特許第6235852号(P6235852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235852
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】変調波形発生装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/18 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G10H1/18 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-206343(P2013-206343)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-69198(P2015-69198A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】森川 悠佑
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−109434(JP,U)
【文献】 実開昭59−195707(JP,U)
【文献】 特開2004−184724(JP,A)
【文献】 特開2009−009152(JP,A)
【文献】 特開2013−131035(JP,A)
【文献】 特開2006−093836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00− 7/12
G10G 1/00− 7/02
G06F 3/02,3/048−3/0489
H01H 15/00−15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド方向に対して垂直方向に一列に整列され、入力電圧を設定値に応じて変化させ出力する複数のスライドボリュームと、
上記スライドボリュームそれぞれの操作軸に配置され、入力信号に応じて発光する複数の発光素子と、
所定の周期で発生したパルス信号を、上記整列されたスライドボリューム及び上記発光素子の一端から他端へ順次出力する順序パルス発生部と、
上記整列されたスライドボリュームそれぞれから出力される上記パルス信号を順次選択して出力信号とするスライダー値選択部と、
を含む変調波形発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変調波形発生装置であって、
上記発光素子への上記パルス信号の入力が停止した後に、当該発光素子が所定の時間をかけて輝度を漸減させるように制御する残像効果部を含む
変調波形発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変調波形発生装置であって、
上記残像効果部は、時定数回路を備え、上記順序パルス発生部から入力された上記パルス信号を所定の時間をかけて放電することで、上記発光素子が所定の時間をかけて輝度を漸減させるように制御するものである
変調波形発生装置。
【請求項4】
請求項2に記載の変調波形発生装置であって、
上記発光素子は、パルス幅変調により輝度を制御するものであり、
上記残像効果部は、デューティー比を所定の時間をかけて漸減させることで、上記発光素子が所定の時間をかけて輝度を漸減させるように制御するものである
変調波形発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子楽器などに適用する変調波形発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子楽器分野では、フィルタ回路や発振器回路、振幅制御回路などのパラメータを周期的に制御するために、低周波発振器やLFO(Low Frequency Oscillator)などと呼ばれる変調波形発生装置が用いられてきた。例えば、特許文献1に開示された変調波形発生装置は、自動演奏や自動伴奏の機能を備える電子楽器に対して、自動演奏や自動伴奏のテンポに合わせて変調波形の周期を変化させるものである。
【0003】
一方、従来から、周期的な機器制御信号を得るために用いられるステップシーケンサと呼ばれる装置があった。電子楽器分野におけるステップシーケンサの例として、非特許文献1に記載された装置を挙げることができる。このステップシーケンサは、筐体の一面に設けられた操作パネルに複数の回転ボリュームを備え、各回転ボリュームのつまみ位置で設定される電圧を変調波形の各ステップとして順次出力することで、順次変化する電圧出力を得る。このステップシーケンサは、例えば、電圧制御型の電子楽器の制御に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−280650号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社コルグ、“KORG MUSEUM”、“SQ-10 Analog Sequencer”、[online]、[平成25年9月24日検索]、インターネット<URL:http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/VC-10/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、電子楽器に用いられる変調波形発生装置は、変調波形の形状を容易に変更することができる。しかしながら、従来の変調波形発生装置では、現在の設定により出力される変調波形の形状を視覚的に確認するための配慮がされておらず、変調波形の視認性が良くなかった。
【0007】
