(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、実施例(第1実施例〜第3実施例)に共通する液晶表示装置の構造を示す概略図である。
【0019】
たとえば液晶セル11の上面に上側偏光板12、下面に下側偏光板13が、クロスニコルに配置される。下側偏光板13の液晶セル11とは反対側の面に、エレクトロデポジション素子14、バックライト15がこの順に配置される。バックライト15は、たとえばLEDを含んで構成され、エレクトロデポジション素子14に向けて光を出射する。
【0020】
図2は、液晶セル11を示す概略的な断面図である。
【0021】
液晶セル11は、たとえば以下のように作製した。ある意匠表示を行うようにパターニングされたITO電極(上側透明電極22a
1〜22a
3、下側透明電極22b)を備えるガラス基板(上側透明基板21a、下側透明基板21b)上に、絶縁膜(上側絶縁膜23a、下側絶縁膜23b)を形成する。次に、絶縁膜23a、23b上に水平配向用のポリイミド膜(上側配向膜24a、下側配向膜24b)を印刷して焼成する。配向膜24a、24bには、たとえば液晶分子が基板21a、21b間で90°ツイストするようにラビング処理を施した。
【0022】
透明基板21a、21bの一方上の周縁部に、たとえばエポキシ樹脂で形成されるシール材をスクリーン印刷し、基板21a、21bを重ね合わせた状態で昇温して、シール材を硬化させる。貼り合わせた基板21a、21bを所定の大きさにカット(小割)した後、真空注入法を用いてシール材の内側に液晶材料を注入する。注入後、液晶のNi点以上の温度で熱処理を行った。
【0023】
液晶セル11は、略平行に離間して対向配置された上側基板20a、下側基板20b、及び、両基板20a、20b間に配置される液晶層25を含んで構成される。
【0024】
上側基板20aは、上側透明基板21a、上側透明基板21a上に形成された上側透明電極22a
1〜22a
3、上側透明電極22a
1〜22a
3を覆うように上側透明基板21a上に形成された上側絶縁膜23a、及び、上側絶縁膜23a上に形成された上側配向膜24aを備える。
【0025】
同様に、下側基板20bは、下側透明基板21b、下側透明基板21b上に形成された下側透明電極22b、下側透明電極22bを覆うように下側透明基板21b上に形成された下側絶縁膜23b、及び、下側絶縁膜23b上に形成された下側配向膜24bを備える。
【0026】
液晶層25は、たとえば液晶分子が基板20a、20b間で90°ツイストするツイストネマチック液晶層である。液晶層25のリターデーションは、たとえば500nm(ファーストミニマム)前後に設定する。
【0027】
基板20a、20bの法線方向から見たとき、上側透明電極22a
1〜22a
3と下側透明電極22bが重なる位置に、表示を行う表示部(画素)が規定される。
【0028】
液晶セル11は、上側透明電極22a
1〜22a
3と下側透明電極22b間に交流電圧を印加し、液晶層25の液晶分子配向状態を変化させて駆動する。
【0029】
なお、上側基板20aの、液晶層25とは反対側の面に、上側偏光板12が貼り合わせられる。また、下側基板20bの、液晶層25とは反対側の面に、下側偏光板13が貼り合わせられる。
【0030】
実施例による液晶表示装置は、液晶セル11を、たとえばスタティック駆動、もしくは低デューティ駆動で駆動して、キャラクター表示を行う。
【0031】
図3は、第1実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14を示す概略的な断面図である。エレクトロデポジション素子14は、偏光板12、13が配置された液晶セル11に積層される。
【0032】
エレクトロデポジション素子14は、たとえば以下のように作製した。まず、シート抵抗5Ω/□のITO膜(上側透明電極32a、下側透明電極32b)が成膜されたソーダライムガラス基板(上側透明基板31a、下側透明基板31b)を液晶セル11と等しいサイズ、形状にカットする。透明基板31a、31bの一方上の周縁部に、たとえばエポキシ樹脂で形成されるシール材を配置し、基板31a、31bを重ね合わせた状態で昇温して、シール材を硬化させる。
【0033】
次に毛細管現象を利用して、エレクトロデポジション材料を含む電解液を透明基板31a、31b間に封入する。
【0034】
エレクトロデポジション材料を含む電解液は、エレクトロデポジション材料(AgNO
3等)、電解質(TBABr等)、メディエータ(CuCl
2等)、支持電解質(LiBr等)、溶媒(DMSO; dimethyl sulfoxide 等)、ゲル化用ポリマー(PVB; polyvinyl butyral 等)などにより構成される。第1実施例においては、電解質をTBABrとした。溶媒としてDMSO、エレクトロデポジション材料としてAgNO
