(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の建物の空調システム(以下、単に「空調システム」ということがある)は、床下空間の冷たい空気を利用して、居室空間の温度を効果的に低下させるためのものである。この空調システムは、例えば、一般的な住宅やビル等の建物に用いることができる。
【0018】
図1は、本実施形態の空調システムが用いられる建物の一例を示す断面図である。また、
図2は、本実施形態の空調システムの給気手段の作用を示す断面図である。建物BLは、地盤Gに固定される基礎2、該基礎2の上方で支持される1階の床3、及び、該基礎2と床3との間で区画される床下空間4を有している。
【0019】
基礎2は、建物BLの外周に連続して配置されている。本実施形態の基礎2は、鉄筋コンクリート製の布基礎として構成されている。また、基礎2は、地中Gi内で水平にのびるベース部2aと、該ベース部2aの幅方向の略中央から上方へのび、かつ、地中Giから突出する立上がり部2bとを含んでいる。立上がり部2bの上面側には、例えば、土台(図示省略)を介して外壁6が固定されている。
【0020】
床下空間4には、床下空間4の底面をなす土間コンクリート7が敷設されている。この土間コンクリート7は、床下空間4の空気(以下、単に「床下空気」ということがある。)Ai(
図2に示す)と、一年を通して温度変化が小さい地中熱Hとを熱交換可能な熱交換部8として構成されている。このような床下空間4は、夏は冷たく、冬は暖かい床下空気Aiを蓄えることができる。
【0021】
床下空間4には、屋外Soの新鮮な空気(以下、単に「外気」ということがある。)Aoを導入する取り入れ口9が設けられている。また、床下空間4には、例えば、土間コンクリート7に固定される束(図示省略)や、床3を支える大引き(図示省略)が配置されている。
【0022】
さらに、床下空間4には、例えば、基礎2の立上がり部2bに沿って配置される基礎断熱材11が設けられている。このような基礎断熱材11は、基礎2を介して伝えられる外気Aoの熱を遮断することができる。従って、基礎断熱材11は、床下空間4の温度変化を、効果的に小さくすることができる。なお、基礎断熱材11には、例えば、耐熱性及び耐衝撃性に優れるポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、又は、フェノールフォーム等の板状体が採用されるのが望ましい。
【0023】
建物BLには、外壁6で囲まれる空間に、間仕切り壁14が設けられている。これにより、建物BLの空間は、居室空間16、及び、トイレや洗面所等の非居室空間17に区分される。本実施形態の居室空間16は、1階の居室空間16aと、2階の居室空間16bとを含んでいる。
【0024】
本実施形態の空調システムは、床下空気Aiを居室空間16に供給する給気手段20が設けられている。給気手段20は、居室空間16と床下空間4とを連通する空気流路21を含んでいる。
【0025】
本実施形態の空気流路21は、例えば、本体部21a、本体部21aの一端側と床下空間4とを連通する取り出し口21b、及び、本体部21aの他端側と1階の居室空間16aとを連通する吹き出し口21cを含んでいる。本実施形態の本体部21aは、例えば、床下空間4側から上方にのびるダクト(図示省略)、又は、間仕切り壁14の内部によって形成されている。吹き出し口21cは、1階の居室空間16aの間仕切り壁14に設けられている。
【0026】
さらに、給気手段20は、例えば、床下空間4内を負圧にして、床下空気Aiを、1階の居室空間16aに案内する送風手段22を含んでいる。本実施形態の送風手段22は、例えば、複数の羽根が回転するファンからなり、回転数を増減させて運転することができる。従って、給気手段20は、床下空気Aiの給気量を増減させることができる。本実施形態の給気手段20は、第1給気量(通常運転)、又は、第1給気量よりも多い第2給気量(強運転)で、床下空気Aiを居室空間16に供給可能に設定されている。なお、第1給気量(通常運転)は、建物BLに必要な換気回数(例えば、0.5回/h)に基づいて設定される。
【0027】
このような給気手段20は、
