(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235826
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20171113BHJP
A61G 5/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A61G5/10 708
A61G5/00 701
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-164954(P2013-164954)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33432(P2015-33432A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】北沢 和紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 義和
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−003625(JP,U)
【文献】
特開平09−224977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00 − A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の両側に肘掛け部を有する車椅子において、
前記肘掛け部は、座席後方の車幅方向に沿う軸心回りに回動可能に取り付けられ、後方に回動したとき介護者による車椅子の操舵部として構成され、
前記軸心回りに回動可能に取り付けられる背もたれ部を有し、この背もたれ部の両端に前記肘掛け部が一体に形成されていることを特徴とする車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等が使用する車椅子の従来技術としては例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1にはモータにより走行する電動車椅子について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車椅子では、座席の後部に、介護者が車椅子を操舵するための操舵部を備えたものが殆どである。しかしながら、たとえば車椅子を使用する人が介護者を要せずに本人のみで使用する場合に限っては介護者用の操舵部は不要なものとなる。特に近年では介護という意識をあまり連想させないような様々なデザイン重視の車椅子が提案されており、介護者用の操舵部の設計処理は車椅子のデザインにおいて重要な要素となっている。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、車椅子において、介護者用の操舵部に関して構造の合理化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、座席の両側に肘掛け部を有する車椅子において、前記肘掛け部は、座席後方の車幅方向に沿う軸心回りに回動可能に取り付けられ、後方に回動したとき介護者による車椅子の操舵部として構成され
、前記軸心回りに回動可能に取り付けられる背もたれ部を有し、この背もたれ部の両端に前記肘掛け部が一体に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、肘掛け部は、着席した本人のみで車椅子を走行させる場合には肘掛けとして機能し、介護者が付き添う場合のみ介護者の操舵部として機能する。これにより、介護者用の操舵部に関して構造の合理化を図れる。
【0009】
本発明によれば、肘掛け部の回動機構を部品点数の少ない簡単な構造で実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、介護者用の操舵部に関して構造の合理化を図れ、車椅子のデザイン性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車椅子の説明図であり、(a),(b),(c)はそれぞれ正面図,平面図,側面図である。
【
図3】(a),(b)はそれぞれ座席部の位置を高くした場合、低くした場合を示す。
【
図4】肘掛け部を介護者用の操舵部として機能させた状態を示す側面図である。
【
図5】車椅子を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および
図2において、本発明に係る車椅子1は、下端に車輪が軸装されたフレーム2と、フレーム2の下部に設けられる足載せ部3と、フレーム2に設けられる座席部4と、を備えている。本実施形態の車椅子1は、自走式であり、また不使用時にはフレーム2をコンパクトに折り畳めるようになっている。
【0013】
フレーム2は、前輪5が軸着される前輪支持フレーム7と、左右一対の後輪6が軸着される後輪支持フレーム8と、を備えて構成されている。フレーム2は主にパイプ材、板材等から構成されるものであり、その材質は金属、合成樹脂等、特に限定されるものではない。