3、支持電解質としてTBAP、メディエータとしてCuCl
2を使用し、電解液の注入後、注入口をアクリル樹脂で封止した。
【0035】
エレクトロデポジション素子14は、たとえば略平行に離間して対向配置された上側基板30a、下側基板30b、及び、両基板30a、30b間に配置された電解質層35を含んで構成される。なお基板30a、30bは、たとえば液晶セル11の基板20a、20bと平行に配置される。
【0036】
上側基板30a、下側基板30bは、それぞれ上側透明基板31a、下側透明基板31b、及び、各透明基板31a、31b上に形成されたITOベタ電極(上側透明電極32a、下側透明電極32b)を含む。透明電極32a、32bは、表面が平滑な電極である。
【0037】
電解質層35は、上側基板30aと下側基板30bの間の、シール材の内側領域に配置される。
【0038】
エレクトロデポジション素子14は、たとえば透明電極32a、32b間に直流電圧を印加して駆動する。一例として、下側透明電極32bをアースし、上側透明電極32aに−2.0Vの直流電圧を印加すると、AgNO
3(エレクトロデポジション材料)に含まれるAgが上側透明電極32a(負電圧側となる電極)上に析出し、銀の薄膜を形成する。銀薄膜は鏡面として作用し、エレクトロデポジション素子14に入射する光を正反射する。銀薄膜は、印加電圧の解除により時間の経過とともに、または反対極性の電圧の印加により、上側透明電極32a上から消失する。電圧無印加時、透明電極32a、32b上にAgが析出していないエレクトロデポジション素子14に入射する光は、これを透過する。
【0039】
すなわち第1実施例による液晶表示装置に用いられるエレクトロデポジション素子14は、直流電圧の印加−無印加により、ミラー状態(反射状態)と透明状態を可換的に実現するミラーデバイスである。
【0040】
第1実施例による液晶表示装置は、たとえば日中の太陽光直下など、外光が強い環境下においては、エレクトロデポジション素子14に直流電圧を印加してミラー状態とし、反射型の液晶表示装置として使用することができる。反射モードでの使用時には、バックライト15からは光は出射されない。
【0041】
また夜間など、外光量が少ない環境下においては、エレクトロデポジション素子14を透明状態とし、バックライト15を点灯して、透過型の液晶表示装置として使用することができる。
【0042】
反射モードと透過モードの切り替えは、手動で行う。たとえば外光量を計測する計測器を搭載し、所定の閾値を設定して、閾値に基づき、たとえば外光量が閾値以上の場合には、エレクトロデポジション素子14をミラー状態、閾値未満の場合には、エレクトロデポジション素子14を透明状態とするように、素子14に印加する直流電圧を制御してもよい。更に、バックライト15の点灯、消灯を同期させることもできる。
【0043】
第1実施例による液晶表示装置は、エレクトロデポジション素子14を用い、反射モードと透過モードの選択的な切り替えを行う液晶表示装置である。低消費電力で、使用環境によらず、良好な視認性を確保することが可能である。
【0044】
なお
図1においては、液晶セル11とエレクトロデポジション素子14の間に下側偏光板13を配置するが、たとえば液晶セル11の下側透明基板21bとエレクトロデポジション素子14の上側透明基板31aを共通(同一基板)とし、下側偏光板13をエレクトロデポジション素子14とバックライト15の間に配置してもよい。この構成によれば、液晶表示装置の透明基板を3枚とすることができ、反射モード時の視差の影響を低減することが可能である。
【0045】
図4Aは、第2実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14を示す概略的な断面図である。本図には、液晶セル11をあわせて記した。なお、偏光板12、13は省略した。
【0046】
第2実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14は、たとえば以下のように作製した。
【0047】
ガラスまたはフィルム基板である透明基板(上側透明基板31a、下側透明基板31b)を準備し、透明基板31a、31b上に、ITOなどで透明導電膜を形成する。ITO膜は、スパッタ、蒸着などで成膜することができる。成膜は、表面が平滑なITO膜を得られる条件で行う。上側透明基板31a上のITO膜を、液晶セル11の表示部の形状に対応する形状にパターニングし、上側透明電極32a
1〜32a
3を形成する。上側透明電極32a
1〜32a
3は、表面が平滑な電極である。下側透明基板31bのITO膜上には、たとえばITO粒子分散液(30wt%)を、500rpmで5秒間、1500rpmで15秒間スピンコートした後、250℃で60分間焼成し、下側透明装飾電極(粒子修飾電極)33bを形成する。装飾電極33bは、ITO粒子が電極表面に固定され、比較的大きな、たとえば高低差が100nm〜500nm程度、具体的には330nm程度の凹凸が形成された電極である。
