特許第6235863号(P6235863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235863ゴム押出し装置、及びゴム押出体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235863
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ゴム押出し装置、及びゴム押出体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/12 20060101AFI20171113BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20171113BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   B29C47/12
   B29K21:00
   B29L7:00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-223642(P2013-223642)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-85544(P2015-85544A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年8月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷元 亮介
(72)【発明者】
【氏名】笠間 健一
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−162629(JP,A)
【文献】 特開2005−349597(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024785(WO,A1)
【文献】 特開平08−267543(JP,A)
【文献】 特開2011−178030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴム押出し機から押し出されるゴムにより、断面巾が断面厚さよりも大な断面偏平なゴム押出体を形成するゴム押出し装置であって、
複数の前記ゴム押出し機の前端部が取り付き、各前記ゴム押出し機からのゴムを、前端側で開口する吐出口まで個別に案内する複数の個別流路として形成されたヘッド流路を有する押出しヘッドと、
前記押出しヘッドに取り付けられ、前記ヘッド流路からのゴムを、前端側で開口する予成形口まで予成形しながら案内するプリフォーマ流路を有するプリフォーマと、
前記プリフォーマに取り付けられ、前記プリフォーマ流路からの予成形されたゴムを、前端側で開口する成形口から押し出して前記ゴム押出体を成形する成形流路を有する押出しダイとを具えるとともに、
前記プリフォーマ流路をなす流路壁面を加熱する加熱手段を有し、
前記プリフォーマ流路は、各前記個別流路からのゴムが1つに合流する主合流流路部を含み、
前記加熱手段は、前記主合流流路部における巾方向外側の少なくとも一方の前記流路壁面を加熱することを特徴とするゴム押出し装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記プリフォーマ内に設けたことを特徴とする請求項1に記載のゴム押出し装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記流路壁面を80〜130℃の範囲の温度で加熱することを特徴とする請求項1又は2記載のゴム押出し装置。
【請求項4】
前記プリフォーマは、前記主合流流路部を有する主プリフォーマダイと、この主プリフォーマダイを保持するベースプリフォーマとを具えるとともに、前記加熱手段は、前記主プリフォーマダイ内に設けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のゴム押出し装置。
【請求項5】
複数のゴム押出し機から押し出されるゴムにより、断面巾が断面厚さよりも大な断面偏平なゴム押出体を形成するゴム押出体の製造方法であって、
複数の前記ゴム押出し機の前端部が取り付き、各前記ゴム押出し機からのゴムを、前端側で開口する吐出口まで個別に案内する複数の個別流路として形成されたヘッド流路を有する押出しヘッドと、
前記押出しヘッドに取り付けられ、前記ヘッド流路からのゴムを、前端側で開口する予成形口まで予成形しながら案内するプリフォーマ流路を有するプリフォーマと、
前記プリフォーマに取り付けられ、前記プリフォーマ流路からの予成形されたゴムを、前端側で開口する成形口から押し出して前記ゴム押出体を成形する成形流路を有する押出しダイとを具えるゴム押出し装置を用いるとともに、
