特許第6235825号(P6235825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235825
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   F24F3/044
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-164242(P2013-164242)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34641(P2015-34641A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀樹
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−054090(JP,A)
【文献】 特開2011−196657(JP,A)
【文献】 特開2012−021741(JP,A)
【文献】 特開2012−199300(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0050003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/044
F24F 7/06
H05K 7/20
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理機器の配置された冷却対象空間を挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から前記冷却対象空間を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、
前記第一空間へと冷却空気を供給する空調手段と、
前記第二空間における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第一排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第一排気路へと排気する上方排気手段と、
前記第二空間における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第二排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第二排気路へと排気する下方排気手段と、を備え
前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、
前記第一排気路は、前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであり、
前記第二排気路は、前記部屋の床下に形成された床下チャンバーであり、
前記天井チャンバーは、複数の前記第二空間の各々の前記上方排気手段に連通し、
前記床下チャンバーは、複数の前記第二空間の各々の前記下方排気手段に連通し、
前記第一空間を挟むように、かつ、前記第一空間に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されており、
前記空調手段は、前記2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる水平方向から、前記第一空間に対して冷却空気を供給する、
空調システム。
【請求項2】
情報処理機器の配置された冷却対象空間を挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から前記冷却対象空間を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、
前記第一空間へと冷却空気を供給する空調手段と、
前記第二空間における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第一排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第一排気路へと排気する上方排気手段と、
前記第二空間における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第二排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第二排気路へと排気する下方排気手段と、を備え、
前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、
前記第一排気路及び前記第二排気路は、いずれも前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであって、
前記下方排気手段は、前記天井チャンバーと前記下方領域とを相互に接続するダクトにおける前記下方領域側の端部である、
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室において、情報処理機器の冷却を行う空調システムが提案されている(例えば、特許文献1)。このような空調システムは、概略的に、情報処理機器を収容したラックに冷却ファンを備えて、冷却空気を、冷却ファンの吸気側に設けられた空間(コールドアイル)からラックの内部を介して冷却ファンの排気側に設けられた空間(ホットアイル)に送風することにより、ラックの内部に収容された情報処理機器の冷却を行う。
【0003】