【0048】
上側透明基板31aと下側透明基板31bを、電極32a
1〜32a
3、33bが対向するように配置してセル化を行った。
【0049】
たとえば20μm〜数百μm径、第2実施例においては500μm径のギャップコントロール剤を、基板31a、31bの一方上に、一例として1個〜3個/mm
2となるように散布する。ギャップコントロール剤の径に応じ、たとえば表示に影響を与えにくい散布量とすることが望ましい。なお、実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子においては、多少ギャップムラがあっても表示への影響は少ないため、ギャップコントロール剤の散布量の重要性は高くない。また第2実施例においては、ギャップコントロール剤を用いたギャップコントロールを行うが、リブなどの突起によってギャップコントロールを行うことも可能である。更に、小型セルの場合は、シール部分に所定厚さのフィルム状スペーサを配置してギャップを制御してもよい。
【0050】
基板31a、31bの他方上に、メインシールパターンを形成した。第2実施例では、紫外線+熱硬化タイプのシール材を用いた。シール材として、光硬化タイプ、または熱硬化タイプを使用してもよい。なお、ギャップコントロール剤の散布とメインシールパターンの形成は同一基板側に行ってもよい。
【0051】
次に、エレクトロデポジション材料を含む電解液を基板31a、31b間に封入した。
【0052】
第2実施例では、ODF工法を用いた。基板31a、31bの一方上に、エレクトロデポジション材料を含む電解液を適量滴下する。滴下方法として、ディスペンサーやインクジェットを含む各種印刷方式が適用可能である。ここではディスペンサーを用いた。なお、前述のシール材は、用いる電解液に耐えるシール材料(腐食されないシール材)であることが好ましい。
【0053】
第2実施例においては、電解質をTBABrとした。溶媒であるDMSO中に、エレクトロデポジション材料としてAgNO
3を50mM添加し、LiBrを250mM支持電解質として加え、メディエータとしてCuCl
2を10mM添加した。そしてホストポリマーとしてPVBを10wt%加え、ゲル状(ゼリー状)の電解質層とした。
【0054】
真空中で、基板31a、31bの重ね合わせを行った。大気中、もしくは窒素雰囲気中で行ってもよい。
【0055】
紫外線を、たとえば21J/cm
2のエネルギ密度でシール材に照射し、シール材を硬化した。なお、紫外線がシール部のみに照射されるように、SUSマスクを使用した。
【0056】
電解質層を構成するエレクトロデポジション材料には、たとえば銀を含むAgNO
3、AgClO
4、AgBr等を使用することができる。
【0057】
支持電解質は、エレクトロデポジション材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえばリチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF
4、LiClO
4等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0058】
溶媒は、エレクトロデポジション材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更にはイオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を使用することが可能である。具体的には、DMSOの他、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を好適に用いることができる。
【0059】
第2実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14は、たとえば略平行に離間して対向配置された上側基板30a、下側基板30b、及び、両基板30a、30b間に配置された電解質層35を含んで構成される。なお、基板30a、30bは、たとえば液晶セル11の基板20a、20bと平行に配置される。
【0060】
上側基板30a、下側基板30bは、それぞれ上側透明基板31a、下側透明基板31b、及び、各透明基板31a、31b上に形成されたITO電極(上側透明電極32a
1〜32a
3、下側透明装飾電極33b)を含む。上側透明電極32a
1〜32a
3は、表面が平滑な電極であり、下側透明装飾電極33bは、表面に比較的大きな凹凸が形成された電極である。
【0061】
電解質層35は、上側基板30aと下側基板30bの間の、シール材の内側領域に配置される。