前記プリフォーマ流路の各前記個別流路からのゴムが1つに合流する主合流流路部をなす流路壁面のうちの巾方向外側の少なくとも一方の流路壁面を加熱しながらゴムを押し出す押し出し工程を具えることを特徴とするゴム押出体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面偏平なゴム押出体を押出し成形する際の成形不良を抑制しうるゴム押出し装置、及びゴム押出体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、各部位における要求特性が異なる。そのため、各部位に配される例えばトレッドゴム、サイドウォールゴム、ビードエーペックスゴム、クリンチゴム、クッションゴム等のゴム部材には、異なる配合ゴムが使用される。
【0003】
他方、このようなゴム部材は、それぞれの固有の断面形状にてゴム押出し装置から押し出される偏平な帯状のゴム押出体を用いて形成される。しかしゴム押出し装置により断面偏平なゴム押出体を押出し成形する場合、図8(A)に示すように、ゴム押出体aの巾方向外端側の側縁部分にゴム切れbが生じたり、又側縁側の表面に鮫肌状の表面荒れcが生じたりするなどの成形不良が発生する傾向がある。
【0004】
このような成形不良の原因として、図8(B)に示すように、流路d内におけるゴムgの巾方向の速度分布が考えられる。流路d内では、ゴムgは流路壁面dsとはスリップしながら進む。そのため、流路壁面dsとの抵抗が大きい場合、ゴム表面が引っ張られて鮫肌状の表面荒れcが発生する。又前記抵抗が大きいと、巾方向中央側の流速Vと側縁側の流速Vとの流速差(V−V)が大となり、これに起因して、押し出し直後にゴム押出体aの側縁部分が押し出し方向に引っ張られてゴム切れbが発生する。
【0005】
特に近年、多層型押出し装置を用い、前記図8(A)に例示するように、例えばサイドウォールゴムa1とクリンチゴムa2とクッションゴムa3とを、多層のゴム押出体aとして一体に押し出す場合が多い。このとき、巾方向中央側のゴムの粘度が相対的に低い場合や、側縁側のゴムの粘度自体が高い場合などには、流速差(V−V)や、流路壁面dsとの抵抗が大きくなって、ゴム切れbや表面荒れcの発生が顕著となる。
【0006】
なおゴム押出し装置の構造に係わる特許文献として下記のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−349597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで発明は、断面偏平なゴム押出体を押出し成形する際の、巾方向側縁側でのゴム切れや表面荒れ等の成形不良を、構成簡易に抑制しうるゴム押出し装置、及びゴム押出体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、ゴム押出し機から押し出されるゴムにより、断面巾が断面厚さよりも大な断面偏平なゴム押出体を形成するゴム押出し装置であって、
前記ゴム押出し機の前端部が取り付き、該ゴム押出し機からのゴムを、前端側で開口する吐出口まで案内するヘッド流路を有する押出しヘッドと、
前記押出しヘッドに取り付けられ、前記ヘッド流路からのゴムを、前端側で開口する予成形口まで予成形しながら案内するプリフォーマ流路を有するプリフォーマと、
前記プリフォーマに取り付けられ、前記プリフォーマ流路からの予成形されたゴムを、前端側で開口する成形口から押し出して前記ゴム押出体を成形する成形流路を有する押出しダイとを具えるとともに、
前記プリフォーマ流路をなす流路壁面を加熱する加熱手段を有することを特徴としている。
【0010】
第1の発明に係る前記ゴム押出し装置では、前記加熱手段は、前記プリフォーマ内に設けることが好ましく、又前記加熱手段は、前記プリフォーマ流路をなす流路壁面のうちの巾方向外側の少なくとも一方の流路壁面を加熱することが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る前記ゴム押出し装置では、前記押出しヘッドに複数のゴム押出し機が取り付き、かつ前記ヘッド流路は、各前記ゴム押出し機からのゴムが個別に通る複数の個別流路として形成されるとともに、
前記プリフォーマ流路は、各個別流路からのゴムが1つに合流する主合流流路部を含み、
しかも、前記加熱手段は、前記主合流流路部における巾方向外側の少なくとも一方の流路壁面を加熱することが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る前記ゴム押出し装置では、前記加熱手段は、前記側の流路壁面を80〜130℃の範囲の温度で加熱することが好ましい。
【0013】