図2に示されるように、先ず、送風手段22によって、床下空気Aiが、給気手段20の本体部21aに案内される。次に、本体部21aに案内された床下空気Aiは、本体部21aから吹き出し口21cを介して、1階の居室空間16aに供給される。さらに、1階の居室空間16aに供給された床下空気Aiは、階段や吹き抜け(図示省略)を介して、2階の居室空間16bに供給される。
【0028】
このように、給気手段20は、夏は冷たく、冬は暖かい床下空気Aiを、1階の居室空間16a及び2階の居室空間16bに給気することができる。このような床下空気Aiは、例えば、1階の居室空間16a及び2階の居室空間16bを初期空調するのに役立つ。
【0029】
さらに、本実施形態の給気手段20は、第1給気量(通常運転)よりも多い第2給気量(強運転)で、冷たい床下空気Aiを、居室空間16に積極的に供給することができる。従って、給気手段20は、居室空間16の温度を効果的に低下させることができる。このような作用を効果的に発揮させるために、第2給気量は、第1給気量の1.5倍〜4.0倍に設定されるのが望ましい。
【0030】
また、1階の居室空間16a及び2階の居室空間16bの空気Ar(Ai)は、建物BLの隙間や、図示しない排気手段によって、屋外Soに排出される。従って、本実施形態の空調システムは、床下空気Aiを循環させて、1階の居室空間16a及び2階の居室空間16bを効果的に換気することができる。
【0031】
本実施形態の給気手段20では、床下空気Aiが、空気流路21を介して1階の居室空間16aのみに供給されるものが例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、空気流路21の本体部21aを、2階の居室空間16bまで延長させて、2階の居室空間16bに、床下空気Aiが直接供給されるものでもよい。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態の空調システムは、外気温度検知手段25、居室空間温度検知手段26、及び、給気手段20を制御する制御手段27を含んでいる。
図3は、本実施形態の制御手段27の概念図である。
【0033】
外気温度検知手段25は、温度センサーからなる。本実施形態の外気温度検知手段25は、床下空間4の取り入れ口9側に配置されている。これにより、外気温度検知手段25は、日射や風等の影響を受けるのを防ぐことができるため、外気Aoの温度を正確に検知することができる。さらに、外気温度検知手段25は、日射、風及び雨等に直接曝されるのを防ぐことができるため、耐久性を向上しうる。なお、外気温度検知手段25は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、外壁6に配置されてもよい。また、外気温度検知手段25は、制御手段27に接続されている。これにより、外気温度検知手段25は、検知した外気Aoの温度を、制御手段27に伝達することができる。
【0034】
居室空間温度検知手段26は、外気温度検知手段25と同様に、温度センサーからなる。本実施形態の居室空間温度検知手段26は、1階の居室空間16aに配置される。また、居室空間温度検知手段26は、制御手段27に接続されている。これにより、居室空間温度検知手段26は、検知した1階の居室空間16aの温度を、制御手段27に伝達することができる。なお、居室空間温度検知手段26は、例えば、1階に設けられるエアコン等の空調装置(図示省略)に内蔵されている温度センサー(図示省略)で代用してもよい。
【0035】
制御手段27は、例えば、間仕切り壁14等に設置されている。
図3に示されるように、制御手段27は、CPU(中央演算装置)からなる演算部31と、制御手順が予め記憶されている記憶部32と、記憶部32から制御手順を読み込む作業用メモリ33とを含んでいる。
【0036】
演算部31には、給気手段20の送風手段22が接続されている。これにより、演算部31は、送風手段22に信号を伝達し、第1給気量、又は、第2給気量に切り替えて、床下空気Aiを供給させることができる。
【0037】