【0062】
図4Bは、上側透明電極32a
1〜32a
3及び下側透明装飾電極33bを示す概略的な平面図である。上述のように、上側透明電極32a
1〜32a
3は、液晶セル11の表示部の形状に対応する形状を有する。本図に示す例においては、引き回し線部分を除く電極32a
2が、液晶セル11の電極22a
2を用いて規定される、たとえば「1」という数字形状の表示部と同形状、または表示部の輪郭から外側に多少オフセットした形状に形成される。また、電極32a
1、32a
3は、引き回し線部分を除く電極32a
2を囲む形状(表示部を囲む形状)に形成される。なお、たとえば引き回し線部分を除く電極32a
2は、液晶セル11の「1」を表示する表示部の直下の位置(平面視上、「1」を表示する表示部と輪郭が重なる位置、または表示部を包含する位置)に配置される。
【0063】
第2実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14は、たとえば電極32a
1〜32a
3、33b間に直流電圧を印加して駆動する。一例として、下側透明装飾電極33bをアースし、上側透明電極32a
1〜32a
3に−2.0Vの直流電圧を印加すると、電解質層35に含まれる銀イオンが、上側透明電極32a
1〜32a
3近傍で金属の銀に変化し、電極32a
1〜32a
3上に析出・堆積して、銀薄膜(鏡面)が形成される。
【0064】
このため第1実施例と同様に、エレクトロデポジション素子14を、直流電圧の印加−無印加により、ミラー状態と透明状態を可換的に実現するミラーデバイスとして用いることができる。すなわち第2実施例による液晶表示装置においても、反射モードと透過モードの選択的な切り替えを行い、視認性の高い、良好な表示を実現することが可能である。
【0065】
また、たとえば下側透明装飾電極33bをアースし、上側透明電極32a
2に−2.5Vの直流電圧、上側透明電極32a
1、32a
3に+2.5Vの直流電圧を印加すると、電解質層35に含まれる銀イオンが、電極32a
2上の下側透明装飾電極33b対向位置(引き回し線部分を除く電極32a
2上)、及び、下側透明装飾電極33b上の電極32a
1、32a
3対向位置に析出・堆積する。平滑な表面を有する電極32a
2上に析出した銀により、鏡面が形成される。比較的大きな凹凸を表面に有する下側透明装飾電極33b上に析出した銀は、入射光を乱反射し、黒状態を実現する。
【0066】
この電圧印加状態においては、液晶セル11によるキャラクター表示、たとえば電極22a
2を用いて「1」という数字表示を行う場合、「1」を示す表示部(ミラー状態を示す電極32a
2に対応する位置)は明るく白表示され、その周囲(黒状態を示す電極32a
1、32a
3に対応する位置)は黒く(漆黒に)表示される。したがって、第2実施例による液晶表示装置においては、エレクトロデポジション素子14のミラー状態と黒状態を用い、「1」を強調する反射モード表示(背景の黒さが向上されることによる高コントラスト表示)が可能となる。
【0067】
更に、第2実施例による液晶表示装置は、透過モードにおいても、強調表示(高コントラスト表示)が可能である。たとえばバックライト15を点灯し、エレクトロデポジション素子14の電極32a
2には電圧を印加せず、電極32a
1、32a
3に、+2.5V、または−2.5Vの直流電圧を印加する。この場合、「1」を示す表示部(透明状態を示す電極32a
2に対応する位置)は明るく白表示され、その周囲(+2.5V印加時には黒状態を示し、−2.5V印加時にはミラー状態を示す電極32a
1、32a
3に対応する位置)は黒く(漆黒に)表示される。このため、「1」を強調する透過モード表示(高コントラスト表示)を実現することができる。
【0068】
なお、電極32a
1、32a
3に−2.5Vの直流電圧を印加してミラー状態とした場合、電極32a
1、32a
3上に形成される銀薄膜で反射されるバックライト光を再利用し、表示をより明るくすること、ひいては一層の高コントラスト表示が可能となる。
【0069】
第2実施例による液晶表示装置に用いられるエレクトロデポジション素子14は、たとえば独立に電圧を印加可能な電極32a
1〜32a
3を備える。したがって、第2実施例による液晶表示装置においては、各電極32a
1〜32a
3に対応する位置の状態(透明状態、ミラー状態、及び黒状態)を独立に制御可能である。このため、たとえばある表示エリアは反射モード、他の表示エリアは透過モードとして表示を行うこともできる。
【0070】
なお、たとえば液晶セル11の表示パターンの中から、特に強調したいパターン(表示部)に対応する位置の電解質層35に電流を流すことができるように、エレクトロデポジション素子14の上側透明電極をパターニングすることにより、任意の強調表示パターンを構成することができる。または、特に強調したいパターン(表示部)に対応する位置以外の位置の電解質層35に電流を流すことができるように、エレクトロデポジション素子14の上側透明電極をパターニングしてもよい。第2実施例においては、その双方が可能となるように電極32a