第1の発明に係る前記ゴム押出し装置では、前記プリフォーマは、前記主合流流路部を有する主プリフォーマダイと、この主プリフォーマダイを保持するベースプリフォーマとを具えるとともに、前記加熱手段は、前記主プリフォーマダイ内に設けられることが好ましい。
【0014】
第2の発明は、ゴム押出し機から押し出されるゴムにより、断面巾が断面厚さよりも大な断面偏平なゴム押出体を形成するゴム押出体の製造方法であって、
前記ゴム押出し機の前端部が取り付き、該ゴム押出し機からのゴムを、前端側で開口する吐出口まで案内するヘッド流路を有する押出しヘッドと、
前記押出しヘッドに取り付けられ、前記ヘッド流路からのゴムを、前端側で開口する予成形口まで予成形しながら案内するプリフォーマ流路を有するプリフォーマと、
前記プリフォーマに取り付けられ、前記プリフォーマ流路からの予成形されたゴムを、前端側で開口する成形口から押し出して前記ゴム押出体を成形する成形流路を有する押出しダイとを具えるゴム押出し装置を用いるとともに、
前記プリフォーマ流路をなす流路壁面を加熱しながらゴムを押し出す押し出し工程を具えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、加熱手段により、プリフォーマ流路の流路壁面を加熱している。この加熱により、プリフォーマ流路の流路壁面とゴムとの間の抵抗が減じる。又前記ゴムが温度上昇して、その粘性も相対的に低下する。そのため、巾方向中央側と側縁側との流速差が減じ、側縁側でのゴム切れの発生、及び側縁側のゴム表面での表面荒れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のゴム押出し装置の一実施例を示す正面図である。
図2】押出しヘッドの主要部を拡大して示す断面図である。
図3】プリフォーマ及び押出しダイを示す斜視図である。
図4】プリフォーマと押出しダイとを示す巾方向と直角な断面図である。
図5】プリフォーマのプリフォーマ流路を概念的に示す斜視図である。
図6】(A)は主プリフォーマダイを後方側(上流側)から見た平面図、(B)はそのI−I線断面図である。
図7】ゴム押出体の一例を示す断面図である。
図8】(A)はゴム押出体に生じる成形不良を示す斜視図、(B)は流路内におけるゴムの巾方向の速度分布を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のゴム押出し装置1は、ゴム押出し機2から押し出されるゴムGにより、断面巾が断面厚さよりも大な断面偏平なゴム押出体3(図7に示す。)を形成する。
【0018】
本例では、前記ゴム押出し装置1が多層型ゴム押出し装置であり、複数本のゴム押出し機2から押し出されるゴムGにより、図7に示すように、断面が、複数のゴム領域Rに区分されたゴム押出体3を形成する場合が示される。本例のゴム押出体3は、タイヤ形成用のサイドゴムであって、その断面は、ゴムGaからなる巾方向中央側のサイドウォールゴム領域Raと、ゴムGbからなる巾方向一側縁側のクリンチゴム領域Rbと、ゴムGcからなる巾方向他側縁側のクッションゴム領域Rcとに区分されている。
【0019】
ゴム押出し機2としては、投入されるゴムを混練しながら順次押し出すスクリュ軸式の周知構造のものが好適に採用される。各ゴム押出し機2は、例えば架台Aによって所望の取付け角度で固定支持されるとともに、各ゴム押出し機2(各ゴム押出し機2を区別する場合は2a〜2cという。)の前端部は、一つの押出しヘッド4に連結される。
【0020】
ゴム押出し装置1は、各ゴム押出し機2の前端部が取り付く前記押出しヘッド4と、該押出しヘッド4に取り付くプリフォーマ5と、該プリフォーマ5に取り付く押出しダイ6とを具える。本願では、ゴム流れ方向の下流側を「前」、上流側を「後」と表現している。
【0021】
図2に示すように、押出しヘッド4は、前記ゴム押出し機2からのゴムを、前端側で開口する吐出口7oまで案内するヘッド流路7を具える。なお本例の押出しヘッド4は、Vブロック状の中央ヘッド部4Aと、その両側に配される左右の側ヘッド4B、4Bとに分割可能に構成される。これによって前記ヘッド流路7内を開放でき、メンテナンス性を高めている。
【0022】
図4、5に示すように、前記プリフォーマ5には、前記ヘッド流路7からのゴムGa〜Gcを、前端側で開口する予成形口8oまで予成形しながら案内するプリフォーマ流路8を具える。又前記押出しダイ6には、前記プリフォーマ流路8からの予成形されたゴムGabcを、前端側で開口する成形口9oから押し出して前記ゴム押出体3を成形する成形流路9を具える。図4は巾方向と直角方向のプリフォーマ5の断面を概念的に示し、図5はプリフォーマ5のうちの、後述する主プリフォーマダイ13と副プリフォーマダイ15とを概念的に示す斜視図である。
【0023】