ここで、ホットアイルに送風された空気は何れかの方法で排気する必要があるが、特許文献1に係る空調システムでは、このような排気を行う方法として、2種類の方法が開示されている。まず一方の方法は、天井を、天井スラブの下方に天井ボードを配置した二重天井構造にて形成し、ホットアイルの内部の空気を、天井ボードに設けられた開口を介して、天井ボードと天井スラブとの間に形成される天井裏空間へと排気する方法である。もう一方の方法は、床を、床スラブの上方に床板を配置した二重床構造にて形成し、ホットアイルの内部の空気を、床板に設けられた開口を介して、床板と床スラブとの間に形成される床下空間へと排気する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−32133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の従来の空調システムでは、ホットアイルの空気を天井ボードに設けられた開口、又は床板に設けられた開口のいずれか一方を介して排気するため、ホットアイルの内部において、圧力分布が不均一となってしまう。すなわち、天井ボードに設けられた開口を介して排気する方法では、天井付近の圧力の方が床付近の圧力よりも大きくなり、床板に設けられた開口を介して排気する方法では、床付近の圧力の方が天井付近の圧力よりも大きくなる。
【0006】
このように圧力分布が不均一になると、コールドアイル側にホットスポットが生じてしまう現象が生じ得る。すなわち、天井ボードに設けられた開口を介して排気する方法を例に挙げると、ホットアイルの床付近の圧力が小さいため、コールドアイル側の気流速に起因するカルマン渦の発生によって、コールドアイル側で大きな負圧が生じてしまう可能性がある。このような場合に、コールドアイル側で発生した負圧がホットアイル側で発生した負圧より大きな値になった場合、ホットアイル側からコールドアイル側にかけての逆流が生じる現象があり、その結果コールドアイル側にホットスポットが生じてしまう。このようにしてコールドアイル側に生じたホットスポットは、サーバの誤作動等に繋がることが指摘されているため、このようなホットスポットの発生を防止することの可能な空調システムが要望されていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コールドアイル側にホットスポットが発生してしまう可能性の低減を図ることにより、情報処理機器に不具合が発生してしまう可能性の低減を図ることが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の空調システムは、情報処理機器の配置された冷却対象空間を挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から前記冷却対象空間を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、前記第一空間へと冷却空気を供給する空調手段と、前記第二空間における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第一排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第一排気路へと排気する上方排気手段と、前記第二空間における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第二排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第二排気路へと排気する下方排気手段と、を備え、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、前記第一排気路は、前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであり、前記第二排気路は、前記部屋の床下に形成された床下チャンバーであり、前記天井チャンバーは、複数の前記第二空間の各々の前記上方排気手段に連通し、前記床下チャンバーは、複数の前記第二空間の各々の前記下方排気手段に連通し、前記第一空間を挟むように、かつ、前記第一空間に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されており、前記空調手段は、前記2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる水平方向から、前記第一空間に対して冷却空気を供給する
【0010】
また、請求項に記載の空調システムは、情報処理機器の配置された冷却対象空間を挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から前記冷却対象空間を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、前記第一空間へと冷却空気を供給する空調手段と、前記第二空間における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第一排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第一排気路へと排気する上方排気手段と、前記第二空間における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第二排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第二排気路へと排気する下方排気手段と、を備え、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