記憶部32には、外気温度検知手段25によって検知した外気Aoの温度が、一時間毎に記録される。また、本実施形態の演算部31は、記憶部32に記録されている外気Aoの温度から、1月1日から12月31日までの各日ごとに、外気Aoの平均温度を計算している。外気Aoの平均温度は、記憶部32に記録される。また、本実施形態の記憶部32には、後述する工程S43において予測された床下空間4の温度(第1予測床下温度θ(t))が、一時間毎に記憶される。さらに、記憶部32には、建物BLが建てられた地域の気象データ(アメダス)が記憶されている。
【0038】
図4は、本実施形態の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図1及び
図4に示されるように、本実施形態の制御手順は、予測された床下空間4の温度に基づいて、給気手段20の給気量を増減させ、居室空間16(本実施形態では、1階の居室空間16a)の温度を効率よく低下させるための手順である。
【0039】
本実施形態では、先ず、制御手段27によって、現在の季節が、夏季か否かが判断される(工程S1)。この工程S1では、外気温度検知手段25によって検知された外気Aoの温度が、28℃よりも高いか否かによって判断されている。なお、現在の季節が、夏季か否かの判断は、このような態様に限定されるわけではない。例えば、現在の日付が、記憶部32(
図3に示す)に予め入力された夏季の期間(例えば、7月〜9月)に該当するか否かによって判断されてもよい。
【0040】
現在の季節が、夏季であると判断された場合(工程S1で「Y」)、次の工程S2が実行される。一方、現在の季節が、夏季でないと判断された場合(工程S1で「N」)、居室空間16の温度を低下させる必要がない。このため、本実施形態では、第1給気量で床下空気Aiを供給する工程S3が実施され、制御手順に基づく処理が終了する。
【0041】
次に、制御手段27は、居室空間16の温度が予め定められた温度よりも高いか否かを判断する(工程S2)。本実施形態では、1階の居室空間16aの温度に基づいて、予め定められた温度よりも高いか否かが判断される。予め定められた温度については、適宜設定することができるが、居室空間16の温度を低下させる観点より、27℃〜30℃(本実施形態では、28℃)に設定されるのが望ましい。
【0042】
居室空間16の温度が、予め定められた温度(本実施形態では、28℃)よりも高い場合、次の床下空間温度予測工程S4が実施される。一方、居室空間16の温度が、予め定められた温度(本実施形態では、28℃)以下である場合、居室空間16の温度を低下させる必要がない。このため、本実施形態では、第1給気量で床下空気Aiを供給する工程S3が実施され、制御手順に基づく処理が終了する。
【0043】
次に、制御手段27は、現在から予め定められた時間が経過した後の床下空間4の温度を予測する(床下空間温度予測工程S4)。床下空間温度予測工程S4では、床下空間4に温度センサー等を設けることなく、外気Aoの温度及び居室空間16の温度に基づいて、現在から予め定められた時間が経過した後の床下空間4の温度が予測される。
【0044】
本実施形態の床下空間温度予測工程S4では、第1給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度(以下、単に「第1予測床下温度」ということがある)、及び、第2給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度(以下、単に「第2予測床下温度」ということがある)が予測される。
図5は、本実施形態の床下空間温度予測工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6は、
図1の床下空間4を拡大して示す断面図である。
【0045】
床下空間温度予測工程S4では、先ず、制御手段27が、現在の地中Giの温度を予測する(工程S41)。本実施形態の地中の温度は、建物BLの下に配される地中Giの温度である。地中Giの温度は、適宜求めることができるが、例えば、文献(宇田川光弘著、「パソコンによる空気調和計算法」、オーム社、1986年、P72−P73)の記載に基づいて、下記式(1)を用いて計算することができる。
【0046】
【数1】
ここで、
θ
sg(t-1):現在の地中の温度(℃)
T