【0014】
前輪支持フレーム7は、使用時状態において、上端側が後方に位置するように傾斜状に延設される緩円弧状の長尺部材からなる。前輪支持フレーム7の下端には従動輪として前輪5が軸着されている。また、前輪支持フレーム7の下部には足載せ部3が取り付けられている。後輪支持フレーム8は、
図1(a)に示すように正面視して、下方に向けて二又状に形成されており、
図1(c)に示すように使用時状態において、上端側が前方に位置するように傾斜状に配される。左右一対の後輪6はそれぞれ個別に駆動可能な駆動輪として機能し、インホイールモータ9を介して後輪支持フレーム8の下端に軸着されている。なお、インホイールモータ9の駆動源であるバッテリについては図示を省略している。
【0015】
本実施形態では、座席部4の高さを2段階に調整できるようになっており、前輪支持フレーム7の長手方向中程と後輪支持フレーム8の上端近傍とが、車幅方向に沿う連結軸10により互いに回動可能に連結されている。そして、後輪支持フレーム8の上端と、前輪支持フレーム7における連結軸10よりも上方の部位とに掛け渡されるように座席部4が設けられている。座席部4は、その前端寄りが、後輪支持フレーム8に対し車幅方向に沿う取付軸12を介して回転可能に取り付けられるとともに、その後端寄りが、前輪支持フレーム7に形成された長孔13に対し車幅方向に沿う取付軸14を介してスライド可能に取り付けられている。
【0016】
以上により、
図3(a)に示すように、前輪支持フレーム7と後輪支持フレーム8とが連結軸10回りに回動して前輪5,後輪6間のホイールベースが小さくなった状態では、取付軸14が長孔13の下端よりも若干上方に位置し、座席部4の位置が高くなる。そして、
図3(b)に示すように、前輪支持フレーム7と後輪支持フレーム8とが連結軸10回りに回動して前輪5,後輪6間のホイールベースが大きくなった状態では、取付軸14が長孔13の下端に位置し、座席部4の位置が低くなる。これにより、使用者はゆったりと安定して座りたいときには車椅子1を
図3(b)のように使用し、目線を高く確保したい場合には車椅子1を
図3(a)のように使用するなどの使い分けができる。
【0017】
前輪支持フレーム7の上端には、車幅方向に沿って背もたれ部15が設けられている。この背もたれ部15は、車幅方向に沿う軸心O回りに回動可能となるように前輪支持フレーム7の上端に取り付けられている。そして、背もたれ部15の両端に肘掛け部16が一体に形成されている。すなわち、肘掛け部16は、背もたれ部15と一体となって前記軸心O回りに回動するように構成されている。背もたれ部15および肘掛け部16はたとえば柔軟な表皮層を有した部材からなる。肘掛け部16の先端にはグリップ部17が形成されている。なお、グリップ部17周りには、インホイールモータ9を駆動制御するためのコントローラ(図示せず)が適宜に配される。
【0018】
肘掛け部16は、
図4に示すように後方に回動したときには、介護者による車椅子1の操舵部18として機能する。この場合、車椅子1の走行は、インホイールモータ9を用いた自走モードではなく、基本的に介護者の手押しによる人力モードとなる。そのため、走行スピードも比較的低速となり、車椅子1に座っている人にとっては上半身が不安定になることもないため、肘掛け部16が存在しなくてもさほど問題とはならない。なお、肘掛け部16は、前方に回動して肘掛けとして使用される位置と、操舵部18として使用される位置とにおいて、それぞれ図示しないストッパにより回動規制されて位置決めされる。
【0019】
不使用時には、
図5に示すように、前輪支持フレーム7と後輪支持フレーム8とを連結軸10回りに回動させてコンパクトに折り畳むことができる。その際には肘掛け部16も前輪支持フレーム7と重なるように回動できるようになっている。
【0020】
本発明によれば、肘掛け部16は、介護者を要せずに着席した本人のみで車椅子を走行させる場合には肘掛けとして機能し、介護者が付き添う場合のみ介護者の操舵部18として機能する。これにより、介護者用の操舵部18に関して構造の合理化を図れる。また、本人のみで使用するときには介護者用の操舵部が見当たらない構造となるため、介護イメージのさほどない若々しいデザインを目指すうえで有利となる。
【0021】
さらに、軸心O回りに回動可能に取り付けられる背もたれ部15を有し、この背もたれ部15の両端に肘掛け部16が一体に形成される構成とすれば、肘掛け部16の回動機構を部品点数の少ない簡単な構造で実現できる。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。説明した実施形態では自走式の車椅子としたが、本発明は非自走式の車椅子にも適用可能である。また、肘掛け部16は、背もたれ部15とは独立して設ける構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 車椅子
2 フレーム
3 足載せ部
4 座席部
7 前輪支持フレーム
8 後輪支持フレーム
15 背もたれ部
16 肘掛け部
17 グリップ部
18 操舵部