、前記第一排気路及び前記第二排気路は、いずれも前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであって、前記下方排気手段は、前記天井チャンバーと前記下方領域とを相互に接続するダクトにおける前記下方領域側の端部である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の空調システムによれば、第二空間における上方領域に配置されて吸気を行う上方排気手段と、下方領域に配置されて吸気を行う下方排気手段とを備えるので、第二空間の圧力を均一化することができ、第二空間の圧力の不均一に伴い第二空間から冷却対象空間を介して第一空間に空気が逆流して第一空間にホットスポットが発生してしまう可能性を低減することが可能となるため、情報処理機器に不具合が発生してしまう可能性の低減を図ることが可能となる。また、従来の空調システムにおいては、第一空間にホットスポットが発生した場合には第一空間に温度むらが発生してしまうため、空調手段から第一空間へと供給する冷却空気の温度を、ホットスポットの発生を想定した低めの温度(例えば、16℃)に設定していたが、当該空調システムによればホットスポットが発生してしまう可能性を低減することができるので、ホットスポットの発生を想定しない適切な温度(例えば、20℃)に設定することが可能となるため、空調システムの搬送動力を削減して省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
また、第二空間の空気を天井チャンバーと床下チャンバーに対して排気するので、天井チャンバーと床下チャンバーを排気路として用いる極めて簡素な構成によりシステムを構築でき、システムの施工性の向上を図ることが可能となる。また、天井チャンバーと床下チャンバーの両方を排気路として用いるので、別途に排気路として用いるための空間を設ける必要がなく、省スペースのシステムを構築することが可能となるため、建築的に階高を小さく抑えることができる。
また、空調手段は、2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる水平方向から、第一空間に対して冷却空気を供給するので、第一空間を挟むように、かつ、前記第一空間に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されている場合であっても第一空間に対して冷却空気を供給でき、複数の情報処理機器が並設された空間においても利用可能なシステムを構築することが可能となる。
【0014】
請求項に記載の空調システムによれば、第二空間における上方領域に配置されて吸気を行う上方排気手段と、下方領域に配置されて吸気を行う下方排気手段とを備えるので、第二空間の圧力を均一化することができ、第二空間の圧力の不均一に伴い第二空間から冷却対象空間を介して第一空間に空気が逆流して第一空間にホットスポットが発生してしまう可能性を低減することが可能となるため、情報処理機器に不具合が発生してしまう可能性の低減を図ることが可能となる。また、従来の空調システムにおいては、第一空間にホットスポットが発生した場合には第一空間に温度むらが発生してしまうため、空調手段から第一空間へと供給する冷却空気の温度を、ホットスポットの発生を想定した低めの温度(例えば、16℃)に設定していたが、当該空調システムによればホットスポットが発生してしまう可能性を低減することができるので、ホットスポットの発生を想定しない適切な温度(例えば、20℃)に設定することが可能となるため、空調システムの搬送動力を削減して省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
また、下方排気手段は、天井チャンバーと下方領域とを相互に接続するダクトにおける下方領域側の端部であるので、下方排気手段により吸気した空気も天井チャンバーに排気することで床下チャンバーを排気路以外の用途で用いることができ、床下チャンバーの用途の幅を広げたシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る空調システムの斜視図である。
図2図1のX−Z平面による空調システムの断面図である。
図3】本発明の実施の形態2に係る、図1のX−Z平面による空調システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る空調システムの各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔I〕各実施の形態の基本的概念
まず、各実施の形態の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る空調システムは、情報処理機器の冷却を行う空調システムである。ここで、情報処理機器の用途は任意であるが、各実施の形態では、データセンタ等の大規模な情報処理施設にて各種のデータを処理するための機器として用いられるものとして説明する。また、情報処理施設における情報処理機器の設置台数についても任意であり、少なくとも一つの情報処理機器を備えることにより当該空調システムを構成することが可能であるが、本実施の形態では複数の情報処理機器が設置されているものとして説明する。また、各実施の形態では、情報処理施設における、複数の情報処理機器が設置された一つの部屋について注目して説明し、当該部屋の内部のことを以下では必要に応じて「室内」と称して説明する。
【0019】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、各発明に係る実施の形態の具体的内容について説明する。