AVE:予測された床下空間の平均温度(℃)
T
max:外気の平均温度の最高値(℃)
T
min:外気の平均温度の最低値(℃)
F:日数(日)
a、b:定数
【0047】
工程S41では、先ず、記憶部32(
図3に示す)に1時間毎に記録されている予測された床下空間4の温度に基づいて、現在から1年前の日時までの床下空間4の温度の平均値(以下、「1年分の床下空間4の温度の平均値」ということがある。)が計算される。なお、建物BLの竣工当初など、記録されている床下空間4の温度が不足している場合は、その不足分を、記憶部32に記憶されている気象データ(アメダス)の外気の温度から補って、1年分の床下空間4の温度の平均値が計算される。このような床下空間4の温度の平均値は、上記式(1)において、予測された床下空間の平均温度T
AVEに用いられる。
【0048】
次に、工程S41では、記憶部32(
図3に示す)に記録されている1年前までの各日の外気の平均温度から、最も高い平均温度(以下、「外気の平均温度の最高値」ということがある)が抽出される。なお、建物BLの竣工当初など、記録されている外気Aoの平均温度が不足している場合は、気象データ(アメダス)から不足している日時の外気Aoの平均温度を計算し、さらに、該計算結果、及び、記録されている各日の外気Aoの平均温度から、外気Aoの平均温度の最高値が抽出される。このような外気の平均温度の最高値は、上記式(1)において、外気の平均温度の最高値T
maxに用いられる。
【0049】
次に、工程S41では、記憶部32(
図3に示す)に記録されている1年前までの各日の外気の平均温度から、最も低い平均温度(以下、「外気の平均温度の最低値」ということがある)が抽出される。なお、建物BLの竣工当初など、記録されている外気Aoの平均温度が不足している場合は、気象データ(アメダス)から不足している日時の外気Aoの平均温度を計算し、さらに、該計算結果、及び、記録されている各日の外気Aoの平均温度から、外気Aoの平均温度の最低値が抽出される。このような外気の平均温度の最低値は、上記式(1)において、外気の平均温度の最低値T
minに用いられる。
【0050】
日数Fは、1月1日から、地盤Gの上に配置される床下空間4の温度がピークとなる日付までの期間の日数が設定される。床下空間4の温度がピークとなる日付は、外気Aoの温度がピークとなる日付(8月1日)よりも、30日(9月1日)〜60日(9月30日)程度遅れる傾向がある。このため、日数Fには、床下空間4の温度がピークとなる日付(9月1日〜9月30日に基づいて、1月1日からの期間日数である244日〜273日(本実施形態では、258日)が設定される。
【0051】
また、定数a及び定数bは、建物BLの構造、地中Giの温度が予測される予測位置34の地盤面Gsからの深さZ、及び/又は、建物BLが建てられた地域(地盤G)等を考慮して適宜設定されるパラメータである。本実施形態では、例えば、a=−1.2098、b=0.3が設定される。
【0052】
本実施形態では、上記式(1)、及び、各変数を用いることにより、現在の地中Giの温度を正確に予測することができる。
【0053】
次に、現在から予め定められた時間が経過した後の床下空間4の温度の増分値を計算する(増分値計算工程S42)。本実施形態では、例えば、現在から、0.5時間〜1.5時間(本実施形態では、1.0時間)後の増分値が予測される。
図7は、本実施形態の増分値計算工程S42の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0054】
本実施形態の増分値計算工程S42では、先ず、第1給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度の増分値(以下、単に「第1増分値」ということがある)を計算する(工程S421)。
【0055】
本実施形態の第1増分値は、外気Aoの温度と、居室空間16の温度と、外気影響係数と、室温影響係数と、地熱影響係数とを含む下記式(2)に基づいて計算される。下記式(2)は、床下空間4の熱収支を示す式であり、現在から予め定められた時間が経過した後の床下空間4の温度の増分値(θ
(t)−θ
(t-1))を求めるものである。
【0056】
