(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235858
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】布類の検査装置における検査部浄化装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/898 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
G01N21/898 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-219340(P2013-219340)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-81821(P2015-81821A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】597090907
【氏名又は名称】東都フォルダー工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 祐介
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−177109(JP,A)
【文献】
特開平02−040542(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0316483(US,A1)
【文献】
米国特許第05125034(US,A)
【文献】
実開昭49−114989(JP,U)
【文献】
特開2001−215197(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/058102(WO,A1)
【文献】
特開平07−063533(JP,A)
【文献】
特開2013−049936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布類の搬送経路に配置した検査部における浄化のための装置であって、
検査部の周囲を囲んで、検査部の下面側に配置したボックス部と、
上記ボックス部の内部に気流を供給するために設けた給気部と、
ボックス部内に供給された気流をボックス部外へ排出するために、検査部の上流から検査部上へ気流を噴射する排気口と、
前記ボックス部の上部から前記検査部の上面に向かって先細の断面形状となるように形成された整流板と、
を具備して構成された布類の検査装置における検査部浄化装置。
【請求項2】
ボックス部はその内部が、ボックス部外部の気圧よりも高い気圧に保たれるように、密閉構造を有するとともに、布類の裏面を検査するため透明板材を用いた検査部とカメラとから成る検査装置を内蔵しており、排気口は上記密閉構造のボックス部内部から外部へ通じる部分であり、かつ、検査装置を冷却する気流を排出するように設けられている
請求項1記載の布類の検査装置における検査部浄化装置。
【請求項3】
布類の搬送経路から検査部の上流側かつ上面に近い部分に布類の渡し部材が設けてあり、排気口は、渡し部材と検査部の上流側かつ上面の間に気流を噴出するように構成された
請求項1記載の布類の検査装置における検査部浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布類の搬送経路に配置した検査部における検査部浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、リネンサプライ業に属する分野では、顧客先からシーツ等の布類を回収し、洗濯、アイロン掛けの上、折り畳み機にて折り畳み、再び顧客先へ配達するというサービスが繰り返される。その布類には、洗濯しても落ちない汚れや破れ等を生じている欠陥品も混在しており、業者は上記サービスにおいて欠陥品を選び出す検査を行なっている。検査を行なう装置は、例えば、搬送コンベアのベルト上や搬送コンベア間に設けられ、ロールアイロナーによりプレス、乾燥させた布類を対象として上記の検査を行なっている。
【0003】
しかし、搬送コンベア間に検査装置が設けられている場合、乾燥が不十分のために少し湿った状態の布類が搬送されて来ると、検査面を滑走する布類の滑りが悪くなり、シワになったり、時として詰まったりする等の事態が発生することとなった。また、搬送される布類によって運ばれた糸屑や埃等が検査装置を構成する透明板材に溜まると、検査精度に影響するため頻繁に清掃を行なう必要がある。
【0004】