【0020】
(実施の形態1)
最初に、実施の形態1について説明する。この形態は、下方排気手段として床下排気口を備えた形態である。
【0021】
(構成)
まずは、本実施の形態1に係る空調システム1の構成について説明する。図1は、本実施の形態1に係る空調システム1の斜視図である。また、図2は、図1のX−Z平面による空調システム1の断面図(後述するラック10を通る断面図)である。この図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る空調システム1は、概略的に、ラック10、空調機20、整流部材30、天井排気口40、床下排気口50、コールドアイルキャッピング60、及びホットアイルキャッピング70を備えて構成される。なお、以下では、図1に示すX方向を「幅方向」、Y方向を「長さ方向」、Z方向を「高さ方向」と必要に応じて称して説明する。
【0022】
(構成−部屋)
ここで、まずは空調システム1の各構成要素が配置される部屋について説明する。まず、この部屋は、図1に示すように、天井スラブ2の下方に天井材3を設置し、当該天井スラブ2と天井材3との相互間の空間を天井チャンバー4として用いる二重天井構造、かつ床スラブ5の上方に床材6を設置し、当該床スラブ5と床材6との相互間の空間を床下チャンバー7として用いる二重床構造にて形成されている。なお、このような二重天井構造及び二重床構造を形成するための具体的な手段については公知の手段を用いることができるため省略する。ここで、床材6と天井材3との相互間に形成される空間であって、情報処理機器が設置される空間を以下では「情報処理空間」と必要に応じて称して説明する。なお、この情報処理空間や天井チャンバー4や床下チャンバー7の具体的な広さや形状等については任意であるが、本実施の形態1では、情報処理空間は少なくとも情報処理機器を収容したラック10を複数配置できる程度の幅及び長さを有する空間であるものとし、天井チャンバー4及び床下チャンバー7は、この情報処理空間と同一の幅及び長さを有し、高さがそれぞれ異なる空間であるものとして説明する。なお、情報処理空間には空調機20を介して空気が供給され、当該空調機20から情報処理空間に対して供給された空気は、天井排気口40を介して天井チャンバー4に排気され、又は床下排気口50を介して床下チャンバー7に対して排気される。そして、天井チャンバー4や床下チャンバー7には公知の排気ファンや全熱交換器等が備えられており、これらの排気ファンや全熱交換機等を介して、天井チャンバー4や床下チャンバー7に対して供給された空気は外部の空間(例えば屋内)に排出される。
【0023】
(構成−ラック)
ラック10は、情報処理機器を収容するための収容手段である。このラック10の具体的な形状については任意であるが、本実施の形態1については図1に示すように中空の直方体形状として形成された筐体を有し、その筐体の内部には複数の情報処理機器が収容されたラック10であるものとして説明する。なお、このラック10における筐体の内部の空間(情報処理機器が配置された空間)を以下では必要に応じて「冷却対象空間」と称して説明する。
【0024】
ここで、このラック10には情報処理機器を冷却するための工夫が施されている。具体的には、まずラック10の筐体における一側面と、当該と対向する位置に設けられた他の側面にはメッシュ状の通風孔が設けられている。そして、このラック10の内部におけるいずれかの位置には、空気の送風を行うための冷却ファンが設けられている。このように構成されたラック10において冷却ファンを稼動させることにより、ラック10の外部における空間(以下、第一空間)の空気が、ラック10の筐体における一側面に設けられた通風孔、ラック10の内部、ラック10の筐体における他の側面に設けられた通風孔、を順次介してラック10の外部における反対側の空間(以下、第二空間)へと送風される。ここで、以下では、上述したラック10の筐体における一側面を「吸込面」、他の側面を「吹出面」と必要に応じて称して説明する。
【0025】
そして、室内には複数のラック10がある特定の方向(本実施の形態1では、長さ方向)に沿って並設されることによりラック10の列(以下、ラック列)が形成されており、当該ラック列を構成する各ラック10はそれぞれの吸込面の向きと吹出面の向きが揃えられて配置されている。また、室内にはこのようなラック列が、当該特定の方向と直交する方向(本実施の形態1では、幅方向)に沿って複数並設されている。そして、これらの複数のラック列は、それぞれの吸込面及び吹出面が向かい合うように配置されており、このようにしてラック列の吸込面側に設けられた空間を「コールドアイル8」と称し、ラック列の吹出面側に設けられた空間を「ホットアイル9」と称して以下では説明する。すなわち、コールドアイル8を挟むように、かつコールドアイル8に対して隣接するように複数の冷却対象空間が配置されており、かつ、ホットアイル9を挟むように、かつホットアイル9に対して隣接するように複数の冷却対象空間が配置されている。
【0026】
(構成−空調機)
空調機20は、冷却空気を生成して、生成した冷却空気をコールドアイル8へと供給する空調手段である。この空調機20の具体的な形状や構成については任意であり、例えば水冷式や空冷式の公知の空調機として形成することが可能であるが、本実施の形態1においては、図1に示すように略直方体形状にて形成された公知のファンコイルユニットであるものとして説明する。
【0027】