1〜32a
3のパターニングを行っている。
【0071】
なお、たとえば電極32a
2は、「1」の形状を示す部分と、配線パターン部分(引き回し線部分)を備える。両部分は同電位となるため、下側透明装飾電極33bは、「1」の形状を示す部分とのみ重なり、引き回し線部分とは重ならないように形成する。電極32a
2の引き回し線部分上に絶縁膜を形成すれば、電極32a
2の引き回し線部分と下側透明装飾電極33bを重ねてもよい。電極32a
2の引き回し線部分上に絶縁膜を形成する場合は、その絶縁膜上に電極32a
1、32a
3と同電位の電極を、更に形成することができる。
【0072】
図5A、
図5Bは、それぞれミラー状態のエレクトロデポジション素子における反射率、透過率を示すグラフの一例である。両グラフの横軸は、反射または透過する光の波長を単位「nm」で示し、縦軸は、反射率、透過率を単位「%」で示す。グラフには、反射率、透過率がエレクトロデポジション素子への電圧印加時間によって変化する様子が示されている。エレクトロデポジション素子の電極上に形成される鏡面の反射率及び透過率は、電極への電圧印加時間によって制御することができる。なお、電圧印加時間だけでなく、印加電圧値によっても制御することが可能である。
【0073】
したがって、たとえば第2実施例による液晶表示装置においては、液晶セル11自体は明暗の2値表示としながら、エレクトロデポジション素子14の各電極32a
1〜32a
3に印加する電圧の印加時間や電圧値を制御することによって、中間調表示など、様々な明るさ、コントラスト比の表示を実現することができる。
【0074】
第2実施例による液晶表示装置は、反射モードと透過モードの切り替えが可能なだけでなく、多様な表現を実現できる液晶表示装置である。
【0075】
図6Aは、第3実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14を示す概略的な断面図である。本図には、
図4Aと同様に、液晶セル11をあわせて記した。なお、偏光板12、13は省略した。
【0076】
第2実施例においては、エレクトロデポジション素子14の電極32a
2(引き回し線部分を除く電極32a
2)を、たとえば液晶セル11の表示部と同形状に形成し、表示部と対応する位置に配置したが、第3実施例においては、エレクトロデポジション素子14の上側透明電極32a
4〜32a
6を液晶セル11の表示部とは異なる形状に形成する。その他の構成は、第2実施例と等しい。
【0077】
図6Bは、上側透明電極32a
4〜32a
6及び下側透明装飾電極33bを示す概略的な平面図である。本図には、液晶セル11の「1」という数字形状の表示部の平面視上の位置を点線で示した。
【0078】
引き回し線部分を除く電極32a
5は、平面視上、「1」(表示部)を包含する楕円形状に形成される。また、電極32a
4、32a
6は、引き回し線部分を除く電極32a
5を囲む形状に形成される。電極32a
4〜32a
6で、矩形状の領域を画定する。
【0079】
第3実施例による液晶表示装置に使用されるエレクトロデポジション素子14は、たとえば電極32a
4〜32a
6、33b間に直流電圧を印加して駆動する。一例として、下側透明装飾電極33bをアースし、上側透明電極32a
4〜32a
6に−2.0Vの直流電圧を印加すると、電解質層35に含まれる銀イオンが、上側透明電極32a
4〜32a
6上に析出・堆積して銀薄膜(鏡面)が形成される。
【0080】
このため第1、第2実施例と同様に、エレクトロデポジション素子14を、直流電圧の印加−無印加により、ミラー状態と透明状態を可換的に実現するミラーデバイスとして用い、反射モードと透過モードを選択的に切り替えて、視認性の高い、良好な表示を実現することができる。なお、エレクトロデポジション素子14の電極32a
4〜32a
6対応位置をすべてミラー状態とした場合、たとえば黒色の背景中に「1」(液晶セル11の表示パターンに応じた表示)を白表示することができる。
【0081】
また、たとえば下側透明装飾電極33bをアースし、上側透明電極32a
5に−2.5Vの直流電圧、上側透明電極32a
4、32a
6に+2.5Vの直流電圧を印加すると、電解質層35に含まれる銀イオンが、電極32a
5上の装飾電極33b対向位置(引き回し線部分を除く電極32a
5上)、及び、装飾電極33b上の電極32a
4、32a
6対向位置に析出・堆積する。電極32a
5上に析出した銀により鏡面が形成され、装飾電極33b上に析出した銀は黒状態を実現する。
【0082】