【数2】
ここで、
θ
(t):現在から予め定められた時間が経過した後の床下空間の温度
θ
(t-1):現在の床下空間の温度(℃)
θ
out(t-1):現在の外気の温度(℃)
θ
i(t-1):現在の居室空間の温度(℃)
θ
sg(t-1):現在の地中の温度(℃)
A:外気影響係数
B:室温影響係数
C:地熱影響係数
【0057】
現在の床下空間の温度θ
(t-1)には、上記式(2)を用いて前回予測された現在の床下空間の温度θ
(t)が設定される。なお、建物BLの竣工当初など、現在の床下空間の温度が予測されていない場合は、現在の床下空間4の温度の推定値が設定される。この推定値は、実際に測定した正確な数値でなくても良い。これは、上記式(2)を用いて、床下空間の温度θ
(t)が繰り返し予測されることにより、予測される床下空間4の温度θ
(t)を、実際の床下空間の温度に徐々に近似させることができる(収束する)ためである。
【0058】
現在の外気の温度θ
out(t-1)は、外気温度検知手段25(
図1に示す)で検知された外気Aoの温度である。現在の地中の温度θ
sg(t-1)は、工程S41において予測された予測位置34(
図6に示す)での地中Giの温度である。現在の居室空間の温度θ
i(t-1)は、居室空間温度検知手段26で検知された1階の居室空間16aの温度である。なお、複数の居室空間16で温度が測定される場合には、例えば、各居室空間16の温度と各居室空間16の床面積とを乗じた値をそれぞれ積算し、総床面積で除した加重平均によって、現在の居室空間の温度θ
i(t-1)が求められるのが望ましい。
【0059】
図6に示すように、外気影響係数Aは、床下空間4に対する外気Aoの熱の伝達しやすさ(床下空間の温度θ
(t-1)に対する外気の温度θ
out(t-1)の影響しやすさ)を示すものである。外気Aoの熱は、基礎2を介して床下空間4に伝達される。また、床下空間4の大きさや、土間コンクリート7の容積比熱等により、床下空間4に対する外気Aoの熱の伝達しやすさが異なる。
【0060】
このような観点より、本実施形態の外気影響係数Aは、基礎2の熱貫流率U
w(W/m・K)、基礎2の外周長さL(m)、空気の容積比熱C
p(kJ/m
3・K)、床下空間4の換気量V
vent(m
3/h)、床下空間4の容積V
uf(m
3)、土間コンクリート7の容積比熱C
s(kJ/m
3・K)、又は/及び、土間コンクリート7の厚さV
s(mm)に基づいて、適宜設定されるのが望ましい。なお、第1増分値の計算において、床下空間の換気量V
ventは、給気手段20(
図1に示す)の第1給気量(m
3/h)が設定される。
【0061】
上記変数を用いることにより、例えば、換気熱損失(空気の容積比熱C
p×床下空間の換気量V
vent)、基礎熱損失(基礎の熱貫流率U
w×基礎2の外周長さL)、床下空気熱容量(空気の容積比熱C
p×床下空間の容積V
uf)、又は/及び、土間熱容量(土間コンクリートの容積比熱C
s×土間コンクリートの厚さV
s)を計算することができる。これらの換気熱損失、基礎熱損失、床下空気熱容量、又は/及び土間熱容量を適宜組み合わせることにより、外気影響係数Aが設定されるのが望ましい。
【0062】
室温影響係数Bは、床下空間4に対する1階の居室空間16aの熱の伝達しやすさ(床下空間の温度θ
(t-1)に対する1階の居室空間16aの温度θ
i(t-1)の影響のしやすさ)を示すものである。1階の居室空間16aの熱は、床3を介して床下空間4に伝達される。また、床下空間4の大きさや、土間コンクリート7の容積比熱等により、床下空間4に対する1階の居室空間16aの熱の伝達しやすさが異なる。
【0063】
このような観点より、室温影響係数Bは、1階の床3の熱貫流率U
f(W/m
2・K)、1階の床の面積S
f(m
2)、空気の容積比熱C
p(kJ/m
3・K)、床下空間4の容積V
uf(m
3)、土間コンクリート7の容積比熱C
s(kJ/m
3・K)、又は/及び、土間コンクリート7の厚さV
s(mm)に基づいて計算されるのが望ましい。
【0064】
上記変数を用いることにより、例えば、床熱損失(1階の床の熱貫流率U
f×1階の床の面積S
f)、床下空気熱容量(空気の容積比熱C