本例の場合、前記ヘッド流路7は、ゴム押出し機2aからのゴムGaが個別に通る個別流路10a、ゴム押出し機2bからのゴムGbが個別に通る個別流路10b、及びゴム押出し機2cからのゴムGcが個別に通る個別流路10cとして形成される。なお押出しヘッド4の前端部には、プリフォーマ5を着脱自在に取り付ける取り付け凹部11が形成され、各個別流路10a〜10cの吐出口7oは、前記凹部11の壁面で開口する。
【0024】
前記プリフォーマ流路8は、各個別流路10a〜10cからのゴムGa〜Gcが1つに合流する主合流流路部12を含んで構成される。本例の場合、プリフォーマ5は、前記主合流流路部12を有する主プリフォーマダイ13と、この主プリフォーマダイ13を保持するベースプリフォーマ14とを含む。より具体的には、本例のプリフォーマ5は、主プリフォーマダイ13と、ベースプリフォーマ14と、副プリフォーマダイ15とから構成される。
【0025】
前記副プリフォーマダイ15は、前記個別流路10a、10bに接続し、この個別流路10a、10bからのゴムGa、Gbを合流させる副合流流路部15Aを有する。又前記ベースプリフォーマ14は、前記副合流流路部15Aからの合流ゴムGabを主プリフォーマダイ13に案内する案内流路部14Aと、前記個別流路10cからのゴムGcを主プリフォーマダイ13に案内する案内流路部14Bとを有する。又前記主プリフォーマダイ13は、前記副合流流路部15Aからの合流ゴムGabと、個別流路10cからのゴムGcとを合流させて1つの合流ゴムGabcとする前記主合流流路部12を有する。
【0026】
従って本例のプリフォーマ流路8は、前記副合流流路部15Aと、案内流路部14A,14Bと、主合流流路部12とから形成される。
【0027】
そして本発明では、前記プリフォーマ流路8をなす流路壁面8Sを加熱する加熱手段20を具える。本例では、前記加熱手段20はプリフォーマ5内に設けられ、前記流路壁面8Sのうちの巾方向外側の少なくとも一方の流路壁面8Se(便宜上「側の流路壁面8Se」という場合がある。)を加熱する。
【0028】
特に本例では、加熱手段20が前記主プリフォーマダイ13内に設けられ、前記主合流流路部12における少なくとも一方の側の流路壁面8Se、特にクッションゴム領域Rc側となる側の流路壁面8Se1を加熱する場合が例示される。このクッションゴム領域RcをなすゴムGcは、ゴム組成上、サイドウォールゴム領域RaをなすゴムGa、クリンチゴム領域RbをなすゴムGbに比して粘性が高く、ゴム切れや表面荒れの発生が顕著となる。従って本例の場合、クッションゴム領域Rc側となる側の流路壁面8Se1を加熱して、ゴム切れや表面荒れの抑制を図っている。
【0029】
具体的には、図6(A)、(B)に示すように、加工性の観点から、主プリフォーマダイ13は、厚さ方向一方側、他方側のブロック片21、22に分割され、その分割面に、主合流流路部12形成用の切り欠き部23が形成される。図中の符号25A、25Bは、前記案内流路部14Aからの合流ゴムGab、及び案内流路部14BからのゴムGcがそれぞれ流入する流入口であり、合流ゴムGabとゴムGcとは主合流流路部12内で1つに合体して予成形口8oから流出する。
【0030】
又主プリフォーマダイ13は、巾方向一側面から、前記側の流路壁面8Se1に向かってのびる取付け孔26を具える。そしてこの取付け孔26内に、前記加熱手段20が設けられる。加熱手段20としては、電熱線を用いた電気ヒータ20Aがコンパクト、かつ温度コントロールが容易であるため好適に採用される。この加熱手段20により、前記側の流路壁面8Se1を、80〜130℃の範囲の温度T8に加熱する。この温度T8は、側の流路壁面8Se1の表面温度を意味する。
【0031】
この側の流路壁面8Se1への加熱により、側の流路壁面8Se1とゴムとの間の抵抗が減じて流速Vが高まる。その結果、巾方向中央側の流速Vとの流速差(V−V)が小となって、側縁側(本例ではクッションゴム側)でのゴム切れの発生、及び表面荒れの発生を抑制することが可能となる。又前記加熱により、ゴム自体の温度も上昇してその粘性も相対的に低下する。このことも前記流速差(V−V)の低減に寄与すると考えられる。なお温度T8が80℃を下回ると、前記効果が不十分となる。逆に130℃を越えても、前記効果のさらなる上昇を期待できず、逆にエネルギーの無駄を招くとともに、ゴムにスコーチなどの悪影響を与える。
【0032】
前記加熱手段20は、熱伝達により前記側の流路壁面8Se1以外にも、その周辺における厚さ方向の流路壁面8Shも同時に加熱する。しかしこの厚さ方向の流路壁面8Shの温度は、前記80〜130℃の範囲以下であっても良い。本例では、前記加熱手段20の先端は、前記側の流路壁面8Se1よりも巾方向内側に位置し、これにより前記厚さ方向の流路壁面8Shの一部も、80〜130℃の範囲に加熱される。なお加熱手段20の先端の、前記側の流路壁面8Se1からの巾方向距離Lは、両側の側の流路壁面8Se、8Se間の距離であるプリフォーマー流路全体巾L8の25%以下であるのが好ましい。
