【実施例】
【0026】
以下、
図1〜
図4を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。本発明の転写具1は、基本構成として、筐体2内に、基材に転写媒体が塗布された転写テープが巻装された送出軸部3と、転写テープのうちの転写媒体が被転写体へ転写された後の基材を巻き取る巻取軸部4と、これら送出軸部3と巻取軸部4の各々に設けられた駆動手段としての駆動ギヤ5,6及び中間ギヤ7と、転写テープの転写媒体を被転写体へ転写する転写部8と、を備えている。
【0027】
図1〜
図4に示す実施例1における転写具1は、上記基本構成において次の構成とされている。以下の説明で、筐体2の対向する面を「内側面」と、この内側面と反対側の面を「外側面」と、また、構成上、転写部7が配置される側を「下側」と、この下側と反対方向の側を「上側」と、して説明する。
【0028】
筐体2は、例えば組み立てる工程上、両側面方向に2分割され、筐体2A,2Bとされている。この筐体2Bには、説明上、送出軸部3、巻取軸部4、転写部8が設けられている。一方、筐体2Aの送出軸部3側の内側面には、本発明上の特徴とする後述のばね体9のピン9aの付勢ストロークを規制するためのガイド孔2aが形成されている。また、筐体2Aの巻取軸部4側の内側面には、後述するラチェット爪4aに対応して噛合するラチェット歯2bが形成されている。
【0029】
本例では送出軸部3の軸体3Aの一方向端部には、ばね体9が嵌装されている。このばね体9は、
図1、
図4では理解を容易とするためハッチングを入れている。ばね体9は、筐体2A側から筐体2Bを見た場合の正面視で外形円形で、該円形の外形の内周対向位置から中心に向けて弧を描いて把持部9Aが形成されている。
【0030】
把持部9Aは、軸体3Aを把持した位置から(略180°)該把持部9Aが形成された円形外形の内周対向位置の各々へ向けて屈曲したばね部9Bが一体的に形成されている。このばね部9Bの端部で筐体2Aに向けて、ピン9aが形成されている。このピン9aが上記筐体2Aのガイド孔2aに嵌入する。また、ばね体9は、外形円形の周の一部に腕部9Cが突出状に形成されている。この腕部9Cの転写部8側の端部には係合部9bが形成されている。
【0031】
ばね体9は、送出軸部3の搬送回転により該軸体3A周面に対して縮径方向に閉じようとする力に反抗して拡径方向に開くよう変形し、この結果、該軸体3Aに対する付勢圧が減って把持部9Aによる該軸体3Aを弱く把持する(摩擦抵抗が小さくなる)。一方、ばね体9は、送出軸部3の搬送回転停止により該軸体3A周面に対して縮径方向に閉じようとする力に反抗する力がなくなり縮径方向に閉じるよう変形し、この結果、該軸体3Aに対する付勢圧が増して把持部9Aによる該軸体3Aを強く把持する(摩擦抵抗が大きくなる)。なお、把持部9Aは軸体3Aの把持力の強弱はあるものの該軸体3Aから離間することはない。
【0032】
転写部8を設けた筐体2A,2Bの対向内面には、押圧体10が揺動可能に枢支されている。この押圧体10は、筐体2Aから筐体2Bを見た場合の正面視が略Y字状で、該Y字状の両斜線部位は筐体2Aと筐体2B側の2枚の板部材で構成されると共に端部の両板部材間には張力付与部10bが形成されている。また、押圧体10の(各々の板部材の)該Y字状の3線集中位置の揺動軸10aがそれぞれ該筐体2A,2Bに枢支されている。
【0033】
さらに、押圧体10のY字状の両斜線が集合した後の直線部位の端部には、枢支孔10cが形成されており、この枢支孔10cに上記ばね体9の腕部9Cにおける係合部9bが係合し、これらによりリンク節を構成している。
【0034】
押圧体10は、送出軸部3が搬送回転するときにばね体9の腕部9Cの揺動に伴って転写部8を中心とした送出側にある基材に接触して張力を与え、送出軸部3が停止するときには該ばね体9の腕部9Cの揺動に伴って転写部8を中心とした巻取側にある基材に接触して張力を与える。
【0035】