この点に関連する特許文献を調査したところ、特開2011−242330号の布片検査装置および検査方法が見出された。同発明は、暗色部と透光部とを有する検査台と、暗色部を通過する布片の反射光を撮影する第1検査カメラと、透光部を通過する布片Tの透過光を撮影する第2検査カメラとを備えている。そして、検査台が突出しているので、布片は第1コンベアと第2コンベアとの間を通過する際に検査台で擦られることでシワを伸ばす効果を得ている。しかしながら、突出している検査台近辺には糸屑や埃等が運ばれ、やがて溜まるであろうことは容易に推測される。
【0005】
また、特表2004−514798号には、受取コンベヤと送達コンベヤの2つのコンベヤとの間の領域内に透明なカバープレートが配置され、この透明なカバープレートは、カメラを収容する閉容器に設けられている窓を形成しており、これにより、カメラを取巻く環境条件を正確に監視することができ、と記載されている。しかし、ガラス板は受取コンベヤと送達コンベヤのレベルよりわずかに上方に配置され、これによって各布切れはガラス板に対して滑動することになるとも記載されている。従って、糸屑や埃等が運ばれ、やがて溜まるであろうことは前記のものと同様であり、また、溜まったものを取り除く発想も記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2011−242330号
【特許文献2】特表2004−514798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたもので、その課題は、検査部に運ばれる糸屑や埃等を気流により噴浄することにより、検査部を常時清浄な状態に維持することである。また、本発明の他の課題は、検査部に搬送された布類が気流の層を介して検査部を通過するようにした検査部浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、布類の搬送経路に配置した検査部における浄化のための装置として、検査部の周囲を囲んで、検査部の下面側に配置したボックス部と、上記ボックス部の内部に気流を供給するために設けた給気部と、ボックス部内に供給された気流をボックス部外へ排出するために、検査部の上流から検査部上へ気流を噴射する排気口とを具備して構成するという手段を講じたものである。
【0009】
本発明は、検査部を常時最良の検査が行なえる状態に維持することを目的としており、そのために、検査部に運ばれる糸屑や埃等を気流により噴浄するものである。この目的の下に、ボックス部と、給気部と排気口とから成る本発明の装置が提供される。本発明において噴浄に使用する気体は空気が主であるが、検査部については静電対策のために帯電し難い材質を選択したり、放電構造を付加したりする等公知の対策を講じることができる。
【0010】
本発明の装置は、上記ボックス部の内部に気流を供給するために給気部をボックス部に設けている。給気の結果としてボックス部内部はボックス部外部の気圧よりも高い気圧に保たれ、この状態は給気圧及びボックス部の密閉度に比例する。ボックス部は一般的に密閉構造に形成するのが望ましいことである。しかしながら、密閉度の向上のみにより微細な埃等を完全に遮断することは不可能に近く、この問題に対処するために本発明ではボックス部内部をボックス部外部の気圧よりも高い気圧に保つこととし異物の侵入を排除する一助とする。
【0011】
本発明の装置として、ボックス部はその内部が、ボックス部外部の気圧よりも高い気圧に保たれるように、密閉構造を有するとともに、布類の裏面を検査するため透明板材を用いた検査部とカメラとから成る検査装置を内蔵しており、排気口は上記密閉構造のボックス部内部から外部へ通じる部分であり、かつ、検査装置を冷却する気流を排出するように設けられている構成は、好ましいものである。
【0012】
本発明の装置において、排気口は、ボックス部内に供給された気流をボックス部外へ排出するために、検査部の上流から検査部上へ気流を噴射するという構成を取る。気流が検査部上に噴射されることで一種の境界層流を形成し、上流から搬送されて来る布類が検査部表面を擦らないようにする。よって、糸屑や埃等が運ばれたとしても検査部表面をほとんど擦らないので検査部に溜まることもない。
【0013】
また、布類の搬送経路から検査部の上流側かつ上面に近い部分に布類の渡し部材が設けてあり、排気口は、渡し部材と検査部の上流側かつ上面の間に気流を噴出するのも好ましい構成である。渡し部材によって搬送手段のロールと検査部との間の隙間を閉じることができ、布類のスムーズな搬送に寄与する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから検査部に運ばれる糸屑や埃等を気流により噴浄し、それにより検査部を常時清浄な状態に維持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、検査部に搬送された布類が気流の層を介して検査部を通過するようにした検査部浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1には本発明に係る検査部浄化装置を適用した布類の検査装置とその前後の要素から成る折り畳みシステムの例が図示されており、図中の符号11はロールアイロナー、12は上記布類の裏面に対する検査装置、13は同じ布類の表面に対する検査装置、14は折り畳み装置、15は折り畳み装置であって、前段の折り畳み装置14に対して交差方向の折り畳みを行なう部分をそれぞれ示している。