ここで、当該空調機20の設置位置について説明する。当該空調機20は、冷却空気をコールドアイル8へと供給することが可能な位置である限り任意であり、任意の位置に設置することが可能である。ただし、冷却対象空間の並設方向と同一の方向から冷却空気をコールドアイル8へ向けて供給すると、ラック10によって送風が妨げられてしまう。そのため、空調機20の設置位置は、当該冷却対象空間の並設方向と同一の方向とは異なる方向から冷却空気をコールドアイル8へと送風可能な設置位置とすることが好ましい。このような設置位置としては、例えば冷却対象空間の並設方向に対して所定の角度を有する斜め方向からコールドアイル8へ向けて冷却空気を供給する位置や、コールドアイル8の床下の鉛直下方向からコールドアイル8へ向けて冷却空気を供給する位置等が考えられる。なお、本実施の形態では、水平平面視上において冷却対象空間の並設方向と直交する方向からコールドアイル8へ向けて冷却空気を供給する位置に配置されているものとして説明する。具体的には、各空調機20は、ラック列が配置されたスペースの長さ方向における側方のスペースにおいて、幅方向に沿って複数配置されている。そして、各空調機20は、冷却空気を吹出す面(以下、冷却空気吹出面)が冷却対象空間の並設方向と平行となるように配置されている。
【0028】
(構成−整流部材)
整流部材30は、空調機20から吹出される冷却空気を拡散させるための拡散手段である。この整流部材30の具体的な構成については任意であるが、本実施の形態1において、整流部材30は、空調機20の冷却空気吹出面の前方位置において、冷却空気吹出面と平行に配置された不織布であるものとして説明する。このように構成された整流部材30が、空調機20から吹出される冷却空気を幅方向に沿って拡散させることにより、各コールドアイル8に対して均等に冷却空気を供給することが可能となる。
【0029】
(構成−天井排気口)
天井排気口40は、ホットアイル9における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、吸気された空気を天井チャンバー4へと排気する上方排気手段である。具体的には、この天井排気口40は、天井材3におけるホットアイルキャッピング70により囲われた領域に設けられた通風孔として形成され、その通風孔の内部には排気ファンが設けられている。そして、この排気ファンを稼動させることによりホットアイル9の内部の排気を天井チャンバー4へと送風することが出来る。なお、天井排気口40が設置される「上方領域」とは、ホットアイル9を上下に二分割した際における上方の領域である。
【0030】
なお、天井排気口40はホットアイル9の内部の排気を天井チャンバー4に導くことの可能な構成であればどのような構成であっても構わない。例えば、本実施の形態1では、天井排気口40に排気ファンが設けられており、この排気ファンにより吸気を行うものとして説明するが、天井排気口40自体が吸気を行わない構成であっても構わない。具体的には、天井排気口40は排気ファンを有さない単なる通気孔として形成し、天井チャンバー4の圧力をホットアイル9の圧力よりも小さくすることにより、ホットアイル9の内部の排気を天井チャンバー4に導いてもよい。
【0031】
(構成−床下排気口)
床下排気口50は、ホットアイル9における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、吸気のされた空気を床下チャンバー7へと排気する下方排気手段である。具体的には、この床下排気口50は、床材6におけるホットアイルキャッピング70及びラック10の吹出面により囲われた領域に設けられた通風孔として形成され、その通風孔の内部には排気ファンが設けられている。そして、この排気ファンを稼動させることによりホットアイル9の内部の排気を床下チャンバー7へと送風することが出来る。なお、床下排気口50が設置される「下方領域」とは、ホットアイル9を上下に二分割した際における下方の領域である。
【0032】
なお、床下排気口50はホットアイル9の内部の排気を床下チャンバー7に導くことの可能な構成であればどのような構成であっても構わない。例えば、本実施の形態では、床下排気口50に排気ファンが設けられており、この排気ファンにより吸気を行うものとして説明するが、床下排気口50自体が吸気を行わない構成であっても構わない。具体的には、床下排気口50は排気ファンを有さない単なる通気孔として形成し、床下チャンバー7の圧力をホットアイル9の圧力よりも小さくすることにより、ホットアイル9の内部の排気を床下チャンバー7に導いてもよい。
【0033】
(構成−コールドアイルキャッピング)
コールドアイルキャッピング60は、コールドアイル8の内部に供給された冷却空気がコールドアイル8の外部へと漏出してしまうことを防止する冷却空気漏出防止手段である。具体的には、各ラック10と同一の長さ、及びコールドアイル8を挟んで配置される2つのラック10の相互間の幅と同一の幅を有する板状部材であって、各ラック10の吸込面における上端部から、当該ラック10とコールドアイル8を介して隣り合う他のラック10の吸込面における上端部に架けて、コールドアイル8を覆う板状部材として形成される。
【0034】
(構成−ホットアイルキャッピング)
ホットアイルキャッピング70は、ホットアイル9の内部の空気がホットアイル9の外部へと漏出してしまうことを防止する排気漏出防止手段である。具体的には、板状部材70a及び板状部材70bの2種類の部材によって形成される。板状部材70aは、各ラック10と同一の長さ、及び各ラック10の上面から天井材3までの高さと同一の高さを有する板状部材であって、各ラック10の上面における吹出面側の端部から天井材3に架けて、ホットアイル9を覆う板状部材である。また、板状部材70bは、ホットアイル9を挟んで配置される2つのラック10の相互間の幅と同一の幅、及び床材6から天井材3までの高さと同一の高さを有する板状部材であって、ホットアイル9を挟んで配置される2つのラック10の相互間における長さ方向のそれぞれの端部に配置される板状部材である。
