向(スライド方向)に隣接する各コイル間に隙間45cが形成されていることが望ましい。
この構成により前記円すいコイルばね45は、スライド方向に圧縮可能になされ、スライド方向に適度なばね効果を持たせることができるので、円すいコイルばね45の慣性力による衝撃を効果的に緩和することができる。したがって、この種の振出式シャープペンシルの芯折れ対策としての効果を十分に発揮することができる。
【0071】
以上説明したこの発明に係るシャープペンシルの第2の実施の形態によると、筆記芯を把持するチャックを慣性力により前進移動させる重量体として、円すいコイルばねを用いたので、重量体としての軸方向の長さ寸法を小さく成形しつつ、重量を確保することができる。したがって、この種の振出式シャープペンシルとして、理想的な機能を発揮することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【0072】
なお、前記した回転駆動機構を備えた第1の実施の形態においては、重量体として竹の子ばねを用いており、第2の実施の形態においては、重量体として円すいコイルばねを用いているが、これらの重量体を入れ替えて構成しても、それぞれ同様の作用効果を得ることができる。