【0016】
布類はコンベアから成る搬送手段16−1、16−2、16−3によりロールアイロナー11から検査装置12、13…へと搬送される。なお、上記ロールアイロナー11は洗濯済みの布類を所定の加熱条件の下でアイロン掛けし、乾燥する機能を有しているが、布類の乾燥度合いはその材質や厚さ、環境条件の変化等の影響を受けるために差があり、乾燥が悪く少し湿った状態にある衣類は滑らず、シワや詰まりを生じ易い。
【0017】
本発明を適用するのは上記布類の裏面に対する検査装置12であり、その詳細は
図2に示されている。上記の布類検査装置12は搬送経路の上流側に搬送手段16−1を有し、かつ、下流側に搬送手段16−2を有し、それらの間に検査部20が配置されている。符号17は布類先端と後端検知用のセンサー、18は布類に対する検査タイミング用のエンコーダーであり、上流側搬送手段16−1に配置されている。
【0018】
この実施形態においては、センサー17により布類の先端が検知されると同時に、エンコーダー18による演算の結果、布類の搬送長さが算出される。すなわち、その演算結果に基づいて、布類の先端が搬送手段16−1の先端ロール19に隣接配置されている検査部20に達するまでの間の適切な時点にて信号が発せられ、上記の布類検査装置12が作動するように構成されている。なお、先端ロール19はその位置が前進後退可能かつ上下移動可能に設けられている。
【0019】
布類検査装置12は、検査部20の周囲を囲んで、検査部20の下面側に配置したボックス部21と、上記ボックス部21の内部に気流を供給するために設けた給気部22と、検査部20の直交方向下方に配置されたカメラ23と、検査部20の直交方向上方に配置された暗箱部材24とを具備している。上記給気部22としてはいわゆるブロワの類が使用され、また、カメラとしてはデジタルカメラの類が使用される。暗箱部材24はカメラ23の光軸上にあって対向しており、カメラ23の写野として限りなく黒色の背景を提供するために設けられている。
【0020】
ボックス部21は密閉構造を有しており、ゆえに給気部22と後述する排気口27以外では気流が流出入しない構成である。また、給気部22にはフィルター25が設けられているが、異物の完全な遮断というよりもできるだけ清浄な気流を取り入れることを目的とする。他方、検査装置12はカメラ23の電子式撮像素子自身が発熱すること、そして検査部20を照明する照明装置26が発熱することから、温度上昇の傾向があり、適切な作動環境を維持するために空気冷却により過度の温度上昇を防止する必要がある。
【0021】
そこで、本発明ではボックス部21を密閉構造として、ボックス部内部をボックス部外部の気圧よりも高い気圧に保ち微細塵埃の流入を防ぐとともに、カメラ23を効果的に冷却する気流が形成されるように図っている(
図3A参照)。すなわち、給気部22はカメラを直接的に空冷できるように低い位置に配置し、冷却気流32は装置の作動により暖められて上昇気流33となり(
図3B参照)、高い位置に配置された前述の排気口27から噴射される排出気流34となるように構成されている。
【0022】
上記のようにしてボックス部内にて上昇する傾向にある気流をボックス部外へ排出するために、排気口27が、検査部20の上流から検査部20の上面に気流を噴射するように設けられている。検査部20は、透明板材を搬送手段16−1、16−2の幅方向(搬送方向と直交する方向)に配置したもので、布類の全幅を超える長さを有している。また、検査部20に用いる板状部材の材質としては高い透明度が要求され、例えば、ポリカーボネートなどの有機ガラスが用いられる。しかし検査部20の板状部材には、無機ガラスも勿論使用可能である。
【0023】
上記検査部20はボックス部21の上部に形成されている検査窓28の上面に任意の固定手段29により固定されている(
図4参照)。布類の搬送経路から検査部20の上流側かつ上面に近い部分には布類の渡し部材30が設けてあり、排気口27は、渡し部材30と検査部20の上流側かつ上面の間に気流を噴出するように構成されている。符号31はその気流誘導のための整流板であり、ボックス部21の上部から検査部20の上面に向かって先細の断面形状となるように形成され、この形状に沿って排出気流は加速される。
【0024】