図1に示すように、巻取軸部4のばね体9と同じ側の軸端部にはラチェット爪4aが形成されている。このラチェット爪4aは、筐体2Aに形成されたラチェット歯2bと係合して、一方回転、すなわち搬送する方向の回転(巻取軸部4においては巻取方向)を許容し、この逆方向の回転は係合して許容しない、つまり、送出軸部3は回転せず、ばね体9のみ逆方向へ回転し、ばね体9が初期状態に復帰する逆転防止機構を構成している。
【0036】
上記構成の本発明の転写具1は、次のように動作する。
図4(b)に示すように、転写具1は、それまでの使用によって搬送回転していた送出軸部3の回転が停止したときに、ばね体9が初期状態(後に説明する
図4(a)に示す状態)に復帰する。
【0037】
ばね体9が初期状態に復帰するとは、ばね部9Bのピン9aがガイド孔2aに規制されつつ、ばね部9Bが該軸体3A周面に対して縮径方向に閉じようとする力に反抗する力がなくなり、縮径方向に閉じるよう変形し、全体として送出軸部3の搬送回転とはわずかに反対方向へ移動(回転)することを意味する。
【0038】
そして、ばね体9が初期状態に復帰するとき、ばね部9Bの変形に伴ってばね体9がわずかに搬送回転と反対方向に移動(回転)し、腕部9Cを介して押圧体10が揺動軸10aを軸として、転写部8を中心とした巻取側にある基材が張力付与部10bにより押圧されて張力が与えられる。
【0039】
このとき、基材は張力付与部10bにより付与された張力により転写媒体(基材)が転写部8における適正位置、すなわち、転写部8を中心とした巻取側と送出側の搬送方向の中間位置へ送られて動作が完了する。
【0040】
使用終了時に、送出軸部3の搬送回転が停止したときとは、使用を停止したときにほかならず、使用者は何らの操作を必要としないで次回の使用に備えて転写媒体が転写部8における適正位置に送られる。この後、使用を開始するときには、前記のとおり転写媒体が適正位置に存在していることになるので、立てて、あるいは寝かせて、使用しても空送りすることなく確実に開始位置から転写媒体を被転写体に転写できる。
【0041】
この後、再度使用すると、
図4(a)に示した状態から
図4(b)に示す状態となる。すなわち送出軸部3の搬送回転に伴って、ばね体9はばね部9Bが軸体3A周面に対して縮径方向に閉じようとする力に反抗して拡径方向に開くよう変形すると共に同方向に回転し、このとき該ばね体9のピン9aがガイド孔2aの規制端部に当接する。
【0042】
ばね体9自体が搬送方向にわずかに回転することにより、腕部9Cを介して押圧体10の張力付与部10b(送出側)が転写部8を中心とした送出側にある基材に張力を与え、弛むことなく適度なテンションにて使用される。この後、使用を終了すると、上記のように再度、転写媒体は転写部8の適正位置に送り出される。
【0043】
上記実施例では、送出軸部3が転写部8側に、巻取軸部4が転写部8から遠い側に、各々筐体2内で配置された例を示したが、この逆で、巻取軸部4が転写部8側に、送出軸部3が転写部8から遠い側に、各々筐体2内に配置された構成であっても適用できる。この場合、ばね体9は巻取軸部4の軸体に嵌装すればよい。
【0044】
さらに、ばね体9は、転写部8側に位置する送出軸部3又は巻取軸部4の軸体に嵌装する構成に限らず、転写部8から遠い側の送出軸部3又は巻取軸部4の軸体に嵌装してもよい。この場合は、ばね体9における腕部9Cを転写部8方向へ大きく延ばして形成すればよい。
【0045】
また、上記実施例では、逆転防止機構として、ラチェット爪4aを巻取軸部4の筐体2Aに面する軸端部に設けて、ラチェット歯2bを筐体2Aの内側面に設けた例を示したが、これに限らず、例えばラチェット爪4aを巻取軸部4の筐体2Bに面する軸端部に設けて、ラチェット歯2bを筐体2Bの内側面に設けてもよい。さらに、ラチェット爪4aを筐体2Bに面する送出軸部3のばね体9を設けた側と反対の軸端部に設けた、ラチェット歯2bを筐体2Bの内側面に設けてもよい。
【0046】
要するに、逆転防止機構は、ばね体9を設けている送出軸部3又は巻取軸部4にあっては該ばね体9を設けた側と反対の軸端部にラチェット爪4a又はラチェット歯2bを、このラチェット爪4a又はラチェット歯2bと対応するラチェット歯2b又はラチェット爪4aを筐体2A又は2Bの内側面に設けるといったように、ばね体9等や駆動ギヤ5,6及び中間ギヤ7の邪魔にならない位置に設けてもよい。