p×床下空間の容積V
uf)、及び、土間熱容量(土間コンクリートの容積比熱C
s×土間コンクリートの厚さV
s)を計算することができる。これらの床熱損失、床下空気熱容量、又は/及び土間熱容量を適宜組み合わせることにより、室温影響係数Bが設定されるのが望ましい。
【0065】
地熱影響係数Cは、床下空間4対する地中熱H(
図1に示す)の伝達しやすさ(床下空間の温度θ
(t-1)に対する地中の温度θ
sg(t-1)の影響のしやすさ)を示すものである。地中熱Hは、地盤Gや土間コンクリート7を介して、床下空間4に伝達される。また、床下空間4の大きさや、土間コンクリート7の容積比熱等により、床下空間4に対する地中熱Hの伝達しやすさが異なる。
【0066】
このような観点より、地熱影響係数Cは、地盤Gの熱貫流率U
sg(W/m
2・K)、土間コンクリート7の面積S
sg(m
2)、空気の容積比熱C
p(kJ/m
3・K)、床下空間4の容積V
uf(m
3)、土間コンクリート7の容積比熱C
s(kJ/m
3・K)、又は/及び、土間コンクリート7の厚さV
s(mm)に基づいて計算されるのが望ましい。
【0067】
上記変数を用いることにより、例えば、地盤熱損失(地盤の熱貫流率U
sg×土間コンクリートの面積S
sg)、床下空気熱容量(空気の容積比熱C
p×床下空間の容積V
uf)、及び、土間熱容量(土間コンクリートの容積比熱C
s×土間コンクリートの厚さV
s)を計算することができる。これらの地盤熱損失、床下空気熱容量、又は/及び土間熱容量を適宜組み合わせることにより、地熱影響係数Cが設定されるのが望ましい。
【0068】
上記式(2)では、現在の外気の温度θ
out(t-1)と、現在の床下空間の温度θ
(t-1)との差(θ
out(t-1)−θ
(t-1))に、外気影響係数Aが乗じられることにより、外気Aoの熱による床下空間4の温度上昇分が求められる。また、現在の居室空間の温度θ
i(t-1)と、現在の床下空間の温度θ
(t-1)との差(θ
i(t-1)−θ
(t-1))に、室温影響係数Bが乗じられることにより、居室空間16の熱による床下空間4の温度上昇分が求められる。さらに、現在の地中の温度θ
sg(t-1)と、現在の床下空間の温度θ
(t-1)との差(θ
sg(t-1)−θ
(t-1))に、地熱影響係数Cが乗じられることにより、地中熱Hによる床下空間4の温度上昇分が求められる。
【0069】
そして、外気Aoの熱による床下空間4の温度上昇分(θ
out(t-1)−θ
(t-1))×Aと、居室空間16の熱による床下空間4の温度上昇分(θ
i(t-1)−θ
(t-1))×Bと、地中熱Hによる床下空間4の温度上昇分(θ
sg(t-1)−θ
(t-1))×Cとを積算することにより、第1給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度の増分値(第1増分値(θ
(t)−θ
(t-1)))を求めることができる。そして、後述する工程S43において、第1増分値(θ
(t)−θ
(t-1))と、現在の床下空間4の温度θ
(t-1)とを積算することにより、第1給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度(第1予測床下温度θ
(t))を求めることができる。
【0070】
次に、上記方法に基づいて予測された床下空間の温度の正確性について、検証した結果を述べる。
図8は、1時間毎の外気の温度の実測値と日時との関係を示すグラフである。
図9は、1時間毎の1階の居室空間の温度の実測値と日時との関係を示すグラフである。
【0071】
上記式(1)及び上記式(2)を用いた上記方法に基づいて、
図8に示した外気の温度の実測値、及び、
図9に示した1階の居室空間の温度の実測値から、第1給気量での床下空間の温度が予測された。1時間毎の床下空間の予測温度と日時との関係を示すグラフを、
図10に示す。なお、
図11は、1時間毎の床下空間の温度の実測値と日時との関係を示すグラフである。また、各パラメータは、明細書中の記載通りであり、その他のパラメータは、下記のとおりである。
・第1給気量:350m
3/h
・建物BLが建てられた地域及び使用したアメダス:愛知県岡崎市