図示の例では、渡し部材30が上方へやや突状を呈する形態を有しており、このため布類は検査部20の表面に対して、やや上方から僅かな角度で交差するように搬送されることになる。渡し部材30はある間隔(ベルト間)で配置しているので、搬送されてきたシーツなどの衣類Wの先端が水平ではなく上方へ向けて少し持ち上げられ、その結果、出口側搬送手段16−1のロール19と検査部20との間の隙間に布類Wが落ち込んで引っ掛らないようになる。また、排気口27を適正に設けるために、スペースを稼ぐことにも寄与する。なお、検査部20の表面と搬送手段16−2の上面との関係では下流側の搬送手段16−2が僅かに低位置とされているが、面同士は平行に設定されているので、布類Wはスムーズに搬送される。
【0025】
本発明に係る布類の検査装置における検査部浄化装置はこのような構成を有しており、布類35は、
図5Aに示すようにロールアイロナー11より、搬送手段16−1によって搬送され、布類Wの裏面に対する検査装置12へと搬送される。布類35の先端がセンサー17に達して検知されると、エンコーダー18により布類Wの搬送長さが算出され、その演算結果に基づいて、布類Wの先端が検査部20に達するまでの間に発せられる信号により布類検査装置12が作動する。処理される布類Wは、例えば、包布(二重の布製品)とする。
【0026】
布類検査装置12が作動すると給気部22が起動し、それと共に、ボックス部21の内部に冷却気流32を生じて、照明装置26及びカメラ23を主とする発熱部分を空冷する作用が開始される。冷却気流32は発熱部分との熱交換により上記部分を冷却する一方、熱を得て上昇気流33となり、さらに整流板31の部分のノズル効果にて加速され、排気口27から排出気流34となって噴射される(
図5B)。このように噴射される上記排出気流34によって、検査部20に糸屑や埃或いは微細な塵埃等が運ばれて来たとしても、検査部20の表面は常時清浄な状態に保たれることとなる。
【0027】
布類Wの先端は渡し部材30の上面を滑りつつ越え、布類検査装置12に達する(
図6A)。そのとき検査部20の表面には排出気流34による気流層が形成されており、搬送手段16−1により搬送されつつある布類Wの先端部分は、上記排出気流34の気流層を介して検査部20の表面を移動するようになっている(
図6B)。よって、布類Wの移動は検査部20の表面を滑走するようにして行なわれ、布類Wの状態も常に良好な状態に保たれて、シワになるとか詰まる等の事態は起こらない。
【0028】
このように、布類Wは検査部20の透明板材上を極めてスムーズに移動し、かつまた、検査部20の透明板材表面は常時清浄な状態に保たれている。よって、検査装置12による布類Wの裏面に対する欠陥検査を理想的な環境の下で実施することができる(
図7)。布類Wの搬送が中断した場合、先行する布類Wの後端が検査部20を通過した時点で検査も一旦中断するが、本発明に係る検査部浄化装置10の作動は中断させることなく、継続作動させたままとしておくことが望ましい。
【0029】
裏面に対する検査を終えた布類Wは、搬送手段16−2、16−3により次工程へ搬送され、表面に対する欠陥の検査装置13に送られる。検査装置12、13による検査を経て欠陥が見出されなかったもの、すなわち良品は折り畳み装置14に搬送されて折り畳まれる。他方、欠陥品と判別された布類Wは折り畳み工程に至るまでの任意の部位にて工程外へ排出し、良品と区別される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る布類の検査装置における検査部浄化装置を含む折り畳みシステムの一例を示す側面説明図である。
【
図2】同上の装置における布類の裏面に対する検査装置の一例を示す側面説明図である。
【
図3】同じく検査部浄化装置の作用を示すもので、Aは冷却気流による空冷状態、Bは上昇気流が排出気流となって排出される状態を示す側面説明図である。
【
図4】同じく検査部の詳細を拡大して示す側面説明図である。
【
図5】同じく本発明の作用を示すもので、Aは布類が搬送途中にあって検査装置が作動を開始した状態、Bは排出気流が形成されている加速状態を示す側面説明図である。
【
図6】同じく本発明の作用を示すもので、Aは布類が検査部に搬送されて移動しつつある状態、Bは排出気流により布類が滑動している状態を示す側面説明図である。
【
図7】同じく本発明の作用を示すもので、検査部における検査状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 布類の検査装置における検査部浄化装置
11 ロールアイロナー
12 検査装置(裏面)
13 検査装置(表面)
14、15 折り畳み装置
16−1、16−2、16−3 搬送手段
17 センサー
18 エンコーダー
19 先端ロール
20 検査部
21 ボックス部
22 給気部
23 カメラ
24 暗箱部材
25 フィルター
26 照明装置
27 排気口
28 検査窓
29 固定手段
30 渡し部材
31 整流板
32 冷却気流
33 上昇気流
34 排出気流
W 布類