【0035】
このようにコールドアイルキャッピング60及びホットアイルキャッピング70を備えることにより、コールドアイル8の空気とホットアイル9の空気との間で熱交換が行われないため、空調機20の空調負荷の低減を図ることが可能となる。
【0036】
(処理)
このように構成された空調システム1によって実行される空調処理について説明する。まず、空調機20が冷却空気を生成して、吹出面から吹出す。そして、このように空調機20から吹出された冷却空気が整流部材30によって幅方向に沿って拡散されることにより、各ラック列のコールドアイル8に対して冷却空気が送風される。そして、コールドアイル8に送風された冷却空気は、ラック10に設けられた冷却ファンによってラック10の内部を通ってホットアイル9に対して排気として吹出される。この際にラック10に収容された情報処理機器が冷却される。
【0037】
そして、ホットアイル9に吹出された排気は、天井排気口40を通って天井チャンバー4へ送風されるか、または、床下排気口50を通って床下チャンバー7へ送風される。なお、このようにして天井チャンバー4又は床下チャンバー7へと送風された排気は、天井チャンバー4又は床下チャンバー7に配置された排気ファン(図示省略)や全熱交換器(図示省略)を介して室外へと排気しても良い。あるいは、再度空調機20に取り入れて、空調機20はこのように取り入れた空気を用いて冷却空気を生成しても良い。
【0038】
このように本実施の形態では、天井排気口40又は床下排気口50のいずれか一方だけでなく、その両方からホットアイル9の内部の暖気が排気されるため、ホットアイル9における上下の圧力を均等にすることができ、これにてホットアイル9の圧力を均一にすることができる。よって、ホットアイル9の床面付近においてコールドアイル8側の気流速に起因するカルマン渦が発生する可能性を低減することが可能となる。
【0039】
なお、「ホットアイル9における上下の圧力が均等」とは、必ずしもホットアイル9における上方領域の圧力と下方領域の圧力とが同一であることに限定されず、少なくとも上方領域及び下方領域の両方において排気を行うことにより、ホットアイル9における上下の圧力の均等を図っている状態も含む。ただし、上方領域の圧力と下方領域の圧力とが同一に近い方がよりカルマン渦が発生する可能性を低減することが可能であり、例えば、天井排気口40に設けられた排気ファンの送風量と床下排気口50に設けられた排気ファンの送風量等を調整することにより、上方領域の圧力と下方領域の圧力とを調整しても良い。
【0040】
(実施の形態1の効果)
本実施の形態1に記載の空調システム1によれば、ホットアイル9における上方領域に配置されて吸気を行う天井排気口40と、下方領域に配置されて吸気を行う床下排気口50とを備えるので、ホットアイル9の圧力を均一化することができ、ホットアイル9の圧力の不均一に伴いホットアイル9から冷却対象空間を介してコールドアイル8に空気が逆流することによってコールドアイル8にホットスポットが発生してしまう可能性を低減でき、このようにして発生したホットスポットにより情報処理機器に不具合が発生してしまう可能性の低減を図ることが可能となる。また、従来の空調システムにおいては、コールドアイル8にホットスポットが発生した場合にはコールドアイル8に温度むらが発生してしまうため、空調機20からコールドアイル8へと供給する冷却空気の温度を、ホットスポットの発生を想定した低めの温度(例えば、16℃)に設定していたが、当該空調システム1によればホットスポットが発生してしまう可能性を低減することができるので、ホットスポットの発生を想定しない適切な温度(例えば、20℃)に設定することが可能となるため、空調システム1の搬送動力を削減して省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0041】
また、ホットアイル9の空気を天井チャンバー4と床下チャンバー7に対して排気するので、天井チャンバー4と床下チャンバー7を排気路として用いる極めて簡素な構成によりシステムを構築でき、システムの施工性の向上を図ることが可能となる。また、天井チャンバー4と床下チャンバー7の両方を排気路として用いるので、別途に排気路として用いるための空間を設ける必要がなく、省スペースのシステムを構築することが可能となるため、建築的に階高を小さく抑えることができる。
【0042】
また、空調機20は、2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる方向から、コールドアイル8に対して冷却空気を供給するので、コールドアイル8を挟むように、かつ、前記コールドアイル8に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されている場合であってもコールドアイル8に対して冷却空気を供給でき、複数の情報処理機器が並設された空間においても利用可能なシステムを構築することが可能となる。
【0043】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、下方排気手段として、排気ダクト110を備えた形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0044】
(構成)