この発明の目的は、電子楽器に用いられる変調波形発生装置において、変調波形の視認性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の変調波形発生装置は、複数のスライドボリューム、複数の発光素子、順序パルス発生部及びスライダー値選択部を含む。複数のスライドボリュームは、スライド方向に対して垂直方向に一列に整列され、入力電圧を設定値に応じて変化させ出力する。複数の発光素子は、スライドボリュームそれぞれの操作軸に配置され、入力信号に応じて発光する。順序パルス発生部は、所定の周期で発生したパルス信号を、整列されたスライドボリューム及び発光素子の一端から他端へ順次出力する。スライダー値選択部は、整列されたスライドボリュームそれぞれから出力されるパルス信号を順次選択して出力信号とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の変調波形発生装置によれば、一列に整列されたスライドボリュームの操作軸の位置を繋いだ曲線が変調波形の形状を表しており、変調波形の現在の位相に対応する発光素子が順次点灯することで、変調波形を視覚的に認識することが容易になる。したがって、変調波形の視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、変調波形発生装置の機能構成を例示する図である。
図2図2は、スライドボリュームの設定と変調波形の関係を例示する図である。
図3図3は、残像効果部のアナログ回路による構成を例示する図である。
図4図4は、残像効果部のデジタル回路による構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0012】
実施形態の変調波形発生装置は、制御対象となるフィルタ回路や発振器回路、振幅制御回路などを出力端子へ接続し、出力する変調波形によりそのパラメータを周期的に制御する装置である。この変調波形発生装置は、フィルタ回路などを搭載した装置へ向けて変調波形を出力する独立した一つの装置として構成してもよいし、変調波形発生装置を一つの部品として、フィルタ回路などと共に同一の筐体に組み込んだ一個の装置として構成してもよい。
【0013】
図1を参照して、実施形態の変調波形発生装置の機能構成の一例を説明する。変調波形発生装置は、変調速度設定部1、順序パルス発生部2、n個の残像効果部31,…,3n、n個の照光式スライドボリューム41,…,4n、スライダー値選択部5及びスムージング部6を含む。照光式スライドボリューム4iは、それぞれ発光素子41i及びスライドボリューム42iを含む。ただし、nは2以上の整数であり、iは1以上n以下の整数である。
【0014】
スライドボリューム42iは板状の抵抗帯の上を可動端子が長手方向の直線上をスライドし、可動端子の位置により抵抗値が可変となる電子部品である。可動端子は、例えば、つまみ状の操作軸に結合して形成される。スライドボリューム42iは、操作軸を用いて可動端子をスライドさせることで、設定位置を調整する。
【0015】
発光素子41iは電圧が加わることで発光する半導体素子である。発光素子41iの発光色は限定されず、n個の発光素子411,…,41nすべてが同一の発光色であってもよいし、異なる発光色が混合していてもよい。各発光素子の発光色の選択及び組み合わせは、さらなる視認性の向上のために適宜設計することができる。
【0016】
発光素子41iは、スライドボリューム42iの操作軸に配置され、一個の照光式スライドボリューム4iを構成する。このような照光式スライドボリュームは従来から利用されており、この実施形態ではどのような照光式スライドボリュームを適用しても構わない。例えば、「特開2001−85205号公報」などに開示された照光式スライドボリュームを利用することができる。
【0017】
n個の照光式スライドボリューム41,…,4nは、変調波形発生装置の筐体の外部から視認可能な位置に設置される。照光式スライドボリューム41,…,4nはスライドボリューム421,…,42nのスライド方向と垂直方向に一列に整列される。スライドボリューム421,…,42nのスライド方向は任意の向きに配置してもよいが、後述する通り可動端子の位置は変調波形の振幅を表すため、鉛直方向に合わせるとより直感的に理解し易くなる。この場合、照光式スライドボリューム41,…,4nの整列方向は水平方向に合うことになる。ここでは、照光式スライドボリューム41,…,4nは、利用者から向かって左手側の端から右手側の端へ下付き添字の昇順に一列に整列しているものとする。
【0018】
図2(A)及び図2(B)に照光式スライドボリュームの設定とその設定により生成される変調波形の関係を例示する。これらの例は、10個の照光式スライドボリューム41,…,410を用いて変調波形の形状を設定する例である。各スライドボリュームの位置は変調波形の対応する位相を表しており、各スライドボリュームの可動端子の位置はその位相における振幅を表している。したがって、各スライドボリュームの可動端子を繋いで描かれる曲線が変調波形の一波長の形状を表すことになる。図2(A)及び図2(B)は異なる設定例を示したものであり、ここに描かれた変調波形に限定されるものではない。
【0019】
変調速度設定部1は、変調波形の周期を順序パルス発生部2及びスライダー値選択部5へ設定する。変調波形の周期は、例えば、変調波形発生装置の筐体外部に設置された操作パネルなどに用意されたボリュームもしくはスイッチなどにより設定され、変調速度設定部1へ入力される。電子楽器の分野では、変調波形の周波数は、例えば、1Hz〜10Hz程度
に設定することが一般的である。したがって、変調波形の周期は0.1秒〜1秒程度の範囲で設定可能とする。ただし、設定可能な周期もしくは周波数の範囲はこれらに限定されず、用途に応じて任意に設計することができる。
【0020】
順序パルス発生部2は、変調速度設定部1の設定した周期に応じて、残像効果部31,…,3n及びスライドボリューム421,…,42nへ下付き添字の昇順にパルス信号を順次出力する。変調波形の周期をs秒として、一個の残像効果部3i及びスライドボリューム42iへはs/n秒間ずつパルス信号が出力されることになる。
【0021】
残像効果部3iは、順序パルス発生部2から入力されるパルス信号を、残像効果を持たせるように変換して、発光素子41iへ出力する。具体的には、順序パルス発生部2の出力が次の残像効果部3i+1へ切り替わり、残像効果部3iへのパルス信号の入力が停止した後に、発光素子41iが所定の時間をかけて輝度を漸減させるように制御する。
【0022】