【0033】
本例では、クッションゴム領域Rc側のみに加熱手段20を設けた場合を示した。しかしクリンチゴム領域Rb側にも同様の加熱手段20を設け、両側の側の流路壁面8Seを加熱させることもできる。又、当然ではあるが、プリフォーマ5、及びプリフォーマ流路8の構造は、押出し成形するゴム押出体3の形状や構造に等応じて適宜変更することができる。又ゴム押出し装置1としても、3多層型以外に、例えば2層型、4層型などの多層型、或いは単層型のとして構成することもでき、係る場合、それに合わせて、押出しヘッド4、プリフォーマ5、押出しダイ6の構造も適宜変更できる。
【0034】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0035】
本発明の効果を確認するため、実施例として、図1〜6に示すゴム押出し装置1を用いて、図7に示す断面構造を有するゴム押出体3(タイヤ形成用のサイドゴム)を、押し出し速度(17mm/min)にて押出し成形した。主プリフォーマダイ13には、クッションゴム領域Rc側に加熱手段20が埋設され、主合流流路部におけるクッションゴム領域Rc側の側の流路壁面8Se1を加熱している。加熱手段20として電熱線(200V、180W)が用いられた。
【0036】
そして、押出し開始からの時間tの経過に伴う、クッションゴム領域RcにおけるゴムGcの温度Tc、サイドウォールゴム領域RaにおけるゴムGaの温度Ta、クリンチゴム領域RbにおけるゴムGbの温度Tbの変化、及び押し出し開始からの時間tの経過に伴う、クッションゴム領域RcにおけるゴムGcの流速Vc、サイドウォールゴム領域RaにおけるゴムGaの流速Va、クリンチゴム領域RbにおけるゴムGbの流速Vbの変化を測定した。
【0037】
なお各ゴムGa〜Gcの前記温度Ta〜Tcは、非接触式温度計(サーモグラフィー)を用い、各領域Ra〜Rcにおける巾方向中心位置での表面温度を、押し出し直後に測定している。又各ゴムGa〜Gcの流速Va〜Vcは、デジタルタコメーターを用い、各領域Ra〜Rcにおける巾方向中心位置での表面速度を押し出し直後に測定している。又側の流路壁面8Se1の温度T8は、接触式温度計を用いて壁面温度を測定している。
【0038】
そして、押出しゴムの側縁側(クッションゴム側)におけるゴム切れ、鮫肌状の表面荒れの発生の有無を、目視検査によって判定した。
【0039】
又従来例として、加熱手段20を作動させない(加熱しない)状態において、同様のテストを行い、その結果を表2に示す。
【0040】
又それぞれ、経過時間t=1分における押出しゴムの側縁側表面の表面粗さ(十点平均粗さ)を測定した。実施例(加熱した場合)における表面粗さの平均は7.3μm、であり、従来例(加熱しない場合)における表面粗さの平均は34.5μmであった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1に示すように、実施例では、側の流路壁面への加熱により流速差Va−Vcを大幅に減じることができ、側縁側(クッションゴム側)におけるゴム切れ、及び鮫肌状の表面荒れの発生を抑制しうるのが確認できる。これに対して、従来例では、流速差Va−Vcが大であり、ゴム切れ及び表面荒れが発生している。なお従来例では、クッションゴムGa自体の熱が流路壁面に伝達するため、流路壁面8Se1の温度T8は、時間経過とともに上昇する。そのため、経過時間が9分を過ぎると、流速差Va−Vcが0.45m/minまで低下し、ゴム切れ及び表面荒れの発生が抑制されている。
【0044】
なお単にクッションゴムGaの温度Taを挙げるだけでは、流速差Va−Vcを減じることは難しく、流路壁面8Se1の温度T8を上昇させることが必要であることが、表1、2から解る。
【0045】
なお他の実施例として、押出し開始時(経過時間t=0)における流路壁面8Se1の温度T8が80℃、及び130℃となるように加熱して、同様のテストを行った。そして、押出し開始時におけるゴム切れ及び表面荒れの発生の有無を判定し、その結果を表3に記載した。何れも、ゴム切れ及び表面荒れの発生が抑制されているのが確認できる。
【0046】
【表3】
【符号の説明】
【0047】
1 ゴム押出し装置
2 ゴム押出し機
3 ゴム押出体
4 押出しヘッド
5 プリフォーマ
6 押出しダイ
7 ヘッド流路
7o 吐出口
8 プリフォーマ流路
8o 予成形口
8S 流路壁面
8Se 側の流路壁面
9 成形流路
9o 成形口
10 個別流路
12 主合流流路部
13 主プリフォーマダイ
14 ベースプリフォーマ
20 加熱手段
G ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8