まず、実施の形態2に係る空調システム100の構成について説明する。図3は、本実施の形態2に係る、図1のX−Z平面による空調システムの断面図(ラック10を通る断面図)である。この図3に示すように、本実施の形態2に係る空調システム100は、概略的に、ラック10、空調機20、整流部材30、天井排気口40、排気ダクト110、コールドアイルキャッピング60、及びホットアイルキャッピング70を備えて構成される。このように、本実施の形態2においては、床下排気口50は設けられておらず、代わりに、排気ダクト110が設けられている。なお、実施の形態1において床下排気口50が配置されていた位置には床材6が設けられており、ホットアイル9と床下チャンバー7は空間的に接続されていない。また、排気ダクト110以外の構成要素については、実施の形態1のそれらと同様に構成することが可能であるため詳細な説明を省略する。
【0045】
(構成−排気ダクト)
排気ダクト110は天井チャンバー4とホットアイル9の下方領域とを相互に接続するための排気手段である。具体的には、この排気ダクト110は、任意の径を有するダクトとして形成され、ホットアイル9の内部において高さ方向に略沿って配置されている。そして、その上端に位置するダクト口は天井チャンバー4の内部に位置し、一方、下端に位置するダクト口はホットアイル9の下方領域に位置する。
【0046】
なお、この排気ダクト110の設置台数は任意であるが、本実施の形態2では、各ホットアイル9において長さ方向に沿って所定の間隔置きに複数の排気ダクト110が設置されているものとして説明する。
【0047】
(処理)
続いて、このように構成された空調システム100において実行される処理について説明する。まず、空調システム100が稼動されると、空調機20が冷却空気を吹出面から吹出す。そして、このように空調機20から吹出された冷却空気が整流部材30によって幅方向に沿って拡散されることにより、各ラック列のコールドアイル8に対して冷却空気が送風される。そして、コールドアイル8に送風された冷却空気は、ラック10に設けられた冷却ファンによってラック10の内部を通ってホットアイル9に対して送風される。この際にラック10に収容された情報処理機器が冷却される。そして、ホットアイル9に吹出された排気は、天井排気口40を通って天井チャンバー4に排気される排気と、排気ダクト110の吸込口に吸込まれて排気ダクト110を通って天井チャンバー4に排気される排気とに分割される。
【0048】
ここで、本実施の形態2によれば、床下チャンバー7に排気が吹出されないため、床下チャンバー7を他の用途として用いることが可能である。例えば、床下チャンバー7を空調機20にて供給された冷却空気の通風路として用いることにより、床下チャンバー7からコールドアイル8に向けて冷却空気を供給してもよい。
【0049】
(実施の形態2の効果)
本実施の形態2に記載の空調システム100によれば、下方排気手段は、天井チャンバー4と下方領域とを相互に接続するダクトにおける下方領域側の端部であるので、下方排気手段により吸気した空気も天井チャンバー4に排気することで床下チャンバー7を排気路以外の用途で用いることができ、床下チャンバー7の用途の幅を広げたシステムを構築することが可能となる。
【0050】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0051】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、少なくとも、コールドアイル8におけるホットスポットの発生を防止できない場合であっても、従来と異なるシステムにより空調を達成できている場合には、本発明の課題は解決されている。
【0052】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した空調システム1、100の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。
【0053】
(ラックに設けられた冷風ファンついて)
本実施の形態1及び2では、ラック10に設けられた冷風ファンによってコールドアイル8の空気をラック10の内部を介してホットアイル9に排気したが、このような冷風ファンは必ずしもラック10に設ける必要はない。例えば、情報処理機器自体に設けられている冷風ファンを用いても良い。
【0054】
(排気ダクトについて)
本実施の形態2では、排気ダクト110によりホットアイル9の下方領域の空気を天井チャンバー4に対して送風したが、これとは逆の構成を採用しても良い。すなわち、排気ダクト110の上端に設けられたダクト口をホットアイル9の上方領域に配置し、排気ダクト110の下端に設けられたダクト口を床下チャンバー7に配置する。そして、ホットアイル9の空気を当該排気ダクト110を介して床下チャンバー7に送風することにより、天井チャンバー4を排気路として用いることなくホットアイル9の圧力を均一化することが可能となる。
【0055】
(コールドアイルキャッピングについて)
各実施の形態では、コールドアイルキャッピング60を設置するものとして説明したが、コールドアイルキャッピング60を設置しない構成としても良い。特に、各実施の形態によれば、コールドアイルキャッピング60を設置しなくてもコールドアイル8におけるホットスポットの発生を防止することができる。このようにコールドアイルキャッピング60を設置しない構成によれば、コールドアイルキャッピング60を設置することに要するコストや、コールドアイルキャッピング60の清掃コストの低減を図ることが可能となる。さらに、意匠的圧迫感を有することのあるコールドアイルキャッピング60を設置しないことにより、ユーザのストレスの低減を図ることが可能となる。