この電圧印加状態の反射モード表示においては、たとえば「1」は白表示され、その周囲の電極32a
5形成位置は黒表示され、更にその周囲(電極32a
4、32a
6形成位置)は一層黒く(漆黒に)表示される。なお、液晶セル11で「1」を表示しない場合には、「1」の部分も黒表示されるため、漆黒の矩形状領域中に、それよりは明るい黒色の楕円状領域が視認されることになる。このように第3実施例による液晶表示装置は、第2実施例よりも一層多様な表示を行うことができる。
【0083】
透過モード表示においても同様である。バックライト15を点灯し、電極32a
4〜32a
6対応位置をすべて透明状態とした場合、液晶セル11の表示パターンに応じた表示を行うことができる。また、電極32a
5には電圧を印加せず、電極32a
4、32a
6に、+2.5V、または−2.5Vの直流電圧を印加した場合、たとえば「1」を示す表示部は白表示、その周囲の電極32a
5形成位置は黒表示、更にその周囲(電極32a
4、32a
6形成位置)は一層黒く(漆黒に)表示される。液晶セル11で「1」を表示しない場合には、漆黒の矩形状領域中に、それよりは明るい黒色の楕円状領域が視認される。
【0084】
更に、第3実施例による液晶表示装置においても、液晶セル11自体は明暗の2値表示としながら、エレクトロデポジション素子14の各電極32a
4〜32a
6に印加する電圧の印加時間や電圧値を制御することによって、中間調表示など、様々な明るさ、コントラスト比の表示を実現することができる。
【0085】
第3実施例による液晶表示装置も、反射モードと透過モードの切り替えが可能なだけでなく、多様な表現を実現できる液晶表示装置である。スタティック表示であっても複雑な表示が可能であり、デューティ駆動を行えば一層複雑な表示を行うことができる。
【0086】
なお、たとえば電極32a
5は、楕円形状部分と引き回し線部分を備える。両部分は同電位となるため、下側透明装飾電極33bは、楕円形状部分とのみ重なり、引き回し線部分とは重ならないように形成する。電極32a
5の引き回し線部分上に絶縁膜を形成すれば、電極32a
5の引き回し線部分と下側透明装飾電極33bを重ねてもよい。電極32a
5の引き回し線部分上に絶縁膜を形成する場合は、その絶縁膜上に電極32a
4、32a
6と同電位の電極を、更に形成することができる。
【0087】
第1実施例〜第3実施例に沿って説明した液晶表示装置は、たとえば表示部が規定された液晶セル11と、液晶セル11に、偏光板13を介し、または介さずに積層配置され、電極に印加する電圧によって、透明状態と非透明状態(ミラー状態、黒状態)を電気的に切り替えることができるエレクトロデポジション素子14とを含んで構成される。エレクトロデポジション素子14の電極は、少なくとも液晶セル11の表示部と対応する位置(たとえば表示部直下の位置)に配置され、表示部に対応する位置(たとえば表示部直下の位置)のエレクトロデポジション素子14の状態(透明状態、ミラー状態、黒状態)を変化させることができる。
【0088】
たとえば液晶セル11とバックライト15の間に配置されるエレクトロデポジション素子14の透明状態とミラー状態を切り替えることによって、低消費電力で、使用環境によらず、良好な視認性を実現する液晶表示装置を構成することができる。
【0089】
また、たとえばエレクトロデポジション素子14の一方側電極を、独立に電圧を印加可能な複数の電極で構成することにより、または、エレクトロデポジション素子14の電極に印加する電圧の印加時間や電圧値を制御することにより、液晶セル11の表示パターンだけでは不可能な多様な表示を実現することができる。
【0090】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
たとえば、実施例においてはゲル状の電解質層としたが、銀の錯体を含む液体状の電解液を用いてもよい。電解質層は、たとえばエレクトロデポジション材料を含有する電解質液や電解質膜を含んで構成される。
【0092】
また、透過モードと反射モードを切り替え可能な液晶表示装置について説明したが、反射表示のみ、もしくは透過表示のみを行う液晶表示装置とすることもできる。反射表示のみを行う装置の場合、バックライトは不要である。
【0093】
更に、TFTなどのアクティブ素子を含む液晶表示素子やエレクトロデポジション素子としてもよい。
【0094】
また、第2、第3実施例においては、上側透明平滑電極を、独立に電圧を印加可能な複数の電極で構成し、下側透明電極を装飾電極としたが、上側透明電極を装飾電極とし、下側透明電極を、独立に電圧を印加可能な複数の平滑電極で構成してもよい。装飾電極を、独立に電圧を印加可能な複数の電極で構成することも可能である。
【0095】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。