図2(C)に変調波形の現在の位相と各発光素子の輝度の関係を示す。グラフの横軸は発光素子の番号を表す。発光素子の番号は1からnまでの各整数が与えられ、1≦k≦nを満たすkが現在の位相に対応する発光素子の番号である。縦軸は輝度の高さを表す。現在の位相に対応する発光素子41kが最も輝度が高く、発光素子41k-1から発光素子411まで発光素子41kからの距離が長いほど輝度が低くなっていることがわかる。
【0023】
図2(A)(B)に示したように、スライドボリュームの設定位置は変調波形の形状を表しており、スライドボリュームの可動端子の操作軸には発光素子が配置されている。図2(C)に示したように、発光素子は変調波形の現在の位相が発光し、離れるにつれて輝度が下がっていく。これらの動作の組み合わせにより、変調波形の現在位置が残像を残しながら変調波形を描くように発光することとなる。したがって、変調波形を視覚的に確認することが容易になり、視認性が向上する。
【0024】
残像効果部3は、例えば、アナログ回路で実現することができる。図3にアナログ回路で実現した残像効果部3の回路構成を示す。順序パルス発生部2の出力には、スライドボリューム42i、発光素子41i及びコンデンサ3iが並列に接続される。スライドボリューム42iに入力される信号は設定された抵抗値に応じて変換されて出力される。発光素子41iに入力された信号はコンデンサ3iに充電されるため、パルス信号の入力が次の発光素子41i+1に切り替わってもすぐには消灯せず、コンデンサ3iの容量に応じた時間をかけて輝度を漸減させながら消灯することになる。
【0025】
図3では回路図と共に、各発光素子41iの輝度と時間の関係をグラフに示している。図3の例では、現在、k番目の発光素子41kにパルス信号が入力されているとして、各発光素子41iの輝度の時間変化を示している。k番目の発光素子41kはコンデンサ3kの充電を待って輝度が上がっているが、その他の発光素子41k-1、41k-2、411は発光素子41kから離れるに従って輝度が下がっていることがわかる。また、パルス信号の入力がまだされていない発光素子41nはまったく発光していないことがわかる。
【0026】
残像効果部3は、例えば、デジタル回路で実現することができる。図4にデジタル回路で実現した残像効果部3の回路構成を示す。順序パルス発生部2の出力には、スライドボリューム42iに接続される。スライドボリューム42iに入力されるパルス信号は設定された抵抗値に応じて変換されて出力される。発光素子41iはパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)により輝度を制御されており、マイクロプロセッサなどにより各発光素子411,…,41nに対するデューティー比を個別に制御することで残像効果を実現する。具体的には、変調波形の現在の位相に対応する発光素子はデューティー比を100%とし、所定の時間をかけてデューティー比を漸減させていき、最終的にデューティー比を0%として消灯することになる。
【0027】
図4には回路図と共に各発光素子41の位置とデューティー比の関係を示している。図4の例では、現在、k番目の発光素子41kにパルス信号が入力されているとして、各発光素子41iのデューティー比を示している。k番目の発光素子41kはデューティー比が100%であり最大の輝度を得られるが、その他の発光素子41k-1、41k-2、411は発光素子41kから離れるに従ってデューティー比が下がっており、それに応じて輝度が下がっているのがわかる。また、まだパルス信号の入力がされていない発光素子41nはデューティー比が0%であり、まったく発光していないことがわかる。
【0028】
上述の残像効果部3の例では、発光素子41の輝度の下限を消灯状態、すなわち輝度0として説明をしてきたが、輝度の下限を0としない構成とすることもできる。例えば、図3に示したアナログ回路であれば、コンデンサ3kの容量を大きくして輝度の減衰時間を変調波形の周期よりも長くしたり、発光素子41のアノードと電源の間を抵抗で繋ぐことで電流を流す構成としたりすることで、輝度の下限を0としない構成とすることができる。また、図4に示したデジタル回路であれば、輝度を規定するデューティー比の下限を、例えば5%のように小さい値とすることで、パルス信号を印加していない発光素子41にも常に発光に必要な電圧を与え点灯させることができる。これらの場合、発光素子はすべてほのかに点灯しており、パルス信号が入力されている部分の周辺だけが明るく光るという構成をとることができ、変調波形の周期が長い場合に視認性が向上する。
【0029】
スライダー値選択部5は、変調速度設定部1の設定した周期に応じて、スライドボリューム421,…,42nから出力されるパルス信号を下付き添字の昇順に順次選択して出力信号とする。スライドボリューム421,…,42nへは順序パルス発生部2より順番にパルス信号が出力されるため、スライダー値選択部5と順序パルス発生部2とはタイミングを合わせて切り替えを行わなければならない。スライダー値選択部5は、選択したスライドボリューム42の出力信号をスムージング部6へ出力する。
【0030】
スムージング部6は、スライダー値選択部5が出力信号を切り替える際に発生する不連続性を解消するために、低域通過フィルタもしくは補間演算により出力信号を平滑化し、その平滑化した出力信号を変調信号として出力する。
【0031】
このようにして、実施形態の変調波形発生装置は、一列に整列されたスライドボリューム421,…,42nの操作軸の位置が変調波形を表しており、変調波形の現在の位相に対応する発光素子が順次点灯し、残像を残しながら移動するため、変調信号の波形を視覚的に認識することが容易になる。したがって、変調波形の視認性が向上する。
【0032】
この発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。上記実施形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 変調速度設定部
2 順序パルス発生部
3 残像効果部
4 照光式スライドボリューム
41 発光素子
42 スライドボリューム
5 スライダー値選択部
6 スムージング部
図1
図2
図3
図4