【0056】
(付記)
付記1に記載の空調システムは、情報処理機器の配置された冷却対象空間を挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から前記冷却対象空間を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、前記第一空間へと冷却空気を供給する空調手段と、前記第二空間における上方の領域である上方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第一排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第一排気路へと排気する上方排気手段と、前記第二空間における下方の領域である下方領域に配置されて吸気を行い、当該吸気された空気を、排気のための第二排気路であって、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間のいずれにも属さない第二排気路へと排気する下方排気手段と、を備える。
【0057】
また、付記2に記載の空調システムは、付記1に記載の空調システムにおいて、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、前記第一排気路は、前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであって、前記第二排気路は、前記部屋の床下に形成された床下チャンバーである。
【0058】
また、付記3に記載の空調システムは、付記1又は2のいずれか一項に記載の空調システムにおいて、前記冷却対象空間、前記第一空間、及び前記第二空間はいずれも同一の部屋の内部空間であり、前記第一排気路及び前記第二排気路は、いずれも前記部屋の天井裏に形成された天井チャンバーであって、前記下方排気手段は、前記天井チャンバーと前記下方領域とを相互に接続するダクトにおける前記下方領域側の端部である。
【0059】
また、付記4に記載の空調システムは、付記1から3のいずれか一項に記載の空調システムにおいて、前記第一空間を挟むように、かつ、前記第一空間に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されており、前記空調手段は、前記2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる方向から、前記第一空間に対して冷却空気を供給する。
【0060】
(付記の効果)
付記1に記載の空調システムによれば、第二空間における上方領域に配置されて吸気を行う上方排気手段と、下方領域に配置されて吸気を行う下方排気手段とを備えるので、第二空間の圧力を均一化することができ、第二空間の圧力の不均一に伴い第二空間から冷却対象空間を介して第一空間に空気が逆流して第一空間にホットスポットが発生してしまう可能性を低減することが可能となるため、情報処理機器に不具合が発生してしまう可能性の低減を図ることが可能となる。また、従来の空調システムにおいては、第一空間にホットスポットが発生した場合には第一空間に温度むらが発生してしまうため、空調手段から第一空間へと供給する冷却空気の温度を、ホットスポットの発生を想定した低めの温度(例えば、16℃)に設定していたが、当該空調システムによればホットスポットが発生してしまう可能性を低減することができるので、ホットスポットの発生を想定しない適切な温度(例えば、20℃)に設定することが可能となるため、空調システムの搬送動力を削減して省エネルギー性の向上を図ることが可能となる。
【0061】
付記2に記載の空調システムによれば、第二空間の空気を天井チャンバーと床下チャンバーに対して排気するので、天井チャンバーと床下チャンバーを排気路として用いる極めて簡素な構成によりシステムを構築でき、システムの施工性の向上を図ることが可能となる。また、天井チャンバーと床下チャンバーの両方を排気路として用いるので、別途に排気路として用いるための空間を設ける必要がなく、省スペースのシステムを構築することが可能となるため、建築的に階高を小さく抑えることができる。
【0062】
付記3に記載の空調システムによれば、下方排気手段は、天井チャンバーと下方領域とを相互に接続するダクトにおける下方領域側の端部であるので、下方排気手段により吸気した空気も天井チャンバーに排気することで床下チャンバーを排気路以外の用途で用いることができ、床下チャンバーの用途の幅を広げたシステムを構築することが可能となる。
【0063】
付記4に記載の空調システムによれば、空調手段は、2つの冷却対象空間の並設方向とは異なる方向から、第一空間に対して冷却空気を供給するので、第一空間を挟むように、かつ、前記第一空間に対して隣接するように、2つの前記冷却対象空間が並設されている場合であっても第一空間に対して冷却空気を供給でき、複数の情報処理機器が並設された空間においても利用可能なシステムを構築することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1、100 空調システム
2 天井スラブ
3 天井材
4 天井チャンバー
5 床スラブ
6 床材
7 床下チャンバー
8 コールドアイル
9 ホットアイル
10 ラック
20 空調機
30 整流部材
40 天井排気口
50 床下排気口
60 コールドアイルキャッピング
70 ホットアイルキャッピング
70a、70b 板状部材
110 排気ダクト
図1
図2
図3