・建物BLの延べ床面積:226.05m
2
・外気影響係数A:0.0241
・室温影響係数B:0.0323
・地熱影響係数C:0.0268
【0072】
図10及び
図11に示されるように、床下空間の予測温度と、床下空間の温度の実測値とは、決定係数R
2が0.98であった。従って、上記式(1)及び上記式(2)を用いた上記の予測方法では、床下空間4の温度を検知する手段を設けることなく、床下空間の温度を、正確に予測できることが確認できた。
【0073】
次に、
図7に示したように、第2給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度の増分値(以下、単に「第2増分値」ということがある)を計算する(工程S422)。
【0074】
本実施形態の第2増分値は、第1増分値と同様に、上記式(2)に基づいて計算される。なお、外気影響係数Aにおいて、床下空間の換気量V
ventには、給気手段20の第2給気量(m
3/h)が設定される。これにより、第2給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度の増分値(第2増分値)を求めることができる。
【0075】
次に、制御手段27は、床下空間4の温度の増分値に基づいて、床下空間4の温度を予測する(工程S43)。工程S43では、上述したように、第1増分値(θ
(t)−θ
(t-1))と、現在の床下空間4の温度θ
(t-1)とを積算することにより、第1給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度(第1予測床下温度θ
(t))が求められる。さらに、工程S43では、第2増分値(θ
(t)−θ
(t-1))と、現在の床下空間4の温度θ
(t-1)とを積算することにより、第2給気量で床下空気Aiを供給した場合の床下空間4の温度(第2予測床下温度θ
(t))が求められる。
【0076】
次に、
図4に示したように、制御手段27は、給気手段20の給気量を増減させる(給気量増減工程S5)。この給気量増減工程S5では、床下空間温度予測工程S4で予測された床下空間4の温度に基づいて、給気手段20の給気量を増減させている。
図12は、本実施形態の給気量増減工程S5の処理手順の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0077】
給気量増減工程S5では、先ず、制御手段27が、第1給気量での第1冷却能力を計算する(工程S51)。第1冷却能力Ca(W)は、予測された第1予測床下温度θ
(t)と、居室空間16の温度と、第1給気量と、空気の比熱とに基づいて、下記式(3)によって計算される。
Ca=(Ti−Ta)×Ha×Sa…(3)
ここで、
Ti:居室空間の温度(℃)
Ta:第1予測床下温度θ
(t)(℃)
Ha:空気の比熱(W/m
3・K)
Sa:第1給気量(m
3/h)
【0078】
空気の比熱Haは、空気1m
3あたりの容積比熱である。本実施形態の空気の比熱Haには、0.35(W/m
3・K)が設定される。また、居室空間の温度Tiは、上記式(2)で用いられた現在の居室空間の温度θ
i(t-1)が設定される。
【0079】
上記式(3)では、居室空間16(温度Ti(℃))に、床下空気Ai(第1予測床下温度Ta(℃))を、第1給気量Sa(m
3/h)で1時間供給した場合の冷却能力(第1冷却能力Ca)が計算される。
【0080】
第1冷却能力Caは、第1予測床下温度Taが低い(居室空間の温度Tiとの温度差が大きい)ほど大きくなる。これは、上記条件のもとで、床下空気Aiが供給されると、居室空間16を効果的に冷却できることを示している。一方、第1冷却能力Caは、第1予測床下温度Taが高い(居室空間の温度Tiとの温度差が小さい)ほど小さくなる。これは、上記条件のもとで床下空気Aiが供給されると、居室空間16を十分に冷却できないことを示している。
【0081】
次に、制御手段27が、第2給気量での第2冷却能力を計算する(工程S52)。第2冷却能力Cb(W)は、予測された第2予測床下温度θ
(t)と、居室空間16の温度と、第2給気量と、空気の比熱とに基づいて、下記式(4)によって計算される。
Cb=(Ti−Tb)×Ha×Sb…(4)
ここで、
Ti:居室空間の温度(℃)
Tb:第2予測床下温度θ
(t)(℃)
Ha:空気の比熱(W/m
3・K)
Sb:第2給気量(m
3/h)
【0082】
空気の比熱Haは、工程S52と同様に、0.35(W/m
3・K)が設定される。また、居室空間の温度Tiは、上記式(2)で用いられた現在の居室空間の温度θ
i(t-1)が設定される。
【0083】
上記式(4)では、居室空間16(温度Ti(℃))に、床下空気Ai(第2予測床下温度Tb(℃))を、第2給気量Sb(m
3/h)で1時間供給した場合の冷却能力(第2冷却能力Cb)を計算することができる。
【0084】
第2冷却能力Cbは、第1冷却能力Caと同様に、第2予測床下温度Tbが低い(居室空間の温度Tiとの温度差が大きい)ほど大きくなり、居室空間16を効果的に冷却できることを示している。一方、第2冷却能力Cbは、第2予測床下温度Tbが高い(居室空間の温度Tiとの温度差が小さい)ほど小さくなり、居室空間16を十分に冷却できないことを示している。
【0085】
次に、第2冷却能力Cbと、第1冷却能力Caとの差(Cb−Ca)が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される(工程S53)。差(Cb−Ca)は、第2給気量での冷却能力Cbと第1給気量での冷却能力Caの差、即ち、床下空気Aiを、第1給気量から第2給気量に増加させて供給した場合の冷却能力の増加分を示している。
【0086】
また、閾値としては、適宜設定することができる。本実施形態では、床下空気Aiを第2給気量で1時間供給した際に消費する電力Eb(Wh)と、床下空気Aiを第1給気量で1時間供給した際に消費する電力Ea(Wh)との差(Eb−Ea)が設定されるのが望ましい。このような閾値は、給気手段20の給気量を、第1給気量から第2給気量に増加させた際の電力の増加分を示している。本実施形態の閾値としては、建物BLに設置される送風手段22の第1給気量での消費電力、及び、第2給気量での消費電力に基づいて、適宜設定される。
【0087】
前記差(Cb−Ca)が、前記閾値よりも大きい場合(工程S53で「Y」)、第2給気量での消費電力の増加分に対して、第2給気量での冷却能力の増加分が大きい。これは、第2給気量で床下空気Aiを供給すれば、第2給気量での消費電力(ランニングコスト)よりも大きな冷却効果を得ることができることを示している。従って、制御手段27は、第2給気量で床下空気Aiを供給する(工程S54)。これにより、本実施形態の空調システムでは、居室空間16の温度を効果的に低下させることができる。
【0088】
一方、前記差(Cb−Ca)が、前記閾値以下である場合(工程S53で「N」)、第2給気量での冷却能力の増加分に対して、第2給気量での消費電力の増加分が大きい。これは、第2給気量で床下空気Aiを供給しても、居室空間16の温度を十分に低下させることができないだけでなく、消費電力(ランニングコスト)だけが無駄に増加することを示している。従って、制御手段27は、第1給気量で床下空気Aiを供給する(工程S55)。これにより、本実施形態の空調システムでは、給気手段20の無駄な運転を減らし、ランニングコストの増大を抑制することができる。
【0089】
このように、本実施形態の空調システムでは、予測された床下空間4の温度に基づいて、給気手段20の給気量を増減させ、居室空間16の温度を効率よく低下させることができる。しかも、本実施形態の空調システムでは、例えば、床下空間4の温度を検知する手段を設けることなく、上記式(1)及び上記式(2)を用いた方法に基づいて、床下空間4の温度を正確に予測することができる。従って、居室空間16の温度をより効率よく低下させることができる。また、床下空間4に、温度センサーや信号線の配置が不要となるため、初期費用を抑えることができる。
【0090】
制御手順は、
図4に示すスタートからエンドまでの一連の処理が終了しても、繰り返し実行される。これにより、時々刻々と温度が変化する居室空間16の温度を低下させることができる。
【0091】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。